トピ主 2024-07-26 06:44:45 |
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>683
ん?全然気を使ってませんよ~、だってこうでもしないと聖女様と一緒にご飯食べられないでしょ?折角だから、聖女様とご飯食べたいな~…ってね。
(ティアと同じテーブルに自分の分を用意してもらい、お得意の営業スマイルでお礼を言って「隣、失礼しますよ~」と、ティアに言ってから席につき。ティアに対して笑みを浮かべながら、同じく細い声で気を使ってないと告げ、ティアと一緒に食べたいというのは本心だがティアと同じ食事を頼んだ理由として話して。恐らくティアはいつも一人で食べてるであろうと推測して、誰かと一緒に食べれば質素な食事も多少はマシに思えるだろう。そういえばクレアはどうしてるだろうと視線を動かして探し、豪勢な料理の中でも質素な料理を食べてるクレアを見つけて。豪勢な料理には手を付けない辺り、クレアも気を使ってるのだろうと静かにそう思い「後で好きなだけステーキとお酒を振る舞おう」と静かに考えており)
>685
ただいまぁ~、討伐行ってきたよ~。はい、頼まれてたワーウルフの毛皮と牙ね~…ん?
(交易都市デュランダルにある冒険者が集うギルドに、一見冒険者に見えないような少々派手な格好な少女が入ってきて。服装だけ見れば確かに冒険者には見えないのだが、腰のホルスターに入ったマグナムと同じく腰に装着された鞘に収まっている剣だけが唯一彼女が冒険者だと判別できる要素だ。ギルドの受付にワーウルフの毛皮と牙が入った袋を渡して、恐らくは収集系の依頼だったのだろう。ちなみに、自分の店で使う用に多めに獲っている。報酬を受け取って帰ろうとしたところ、何やら酒場にいる冒険者達がある箇所をチラチラと見ているのが視界に入り、気になって酒場に近づいて)
…わぁ~、あのお爺ちゃんすご~い!あんなにお酒飲める人、初めて見たぁ~!
(冒険者達の視線を追ってその先を見ると、カウンターに山積みになった空のジョッキが見えて。そのまま視線を下に動かすと、笑いながら豪快にジョッキの中に入ったエールを飲み干している老人の姿が。服装からして東の国の人だろう…あの老人があの量のエールを一人で飲んだことに驚いており、思わず声に出して。お爺ちゃんと言うが、ウラルの方が遥か年上だったりする。)
(/絡みます、よろしくお願いします!)
>689
・・・・・・ッかァ!なかなか飲んだのぉ、じゃが1人で飲むのも・・・・・・
(ゴクゴクと喉を鳴らしながら、全く酔い潰れる様子もなくエールを飲んでいた老人だったが少し手を止めると誰か酒を飲み交わす相手が欲しいと考え始め。
そのまま、食堂の様子を見回し良さそうな人物を探し始めると、自分に対して驚きの声を上げるウラルが目に入る。)
ふむ・・・・・・これ、そこの娘よ お主此処に来て 飲み交わさぬか?
(周囲の冒険者の奇異な目や初対面の相手に全く動じること無く平然と酒の席へ誘った老人『支那 恒吉(シナ ツネヨシ)』。
彼は、その少し濁っているものの老人らしからぬ熱と覇気の籠った目を細め、豪快にニカッと相手へ笑いかける。
そして、『無論、勘定は儂が持とうぞ!』と代金は自分が全て払うと誘い文句として付け加える。)
>687
なるほど……!まあレイラも剛直者ですからな……ああそうだ。そういうことであれば、アリシアの様の掲げる理想、私めにもお聞かせ願えませんか?いやなに、私からもレイラを説得できればと思いまして。
(アリシアが再三レイラを勧誘していると聞き、顔を紅潮させながら感心して。さもアリシアの志に賛同しているように見えるが、内心ではレイラに感心している。どうやら本当に教皇の寵愛に頼らず生きているらしい。かっこいいな……と。
それにひきかえコイツはさっきから何言ってるんだ?これじゃ騎士というより聖教国の信者だ。会う度に何をレイラさんに説いているのやら……よし確認しよう。と頭をかき、アリシアの「理想」とは何かを尋ねて。)
>690
えぇ~!いいの~?それじゃあ、お言葉に甘えようかなぁ~…♪
(老人が一旦エールを飲む手を止めて、何やら食堂を見回していることに不思議そうな表情を浮かべながら小首を傾げて。誰かを探しているのだろうか、そう考えているとこちらに向いて酒の席を誘う老人。あの老人にとって大抵の女性冒険者は娘になるが、それらしい人物は自分の周りにいない。どう見ても自分を誘っている、短い時間でどうしようかと考えていると…なんと、奢るという発言も。その発言で目を輝かせながらあっさり誘いに乗り、軽い足取りで老人の隣の席について果実酒を注文して)
私、ウラルって言うんだぁ~。ギルドの近くでアクセサリーショップをやってるよぉ~…それにしても、おじいちゃんお酒に強いんだねぇ~?
(老人の方を向いてニコリと笑いながら簡単な自己紹介と、ギルドの近くにある武器屋や防具屋がある場所でアクセサリーショップを開いていることを明かして。近くに来たことによって、ウラルの人外特有の瞳がよく見えるだろう…改めて老人の近くに山積みになったジョッキを見上げて、相当酒に強いことを再度話して。自分も酒にはそこそこ強い方だが、これだけの量…いや、途中で酔いつぶれてしまうだろう。)
>688
そ、そういうことでしたら…
(一緒にご飯を食べたかったからと言われて、ティアは頬を紅潮させて目を泳がせた。友人と食事を共にすることは外の世界では当たり前に行われることであるが、幼少期から行動が制限されているティアにとっては余程特別なことのように思えたのだろう。慣れないことへの緊張を誤魔化すように、ティアはその小さい口で野菜を一口頬張る。いつもと変わらない味付けの筈が初めて美味しいと感じたことは心の内に秘めて、少しだけ口角が吊り上がった。)
>691
ふふっ、勿論ですとも。私はこの世界を在るべき形に戻したいと…そう考えています。聖教国の教えに拠れば、獣人やエルフなどの亜人種は人間に害を成す悪魔の手先だそうです。そんな穢らわしい存在と共存するなど有り得ませんよね。害獣共を一匹残らず駆逐して理想郷を築く。それが私の…いえ、聖教国の掲げる素晴らしき理念なのです。
(感心した様子で食い気味に質問を投げ掛けるレドの様子を見て、アリシアは口角を吊り上げて得意げな表情で自らの理想を語った。勿論、上位悪魔を自認しているアリシアにとって人間も亜人も大差のない下等な存在であり、実際には差別意識など微塵も持ち合わせていない。王国の分断を促すには聖教国という存在は都合が良い為に熱烈な信徒を演じているに過ぎないが、火種を大きくする為にも王国内に信徒を一人でも増やしたいところである。同志とは言いつつも聖教国に関連する物を一切身に付けていないことからレドが入信していないことは明らかであり、これが入信のきっかけとなればと心の内に少しばかり期待を抱きつつ、アリシアはニマニマとした表情でレドの言葉を待った。)
過去編「疑念と友情」
どうしたっすか?アリシアちゃん、すご~くガチガチっすよ!今まで学んだことを出し尽くすだけっすから、難しいこと考えずに肩の力抜きましょうよ~。
うん…そうだね…
(騎士学校の卒業試験当日の朝、眠い目を擦りながら起き上がると部屋の隅で蹲るルームメイトの姿が目に付いた。ライデン家と言えば騎士階級の中で名門中の名門、きっと彼女は私には理解し難い重圧を抱えているのだろう。気休めにすらならないかもしれないけど…それでも少しでも緊張が和らげばなんて思いながら大袈裟な身振り手振りも交えて出来る限りのフォローをした。それに応えるようにアリシアは「そうだね…」と小さく微笑む。内気で大人しくて、そんな所が可愛いルームメイトのアリシアちゃん……まさか彼女のそんな姿を見るのはこれが最後になるなんて思いもしなかった…)
…え…?…はぁ…!?
(一足先に学科・実技ともに試験を終えたシエルはアリシアの実技試験を見物しようと、試験会場である訓練場に立ち寄った。学科試験は惨敗だったものの、実技試験では手合わせした試験官をあと一歩のところまで追い詰めることが出来た為、早くアリシアに自慢話を聞いてもらいたくてウズウズしていると、気が付けばアリシアの順番が回ってきていた。試験官とアリシアの両者が礼をして手合わせが始まるも、アリシアが構えを取った途端にシエルは驚愕の声を上げた。)
ふふっ、怖いですか?
(右足を大きく踏み込み腰を落とす。そして手は腰に携えた剣の柄に優しく添えられていた。アリシアのこの構えは極東に伝わる型の一つ「居合い」だ…知識としてその存在は知っていたが、無論、騎士学校に極東の流派の訓練はない。アリシアが扱える筈のない型にも関わらず、まるで熟練の使い手かのように不思議と隙は見当たらなかった。対峙している試験官も同様の感想を抱いたようで、プレッシャーから額に汗を流し、迂闊に踏み込めずにいた。このまま時間だけが無為に過ぎていくものかと思ったのも束の間に、アリシアが今まで見せたこともない、美しくも見下したような笑みで試験官を挑発する。学生に怖気付いては試験官も立場がない為、雄叫びを上げ恐怖を振り払い、挑発に乗る形で斬りかかった。)
ありがとうございました。
(勝負は一瞬だった。試験官の振り下ろした剣を瞬く間に鞘から引き抜かれたアリシアの剣が迎え討ち、鈍い金属音が響くと同時に試験官の持つ剣の刀身が真っ二つに折れた。無力化された試験官はその場に膝から崩れ落ち、放心状態で天を仰いだ。会場は居合わせた騎士や学生達の拍手と歓声に埋め尽くされるが、そんな様子を気にする素振りもなくアリシアは形式的に一礼をして颯爽と立ち去る。試験官を打ち倒すという稀に見る快挙にも関わらず、まるでそれが当たり前かのように、アリシアただ一人が冷静であった。)
はぁ…はぁ…アリシアちゃん、凄かったっすよ!あの技どこで覚えたんすか!
………
うっ…!…なん…で…
(シエルはすぐにアリシアの後を追い、会場から少し離れたところで追い付いた。アリシアの背に向けて賞賛の声を掛けるも何故か反応はなく、そのことに強い違和感を感じながらも、再び声を掛け、肩に手を置こうとした刹那、腹の中心に抉るような鈍い痛みを感じてその場に倒れ込んだ。殴られたであろうことは理解しつつも、状況が飲み込めず困惑と苦しみの滲んだ表情でアリシアを見上げる。)
ああ、すみません。鬱陶しくてつい。
(自分を見下すアリシアの瞳は酷く冷たく、まるでゴミを見るような眼差しであった。悪びれる様子もなく踵を返し淡々と歩みを進めるアリシアの後ろ姿を見送りながら、シエルは彼女がアリシアではない別の何かであることを察した。長年苦楽を共にしたルームメイト…否、親友との別れがこんな酷い結末で良い筈がない…シエルは拳を強く握り締め、得体の知れない何かからアリシアを救い出すと心に決めた。)
アリシアちゃん…私が…絶対に…助けるから…
>693
…フフ、やっぱりご飯を食べるなら誰かと一緒に食べるのが一番ですね~
(野菜を食べたティアの口が、少しだけ口角が上がった…本来、この料理を食べても上がらないはず。彼女の様子からやはり誰か…心を許せる者と食べるのは初めてだということは容易に読み取れる。口角が上がったのは恐らく、この料理がおいしく感じたのだろう…内心よかったと思いながら、ご飯は誰かと一緒に食べるのが一番と告げて自分も野菜を一口。ミミの家にはほぼ毎日エレオノールとウラルが遊びに来たりたまにオルトロスが家に来たりと、基本一人で食事することはない。野菜を食べてる最中「…この子には、もっといい物を絶対食べさせよう」と、静かにそう思っており)
>695
(/ふむ…一見朝の段階ではアリシアがいつも通りに見えなくもないですが、隅で蹲ってた理由がプレッシャーとかじゃない場合、話が変わってきますね…)
>694
ほほう!私も非才の身ですが、常日頃この国に巣食う害獣を駆逐し理想郷を築きたいと願っておりました。是非ともお役に……
(アリシアの理念に目を丸くして、いかにもその志に感銘した風にポン、と手を打って。レドもアリシアと同じくこの国の害獣を駆逐して理想郷を築きたい者である……害獣(オマエ)を駆逐して、お前と瓜二つの強く麗しく正しい御方の下で理想郷を築きたいのだと。聖教国の連中はギルドで無礼を働いておきながらクレアさんに難癖付けて依頼を受けるよう強要したと聞いてるし、そもそも自分は冒険者として挫折した時、優しいエルフに助けられた身の上。聖教国になびく気は無い。だが今波風を立てるのは禁物……と、表面上はアリシアに歩調を合わせることにした。)
……と、気のせいか。
しかしアリシア様。剣に紋章を帯びている以上、国王陛下はお認めになっているのでしょうが……他の騎士の方々はあまりいい顔をしないのでは?
(静まり返った廊下に響く酔客の笑い声に人の気配を感じてか、発言を止めてアリシアに背を向け、元来た廊下を覗き込んで。気のせいである事を確認するとアリシアに向き直り、指で頬をかきながら、おずおずと質問して。
異種族共存を掲げるこの国で宮仕えの者が人間至上主義を唱えるなど、謀叛人として処刑されても文句は言えない暴挙に見える。アリシアの行いを他の人々はどう見ているのだろう?レドの気になるところである。)
>696
ええ、ミミさんと一緒なので尚のこと……最近で言えば王国からいらした来賓の方ともお食事をしましたが、とても礼儀正しい方といった印象を抱いた一方で、あくまで職務の一環ですし特別楽しいといった感情はありませんでしたね…お名前は確かアリシア・ライデンさん。姓から察するにもしかしてクレアさんのご親戚でしょうか?
(有象無象の誰かではなく、ミミと一緒の食事だからこそ食事が美味しく感じるのだとティアは頬を赤く染めて強調した。比較対象として、最近共に食事をした人物の名を挙げるが、偶然の一致かクレアと同姓であることに気が付き、ティアは少し離れた位置にいるクレアに顔を向けて質問を投げかけた。)
うっ…!…ごほっ…ごほっ……え、えーと…きっと偶々ですよ…お、王国にはライデンなんて苗字いっぱいいますから…あはは…
(アリシアの名前が出たことで、食していた蒸かし芋が変なところに入ったクレアは盛大に咳き込んだ。ライデンなんて苗字はそうそう居ない上に、明らかに動揺してシラを切るクレアの様子から親戚であることは間違いないが、誤魔化すからにはあまり関係は良くないのだろう。相変わらずかつての仲間に留まらず親類に至るまで人間関係が軒並み破綻しているようだ。苦笑いを浮かべながらも、その瞳はミミに向けて助けを求めていた。)
>697
これは痛い所を突かれてしまいましたねぇ…ご想像の通り騎士団からは理解を得られていないのが現状です。一部では私を罷免しろという声が上がっているとか…ふふっ、まあ外野が何と言おうと知ったことではありません。私は私の信念を貫くのみですから。
(建前上の同調に気を良くしていたアリシアだが、レドが抱いた当然の疑問に苦笑いを浮かべた。困り顔で自身の頬に手を添えて、あまり芳しくない騎士団の内情を語るものの、罷免の訴えまで出ているにも関わらず不思議と焦っている様子は見られない。この余裕は国王にしか命令権がないという近衛隊の閉鎖性ゆえであろう。国王が自身を罷免することなど絶対に有り得ないと、アリシアと国王との間にそう確信できる何かがあることは明らかであった。)
>696
なかなか鋭い考察ですね!もしかしたらいずれ騎士団編の別側面に関わる形でミミとアリシアの絡みがあるかもしれませんので、その時はよろしくお願いします(^^)闇堕ち系ヒロインが好きなのでアリシアは特にお気に入りの子です。
>698
あはは、ちょっと照れますね~…けど、そう言って貰えると嬉しいですよ。へぇ…まぁでも、位の高い役職の人ってそんな感じじゃないですか?私やクレアみたいな人は、あんまり居ないでしょうし…
(自分と一緒だからこそという発言に、同じく頬を紅く染めて嬉しそうにも見える照れ笑いを浮かべて。わかってはいたが、家族以外で自分以上に寄り添った人物が居なかったのだろう。比較対象として挙げた人物…アリシア・ライデンの印象を聞いては、高い役職の人達には自分たちのような人は基本居ないだろうと言う意味で答えて。ライデンという名を聞いた瞬間、無意識にクレアの方を向き…確か、クレアのファミリーネームもライデンだったはず…)
…そうですよ、聖女様。デュランダルでもファミリーネームがライデンの人はいっぱい居ますよ、冒険者の中にも居て「あのS級冒険者のクレアと同じ苗字だ」って、よく自慢してますし。
(クレアの視線で助けを求めていることをすぐに読み取り、本当にありそうな話をしてクレアをフォローするミミ。当然、そんな冒険者は居ない…「ライデン」という苗字の人物は自分が知る限りクレアのみだ。あの反応からしてクレアの親族であることは間違いない…誤魔化すということは、あまりいい関係ではないのだろうと考えており)
(/わかりました、こちらこそよろしくお願いしますね?確かに、主様のキャラでクレアやティアのように辛い過去や現状で堕ちそうになってる子や、カグラのように最初からヤバい子が居ますよね。レイラは…現状正直になれないという感じでしょうか…?)
>699
……恐れながらアリシア様、いくら近衛隊が国王陛下直属とは申しても、周りから突き上げられてはいずれ国王陛下も決断せざるを得ないかと。もしやご自身が絶対罷免されないという自信がおありで?たとえば、その、国王陛下は……フィリア国は人間至上主義へ切り替えられる、とか?
(やはりアリシアの行いは内部から反感を買っているようだ。改めて廊下の方にちらりと視線をやって人気の無い事を確認すると、手を後ろに組みながら、アリシアの自信の根拠を訊ねて。いくら近衛隊が国王直属といっても、アリシアより格上の騎士は多いはず。彼らの訴えを重ねられては国王も庇い切れないだろう。それでも布教をやめないとは、よほど自分が国王から首を切られない自信があるに違いない。「もしやあなたは国王陛下の愛人!?」とつい言いたくなったが流石に無礼が過ぎる。視線を宙に向けて慎重に言葉を選ぶとアリシアへ視線を戻し、「フィリア国は人間至上主義へと転換するから」という自分なりの考えを述べて。)
>701
そうなのですか…?クレアさんに良く似ていた気がしたのですが…他人の空似ということもあるのでしょう。話のタネになればと思ったのですが残念です…
(ミミのフォローもあり、まんまと誤魔化されたティアはシュンとした表情で俯いた。自由のないティアにとっては話題を共有出来る貴重な機会だと踏んでいたのだろう。純粋な善意と好奇心からの行動であったが、運悪くクレアにとってその話題は地雷であった為になんとも不遇なものである。)
え、えーと…聖女さま…!この美味しそうなジュースを飲んで気を取り直しましょう…!
(心の内で上手く誤魔化してくれたミミに感謝しつつ、落ち込んだティアのご機嫌取りという更なる試練が訪れた。クレアは額に汗を流し、あたふたした様子でティアの元に駆け寄ると、テーブルに置かれていた瓶を手に取りティアのグラスに注ぐ。古代文字で商品名が書かれている為何かは分からないが、ブドウの絵が描かれていることからきっとジュースだろう。気付いた司祭達が慌てた様子でテーブルに駆け寄ってきたが時既に遅く、ティアはグラスに注がれた飲み物に口をつけた。)
…ふぇ…あたまが…ふわふわします……っ………
(瓶の中身は度数の高い果実酒だったようだ。一口飲んだだけでティアの顔は真っ赤になり、呂律が回らなくなる。やがてテーブルに頭を突っ伏して動かなくなった。それを見たクレアは自身のやらかしを察して瓶を持ったまま固まってしまった。一見すると要人の暗殺現場のような構図だが、果たしてミミとクレアは聖教国から無事に帰ることが出来るのだろうか…)
>702
さあ…どうでしょうね。いずれ分かる、とだけ言っておきましょうか。…さて、随分と話し込んでしまいましたね。そろそろ会食もお開きの時間ですし戻るとしましょう。このまま姿をくらましては変な噂が立つでしょうし…ふふっ、私は構いませんけどね。
(レドの問いかけにアリシアは心底楽しそうに卑しい笑みを浮かべると、少しばかり意地の悪い返答をした。抽象的な物言いに留めたものの否定はしていないことから、レドの予想は大枠を捉えているようだ。一応はレドに気を許したものの、まだ完全に信用するには至っていない為、いずれ裏切られ糾弾されても良いように言葉に逃げ道を残したのだろう。どこまでもしたたかで陰湿な女である。これ以上の追及を避けるように会食の終了時間に言及すると、冗談を言いつつレドに先んじて来た道を戻るように歩みを進めた。)
>701
レイラに関してはむしろ正直過ぎて感情のコントロールが苦手な子と表現した方が正しいかもしれません。作中の日頃の言動で周りから誤解されやすいですが、おそろく私の持ちキャラの中で一番ピュアな子です(^-^)
>703
(うまく誤魔化せたようだ……そのアリシアという人物がクレアと似ていたという発言から親族という可能性が上がる。姉妹か双子…といったところだろうか…そう考えていると、話題共有ができずシュンとしているティアの姿が目に映り、「あ…えっと、冒険者の仕事のことや冒険者達についてはたくさん話せますよ!」と、外の世界の話ではなくギルド関係のことや仲間の事を話すと苦笑いを浮かべながら告げて。司祭達がいる中、外の世界に憧れを抱かせる話をするのは不味いだろうと思っての判断だ。クレアもティアの機嫌取りに動き、ジュース?と思われる飲み物をグラスに注いでおり)
へぇ、ロゴが古代文字のジュースなんて珍……クレア!それジュースじゃないっ!!
(注いでる最中、何やら司祭達がこちらに駆け寄ってきていることに対して「ジュースとかも飲んじゃダメなのかな…?」と疑問に思いながら、クレアの持つ瓶のロゴを見ており。まぁ、ティアもその事は分かってるから飲まないだろうと判断して、次のフォローについて考え。それにしても、古代文字が書かれたジュースなんて珍しい…そう言いかけたが、ある違和感に気づく。古代文字ということは、かなり昔に作られた物だということがわかる……果たして、ジュースがそんな長い間腐らず保つだろうか?あの瓶から読み取れることは、ブドウのイラストのみ。大昔からあるブドウの飲み物…それが「年代物のワイン」だということに気づくのに時間はかからなかった。ミミも急いで止めようとしたが、時すでに遅し…注ぎ終わり、ティアがワインを口にしてしまったのだ……。)
………聖女様…?聖女様…!!
(飲んだ瞬間すぐに酔いが回った辺り、よりによって度数の高いワインだったということがわかる。今の一口だけで酔いつぶれたティアを見て、クレアと同じく固まってしまう。それから約2秒後、席から立ってティアに近づき背中を揺すりながら呼びかける……寝てるだけなのはわかるが、当分起きそうにないだろう……どうにか弁解したいのだが、ミミも決して冷静ではない。何も思いつかないまま、冷や汗を流しており)
(/え、ティアよりもピュアなのでしょうか…?感情のコントロールが苦手、ですかぁ……クレアと仲直りできるといいですねぇ。ミミがそのことに気づいた上で、その場に居合わせればフォローできますが…)
>706
ティアは世渡りが上手な子なので敬虔な信徒を演じたりその場に応じた嘘をつくことが出来ますが、その点レイラは全く嘘がつけません。素行は兎も角としてそういう意味で最もピュアな子です(^^)
>704
もうそんな時間でしたか。ははは、私も助かりますな。変な噂が立ったらレイラに八つ裂きにされかねませんから。では……
(肝心の回答は得られなかったが、どうやらこの場は切り抜けてなんとかレイラの下へ帰れそうだ。他に聞きたいことは色々あるがこれ以上追及しても答えまい。首の後ろに手をやりながら、自らも冗談をこぼして(冗談抜きで八つ裂きにされそうなのはさておき)苦笑いを浮かべつつ、アリシアの後を付いていくことにして。
追従しつつ黙ってアリシアの後ろ姿を見つめてみる。わずかな灯りで鈍く輝く金色の髪と白い肌は薄暗がりの闇に包まれ、まるで美女の幽鬼が暗闇に漂っているかのような不気味さを覚える。悪意の塊ながらも底が見えない、天使(クレア)の皮を被った怪物と今まで対峙して知らぬ間に緊張や恐怖を感じたか。首にやっていた手の平が冷や汗でしっとりと濡れているのを確認するとズボンでそっと拭い、しずしずと会場へ歩を進めて。)
>706
クレア殿、少々お話があります。
…は、はひ……
(別室への移動を促されたクレアは抵抗という抵抗もなく、酒瓶を持ったまま両脇を司祭達に抑えられて連行されていった。「お話」と言うからには、規律の厳しいこの国で聖女に酒を飲ませたことに対して長いお説教が始まるのだろう。本来であれば何らかの刑が課されてもおかしくないが、客人に対する特段の温情措置であることは明らかであった。)
…ぅ…頭が痛いれす……これは…いったい?…
(クレアが連行されてしばらくして、目を覚ましたティアはテーブルに顔を伏したまま鈍い痛みが残る頭を抑えた。酒を飲んだことなどないティアにとって何が起きたのか見当もつがず、状況が呑み込めずに目線だけ動かして周囲を見渡した。正面にミミがいることを確認すると安堵してホッと一息付くと、弱々しい声で状況を尋ねた。)
>708
お待たせ致しました。…あはは、何もありませんよ。少々立ち話に花が咲いてしまいまして。…ええ、彼は稀に見る素晴らしい逸材ですよ。叶うなら近衛隊に迎え入れたいくらいには。
(会場に戻るなりアリシアは来客達に一礼してから席に着いた。酔いも回りすっかり出来上がった先輩騎士達からは「どこまでいったんだ」「宿は取ったのか」等とセクハラ紛いの質問が投げかけられるが、クレアに良く似た苦笑いを浮かべつつ丁寧に否定する。この場に於いてはアリシアよりも序列の低い騎士が殆どであるにも関わらず、やはり歳下で女というだけで下に見られている節があるのだろう。笑顔の反面、アリシアから漏れ出るドス黒い魔力から内心では腸が煮えくり返っていることが分かる。流石の騎士達もそのドス黒い魔力に身の危険を感じ、慌ててレドの人となりへと話題を移すと綺麗さっぱり魔力は離散した。機嫌を直して手駒にしたいと語るくらいにはアリシアはレドのことを気に入ったようだ。)
過去編「最後の命令」
毎日毎日ご苦労なことねぇ。そんなに書類との睨めっこは楽しいかしら?
ハァ…断じて好きでやっている訳ではありません。
(場所は騎士団の執務室。机の上に山のように積み上がった書類の向こうからニマニマとクレアの顔を楽しそうに覗き込んでいるのはルミナ・シャルロッテ・フィリア、この国の第一王女だ。騎士団の実情を知った上で投げかけられた意地悪な質問に、クレアはジト目と溜め息で返す。)
ふふっ、そうでしょうね。ごめんなさい、貴方のその顔を見たかっただけなのよ。悪気はないわ。
それを悪気と言うんです…まったく…そんなことよりも、このような場所で暇を持て余していて良いのですか?明日には王国を発つと伺っておりますが。
(普段は聡明で慈愛に満ちた王女として振舞っているルミナだが、クレアには二人きりになった際に偶にこうしてちょっぴり意地悪な冗談を言ったり友達のような距離感で接している。態度には出さないものの、騎士団に入ってから周囲を中高年に囲まれていたクレアにとってこの関係は束の間の休息のような尊いものであった。しかし、そんな関係も今日でお終いだ。王位継承権争いで白旗を揚げたルミナは他国の王家に嫁ぐこととなり、いよいよ明日にはこの国を発つ。)
他の用は済ませてあるわ。私を支持してくれた人間の所は全て回ったし、最後に私の騎士様とお話をしておきたくて此処に来たの。
最後が私…ですか。なんだか申し訳ないような…
私が決めたんだから文句ないでしょ…!素直に喜びなさい!
えーと…こ、光栄です…
(第一王女の派閥には現職の大臣や騎士団長など錚々たる面子が名を連ねている。それらを差し置いていとまの挨拶回りの大トリを飾るのが自分であることを忍びなく思ったクレアは困り顔で頬を掻いたが、その様子を見てルミナはプクッと頬を膨らませて喝を入れた。勿論、最後に自分が選ばれたことをクレアも本心から嬉しく思ってはいるが、縦社会である騎士団に属している性から、困り顔のままなんとも締まらない様子で「光栄です」と述べるに留めた。)
分かればよろしい。………それで、最後だから…改めて貴方に謝るわ。私を信じて着いてきてくれたのに、このような選択をしてしまいごめんなさい…どんな罵倒も受け入れるわ。好きに罵ってちょうだい…
(一応はクレアが自分の順番を受け入れたことを確認すると一呼吸置いて、おちゃらけた態度から一転してルミナは神妙な面持ちで頭を下げた。これから先、第一王子が王位に就くことになれば、かつて自身を支持していた者達は不穏分子として冷遇されることであろう。王族が頭を下げる意味は重く、己が心の弱さ故に王位継承権を放棄し、多くの従者の期待を裏切り未来を奪ったことに対する誠心誠意のケジメであった。明日には追放され、もはや何の権力も持たぬ身。罵倒で済むとは思っていない…殴られる覚悟で頭を下げたルミナであったが、クレアの口からは予想外の言葉が紡がれた。)
……どうか頭をお上げください。怒りなど抱いている筈もありません。ルミナ様に忠誠を誓ってから三年、貴方様と過ごした時間は私にとって心の支えも同然でした。腐らずに今の地位まで登りつめられたのも全て貴方様のお陰なのです。だからどうか、これ以上ご自身を責めないでください。
そう……やっぱり私の騎士様は優しいのね。ありがとう…
(クレアは照れくさそうに頬を赤く染めてルミナに対する自らの心情を語る。若くして高位の騎士にまで登りつめたクレアの心労は計り知れないもので、今までに何度も心が折れそうになった。けれど、その都度冗談交じりに気さくに接してくれたルミナのお陰で正気を保てていたことは紛れもない事実であり、そういった胸の内を全て曝け出す頃にはクレアは柄にもなく柔らかくも温かい、そんな笑みを浮かべていた。初めて見るクレアの表情と明かされた心情にルミナは思わず涙を流すと、暫しの後に顔を上げ、袖で涙を拭いながら「ありがとう」と心からの感謝を告げる。)
礼を言うべきは私の方ですよ。それに…人生に於いては時に逃げることを選ぶ必要に駆られることもあるでしょう…なにも常に勇ましく在ることが正しいとは限りませんから。
そうかもしれないわね…ただ、貴方のその言葉はまるで自分に掛けてほしいようにも思えたわ。
そ、それは……
(ルミナの選択を肯定する意味で、逃げることも人生に於いて必要なことだと説くクレアであったが、この言葉は自分に言い聞かせたものでもある。今までルミナの存在で首の皮一枚で繋がっていたものの、高位の騎士としての重圧はゆっくりと確実にクレアを蝕んでいた。それを見透かしていたルミナの指摘にクレアは言葉を詰まらせ視線を逸らした。)
ふふっ、じゃあ私からの最後の命令よ。心の底から辛くてどうにも立ち行かなくなったなら、その時は逃げなさい。私はもう自分の命令に責任を持てる立場にいないけれど、そうね…もし貴方が逃げた先の未来で後悔することがあれば、せめて恨まれてあげるわ。
ふっ…あははっ…もう、なんですかそれは。まあでも…そのご命令、然と賜りました。貴方が老いて亡くなるまで精一杯恨ませていただきますからね。
(最後は本調子でと言ったところか、ルミナは不敵に微笑むとなんとも風変わりな命令を下した。辛くなったら逃げてもいい、後悔したら好きなだけ恨めと滅茶苦茶な内容であったが、その命令はクレアのツボを捉えたらしく、クレアは口元を抑えて笑い声をあげた。この命令を実行に移すことがあるかはまだ分からない。けれど、今日を思い出せばしばらく頑張れそうだ…なんて思いつつ、クレアは緩んだ表情のまま丁寧な仕草で胸に手を添えて命令を賜った。)
最後に貴方のそんな顔を見れて良かったわ。それじゃ達者でね、私の騎士様。
ご武運を祈ります、私のお姫様。
(最後にはお互いに憑き物が取れたような、屈託のない笑顔ではなむけの言葉を送りあった。お互いの未来がより良いものであることを信じて…)
>709
あ、聖女様…!よかったぁ…薬を持ってますけど、飲みますか?
(クレアが司祭達に別の部屋に連れて行かれるのを「…クレア…グッドラック…。」と、今から長い説教をされるであろうクレアに心の中で応援して。本来であればそこそこ重たそうな刑罰を課せられるだろう…が、説教だけで終わる辺り自分達が特別な措置をされていることがよくわかる。そうしているとティアが目覚め、一先ず胸を撫で下ろして。頭が痛そうにしているティアに、鞄の中から青色の魔法薬が入った小さな瓶を取り出してティアに渡して)
えーっと…クレアが構度数が強い果実酒をジュースと間違ってグラスに注いでしまい、それを聖女サマが飲んでしまい、少しの間酔いつぶれて現在に至ります…。
(今の状況を簡単に説明して。ティアが話題を共有できず落ち込んでいたことは敢えて言わず、果実酒のことだけを説明する。「近くで見ていたのに、気づくのが遅れました…すみません…」と、最初自分も珍しいジュースだと思っていて果実酒だということに気づくのが遅れたことを申し訳なさそうに謝罪して)
>711
(/おぉ…この時にも心を許せる方が居たのですね。ルミナは今どうしてるのでしょう…あれから色んなことがあって逃げる選択をしたクレアですが、ルミナのことを恨んだりはしてなさそうですよね。)
>712
ルミナは不運にも嫁ぎ先で革命に巻き込まれ亡くなってしまいました…クレアが恨んでいないのは勿論ですが、もう恨むことすら叶わないんですよね(>_<)
>710
(来客の応対をするアリシアを尻目に、ふぅと一息吐いて自分の席に座り直し。ちらりと目線をやれば、彼女が先輩騎士たちのセクハラを受けつつも例の黒い魔力であしらっている。その光景を見て初めてアリシアに同情した……なんとも下品な連中だ。民を顧みず後継者争いに明け暮れる上も上だが、下の連中もまた見るに堪えない。クレアさんもああして苦労したのかな。奴もあんなのに囲まれていたらこの国を見限って、他国の教えに縋りたくなるのかも……そういうタマにも見えないが、と。)
どうもどうも。さ、おひとつ……いやはや流石はライデン家の跡取り、あの通り一筋縄ではいかないお人でした。確かアリシア様は従姉を追い出して後継者の座を得たとか。きっと子供の頃からああして魔力と覇気に溢れる御方だったんでしょうなぁ……
(いい感じに酔っている隣の先輩騎士に、「アリシア様は脈無しでした」という苦笑いを浮かべつつお酌して、ひそひそとアリシアの人となりを聞いてみることにして。その際、つい他の席のステーキに目が行く。せっかく名高い「豊穣亭」に来たのだ。できれば食べ損ねたメインディッシュにありつきたいのだが、場が出来上がった今が好機。我慢して残りの時間は情報収集に努めることにする。)
>711
(/これがクレアが心から忠誠を誓った第一王女様ですか。
レドはアリシアと父親を排してクレアの実家を取り戻そうと考えていますが、慕う主君が消えた今となっては、クレアはもう王都に戻る気は無いんでしょうね……)
>712
(ミミに薬を差し出されると、後ろに控えていた司祭がまた良からぬ物ではないかと疑い動きだしたが、ティアは視線でそれを制した。ティアの持つ固有魔法「真実の魔眼」。これは相対している人間の心情を読み取れるものであり、ミミからは当然悪意など感じられない。無論大聖堂に属している人間であればこの魔法の存在を周知している為、司祭は口応えすることなく配置に戻った。「ありがとうございます」と一言礼を言った後に一息に薬を飲み込むと幾分か顔色が良くなり、ティアは言葉を続けた。)
いえ…私の不注意でもありますから…それにしても、冒険者の皆様はあのような飲み物を日頃から飲んでいるのですね。私には到底真似出来そうもありません…
(ミミの謝罪に対して首を横に振ると、ティアはむしろ自らの不注意を責めた。あの場で離れていた司祭達を除けば唯一古代文字を読めたのは自分だけなのだからティアが思い詰めるのも当然であろう。そして、初めて飲んだ酒の味を思い出して顔を顰めると、冒険者には酒を好む者が多いということは噂に聞いていた為、つくづく世界は広いものだと思い至りティアはどこか遠い目をしていた。)
>714
おう、気が利くじゃねぇか。アリシア殿はああ見えて昔は内気で可愛らしいお嬢さんだったんだがなぁ。いつからか性格も技量も別人のように変わっちまったんだよ。
(先輩騎士は注がれた酒を一気に流し込むと、レドの目論見通り上機嫌な様子でアリシアの人となりを語った。先輩騎士曰く、かつてのアリシアは内気で大人しく、それらしい才能もない凡人であったようだが、いつからか何の前触れもなく別人のように様変わりしたらしい。)
それに俺に言わせりゃアレは完全に巻き込み事故だな。親父殿が家督を分捕ったせいでなりたくもない後継者になって、慕っていたクレア殿は男と駆け落ちして騎士団を去っちまった。見方によっちゃ可哀想なお人だよ。もしかしたら今の変わり様はそれらの反動なのかもしれねぇな。
(先輩騎士は空になったグラスを指で弄びつつ、しみじみとした様子でライデン家のお家騒動に対する私見を語る。今の野心家であるアリシアのイメージからすればお家騒動に一枚噛んでそうなものだが、かつてのアリシアを知る先輩騎士からは見え方が異なるようだ。父親が家督を横取りしたせいで望まむ後継者となり、慕っていたクレアは何処の馬の骨とも知れない男と駆け落ちして騎士団を去った。当時のアリシアは心の支えを失った状態で名家の重圧に押し潰されたことは想像に難くない。先輩騎士は、今のアリシアは重圧に耐えかねておかしくなっている状態だと捉えているようで、語り終える頃には無意識に哀れむような瞳をアリシアに向けていた。視線を感じたアリシアだが当然話している内容は聞こえておらず、先輩騎士とレドに向けて形だけのにこやかな笑みを返した。相変わらず見てくれだけは天使のようである。)
>714
そうなんです…主君を失い、騎士の身分も自ら捨ててしまったので今さら王都に未練はないんですよね…偶に両親の墓参りの為に実家に入れるようになればクレア的には満足だと思います(o^^o)
クレアのQ&A
好きな物は?
「う~ん…色々ありますが一番はお酒ですね。」
どの種類のお酒が好き?
「ウイスキーですかね。度数が高ければ高いほど好きです…!」
逆に嫌いな物は?
「う~ん…とくにはありませんねぇ…」
それでは嫌いな人は?
「第一王子殿下です。」
どのくらい?
「叶うならこの世から消し去りたいくらいには…あっ、いけませんね。こんなことを言っては捕まってしまいますのでどうかご内密に…」
今までで一番楽しかった時期は?
「冒険者になってしばらくの間ですね。カルロスやダンテ、レイラちゃんと旅をしている時が一番幸せでした。」
逆に一番辛かった時期は?
「……色々ありまして…回答を差し控えさせていただきます…」
将来の夢は?
「将来…ですか。もう大人なのでこれといって夢はありませんねぇ…ただ、何か前向きな目標を立てたいところです。余生で出来る範囲で…」
回答ありがとうございました。
過去編「この世で最も嫌いな男」
…ん…ここは……
(石畳の冷たい感触に目を覚ますと、そこは薄暗い地下牢のような空間であった。先程まで野暮用で立ち入った離宮で食事を取っていたはず…一先ず状況を確認する為に起き上がろうと身動ぎするも四肢は動かない。目を見やると分厚い縄で堅く拘束されており、自力で解くことは不可能であることを察した。クレアはここでようやく自分が囚われの身であることを理解する。)
やあクレア、よく眠れたかな?
ジェラルド殿下…なぜこのようなことを…
なぜ…か、それは君がよく知っているだろうッ!ドスッ
ぅ…!……
(声のする方向に視線を向けると、そこにはこの国の第一王子ジェラルド・フォン・フィリアの姿があった。万人を魅了する爽やかな見てくれとは裏腹に、この男が底の知れない闇を抱えていることをクレアは知っている。なにせこの男こそが愛おしき主君の命を奪った黒幕であるからだ。開口一番に知らばくれるものの、本当のところは心当たりしかない。横流しされた莫大な数の騎士団の装備品、その行方を追っていたところ行き先は第一王女の嫁いだ国の革命勢力であり、それらの影には第一王子の暗躍があったことをクレアは突き止めていたからだ。糾弾すべく証拠集めに奔走していた最中に食事に薬を盛られ、こうして捕らえられたという訳である。クレアの言葉に腹を立てたジェラルドは声を荒らげて、抵抗する術を持たないクレアの横っ腹に容赦のない蹴りを入れた。クレアは思わず苦痛に顔を歪ませてその場に蹲る。)
隠さずとも君がコソコソと動いていたことは分かっている。ここで消すことも容易いが、私も鬼ではないのでね。お互いの幸せのために取引と行こうじゃないか。
チッ…何を馬鹿なことを。
おいおい、そんなに怖い顔をしないでおくれよ。これでも王子なんだぞ?最低限の敬意を払ってもらいたいものだなぁ。私をこれ以上怒らせては、消されるのは君だけとは限らないよ。例えば可愛い可愛い君の従姉妹とか…ねぇ?
…っ……
(ジェラルドは、未だ苦痛で蹲るクレアの髪を引いて強引に上体を起き上がらせると、爽やかな顔に似合わない下卑た笑みを浮かべて取引を持ち掛けた。それに対して、もはや誤魔化しは通じないと判断したクレアは立場など弁えず、感情を顕にしてジェラルドを睨みつけて悪態をついて見せる。クレアのせめてもの抵抗を面白がるようにジェラルドは口角を釣り上げると、クレアを慕っているアリシアの存在を引き合いに出して脅しをかける。これ以上親しい人間を失いたくなどないクレアは押し黙るほかになかった。)
ようやく立場を理解したようだね。よしよし良い子だ。それで取引の内容だが…簡単なことだよ。この書類にサインをしてくれればいい。
これは…服従の契約書…!?どこでそのような物を…
まあまあ、細かいことは置いておいて。その内容に従ってさえいてくれれば今後一切私は君の親しい人間に危害を加えないと約束しよう。さあ、返事を聞かせておくれ?
くっ…分かり…ました…
(クレアが押し黙ったのを見て上機嫌になったジェラルドは掴んでいた髪を離し、まるで犬を愛でるかのように、再び地べたに這い蹲ることとなったクレアの頭を撫でる。この上ない屈辱に身を震わせながらも、心身共に抵抗の術を奪われたクレアはそれを受け入れた。そうして、されるがまま頭を撫でられていると、目の前に強力な魔力の宿った一枚の紙切れが差し出される。「服従の契約書」、それにサインした者を生涯に渡り縛りつける禁断の魔道具だ。その危険性から王国では所持が禁じられている筈の代物である。目の前の男がなぜそれを所持しているのか疑問を投げ掛けたが飄々とした態度ではぐらかされた。内容に目を向けると「・契約者によるジェラルドに対して危害を加える行為の一切を禁じる。・契約者によるジェラルドに対して不利益となる行為の一切を禁じる。・契約者はジェラルドの危機に際してほかの何よりも優先して馳せ参じ、己が力を振るわなければならない。」などと記載がある。憎きこの男に今後一切の抵抗が出来ない上に窮地には手を差し伸べなければならないことは癪だが、それでも再び大切な人を失うくらいならと、クレアは苦虫を噛み潰したような顔で了承した。)
その…縄を解いていただけますでしょうか…サインが出来ないのですが…
何を言っているんだい?手を使わずとも書けるだろう。なんの為にそこに筆を置いたと思っているんだ?
…っ…まさか…
(万年筆を顔の前に置かれたものの、契約書にサインをしようにも四肢が拘束されているためクレアは筆を持つことが出来ずにいた。キョトンとした表情で拘束を解くよう頼んでみるが、意地の悪い笑みを浮かべたジェラルドからは予想外の返答がくる。要するに口を使って筆を持てと、そう言っているのだ。今さら抵抗の意志などないことは分かっているくせに…と内心で強い不満を抱きながらも、クレアは口で筆を咥えた。芸を躾られている犬のような屈辱的な扱いに目尻に涙を浮かべながら、懸命に自らを縛る契約書へ名前をサインするクレアの滑稽な姿を見て、ジェラルドは小馬鹿にするように口元を抑えて笑いを堪えるような仕草を見せつけた。)
アッハハ、毎日書類仕事に追われているというのに随分と汚い字だ。亡き姉上に見せたいくらいだよ。
っ……、ぅ……
(口で書くことを強制された字を汚いと貶された挙句、目の前の男が手にかけたも同然の亡き主君まで引き合いに出されて馬鹿にされたにも関わらず、クレアは契約書の持つ呪いのような拘束力によってもはやこの男に悪態すらつけない。それはこの男にとっての「不利益」だからである。もう亡き主君の仇討ちすら叶わない…覚悟していたつもりであってもそれを肌で認識したことで抑えていた感情が決壊し、クレアの瞳からは留めどなく涙が溢れた。結局、趣味の悪い様々な仕打ちはジェラルドが飽きるまで続けられ、解放されたのは翌日の明け方であった。この日を境にクレアの心的不調は悪化の一途を辿ることとなる。)
少々時間が出来ましたのでまたクレアの過去編を投下致しました!少々鬼畜な尊厳破壊エピソードなので閲覧注意です…このことがきっかけでクレアは磨り減っていた精神を更に病んでしまい、後に騎士団を去ることになります。
>716
なんですと!?巻き込み事故とはまた……確かに、後継者の責務を押し付けられ慕う人にも去られでは、お人が変わるのもまあ……無理はないでしょうな。
(話を聞くなり雷に打たれたかのようにビクッと目を見開いて。先輩騎士の口から出たアリシアの生い立ちは、どれも今までの悪逆・狡猾な振る舞いとは真逆の内容ばかり。しかも好きで後継者になったわけでは無いと来た。「あー、リーダーってそんな昔からクレアさんと付き合ってたのか。かなわんなぁ……」という無常感など頭の隅へ去っていく。な、何が巻き込み事故だよ!?どう見ても生まれながらの野心家だろ!お前の目は節穴か!?と頭を叩きそうになった。
しかし男の様子からして事実と判断すると、彼と同じようにアリシアを静かに見つめて。この人の主張にも一理ある。おそらくクレアさんも自らを慕うあの女を可愛がったはず。頼りになる人に去られ、騎士社会という不条理の歯車に無理矢理組み込まれては人格も歪むだろう、という同情が芽生えてきた……一方で、いくらそんな事情があったとしても、そんな小心者がたった数年でひとでなしの悪党に変わるか?むしろ精神的に耐えきれず自害や蒸発などしそうなものだ、とても同一人物に見えない、という新たな疑念も湧いてくる。全くまとまらない思案を中断するかのように、空になった先輩騎士のグラスにゆったりと酒を注ぎ。)
……麗しいですな、アリシア様は。苦難が女性を美しくするのでしょうか……
(アリシアが笑みを向けているのに気付けば会釈を返し、しみじみと彼女を見つめながら自らもワインを一口つけて。その視線はどこか穏やかだ。どうしようもない外道という認識に変化は無いが、最初の頃に比べれば幾分アリシアへの殺意も和らいできた。)
>718 >719
(「/あー、亡命して一年で革命だなんておかしいと思ってたらやっぱりこいつの仕業か。
クレアさんはよく自由になれたものだ。そして今まで苦しい思いばかり重ねてきたんだなぁ……
そうとも知らずに俺は敬遠してしまった。土下座したら……あるいはコイツの首取ったら許してくれるかなぁ……」とレドがぼやいています。)
>715
(先ほどのことがあり、ミミが出した魔法薬を良からぬ物だと疑い動く司祭。当然のことだろう…正直いろいろ調べて魔法薬だと判別してくれればと考えていたが、ティアが視線だけで制して。やはり、聖女だから簡単に制することができるのか……いや、この国の聖女の扱いからそれは考えにくい。ティアに100%信頼できる何かがあるのだろうか、なんてことを考えていると魔法薬を飲んだティアの顔色が幾分かよくなり、少し安心したような表情を浮かべて)
ま…まぁ、人間なんですし誰でも失敗はありますよ!だから、聖女様もあまり気になさらないでください…。あそこまで度数が高いお酒を日頃から飲める人なんて……居ないこともないですが、基本的に皆もっと度数の低いお酒を飲んでますよ。
(自分の不注意を責めるティアに、苦笑いを浮かべながら気にしなくていいと告げて。あの時落ち込んでいたから注意力がなくなっていたのだが、当然その事は言わず、誰にでも失敗はあると告げて。ティアが飲んだ度数が高い酒を日頃から飲んでる人はそう居ないと言おうとするが、酒を飲んで上機嫌に酔っているクレアの姿が思い浮かび、「そういえば、これくらい度数の高い酒を飲んでたな…」と思いながら居ないこともないと告げて。)
>713
>718
>719
(/なんと、もう亡くなっていたとは…一度でいいから会ってみたかったですねぇ…
嫌いな人物を即答するレベルだからどんな事物かと思えば…酷いですね…。いつかジェラルドと戦うときが来るのでしょうか…)
>ALL
(ギルドの食堂の隅の席、本来なら沢山の人に紛れて目立たぬであろう席で存在感を放つ青年が一人。
何十枚と積みがった手紙の束…黒夜叉への依頼書を一つ一つ手に取り、読んでは手元のロウソクで燃やす。
そんな事を何度も繰り返した事で席はボヤ騒ぎでも起こしたかのように煙に包まれていた。その煙の中でも平気な顔で酒瓶に口を付けながら独り言ちる姿は否が応でも目立つ。)
うーん…あんまり面白そうな依頼が無いね~
(冒険者としても黒夜叉としても興味の惹かれない依頼は受けないスタンスの為、数日間食堂に入り浸っている事も珍しく無い。
気の向くまま興味を引いた誰かに声をかける事もあれば、かけられる事もあり。
普段はそうして暇を潰していたのだが…ここ数日はそれも無く、一際の退屈から高価な酒をポンポン開けていた。)
>721
うんうん、アリシアちゃんはとっても可愛いっすよね!分かるっすよ~。
(アリシアの容姿への賞賛を聞いて、シエルは唐突にレドの背後からひょっこりと顔を出してその言葉に同意した。姿を現す直前まで気配を完全に遮断していた辺り、阿呆っぽい振る舞いとは裏腹になかなかのやり手である。隣にいた先輩騎士に至っては驚きのあまり椅子から転げ落ちて「イテテ」と腰を痛めていた。)
あっ、申し遅れました。私はシエル、近衛隊随一の雑用係っすよ~。以後お見知り置きを!そろそろ時間なので迎えに来たところっす。
(先輩騎士などお構いなしに、ハッと思い出したかのようにシエルはレドに向けて名乗りを上げた。「ふふんっ」と胸に手を添えて自信満々に雑用係を名乗る様はおめでたいを通り越してなんだか可哀想である。顔立ちや近衛隊の軍服も相まって一見するとお堅い印象を与える見てくれだが、中身は随分と愉快な人物のようだ。そんな彼女がどうしてレドの前に現れたかというと、会食が終わる時間には既に馬車の便がないため遠方から招待された客には近衛隊が馬車を手配している。彼女が送迎を担当するのは本来レイラであったが、その代理であるレドの元に参上したとのことである。)
(/普段は誰であろうと人の死を嫌厭しているクレアですが、ジェラルドに関しては喜ばないまでも心に多少の平穏が訪れるかもしれません…)
>722
そうなのですね…ミミさんも日頃はお酒を嗜まれるのでしょうか?色々と取り揃えているようですし、よろしければ召し上がってください。
(酒には度数の違いがあることを初めて知ったティアはミミの言葉に関心した様子で頷いた。見たところ机上には様々な年代物のワインが揃えられていた為、せめて何か楽しんでもらおうと、机上に並んだそれらを指し示して勧めてみる。酒に関しては聖女という立場に関わらず、ティアはそもそも未成年であるから飲んではいけない。その為ミミが普段から酒を嗜むなら自分に気を遣わずとも飲めるだろうという計らいであった。)
(/かなり先になるとは思いますが、いずれ対峙することになると思います!ただ、もしジェラルドと戦うことになれば、契約の強制力で必然的にクレアとも戦うことになるので難航するかもしれません…)
>724
なっ!?テメェッ!……アリシア様、曲者です!せっかくだ。こやつ相手に我が東刀の冴え、お見せつかまつ……る……?
(突然背後から湧いて出た謎の存在・シエルに驚き、思わず汚い声を上げて椅子から飛び退いて。クレアほどではないにせよレドも一端の剣客である。本来なら背後から気配を殺して近づく存在は条件反射で叩き伏せられるが、アリシアに気を取られていたのと、シエルの気配殺しの冴えのせいで今回は失敗した。思わず壁に掛けた自らの刀を掴んでシエルを斬り伏せようとするがそこで腕は止まる。その身のこなしと軍服で近衛隊の者と判別できたからだ。しかも段取りも心得ているようだ……それでも間の抜けた口調にアリシアに対して妙に馴れ馴れしい態度、とても騎士には見えない。シエルの説明が終わるなり、彼女を指さしながら、戸惑いで引きつった新米騎士のような顔をアリシアに向けて。)
あ、あの、アリシア様?この方はいったい……?随分アリシア様と親しいようですが……
>725
(/うわぁ、結局コイツを倒さない限りクレアの尊厳は取り戻せないんですか。悔しい……
せいぜいAランクのレドに何ができるか。せめてレイラやダンテの加勢を取り付けられればいいんですが……)
>726
ああ…後ほど説明致しますので少々お待ちください。それでは皆様、宴もたけなわではありますがお時間となりました。今宵はお忙しい中お集まりいただき誠にありがとうございました。
(顔を引き攣らせたレドとその背後にいるシエルを見て状況を理解したアリシアは頭を抱えて項垂れた。この馬鹿はなぜ終わるまで待てないんだ…と内心で毒づきながらも、なんとか平静を装って顔を上げる。時計に目を向けると丁度解散の予定時刻となったため一先ずはレドへの返答を保留し、形式通りの文言で会食を締め括った。暫しの拍手喝采の後に来客達が帰路についたタイミングでようやくアリシアはレドの元へ歩み寄る。)
驚かせてしまい申し訳ありません。ソレは本日レド殿の送迎を担当する騎士でして…もし、道中でご不快に感じることがあれば殴っていただいて構いません。
(開口一番にアリシアは丁寧に頭を下げてシエルの粗相を詫びると、申し訳なさそうに頬を掻きながら、シエルがレドの送迎を担当する旨を伝えた。あえて名を呼ばず「ソレ」と物のように例えたのは、断じて親しくはないという一種の意思表示であろう。その後に告げられた「殴っていい」という補足からかなりの嫌いようが窺える。)
うわーん!それはあんまりっすよ!…殴らないっすよね?ね…!?
(アリシアからのあまりに酷い扱いにシエルは大袈裟に泣いて抗議するも、まるで聞こえていないかの如く彼女からの反応はない。取り付く島もないと悟るや否や、今度は標的をレドに変えて、なんとしても殴らない確約を得ようと瞳を潤ませて詰め寄った。)
>726
レイラとダンテにクレアの足止めを任せて、その隙にレドがジェラルドを狙うのはありかもしれませんね!ただ、契約上の「ジェラルドの不利益」に該当するためクレアの口からはその関係性を明かせない為、如何にしてクレアとジェラルドの関係を突き止めるか、そこが一番の関門になりそうです。
>725
私はまぁ、たまに果実酒を飲むくらいですねぇ…あ、度数が低い奴ですよ?んー…それじゃあお言葉に甘えて、一杯いただきますね
(自分も酒を飲むと言えば飲むが、そこまで頻繁に飲んだりはしない程度だ。決して酒が嫌いというわけではないが、誰かとの付き合いで飲むくらいだ…飲むお酒の度数も高い物ではなく、市販で売られているくらいの度数の酒を好んで飲む。ティアに飲酒を勧められると、ティアは未成年な上にお酒に興味がなさそうだから大丈夫だということと、流石に酔っ払う程飲むのは良くない…何より、酒が好きなクレアは今飲めない状況なのに自分だけそんなに飲んだらよくないと短い時間で考え、ティアの計らいに感謝しながら嗜む程度の量をいただくと笑みを浮かべながら告げて。立ち上がって酒が置いてあるテーブルまで移動し、見たことない酒や自分が通ってる酒場に置いてある高い酒がある中から自分が知ってる果実酒の瓶を見つけて、手に取り栓を抜き。思いの外勢いよく上に飛んだ栓をキャッチして、グラスに注ぎ。色は先程ティアが飲んだ果実酒とは違い、白い。)
(/なるほど…でも言い換えれば、契約書さえどうにかできればクレアとの戦闘を回避できますよね?私のキャラとレイラとダンテと協力するとして、壁役はダンテと不死者のエレオノール、残ったメンバーで剣を奪う等して無力化して時間を稼ぐ…問題は契約書を見つけることですが…)
>727
(アリシアの締めの挨拶が始まった。長かった……ようやくこのクレアさんの皮を被った魔物の巣から抜けられる。そう安心するとほっと一息吐いて拍手に加わる。それから壁にかけた刀を腰に差し直すと、改めて二人に顔を向けて。)
……アリシア様、本日は誠にありがとうございました。一介の冒険者に過ぎぬ私めに出席をお許しいただけたこと、光栄の極み。
剣術指南の件はレイラと相談の上、追って御返事差し上げます。レイラから色好い返事を取り付けられるよう努力しましょう。我らは深い仲になれそうですから。ふふふ……
(すがりつくシエルには一瞥しただけで口を利かず、アリシアに一礼しながら感謝の言葉を述べて。拉致の方便でしかない剣術指南の件も改めて返事するとした上で、先の密談の内容を踏まえた含み笑いを浮かべ、アリシアに期待を持たせてみる。そうしてお礼の言葉を言い終えるとようやくシエルを見下ろして。だがその眼光はアリシアに対する落ち着いた眼差しとは全く異なる、餓えた狼のようなギラついたものであった。)
……というわけです。レイラの特使たる身どもの案内、くれぐれもよしなに頼みますぞ……シエル殿。
(結局レドも殴るか否かに答えないまま、シエルに口を開き。言葉こそ改まっているが身体中からは「はよ案内しろ」と言いたげな荒くれのプレッシャーを放っている。アリシアと違ってシエルは屈託の無い良い子に見える。が、国王直属の近衛隊など実質アリシアの私兵。この子がアリシアの手先である可能性は捨てきれないと、まだ心を許してはいないのだった。)
>728
(/簡単に解決する問題じゃなさそうですね。もう魔を統べし者そっちのけで討ちに行きたくなりますが、当面はアリシアとレイラをなんとかします。クレアの気が少しでも晴れるように……)
>729
先程とは色が違うようですね…ご迷惑でなければぜひご感想をお聞かせください。人の体験を聞くのは私の趣味のようなものでして。
(ミミが酒をグラスに注ぐ姿をティアは興味津々といった様子で身を乗り出して覗き込み、先程とは色が違うというだけで随分と感心していた。色々と制約の多い身の上故に人の体験を聞くことに数少ない娯楽を見出しているようで、まだ飲んでいないにも関わらず感想をせがむティアの瞳は珍しく子供のように輝いていた。)
>730
ええ、それではまた近いうちにお会いしましょう。ふふっ…
(レドの含み笑いに、これは思いのほか期待出来そうだとアリシアは同じように含み笑いで返して、会場を後にするレドを見送った。「近いうちにお会いしましょう」と言うからには、傲慢にもアリシアの中ではレドが指南役を引き受けることはもはや確定事項なのであろう。二人だけの秘め事を前にして、若干の嫉妬を覚えたシエルは不服と言わんばかりに頬を膨らませていた。)
ひえっ…で、ではご案内するっすよ~…ええと、レド殿…?なにやら警戒しているようですが、心配はご無用っすよ。私、悪巧み出来るほど頭が良くないので…たはは。もし、信用ならないのであれば剣を預けてもいいっす。
(向けられた狼のような眼光にシエルは身震いすると、なにやら急かされているようなプレッシャーを感じ取り慌ただしく案内を開始した。馬車へ向かう道中、相当に警戒されていることを察して少しでも距離を縮めようと、後頭部に手を添え困り顔を浮かべて渾身の自虐ネタを披露する。無論、ふざけるだけでは信用は得られないと考えているシエルは加えて真っ直ぐにレドの瞳に視線を向けると、騎士の命とも言える剣を預けてもいいと提案した。初めて会った無名の冒険者を相手にここまで気を遣うあたりシエルの本質は余程の善人なのだろう。ただ一つの大きな問題点は、アリシアの物と同様、腰に携えた剣の鞘に聖教国の国章が刻印されていることで胡散臭さが拭いきれないことである。)
>732
なにっ……!
(アリシアに一礼してから会場を去ると、シエルの大胆な提案に足を止め、目を見開いて。この子も剣に聖教国の国章を帯びているし、普通なら信用ならない。だが自分を見据えるその真っ直ぐな視線……レイラみたいな裏表のない瞳に賭けることにすると、「そういうことはしなくていい」とばかりに手を突き出して。)
わかったわかった。その誠意、信じるよ。ま、殴りゃしないがお行儀よくしてるのもいい加減疲れた。こっからはお互い敬語抜きと行こうじゃないか。
というわけで、よろしくなシエル。俺の方も呼び捨てにしていいから、さ。
(突き出した手を下げると敬語を止め、お互い敬語抜きで話そうと求めて。表情も視線も柔らかくなった。レイラにアリシアと、敬語を使うべき相手が続いたから気安く話せる相手が欲しかったのもあるが、何よりシエルとはいい友人になれそうな気がしたのだ。終いには俺の方も呼び捨てにしていいからと、手を突き出して握手まで求めて。
普段は近寄りがたいが、心を許した相手には気さくに接する。レドの気性もレイラに通ずるものがある。)
>733
やっと殴らないって言ったっすね!いやぁ、ヒヤヒヤしましたよー。それじゃこれからよろしくっす、レドくん!あ、この喋り方は気を使ってるとかじゃなくて単に楽だから使ってるだけなんで気にしないでほしいっす…
(遂に念願であった殴らない確約を得たことを冗談交じりに安堵して見せると、レドの警戒が解けたことにシエルは忌憚のない笑みを浮かべて喜んだ。差し出された手を両手で握り返し、ぶんぶんと上下に振りながらまるで友達のような距離感でレドの名前を呼ぶ様は例えるなら懐いた犬に近いかもしれない。その様子とは裏腹に存外自己肯定感の低いシエルにとって、提案された呼び捨てと敬語抜きという条件はハードルが高かったようで、申し訳なさそうに眉尻を下げて理解を求めた。)
>723
ん~…あ!この依頼が良さそうかも~!…けど、推奨人数2~4人かぁ~。誰かいい人は~……?
(ギルド内にある依頼書が貼られた掲示板をジッと見ており、良さそうな依頼がないかと探していたところ…1つの依頼書に目が止まり。幸いSランクの依頼ではなくAランクの依頼だったため、自分でも受けられる……と思っていたが、推奨人数が2~4人と書かれていることに気づき。仲間内ではこういった依頼でも平気で1人で行ったりする者も居るが、流石に自分1人で行くのはキツいだろうと判断し。後ろを振り返って一緒に行ってくれそうな人を探していると…食堂の隅にある1つの席から、ボヤの如く煙が上がっていることに気付き。よーく見るとその席に一人の青年がついてるのが見えて、流石に危ないと判断したウラルは愛用しているマグナムを引き抜いて構え)
…付呪・水弾(エンチャント・アクアバレット)
(マグナムに属性をエンチャントし、煙の元…ロウソクと手紙に狙いを定めて引き金を引き。銃口から水の弾が放たれロウソクに向かって真っすぐ飛んでいき、距離があったにも関わらず見事に命中し、消火に成功して)
ダメだよぉ、ギルド内でボヤ起こしちゃ~…
>731
ふふ、もちろんいいですよ?さっきの果実酒とは違って、こっちは白ブドウが使われてるんですよ。その果実酒にミルクを組み合わせているのがこの果実酒で、他の言い方をするとリキュールとも言いますよ。
(自分が注いだ白い果実酒に興味津々な様子のティアに微笑みながら、白い果実酒…リキュールについて簡単な説明をして。制約まみれの身だから、人の体験を聞くことが趣味になるのも無理はないだろう…いつもハイライトがない瞳が輝いており、子供のように思える今のティア見ては笑みを浮かべ、グラスを傾けて自分の口の中にリキュールを注ぎ)
ん~…!ミルクがベースなのに果汁の風味が強く感じられて、シロップの甘さも加わって飲みやすい!
(いつも飲んでて親しみのある味なのだが、それでも飽きないリキュール。果実酒に比べてミルクやシロップが加わることによって飲みやすくなり、女性に人気のお酒。笑みを浮かべて感想を言い、腰に巻いている尻尾が一瞬だけ緩みそうになるがなんとか耐えて)
>734
ハハ……こんな犬みたいな騎士見たことないが、まあ好きにすればいいさ。
シエル。言ったろ、俺は「レイラの特使」だと。使いに出た客先で乱暴なことして、レイラさんに恥をかかせる真似はしない。お前の事も決して殴らないから、安心して案内してくれ、な?
(苦笑いしながら、自らの手を両手でブンブン振るシエルを眺めて。その姿は尻尾を振って甘える犬に見える。レイラさんを御主人(クレアさん)に甘えるのが好きで……少々噛み癖の悪い大型犬とするなら、この子はまるで活発で人懐っこい小型犬のようだ。その光景は満更でもないようで、喋り方の件も好きにすればいいとシエルに任せることにして。適当なところで手をほどくと、レイラの手前絶対殴らないと約束しつつ、さっきまで握手していた手をポン、とシエルの肩に置き、案内の続きを促して。)
>735
あれ、襲撃?
(また一つ手紙を燃やそうとロウソクに近づけた瞬間、水の弾によって消火される。
ボヤ状態…煙の中で過ごすのにすっかり慣れた事で単なる消火活動だと思い至らず。暗殺や襲撃にしては殺意や敵意の感じない発砲を不思議に思いつつ、着弾直前に見えた弾頭の向きから弾道を推測。発砲元が居るであろう方を見て見れば、マグナムを持った一人の人間を視界に捕らえる。)
それにしては…半端だね。
(射撃には短いとは言えないが暗殺や襲撃には半端に思える距離に首を傾げつつ、相手方へと歩き出す。途中、敢えて人混みの中に突っ込み気配を消し、周りに溶け込む事でテレポートしたかのように姿をくらます。)
やぁ、お姉さん。いきなり撃たれると思わな………不思議な匂いのする人だね?
(そうして隠密技術を駆使して相手の背後まで辿り着く。そして相手の耳元まで腰を折って囁くように声を掛けたのだが…普通、人間からは感じない匂いを仄かに感じ、思わず匂いを嗅ぐも、何の匂いなのか判別出来ず、当人の目の前で首を傾げる。)
>738
…あれぇ~?見失っちゃったぁ…何処行っちゃったんだろぉ~…?
(席から立ち、確かにこちらに向かって歩いているのは見えた…だが、人混みに紛れてから見えなくなってしまい。蛇の半獣人であるウラルにも、赤外線が見えるピット器官があるのだが、人混みに紛れてしまっては意味がない。何処に行ったのだろうかと周りをキョロキョロ見回して探しており。)
…!びっくりしたぁ…いきなり撃ってゴメンねぇ?けど、あのままは流石に危ないかなぁって…
(声をかけられるまで自分の背後に探している人物がいたことに気づかなかったようで、驚いた表情で振り返り。正直どうやって気配もなく自分の背後まで来たのかが気になるが…アヤトの方に向き直りいきなり撃ったことを謝罪して。変わった匂いに関しては「それは…というか、安易に女の子の匂いを嗅がないの。」と、教えようとしたところで見ず知らずの女性の匂いを嗅いだことに対して注意して)
>736
ふふっ、ご用意したものを堪能していただけて嬉しい限りです。甘いお酒…私もいつか…
(美味しそうに酒を嗜むミミの様子を見て、思わずティアまで笑顔がこぼれた。なんとか酒だけでも楽しんでもらえたことに安堵と嬉しさを感じながらも、いつか自分も飲めるようになりたいと、ほんの僅かに憧れを抱いた。小声ながらその感情をつい吐露してしまったことに気が付くと、ティアは慌てて周囲を見渡す。幸い司祭たちに聞かれていなかったことを確認すると、胸を抑えて今度はべつの意味でも安堵する。)
>737
へへ、すみません…嬉しくてつい。
(案内を促されるとシエルはハッと思い出したような表情を浮かべた。その反応からレドと分かり合えたことに浮かれて本来の目的を忘れていたことが丸分かりである。悪い奴ではないがどこか抜けている。シエルは所謂天然なタイプで、アリシアが最も嫌う部類の人間であった。だからこうしてアリシアから出来るだけ遠ざけた仕事を割り振られているのだろう。最初に抱いた怖い印象とは裏腹に思いのほか紳士的な様子を見せるレドに安堵しつつ、シエルは苦笑いを浮かべて一言謝ると馬車への案内を再開した。)
ささ、こちらっすよ~。どうぞ先に乗ってください。
(しばらく歩き料亭から少し離れた位置に停車した馬車に辿り着く。近衛隊の所有する馬車だけあり要人を乗せる機会が多い為か、民間の馬車とは異なり精巧な装飾が施され整備も行き届いている。シエルは馬上に跨る専属の騎手に行き先を伝えると、馬車の扉を開けてレドに乗車を促す。一介の冒険者がまず体験することはないであろう特別待遇であった。)
過去編「副団長は人の心が分からない」
(王国騎士団副団長エリス・フィンベルとの出会いは幼少期まで遡る。当時六歳のクレアは慕っている兄の訓練を見学する為に騎士団の訓練場に足を運んでいた。ご丁寧に日除けまで用意された特等席から兄に声援を送っていると「失礼するよ」と、見とれてしまう程整った顔立ちのエルフの騎士が隣に腰掛けた。)
いやぁー今日は暑いねぇ…日差しに居たら溶けちゃいそうだよ。
クレアは知っていますよ!このくらいでは人は溶けません。だから安心して訓練の続きをなさってください!
……あちゃー、厳しいなぁ。こりゃ将来有望だよ。ハァ、ライデンの跡取りの手前、偶には頑張りますかー。
(隣に座るエルフは汗一つかいていないにも関わらず、気怠げな様子でわざとらしく自身の顔を手で仰いでいた。あからさまなサボりに対して幼いクレアは頬を膨らませて激を飛ばす。数秒、エルフは沈黙してクレアの顔を見やると、ニッと口角を吊り上げて芝居がかった仕草で頭を掻きながら訓練場へ戻っていった。面倒臭がりでちょっと変わったエルフのお姉さん。ほんの少しの会話でクレアが抱いたエリスの印象はおおよそその程度であった。このエルフこそが王国騎士団の副団長であること、そして兄を指していると思っていた「ライデンの跡取りの手前」という言葉の本当の意味を知ることになるのはそれから二年後のことである。)
(フリード共和国との戦争で兄が戦死した。ライデン家の長男の葬儀だけあり執り行われた式の規模はそれなりのものであった。何名かの王族や騎士団の重役が来賓として参列する中に見覚えのあるエルフの騎士が並んでいることにクレアは驚愕する。もしかしてとんだ失礼を働いてしまったのでは…と兄を失った喪失感の傍らに要らぬ不安まで抱きかけるが、その不安は後のさらなる衝撃に掻き消されることとなる。会場の前方に並べられた来賓用の席、嫌でも目立つ位置にも関わらずエリスはあろう事か目を瞑り平然と居眠りに徹していたのである。愛する兄の葬儀でのあまりに非常識な態度に怒りを覚えたクレアは式後に人の波を掻き分けエリスの前に立ちはだかると、キッとエリスの顔を睨みつけた。恨み言の一つでも言おうと口を開こうとした刹那、先に告げられたエリスの言葉にクレアは呆気にとられて目を見開いた。)
おめでとう。これで晴れて君が後継者だね。
(如何とも感情の読み取れない貼り付けたような笑みで告げられたのは、そんな祝福の言葉であった。あまりに場違いな発言にクレアは唖然として固まってしまうと同時に二年前のあの言葉を思い出す。「ライデンの跡取りの手前」、これがもし自分に向けられていたのだとしたら目の前のこの女は兄の死を予見していたことになる。この女には何が見えている…?この女は何を考えている…?この女が…兄の死を仕組んだ…?様々な思考が頭を巡り終える頃には、クレアは目の前の得体の知れない存在に恐怖し完全に萎縮していた。そんなクレアの様子を気にも留めずエリスはクレアの頭に手を伸ばした。拒みたくとも身体は恐怖で動かない。「ひっ…」と情けない声を上げて目を瞑ると、ドゴッと鈍い音が響いた。)
痛いなぁ…何するのさ。
(目を開けると目の前にいた筈のエリスは距離にして数メートルほど先に吹き飛び、赤く腫れた頬を抑えながら床に這い蹲っていた。そして、自身を包む暖かな感触にクレアは顔を上げると、父親が自分を守るように抱きしめ鬼の形相でエリスを睨みつけている。どうやら一連の流れを目撃した父親がクレアの元へ駆け付けエリスを殴り飛ばしたようだ。まだ幼いクレアも父親を抱き返し、安心感から父親の胸借りて年相応に泣き出した。)
貴方というお方は…人の死を慈しむ場で何故にそのようなことを言えましょうか。亡き息子の名誉の為にも…発言の撤回を強く求めます。
はぁ…意味が分から…ブッ
この度は本当に申し訳ないッ!この馬鹿には私からキツく言い聞かせる。私に免じてこの場はどうか抑えてほしい。
(序列の関係もあり言葉を選びながら、それでも隠しきれない怒りを滲ませながら父親は発言の撤回を求めた。息子の名誉を思えば、その死を祝うような発言など到底容認出来るものではないであろう。対してエリスはきょとんとした様子で床に腰掛けながら本当に理解出来ないといった態度で食い下がるが、言葉を言い終える前に顔が床にめり込んだ。騒然とした場を収める為に騎士団長すらもこの場に駆け付けたようである。騎士団長はがっしりとエリスの後頭部を押さえつけながら、監督者として自らも土下座をしてみせた。そこまでされては父親もこれ以上の追求は叶わず、一先ずその場は解散する運びとなる。後日、発言の撤回を明記した副団長名義の正式な謝罪文が届いたことで騒動は完全な収束を迎えたという。しかし、クレアにとってはそれは表向きの解決に過ぎない。兄の死の真相、あの女にそれを問い質す為にもクレアは騎士団で相応の地位に登り詰めることを胸に誓った。)
クレアとド畜生エルフこと副団長の馴れ初めを投稿しました。ちょっとサイコ気味の副団長の思惑は如何に!副団長の今後の活躍に乞うご期待です(o^^o)
>741
へぇ、こりゃすごい。剣術指南になれば御家流の箔がついて、しかもこれに乗って仕事できるわけか。それでアリシア様が隣で……俺に……はぁ、何でもない。お先。
(そこらの物とは一味違う近衛隊の馬車の見事さに、顎に指を当てながら感嘆して。近衛隊の剣術指南になれば、自らの剣が王国公認の御家流という名誉を授かる上に、優雅な仕事と生活が保証される。レドはこの馬車にこそ武芸者の到達点を見て最初は目を輝かせていたが、やがてげんなりし始めて。この馬車にアリシアがふんぞり返って「レド殿?指導の成果が一向に見られないのですが。このままでは貴方をアレと同じ雑用係に…前方に獣人?汚らわしい。轢き潰しなさい。」などとグダグダ説教を垂れながら野蛮な命令を下している光景まで想像してしまったのだ。気持ちを切り替えるべくシエルに促されるまま馬車に乗り。何の躊躇いも無くシエルに背中に見せるのは信頼の証だ。)
それで行き先は?デュランダルの冒険者ギルドだよな。今日は現地泊して、明朝はギルドでシエルの入会手続しないとな。ハハッ!
(馬車に乗り込むなり、シエルに行き先の確認ついでにジョークを飛ばして。口調や顔は子供のように朗らかだが目は笑っておらず、ジョークと言っても半分本気だ。レドはシエルがアリシアの下でこのまま使い潰されるより、冒険者に転職して自由を得るべきだと考えていた。クレアのように。)
>739
おっと、ごめん。つい癖で…と言うか危ない?…ああ、煙の事か、手間をかけたみたいだね。何か消火の礼になる物あったかな?酒は…駄目だめだよね。んー………誰か消して欲しい人とか居る?
(注意を受けて、相手によっては騎士団に突き出されても可笑しくない行いにしては軽い目の謝罪をしつつ姿勢を戻す。席のボヤ状態にもようやく気づいたようで、消火の礼と先程の謝罪も兼ねて何か礼品になりそうな物を考える。が現金と席に持ち込んでいた酒類しか手持ちが無く、実年齢と見た目の差にも気づいていないようで。
ここまでの冷静な対応が嘘のように悩み顔で頭を捻った挙句、公の場でトンデモ発言が飛び出す。)
>744
勿論ギルドっすよ……って!?ムリムリッ!ムリっす!私に冒険者なんてとても努まらないっすよ…それに…
(行き先を尋ねられるとシエルはドヤ顔にも見える自信満々な表情でギルドだと答えるも、その後に続けられた言葉にはレドの目が笑ってないことも相まって慌てた様子で首をブンブンと横に振って否定した。少しのミスが命取りになる冒険者という職業に要領の悪い自分は向いてないと、シエルは本気でそう考えているが理由はそれだけではない。何よりも欠かせない近衛隊に入った明確な目的があったからだ。)
私はアリシアちゃんを助けたい…そのために近衛隊に入ったっす!
(シエルは再びまっすぐな瞳でレドを見つめると自身の胸に手を当てて、近衛隊に入った理由を高らかに宣言する。助けたいと一重に言ってもこの発言だけでは抽象的なことしか分からないが、その覚悟は確かなものであった。言い終えると同時に馬車はデュランダルへと向け発車する。)
>740
ありがとうございます聖女様、高いお酒もいいですけどやっぱり私は甘いお酒の方が好きですねぇ~。…此処から出て、大人になったら必ず飲ませてあげますよ。
(決して度数が高い酒が飲めないわけではないが、どちらかといえばミミは度数が低く甘い酒が好きらしい。度数が高い酒が好きなクレアとは正反対だ…ティアが小声で吐露した願望をミミは聞いており、ティアの反応から自分以外今の願望が聞こえてなかったことがわかる。ティアにだけ聞こえるように、小声でこの聖教国から連れ出し、成人してから必ず甘いお酒をご馳走すると約束して)
>745
治した方がいいよぉ、私だったからよかったけどぉ…人によっては騎士団に通報しちゃうからねぇ。ん~…お礼をしてもらうほどの事はしてないけど~…折角だから貰……こら、そんな冗談言わないのぉ。それにぃ、そんな人今のところ居ないし~…。
(癖…ということは、気になる人が居たらいつも匂いを嗅いでるのだろうかという考えが過り、騎士団につれてかれるなんてことが起こる前に治した法がいいと告げて。正直お礼を貰う程のことはしてないと思ってはいるのだが…折角何か貰えるのだから貰おうと言いかけたところ、耳を疑うような発言が聞こえてきて。本気で言ったのだろうかと一瞬考えたが…こんな公の場で言うのだから冗談だろうと判断し、先程同様注意して。「それと、私はもう成人してるからお酒は飲めるよ」と、笑みを浮かべながら告げて。どう見ても未成年に見えるのだが…)
…そうだぁ、あなた等級は~?
(自分が今手に持っている依頼書のことを思い出し、お礼も兼ねて一緒に依頼を受けてもらおうかと考えており。先程気配もなく自分の後ろに移動したのは固有魔力か何かかもしれないと考えるが…それでも、人より五感が優れて探知能力も備わっているウラルに気づかれることなく背後に立った辺り、相当な実力者かもしれないと考えて。ウラルの見立では、この青年は少なからずA級以上の実力は持っている…)
>746
(「アリシアちゃんを助けたい」。シエルの並々ならぬ覚悟を聞き届けると笑うのを止め、口を真一文字に結んだ真剣な顔でシエルを見つめ返して。馬車が動き始めたのに合わせて壁をコンコン叩き、防音性能の高いことを確認して。流石に要人の乗る車、普通に会話しても御者には聞かれまい。そう判断したところで腰から外した刀の鞘を床にガン!と突き立て、口を開き。)
「兵卒風情が無礼ですね。ライデン閣下と呼びなさい。」
……奴はお前をそんな風にしか見てなかったけどな。その口ぶりからして奴とは古い友人、騎士学校の同窓といったところか。何があった?
(刀の鞘を握りしめ、シエルを鋭く見下ろしながらアリシアとのいきさつを問いかけて。二人が旧友の間柄なのは間違いない。しかしシエルには可哀想だが、アリシアの方はもうシエルに何の情も抱いてないだろう。思い出すのは先輩騎士の話、アリシアの親父がクレアさんを追い出して以来、あの女が豹変したという話だが……)
>747
…楽しみにしていますね。
(ミミの魅力的な提案にティアはお上品に口元を隠して笑みを浮かべると、同じく周囲を警戒して囁くような小声で返答した。まるで司祭達にバレないように悪戯をしているようで、このスリルすらもティアにとっては新鮮な感覚であった。)
ふぇぇ…疲れました…
(長いお説教からついに解放されたクレアは会場に入るなりフラフラとした足取りでミミに歩み寄ると、だらんと身体を預けて隣に腰掛ける。長いこと酒浸りだった身体に年甲斐もなくお説教をされ余程応えたのだろう。もはや動く気力もないといった様子でボーッと天井を仰ぎ見ていた。その様子を見てティアも思わず苦笑いを浮かべた。)
>749
お察しの通りアリシアちゃんとは騎士学校からの付き合いっす…初等部からルームメイトだったんで幼馴染みたいなもんっすね。アリシアちゃんは本当は良い子なんです。口癖みたいに「家名に恥じない成績を残さないと」って自分を追い込んで、毎日毎日夜遅くまで勉強して、剣を振るって、自分のことで精一杯なのに私の勉強まで見てくれて…そんなところが…大好きで…
(シエルは拳をギュッと握りしめて、過去を懐かしむような切ない表情でアリシアとの馴れ初めを語る。思い出の中のアリシアとは違い、レドの指摘の通り今のアリシアは自分に対して酷く冷たい。思い出を辿る度にその大きな相違に胸が締め付けられ、終いには耐えきれずにシエルの瞳からは大粒の涙が溢れた。)
なのに…卒業試験の日を境にアリシアちゃんは変わりました…習ったこともない剣技で試験官を圧倒して、労ったらしばらく起き上がれなくなるくらい殴られて……こんなのはどう考えてもおかしいっすよ…!きっと…アリシアちゃんには悪魔が取り憑いているんです…!
(嗚咽を抑えながらもシエルは必死に言葉を紡いでアリシアが豹変した日のことを語った。突如として修めていない筈の流派を使いこなし、親友同然の幼馴染に手を上げたにも関わらず、シエルの口ぶりからこれといった予兆があった訳ではないらしい。このあまりの豹変ぶりから何らかの外的要因があることは確かだが、シエルは迷いのない瞳でそれを悪魔によるものだと語気を強めて主張した。悪魔に取り憑かれたという話は長い歴史を見ればなくはないが、どれも昔話の類いで創作の域を出ない眉唾ものである。しかし、可能性に留めず断言したからにはシエルは確信に至る何かを感じ取ったのだろう。)
流石に騎士団沙汰は困るね、気をつけるよ。アハハッ!冗談が過ぎたかな。…もしかして、いや、まぁ、飲めなら東国の酒で持っこようかな。
(表の世界でも騎士団に追いかけられるのは流石に困るので素直に忠告を受け入れる…が、基本使えない左目の補助として嗅覚の代用が染み付いているので治るのかは怪しいが。裏の世界では対価として通る暗殺が、冗談として受け取られた事に思わず笑ってしまう。それはそれとして、公の場なのを思い出して冗談だと誤魔化しておく。成人済み発言と不思議な匂い…2つの要素が合わさって、人間では無い…と結論を口にしかけるが、ここまでの失礼千万を思い出して言葉を飲みこむ。
そもそも、未成年飲酒を咎めるような真っ当な人間でも無いので、成人済み発言は半信半疑ながらあっさり受け入れる。)
Bだよ。ああ、成る程。別にBより上の依頼も受けるからA級の依頼でも必要なら付いてくよ。ギルドの等級制度は緩いから僕なら通るでしょ。
(ちらっと見えた依頼書からA級の依頼である事は見えたので、B級以上の依頼でも問題ないと伝える。結局、特に礼になる物は渡せていないので代わりを兼ねて手伝いが必要なら手を貸すつもりのようだ。どうにも等級以上の依頼の受注は常習的のようで申請が通る確信まで持っていた。)
>749
(アリシアの騎士学校時代の話にウンウンと頷きながら耳を傾けて。昔はいい奴だったのは本当らしい。しかもあのクレアさんと競う宿命を背負いながらルームメイトの面倒まで見るとは、出来た友人だ。友達か、いいなぁ。俺も友達とパーティを組んでいた頃は楽しかったな……と思いを馳せていたが、アリシアが豹変した日に話題が移ると、「卒業試験の日だと!?バカな……」と愕然として刀を取り落して。)
……ごめん。辛い話させた。ともかくその真相を探るために近衛隊に入って今に至るわけだな。俺は同じ運命に遭った時何もしなかった。その方の苦しみに寄り添うこともせず、苦しむ姿を遠巻きに眺めるだけで、失望の眼差しすら向けた。それに比べりゃお前は立派だよ……
(シエルの語る姿はあまりに辛そうだ。もう見るに見かねて、落とした刀もそのままに、辛い話の詫びとしてハンカチを差し出して。肩を丸めてシエルに目線の高さを合わせ、手の平を彼女の肩にそっと添えて労わって。憧れのクレアが堕落した姿に絶望した身の上としては、大事な幼馴染が悪魔に変わり果てた現実に耐えられないシエルの苦しみ、察するに余りある。というか何の手がかりも無いのにアリシアを救うため動くとは俺より立派だ。
……とはいえ未だ何の手がかりも掴めてなさそうだ。無理もない。豹変したのが卒業試験の日なのはおかしい、権力を手にして変わったのではない!クレアさんと違って剣の話は何も聞かないのに、それだけの剣技が昨日今日で身に付くはずがない!何をどうしたらこんな変わり方をするのか?悪魔の仕業だとしても、誰が何のために、なぜアリシアを!?レドにもさっぱり見当がつかず、労いの言葉から先は何も口から出てこない。視線もただ呆然と、床を眺めるばかりで。)
>750
(ティアの返答を聞けば「任せといて」と言うように、ニッと笑って見せて。とは言ったものの、簡単なことではない…まずはティアの情報を手に入れること…両親の場所がわかったとして、どうやって向かうか……護衛でこの国に来た以上、ユリウスと一緒ならある程度自由に動けはするが、場所によっては厳しいだろう。何より、両親が脱出に応じてくれるか……)
…あ、おかえりクレア。お疲れ様、相当応えたみたいだねぇ……
(そうしていると、長いお説教から解放されたクレアが戻ってきて。無気力に天井を見ている姿から、余程お説教が応えたのがわかり苦笑いを浮かべてお疲れ様と言いながら軽く頭を撫でて。この後飲みに行く約束だが、行けるだろうかと静かに考えており。)
>752
そういう冗談を真に受けてぇ、本当に依頼する人だってきっと居るだろうし~…トラブルになるから気をつけた方がいいよぉ?東国のお酒って確かぁ…「ニホンシュ」とか「ショウチュウ」っていうお酒があるんだっけぇ~?気になるけど~…私はぁ、リキュールみたいに甘いお酒がいいなぁ~。
(やはり先程の発言を冗談と思っているようで、こういった冗談を信じる人もいるから気をつけた方がいいと告げて。目の前の青年が実は暗殺者だということには気づいていない。青年がウラルの発言から何かに気づいたような発言をしかける…恐らくウラルが人間ではないことに気づいたのだろう。発言を途中で止めたのは失礼だと思ったからだと判断して、東国の酒の話で飲んだことはないが名前は知っているようで思い出すように話して。だが、好きな酒はリキュールのような甘いお酒だと明かし、若い子みたいなことを言う450歳。)
…B??実力はもっとありそうなのに……ちなみに、自分の等級よりも高いクエストを受ける時はその依頼と同じ等級の冒険者が居れば問題ないんだよ~。
(てっきり青年の等級がAかSだと思っていたウラルは不思議そうな表情で首を傾げて。自分の等級よりも高い依頼をよく受けているのが実力があるなによりの証拠だろう。等級以上の依頼を受けてることに注意しようかと思ったが、ウラルの仲間にもA級なのに多人数推奨のSランクの依頼を無断で受ける常習犯がいるため、そのことには触れず。)
それじゃあ、一緒に依頼を受けて~!私はサポート向きだから、単独は難しくてぇ…あ、私はウラル。このギルドの近くでアクセサリーショップを開いてるA級冒険者だよぉ~。
>753
ありがとう…そう言ってもらえるとなんだか心が軽くなった気がするっす…私は絶対に諦めない。だからレドくんも諦めないで欲しいっす。二人で望む未来を手に入れましょう…!
(預かったハンカチで涙を拭うと、泣いたせいでまだ若干赤みがかったままの瞳で柔らかい笑顔を作り、励ましの言葉に「ありがとう」と礼で返した。そして、レドが自身と同じような境遇にいることを知ったシエルは今度は自分が励ます番だと考え、上目遣いでレドの顔を覗き込んで激励の言葉をかける。困難を前にした時、一人であれば不安に押し潰されるかもしれない。しかし、二人なら支え合えると信じて。)
あれ…?まだギルドまでしばらくかかる筈っすけど、何事でしょう?
(王都とデュランダルの境界付近、見渡す限りの草原が広がるこの場所で徐に馬車は停車した。明らかに不自然な停車にシエルはキョトンとした表情で首を傾げると、すぐに状況を確認すべくドアを僅かに開けて顔だけ覗かせて何やら騎手と会話を交わす。話し終えレドに向き直ると、シエルは眉尻を下げた困り顔を浮かべて状況を説明した。)
ここから少し行ったところで行商人が野盗に襲われているそうで…道を変えるか、助けに行くか、どっちがいいっすか…?
(どうやらこの先に野盗が出没していることに気が付いた騎手がそれを相談すべく一時停車したようだ。無論、撃退したとして何ら問題はないのだが、本来野盗の取り締まりなど近衛隊の仕事ではない上に客人の送迎という別の任務中ということもあり、シエルはその客人たるレドに判断を委ねることにした。)
>754
うぅ…お説教されたのなんて騎士団以来なので…あ、聖女様…先程は申し訳ありませんでした…
いえいえ、間違いは誰にでもあることですので。それに私こそよく確認すべきでしたので。
(クレアはミミの腕に抱きつき瞳を潤ませて完全に萎れていた。騎士団以来ということは少なくとも九年近くはお説教とは無縁の生活である。冒険者の仕事柄厳しい上下関係などはなく、余程素行が悪くなければ他人に説教させることはまずないだろう。根っこが優等生であるクレアは尚のこと説教に対する耐性が低いことは明らかであった。そして、クレアは思い出したように顔を上げると、シュンと落ち込んだ様子でティアに謝罪した。あまり客人に気を遣わせたくないティアは苦笑いを浮かべつつ、謝罪を受け入れると同時に自分の非も認めて一先ず自体は解決することとなる。)
>755
フフ…そうするよ。日本酒にも甘口もあったりするけれど…ああ、甘酒ってやつがあったね。
(あの煙の元が暗殺の依頼だと知ったらどんな反応するのか…なんて考えてまた軽く笑う。味覚は見た目に近い事に実年齢を掴みかねつつも、甘い酒の方が好きなら甘酒が良いだろと結論を出した。)
好きにやる分には今の等級で困らない…って、え?そーなの??なら、今日は受付のお姉さんに不審な顔をされなくて済むね。
(冒険者活動は暗殺業に比べて暇潰しや興味本位の面が強く、本腰を入れて活動するつもりは無い。その為、目立ち過ぎるS級やA級は目指すつもりも無く、敢えてB級で止めている事を匂わせる。等級関係なくソロで依頼を受ける事が殆どで正規の方法で上の等級の依頼を受けられる事を全く知らず、やや驚きを浮かべていた。)
じゃあ、依頼の受注は頼むよ。僕はアタッカーで良いのかな?おっとと、僕はアヤトだよ、よろしくね、ウラルちゃん。まあ、A級くらいはあるよね。しかも商人なんだね、趣味?副業?
(内容も聞かずに依頼を受けるのを承諾し、一応、自分の役回りだけは聞いて。カタギリの名前は裏の社会で使用しているのでフルネームを名乗るのは避けアヤトだけ名乗る。距離の離れたロウソクに正確に命中させる銃の腕前から等級には納得しているようで、むしろA級に昇りながら商人をやっている事に興味を示す。)
>756
ふふ、ほんといい奴だなシエルは。冒険者でないのが惜しいよ。お互い頑張ろうな。これからは俺もあの方のために頑張るからさ……
(自分も辛いのにこちらを励まし返してくれる。そんな優しいシエルに穏やかな微笑みを返して。言い終わると背もたれを座席に預け直し、ただ黙って、車窓を眺めて。柔らかでなめらかな座り心地のシートに身体を包まれると、「あの方」への想いが強くなる。騎士として誰より強く清らかでありながら騎士団に踏みにじられ、実家を追われ、こうしてデュランダルへ落ち延びざるを得なかった「あの方」の無念、とても推し量れない。
レドとシエルの望む未来は相反するもの。シエルが救いたい「アリシアちゃん」はレドにとっては排除すべき「逆賊」だ。「あの方」の安らぎとなる実家を取り戻すため、親父共々消さなければならない。だがその選択はシエルを裏切ることになる。そして、ここまで聞いたからにはシエルとの関わりから逃げることはもう許されない……という葛藤で眉間に皺が寄り出したところで馬車が不自然に止まる。シエルから野盗の報を聞くと、彼女へ向き直り。)
おいおい、近衛隊が客人に指揮を委ねてどうするよ……ま、愚問だな。迂回はかえって危険、賊を撃退するぞ。馬車で突っ込んで敵の目を引き付けろ。俺も出る。招待の礼に東刀(かたな)の芸、見せてやる!
(「客人に判断を仰ぐな。全部近衛隊(おまえら)が判断するんだよ!」という意味の苦笑いを浮かべて。そんな悪態を吐いている間、実際は自分も近衛隊の一員のつもりで思案していた。妙なタイミングだ、罠臭い。だが迂回するのも危険だ。何より「あの方」なら目の前の命を見捨てないだろう。客人の立場であったとしても進んで剣を取り飛び出すはずだ。そしてどんな罠が待ち受けようとも、自ら死線を潜り抜ける者でなければ「あの方」と同じSランクの域に立つことはできない!
ほぼ即決という形で淡々と口を開きシエルに指示を出して。そして落とした刀を拾い、手袋をギリギリとはめ出して。レドも戦う気だ。)
>759
へへ、それもそうっすね…では行くっすよ、レドくん!
(レドの決定にシエルは待ってましたと言わんばかりに自信満々な笑みを見せた。シエルの性格から元より商人を見捨てたくはなかったが今は客人の送迎任務中。本来であればレドの身の安全を最優先すべきたが、その本人が撃退を決めたのならもはや憂いはない。手筈通り野盗の群れに馬車を突っ込ませると、勢い良くドアを開けて野盗目掛けて飛び込んだ。)
どりゃー!後ろは任せたっすよ!
(飛び降りざまに目の前の野盗を蹴り飛ばすと、手早く剣を抜いて構える。今しがた無力化した野盗を除けば、敵は前方に五人、後方に五人、そして少し距離を開けて最後方に一人の計十一人だ。明らかに盗賊といった風貌なほかの野盗とは異なり、最奥の一人はフードを目深に被り全身は茶褐色のマントに覆われていた。フードの膨らみから人間と比べて明らかに耳が長く、身体のラインも併せて考えるにエルフの女だろう。手に持った剣をプランと地面に垂らして気楽に構えているが、ラフな様相とは裏腹にその一人だけ異様に太刀筋に隙がなく、かなりの実力者であることが窺える。そのことはシエルも見抜いているが、レドならきっと大丈夫だと全幅の信頼を置いて前方の五人と交戦を始めた。それと同時に後方の五人もレドに斬りかかる。)
>757
騎士団かぁ…クレアは真面目だし、あんまりお説教されることなかったでしょ?何してお説教されたの?
(ミミは冒険者としてのクレアしか知らないが、クレアが真面目なことはよくわかっている。寧ろ冒険者になって酒浸りの毎日を送っていた方が説教されそうな気がするのだが…それは置いておくとして。騎士団に所属してたのは冒険者よりも前、酒に溺れるなんてにはなってなかったはず…なら、何をして説教されたのかと問いかけて。ひょっとしたら、先程のようにドジをしてしまいそれがそこそこ大きい失敗になったのかと予想しながら萎れているクレアを撫でており)
>758
そうなのぉ?東国のお酒もこっちのお酒と似てるのかなぁ~…アマザケ?なにそれぇ、どんなお酒なの??
(こちらの酒にも辛口や甘口はあるのだが、東国の酒にも同様の物があることに少々意外そうな表情を浮かべて。東国の雰囲気から甘い酒はなく、寧ろ苦い酒ばかりなのではと思っていたようだ。青年が言った聞いたことないお酒の名前に興味津々と行った様子で問いかけて)
ん~…その感じだと、冒険者が本職ってわけじゃなさそうだねぇ。他に何かお仕事してるの?…あれ、知らなかったのぉ?じゃあ、今度からは他の冒険者と一緒に受けないとねぇ~。
(青年の発言から意図的にB級で止めていることがわかり、もし冒険者が本業だとしたら高額な報酬が貰える依頼を受けるためにもっとランクを上げるはずなのだが…いや、彼はランクとか関係なく依頼を受けているがそれでもランクを上げることに越したことはないだろう。だとすると、自分と同じで何か他の仕事をしてるのではないかという考えにたどり着き、問いかけて。高ランク依頼を正規の方法で受ける方法を知らない様子の青年に、恐らく今後も高ランクの依頼を受けるだろうと予想してふにゃりと笑いながら今後は他の冒険者と受けるように告げて)
ありがと~、ちなみに依頼の内容はぁ~…新たにダンジョンが見つかったから、そこの調査をすることだよ~。アヤトくんだね、よろしくねぇ~…そうそう、私って意外と強いんだからぁ。ん~…どっちもかな。私の幼なじみが商人始めて、その影響で始めたの。けど、アクセサリーとか装飾品も冒険者にとって大切でしょ?だから、本業並みに頑張ってるよ~。
(一緒に依頼を受けてくれることに笑顔でお礼を言い、ウラルが持つ依頼書を見せながら何の依頼なのか説明して。場所はこの都市から離れた場所で。Aランクの依頼にしては報酬が高い。恐らく、危険度がわからないためAランクを向かわせて様子を見るといった理由だろう。青年…アヤトの名前を覚えて笑みを浮かべながらよろしくと告げて、アクセサリーショップは趣味でもあり副業でもあると告げて。幼なじみ…ミミの影響、加えて自分の能力を生かせるアクセサリーショップを開き、装備を揃える冒険者達には特殊効果がついた装飾品は必需品であるため副業ではあるが本業並みに頑張っていると、ギルドのカウンターに向かいながら話して)
>760
??悪党は皆、「首狩り」に遭う。
この国の定めだ。お前らも永遠に眠れ。
(シエルの声に「了解。」と応えると、刀も抜かずに敵陣へ歩み出て。目下5人に奥1人、様子の違う奥の1人はリーダーか用心棒と見た。四方から5人の野盗が迫り来ると、それに合わせてレドの身体がふわりと、タンポポの綿毛のごとく夜空に舞う。空中で時計回りに一回転し、腰を沈めて着地したレドの右手にはいつの間にか刀が握られ、月明かりに照らされた刀身が東刀特有の柔らかい輝きを放っていた。
それと同時に5人の野盗が崩れ落ちる。5人はレドが放った抜き打ちざまの回転薙ぎにより触れることもできず急所を斬られ、斬撃の軌道上に野盗の武器があればそれは飴細工のようにへし折られていた。通常の1.5倍は長く作られた東刀と本人の長身が生み出す長いリーチによって敵の間合い外から一方的に斬り伏せ、生半可な受けは武器ごと叩き斬る。これがレドの東刀術の基本原理である。)
あてが外れて悪かったな?「首狩り」されたくなかったらこの国から出ていけ。
それとも……本当にその首落としてやろうか?
(5人をまとめて仕留めると東刀を肩にかつぎ、奥に控えるエルフの女を睨みつけ警告して。とはいえ一抹の不安は拭えない。おそらくあの女の強さは別格、相手も退かないだろう。何より……そもそもの懸念をぼそっと呟き。)
……商人はどうなっているんだ。嫌な予感がする。
>762
甘い酒と書いて甘酒。えーと…確かアルコールが入って無い米麹甘酒と微量入ってる酒粕甘酒…だったかな。人によっては割って飲むくらい甘いよ。米を使って作るから口の合うかは分からないけどね。
(詳しい訳では無いが昔読んだ本の記憶を引っ張り出して簡単な説明を行う。自分には甘ったる過ぎて飲まないが、相手には合うかもしれないと思いながらも同時に東国独自の物なので口に合うかは分からないと念を押しておく。)
まーね。何年経っても需要の無くならない、やる事同じで儲かる簡単な仕事だよ。他の冒険者か…ま、考えておくよ。
(他に仕事をしている事は隠すつもりも無いので肯定する。当然、暗殺者だとは教えないが、他の職業を騙る事も無く。幾らでも想像が出来そうな言葉で濁す。一人で依頼を攻略する事に楽しみを見出だしてる面もあり。故に検討するかのような言葉に反して、必要時以外はソロで攻略する今のやり方を変えるつもりは無かった。)
お、楽しそうな依頼だ。でも確かにこの依頼は僕でも一人だと骨が折れるね。ウラルちゃんが見つけてくれて良かったよ。へぇ!本業並みなんだ。今度、お店開いてる時は教えてよ、覗きに行くからさ。
(未調査のダンジョンと聞けば楽しみだと喜んで。流石に未調査のダンジョンを一人で攻略するのは楽しむ以上の労力がかかる。なのでウラルのようなA級のサポート寄りの冒険者と組んだ今回は運が良かったと思い微笑む。ダンジョンには内部で未発見の暗器のような役立つ道具類の入手を期待している為、金銭報酬の欄には一瞥くれる程度であまり興味なさそうに流す。暗器のような非合法の物を定期的に必要とする都合上、装備類は裏の店での購入が殆どで。シンプルな道具類はともかく…特殊効果の付いた装備などは裏では贋作も少なくない。なので信頼できる商人との繋がりは重要で。本業並みと聞けば客として興味を持ちつつ、見失わないようにウラルの右隣を歩く。)
>761
何かをしたと言うよりはそもそも存在を疎まれていたというか……今思い返せば私も若気の至りで自分の意見を曲げることが出来なかったので、あまり良く思われていなかったんでしょうね…何かきっかけがある度、ガキのくせに、親の七光りのくせに、と先輩方に何時間もお説教をされていました…
(ミミの問いかけにクレアは遠い目をしながら騎士団時代の思い出を語った。これといって仕事で何か失敗をした覚えはなく、思い出すのは理不尽な説教の数々。若気の至りで世渡りが下手だった自分に一切の非がないわけではないことを自覚しつつも、それでも殆どが妬みによる謂れのない誹謗中傷である。語り終える頃にはクレアはストレスから胃の辺りを手で抑えていた。その様子を見てティアは改めて外の世界は弱肉強食であるのだと悟ると少々自信を打ち砕かれそうになって俯いており、その様子はまさしく負の連鎖である。)
>763
「首狩り」かぁ…ただの蔑称が時の流れで新しい意味を得たとは感慨深いねぇ。
(レドの口から放たれた「首狩り」という言葉に、エルフは口角を吊り上げてボソッと意味深な独り言を呟いた。元は騎士道を貶した外道に宛てられた蔑称が勧善懲悪のような大層な意味を持つようになり、その変遷はこのエルフにとって余程面白おかしく思えたようだ。)
ところで君はいったい何者なんだい?本来ならこの場には勇者がいる筈だけど。
(警告を無視と言うよりは、そもそも警告として認識していないのだろう。エルフは躊躇いもなく足を踏み出すとレドの数歩手前で立ち止まり、ニタニタと口角を吊り上げたまま素性を尋ねる。どうやら本来の狙いはレイラのようだが関係性次第ではレドを利用して誘き出す算段であった。先程までエルフが立っていた場所のすぐ後ろには斬り捨てられた商人の親子の亡骸が倒れており、商人の物と思われる荷馬車は手付かずの状態で放置されていた。きっと商人の父を持つレイラがこの光景をみれば激昂することであろう。餌となる為だけに手にかけられた親子の無念は計り知れない。)
ハァ…ハァ…こっちも片付きました!…っ…このエルフ、只者じゃないっすね…!
(指南役に選ばれたのは伊達じゃない圧巻のレドの剣技に感心しつつ、息を切らしながらも少し遅れてシエルも目の前の敵を片付けた。敵はあと一人…なんて気楽に考えてレドの隣へ駆け寄ったシエルだが、相対して改めて認識する敵の強者特有の余裕と隙のない太刀筋。気を引き締め直して、シエルは普段とは打って変わって真剣な面持ちで剣を構えた。)
>766
チッ、なんてことを……シエル、もういい。やっぱり罠だった。お前は王都へ戻って騎士団を呼んで来い……!
(やはり退かないか……平然と歩み寄るエルフを見て戦いを覚悟すると、目の前に現れた光景に舌打ちして。商人親子が無惨に殺され荷物は手つかず。どうやら本来アリシアの会食へ赴くはずのレイラをおびき寄せるため、周到に用意された罠だったらしい。商人を生贄にしたのはレイラさんを確実に救出に来させるためか。あの人は父親と同業の者の危機を無視できない……と思案している最中にシエルがやってくる。エルフを睨んだまま片腕をかざし、シエルに撤退と騎士団への通報を促して。同時にそっと耳打ちを。「ああ、ヤバいぞこいつ。Sランクはある……!」)
エルフか……しかしなんだ、俺が知ってるエルフと大分違うな。今思えば大人ぶってるのに子供っぽくて、背も俺の刀と同じくらいしか無かった。だがな、優しくていい人だったぞ……お前みたいな汚い大人と違ってな。
(フードを被っていても種族が分かる目の前の刺客……人間至上主義に傾倒するアリシアの手の者では無いであろうエルフの刺客に、最近自分が世話になったエルフを引き合いに出しつつ、灰色の瞳を静かに向けて。勝ち目は薄い。だがコイツの人質になりレイラさんが屈する展開だけは避ける。レイラさんは孤児の自分を弟のように可愛がってくれた。思い残すことは無い。名も無い冒険者として散ってやる!そう覚悟とすると両手で刀を地面に突き立て、叫んで。)
俺はただの冒険者。お前に名乗る名前は無い!
>767
わ、分かったっす…!戻るまで絶対に耐えてくださいね…!
(Sランクというレドの見立てを聞いて、シエルは目を見開いて驚愕するもすぐに思考を整理する。馬鹿な私でも分かる…私が加勢した所で時間稼ぎにもならない…そう結論付けると、増援を要請すべくレドの指示に従い馬車に飛び乗った。馬を全力で走らせれば往復で三十分程度、それまで耐えるようレドに声援を送り馬車は出発した。)
そっか…じゃあ斬り捨てるしかないよね。安心して、私も優しいからさぁ腕の一本くらいなら勇者の元へ送ってあげるよ。
(名乗る気がないと見るやエルフはやれやれといった様子で首を横に振った。死の危機を前にしてこの反応、きっと生け捕りにして拷問を加えたところで口を割ることはないだろうと確信すると、この場で斬り捨てることに決める。剣を引き抜き切先をレドの顔に向けて構えると、口元の緩み具合だけでも分かる程心底楽しそうに、レドが引き合いに出したエルフを意識して趣味の悪い宣言をした。)
じゃあね少年。
(予備動作も見えぬ程に俊敏に一歩踏み込むと、手に持った剣をまるでレイピアの如くレドの顔に向けて突く。踏み抜いて突くだけの単純な動作だが、数百年単位で洗練されたその動きは並の冒険者では知覚すら出来ないことであろう。野盗が使用していたものとそう変わらない剣が、纏った魔力により聖剣に見紛う程に輝きレドの眼前に迫る。シエルを逃がしたレドの決断の正しさがここで早くも証明されたのであった。)
読み返してみて違和感に気付いたので>768について補足します。
「レドが引き合いに出したエルフを意識して」
一見ルーシエルとの面識があるかのように捉えられるこの一文ですが、現状の設定ですと当然フードのエルフとルーシエルに面識はないので、単に優しいエルフとやらを皮肉っているという意味になります!
>768
行ったか。あばよシエル、友達を大切にな。さて……
(エルフを睨みつつ、シエルを乗せた馬車が撤退していく音を聞く。あの子はこんな所で犬死にしていい人間ではない。シエルとの別れの言葉に等しいことを、ほっと一息吐きながら呟いて。どうやら敵はこちらがレイラの縁者と知りつつ襲う気のようだ。なんて奴だ……最早誰と比べるまでもなく外道、こんな奴にむざむざやられたくない!と歯ぎしりしていると、奴が動き出した!)
くぅぅっ!
(眼前に迫ってきた魔力剣の突きを身体をひねって回避して。並の冒険者なら何もできずに眉間に穴を空けられていただろうが、レドはこの死の閃光の直撃をなんとか免れた。それでも完全回避は敵わず、かすった右のこめかみから血が流れ出して。
レドの方は足下から正中線を真っ二つにすべく、地面に刺した刀を右手で引き抜き、突撃してきたエルフの股間めがけて振り上げて。地面から引き抜いた反動で神速の域に達した刀の斬り上げによるカウンターは、対手の突進速度が速いほど対応を困難にする、大物食いの一手だ。)
>770
…っ…痛いなぁ…
(このエルフは完全にレドを舐めていた。今の一手を躱されるなど考えてもみなかったようで、次の一手を考える間もなく下方からは神速の刃が迫り来る。自らの勢いに流されるあまり、未だ宙を彷徨う剣では振り上げられた刃を受け止めることは叶わない。それならばと、思考の間もなく本能的に空いている左手を下に突き出して、迫り来る刃を受け止めた。生身であれば何ら障壁となることもなく両断されていたことであろう。しかし、魔力操作を極めた者がその身に纏う魔力は時に重厚な鎧にも勝る。そして、このエルフが見せたものはそれを遥かに上回る芸当で、手と刃の接地面のみに全魔力を集中して局所的に龍の鱗にも匹敵する強度を生み出した。通常の刀であれば今の衝撃で折れていてもおかしくはないがレドの持つそれはかなりの業物らしい。一流の刀と使い手により放たれた神速の斬撃は魔力の壁を僅かに上回り、その刃はエルフの掌の肉を少し抉ったところで完全に勢いを殺された。久しぶりに肌身で感じた死の感覚に、エルフは心底楽しそうに口角を吊り上げる。)
誇っていいよ少年。私に傷を付けられる人間はそう多くない。君に敬意を払って…嬲り殺してあげよう。
(レドの一撃はエルフの闘争心と嗜虐心に火を付けたようだ。偉そうに口上を垂れながら、刀の上を滑らせて血の滴る左手でレドの右手を抑え付けると、右手に持った剣の柄を思い切りレドの脇腹目掛けて振りかぶる。その攻撃には、宣言通りすぐには殺さないという意思が見て取れる。)
>764
へぇ~…なんだか、お酒とは違う感じっぽい…?けど、すごく気になるなぁ。飲んでみたいかも~…♪
(アヤトの話を聞いた限り、酒という名がついていながら酒とは違うような気がして首を傾げて。ウラルがいつも飲んでいるリキュールはそこまでアルコールは高くないが、それより低いのだろうかと考えており。ただ、割って飲むほど甘いことに興味が惹かれたのか笑みを浮かべて飲んでみたいと告げて。)
なるほどねぇ~…本業で儲かってるなら、確かにB級でも大丈夫そうだねぇ…。じゃあ、冒険者はやっぱり趣味とかでやってる感じ~?
(何の仕事かは明かさなかったが、アヤトの発言からおおよその見当がついたようで納得した様子に…だがその見当は見事に外れており、やはりアヤトの本職が暗殺者だということには全く気づいておらず。先ほどの発言から、やはり冒険者を趣味か何かでやってるのかと問いかけて)
えへへ~、何でかは知らないけど私ってよく面白そうな依頼を見つけるんだ~。ただ、今回みたいに単独じゃ難しい依頼もよく見つけるけど~…。いいよぉ、あとオーダーも受け付けてるよ~
(ニコニコ笑いながらこういった当たりの依頼を見つけることが多いと告げて。純粋に運が良いのだろう、今回のように単独じゃ厳しい依頼を見つけた場合は手が空いてそうな冒険者に協力してもらうことが多い。密かにアヤトが暗器を目的にしているように、ウラルも使えそうな素材や珍しい素材がないか探すことが目的である。強いモンスターの皮や牙はいい素材になるため、寧ろ遭遇することを望んでおり。店を開いてる時は教えると告げて、店に置いてあるものだけでなくオーダーも受け付けていると笑みを浮かべながら話して。右隣についたことを確認し、カウンターに到着し依頼の手続きを進めていき。カウンターの女性は意外そうな表情をアヤトに向けており)
>765
あ~……妬みとかそういう感じかぁ。まぁ、何処にでも居るよねぇそういう人達…説教というより、嫌味と言うか嫌がらせって感じだけど…。気にすることないよ、クレア。クレアは何も悪くないわけだしさ…それにほら、今はそういう人達は居ないでしょ?あ、聖女様?確かに外にはそういう人が居ますけど、そういう人ばかりじゃないですよ?私の周りなんて、かなり平和ですし
(説教というよりかは、妬みから来る誹謗中傷や嫌味だろう。やっぱりそういう人は何処にでもいるんだと実感しながら、胃の辺りを抑えるクレアの背中を擦りながら気にすることはないと告げて。少なからず今のクレアの周りには、そういったことをする人は居ないと微笑みながら告げて、今の話を聞いて俯くティアに気付き外の世界にはそういう人達ばかりではないと話して。ミミも冒険者しながら商人もしてることをいろいろ言われそうだが、実際そういったことを言う人は周りにいない。)
>771
そんな……「鬼蟷螂(オニドウロウ)」を、素手でだと……ちっ!
(完璧にカウンターが入った。そう確信していたが手の中で急激に失われた勢いと目に飛び込んだ光景に絶句して冷や汗を垂らして。身体を両断する刀に掌を差し出すなど悪あがき未満の愚行だが、実際は魔力の纏った左手で完全に止められている!かつての仲間の魔術師・アーダンに模擬戦で似たような芸当をやられたことはあったが、左手一本で防がれた経験などありはしない。
刀が折れずに済んだのはレドの差し料・「鬼蟷螂(オニドウロウ)」の賜物か。一見ただの東刀だが、実際はその名の通り鋼のごとき硬さを誇る蟷螂型の上級モンスターを素材とし、東国から伝来した刀鍛冶の技術を使いこの地で作成されたデュランダル製の武具だ。希少な素材と、人知を超えた存在に挑む冒険者の地・デュランダルの先進的な鍛冶技術が投入されたこの東刀は、元冒険者で東国出身の師匠から賜った貴重品。並の刀よりはるかに剛健で、しなやかに出来ている。
だが今の状況で刀が折れなかった事は不運である。渾身の一撃が致命打にならなかった以上、武器も自らの命もひと思いに断ってくれた方がマシだったかもしれない。いわば「半ヅキ」……不利な流れに歯噛みして。)
嬲り殺しだと。バカな。じきに騎士団がやってくるのに。
それに勇者を狙うとはもっとバカだな。勇者は教皇様の想い者。手を出せばその日から審問官どもに追われ一睡もできない日々を送ることになる。お前だよ!嬲り殺しにされんのは!
(右腕を振り上げて拘束を解き、その勢いでバック宙して脇腹への攻撃も逃れて。大きく距離を取って仕切り直し、刃先を敵の足元へ向ける下段の構えを取って。今の一撃で怒った敵は自分をいたぶる気らしい。長期戦に備えて体力の消耗を抑える構えを取りつつ、得意の突きが来たら刃先を上げてカウンターを狙う。
同時に騎士団と勇者……否、勇者を寵愛する教皇を敵に回す愚を叫んで。だが、おそらくあのエルフはそんな事など物ともしない立場にあると見た。それに単騎で勇者を相手取る気でいた自信に、今の人知を越えた技……なんとなく正体が見えてきた。)
>773
えへへ…そうですね。今はこうして沢山甘えられます…!
(ミミの励ましで気分を良くしたクレアは、ギュッとミミを抱きしめて存分に甘えた。殺伐とした騎士団時代に比べれば今が如何に幸せなことか、その現実を確かめるように。その様子とミミの説得を経て、ティアも思わず釣られて笑みを零す。外の世界への不安はまだ完全には拭えないが、それでもこの国よりはきっと希望に溢れているのだろうとある種の確信を抱いたようだ。そうこうしている内に会食の時間は終わりを告げて、司祭たちは手の付けられていない料理から片付け始める。)
そろそろお時間のようですね…聖堂の前に馬車を手配しております。ご案内致しますね。
(時計を確認するとティアは席を立ち、案内を開始した。これからしばらくの間はまた普段の生活に戻ることを憂鬱に思いながらも、この出会いで初めて抱いた希望を胸に曇りのない笑顔を浮かべて会場を後にする。)
>774
ハハ、果たして下っ端近衛兵の要請で騎士団が動くかどうか。ま、期待を捨てずに耐えて見せてよ。私が楽しく嬲れるように。
(レドの主張を嘲るようにエルフは下卑た笑みを浮かべた。近衛隊と騎士団の確執をよく知るエルフは、末端近衛兵の要請では騎士団が主力の派遣を即決することはないと踏んでいた。せいぜい事実確認と偵察を兼ねて数名の下級騎士が派遣される程度であろう。それならば難なく口封じが可能である。何かの間違いで主力級が派遣されるような、そんな奇跡でも祈っていろと言わんばかりの皮肉を述べると、剣を両手で握り上段の構えを取った。)
…クシフォス・トゥ・ヴァシリアッ!
(古代語で「王の剣」を意味する言葉が叫ばれると共に草花や大気など自然に宿る魔力が一手に集約し、エルフが握る剣を神々しく輝かせる。剣に纏う膨大な魔力は天災の如き風圧を生じてエルフのフードをはだけさせた。顕になったその顔は、この国で剣の道を志すもので知らない者はいないであろう存在、王国騎士団副団長エリス・フィンベルであった。エルフ特有の神聖さを感じさせる容姿と金色に輝く剣も相まり、その様はまるで神話の戦女神かのような出で立ちである。十分に魔力が溜まったことを確認すると、エリスは足を一歩踏み出して思い切り剣を振り被った。放たれた斬撃は雷のような轟音を伴いながらレドに迫る。エリスの狙いは、カウンターを狙うレドに対して間合いに入ることのない一方的な攻撃で制圧することであった。自然に宿る魔力を使用したことから、この技はその強大な威力に反して使い手の負担が極端に少ないことが明らかで、使い手をどうにかしないことには無尽蔵にこの理不尽な斬撃が飛んでくることであろう。)
>776
……ッッッ!やっぱり副団長か。こんなか弱い民を辻斬りとは、アリシア以上のサイコパスだなお前!
(エルフ……否、副団長・エリスによる「王の剣」は、構えた時の異常現象だけで一介の冒険者に過ぎないレドを絶句させた。刃の振り下ろしを何とか横に飛び退いて回避し、草むらから起き上がって健気にも悪態を吐いてみせて。だがレドの左肩付近からは血が流れている。)
期待、か。こんな時「首狩り」様が悪い奴の首を狩りに来てくれたらなぁ……でも剣士が人を当てにしちゃダメだな。自分でやらなきゃ。
(商人の死体を寂しそうにちらりと見て。想起するのは「首狩り」様の伝説。15にも満たない時分で盗賊を単騎で撃退し、商人を救ったという逸話だ。だがその「首狩り」様の恩恵に自分が預かれないのは分かっている。もう剣術の原理すら意味をなさない、この戦女神の皮を被った人殺し相手に救援が来るまで耐えるのは無意味。あの死体の仲間になるだけだ。今ここで倒すしか生きる道は無い。そう決意すると、「首狩り」様にあやかって束ねたポニーテールを左手で揺らし、エリスに剣先を突きつけて。)
副団長エリス・フィンベル!その首狩らせてもらう。
(そう叫ぶ灰色の双瞳は妙に落ち着き払っている。無謀にも、「王の剣」を破る気でいるらしい。)
>772
なら、家にそこそこ余ってるから何個かあげるよ。と言うか僕は飲まないから気に入ったら、全部持っていってよ。
(知り合いの商人からお酒のセットを買うのは良いのだが、よく買うお気に入りのセットの内容物の一つが甘酒で。飲まないのに処分もしないので甘酒がデュランダルの自宅に貯まるだけ貯まっていた。なのでウラルが貰ってくれるなら都合が良い…と気に入ったなら全部あげると約束する。)
うん、完全な趣味だよ。僕の本職は冒険者やらなくても遊んで暮らす程度は出来ちゃうくらいは稼げるからね。
(暗殺者だと察したかのような言葉の割に、警戒した様子も驚いた様子も見られない事から、気付かれた訳では無いと判断して冒険者は趣味であると肯定する。今までの会話からウラルは裏の世界とは無関係な人間だと考え、少し情報のガードを緩め。具体的な額は教えないが本職は大金が稼いげると明言する。)
へー、運が良いのかな。あ、依頼を見つけたのはウラルちゃんだから金銭配分はウラルちゃんが好きに決めちゃって良いよ。へぇ、オーダーまでやってるんだね、ほんとに本業並みだね。やぁ、お姉さん。見ての通りだから手続きよろしくね。ついでに酒とかの代金払っておくね。おっと、お釣りは要らないよ。
(金銭には困っていないので全額譲っても構わないが…流石に不自然に思われそうだし、そもそも全額受け取るとも思えない。のでウラルが見つけたから…との建前で配分を委ねる。オーダーも受け付けていると聞いて、A級の冒険者が粗悪な装備品を売れば直ぐに噂になって広まるだろう。だが、そんな噂は聞いた事もないので本当に本業並みの仕事なのだろうと感心する。意外そうにするカウンターの女性に手続きを進めるように笑顔で促して、自分は女性の作業の間にボヤ代を含めた飲食代を支払う。パンパンに金貨が詰め込まれた手のひらサイズの巾着袋を丸ごと渡し、釣りは要らないと断る。払ったアヤト本人も入っている正確な額は把握していないが…ボヤ代込みでもオーバーな額なのは間違いないだろう。)
>777
酷い言い草だなぁ。私だって殺すつもりじゃなかったよ。生きていた方が色々と都合がいいからね。ただ、子供の方がギャーギャー煩くて、喉を掻き斬ったらなぜか親の方も暴れだしちゃってさ…結局二人とも殺っちゃった。そう、これは不可抗力ってやつだよ。
(レドの吐いた悪態に、エリスは杖のように剣を地面に突き立てて悠長に反論した。エリスのキョトンと首を傾げた様子と言い分からして、子供がなぜ恐怖に駆られて泣き出したのかも、子供を斬られた親がなぜ怒り狂ったのかもまるで理解出来ていないのだろう。一切の自覚のない純粋悪、それは正しくレドが言うようにアリシアよりもタチの悪いものである。)
だからさぁ…君がこうして私の首を狩ると宣言した以上は私の攻撃は全て身を守る術に過ぎないよね。
(この鬼畜エルフは勝ち誇ったような得意げな表情を浮かべて飽きることなくつらつらと詭弁を並べる。そしてそれは、自分を正当化することのみが目的ではないようで、口上を言い終える頃にはエリスを中心に十数メートル程の範囲で地面が波打ち、そして轟音とともに大爆発を起こした。エリスは爆発の直前に後方へ飛び退き、ニタニタと笑いながら舞い上がった土煙を眺める。仕掛けは単純で、突き立てた剣の魔力が過度に地面に流れ込んだ為、耐えきれずに地面が弾け飛んだのである。会話に気を取らせて地面ごと爆発させる。騎士道など知ったことではないと言わんばかりの何とも卑怯な手口である。)
>779
……フン、それが騎士団のやり方で、騎士団にはお前みたいな人殺しがいっぱいいるわけか。こんなんじゃクレアさんも騎士が嫌になるわなぁ。俺も騎士に生まれなくてよかったよ……
(エリスがニタニタ笑いながら土煙を眺めていると、レドがエリスの右手約10メートルの草むらから飛び出してきて。何とか爆発から逃れて迂回してきたようだ。また悪態を吐いているが、今度は深く呼吸を整え落ち着いている。エリスの悪辣な発言に激昂して突っ込んでいたらやられていた。彼女の言動は確かに非道だが、こちらの平静を乱す作戦にも見える。相手の言動に惑わされず、努めて冷静でいようと決めたのだ。
やがて構えも取らず静かに歩を進めてエリスへ近づいていき。これほどの人智を超えた魔法の使い手、こちらも奥義を尽くさなければ倒すのは不可能だ……無造作に片手に持つ東刀が、いつしかほのかに熱が帯び始めて。)
>780
へぇ、何か大技でも披露してくれるのかな。けど残念、撃たせるわけないよねッ…!
(大気の揺らめきからレドの持つ東刀が熱が帯びていることを察すると、エリスは未だ余裕の表情を崩さず、撃たせまいと先手を打つ。剣を上段に構え、全力で振りかぶる。放たれた斬撃は宙を伝う強力な衝撃波となりレドに迫った。)
ふふっ、やたらと腕の立つ野盗に襲われていると聞いて来てみれば、随分と面白いことになっているではありませんか。
(衝撃波はレドへ到達する目前で轟音を立てて離散する。舞い上がった土煙が落ち着くと同時に姿を現したのは、剣を抜き、お上品に口元に手を添えて微笑むアリシアであった。周囲には他の人影がない。人手を集めるにも時間がかかることから最短で駆けつける為にシエルの報告を受けてすぐに単騎で乗り込んできたのだろう。アリシアの登場はエリスにとって予想外のようで、バツが悪そうに顔を顰めた。エリスが皮肉った奇跡が正しく起こった形となる。)
随分と早い再会を嬉しく思います。さ、私が時間を稼ぎますので、とっておきを見せてください。
(アリシアは手短に社交辞令上の再会の喜びを伝えると、意地の悪い笑みを浮かべ、会食の場ではぐらかされたレドの技の全力を今ここで見せるように急かした。そして、エリスに向き直ると瞬く間に距離を詰めて交戦を始める。底意地の悪い性格とは裏腹にアリシアは搦め手を使わずに真正面からの斬り合いを好むようだ。年齢に似つかわしくない洗練された動きはまるで何十年と剣に捧げた達人のようだが、思考に身体が追い付いていないかのような、そんな違和感を覚える太刀筋であった。相対するエリスの方は、時間の経過と共に優位に傾き始めているが、焦りから額に一筋の汗が伝う。魔力操作には相応の集中力が必要だが、アリシアとの戦いに気を取られている以上はレドの技を受け止めきれる確信がない。故にもはや手を抜いている余裕などどこにもないのだ。)
>775
でしょ?私が居る間は、思う存分甘えていいからね~
(励ましの言葉でクレアがいつもの調子に戻り、気分良さそうに甘えるクレアに微笑み抱き返しながら頭を撫でて。まだクレアの過去を全て知ったわけではないが、それでも辛い過去だということはわかる。だからこそ、自分が居る間は思う存分に甘えていいと告げて。ティアに視線を移し、ティアも元気を取り戻した様子を確認するとこちらもニッと笑みを浮かべて。聖教国から脱出して外の世界で暮らし始めた時、慣れるまで苦労するとは思うがミミはティア達を支えるつもりだ。)
もうそんな時間ですかぁ…ありがとうございます、聖女様。
(楽しい時間はあっという間に過ぎたようで、気づけばもうデュランダルへ帰る時間に。馬車の手配と案内をしてくれているティアにお礼を言ってついていき。ティアの笑顔、最初に会った時とは全然違う…希望を抱いている笑顔だ。次の護衛の依頼がいつになるかはわからないが、早くこの国から出してあげられるように頑張らないと…と心の中で強く思い)
>778
ほんとぉ?ありがと~、楽しみにしてるねぇ~…♪
(飲まない甘酒が何故アヤトの家にあるのか疑問に思ったが、恐らくは酒のセットギフトか何かを購入して、その中に甘酒が入っているのだろうという予想に辿り着く。ふにゃりと笑いながら飲んだことのない甘酒を楽しみにしてると告げて、まだ味がわからない甘酒をどういう風に飲もうかと今から考えており。)
遊んで暮らせる…?ん~…私が知ってるお仕事じゃないのかなぁ…?どれも遊べる程じゃないし~…
(ウラルが知る仕事のどれかをやってると思っていたが、冒険者をやらなくても遊んで暮らせるという発言に引っかかり、首を傾げる。商人をやってるから、どの職業がどれだけ稼げるか…そういった情報に詳しいのだろう。少なからず、ウラルが知ってる職業の中に該当するものがない…だんだんとアヤトが何の仕事をしているか気になり始めて)
多分そうかも~…配分?最初から半分ずつに分けるつもりだよ~。うん、オーダーはちょっと値段が高いけど保証はするよぉ?…え、アヤトくん?その袋の中、多分すごい額が入ってると思うけど…本当にいいのぉ?
(カウンターの女性の作業が終わるのを待っている中、配分の話が出てきて。ウラルは最初から半分に分けるつもりだったようで、にこりと笑いながらその事を伝えて。アヤトがかなり儲けていることがわかっても、変えるつもりはないらしい。オーダーは通常店に置いてある装飾品やアクセサリーよりも値段はするものの、どのタイプの装飾品にするか、デザインはどうするかはもちろん、効果や能力まで決められる。本来エンチャントはランダムで難しいのだが、ウラルは能力で好きに決められるため関係ない。カウンターの女性とウラルはアヤトが出した巾着袋を見て驚き。その膨らみ方や置いた時の音から、明らかに食事代とボヤ代以上の金額が入っていることがわかる。本当にいいのかとアヤトに問いかけて)
>781
あ、アリシア様!?あはは、お早い到着に感謝いたします……
え?しかし相手は副団長……なるほど、シエルの情報通り凄まじい技だな。だが……
(思いがけない援軍に喜び……というには微妙な苦笑いを浮かべて。こいつかよ~~クレアさんやレイラさんだったら嬉しかったのに。やけに到着が早かったが、よほど上手く立ち回ったか……という心境だ。どうやらアリシアにとって副団長エリスは好ましくない人物のようで、有無を言わさずここで始末する気らしい。早くも貸しとしてとっておきの秘技・「竜狩り」を見せろと要求してくるアリシアに対し、困惑した表情で即答を避け、まずはブツブツ呟きながらアリシアの戦いぶりを観察して。確かにシエルの言う通り恐ろしい技の冴えだ。一方で基礎体力は甘く、身体能力の劣後を技で誤魔化している感は否めない。案の定副団長よりは一枚劣るようで、最初は互角に見えたが押し返されている……このままではあの畜生エルフを倒す機会を失うと判断し、半身に構え東刀を肩に担ぐ「竜狩り」の体勢に入り。)
いいでしょう。この乱心者、「竜狩り」にて仕置します。アリシア様は巻き添えにご注意を……!
(青白い光として顕現したレドの闘気が刀身を輝かせ、鬱蒼とした草原を明けの明星の如く照らし、バチバチと闘気のはじける音が夜のしじまに響く。刀身から渦巻く闘気が熱風を巻き起こし、草木を揺らしアリシアとエリスの肌を伝う。上級モンスター由来の特殊な東刀・内なる闘気をエネルギーとして放出する幼少からの訓練・気の練りに耐えられるレド並の体格があって初めて為せる闘気術、その最奥・「竜狩り」のモーションである。よほど広範囲を巻き込む攻撃なのか、エリスにじりじりと迫りつつもアリシアに注意を促して。)
そのスカした面も今日限りだ。人の身で「竜狩り」から逃れられると思うなよ、副団長!
(顔から血と汗を吹き出し、瞳をカッと開き、歯をギリギリと鳴らす憤怒の表情で外道エリスを睨み。このまま闘気をエネルギーとして発射するか、いっそ刀身ごと直接エネルギーを叩きつけるか……いずれにせよ余裕を失った今のエリス相手なら跡形も無く消し飛ばせるはずだ。もう首なんかいらない。隙が出来次第、迷わず攻撃する。)
>782
それではお二人共、本日はありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。
(聖堂を出て馬車の元まで付き添うと、最後にティアは二人に向けて深々と頭を下げて感謝を告げた。思い返せば道中に様々なトラブルがあったものの、外の知識や新たな希望、ティアにとってかけがえのないものを得られた一日であった。色々と込み上げるものがあったのか、顔を上げたティアの瞳は若干潤んでいた。)
こちらこそありがとうございました。依頼があればまたミミちゃんと来ますね。
(未だにミミにベッタリと抱きついたまま、クレアも朗らかな笑みを浮かべて礼で返した。ミミに抱きつく手が若干震えているが、きっとクレアも感極まっているのだろう。と思いきや単にアルコールの禁断症状である。鍛えられた忍耐力で顔にこそ出さないが、会場で酒の匂いを嗅いだことでいよいよ抑えが効かないようだ。)
>784
っ…不味い…
(肌を伝う感触から、この技を使わせるなと本能が警鐘を鳴らす。エリスは再び衝撃波を飛ばすべくレドに向き直ろうとするが、相対するアリシアがそれを許さない。大きな隙を見せた為に若干押され気味にアリシアの剣を捌きつつ、エリスは額に嫌な汗を流しながら状況の打開策を模索した。)
ほう…これはなかなかに期待出来そうですね。では仕上げといきましょうか。…「我が覇道を阻みし愚かなる生命を、永遠の幽閉を以てその罪を贖わせよ。開け、地獄の門。」
(レドの纏う膨大なエネルギーを見て、アリシアは面白いものを見たかのように口角を吊り上げた。あれならば、計画の遂行にあたり邪魔で仕方ない存在である副団長を消しさることが出来るかもしれない。そんな希望に胸を踊らせつつ、最後の仕上げへと取り掛かる。レドのお陰でエリスが動揺している隙に斬り合いに並行して詠唱を唱えると、禍々しく赤黒い魔力が蠢く魔法陣がエリスの足元に顕現し、その中から現れた無数の鎖が瞬く間に対象を拘束した。)
ハァ…ハァ…レド殿、今ですッ…!
(拘束の完了と同時に後方に飛び退いたアリシアは、息を切らしながらレドに合図を告げるとすぐにその場にへたり込んだ。激しい魔力の消耗による後遺症である。戦闘中の詠唱のせいか不完全な形で顕現した鎖はひび割れており、ありったけの魔力を身体に纏い抵抗するエリスが拘束を解くのは時間の問題であった。)
前日譚「王の剣」
教会の勢力を削ぎたい?それはまたどうして?
(王城内のとある一室にて、副団長エリスは国王の言葉に首を傾げて質問で返した。相談役という立場から、国王が内密に事を進めたい時には度々こうして密談を重ねている。)
あぁ…確かに最近怪しい動きがあるのは承知しているよ。それならさぁ、まずは近衛隊のあの子を罷免したらいいんじゃないかな。どう見ても聖教国のシンパでしょうよ。って…それは出来ない?ハァ…彼女との間に何があるのかは聞かないけどさぁ…じゃあどうするのさ?
(どうやら国王は国内の分断を憂いて、手遅れになる前に教会の勢力を削りたいらしい。それならまず一番きな臭い近衛隊、特に副長のアリシアを追放すべきだと提案するが国王は首を横に振る。きっとエリスの預かり知らぬところで何かあるのだろう。主君の突かれたくない所を無理に突くことはないと考え、ため息を吐きながらもエリスは国王が納得のいく代案を求めた。)
勇者を始末する…?陛下は自分が何を言ってるか分かってるの?最悪は聖教国と戦争に……まぁ書類上の戦力差が正しいなら勝てるだろうけど…それよりも勇者をどう仕留めるつもり…?まさか私に…
(勇者を消すという大胆な提案にエリスは呆れ顔を浮かべるものの、内心では一定の理解を示していた。教皇の寵愛を受ける勇者の存在は王国にとって潜在的な脅威の一つである。勇者が意図せずとも、その名声が轟く度に教会の良い宣伝となる上に、勇者の支援を理由に王国各地に教会の関連施設(工作拠点)が建てられている現状がある。それらを基盤とした近年の王国における信者の増加傾向を鑑みれば、いずれ王国は内側から食い破られることであろう。そうなる前に手を打ち、十分に勝算があるのなら戦争も辞さないということだ。しかし、エリスが最も懸念しているのは誰が勇者を仕留めるかということである。騎士団長は表でしか動かせない以上、必然的に勇者と互角に渡り合えるのはもはや自分しかいない為である。)
はいはい…分かりましたよ。元より私は君の剣だから。正攻法じゃあちょっとしんどいから多少の血が流れることは勘弁してよ。
(ジト目で国王の顔を見やりながら、乗り気ではないが命令された以上は仕方がないと割り切って、エリスは王の剣として命令を賜った。「王はその知を持って民を導くが、外敵から身を守る術を持たない。ならば剣である私が代わりに外敵を排除するのが道理である。」磨り減って殆ど空っぽになった心の中に未だ残る、何代も前の王に誓ったその信念だけを胸にエリスは意を決して勇者討伐へと赴いた。)
勇者討伐任務 エリス視点
(野盗に扮する為に街のゴロツキを雇ったは良いものの、エリスの到着を待たずして早くも国境付近に待機していたゴロツキはあろう事か既に行商を襲撃しており、無惨な姿と化した商人親子の亡骸が転がっていた。)
ハァ…生きてなきゃ人質にならないでしょ…最初から期待はしてなかったけどコイツらやっぱり馬鹿だ…
(亡骸を前に項垂れるエリスだが、こうなった以上は仕方あるまい。勇者を刺激して冷静な判断を妨げる方向に作戦を変更した。そして間もなく目当ての馬車がやってくる。しかし、中から飛び出して来たのは近衛兵と見慣れない少年。エリスは思わず首を傾げた。勇者の代理といったところだろうか…と推察すると、商人の命を奪った以上は引き下がるわけにもいかず、勇者討伐は日を改め、せめて目の前の聖教国シンパの首を狩り取ることにした。)
誇っていいよ少年。私に傷を付けられる人間はそう多くない。君に敬意を払って…嬲り殺してあげよう。
(初撃を防がれた上にカウンターで傷まで負わされると、目の前の少年が只者ではないことを察する。これ程の技を持ちながらなぜ無名なのか甚だ理解に苦しんだ。しかしエリスが抱いた違和感はそれだけではない。フードを被っているとはいえエリスの容姿がエルフであることは明らかである。にも関わらず勇者の代理、即ち聖教国シンパの筈の少年は一切そのことに触れて侮辱的な言葉を浴びせてこないのだ。そこでエリスの脳裏には一筋の可能性が過ぎる。それは、レドが勇者の関係者でありながら聖教国の思想には賛同していないという可能性だ。もしそうならば、この少年の首を取ったところで何も得られないどころか勇者には警戒され不要な恨みすら買うことになるだろう。エリスは「嬲り殺す」と口では言うが、それはあくまで最初の死刑宣告を取り消して尋問するために致命傷を避ける方弁で、シロならとどめを刺し損ねたていで生かすつもりであった。勿論やられっぱなしは癪に障るというある種のプライドもあるがそれは二の次である。もし深手を負わせたとしてもきっと駆け付けた近衛兵が何とかするだろう。もし近衛兵の到着が勝敗を決するよりも早ければ、その時は聖教国シンパたる近衛兵の首を飛ばせばいいだけの話だ。)
酷い言い草だなぁ。私だって殺すつもりじゃなかったよ。生きていた方が色々と都合がいいからね。ただ、子供の方がギャーギャー煩くて、喉を掻き斬ったらなぜか親の方も暴れだしちゃってさ…結局二人とも殺っちゃった。そう、これは不可抗力ってやつだよ。
(猟奇的な殺人者を演じながらレドの反応を伺うも、やはりレドからはエルフを侮蔑する言葉は出ない。これはシロだと確信するものの、致命傷を避けるような手を抜いた攻撃で勝てる相手ではない。不意打ちも難なく躱されてどうしたものかと考えを巡らせる。何やらレドも奥の手を解放する兆候が見られ、エリスは内心ではそれなりに焦っていた。技を防ごうと斬撃を飛ばすも思いがけない乱入者により防がれる。アリシア・ライデン、まさに国王が憂いている事態の中心人物と言っても過言ではない人物の登場にエリスは眉間に皺を寄せた。近衛隊の雑兵ではなく副長自ら、それもタイミングの良すぎる登場に強い違和感を覚える。おそらくこの女に事前に動きを察知され泳がされていたであろうことを察すると、エリスはどう事態を収集すべきか思考を巡らせる。そもそも窮地とはいえ国王との関係性が不明なこの女を手にかけていいものかと、一種の迷いを抱きながら交戦していると再びレドから凄まじい熱気を感じた。)
っ…不味い…
(これは本心からの言葉である。もはや手を抜いている余裕などなく、どう生きて帰るかの瀬戸際であった。一瞬の隙を突かれて魔法により拘束されると、いよいよエリスは死を覚悟する。幸いにも顕現した鎖は不安定な詠唱のせいで脆く、時間をかければ何とか解くことは可能だが、問題は無防備な状態で如何にレドの技を受け止めるかだ。ありったけの魔力で身体を覆うもののこれでは不十分、もはや正体はバレているため隠す必要もないと考え、エリスは一つの賭けに出ることに決めてレドの技に身構えた。)
>783
届けるなら…依頼の帰りか、お店を利用する時辺りかな。ま、都合が良い時に適当に持っていくよ。
(いきなり沢山持っていくは口に合わなかった時が面倒なので手渡し出来る数にするとして。問題は全部渡す時だ。少なくても総数100はあった気がするが……依頼に集中しよう。)
目立たない仕事だよ。特にウラルちゃんみたいにまっとうに生きてる子には縁は欠片も無いかなー。ま、頑張って当ててみてよ。
(ウラルのような商人が他の職の収入を把握している事も珍しく無いのは知っているが…暗殺者の収入はピンキリで依頼主と依頼内容に左右される。そこに裏社会の実力主義も相まって稼げる人間と稼げない人間の落差は激しい。そんな事情から仮に裏社会にまで考えが回っても暗殺者という答えに辿り着く事は無いと考えていて。まっとうな職業でないかのような事をしれっと発言する。)
半々だね、了解。値段は心配してないよ、お金には余裕が…へ?……これくらいなら別に問題ないよ。
(迷った様子もなく半分ずつと決めた事に利益を追い求める裏との違いを実感しつつ笑顔に笑顔を返し、了解と返事して。裏で本物を探し回った挙句、贋作を買う。そんな骨折り損に比べれば少し値段が高い程度は問題外で頭の中ではオーダーするべき物を考えていた。2人の驚きに驚き。指摘を受けて巾着袋を持ち上げて確かめるが…人生の大半を裏社会で生きている影響で金銭感覚が表社会基準ではズレているアヤトは支払いを済ませる。)
>786 >788
あの魔法……!チッ、まあいい。
お前に分かるか。これほどに鍛え、剣の道に入るしか生きる術の無い貧民の苦しみが!民を捨て置き、踏みにじる悪魔め……テメーだけは直接ぶっ潰してやるッッッ!!!
(アリシアがエリスを拘束した魔法「地獄の門」に舌打ちして。あれこそ会食中に自分を殺そうとした魔法、あんな邪悪な技の使い手を利するのが癪に障る。アリシアも魔法の反動で大分消耗しているようだ。正直「竜狩り」で2人まとめて消したいが、シエルの手前、未だ正体の掴めないアリシアには手が出せない。改めてエリスに向き直ると、勝利を目前にして吹き上がった恨みをぶつけて。口ぶりと年頃からして僻地の農民の出、それも先の大飢饉と大弾圧の生き残りだろう。健康で文化的な最低限度の生活の保障など無いこの国でレドのような弱者が生き残るためには尋常ならざる域にまで剣を鍛えるしか無い。刀身から立ち上る闘気の柱はそんな世間の苦しさ、身分社会の不条理の表れである。
今のレドにとってエリスは弱者を嬲ることを好み、レイラを罠にかけるためなら子供すら手にかける悪魔、今まで自分たち貧民を抑圧してきた騎士団の悪意そのものだ。遠距離から闘気を投射する「竜狩り」本来の型で倒しても恨みは晴れない、刀身ごと直接闘気を叩き込んで、目の前で消し飛ばしたい……そう決意すると東刀を輝かせながら空高く飛び上がった……隣にいる本物の悪魔を差し置いて!)
はぁ、はぁ……さんざん嬲る嬲ると笑って劣勢なったらこの様か。ゴミめ……
クレアさん、今からあなたと同じ、Sランクの高みに登ります。こいつの首を取って……!
(夜空に刀身で流れ星を描きつつ、エリスの眼前に着地して。その顔は血と汗と涙、そして憤怒に塗れ、エリスへの侮蔑、剣の道に生きるしかない身で見出したクレアへの憧れを呟き。膨大なエネルギーを維持したまま移動するのは大変なようで息こそ切らしているが、後は振り上げた刀、否、闘気の柱を無力化したエリスに叩きつけ、前方一帯ごと消滅させるという神罰を下すだけ。接近したことで東刀からの光がエリスという罪人の全身を露にし、強みを増した熱気が容赦なく彼女の顔に刺さる。さながら火刑の一幕だ。
耳の長さでは無く人格の善悪で態度を決めるレドに対し、演技とはいえエリスは卑劣な言動を重ね過ぎた。今更説得できる余地があるかどうか……もう作戦の手抜かりのあれこれを、いや勇者暗殺という無謀を後悔しながら消し飛ぶのを待つしかない……並の策士であれば。)
>790
あの生き残りが首狩りに憧れるとは、なんとも皮肉なものだね…
(口ぶりからレドの境遇を察したエリスは、まるで哀れむかのような視線を向けて意味深な独り言を呟いた。首狩りに憧れを抱きつつもその真相に辿り着けないのは盲信故か…非情な真実を知った時に彼は何を思うのか…そんな関心を抱きつつ、エリスは勘づかれぬように血に塗れた左手で自らのマントに魔法陣を描く。この瞬間、彼女の固有魔法「亡者の行進」が人知れず発動した。)
しかし、勝利を前にあまり悠長に語るものではないよ少年。それは時に機を逃すことになる。
(ニッと意地の悪い笑みを浮かべると、エリスは相変わらず偉そうにレドに説教を垂れた。猟奇的な殺人者でないにしても性格が悪いのはもはや事実であろう。この説教は決して死を目前にした強がりではないことを直後に証明してみせる。レドの技に合わせ、身に纏った魔力を薄く強固な防壁へと変換し、顕になったことで自らを拘束する鎖が熱に晒されて溶けだしたことで自由を得ると、次に自らが纏う防壁が溶け切るまでの数秒で、レドの語りの最中に草原の中に控えさせていた異形と化した野盗の群れと入れ替わり、後方に飛び退いた。)
死を覚悟したのはいつ以来だろう。まあまずは素直に称えさせておくれよ。
(防壁と無数の肉壁により攻撃を回避する時間を稼げたお陰で軽微な火傷とマントを失うだけに済んだことに安堵しつつ、灰塵と化した異形だったものの山を隔ててレドと相対する形で、エリスはなんとも読み取れない薄ら笑いを浮かべながら拍手を鳴らし健闘を賞賛した。若干の余力はあるもののもはやエリスに戦意はないが、戦闘を継続するかはレドの出方と余力次第であろう。まずは相手の出方を疑うべくエリスは品定めするような視線でレドを見据えていた。その一方で、魔力の消耗により動く余力もないアリシアは草原に仰向けで倒れ伏していた。エリスを仕留め損ねたのは計画の遂行に大きな痛手だが、後は成るようにしか成るまいと、虚ろな表情で夜空を見上げていた。)
>791
……?こ、これは一体……?ああそうか、これが百年君臨する副団長の力、か……
(エリスに闘気を叩き込んで勝負あり!そう確信していたレドは目の前の光景に愕然とした。彼女は立っていて代わりに謎の山ができている……もう何をしたのか理解すらできないが、とにかく自分が語っている間の隙を付いて脱出したらしい。この起死回生の一手を前にしてレドは涙目で震え、急に邪気が消えたこともあって先程まで憎んでいたエリスに敬意すら覚えた。技も精神も上を行かれ、切り札も防がれた以上勝ち目は無い。負けを認めて膝から崩れ落ちて。レドの戦意喪失と合わせて東刀の閃光も失われ、草原は元の暗闇へと戻る。)
アイツももう終わりだな。シエルのためにアイツを取り戻したかったが、もう無理か。
なにが死を覚悟だ。完敗じゃないか……人生かけて剣を磨いたのに、俺は何もできなかった……だが。
(両膝を付いたまま、同じく戦闘不能になったアリシアの方を向いて呟き。副団長、否、国王の側近を襲撃した以上アリシアの処断は免れまい。それは彼女を救うというシエルの願いを果たせなかったことを意味する。自らの未熟さを呪い、空しく月を見上げると……無言で刀を持ち上げ自らの頸動脈へ押し当てて。
どのみち自分も無事では済まない。元よりまともには**ない身の上、惜しむ命では無い。最早今やれることはただ一つ。レイラを狙う副団長の虜囚となるを免れるべく自害することだ。「あまり悠長に語るな」、副団長の言葉通り黙って果てるつもりだったが、帰る所の無い自分に優しくしてくれた人のことがつい脳裏によぎり、無意識に口に出て。)
…………レイラさん
>785
こちらこそありがとうございました、聖女様。トラブルはありましたが、貴重な体験ができました。……必ず、また此処に来ます。
(こちらも感謝の言葉を返し、今日のことを思い返して…移動する最中ダンテ達から襲撃を受けたり、異端審問官のユリウスとレイラ似の少女だけで構成された聖歌隊を見に行ったり…カグラとの交戦があったり。一部の人間にはバレたが、よく自分が半獣人だとバレになかったものだ…そして何より、聖女…ティアのことが知れて良かったと思っており、若干潤んだ瞳を見ては、必ず此処に戻ってきて連れ出すという決意を込めた真っ直ぐな瞳を向けて、必ずに来ると告げて。自分に抱きつくクレアの手が若干震えていることに気づき、ひょっとしてクレアも瞳を潤ませているのだろうかと思いそちらを見たが…どうやら、禁断症状から来る震えだったようだ。「クレア、もう少しだから…」と、小声でクレアに伝えて)
>789
うん、よろしくねぇ~♪
目立たなくてぇ、私には縁が無いお仕事……?なんだろ~……人の命に関わるお仕事とか?
(いつでもいいよというような笑みを浮かべながら、甘酒が100個もあることに気づかずよろしくと告げて。ウラルには縁が無いというのはわからないが、目立たないお仕事と聞いただけなら客商売ではないことはわかり。目立たなくて高額な給料が入る仕事…もしかすると、人命救助の仕事ではないかという考えに辿り着き。重要な仕事だが確かにあまり目立たず、恐らく高額な給料が入る。人命救助として挙げられるのが火災や水難事故等の危険なこと、確かにウラルはそういった危険なことはしないため縁が無い。人命救助と言わず人の命に関わる仕事と言い、結果的に間違ってはないが間違ってる答えが出る。実際は救う側ではなく奪う側なのだが…)
え…本当に遊んで暮らせる程稼いでるみたいだねぇ…けど、お金は大切に使わないとダメだよ~?
(オーダーの件は問題ないのは納得するが、この額のお金を出しても問題ないというアヤトに、先程の「遊んで暮らせるほど稼いでる」と言う発言が比喩ではなく本当にそうだと実感して。カウンターの女性が料金を受け取っている間、お金がたくさんあっても大切に使わないとダメだと少し心配した様子で告げるウラル。そうしていると依頼手続きが終了して)
どうする~、このまま依頼に向かう?それとも準備してからにする?
>792
ハァ…君達は道中で遭遇した野盗の一味を撃退した。そして、この場には当然エリス・フィンベルなどいる筈もない。そういう筋書きで頼んだよ副長さん。はい、じゃあ解散。
(自害すべく自らの首に刃を立てて大切な人の名前を呟くレドの姿を見て、エリスは大きな溜息を吐いた。今更人の死に何かを思う程若くはないが、何も無為に命を捨てることはないだろうというある種の呆れからである。エリスとしては既に弱り切った相手を嬲る趣味もなければ、とっくに戦いの最中で殺意も大義名分も失っている。即席で適当な筋書きを用意すると、ケロッとした様子でポンと手を叩いて解散を宣言し、踵を返してその場を後にした。)
どうやら命拾いしたようですね。レド殿…もし余力があれば起き上がるのを手伝って頂いてもよろしいでしょうか?
(エリスが立ち去ったのを確認すると、アリシアは仰向けのまま顔だけをレドに向けて、申し訳なさそうに苦笑いを浮かべつつ介助を要請した。本来であれば魔法の適正のないアリシアが固有魔法を行使すれば代償で気を失うことになるが、今回に限っては不完全な発動であった為に消費魔力も抑えられたのだろう。意識はハッキリとしており、補助さえあれば動ける程度の後遺症で済んでいた。アリシア視点では副団長の気まぐれで助かった事は癪だが、今はそれ以上に優先すべきことがある。未だ無惨な姿でころがる商人の幼い子供、そちらに視線を移したアリシアの表情は心做しか少しだけ潤んでいるように見える。)
>793
ええ、ではまたの機会に…
(ミミの別れの言葉にティアは再び深々と頭を下げて見送った。ミミの覚悟をその眼差しから受け取ると、もはや何ら憂いはなかった。ティアが言葉を返し終えたのを見計らってお付の司祭がミミ達に乗車を促し席に着くと同時に扉が閉められる。)
うぅ…ミミちゃん…もう何の涙か自分でも分かりません…
(馬車が出発すると、クレアは窓からティアの姿が見えなくなるまで手を振った。無論、クレアもティアとの別れを惜しむ気持ちはあるが、その気持ちと同等かそれ以上には酒への欲求が心を支配していた。今流している涙がティアへの別れの気持ちか酒への欲求かはもはや本人すらも分からない程綯い交ぜになっているようだ。)
>795
え、ええっ!?なんで?そんなんでいいのかよ!?ちょっと!待って!
……行ってしまった。エリス・フィンベル……騎士団の副団長……
(どういうわけか副団長は急に翻意して自分を見逃し去ってゆく。思わず刀を取り落とした右手を突き出し、子供のようにわめきながら引き留めようとするが無駄なこと。取り残されると怪我した部位を手で触って確認して。右こめかみと左肩、いずれも軽傷で出血も止まった。が、渾身の一撃を理解できない方法で二度も防いだ相手にこの程度の傷で済んだのは生かされただけ、向こうがその気なら自害するまでも無く土に還っていた……その相手の名を呟きながら、言いようのない敗北感、覆し難い実力差にがっくりと肩を落として)
アリシア様?ご無事で何より。剣術指南を賜りながらお役に立てず、申し訳……
(同じく見逃されたアリシアの声に振り向いて。命を狙われたのに表沙汰にしないとは、副団長ですらアリシアを無闇に誅殺できないらしい。たぶん国王がらみ……いずれにせよ、近衛隊副長御自ら命がけでお膳立てした副団長抹殺のチャンスをフイにした失態を犯した以上、剣術指南、シエルを救う手立ての話はボツになるだろう……力無く立ち上がると刀を納め、重い足取りでアリシアに歩み寄ると、妙にしおらしくなった……おそらく二度と会う機会を与えられないであろう彼女を起こすべく手を差しのべて。)
>797
…いえ、正直驚きましたよ。まさかあれ程の秘技を隠していたとは。私の目に狂いはなかったと、そう確信しました。
(手を取り立ち上がると、まだ自力で姿勢を維持することが困難なため縋り付くようにレドの腕に抱きついた。その華奢な身体は女性特有の柔らかさを持ち、剣の道に生きる者としては些か女性的過ぎる。おそらく騎士学校を出て以来まともに鍛錬などしていないのだろう。これで一時的とはいえ副団長と互角に渡り合ったのだから驚きである。凡人に一流の技術だけを継ぎ接ぎしたような、そんな強い違和感を与えるものであった。
一先ずアリシアはレドに身を預けたまま上目遣いで顔を覗き込み、普段の調子で薄ら笑いを浮かべて謝罪しようとするレドの言葉を遮って感想を語った。そもそも並の冒険者であれば副団長と勝負すら成り立たないことであろう。それにも関わらずレドは規格外の技を用いて副団長を後一歩の所まで追い詰めて見せた。それだけで指南役としての実力は十分過ぎる程に証明されていた。)
>797
…いえ、正直驚きましたよ。まさかあれ程の秘技を隠していたとは。私の目に狂いはなかったと、そう確信しました。
(手を取り立ち上がると、まだ自力で姿勢を維持することが困難なアリシアは縋り付くようにレドの腕に抱きついた。その華奢な身体は女性特有の柔らかさを持ち、剣の道に生きる者としては些か女性的過ぎる。おそらく騎士学校を出て以来まともに鍛錬などしていないのだろう。これで一時的とはいえ副団長と互角に渡り合ったのだから驚きである。凡人に一流の技術だけを継ぎ接ぎしたような、そんな強い違和感を与えるものであった。
一先ずアリシアはレドに身を預けたまま上目遣いで顔を覗き込み、普段の調子で薄ら笑いを浮かべて謝罪しようとするレドの言葉を遮って感想を語った。そもそも並の冒険者であれば副団長と勝負すら成り立たないことであろう。それにも関わらずレドは規格外の技を用いて副団長を後一歩の所まで追い詰めて見せた。それだけで指南役としての実力は十分過ぎる程に証明されていた。)
(/名前欄の記載と本文を一部修正しました。)
>799
そ、そうおっしゃっていただけると光栄ですアリシア様……まあ、アレは専用の東刀と幼少からの気の練りあってこその「座興」にて、騎士の皆様にはお目汚しにしかなりませぬ。ぶ、無作法お許しあれ……
(どうやら副団長の強さはアリシアの目からしても桁外れであり、あの結果でも彼女のお眼鏡に叶ったらしい。感謝の言葉に加えて「竜狩り」についての謙遜を述べつつ、自らに身を預けてくるアリシアの身体を肌で感じ取って。「竜狩り」についての言葉も謙遜ばかりではない。確かに多彩な技を学んできたようだが、この華奢さでは気の練りの負担に身体が耐えられず「竜狩り」は使えまい。盗んで使おうとしても今のように行動不能になる。いずれ剣をもってこの柔肌とぶつかり合うだろうが、副団長に比べれば勝算はある、と分析した。
……一方で顔と身体はやたらアタフタしており、声は震え、アリシアの上目遣いもサッと目を逸らして合わそうとせず。レドは葛藤している。危難が去って二人きりの良いムード、弱り切って縋りつく姿が、憧れのクレア似の美貌と色気をより引き立てる。何だかおかしくなりそうだが……忘れてはならない。自分を上目で見つめる瞳は邪眼の類であり、目の前の女性は旧友を虐め、自分を罪人に仕立てて勇者を貶めんとした悪人であるということを!)
>794
人の命に関わるってのは合ってるね。…ああ、それと危険でもあるかな。
(人の命に関わる仕事…流石に範囲が広い。目立たない、との前提があってもイマイチどんな仕事を予想しているのかは見当がついてない。本職ではターゲットを護衛する冒険者と殺り合った事もある。ウラルが過去に護衛を依頼を受けた事があれば他の暗殺者と戦った事があるかも知れない。その場合、出会い頭に少しとはいえ隠密技術を使ったのがヒントになって正解に近づいている可能性も考えられる…が、もう少し予想の範囲を狭めようと追加の情報を出す。)
ああ…そういう事ね。お金なんて窮しない程度にじゃんじゃん使う方が良いと思うよ。使わないまま死ぬのは勿体ないからね。
(支払いが過剰な額だったらしい事をウラルの反応からようやく察する。が、気づいても後悔した様子はなく。本職の危険度と今までの所業から買った恨みから自分は長生きするとは考えていない。そもそもしたいと思ってもいない。なので散財こそしないが大金の消費に抵抗心は薄いし使わないと損くらいに考えている。ので自分を心配しているのは何となく察しつつもウラルとは反対の考えを口にする。)
僕はこのまま向かって大丈夫だよ。ウラルちゃんは?準備あるなら馬車くらいは手配しとくよ?
(道具類はもう少し、内ポケットに入るが…万一でも裏の店での取り引きを見られると面倒だ。幸い、普段から素性が知れた時の事を考えて最低限の装備は整えている。加えて前回の仕事の残りもあるので大丈夫だろうと判断して自分は行けると伝えて。手続きが終わったのならギルドに用は無い筈なので、席に放置していた東刀を回収して出口に足を進める。)
>800
ふふ、レド殿にも案外可愛いところがあるんですね。勇者様がお気に召した理由が分かった気がします。
(仕草、声の震え、終いには目を逸らされたことを決定打として、異性として意識されていることを察すると、アリシアは内なる悪戯心を刺激されてニヤッと口角を吊り上げた。支えを借りながら、若干のからかいを交えて歩みを進める。きっとレイラもこうしたレドの可愛気を気に入ったのだろうかと納得して。)
さて…この場を撤退する前にこの子の供養をするとしましょう。
(幼い子供の亡骸を前に歩みを止める。その子を視界に入れる頃にはアリシアの表情には先程までの笑みは欠片もなく、憐れむような目を向けて暫く立ち尽くした。程なくしてレドの腕を伝うようにしてゆっくりとその場に膝を着くと、見開かれた子供の瞼をそっと閉じてあげて、両手で包み込むようにその小さい手を握った。)
…守ってあげられなくてごめんね。
(一筋の涙が零れると同時に震える声で懺悔する。子供の手を胸に抱き寄せて震える姿からも分かるとおり、それは紛れもなく本心からの言葉であった。普段の残虐で狡猾な悪魔のような姿からは想像も付かない一面。きっとどちらも偽りのないアリシア本来の姿なのだろう。彼女の複雑で不安定な精神性が垣間見える一幕であった。)
>802
なっ!ぐぬぬ、アリシア様もお人が悪いなもう……
……供養?ああ、そうですね……。……?これは……。
(心の動揺を見透かされて髪をぐしゃぐしゃしながら歯噛みして。耳の後ろなど夜空の下でも分かるほどに真っ赤だ。こんなことであの女にペースを握られるなんて悔しい!でも彼女の言う通りそれでレイラさんに気に入られた節もある。まあいいか……と溜息を吐いてアリシアに抱かれながら歩いていると、彼女が自らの身体を離れ子供の供養を始めた。最初はパフォーマンスかと冷めた目で見ていたが、本心と悟って目を丸くして。これがシエルの言っていたアリシア本来の優しい姿なのか?まるで憧れのクレアのような慈悲深い様相をぼーっと眺めていたが、思い直したように自分は父親の供養を始めて)
そう怖い顔するなって。命令ならどんな酷い事でも逆らえないのが騎士のサガ、農民(おれら)はとっくに経験済みのことだよ。この不条理から抜け出せたことを感謝すべきかもしれないぞ。
……不服そうだな。俺だって納得はできない。首謀者に会ったら斬り捨ててやりたいぜ……ま、よっぽど反省してるなら考えてやらなくもないが。
……ああ、もう聞いちゃいないか。せめて安らかに眠れ、せめて来世は幸せであれ……
(一心に子供を憐れむアリシアとは対照的に、レドは無念の死に顔を浮かべる父親を見下ろし、ブツブツと騎士社会の不条理を説いて。腹立たしい皮肉を唱える顔と口調は、その実父親の無念を想い寂し気だ。今となっては副団長が親子を冒涜したのは挑発で、手にかけたのは本意で無いように思える。だが主命の一環として無意味に殺された父親を見ると、先の大弾圧を思い出す。正直本当はもうレドも思い知っている。あの状況では鎮圧以外の手は無かったと……それでも実際首謀者に会ったら割り切れるかは分からない。命令とあらば我ら弱き民を容赦なく手にかける騎士、社会なんて肯定できるはずがない……ひとしきり言い終わると父親の瞼を閉ざし、荷馬車から引っ張り出した毛布を亡骸にかける。そして両膝をついて指を組み、静かに目を閉じて父親の冥福を祈り。
祈りつつちらりと憐れみの目をアリシアに向けてみる。今更何をしようが悪人という評価は覆りそうにない。が、騎士に向かぬ身体に生れながら、名門の跡取りとして騎士社会からの離脱を許されない身の上。おまけに副団長レベルとの謀略戦まで付いてくる。非情でなければ生き残れないのも事実だろう……思わず気の毒に思い、ぼそっと囁き。)
お互い世間の荒波に揉まれる身の上。案外同じかもしれないな。俺もお前も……
>803
どうやら其方も終わったようですね。それでは行きましょうか。その…今一度お手をお借しください。
(子供の供養を終えたアリシアはレドに向き直ると、丁寧に毛布まで掛られている父親の亡骸を見てその気遣いに感心した。撤退を促しつつ、出自さえ申し分なければ近衛隊に招き入れたかったと若干の悔しさを感じさせるジト目で暫くレドを見やると、ふと今の自分が自力で立ち上がれない事を思い出す。再び申し訳なさそうに苦笑いを浮かべて手を差し出した。今のアリシアは何をするにしてもレドに依存せざるを得ない。見返りに何を求めらたとしても抵抗すら出来ないこの状況に置かれて初めて、レドが良識のある人間で良かったと心底安心していた。しかしこの時はまだアリシアは気が付いていない。商人の馬が襲撃の際に真っ先に襲われて既に亡きものになっているのは勿論のこと、アリシアが乗ってきた馬は激しい戦闘の余波を避けて遥か彼方に逃げ去っていたことを。)
>796
(ティアの憂いがない様子を見ては、大丈夫だと判断したミミは、笑みを向けた後司祭に促されるまま馬車に乗り、遠ざかっていくティアの姿が見えなくなるまで窓から見ていた…自分がしようとしていることは本当に危険だ、自分はもちろんティアの身も危うくなるのだから…それでも、あの牢獄からティアを出すことを諦めようとは思わない。そのためにも、策を考えなければ…)
…えーっと、聖女様とお酒のは涙じゃないかなぁ…?
(隣に視線を向けると、クレアが涙が流しているのが見えて。ティアとの別れの涙……と思いたいが、禁断症状によるものとも思われる。恐らく2つが合わさって溢れ出たと思い、苦笑いしながらそう告げて)
>801
危険…やっぱり、人命救助のお仕事でしょ~!火災とか水難事故とか、災害とかだと助ける側も危険だからねぇ~。
(自分の予想の一部が当たり、更にアヤトが新たに出したヒントから確信して。そう、人命救助の仕事だと確信したのだ…自信満々に真逆へと進み、自信たっぷりな表情でそう答えて。ウラルは当然防衛の仕事を受けたこともあり、恐らく暗殺者と思われる敵とも交戦したこともある…が、最初の隠密技術のことは完全に頭から抜けている様子。)
あ~…確かに、私もそう思うけどねぇ~…何があるかはわからないじゃない?例えば~…誰かと結婚して~、子供ができたらその子のために残しとかないといけないでしょ~…?
(確かに、アヤトの、言い分もわかる。お金がたくさん残ってるまま人生を終えるのは勿体ない…だが、何が起こるかはわからないのが人生。事故で治療費がたくさんいるというのもあるが、仮に子供ができた時はその子供のために残しておかないとという考えを口にして。こういった考えが普通に出てくる辺り、今まで平和に過ごしてきたのがわかる…なんともウラルらしい考えだ。)
そぉ?アヤトくんは準備がいいねぇ、私は~……私も大丈夫かなぁ。それじゃあ、馬車の手配に行こっか?
(もう準備ができているアヤトに、笑みを浮かべながら準備がいいと告げて。自分も鞄の中を確認し…魔法薬に応急処置ができる医療セット、暗所用のランプに携帯食料、自分のマグナムの銃弾等…十分にあることを確認すると、顔を上げて自分も準備は大丈夫だと告げて。このまま馬車の手配をしようと告げて、アヤトに続いて出口へと足を進めて)
>804
坊や、お前もお休み……手を?ま、まあしかたないですね、では参りま……
あっ、アリシア様!馬がいない!くっ、レイラさんを逃がさなきゃいけないのに!
(子供まで野晒しじゃ子供もアリシアも可哀想だ。子供にも毛布をかけて弔い。アリシアを見ると立ち上がることも叶わないようだ。世の中のためにならない人物として今討つべきかもしれないが、副団長ですら手出しできない人物を先走って仕掛けるのはかえって危険……またアリシアとくっつくのはムズムズするが、ひとまず戦闘が終わったことで手袋を脱ぎ肌が露になった手を差し伸べようとした時、周囲の異変に気付いて手が止まり。馬がいない!国王の手の者に待ち伏せまでされ狙われた以上、レイラさんには一刻も早く報告を、いやこの国から脱出させなければならない!でなければレイラさんもこの親子のような目に……そんな焦りで差し出そうとした手が震えており。)
>805
うぅ…帰ったらすぐにお酒を飲みましょう…!このままでは…おかしくなってしまいます…!
(ティアの姿が見えなくなったことで完全に思考が酒に支配されたクレアは、瞳を潤ませてギュッと抱きつく力を強めて自身の惨状を訴えた。丸一日酒を抜いた反動は相当に大きいようで「おかしくなる」とは言うもののその点に於いては既に手遅れである。酒への依存を絶つには途方もない時間を要することであろう。)
>807
レド殿、そんなに焦らずともきっと勇者様は大丈夫ですよ。騒動の黒幕も、副団長を仕向けた上で失敗など想定していないことでしょう。次の手を打つにしても最低でも数日の時間を要する筈です。
(「ありがとうございます」と一言礼を言ってアリシアは差し出された手を取り立ち上がると、再びその身を預けてレドの腕に縋りついた。弟子という立場や、その手の震えからレドがレイラの身を案じて相当に焦っていることを察して、安心させるべく、杞憂だと言わんばかりに毒気のない笑みを浮かべて宥める。副団長は恐らく騒動の黒幕が秘密裏に繰り出せる最高戦力、となれば失敗を想定して動いてなどいないことであろう。また一から計画を練るにしても相応の時間を要することは明らかであった。)
それよりも先ずは自分達のことを優先しましょう。帰る手段がないとなれば…宿を探しましょうか。ここは王都とデュランダルを繋ぐ主要交易路、暫く歩けば宿の一つや二つ見つかるでしょうし。
(副長自ら出向いた以上は近衛隊で指揮権を持つ者は存在しない。故に迎えが望めないことを鑑みると、一先ずは身体を休めることを優先するべきであろう。流石に満身創痍の状態で野宿をしたくないアリシアは、思考するまでもなく宿に泊まることを提案した。王都とデュランダルを繋ぐ主要交易路ならば草原を越えた先に宿くらいあるだろうと考えたようだ。)
>809
むむ、確かに……すみません。レイラさん、あ、いやレイラの事が気がかりでつい……では宿を探しに……あ、あの!ご安心を!絶対二部屋確保しますから!
(アリシアに宥められて平静を取り戻すと、目を伏して取り乱した事を詫びて。いずれ戦う運命にあるとはいえ、今のレドにとっては腕に縋りつく身体の柔らかさと、会食の時の貼り付いたようなものとは全く異なる屈託ない笑顔が、心の平静をもたらしてくれる。が、提案通り宿を探しに……アリシアと一晩を過ごすと決めた途端、何を想像したのか再びあたふたし出して。さっき副団長を退けた青年も、女性が絡むと新米騎士が如く平静を失ってしまうようだ……)
>810
おや、レド殿…その慌て様はいったい何を想像したのでしょうか。ふふっ…私としては相部屋でも構いませんけどね。
(レドのあたふたした様子を見て精神的にはもう大丈夫そうだと判断すると、再びアリシアはニヤリと口角を吊り上げてからかい始めた。年頃の青年が考えることなど想像に難しくないが、あえて知らぬフリをして尋ねてみる。そして、返答を待たずして畳み掛けるように上目遣いでレドの瞳を覗き込み、ギュッと抱き締める力を強めて相部屋でも構わないと囁くように言ってみせた。実際悪魔なのだがその様はまさに小悪魔のよう。宿までの道中の暇つぶしとしてはなかなか意地の悪い冗談である。)
>808
うーん…でも、ギルドに報告するのが先でしょ?あと、その剣も直してもらわないとだし…大丈夫だよ、時間はかからないし終わったら好きなだけ飲んでいいからさ!
(クレアの、惨状を見ればすぐにでもお酒を飲ませてあげたいところなのだが、ギルドの決まりであり依頼が終わったら報告しなければならない…それに、その時に報酬も渡されるのだから行かないといけないだろう。それに加えて、ダンテとの戦いで折れてしまった剣を早く直すために先に預けに行った方がいいと考えており。苦笑いしながらどちらもそんなに時間はかからないと、その後好きなだけ奢るとクレアを励まして。もう限界に近いが、何とか飲みに行くまで保ってほしいと密かに願っており…先程土産として1本もらうべきだっただろうか…?)
>811
なっ!なんと申されますアリシア様!まさか私とレイラを仲違いさせる気じゃないでしょうな!?……ああもう、まともに歩けないのに呑気なことで……無理そうなら仰ってください。背負いますので。
(こちらの動揺を見透かして翻弄するアリシアの態度にますますあたふたして、顔も赤くして。会食の時は上手く立ち回ったはずなのに今はアリシアにやられっぱなしだ……というか自力で動けないのにからかっている暇はあるのかと、溜息一つ吐くと恥ずかしさが呆れに変わり出す。道中ずっとこんな感じなんだろうな……と観念すると、淡々とした口調でいざとなればアリシアを背負うことを提案する。それでもこの悪魔のような上目遣いには魅入られたくないからと視線は前方に向け、宿へと歩を進めて)
>812
うぅ…分かり…ました…
(ミミのご尤もな説得に、ポロポロと涙を零しながらもクレアは素直に了承した。これ以上駄々を捏ねるのは良くないと僅かに残る理性がそうさせたようだ。どれ程の時間こうしていただろう、酒の欲を断つ為に心を無にして、お説教された後の子供のようにシュンと俯きながら窓の外の景色に目を向けていると、丁度デュランダルへと差し掛かる辺りで衝撃の光景が目に入る。)
アリシアちゃん…!?と…あれは誰でしょう…まさか…恋人でしょうか…!?
(見間違える筈もない。ライデン家特有の金髪碧眼に近衛隊の軍服、かつて本当の妹のように愛情を向けた従姉妹の姿がそこにあった。顔立ちの整った長身の青年の腕に抱きつき、仲睦まじく歩くその姿は傍から見れば明らかに夜のデートを楽しむ恋人同士である。)
その…丁度親類が通りがかりまして…!幸せそうで何よりです…!
(通り過ぎ二人の姿が完全に見えなくなると、興奮気味にミミに顔を向けて心情を語った。数年前に仲違いして以来近況は全く把握していなかったが、あの時の随分と追い込まれていた様子から一変して、今はこうして恋人まで出来て幸せな日常を謳歌していることにクレアは感動を覚えた。酒のことなどすっかり忘れて満面の笑みを見せる。)
>813
そうですねぇ…もし捨てられて路頭に迷うようなことがあれば、その時は私がレド殿を拾ってあげますよ。
(レドの問いかけにアリシアは顎に手を当てて考えるような仕草を見せると、相変わらず意地悪な冗談で返した。しかし、これに関しては冗談とは言いつつも半分本気である。通常の冒険者と比べて頭一つ抜きん出た技量を持つレドは可能なら手駒に据えたい。本当にレイラがレドを捨てるのならばアリシアからしたらこれ以上ないチャンスである為だ。)
へぇ…ではお言葉に甘えて。これは冗談とは言わせませんよ?
(戯れに興じていると聖教国の馬車が通り過ぎて行くのが見えた。しかし、そんなことはお構いなしにレドの提案に乗る形で、するりと抱きついていた自身の腕を解いたアリシアは身体を滑らせるようにして背後に回り込むと、ニヤッと微笑んでそのまま後ろから抱きついた。後はレドが持ち上げてくれるのを鼻歌交じりに身体を左右に振りながら心底楽しそうに待っている。自分は冗談を言いつつも相手には冗談を言わせない。なんとも傲慢で悪戯好きな悪女である。)
>814 >815
ああもう。仰せのままに……ッ!
(「うわ、こんな時に通んなよ!」通りがかった聖教国の馬車に顔を引きつらせていると。当たり前のようにアリシアが背中に抱きついてくる。彼女を背負い歩き出し、たはいいが背負った途端に身じろぎしており。せっかく腕に伝わるアリシアの感触に慣れたのにその感触が背中全体に移ってしまい、彼女の吐息も近くなるという違った刺激を自分から負ってしまった。まるで将来の敵に生殺与奪を握られたかのような失態……だがアリシアをさっさと宿で寝かせたいから仕方ない。)
さっきの馬車、レイラでなければ良いですが。こんな姿をレイラに見られたら捨てられるどころでは済みませんから……それこそ死体であっても拾っていただきたいですな。私も身寄りがない、せめてアリシア様に聖教国の様式で懇ろに弔ってもらいたいものです!
(今通った聖教国の馬車に乗っているのがレイラさんで、彼女に今の姿を見られたとしたら自分は惨殺されるだろう……そんな焦りでアリシアを背負い歩くレドはぷりぷりしており。実際はレイラ以上に面倒な相手に見られたのだがそこは知る由もない。とにかく宿に着いたら何としても別部屋に彼女を押し込んで、自分は一人ゆっくり休んで色々ありすぎた今日の疲れを癒す。冒険者ギルドの「非日常」を終わらせるんだ!そう一心に願うレドの足並みは速い。それでも武芸者の本能かアリシアへの無意識の気遣いか、ぴしりと締まった腰とムダの無い足さばきは余計な揺れを起こさず、満身創痍のアリシアに余計な疲れを与えない。)
>814
(正直毎日浴びるように酒を飲んでいたクレアが、丸一日酒を抜いて辛いのはわかる。今日だけでクレアは何度涙を流したか…流した涙の5割は酒関連な気がしなくもないが…。そんなクレアの頭を撫でながら「もう少しだからね」と告げて)
…恋人…?恋人にしてはなんか……というかあの人、ウチのギルドの冒険者じゃなかったっけ?
(クレアの声で何事かというように窓から外を見て…クレアの言うアリシアと思われる女性と何処か見覚えのある青年が並んで歩いているのが見えて。アリシアという人物に関して、どこかクレアに似ているような気がしなくもない…家族だろうか?2人の様子は一見恋人のそれに見えなくもないが、アリシアという人物が青年に軽い悪戯をしてるようにも見える。あの青年の顔に見覚えがあり、確か自分が所属するギルドに居たようなと思い出すように告げて)
あぁ、やっぱりクレアの親類だったんだね…あの子。なんかクレアに似てるな~って思って…まぁ、幸せそうではあるよねぇ。
(やはりアリシアはクレアの親類だったようで、なんとなくクレアに似ていたことも納得した様子で告げて。正直アリシアと青年が恋人かどうかは微妙なところだが…酒のことが一時的に頭から抜けて、クレアも幸せそうにしているから恋人ということでいいかもと思い、微笑みながら頷き「あのアリシアって子、どんな子なの?」と問いかけて)
>806
ん?………アッハハハ!ま、そんなとこかな。ウラルちゃんは救助の世話にならないよう気をつけてね。
(まさかの正解と真反対の回答に冗談や鎌をかけられている可能性も考えるが、ウラルの表情が自身たっぷりな点から本気で言っていると悟って爆笑する。隠密技術を見られてもバレていない事からウラルには暗殺者との交戦経験が無いか練度の低い相手だったのだろうと結論を出して。何にせよ暗殺者だとバレなかったのは好都合なので曖昧な肯定の言葉でどの職だとは明言を避ける形でウラルの推測を認める。)
結婚に子供……僕には関係ない話だよ。まあ、ウラルちゃんの言ってる事には一理ある…いや、それが正しい考えなんだろね。
(一部の感情の欠落・異名を持つ暗殺者という立ち位置・利害の一致による繋がりが大半の人間関係…等の複数の要因からアヤトの頭には結婚や子供を残す…そんな選択肢は考えるまでも無くあり得なかった。故に"自分には関係ない"と明確に否定する。それはそれとして自分の考えは裏社会の生き方である自覚はある為、ウラルの考えの方が正しい生き方である事は肯定する。)
オッケー、じゃあさっさと済ませようか。
(ウラルの準備も出来ていると聞けばギルドを出て。最寄りの業者で積載量の多いタイプの馬車を手配する。ダンジョンで得た戦利品が積みきれない可能性を減らす為である。戦利品の積み込みで役立ちそうなガタイの良い騎手をしれっと指名して目的地を伝えて乗車する…前にソロの時のように自分の裁量でさっさと進めた事に気づいて。)
おっと…いつもの癖で進めちゃったけど馬車これで良いかな?
>816
ええ、勿論ですとも。私が生きていればですけどね…
(冗談半分に弔いを引き受けるものの、アリシアは苦笑いを浮かべる。もし仮にレイラが癇癪を起こしてレドが惨殺されるような事になれば、そもそもの原因である自分に怒りの矛先が向かない筈がない。きっとその時は自分も生きていないだろうという結論に至った為だ。)
実に快適ですね。ずっとこうしていたい気分です。
(耳元で囁きながら、好奇心から腕と腿を締めて鍛えられたレドの肉体をその身で確かめる。記憶を辿ってみても父親に抱き抱えられた覚えすらないアリシアにとって、こうして異性と触れ合うのは新鮮な感覚をもたらしていた。レドの身体運びが上手いこともあり、お気楽にも随分とリラックス出来ているようだ。そうしてしばらく進んでいると、前方に幾つか宿が見えてくる。殆どが満室の為か入口の灯りが消されており、未だ灯りが点っているのは最奥に佇む少し寂れた雰囲気の小さな宿であった。)
>817
あの子は誰にでも優しくて、ちょっと内気な所が可愛い子なんです。私が家を追い出された際に、本来私が背負うべきだったものを全部押し付けることになってしまって……あまり良い別れ方ではなかったのですが、生きてる間にこうしてあの子の幸せそうな顔を見られて本当に良かったです…!
(ミミの問いかけに、照れた様子で頬を掻きながらクレアは自分の知るアリシアの魅力を語った。お家騒動に巻き込まれる形で酷い別れ方をしたこともあり、結果として全てを押し付けてしまったことに負い目を感じていたクレアだが、さほど長くはない余生の間に一度でもアリシアの幸せな顔を見れたことに満足したのだろう、語りの最後には興奮気味に瞳を輝かせていた。)
>818
むぅ…なんで笑うのぉ!災害はともかく、私はそんな危ないことしないからお世話にならないよ!
(多分当たっていたのに笑われたことに対して、少し頬を膨らませており。実際は大ハズレだが…ウラルは火遊びだったり水の流れが激しい場所へは行かないから世話にならないとは言うが、冒険者をやってる以上世話にならない可能性はゼロではない。寧ろウラルの戦い方だと、世話になる可能性が高かったりする。それにしても、ヒントがいっぱい転がっていたにも関わらずアヤトのことを頑なに暗殺者だと思わないのは、彼の性格や雰囲気の影響だろうか…)
え~、そうなのぉ?正しい…かぁ……私はね、生き方に正解とか不正解とかないと思うんだ。だってぇ、人によって生き方は違うし…その人に合った生き方もあるでしょ?
(結婚や子供は自分とは関係ないというアヤトに、最初から結婚とかするつもりがないのだろうと判断して。当然、本当の理由には気づいておらずそう言ったことに興味がないのだろうと考えており、ウラルが言った考えが世間一般的には正しいのかもしれない…が、ウラル自身は本当に正しい生き方はないという考えを明かして。例え悪い生き方をしていたとしても、それもその人の生き方だからと遠くの空を見ながら話して)
うん、いいと思うよ~。寧ろありがとうねぇ、これなら見つけたモノいっぱい積めそうだしねぇ…♪
(アヤト似続いて馬車に乗車し、アヤトが馬車の手続きをしてくれたことにふにゃりと笑いながら感謝の言葉を告げて。この馬車ならダンジョンで手に入れた戦利品をたくさん積み込むことができ、恐らくガタイがいい騎手を選んだのもそういった理由だろうと察しており。)
>820
内気、か…そっかぁ…クレアにとって、大切な子なんだね。そんな子が今どうしてるか気になるのは、当然だよねぇ…。何にしても、もう一度見れてよかったね
(クレアが言ったアリシアの特徴と先程の光景を比較し…優しいかどうかはともかく、本当に内気な子なのだろうかと疑問にもつが…クレアが幸せそうに話しているためそのことは口にせず。アリシアのことよりも気になることもあるが……家を追い出されたのに残ったアリシアのことを気にしていた辺り、クレアの優しさを再度実感して。人の幸せを自分のことのように喜べるクレアも、いつか幸せに暮らせることを願いながら興奮気味なクレアに微笑み、もう一度アリシアを見れて良かったねと告げて)
>819
そ、それは光栄です。もう少しゆっくり歩きますか……
(耳元の囁き、無骨な身体を締め付けるアリシアの手足の柔らかさに身体をぴくつかせて。時折ちらりと見える横顔は、子供のような照れ顔だ。幼い頃母親を盗賊に殺され、自らを引き取った剣の師の下でストイックに生きてきたレドにとっても、異性との触れ合いは新鮮なものだ。アリシアも同じように感じているらしく、会食の時と比べれば随分邪気が消えている。何だかんだでクレアの生き写しと言える人が自らの背中でリラックスしているのは嬉しいものだ。これで少しは気分が和らいでシエルへの当たりも柔らかくなれば、と淡い期待を抱くと、ずっとこうしていたいという望みに応え、歩くペースを落として。)
ぐぬぬ、どこも空いてない!宿場ですし騎士団の詰所くらいあるはず。そこで保護してもらった方が……
……うん、そうしましょう!お、お互いレイラの癇癪で殺されたくない身の上ですし、でしょ!?
(宿場に着いたはいいがどこも満室のようだ。いつまでもアリシアを背負って歩くのは危険だ。ここで腰を下ろさなければならないのに、と歯噛みしていると、前方に飛び込んできたある物を見て急に焦り出して。唯一空いているのは奥にある小さな宿、2部屋どころかベッド1つしかなさそうな宿だけ!予想はしていたが最低の展開である。あんな所でアリシアと一晩過ごしたら篭絡されて悪の手先にされるならまだマシ、近衛隊副長を務めるライデン家の令嬢と寝たなんて噂が立てば、まともな殺され方をされないだろう……そんな最悪の運命に抗うべく、最後の抵抗としてアリシアに引きつった笑顔を向け、詰所にいる騎士団に保護してもらおうと提案して。)
>822
はい…!えへへ…あれ?そう言えば何かを忘れているような…
(ミミの言葉に元気一杯な返事で返したクレアであったが、ふと何かを忘れていたような感覚に襲われ首を傾げる。思いがけないアリシアの登場ですっかり頭から抜け落ちていたが、その話題も過ぎ去ったところで、今まさしく酒への欲求を思い出すかの瀬戸際にいた。必死に記憶を辿ろうと天を仰ぎ見て頭を捻る。)
>823
ふふっ、レド殿は冗談がお上手ですね。女に飢えた男達の巣窟に無抵抗の私を放り込むと、本気でそうお考えですか?
(レドの最後の抵抗とも言える提案を聞いて、アリシアは圧を宿した笑みを浮かべて問いかける。近衛隊と騎士団の確執があるのは勿論のことだが、会食に招待された高位の騎士でさえあの体たらく。宿場の詰所勤務の騎士の品位などもはや見る影もないことであろう。その点、例え同じベッドで寝ようとも高い理性を持つレドが血迷って手を出してくるとは考えにくい。アリシアにとって、もはや前方の安宿に泊まることは確定事項であった。)
さあ、早く行きますよ。うかうかしていたら誰かに先を越されてしまいます。
(まるで手網の如くレドの肩を揺さぶり、宿へ向かうように急かす。淡々とした口調を取り繕ってはいるが、異性との同室で一夜を明かすことにアリシアも相当に緊張していた。心臓はおそらくレドにも分かるほどに鼓動が早まっていることであろう。急かしているのは、そんな自らの緊張を隠す為でもあった。)
>824
え?…あ、あの~…ほら!あれだよ!
(いい感じにクレアが元気を取り戻したのだが、再び酒への欲求を思い出しそうになっており少々焦った様子で話し始めて。まずい、このままだと酒場に着くまでクレアが地獄の時間を過ごすことになってしまう、気の所為だと言って誤魔化しても思い出すのは時間の問題だろう…ならば、別の話で気を逸らすしかない。武器の話…は、酒の話に繋がってしまうからダメ。他に何か、クレアが食いつくような話は…)
…ほら、お互い妹分がいるみたいな話をし始めたところだったじゃん!クレアにも居るんでしょ?
(結局アリシアから連想してこの話に辿り着いたミミ…だが、よくよく思い返してみれば聖教国でレイラの像を見てクレアははしゃいでいた…恐らくは、クレアにとってレイラは妹同然の存在だと考えられる。咄嗟だったが、我ながらいい話題を出したと思うミミ…あとは、酒の話に繋がらないことを願うばかりだ…)
>821
笑ってないよ…フフフ。でも冒険者は十分危ない仕事だから世話にならないと考えるのは命取りだと思うよ。
(爆笑しておきながら笑って無いと堂々と主張した…矢先、頬を膨らませた姿を見てまた笑う。人名救助の仕事には当然、実際に就いた事は無い。仔細を調べた事も無いので冒険者がどれくらい救助されるのかは知らないが、冒険者のような危険な職業で世話にならないと言い切るのは油断しているように感じる。暗殺者は相手の油断を突いたり誘ったりするのが常套手段の一つ、なので油断の恐ろしさは身に沁みている。故に表情こそ笑顔のままだが、今まで緩めの声色から少し真剣味を帯びた声色で警告を口にする。)
その人に合った生き方ね…まあ、確かに笑って死んだ悪人もいれば、悲惨な死に方した善人もいたけどね。それにしても達観した考えだね、実は僕より年上?
(人生の目的は幸福になること。そう認識しているアヤトは今まで見てきた人間の中から世間一般的な正しさから外れながらも幸せに死んだ悪人。外れなかったにも関わらず不幸に死んだ善人…色々な死に様を思い出して。一般論的な正しさより、自分に合ったら生き方の方をしていた人間の方が幸福そうだった、とウラルの考えに納得する。自分自身も10代前半で暗殺者だったので、見た目で人を判断するべきで無いとは思っているが…甘い喋り方と特殊な匂い以外は見た目相応に思えるウラルから大人びた言動が出る度に実年齢がさっぱり分からず、冗談めかした口調で疑問を口にしてみる。)
そっか、なら良かったよ。僕は1人が多いから誰かと乗るのは新鮮だよ。ウラルちゃんは仲間も多そうだから1人の方が珍しそうだよね。
(ウラルが乗車すれば壁を2回叩いて振動で騎手に出発を伝える。他人と乗る事が全く無い訳ではないが、裏関係の気の抜けない相手が多いので気軽な空気の相手は珍しいので浮かれる訳ではないが新鮮な気分だった。)
>825
巣窟て。ひどい言い草ですな。あの安宿や私の方がよほどタチが悪く見えますが……会食の時から薄々感じておりましたが、アリシア様にとって騎士団という男社会は生き辛い場所のようだ。
(騎士団の詰所を「女に飢えた男達の巣窟」などと表現するアリシアにげんなりした顔を浮かべて。最後の抵抗をへし折られたからというのもあるが、方便にしてはあまりにも実感がありすぎた。そういえば会食にいた騎士連中もハゲ(ダンテ)みたいな下品な連中だったな。悪人とはいえあんな連中に日々揉まれる苦労には流石に同情せざるを得ない。)
……いいでしょう、アリシア様。今日くらい騎士団のことは忘れてゆっくりお休みください。このレドが夜通しお守りしますから。
(もういい、覚悟は決めた。これは要人警護と割り切る。というかアリシアの鼓動が速い。さんざん人をイジっておいて自分も緊張してるらしい、自分の得意な手で攻められると弱いタイプか?……あれこれ考えつつも、急かされるまま安宿へ向かい入口でアリシアを降ろし、両手を握って徹夜してでも守ると誓って。顔は穏やかな笑みを浮かべつつ、アリシアの碧眼を見下ろしている。ここに至ってようやく、今までまともに視線を合わせられなかった彼女の瞳を見つめられるようになった。)
>826
そうですねぇ…ふふんっ、誰にも負けない自慢の妹がいます!今は疎遠ですがいつか仲直りを…全部私が酒に溺れてしまったせいで…あ…
(致命的な何かを忘れている感覚を残しながらも、一旦それを頭の片隅に置いて思考をシフトする。胸に手を置き、可愛らしく鼻を鳴らしてドヤ顔を見せると「勇者」なんて大層な称号を持つ妹を自慢した。肩書きと腕っぷしならば確かに並大抵の相手には負けないことであろう。そんな妹とは現状は疎遠である。その原因が酒であることを語ろうとしたその時、クレアは間抜けな声を出して固まる。思い出してしまったのだ。酒への渇望を…)
>828
ええと…お願いします…
(先程までの一歩引いた姿勢から打って代わり穏やかな表情で目を合わせられた上に手まで握られたことで、動揺を隠せないアリシアは目を泳がせてぎこちない返事で返した。短いながらも濃密な時間を共にしたことでアリシア本来の人格が引き出されつつあるようだ。自らの顔が徐々に熱を帯びて紅潮していくことに気が付くと慌てた様子で握られた手を解き、改めてレドの腕に抱きついて隠すように二の腕部分に顔を埋めた。
傍から見ればカップルがイチャついているようにしか見えないその光景に「はぁ…泊まるなら早くしてくれ」と見かねた宿の店主が呆れたような溜息混じりに声を掛ける。)
その…外観のわりには意外と内装はしっかりしているようですね。
(近衛隊宛てに請求書を送るように告げて早速と精算を済ませると、意を決して案内された部屋へ踏み入る。中を見渡せば、古いながらも清掃の行き届いた部屋は案外悪くない。ベッドは案の定一つだが、シャワールームとトイレまであり安宿としては十分であった。生憎部屋にはベッド以外の家具はなく、やむを得ずレドの腕を抱いたままベッドに腰掛ける。改めて異性とこれから一晩を共にすることを意識すると、心臓の鼓動が早くなる。気を紛れさせようと宿の内装を褒めるものの、声は震え頬は未だ赤みがかっていた。)
>827
そう言いながら笑ってるじゃない!それに爆笑してたのに笑ってないって言うのはぁ、無理があるでしょ!…う~ん……冷静に考えてみたらそうかも。今までパーティで活動してたから何とかなってたっていう状況、そこそこあったし……
(再び笑うアヤトにむぅっとした表情で怒り、先程爆笑したのにその主張は無理があると律儀にツッコミを入れて。少し真剣な声色に変わって警告を受けると、冷静になって考え始め…よく考えれば今まで危ない状況が幾度があったことを思い出して。運よく今までどうにかできていたが、一歩間違えれば命を落としていただろう…)
…あれぇ、言ってなかったっけ~?私は半獣人だからぁ、アヤトくんよりもかなり年上だよぉ~?ちなみに、蛇の半獣人だよ~…♪
(自分の自己紹介の時に種族を言ってなかったことを思い出し、半獣人であることとアヤト…人間よりもかなり年上であることを明かして。他の半獣人のように獣耳や尻尾がなく、瞳が人間と違うものの初見では絶対気づけないだろう。おまけに蛇という珍しい種族だ…それにしても、アヤトの発言に気になる箇所があり「ところでぇ、さっきアヤトくんが言ってた人達なんだけどね~…実際に見たって感じの言い方だったけど、助けられなかった人…じゃないよねぇ?」と尋ねて。人命救助の仕事をしていると、助けられず目の前で人が亡くなるなんてことは無くはないだろう……だが、その時点で善人や悪人なんてことがわかるだろうか?そう疑問に持ち、大ハズレな予想をした割には鋭い質問をして)
高難度の依頼を1人でよく受けてるって、言ってたもんねぇ…うん、仲良しな人がいっぱいいるよ~?1人でもいけることはいけるんだけど~…私はサポートに徹した方がいいしぃ…何より、誰かと一緒に依頼をこなすのは楽しいよぉ♪
(先程アヤトが話していたことを思い出し、高難度の依頼を受けるルールを知らなかったことから本当に1人での活動が多いのだろう。ウラルは元から仲がいい人や商売をキッカケに仲良くなった冒険者等、仲間は結構居る方だ。1人で依頼を受けることはほとんど無く、自分の固有魔力を活かせることと純粋に誰かと受けるのは楽しいから一緒に依頼を受けることを笑顔で明かして)
>829
確かに、勇者なんて凄い称号を持ってるくらいだし、本当に自慢できる可愛い妹だよね?…きっと仲直りできるよ、今日みたいに頑張ってる姿を見たら……あ…。
(自分の予想通り、この話題に食いついてくれたことに安心しており。確かに勇者という称号を持っており、聖教国、さではあるがあんなに立派な像が複数建てられていたりと本当に自慢できる妹だろう。おまけにS級冒険者、戦っているところを見たことはないがきっと強いのだろう…そんなレイラと疎遠状態であるが、今日みたいに前を進んでいる姿を見ればきっと仲直りできる…と言いかけたところ、予想もしてなかったことが起こってしまい……。)
……け、けどさぁ!ウチの妹の方が凄いんじゃないかな~!私の妹達は本当に誰にも負けないくらい凄い妹達だし~!
(てっきり疎遠になった理由は不死鳥の翼のメンバーであり、クレアの恋人でも合ったカルロスが亡くなったのが原因だと思っていたが……まさか、こんなところにも酒が潜んでいたとは。このままではクレアがまた苦しい思いをしてしまう、それを阻止するためにクレアを焚き付けるような発言をして大袈裟にして。これが正しい判断とは言えなかっただろう…だがこれが焦ったミミの限界であった…)
>830
……ッッッ!カルロス様の手前、考えもしなかったことが……
(覚悟を決めて入った安宿の部屋、レドにとっては最悪である。ベッド1つしか無い小部屋のくせに、小奇麗でシャワーまである。まるで事に及べと言わんばかりだ。アリシアもすっかり舞い上がって自分の腕に縋りついている……密室に漂う女性特有の芳香に鼻を刺激されると、なにかブツブツ呟き、歯を食いしばりながらプルプルと身体を震わせて。
剣士としてばかりか異性としてもクレアに惹かれたレドだが、カルロスの存在を知ってからは恋愛感情を抱いていない。あの人が愛するに足ると信じた人との仲を引き裂いてクレアを尊厳を傷つけるなど出来ない。たとえその人がとうの昔に死んでいたとしても、だ。だが憧れのクレアの生き写しがこうして側にいると、捨てたはずの夢を思い起こしてしまう……それも良くない。「お、お互い落ち着きませんな。少々お待ちを。」と声をかけるとゆっくり腕をほどき、部屋から出て行って。)
お待たせを。今日は色々とありすぎて疲れましたな……リラックスするにはこれが一番。これで一息入れましょう。
目の前で用意させたから大丈夫とは思いますが……失礼。
(しばらくすると盆を片手に戻ってきて。家具というには頼りない、板に棒を付けただけの簡素なナイトテーブルをアリシアの手元へ手繰り寄せると、その上に盆を置いて。木の盆に乗っているのは素焼きのマグカップに注がれたホットミルクが2つと、無地の皿に積まれたビスケットだ。豊穣亭とは比較にもならない地味すぎる盆だが、ミルクと砂糖の香りを甘く漂わせるホットミルクは今日の疲れを癒すのに最適だからと、宿で作らせたらしい。アリシアの隣に座り直すと、早速アリシアのマグカップに口をつけようとして。それは一服盛られてないかというアリシアの不安を拭い去る行為……毒見である。)
>832
…うぅ…
(クレアは脱力してその場にへたり込んだ。ミミの妹自慢に若干の対抗心を抱いてはいるものの、言葉を紡ぐ余裕がない程に憔悴している。幸いにも、クレアが死んだ魚のような瞳で動かなくなったタイミングで馬車は停止した。外へ目を向けると、そこには慣れ親しんだデュランダルの街並みが広がっており、ついにギルドに帰還を果たしたようだ。従者が馬車の扉を開けて退出を促すものの、クレアはボーッとして上の空であった。泣き出すよりは幾分マシなものの、また何かきっかけがあるまではしばらく要介護状態であろう。)
>833
…っ…!?で、ではご厚意に甘えるとしましょう…
(夜通し守るという誓いの有言実行なのだろう、流石に毒味までするとは思ってもみなかったアリシアは驚きと羞恥から顔を真っ赤に染めるが、首をぶんぶんと横に振り平常を装って毒味を見守る。レドが毒味を終えて異常がないことを確認すると、関節キスを前に高鳴る鼓動を抑えながら、マグカップを受け取って自らも口を付けた。)
レド殿…私の思い上がりでなければ、貴方は私に異性として関心があるとお見受けします。私も…その…正直に言えば貴方に好意を抱いています。間接的にとは言え、貴方の口付けを受け入れたのもその為です…ですので、レド殿になら私は…何をされても構いません。
(まだ中身の残ったマグカップを盆に戻し、上目遣いでレドの顔を覗き込むと、アリシアは真っ赤に頬を染めたまま潤んだ瞳を向けて思いを打ち明ける。アリシアは決して察しの悪いタイプではない。レドが自分にクレアの姿を重ねていることはまだ知る由もないものの、声色や表情などから少なくとも自分が異性として意識されていることははっきりと分かっており、アリシアもまた、レドとの共闘やその後のスキンシップを経て好意…と言うよりは初めての恋心を抱いていた。レドの右手を両手で包み込み自身の胸に抱き寄せると、意を決して何をされても構わないと宣言する。)
しかし…私も由緒正しきライデン家の人間です。婚姻を結ぶ前に純血を捧げることは叶いません…。ですので…レド殿にその意思があるのなら、せめて私めの唇を奪ってください。
(アリシアは言葉を続ける。名家の跡継ぎである以上は婚姻関係にない相手と身を重ねることは出来ない。俯き、悔しそうに手に力を入れてそう告げた。暫しの間を置いて、再び顔を上げると今度は真っ直ぐにレドの瞳を見据え、自らの唇に手を添えて、この唇を奪ってほしいと縋るように瞳を揺らして訴えた。これは最後の意思確認を兼ねた告白である。レドが自分に向ける関心はどの類いかはまだ分からない。もし単なる肉欲や好奇心であれば、いずれライデン家に婿入りする覚悟で健全な交際を始めることなど叶わないであろう。レドの持つ関心が純然たる好意であることを信じて、アリシアは今の自分が捧げられる最大限のものでレドの真意や覚悟を量っていた。答えを待つアリシアは今にも泣きそうで、今この瞬間にレドの目の前にいるのは「魔を統べし者」などという悪魔ではなく、ただ一人の恋焦がれる少女であった。)
>834
…あ…えーっと…ほ、ほら!ギルドに着いたよ、早く報告しに行こう!
(あの程度じゃ対抗心が芽生えなかったか、それとも喋る気力もなくなったか……状況から見て、恐らく後者だろう。涙を流す気力もない辺り、とっくに限界を迎えている…どうするかと考え始めたところで、運良くギルドに到着して。内心助かったと思いつつ自力で立てなさそうなクレアを立たせて、従者にここまで乗せてきてくれたことにお礼を言いクレアを支えながらギルドに入り)
>831
ごめんごめん、つい面白くて。機嫌直してよ、金平糖あげるから。1人が基本の僕にフォローはあんまり期待しないでね、危ない時はウラルちゃんは自分の安全を優先してよ。
(正直もう少し笑っていたかったが表情から怒ったのが見て取れたので笑いを止めて、謝罪する。パーカーの内ポケットから金平糖入りの巾着袋を取り出して袋の口を開いて中身を見せて「好きに食べてよ」と差し出す。甘味で機嫌を取る作戦だった。大抵の状況は自分一人なら乗り越える自身はあるが…人をフォロー出来るかは分からない。パーティーを組んだ以上、助け合えるのが理想だがパーティー活動自体の経験が少ないので、今までのパーティーのようなフォローには期待しないように釘を刺す。代わりにウラルの身が危ない時は自分を優先するよう伝える。)
ああ、成る程。そりゃ見た目と中身の年齢のイメージが合わないよ。それにても蛇の半獣人は珍しいね、僕も嗅いだ事がない…よ………
(蛇の半獣人の寿命は知らないが、かなり年上と言うあたり相応に長いのだろう。過去に会った半獣人の事も考えれば…100か200か或いは1000歳であっても不思議ではない…と緩い推測で逆サバ読みしていた。獣人にも半獣人にも何人か会った事はあるが蛇の獣人は覚えがない、出会い頭に感じた匂いが分からないも当然だったと納得して。種族や年齢を知っても驚く様子は余り無くむしろ冷静で匂いや年齢の謎が解決してスッキリした事に満足げな笑顔だった…がいきなりの鋭い質問には思考を巡らせる。藪蛇な事を言ったか…或いは鎌をかけられたか…と考えて内心では警戒しつつ、悟られないよう表情には出さずに人名救助での話では無いと否定。下手な嘘でこれ以上、墓穴を掘るのを避けたいので質問の答えになるであろう本当の過去を簡潔に明かす。)
ん………仕事の話では無いよ。僕は生まれ育ちが悪くてね、子供の頃は戦場とか治安の悪い地区で過ごす事も多かったから、人が死ぬのを見る機会には事欠かなくてね
(物心ついた頃から父親に裏の世界で生きるのに必要な技術を叩き込まれ、それを完璧に身に付けるまで武器だけを手に戦場や無法地帯に1人放り込まれた。そして身に付けば、別の技術を叩き込まれ別の戦場か無法地帯に。そんな拷問のような日々の繰り返しで、人の死を見るのは暗殺者となる以前から日常茶飯事だった。流石に正直に全て明かすと別の問題が発生しそうなので…父親の事は省く、無法地帯も治安の悪い地区に危険度を下げる、どう生きてきたかも説明しない。あくまで人が簡単に死ぬような厳しい環境をどうにか生き延びてきた…くらいに取られるように言葉選ぶ。戦場にも治安の悪い地区にも善人と悪人はそれぞれ存在する、そして両方が理不尽に死ぬ。そんな世界が有る事を冒険者で長生きなウラルなら知っている筈…そして知っているなら納得させられるだけの質問の答えになっている筈と考えて。本人は所詮は過ぎた過去と気にしていない、ので暗い表情も嫌な顔も見せず今までと同じ様子で話す。)
楽しい…ね。それなら固定パーティー組まないの?サポートに徹するなら信用出来る前線系の冒険者と組んだ方が安定するでしょ。
(一緒に依頼をこなすのが楽しい。協力関係であっても背中を刺されかねない環境で育ったアヤトには共感しにくい言葉だったが笑顔を保つ。人と依頼をこなすのが楽しく、自分もサポートに徹する方が良い、となれば特定の誰か…特に前に出て戦うタイプの冒険者と固定のパーティーを組まないのが不思議だった。人と連携するなら手の内や考え方を知ってる方が良いのは自明の理である…そんな戦闘効率を考えての疑問でもあった。)
>836
はひ…分かりました…
(力無い返事で返すと、ミミに連れられるまま報酬を受け取るべくそのまま受付へ進んだ。そして手続きの最中、受付嬢はハッと思い出したようにクレアに伝言を伝える。「明日の正午にギルドで待つ。」と、まるで決闘の申し込みかのような言付けを残したのは先程まで話題に上がってた本人、勇者レイラ・ハートである。いったいなぜ…と予期せぬ出来事に困惑を隠せないクレアだが、次第に緊張が込み上げてきてアワアワと瞳を泳がせて焦り始める。活力が戻ったのは良いが、まだ本人と会う心の準備は済んでいないようだ。)
>837
コンペイトウ??聞いたことない食べ物だぁ…変わったカタチしてるねぇ~。フフ、大丈夫だよぉ。こう見えて私も結構やる方だし、フォローする側としてそういうところはちゃんとわかってるからねぇ。
(アヤトが出した巾着袋の中に入った、見たことのない色鮮やかな菓子を見ては「カラフルで可愛い~」と言いながら一粒手に取り、特徴的な形状の金平糖を不思議そうな表情で見ており。グラニュー糖に似た香りがすることから、恐らく甘味だと察しており。基本ソロで活動している冒険者がフォローや協力が苦手なことが多く、そんな冒険者と幾度がパーティを組んだことがあるウラルは慣れておりどう立ち回ればいいかも理解している。こちらは気にせず戦ってというように笑みを浮かべて大丈夫だと告げて。)
でしょぉ?私は半獣人だってはっきりわかるものが何もないから、みんなから人間と思われるちゃうんだよねぇ~…。そう、私って結構珍しい種族らしくってねぇ、同族と会ったことが………?
(自分の店に来た客や同じギルドの冒険者のほとんどからは、人間と思われていることをふにゃりと笑いながら明かして。アヤトのように見た目と年齢と発言の内容から年齢に違和感を持つ者はかなり少ない方だ。少なくとも蛇の半獣人であるウラルも同族と会ったことがない程珍しい種族で、そのことを話そうとしたところアヤトの様子に小首を傾げて。もしかすると、先ほど質問はアヤトにとってあまり良くないものか、それとも良くないことを思い出すきっかけになってしまったのだろうかと思っており)
…そっかぁ…そんな危ないところに住んでたんだねぇ……ごめんね、辛いこと思い出させちゃって……。
(ウラルが予想していた以上に残酷な過去が語られ、少しの間言葉を失い。もちろん平和そうに見えるこの世界の陰に、そのような過酷な世界があることはよく知っている…実際に見たことのあるその世界の光景が脳裏を過ぎり、俯き暗い表情になりなり。アヤトは気にしていなさそうだが、申し訳さそうにそんな過去を思い出させてしまったことに対して謝罪して。もしかすると、アヤトの強さもそんな過酷な環境で手に入れたものなのだろうかと考えたが…アヤトは確かに「子供の頃」と言った。具体的な年齢はわからないが、大人に勝てるような年齢ではないことはわかる…そんな事ができるのは、幼い頃から訓練を受けた子供だけだろう。アヤトの言い方からしてそれはあり得ないという考えに落ち着く…そのあり得ない事が真実なのだが…)
うん、今日でアヤトくんも一緒に依頼をこなす良さがわかると思うよ~?
固定かぁ…私もねぇ、固定パーティーは組みたいんだけど~…全然予定が合わないんだぁ。ミミっていう私のお姉ちゃんみたいな人も商人やってて、予定が合わないし…前衛のエル智組みたいんだけど、あの子はいつもS級冒険者が受けるような複数人推奨の依頼を1人で受けに行っちゃうし~…。
(今までソロで活動してきたため、もしかするとパーティーの良さを知らない可能性がある。今日ウラルと一緒にこなすことで、その良さが分かるかもと笑みを浮かべて話し…そうするとアヤトから尤もな意見が。ウラルも固定パーティーを組みたいらしいのだが、よく知っている2人とは予定が全然合わないため組めない。本当はもう1人いるのだが、冒険者ではないため敢えて言わず「でもねぇ、悪いことばかりじゃないんだよ~?お店の宣伝もできるしぃ、みんなと仲良くなれるからねぇ~」と、通常パーティーの良さも語り)
>838
…なんだろうね…?正直想像できないけど…今日は程々にして切り上げた方がよさそうだね…?
(受付嬢から、先程少しだけ話に出てきたレイラの名前とレイラからの伝言が伝えられ、ミミはレイラと話したことはほとんどない…いや、寧ろ話したことがないかもしれない。伝言だけ聞けば決闘の申し出にも聞こえてくる…その伝言の意味を推測するためにレイラの性格から考えようとしたが、クレアとティアとユリウスからほぼ真逆の情報が語られたため想像ができない。悪い想像しかないため、焦ってる様子のクレアには予想できないとだけ話して。再開した時酒の匂いがしたら余計良くない方向に進んでしまいかねないため、明日に備えて飲酒を程々にして早めにお開きにしようと告げて。)
>835
え……
(手を握られるまま、口をぽかんと空けて呆然として。突然の告白。打算は無い、本気だ。これがシエルの言うアリシアの本当の姿……こんな気分が満たされる経験、初めてだ。それも憧れのクレアさん似の人に……もうこのまま押し倒しても……そう逸る気持ちを抑え、言葉を紡ぎ。)
お、おっしゃる通り、俺もアリシア様が好きです。憧れの人に似てるから......いやいや。怖い人だと聞いてたのに、実際こう触れ合っていると優しくていたずらっぽくて……生まれた時から騎士として一生懸命頑張ってる貴女とずっと一緒にいたいなって、そんな気持ちになるんです。
……アリシア様、貴女を惑わせてごめんなさい。そのお気持ちだけで俺は幸せです。だけど、アリシア様の苦しみが少しでも和らいで、幸せになれるなら、その……俺の唇、差し上げます。
(潤んだ瞳を見つめ返しながら、顔を真っ赤にして、たどたどしくアリシアへの想いを語って。途中クレアと似てるからと言いかけブンブンと首を振って否定して。違う、アリシア自身に惚れたのだと……背を丸め、一人称が「俺」になっている砕けた敬語で語るレドに今までの騎士然とした風格は無い。ただの青年として彼女への愛を伝えている内に、だんだんと涙が零れ落ちて。騎士たるを強いられ、頼れる者は無く、恋愛さえ自由にできない。あんまりだ。こんな人生あっていいのか!この時代に生まれたこと自体が彼女の不幸……でも今だけは幸せになってほしい。そう決意すると口付けを交わすべく、アリシアの両肩に手を添え、涙に濡れた真剣な瞳で彼女を見つめて。)
アリシア様……っ!
(目を閉じ、アリシアの身体──騎士として生きるには柔らかすぎる身体をそっと抱きしめ、濡れた唇を重ね合わせて。アリシアも朝になれば今日の出来事を捨て、元の悪人として野望へと突き進むだろう。そうでなくとも彼女とは身分が違い過ぎる。こんな関係も今宵限り、それでも構わない……そんな想いで重ねた初めてのキスは、ミルクの甘い味がした。)
>840
…うぅ…そうですね…
(ミミの提案に、浴びる程酒を飲むつもりであったクレアは泣きそうになるものの、どんな理由であってもレイラとの喜ばしい再開を前に情けなく泣く訳にはいかないと考え何とか涙を堪えた。話している内に手続きを終えて、ご丁寧に二つの袋に分けられた報酬の片方を受け取る。中身を確認すると金貨二十枚、一日の報酬としては破格であった。さすが聖教国と言ったところだろう、声には出さないものの予想外の金額にクレアは目を丸くした。)
>841
…んっ……ぅ……
(唇を重ねられると、アリシアも瞳を閉じて出来うる限りの力を込めて抱き返した。高揚感から甘い吐息を漏らしながら、全身でレドの感触を確かめる。何より気持ちを受け入れられたことで言い知れない多幸感に酔いしれ、次第に呼吸すらも忘れてひたすらに口付けを堪能した。いよいよ本能が呼吸を思い出してやっと顔を離すと、蕩けきった瞳をレドに向けて荒い息遣いで呼吸を整える。)
ハァ…ハァ…私…今が凄く…幸せです…この時間がずっと…続けばいいのに…
(行きも絶えだえにアリシアは言葉を紡ぐ。未だ全身が火照ったまま、その温かな手をレドの頬に添えながら自分が抱いている感情を偽りなく伝えた。きっと、内なる何かに再び人格を支配される頃にはこのレドへの気持ちはある種の呪いへ変貌することであろう。また平然と酷い仕打ちをしてしまうかもしれない…気持ちを悪用してレドを裏切るかもしれない…そんな漠然とした不安から、言葉を言い終える頃には苦しそうに瞳を伏せた。)
>842
まぁ、また今度改めて奢ってあげるからさ?元気出しなよ、久しぶりにレイラとも会えるんだからさ。
(理由は不明ではあるものの、クレアにとってはレイラとの再会は嬉しいことだろう。酒のことに関しては、また今度改めて奢ってその時に好きなだけ飲んでいいと笑みを浮かべて告げて。ミミも袋を手に取り中身を見ると、破格とも言える金額が入っていることに驚いており。)
それじゃあ、鍛冶屋に行こうか。だい、すぐに直してもらえるよ
(当初の予定通り、クレアの折れた剣を直すために鍛冶屋に行こうと提案して。余程自信があるのか、綺麗に真っ二つになった剣もすぐに直してにくれると告げて)
>843
…………っ……!
……はぁ、はぁ……俺も幸せです……俺も剣を振るしか能の無い男だけど、俺を通してアリシア様が喜んでるのを見ると、もっと幸せになれるというか……へへ。
(アリシアに目一杯抱き返され、限界まで唇を吸われると思わず目を見開いて。口付けが終わったころにはアリシアと同じく今までに無い高揚感で瞳を蕩けさせ身体を熱くしているが、彼女を抱きしめる腕は震えており。アリシアの熱い吐息を浴びながら全身で彼女の愛情を受け止めていると頭がクラクラする。もうクレアとカルロスの時と同じように駆け落ちしてしまいたくなる……だが彼女の誓いを守るべく、必死で衝動を抑えているのだ。どうにか呼吸を落ち着けると、子供のようにはにかんだ笑顔でアリシアへの感謝を伝えて。)
……アリシア様。これから先何があっても、俺は今日の事を後悔しません。全ては自分が選んだことだから……だから今日はお互い気兼ねなく、いい夜にしましょう、ね。
(アリシアは幸せそうにしながらもどこか後ろめたそうだ。もしかしたら自分が内なる悪魔に囚われている自覚でもあるのだろうか。会食の時の悪意丸出しのものと全く違う、自らの顔を優しく包むアリシアの手をそっと握ると、吐息も伝わる距離で彼女へ気遣いの言葉を囁いて。正直彼女を救う手立てはさっぱり思いつかない。世の中のため、クレアの実家を取り戻すため、ひと思いにトドメを刺した方がよかったかもしれない。が、アリシアと一晩を共にすると決めたのは自分だ。せめて今だけは、彼女に尽くしその心を癒すつもりである。)
>839
お菓子だよ、知らない?発祥はこっちの方らしいけど。それなら援護には期待してるよ。
(東国の金平糖も元々は海外の貿易商からの輸入品だと聞いていたので、商人であるウラルなら金平糖の事を知っていると思っていた。なので知らなかった事に意外そうな顔でお菓子だと説明、そして一粒、噛み砕いて食べる。大丈夫との言葉が虚勢や過信の類では無く、経験による慣れである事を感じ取って笑顔で期待してると返す。)
おっと……そんなに暗い顔するとは思わなかったよ。別に思い出しても辛く無いし、あの日々あっての僕だからね、ウラルちゃんが気に病む必要はないよ。
(反応からして世界の暗い部分を知っているのだろう、それは予想通り。ウラルのような良識ある善人がショックを受けるのも予想はしていた。が…チラリと見える俯いた顔の表情がここまで暗いのは予想外で、そんな表情に対して少し困り顔になって。あの拷問のような日々があったから暗殺者も冒険者もやれる今がある。そもそもあの日々を乗り越えられなければどの道、死んでいた。なので、否定的感情も辛い思い出という認識も抱いていなかった。詳し過去も何故そう思うかも明かさないが「あの日々あっての自分だと」肯定的にすら聞こえる言葉で辛い思い出では無いと返して、笑顔で気に病む必要は無いと伝える。)
そうなる事を楽しみにしているよ。ん…?両方聞いた事あるような…ミミって名前の商人は確かデュランダルに来た頃に聞いた覚えがあるね。それにもう1人は確か……受付のお姉さんが言ってたかな。んー、確かに固定は組みにくそうだね。まあ、運が向くと良いね。
(ウラルの口から出た2人の人物に聞き覚えを感じて記憶を巡らせる。暗殺者としてデュランダルで活動再開の準備をしていた頃、そのついでに探し物をしていた時にミミと言う名前の商人を聞いた覚えがある。そして複数人推奨の依頼を1人で受ける冒険者…暗殺の邪魔になりそうな強者を調べた際に元S級がA級降格後も複数人推奨の依頼を1人で攻略していると読んだ。それに受付も自分の他に依頼を1人で受ける冒険者につて言及していたのを思い出して、多分同一の人物だろうと考えた。依頼だけに専念するのが難しいであろう商人とソロ行動派の冒険者…予定は合わなくても不思議じゃない…と固定パーティーを組まない理由に納得して同情の言葉をかける。)
ポジティブだね、それに商魂逞し…っとあれかな?ダンジョン。
(固定が組めない状況でもプラスの言葉が出てくる事にパーティーで活動するのが…他人と居るのが本当に楽しのだろうと感じて。その上で宣伝まで考えている事に商魂逞しと言いかけた所で…千里眼がダンジョンの存在を捉える。千里眼の能動的な使用は脳への負荷が強い。なので視力を0にする事で負担を抑え、機能を限定している…が機能を停止している訳では無いのでA級の複数人推奨ダンジョンのような大きな存在は自動的に千里眼が捉えてしまう。千里眼に釣られて人間の素の肉眼では双眼鏡のような物を使って見るような離れた距離にあるダンジョンがはっきりと見えたかのような反応して。)
>844
ありがとうございます…では行きましょうか…
(明日に控えたレイラとの再開に対する期待と不安、そして何よりもクレアにとって精神安定剤と化している酒への欲求が綯い交ぜとなり、苦しそうに胸を抑えながらも何とか笑みを繕って礼を述べる。中途半端に活力を取り戻したせいで、先程までのように寝たり泣いたり喚いたり等などの方法で欲求を昇華出来ない分、精神的なダメージは大きいようだ。ギルドを後にする足取りは、まるで風に飛ばされそうな程にフラフラとしていた。)
>846
そうですね…レド殿……今日を…忘れられない…思い出に……
(子供のような忌憚のない笑みに胸がときめき、吐息が肌に触れる度に感覚の研ぎ澄まされた身体をピクリと震わせる。アリシアはまさに幸せの絶頂にいた。この夜を良いものにしようというレドの言葉に肯定しようとした所で、疲労による睡魔が襲いかかる。言葉の途中で次第に視界が揺れ、言い終える前にパタリと動きを止めてしまう。倒れるようにレドの胸を借りると、すやすやと可愛らしい寝息を立て始めた。レドを信頼し切ったその寝顔はまるで天使のように無垢なものであった。)
>847
そうなのぉ?私ねぇ、商人になってそんなに経ってないんよぉ…商人を始めて3年くらいかなぁ…?任せてぇ~、安心して背中を預けてね…♪
(半獣人で商人をやってることに加えて、手慣れてる様子から長い年月商人をやっていると思われる事が多いが、実際のところ商人になってまだ3年しか経っていないことを明かして。金平糖含め、東国の酒について詳しくなかったのもそれが理由だろう。今手に持ってる一粒の金平糖を口の中に入れて食べて「ん…おいしぃ~♪もう少し貰ってもいい?」と、笑みを浮かべながら金平糖の感想を言って気に入ったのかもう少し貰ってもいいかと尋ねて。自分のサポートに期待していると聞くと、クスッと笑いながらやや含みがあるような言い方をする…が、本人は普通に話したつもりである。)
うん…アヤトくんが居た場所とは少し違うけど、私もそういう場所で育ってねぇ…皆が平気でウソを吐いて、傷つけて、いろんな物を奪って…アヤトくんもそういう目に遭ったのかなって思うと、ちょっとねぇ…。アヤトくんが気にしてないなら、いいけどさぁ…。
(アヤトが育った場所よりかは酷くはなかったものの、ウラルもかなり治安の悪い場所で育ったことを明かして。表情が暗くなった理由は、ウラルが過去に経験したことと同じ、若しくはそれ以上のことをされてきたと考えたからだろう。そんな事があっても、辛い思い出ではなく肯定的な発言をするアヤトに「アヤトくんは前向きだねぇ」と、静かに笑みを浮かべながら伝えて)
あ、アヤトくんも知ってたんだぁ…あの2人は有名人だねぇ~。ミミはねぇ、ダンジョン出手に入れた珍しい武器とか防具、素材を売ったり仲が良い鍛冶屋の商品を代わりに売ってるんだよぉ。エルは~…何故かいつも神獣とか、邪竜とか強そうな魔物の討伐ばかり行くんだよねぇ~。
(あまり他の冒険者との交流がないアヤトでも名前を聞いたことがある程、2人が有名人だということを再度実感して。エレオノールに関しては悪い意味で有名だが…。これからダンジョンで暗器の類の武器を探そうとしているアヤトにとって、ミミが珍しい武器等を売ってるという情報はきっといい情報だろう。S級の依頼の中でかなり危険な依頼ばかりこなしている辺りエレオノールの強さがどれほどのものか想像できるだろう。アヤトの同情の言葉に「うん、いつか2人と一緒に依頼を受けたいなぁ~」と、馬車の窓から見える空を見ながらそう呟いて)
そうそう、あの建物だよ~。どんなダンジョンかなぁ~…?
(アヤトが目的地であるダンジョンを発見し、ウラルは依頼書の目的地と照らし合わせてあのダンジョンが目的地だと頷いて。一体何があるのか、どんな魔物がいるのかと少し楽しみそうに聞こえる発言をして。そうしているとダンジョンの前まで到着し、ここまで連れてきてくれた御者にお礼を言って馬車から降りて。ダンジョンは一見通常よりも小さく感じるが…中からやけにひんやりとした風が流れてきて、恐らくは中は建物以上に広いということがわかる。そしてこの風は、氷からくる冷気とは別物だ…)
>848
大丈夫そう…?剣預けたら、すぐに酒場に案内してあげるからねぇ…あ、好きな料理も頼んでいいよ。ステーキとかね
(レイラとの再会で少しは活力が戻ったが、不調であることには変わらない。クレアの隣まで移動して体を支えながら歩き、思い出したようにフードを取って尻尾を元に戻し。酒はあまり飲めないが、料理なら好きなだけ頼んでいいと告げて。聖教国に居た時に話したことを思い出し、例えでステーキを挙げて。表通りから離れ、人気があまりない通路を進んでいき…周りの建物から離れた場所にある一軒の建物の前で止まり。普通の家をベースに、鍛冶屋要素を追加したような建物だ…)
ルトー、やってる~?修理してほしい剣があるんだけど~
(鍛冶屋の扉を開けて中に入り、軽い口調で剣の修理について話して。鍛冶屋の中は変わった形状で様々な種類の武器が飾られており、ダークな雰囲気が漂う頑丈そうな防具も展示されている。値札は書かれてはいないが、恐らくは売り物だろう。奥の部屋から足音が聞こえてきて)
我に修理を依頼するとは珍しいな、ミミ。お前でも直せない武器とは一体どんな………
(奥から体の複数箇所に古傷がある半獣人の少女がハンマー片手に現れて。基本的にある程度の武器なら修理ができるミミが修理の依頼に来るのが珍しいと言いながら、どんな武器なのか興味を持った様子…だったが、隣にいるクレアを見ては発言を途中で止めて。一度戦ったことのあるクレアなら気づくだろう、目の前の少女からオルトロスの強い魔力と気配が溢れていることに…)
>849
アリシア様……いい寝顔だ、まるで赤子のよう。
クレアさんやレイラさんには悪いけど、これでいいんだよな。二人とも、傷ついた人を遠ざける人じゃないしな……
(眠りについたアリシアの頭をそっと手で包みながら身体を抱えて。自らに身を委ねて安らかな寝息を立ててくれる彼女の寝顔、ライデン家特有の麗しい金髪から漂う芳香は、口付けとはまた違った充足感をレドに与え、穏やかな顔にしていく。一方で見ず知らずの男に子供のように甘える姿から、親に愛されない境遇であることを察して憐れみも覚える。アリシアに絆されるなど、家督を奪われたクレアやアリシアを好まないレイラを裏切った気がして後ろめたい……が、傷ついた人を遠ざけない二人と同じように人助けをしてるだけだと言い聞かせつつ、アリシアをベッドに横たえ、シーツをかけて。)
アリシア……腐った親父の下に産まれなければ苦しまずに済んだものを。それでもお家のために頑張ってるんだから立派だよ……せめて俺だけでも、その苦労と志に報いようじゃないか。
(自らはベッドに入らず床に両膝を付き、アリシアを起こさぬよう彼女の手をそっと両手で包み、労いの言葉をかけて。共寝はしない。それが自らの欲求を押し殺してまで立てた彼女の誓いだから。そんなアリシアの真面目さやひたむきさに益々レドは惹かれる。彼女の手を包んだ両手に額をつけると、おもむろに立ち上がり。)
さあ、どっからでも来い!近づく奴はみんな斬り捨ててやるッ!
(自らの東刀を抱いて戻ると、アリシアが眠るベッドを背に、床にドカッとあぐらをかいて。ビスケットをホットミルクで流し込みながら刀を抱いて座る姿はまるで荒くれの用心棒であり、先程までの純朴な青年らしさは消えている。こんな安宿、どんな不届者が侵入するか分かったもんじゃない……正直副団長との戦いによる疲れは抜けてないが、最初の約束通り、朝まで眠らずアリシアの眠りと純潔を守り抜くつもりだ。)
>851
ええと…はじめまして…?…剣を直していただきたくて。
(対峙して早々に少女の纏う魔力に既視感を感じるものの記憶を辿ってみてもこれ程の魔力を持つ獣人の少女に覚えはない。かつてのクレアであれば魔力だけで何者かを察したことであろうが、過去に精神を蝕まれて酒浸りの生活を送ってきた上に今は満身創痍の状態。本来の洞察力は発揮できる筈もなく、ミミのような長寿な種も存在する獣人ならば膨大な魔力を持っていても何らおかしくはないと結論付けた。ずっと棒立ちしている訳にもいかず一先ず会釈をすると、申し訳なさそうに苦笑いを浮かべて此処を尋ねた理由を伝えた。)
>852
(朝日が登り、窓から光が差し込むと同時にアリシアは目を覚ました。心做しかいつもより深い眠りにつけた気がする…そんなことを考えながら目を開けると、宣言通り夜通し守ってくれていたであろうレドの姿が目に入る。安眠出来た理由に納得がいくと、その実直さを前にして思わずクスッと笑みが零れる。せめて礼を言わねばと上体を起こすが口を開いた刹那に鈍い頭痛に襲われ、苦痛に顔を歪めながら、右手で自身の頭を抑えて俯いた。)
おはようございます…レド殿。はて…お恥ずかしながら副団長と遭遇してからの記憶が曖昧なのです。なぜ私はレド殿とこのような宿に泊まっているのでしょう?
(しばらくして頭痛が落ち着いたのかアリシアは顔を上げると、貼り付けたような薄ら笑いを浮かべて挨拶をする。体力を回復したことで悪魔の方の人格が再び主導権を握ったのだろう、会食の時と同じくその瞳は酷く冷たいものである。顎に手を添え、首を傾げて記憶を辿るものの、本来の人格に主導権を握られていたせいで魔法を行使してからの記憶が霧がかったように曖昧であった。手っ取り早く状況を整理しようと、レドに視線を戻して何の気なしに問いかけた。)
>850
え、3年?てっきりもっと長いことやってると思ってたよ。僕はまた入手出来るから遠慮なく食べてね。うん、任せる…よ?
(半獣人であることから長年商人をしていると勝手に思っていたので意外そうな顔をして、同時に東国の酒や金平糖に詳しくなかったことに納得する。金平糖を気に入った様子を見れば何粒か自分が食べる分を確保して巾着袋ごとウラルに渡す。言い方に何か含みがあるように感じて引っかかりを覚えるが…悪意や敵意の類は感じ無かった事から流す事を決めて、任せると伝える。ウラルが普通に話したつもりである事には気づいていない)
ああ……そう…なんだ。そういう目に合わ…無かったとは言わなけど…僕はマシな方だったよ。僕は本当に気にしてないよ、むしろウラルちゃんの方が辛そうだよ、ごめんね。
(ウラルが育った場所がどれくらい酷かったかは分からないが、聞いた限り無秩序に近い場所で育ったのは間違いなさそうだ…と推測して、ウラルが暗い世界の当事者だと知って動揺を見せる。自分は恐らくウラル以上に酷い経験もしているだろう…が早い段階でウラルが言う所の「嘘を吐いて、傷つけて、奪う」側の人間に…早々に蹂躙する側になったから…と言う意味でマシな方だったと発言して。単に気にして無いだけの自分が前向きと言えるかは疑問だったが…そんな野暮なツッコミせず、自分と違って辛い思い出になっている過去に触れる事になったことに謝罪する。)
へぇ、珍しい武器、東刀は扱ってる?僕より強いかもね、その子。フフ……
(探し物…それは3年前に失った東刀、それも残穢と同じ妖刀で、予想外の事故で手元から文字通り飛んで行った。それ以降、仕事で世界各国に訪れたついでに情報屋を介して探して回っていた。なので珍しい武器を売っていると聞いて、何処かのダンジョンに流れついた妖刀をミミが所有している可能性もあると考えて東刀は扱ってるか聞く。暗器も気になるが…暗殺にも使うので足が付くのは避けたいので合法の商人であろうミミから購入するのはリスクもある…ので話の中で触れのは避ける。神獣や邪竜のような強力な魔物ばかりを相手にしている時点でエレオノールの強さが上澄なのは考えるまでもないだろう。アヤトが最も得意なのが対人戦闘なのもあって冒険者としてはエレオノールの方が上だろうと推測して。暗殺者の敵として遭遇すれば面倒なので警戒すべき相手だが…個人としてはその強さには興味があり、今までの雰囲気とは違った、好戦的な笑みを静かに浮かべる…がウラルの話始めたのに反応して、すぐに元の表情に戻って「長生きならチャンスはあるよ」と返して同じく空を見る。)
へぇ…全部は見えないね。涼しいね、何の冷気かな?…………まあ、入れば分かるよね。僕はいつでも行けるから突入のタイミングはウラルちゃんに任せるよ。
(ウラルの言葉に楽しそうに少し笑って「入ってからのお楽しみだよ」と返して続いて馬車を降り、ついでに騎手に金貨数枚チップを渡してからウラルに追いつく。建物は今まで見たダンジョンより小さいが…一瞬だけ起動させた千里眼の透視で全体を見通せなかった事から建物以上の広さがある事を認識する。近づいてみれば中から流れる風が不自然に冷たい事に首を傾げて、ダンジョン自体の仕組みによるものか…内部の魔物の仕業か…と考えるが入れば分かる…と考察を止めて、入り口の横で待機する。)
>854
あっ、アリシア様!おはよう……アリシア様!?
……えっ、あ、いや……あれから副団長を撃退したものの救援も無く野宿するわけにもいかず、こうして近くの宿まで逃げ延びた次第……
(あれから一睡もせず迎えた朝。何事も無く、アリシアもよく眠れたようだ。彼女が起きる気配に合わせ、穏やかな笑顔で向き直った途端、突如アリシアが頭痛に苦しみだす。床に膝を付いたまま思わず身を乗り出すが、彼女の頭痛が収まると呆然と後ずさりして。
起きた瞬間はそんな気配が無かったのに、頭痛と共に元の悪党へ戻ってしまった……それどころかあれだけ喜んでいた昨日のことを覚えてすらいない!なんで!?そう狼狽しつつも、片膝を付いて頭を伏し、まるで部下の如く状況をありのまま報告して。抑揚なく報告するその声に力は無い。昨日の事は気の迷いだったのか?全部無意味だったのか!?そう考えると今までの疲れが全身に降りかかってきて、今にも倒れそうであり。)
>856
ふむ…状況は理解しました。見たところお疲れのようですし、レド殿も休んではいかがでしょう?私はシャワーを浴びてきますので、その間にでもぜひベッドを使ってください。
(レドの説明を聞き終えると、しばらく顔を伏せて自身の身体に目を向ける。見る限り服ははだけておらず、おそらく手は出されていないのだろう。そう判断すると顔を上げ、相変わらずの貼り付けたような笑みを浮かべたままレドに休息を促した。気遣いとは少し違い、今にも倒れそうなレドの様相から察するに副団長との激闘を経て一睡もしていない事は明らかで、それならばレドを寝かせている内にシャワーを浴びてしまおうという魂胆である。今のアリシアは昨晩とは異なり異性としてレドを警戒しているようだ。ゆったりとした足取りでベッドを出ると、レドが入りやすいよう自らにかけられていたシーツをずらし、早く寝ろと言わんばかりの圧が込められた笑顔でレドを見つめる。)
>857
はっ……お心遣い、感謝いたします……!
(自らの服を疑うアリシアにちらりと目線をやってから、彼女の「気遣い」に対して頭を伏したまま、わなわなと震えながら応えて。昨晩「何をされても構わない」と身を委ねておきながら、夜が明ければ寝ずの番に対して礼どころか疑いで返してきた。朝令暮改ならぬ暮令朝改……こうも容易く言動を反故にする奴にファーストキスを捧げてしまったのか!と、レドの顔が赤く染まり出して。昨晩のような照れでは無く、耐え難い屈辱と裏切りに因るものだ。
ベッドを譲られると、虚ろな眼でよろよろと寝そべって。この「気遣い」も自分がシャワーを浴びる口実でしかないことは察しつつも、鼻を鳴らすと目が潤んできて。ベッドに残る温もりや香りは間違いなく、自分を信頼して身を捧げてくれたアリシアの物だ。なのにどうして今更心変わりしたのか……頭が混乱して寝付くことも叶わず、横になったまま力なく呟いて。)
なんだったんだ昨日の事は……意味わかんねぇ……
>858
(レドがベッドに入ったことを確認すると、アリシアはすかさずシャワールームへと向かう。途中、背後からレドを蝕む負の感情を感じ取ると、心底楽しそうに口角を吊り上げた。時間にして約三十分後、シャワーを堪能したアリシアは下着の上にバスローブを一枚羽織り、花のような甘い香りを漂わせて部屋に戻る。完全に身体の水気が乾くまではしばらくこの格好であろう。警戒してか、戻るなりレドから少し距離を取ってベッドの端にちょこんと腰掛けた。)
戻りましたよ。レド殿はシャワー、どうしますか?
(流石に自分だけシャワーを浴びて終わりでは忍びない。一声掛けておくべきだろうと考えると、腰掛けたまま片手をベッドにつき、寝そべるレドの顔を覗き込むように前のめりな姿勢で尋ねる。開けたローブの隙間からは胸の谷間がその存在感を放っているが本人はそれに気が付いておらず、仕方ないから尋ねてやっているんだという様子で随分と素っ気ない態度である。)
>859
いえ結構です。失礼ですが、私がおりますとアリシア様も心が休まらない様子……名家の貴女と宿を共に出ては変な噂が立って迷惑でしょう。お身体も回復されたようですし、私は先に失礼いたします。近衛隊庁舎行きの馬車を手配しておきますから、アリシア様もお好きな時にお戻りください。ライデン閣下の名を出せば、馬車の者も悪いようにはしないでしょう……
(甘い香りを漂わせる、濡れた美女とその胸の谷間。昨晩なら正気でいられなかった姿に今のレドは興味を無くしており、身じろぎどころか眉一つさえ動かさない。勧められたシャワーを断るばかりか、ベッドから力無く起き上がると東刀を差し直す帰り支度を始めて。覇気の無い立ち姿で力無く段取りを説明する様子からして疲れが抜けてないのは明白だが、昨晩から一転してこちらを警戒するアリシアに失望し、さっさと帰ろうとしている。)
これもお口に合わなかったようですな。我ながら要らぬ気遣い、申し訳ありませんでした。邪魔でしょう、下げておきます。
(昨晩アリシアに差し出した盆を一瞥すると手に取って。その盆に乗っているのは中身のミルクが残ったままのアリシアのマグカップ……レドが口を付けた跡に自らの唇を重ね、愛の誓いとした物証だ。騎士でありながらこれを見ても平気で二言を弄する下衆なのか?それにしては昨日の気持ちに嘘は無かった。まさかこれがシエルの言う「悪魔憑き」なのか……?反応を確かめるべく、寝不足で落ち窪んだ灰色の瞳を、ただ冷たくアリシアに向けて。)
>860
ええ…ではよろしくお願いしますね。
(レドの心情など知る由もないアリシアは、何をそんなに急いでいるのやらと首を傾げるもののレドの提案は理にかなっており、とくに断る理由も見当たらなかった。空いたベッドに深く腰掛け、まるで部下に相対しているかのように偉そうに脚を組んで提案を了承した。)
…っ…ミルクはそのままで結構です…それは私が飲みますので。
(しかし、そんな澄ました顔も長くは続かず、ミルクの置かれた盆が持ち上げられると同時に再び鈍い頭痛がアリシアを襲い、思わず苦痛に顔を歪めた。片手で頭を抑えるものの、先程のものよりは早く治まったようですぐに顔を上げる。これは本来の人格の些細な抵抗であった。記憶は未だ戻らないが、こればかりは捨ててはいけない気がして、気付けば片そうとするレドを言葉で制止していた。)
>853
…久しぶりだな、首狩り。その様子だと…我がオルトロスだということには気づいていないな?
(クレアが不死鳥の翼の一員として活動していた際に対峙した姿とは大きく違うが、以前のクレアであれば漂う魔力だけで誰なのか気づいたはず。気づかなかったのは満身創痍だからか…いや、それだけではない。純粋に、以前より落ちたのだろうかと予想しつつ自分の正体を明かして。)
ククク…まぁいい。ミミも粋な計らいをするのだな…再び我と首狩りを引き合わせるとはな。我も以前より力は落ちたが、貴様1人を灰にするくらいなら…
(不敵なら笑みを浮かべながら、漂う魔力を更に濃くしてゆっくりと近づき。あの戦いの後は回復に専念した上に、今はこうしてデュランダルの片隅で鍛冶屋をしているため以前よりも力が落ちている。本来の姿を長時間維持するのも難しい程だ…だが、それでもS級クラスの実力は持っている。おまけにクレアは今1人だ、1人相手であれば勝てる…すると、ミミがオルトロスの目の前に紙袋を差し出して。「…なんだこれは、食い物か?」と言って袋を開けており)
…前にルトと戦ったことがあるっぽいね、クレア。けど安心して、今はそんなに危険じゃないからさ。
(クレアに近づきクレアにだけ聞こえるように小声で話して。ルトの発言からして以前…恐らくは不死鳥の翼として活動していた時に戦ったと思われる。今クレア達に背を向けて袋の中に入ってるパンを尻尾を振りながら食べてるオルトロスを見ながら、苦笑いを浮かべて大丈夫だと告げて。それにしても、ミミの人脈はどうなってるのだろうか…)
>855
うん、みんなもそう思ってるみたいでねぇ。驚かれちゃうんだぁ…冒険者になったのも、その辺りからかな~…。ありがと~、アヤトくん♪けど、これからいっぱい動くから少しだけ貰うねぇ~。
(アヤト以外の冒険者や客も、ウラルが長くアクセサリーショップをやっていると思っている者が多い。当然中にはウラルが半獣人だと言うことを知らない者も居て、それでも歴が長いと思われるのはウラルがかなり手慣れていたりどんなオーダーでも必ず要望通りの装備を作るからだろう。思い出すように軽く上を見ながら、ウラルが冒険者になったのも同時期くらいだと明かして。巾着袋を受け取りながら笑顔でお礼を言い、これからダンジョンに入り、ダンジョンに潜んでいるであろう魔物と戦闘することを考えて巾着袋から少量の金平糖を取り掌に乗せて、巾着袋の口を閉じてからアヤトに返して…アヤトの発言に少し違和感を覚えたのか、軽く首を傾げるウラル。自分の発言が原因なのだが…)
やっぱり、アヤトくんもそういう目に合ったんだねぇ…ううん、私は大丈夫だよぉ。少なからず、今はすっごく幸せだからねぇ~。
(予想してたことだが、アヤトも似たような目に合っていた…だが、アヤトの発言を少なからずウラルよりかは酷い目に合わなかったと解釈し、内心良かったと思っており。謝罪するアヤトに大丈夫だと告げて、辛い思い出に変わりないのだが今は信頼できる人や大切な人に囲まれて、すごく幸せだと笑顔で告げて)
東刀?確か~…何度か他の商品と一緒に並べてたっけぇ…。日によって置いてる商品が違うからぁ、必ず置いてるとは言えないけどねぇ~。
う~ん…確かにエルは強いけど、アヤトくんが戦ってるところ見てないからなんとも言えないかなぁ~……?
(ミミが店を開いているところを何度も見ており、他の商品と一緒に東刀と思われる武器を何度か並べてあったことを思い出して。ただ、ミミはダンジョン等で入手した武器等を販売するため、毎回ラインナップが違う。運が良ければ東刀が置いてあるだろう…アヤトが探している妖刀があるかはどうかは不明だが…。確かにエレオノールは強いが、まだアヤトが戦っている姿を見ていないためどちらが強いとは言えず。2人にも得意な相手や不得意な相手もいると判断しての発言だろう。自分が話す直前、好戦的に見える笑みを浮かべていたことに対して不思議そうな表情を浮かべており。「…フフ、そうだねぇ。その時が来るのを気長に待つよぉ…♪」と、笑みを浮かべてそう告げて。)
…なんだか、氷とかから来る冷気とは違う感じだねぇ?それじゃあ…準備もできたし、入ろっか♪
(ダンジョンから流れ出てくる冷気の違和感に気づき、一体何の冷気だろうと口元に手を当てながら考えて。だが、考えるよりも入って確かめた方が早いと思い考えるのをやめて。鞄の中からランタンを取り出し、火をつけて入り口の横で待機するアヤトに入ろうと告げて入っていき。壁や床は外の素材とは違う石のレンガでできており、先が見えない程暗く長い廊下が続いている。)
>861
よろしいので?代わりなら持ってこさせ……
……やっぱりシエルの言ってた事は世迷い言じゃなさそうだな……よし!
(盆を手にさっさと退室しようとした刹那、頭痛に耐えるアリシアに制止され足を止めて。死んでいた瞳に光が宿り、安堵の溜息が漏れる。昨日の想いを反故にしたければしれっと片付けさせるだろう。本当に記憶が抜け落ちているらしい。そういえば起きた時も昨晩と同じように接しようとしていたのが、頭痛と共に態度が変わったな。これが「悪魔憑き」?二重人格の類いか?とにかく動揺の見られるアリシアを畳み掛けるべく、何か呟くとアリシアの下へ戻り。)
アリシア様、正直私はここに泊まることに気が進みませんでした。異性ですし、レイラの手前もあります。騎士団の詰所に身を寄せるべきと。ですが貴女はレイラに嫉妬される危険を承知の上で、こうして騎士団より私を選び、一晩を共にしてくださった。そこまでアリシア様に信頼いただけたこと、戦うしか能の無い無骨者にとってどれだけ嬉しかったことか……!昨日は本当にありがとうございました。
(ベッドに腰掛けるアリシアの目の前に近づくと、それまでのやる気のない姿勢から打って変わった、ぴしりと締まった姿勢で片膝をついて。瞳を潤ませながら、ミルクの乗った盆……アリシアからの信頼と愛の証を彼女に差し出しつつ、昨晩の礼を述べて。今の状況でキスの話は出せないまでも、もし今朝の態度に悪意が無いのなら、帰る前に一緒に泊まってくれた礼はきちんと言うべきだと態度を改めた……「悪魔」の底に眠っているであろう、本物のアリシアに届くことを信じて。)
>862
まぁ…随分と可愛らしくなりましたね。
(その名を聞いて、まだS級冒険者となって間もない頃に対峙した強大な魔物の姿が脳裏に浮かんだ。既視感の正体に納得がいくと、クレアは感心した様子で自身の頬に手を添えて、様変わりしたその容姿を讃える。きっと恨みを持たれているのだろう、オルトロスが魔力を濃くして近付いて来るものの、クレアは抵抗する素振りを見せない。元よりカルロスのいない世界に未練などない為、この場で楽にしてくれるのならそれも良いかもしれないなんて破滅願望を抱く。ボーッとした様子で、最期にお酒飲みたかったなぁ…なんて感傷に浸っていると、タイミングよくミミの助けが入ったことでやっと正気を取り戻し「ええ、そのようですね…」と苦笑いを浮かべた。)
>864
そうですか…私が……いえ、礼を言うのはこちらの方です。会食に始まり、長時間ありがとうございました。それなりに楽しかった…と思います。
(差し出されたマグカップを手に取り、ゆっくりと味わいながらミルクを飲んで、宿に泊まった経緯をただ茫然と聞いていた。身に覚えがない筈なのに、それでも違和感を感じないことを不思議に思いながら、少しの間俯いて気持ちを整理する。そうして顔を上げると、未だ少々困惑気味な表情を浮かべながらも礼に礼で返した。霧がかった記憶の中で、漠然とレドに抱いた暖かな感情を思い出して、アリシアは少しだけ頬を赤く染めていた。)
>864
そうですか…私が……いえ、礼を言うのはこちらの方です。会食に始まり、長時間ありがとうございました。それなりに楽しかった…と思います。
(差し出されたマグカップを手に取り、ゆっくりと味わいながらミルクを飲んで、宿に泊まった経緯をただ茫然と聞いていた。身に覚えがない筈なのに、それでも違和感を感じないことを不思議に思いながら、少しの間俯いて気持ちを整理する。そうして顔を上げると、未だ少々困惑気味な表情を浮かべながらも礼に礼で返した。霧がかった記憶の中で、漠然とレドに抱いた暖かな感情を思い出して、アリシアは少しだけ頬を赤く染めていた。)
>865
フン、今に見てろ。すぐに全盛期程の力を取り戻してやる…その気になれば元の姿に戻れるぞ。10分が限界だが…。
(クレアの賞賛の言葉を別の意味で捉えてしまい、すぐに以前の力…破壊の限りを尽くしていた全盛期の力を取り戻すと告げて。この状態でも本来の姿…双頭の幻獣の姿には戻れるようだが、その姿が維持できるのはたったの10分だけ。オルトロスがどれだけ力が落ちたか、容易に想像できるだろう…)
…まぁいい、貴様剣を直して欲しいと言ったな?早くその剣を我に見せろ
(もう食べ終わったらしく紙袋を丸めてゴミ箱に投げ、紙袋は綺麗にゴミ箱に入り。クレア達の方へと振り返り、持っていたハンマーを机の上に置いて再びクレアに近づき。ミミから食べ物を貰ったこともあり魔力はクレア達と会ったばかりの状態に戻っており、先程クレアが言っていたことを再度確認して修理に出したい剣を見せるように促して。どうやら、依頼は受けるようだ…)
>866
(顔を赤くして礼を述べるアリシアに、自分も顔を紅潮させながら満足げな笑顔を浮かべて。会食の時はあんなに慇懃無礼だった女が、すっかりしおらしくなっている!昨晩のことは無駄じゃなかった……一介の冒険者に過ぎないレドは未だ真相に辿り着けていないが、アリシアに巣食う悪魔に楔を打ち込んだ感触はなんとなく得られていた。)
実はその……道中聖教国の馬車に遭遇しまして、連れ添って歩く姿をレイラに見られた可能性があります。それでシャワーを浴びた朝帰りなどしたらアリシア様にも累が及ぶでしょう。今後も近衛隊剣術指南としてアリシア様と共に参りたい所存ですが、それにはレイラの説得が不可欠。無作法ですが……これで失礼いたします。
(盆だけテーブルに戻すと、苦笑いを浮かべつつ人差し指をツンツン突き合わせる気まずそうな所作でレイラに見られた可能性を述べて。いくら純朴なレイラでも、弟分がいけ好かないアリシアと宿へ行き、小綺麗にして朝帰りなどしてきたら、「そういう事」に及んだと察するのは容易だろう……近衛隊剣術指南の話を通すためにも、レイラとの関係がこじれる真似はしたくない。自らの傷んだ髪の感触、汗臭さ、全身の汚れに顔をしかめつつも、立ち上がって一礼して。これで何も無ければ、今度こそレイラへ報告すべく冒険者ギルドへ帰還する次第だ。)
>869
あはは…ええと、こちらです。
(力を失ったオルトロスの様子を見てクレアは不憫に感じるものの、また力を取り戻されても面倒な為、同情する訳でもなく苦笑いを浮かべるに留めた。そして、促されるままに腰に携えていた剣を鞘ごと取り外し、一応はお願いをする立場にいるため失礼のないように丁寧に両手で差し出す。鞘の中には、半分に折れた刀身と残りの剣本体がそのまま納められている形だ。)
>870
まぁ…勇者様が……それもそうですね。ではレド殿、どうかお気を付けて。
(レイラに見られた可能性を聞いて、アリシアは少しばかり目を見開いて、驚きのあまり思わず空いてしまった口元を手で隠した。あの癇癪持ち勇者が弟子を篭絡されたなどと勘違いしては確かに混乱の収集は容易ではない…とレドの言い分に自分なりの解釈を添えて納得すると、はだけた胸元を隠し姿勢を正して、穏やかな笑みを向けて見送りの言葉を送った。下着の上にバスローブ一枚といったラフな格好で異性を見送る姿はさながら若妻のようである。)
>871
…ふむ…本来剣は砕けるように折れるのだが、この剣はまるで斬られたかのように折れているな…相手は相当な手練れだったようだな?
(クレアから剣を受け取り、鞘から剣を引き抜き折れた刀身も取り出す。剣と刀身の断面を見ながら本来の剣の折れ方について簡単に話して…断面の周りにヒビ一つない。このようなことができるのは、クレアと同等…若しくはそれ以上の実力の持ち主だ。ミミが直せないのも納得して、「どう?直せそう?」とミミがオルトロスに尋ねて)
…フン、愚問だな。今の我は鍛冶屋だ、我に直せない武器等ない。この程度、明日の朝までに直せるどころか二度と折れないように撃ち直すことだってできる。明日の朝にでも取りに来るといい。
(再び不敵な笑みを浮かべて、明日の朝までには直すと同時に強化までできると告げて。本来こうなった剣を直すのは難しいはずだが…ミミが「デュランダル1の鍛冶屋」と言うだけのことはあるようだ。以前は破壊者だったが、今は作る側になっている上にそのことを誇りにすら思っているようにとれる発言…あの時から中身も変わったようだ。早速作業に取り掛かろうと作業場に向かおうとする最中足を止めて「…そういえば、料金のことがあったか……面倒だ、料金はいい。代わりに美味そうな朝飯でも持ってこい。」と言って、作業場へと戻っていき。どうやら料金設定が苦手なようだ、店に置いてある武器や鎧に値札がないのはそれが理由だろう。)
>863
なら3年でA級、早い…いや、妥当なんだろうね。あ、また欲しかった言ってね。
(冒険者歴3年でA級…恐らく平均以上の昇級速度に早いと口にする…が、既に何百年と生きているらしいウラルなら冒険者となる前から戦闘経験を積む機会はあっただろう。ましてや出自を考えれば尚更、否応なしに戦う以外の選択肢が無かった時もあるかも知れない、そう考えて短期間でA級に辿り着いたのを妥当であると考え直す。返却された巾着袋を内ポケットに仕舞ってウラルに視線を戻すと軽く首を傾げている事に気づいて金平糖を噛み砕きながら首を傾げ返す。先程の言動が普通に話したものである事に気づいていないので、ウラルが自分の言葉に違和感を覚えている事も気づいていないが故の反応だった。)
すっごく幸せ…ね、良かったね、本当に。続くと良いね。
("今は"と付く辺り、やはり辛い思い出であったのだろう。それでも"すっごく幸せ"と告げた笑顔が偽りでは無い本当の笑顔だと感じて、自分を気遣っての一言では無い…本心からの言葉だと理解する。自分と同じような場所で育ちながらも暗い世界から抜け出して幸せと言い切る姿は喜ばしく思い、笑顔で純粋に祝福の言葉をかける。)
変わった東刀だから買う人間は居ないと思うけど…希望の持てる情報だよ、ありがとね。そりゃそうだよね、比べようがないよね。
(大半の人間には実用性も美術的価値も皆無な特殊な刀なので売れる可能性は低い、一度でも並んだのなら売れ残っている可能性は高いと考えている…そもそも拾って無い、或いは廃品扱いで捨てられた可能性も考えられるが……そこは気にせず満足した表情で礼を言う。自分の戦う姿を見てない以上、比較が無理なのは当然として…形式上は同じ等級のウラルが強いと言うなら元S級は伊達ではないのは確かだろう。そんなエレオノールが固定パーティーを組めば強力なパーティーになるだろうが…まあ、寿命相応の時間感覚を持つであろうウラルが気長と言うなら何年先が想像もつかない…そんな意味で笑いを浮かべる。)
そう言えば聞いて無かったけど今回は何処まで行くの?やっぱり、ボスとか居るような中心を目指す?
(ウラルも冷気に違和感を抱いたのなら、やはり普通の冷気では無いのだろうと確信しつつ「了解だよ」と返し、続いてダンジョンへ足音を立てずに足を進める。入ってしばらくは歩みを進めながら等間隔で壁と床を叩いて大まかに強度を測り、残穢に込める魔力…つまり切れ味を壁と床を切り裂かない程度に調整し抜刀、逆手で持って臨戦状態を整えて。同時に今まで聞いていなかった依頼の詳細を尋ねて。)
>872
……ッ!し、失礼します!お気をつけてお帰りください!
(何をどうしたのか、顔を赤らめたまま急にそわそわとドアの前まで退いて、一礼してから退室して。アリシアへの情が戻ったレドは見てしまったのだ。彼女の瑞々しい胸元、艶やかなバスローブ姿……そしてその中にある彼女との幸せな結婚生活、明日も知れない冒険者が見られるはずのない夢を。出来ることなら、彼女の濡れた肌を抱き締めたい。だが今は叶わない故、少しでも想いを断ち切りたいのだろう。レドがバタバタと慌てて走り去る音が響いており。)
…………ばっ、バカな、バカな!何考えてる?反逆者だぞ彼女は!なにより俺の手が届く身分じゃないし……そもそも剣士が伴侶を持つ愚かさ、クレアさんを見れば……剣士は独りで生きるべきだ。これは俺が見ちゃいけない夢なんだ……
(一人になり、アリシアの馬車の手配もそこそこに宿を飛び出すと物陰に隠れ、頭を抱えながらうずくまって。愛し愛される歓び。人並みの幸せ。剣に生きるレドには無縁だったもの。皮肉にもそれを尊敬する人の家督を奪い、ついには国へも反逆せんとする者から与えられるなんて!様々な葛藤に苦しみ、顔を手で押さえる姿はまるで発作を起こした病人である。
しかし一人の女性に想われ全身で愛を注がれた経験などレドには無く、また捨てがたいものだ。他人のために平気で命を投げ捨てる青年が己の未来を渇望するようになった。悪魔では無い、昨晩のような本物のアリシアとまた触れ合いたいと。たとえ叶わぬ夢であろうとも……涙を流しながら立ち上がると、まるで幽霊のようなフラフラした足取りで冒険者ギルド方面の馬車へ向かい。いい加減帰らないとレイラさんが心配する。早くギルドへ戻らねば……そう気持ちを切り替えようとしつつも、口ではアリシアへの未練をブツブツ呟き。)
ううっ、アリシア……それでももう一度、もう一度お前に会いたい……一体どうすれば……
>873
まぁ…それは心強いですね。であれば出来るだけ良い物をお持ちしましょう。
(オルトロスの自信の程を聞いて、クレアは感心した様子で称えてみせた。直せるだけでもかなりの腕を要するというのに報酬は朝食で良いなど、この上ない破格の条件。状況から察するにきっと他意はないのだろうが、せめて少しでもその働きに報いようと、なるべく良い物を持って来ることを決心した。)
>875
ふふっ、慌ただしい人ですこと。しかし…この胸の高鳴りはいったい…?人間にこのような感情を抱く筈など……いえ、そもそも私は…何者なのでしょうか…
(レドの走り去る音を聞いて、思わずアリシアは吹き出すように笑みを零した。そんな所も愛おしいと…つい先程までレドの居た場所に目を向けたまま胸に温かな感触を覚える。しかし、その後にある違和感に襲われ、苦しそうに胸を抑えて顔を伏せる。本来、上位悪魔である筈の自分が下等生物たる人間にそのような感情を抱くことなど有り得ない。そう思い至ると、そもそも自分という存在は何なのか…アリシアは自分の身を抱きながら、震える声で自問自答していた。)
遅い、あまりに遅すぎる。予定では昨夜には帰ってきている筈だが…いったいレドは何をしているんだ。まさか…王都で夜遊びを…けしからんっ!帰ってきたらお説教だッ!
(ギルドの食堂で朝食を取りながら、レイラはレドの帰りが遅いことに不満を募らせていた。昨夜はレドが帰ってくるであろう時刻に一度ギルドに戻ったものの、いくら待てど結局レドが帰ってくることはなく、そのせいかレイラの機嫌は決して良いものではない。ブツブツと独り言を呟いていると思えば、唐突に妄想を膨らませて激昂する。拳を思い切り叩きつけたことで、朝食とテーブルの残骸で食堂はすっかり悲惨な有様であった。癇癪に巻き込まれないよう冒険者達は食堂から距離を置き、人で溢れるギルドの一角に人気のない異様な空間が出来たことは言うまでもない。前日にレドと約束をしたばかりだと言うのに、レイラの癇癪癖が直るのはまだまだ先になりそうだ。)
>874
うん、妥当な感じかなぁ…けどねぇ、狼とかライオンとか強い動物がモデルの獣人は同じ期間でS級冒険者になっちゃうんだよぉ。
(ウラルもこれくらいの昇級速度が妥当だと考えているようで、アヤトの発言に頷き。人と蛇の良い所を併せ持つウラルだが、やはり猛獣がモデルの獣人の実力は桁違いのようだ。元々の身体能力が高いことに加えて戦闘経験、優れた判断能力があればたった3年でS級冒険者になってしまう。欲しかったらまた言ってという発言に「うん、ありがとうねぇ」と笑みを浮かべてお礼を言い、掌の金平糖を一つ口に入れて。何故アヤトが首を傾げる理由が分からず、頭の上に複数の「?」が浮かび上がりそうな程の不思議そうな表情を浮かべ…傾げていた首を元に戻して「ひょっとしてぇ、なにか忘れ物したのかなぁ…?武器…じゃなさそうだし……何を忘れたかわかんないや。…まぁ、私は予備もあって多めに持っているしその時は分けてあげよっと。」と、大ハズレにも程がある予想をしており)
うん♪けど私ばかり貰ってばかりじゃダメだから、少しずつでも皆に返してるんだよぉ。みんなにも幸せになってほしいなぁ~
(アヤトの言葉、これから続くといいねという言葉に笑顔で頷いて。ウラルもこの幸せな時をずっと途切れること無く続けていたいと思っている…周りの人達にたくさん良くしてもらった。そんな優しい人達だからこそ幸せになってほしいと願っており、少しずつ今まで受けた恩を返していってることを告げて。)
ううん、私は大したことしてないよ~。それにしても、変わった東刀かぁ……今度会ったときに、ミミに聞いてみるねぇ~。うん、だから…これからじっくり見させてもらうよ~?
(ウラルの情報提供に満足した様子のアヤトに、自分は大したことをしてないとやや謙遜しながら笑みを浮かべて。それにしても、アヤトが探している東刀…特殊な刀で間違いないだろう。実用性がないのか、美術的な価値がないのかは不明だが…誰も買おうとしない見た目をしているのは確かだろう。ウラルの方がミミと会う頻度が多いため、今度その刀のことについて聞いてみると告げて。アヤトの戦闘技術は恐らく高いだろうが、まだハッキリとした実力はわからない。だから援護しながらアヤトが戦う姿を見て判断すると言い「お手並み拝見だねぇ~」と、ニコリと笑いながら告げて)
できればそうしたいけど~…途中でこのダンジョンがS級クラスの難易度だってわかれば引き返そうかなぁ…流石に2人だと危険かもしれないし…あ、調査記録は私が書くから安心してねぇ~
(ランタンの灯りを頼りに周りを見ながら慎重に進んでいき…アヤトの質問に答えて。今回の依頼は討伐ではなく調査、できればダンジョンの中心まで行きボスの実力等を調べたいが…途中でこのダンジョンがS級クラスのダンジョンだと判明したら引き返すと告げて。いくら準備ができていても、S級並みの実力を持つアヤトとA級冒険者のウラルだけでは先に進むのは危険だろう。…アヤトが足音をたてずに進んでいることに気づき、自分も真似しようとするがうまくいかず。「アヤトくん、アレみたいだねぇ。あの~……ニンジャって言う、東国のアサシンみたい。」と、魔法とは違う術を使い隠密活動や暗殺をメインに活動する東国の暗殺者のことを話して。偶然とはいえ、本当にアヤトは暗殺者なのだが…。)
>876
(クレアの発言に返事はしなかったものの、その言葉に反応するかのように部屋の奥から炎を噴き出す音とハンマーで何かを打ち鳴らす金属音のような音が聞こえてきて。早速作業に取りかかったのだろう…)
…それじゃあ、剣はルトに任せて私達は行こっか。出来上がった剣を見たら、絶対驚くよ~?
(オルトロスも作業に取り掛かったため邪魔にならないようにと、鍛冶屋の扉を開けながらそう告げて。やはりオルトロスの腕に自信があることと、オルトロスの様子からニヤニヤと笑いながら絶対に驚くと告げて。そこそこ長い付き合いということもあり、僅かな発言や様子からどれだけ気合いが入ってるかわかるようだ。それはさておき、これから酒場に向かうわけだが…どの酒場に向かおうかと歩きながら考え始めて。クレアのリクエストを聞いて、おまかせであればいつもミミが通ってる酒場に向かおうと決めて)
クレア、どこの酒場がいいかな?特にないなら、私行きつけの酒場に行こうかなって思ってるけど~…
>877
ああ、やっと戻れた。「冒険者ギルドの日常」に。
都会(デュランダル)の喧騒は好きじゃないが、今日ばかりは……
(ようやくギルドへ戻ると、受付前にしつらえた椅子にドカッと腰かけて。勇者レイラとの出会い、副団長エリスとの決闘、そして近衛隊副長アリシアとの……昨日だけで一般冒険者には縁のない経験を幾度も重ねた上に徹夜である。田舎者のレドは賑やかな冒険者ギルドの雰囲気に慣れないが、流石に今日は帰還の安心感で包まれている。緊張の糸が切れ、周囲の異変もどこ吹く風と刀を抱いてウトウトする薄汚い青年……レドを見るなり他の冒険者は引き攣った顔を向けるか、あるいは惨劇の予感を察して逃げ出して。なにせレドが無造作に腰かけている椅子こそ、今癇癪を起こしている勇者レイラの専用席なのだ!)
あ?うっせーな、何だよ?……バカ野郎!なんて情けないヤツらだ!そんなんで未知の魔物に立ち向かえるのか……仲間の命を預けて戦えるのか!
とにかく敵前逃亡なんぞ冒険者のすることじゃねー……はよ戻れ!逃げる奴は片っ端から斬るぞ!!
(おそらく昨日のやりとりを見たのだろう、レドを勇者の知り合いと見て冒険者が助けを求めてきた。ここで事態を察すると「そういう事か……あの野良犬勇者め。」と頭を抱えて呆れつつも、寝不足で血走った瞳をレイラでなく冒険者達に向けて。シエルやアリシア、何よりレイラを守るため、人智を超えた強さを誇る副団長と戦わざるを得なかった今のレドにとって、勇者といえど一人の女性に何もできず逃げ回るばかりの腰抜け冒険者達の方に腹が立ってしょうがない。
冒険者達に罵声を浴びせるとレイラ専用席ごと身体を出入口へ持っていき、逃げ道を塞いでしまい。挙句の果てには座ったまま鞘を突き立て、逃げる奴は斬るとまで宣言して。その姿は騎士然とした紳士でもなく、女性に惑う純朴な青年でも無い。元の荒くれである。昨日送り出した青年が品行方正なクレアを信奉しているとは思えないほど暴れているのだ。さすがのレイラも気付くだろう……そして夜遊びにしては青年の身体が汚れており、左肩には血がにじんでいることも。)
>879
えへへ…それは楽しみですね。折角ですし、お店はお任せします。飲めれば何処でも…
(ミミのニヤニヤした表情に思わずクレアも釣られて笑い、剣の出来栄えに相応の期待を寄せた。そして、いよいよ待ちかねた酒場に行ける。嬉しさのあまりクレアの瞳からは無意識に一筋の嬉し涙が零れていた。ここまで我慢したのだから普段利用しているギルドの酒場では味気ない。オススメがあるのならそれに合わせようと、ミミに選択を委ねた。)
(/作中時間での翌日に剣を受け取った段階で、一度切り上げさせて頂こうと思います!最近またリアルの方が忙しく、二人同時進行となると時間や集中力などでキャパオーバーしていまして…
聖教国編に一旦区切りが着いたことや、アヤトさんの当スレの参加も鑑みて、ネタの補充期間も兼ねてそのように判断させて頂いた次第です。長らくありがとうございました(>_<)時間的余裕が出来ましたらお声をかけさせて頂きますので、その時にご都合が着きましたら、またよろしくお願いします!)
>880
レド、貴様…今まで何処にッ!って……どうしたその怪我は…!?
(出入口の喧騒に目を向けると、そこには荒ぶったレドの姿があった。夜通し遊んで悪酔いでもしているのだろうと考え怪訝な表情を浮かべると、怒りに身を震わせながら歩み寄っていく。叱ってやらねばと声を張り上げた刹那、血の滲んだ肩が目に入り、怒りで真っ赤に染まっていた顔からは瞬く間に血の気が引いた。即座に駆け出し、腰掛けるレドの胸に飛び込むと、瞳を潤ませた上目遣いで、焦った口調ながらも優しく抱擁をして怪我の経緯を尋ねる。)
>881
決まりだね、それじゃあ行こうか。私がダンジョンで見つけた年代物のお酒とかこのお店に売ってるんだよね、だからこっちも期待していいよ~?
(今日一日…正確には昨日依頼に備えるためにギルドから離れてから今に至るまでずっと酒を飲んでいないクレア。依頼中、何度も禁断症状に襲われ何度も涙を流した。今も涙を流しているが、嬉しい方の涙だろう…クレアの背中に手を添えて「ここまでよく頑張ったね」と、笑みを浮かべながら告げて。おまけに今から行く酒場、商人としても関わりがあるようで珍しい年代物のお酒があるため、酒のことも期待していいとニッと笑いながら話して)
(/こちらこそ、忙しい中ありがとうございました。お話の続き、楽しみにしてますね)
>882
あ、勇者様。ダメですよ今汚れてるから……ほんとに姉さんみたいな人だな。へへ……
ここじゃ話せません。二人で落ち着いて話せるスペースってありませんか?
(薄汚れた自らの身体を優しく抱きしめるレイラに、とうの昔に失った実家に帰ってきたかのような安らぎを覚え、苦笑いを浮かべて。短気だけど根は良い人を差しおいてアリシアと関係を持ったことに申し訳なさを感じつつ、レイラに抱かれたまま立ち上がると、乱暴者の勇者らしからぬしおらしい姿を怪訝な顔で見る冒険者達を「見せ物じゃない、散れ」とばかりに睨み付けて。レドから酒の匂いはしない。周りの腰抜け達が本当に嫌いなようだ。
怪我を見られたし、勇者の立場の重さを理解してもらうためにも襲撃の事はある程度話さなければならない。だが人混みの中で話せる内容では無いし積もる話も多い……レイラの両肩に手をやって抱きつく彼女を引き離すと、真剣な顔でレイラの瞳を見据えながら話しかけて。寝てないのだろう、レドの目には隈ができており、しかも間近で顔を見ると右のこめかみ辺りに新しい刀傷が確認できる……)
>878
その類の獣人は猛者が多いよね、確かに3年でS級に成るのも可能だろうね。
(アヤトの暗殺のターゲットには権力者、特権階級、金持ちのような何人もの護衛に守られている人物も少なくない。時にはウラルが言った狼やライオンのような猛獣の獣人が護衛に就いている場合も有ったのでその戦闘力は実体験として知っている。なので3年でS級と聞いても十分可能だと納得していた。ウラルの不思議そうな表情に頭の中で?を浮かべていたが、ウラルの首の角度が元に戻り、合わせるように自分も首の角度を戻す。相変わらず傾げていた理由は考えても見当もつかなくて…最終的にフリーズして黙ってウラルを見つめていた。)
意識しなくてもいい子のウラルちゃんなら幸せは運べるよ。だから普通に過ごし続ければ良いと思うよ。
(しれっと450歳をいい子呼びしつつ、ウラルの性格…善性なら本人が意識しなくても自然と幸せを与えられると考えて、普通に過ごすだけで良いと口にして。)
あ、見た目はね、刃と鞘が無くて柄と鍔だけの真っ白な東刀だよ。もし持ってるなら幾らでも出すって伝えてよ。
(聞いてみると言われて「助かるよ、ありがとう」と礼を述べる。特徴を伝えていない事に気づいて記憶に残っている造形を口にする…が、その見た目は真っ白な持ち手しかなく…そんなガラクタか玩具と思われても可笑しくない物だった。本人は真剣な表情でお金は幾らでも出すと口にする。ギルドでの支払いで見せた所持金と金銭感覚を知っているウラルなら大言壮語や誇張の類で無いのは伝わるだろう。実力を見て判断すると聞けば余裕の笑顔で「アハハ、お手柔らかにね。」と返事をする。)
危険なのは嫌いじゃないけどね。まあ、必要なら撤退するのは賛成だよ、このダンジョンは逃げるは簡単そうだからね。フフ、調査記録は面談だから助かるよ。
(1人ならS級のダンジョンだとしても進んだが…今は1人では無いので自制して賛成を伝える。
長い廊下によって直線が続くので加速の魔眼を活用しやすい、なので引き返すのは容易だろうと考えていると、歩き方を真似しようしているのに気づいて「フフフ、さすがに初見で真似は難しいと思うよ」と言いかけたが…ウラルの口から本職の答えであるアサシンと言う単語が突然出た事に「んん!?」と大きな声で驚き、その影響で足元への注意が逸れてしまい、明らかに他とは様子の違う突質したレンガを踏んでしまう。)
……っと!ごめん、何か踏んだみたいでね、何かのトラップか何かのスイッチだったかも。
(直後に背後から飛来した炎の玉をノールックで斬り落とし、何かのスイッチを押したかもれないと…驚いて上げた声が嘘のように冷静な口調で伝え、同時にクナイを投げて数秒前に通過したばかりの天井から現れた魔法の杖を破壊して第二射を防ぐ…が、新たな杖が破壊された残骸を押しのけて姿を見せ、更には左右の壁も振動し始め今にも何か出て来そうで…そんな中でも何故か前方、中心部へ進む道だけは何も起動していないようで…)
>883
それは楽しみですね~。何から飲もうか…考えるだけでワクワクします。
(涙を拭い、期待を寄せながらミミの後を追うように酒場へと歩みを進める。たまには嗜好を変えて年代物の酒もいいかもしれない。頬に手を添えながらそんなことを考えていると、ついつい幸せで顔が蕩けていた。)
>884
わ、分かった…手配しよう。
(レドの表情から只事ではないことを察すると、レイラも同様に真剣な表情を浮かべてコクリと頷いた。ギルドの応接室であれば人目を気にする必要もないだろう…そう考えるとレドの手を引いて足早に歩みを進める。こめかみに傷、そして目には酷い隈が出来ており、レドが満身創痍であることは明らかであった。可愛い弟をこんな目に合わせた存在を許すものかと、応接室へと向かう道中でレドの手を握る力は徐々に強くなる。)
では、聞かせてもらおう。いったい何があった?
(道中に通りすがった職員に使用許可を得て、応接室に入るなり備え付けられた仕立ての良いソファに腰掛ける。腕を組み、対面するレドにギロッとした視線を向ける様はまるで尋問のよう。無論レドに怒っている訳でなく、感情がそのまま態度に出ているだけである。レイラは鋭い視線を向けたまま、小話も挟まずに単刀直入に尋ねた。レドの容態を心配してのことでもあるが、手っ取り早く事の顛末を聞いて犯人に相応の代償を支払わせる。彼女の頭はそれでいっぱいであった。)
>887
(レイラに手を引っ張られると、頬が緩んで。まるで喧嘩に負けて帰ってきた自分を心配する姉のよう。身寄りが無いゆえ、持てるはずの無い家族愛を掌に感じつつ、引っ張られるまま応接室へ入り。)
会食の帰り、刺客に待ち伏せされて襲われたんです。貴女を狙った刺客にね。これがとんだ手練れでこのザマ……アリシアが駆けつけてくれたはいいが2人がかりでも撃退するのが精一杯。というより刺客も心変わりしたんでしょう。力尽きた俺とアリシアを見逃してくれたから帰ってこれたようなものです。
……レイラさん?まさか仕返しする気じゃないでしょうね。だからダメだってば短気を起こしちゃ……気持ちは嬉しいけどこれはガキのケンカじゃない。相手がやる気を無くした以上寝た子を起こす真似をしちゃいけません。貴女は何事も無かったかのように振る舞ってください。アリシアも同じ考えです。
(レイラの対面に腰かけると、望み通り淡々と報告して。ただし彼女が激昂しそうな副団長や商人の事は伏せて、である。最初は背筋を伸ばし、手を膝に置く引き締まった姿勢で話していたが、案の定レイラから殺気、犯人に報復したくて躍起になっている気持ちを察すると前のめりになり、彼女の瞳を睨みつけて制止して。自分の仇を取ろうとしてくれるのは嬉しいが、彼女はデュランダルの生まれながら聖教国の英雄となった「勇者」である。ややこしい立場にある彼女にうかつな事をさせるわけにはいかない……)
>885
少し羨ましいなぁ…高い身体能力を受け継いだこと。私なんて、ピット器官だけだよぉ~。…フフ……
(ギルドとかでそういった冒険者を見かけたとかではなく、まさかアヤトがその冒険者と戦闘を繰り広げたことには一切気づいておらずモデルとなった動物の高い身体能力を受け継いだことを羨ましいと言って。ウラルは身体能力を受け継いでおらず、代わりにピット器官…赤外線感知器官のみ受け継いだ。このダンジョンのように暗い場所では役立つかもしれないが、普段は使い道があまりない様子。アヤトも首の角度を戻し、こちらをじっと見つめているのを見ては「それにしても、アヤトくんはおっちょこちょいだなぁ。けどまぁ、慣れてきたら初歩的な所を見落としちゃうよねぇ。そういうところも含めて、私がサポートしないとねぇ~」なんてことを考えながら静かに笑みを浮かべて。…だが、何もないのに急に笑った辺り何か企んでるようにしか見えず、おまけに不敵な笑みにしか見えない。当然、ウラルは何も企んでない。)
えへへ~、そっかぁ…ありがとぉ、アヤトくん♪そう言ってもらえると、すっごく嬉し…って、私子供じゃないよ~!アヤトくんより年上ぇ~!
(アヤトからとても嬉しい言葉をかけてもらうと、見るからに嬉しそうな笑みを浮かべてお礼を言い……遅れて子呼びしたことに対してツッコミを入れて。見た目が完全に人間のため、誰がどう見てもアヤトよりも年下にしか見えないが…)
…それ、本当に東刀なのぉ…?それって、持ち手しかないってことでしょぉ~?ミミのことだからぁ、多分高額で売ったりはしないかなぁ…?
(アヤトが探している東刀の特徴にしっかり耳を傾け、聞き終えた頃には首を傾げており。東刀の特徴を頼りに脳内で形作っていたが、出来上がったのは白い持ち手。本当にその持ち手が東刀なのか問いかけて…ギルドでの支払いから本当に幾らでも出してしまう可能性が大きいため、ミミの性格からそんな高額で東刀を売ったりはしないと苦笑いしながら告げて。というより、ミミが売り物にしてるか怪しくなってきた…売ってたとしても、武器としてではなく素材として売ってるだろう。アヤトの余裕そうな笑顔を見ているウラルは、この後すぐに彼の実力を目の当たりにするとは知る由もなかった…)
確かに、アヤトくん一人なら最深部まで行っちゃうかもねぇ。今のところ直線だからねぇ、この先の構造次第じゃあ………!?なになに、どうしたのぉ!?
(1人でAランク以上の依頼をよく受けているアヤトなら、最深部まで行ってボスと交戦するという予想を少し苦笑いしながら話して。アヤトの言葉に頷き、今の直線が続けば逃げやすい…が、入る前に感じた冷気やそこから把握できる外観よりも広いダンジョンの中…そのことを言いかけた時、アヤトの声に驚いてビクリと肩を震わせて。何が起きたのか、後ろを振り返り…アヤトが他とは違うレンガを踏んでいるのが見えて。十中八九、トラップだろう)
…え、えーっと…とにかく逃げよっか!この先なら何もなさそうだから…!
(予報通りトラップだったようで、複数の仕掛けが起動して炎弾が飛んでくる…が、アヤトがノールックで斬り捨てて。先程の驚いた声から凄く冷静な様子で対処したことに驚いた様子で少しの間言葉を失い。次のトラップが起動しようとしたところで我に返り、マグナムを引き抜いて新たに現れた魔法の杖目掛けて銃弾を放ち、この先は何もトラップが起動してないことを確認してそっちに逃げようと告げて)
>886
(そうしていると目的地である酒場にたどり着き、扉を開けて。中は木造で広いカウンターと大人数用のテーブルが6つあり、そこそこ広い。既にかなりの数の客が酒を飲んだり談笑したりと賑わっており、中にはミミと知り合いが居るようで「よう、ミミちゃん!依頼帰りか?」「隣にいる姉ちゃんってS級冒険者のクレアだよな?珍しい組み合わせだな…」等と声をかけて、ミミは笑みを浮かべながらその声に応えてカウンター席へと進み。)
こんばんは、ミミさんにクレアさん。…何か、重大な依頼をしてきたみたいですね?
(カウンターに立つ大人しく上品そうな男性店主が2人に挨拶して。クレアのことを知っているのは、やはり彼女の功績や噂の影響だろう…本来2人が一緒に行動していることはないため、そこから2人が何か重大な依頼をしてきたと読み取りながら2人にメニューを渡して。ミミの言った通り、酒や酒に合う料理の種類がかなり豊富だ…)
>888
私を狙った刺客…か。面倒事に巻き込んでしまってすまない……癪だが仕方あるまいな。お前がそれで良いのなら私からは何もしない…
(刺客に襲われたと聞いて、レイラは自分の我儘でレドを危険に巻き込んでしまったことを悔い、唇を噛み締め、拳を強く握りしめた。その刺客の心変わりがなければ今頃レドは…と嫌な想像をしてしまう。それが無性に腹立たしいが、本人が敵討ちをするなと言えばそれまでだ。レドとアリシアの二人がかりでも手に負えない相手となると余程名の知れた存在の筈だが、名前すら教えてくれないのだからレドとしてはこれ以上トラブルを起こされたくないのだろう。そこまで思い至ると、レドの視線に不貞腐れたようなジト目で返して渋々ながら了承した。)
>890
こんばんは。ふふん、そうなんですよ~。先程まで聖教国で聖女様の護衛をしていました。
(店の賑わいに感心しつつ席に着くと、問いかけに自慢げに鼻を鳴らして依頼内容を告げる。普段なら謙遜しそうなものだが、酒場に来たことでかなり上機嫌になったようだ。)
では早速、ビールをお願いします。ミミちゃんは何を飲みますか?
(待ちきれなかったのだろう、渡されたメニューに目を向けるより先に一先ずビールを頼む。酒場であれば必ず置いてある上に初めの一杯目の定番である。注文を言い終えると、ミミに顔を向けて何を頼むのか興味津々といった様子で尋ねた。)
>891
……レイラさん、いやさ「勇者」レイラ・ハート。貴女がどう思っていようが、傍から見れば貴女は教皇様の一門に等しい存在。どうしても人から目障りに思われて、こういう事態にも出くわす宿命にあるんです。これからはこの事をよくわきまえて、癇癪起こして人から恨みを買う真似なんかしちゃいけませんよ。
……って、こんな不覚を取って、おめおめと帰ってきた俺が説教できる立場じゃないか……俺もレイラさん並に強ければ……すみません。
(なんとも不服そうなレイラに、前のめりのまま指を組んで勇者の立場の重さを淡々と説いて。ただでさえ知らない内に人から敵視される立場、せめてすぐ怒る癖は直してもらいたい……と、真剣な顔で説教していると、顔を歪めて怪我した左肩を押さえ出して。傷が疼いてきたのだ。あの場にいたのがレイラさんだったら奴を倒せただろう。それにひきかえ自分は彼女を狙う敵をみすみす逃してしまった……そんな申し訳なさと無力さから、顔から汗を垂らしつつ頭を伏して。)
>892
おや、それはそれは…そのような重要な役に任命されたとは、流石はクレアさんですね。その実力、どうやら噂通りのようですね
(聖教国の聖女の護衛という重要な役回り、普通の冒険者には絶対任されない仕事だ。本来であれば、「勇者」の名を持つレイラがするはず…だが、今回は何か理由があって護衛ができなかったのだろう。そのレイラの代わりとして、クレアが任命されたようで自慢げに話すクレアに賞賛の言葉を送り。かつてレイラと肩を並べて戦っていた程だ、実力はかなりのものだろう……それと同時に「…はて、聖教国は獣族の扱いがかなり悪いはず…」と疑問を抱き、その依頼に同行したと思われるミミに視線を移して)
私は~…私もビールにしようかな~。
(メニューを見る前にビールを注文した辺り、待ちきれないのだろう…無理もないことだ。なるべく早く決めようと思いつつ、いつも頼んでいる酒を頼もうかと考えた…が、久しぶりにビールを飲むのも悪くないと判断し、ミミも同じ物を頼み。注文を受けた店主は木製のジョッキを2つ用意し、ビールを注いでいき…すぐに2人の手元にビールが届いた。注ぐ際に生じた泡が、今にも溢れそうだ。)
>893
……お、おい!レドッ!?こういう時は…そうだ、医務室に行くぞ…!自分で歩けるか…?
(不貞腐れた顔で目を逸らし、大人しくお説教を聞いていたレイラだったが、レドが傷の疼きに顔を歪めると思わず目を見開いた。普段怪我とは無縁な上に、不死鳥の翼の活動当時には治療はカルロスに任せきりだったレイラにその類いの知識はない。ソファから降りてレドに歩み寄ったはいいものの、焦りから珍しくおろおろとした様子で額に汗を流していた。しばしの思考の後に名案だと言わんばかりに医務室へ向かうことを思い付くと、腰掛けているレドの視線の高さに合わせるように膝を折り、余程心配なのだろう震える声で自分で歩けるか尋ねる。)
>894
久しぶりのお酒の匂い…堪らないです。それではミミちゃん、かんぱい!
(手元にビールが届くと、鼻腔をくすぐるアルコールの香りにクレアは頬に手を添えてうっとりした表情を見せる。たった一日我慢しただけにも関わらずアル中のクレアにとっては途方もない時間に感じられたのだろう。ジョッキを手に持ちミミに向き直ると、元気いっぱいに乾杯の音頭を取った。)
>896
今日一日お疲れ様、かんぱ~い!
(久しぶりというクレアに、1日しか経ってないとツッコミを入れようかと思ったが…毎日酒を浴びるように飲んでいたクレアからすれば、もっと長い期間禁酒していた感覚だろうと察してツッコミを入れず静かに微笑み。ミミもジョッキを手に持ち、元気いっぱいの乾杯の音頭に、こちらも同じくらいのテンションで応えてクレアの持つジョッキに自分のジョッキを軽く当てて乾杯して)
>895
れ、レイラさん、そんな大げさな……ふふ、まあいいか。行きましょう。
(身悶える様子にうろたえるレイラに思わず吹き出しそうな笑みをこぼして。正直傷自体は擦った程度で大したものではない。痛みに悶えたのは敗北感に因るところが大きいのだ。しかし自らの身を本気で心配するレイラが可愛らしくて、なにより嬉しい。膝を折って視線を合わせるレイラに微笑みを向けると立ち上がり、提案通り医務室へ向かうことに……した途端急に鳴り出した腹を手で抑えて。朝から何も食べてないことを自覚すると、苦笑いを浮かべて。)
あ、あと、何か腹に入れたいな……
>897
ぷはーっ!えへへ、仕事おわりの一杯はさいこうれすね。ふふん♪
(乾杯を終えるとグビっとビールを煽り、あっという間にジョッキを空にする。顔は若干赤みがかり、回らない呂律で感想を言い終えると上機嫌に鼻を鳴らした。先程までの情緒が安定しない姿は何処へやら、酒が入ったことですっかりギルドでお馴染みのアル中と化していた。)
>898
何を笑っているんだ…!人が本気で心配しているというのに、まったく…それならまず食堂に向かうぞ。私からもお前に聞いておきたいことがあるからな。
(自分の心配をよそに吹き出しそうな笑みを見せるレドに、レイラはムスッとした表情で頬を膨らませつつも、怪我が大したことないようで内心で安心していた。今度は腹が空いたと注文を受ければ、呆れたようにジト目を向けつつも食堂に歩みを進める。積もる話があるのはレイラも同じようで、道中、何やら食事の場で確認しておきたいことがあると告げる。会食の翌日ということもあり十中八九アリシアに関連したことであろう。)
>899
お、相変わらずいい飲みっぷりだねぇ?…あ、もういつものクレアになってる!
(ミミはビールを飲みながら視線だけ動かし、クレアがビールを飲む姿を見ており。ギルドでよく見る光景だが、見てて気持ちの良いほどの飲みっぷりに笑みを浮かべながら空になったジョッキをテーブルに置いて。ビールの感想を言うクレアの呂律がもう回らなくなっており、いつもギルドで見かけるクレアにもうなったことに少し驚き。本来であれば、依頼中酒のことを忘れていたクレアが本来のクレアなのだが…)
>900
……いや、やっぱ食事はいいです。そうだ、呑気にメシ食ってる場合じゃなかった……すみません。
二人だけで話すべきことはまだ沢山ある、戻りましょう。そうだなぁ、牛乳……砂糖入りのを、応接室へ持ってきてもらえませんか。それだけあれば生き返るんで。
(食堂に向かうと聞いて「あぁ何食おうかなぁ、ミートソースパスタ大盛りかなぁー。」と浮かれていたが、レイラに呆れ顔を向けられるとハッとして彼女の袖を掴み、目を伏して謝って。姉のようだからと甘えてしまったが、本来は勇者の代理で赴いた仕事の報告をしっかり行うべき立場だ。応接室へ戻ろうと促すと、今度は頭を上げて視線をレイラの顔へ戻し、砂糖入り牛乳を注文して。剣士らしからぬ随分と子供っぽい注文だが、レドにとっては下手な食事より活力を与えてくれる代物らしい……その表情はいたって真面目だ。)
>901
えへへ、まだまだ飲みたいところですけど明日の為にあと数杯で我慢します…
(飲みっぷりを褒められると可愛らしく微笑み。気持ち的には何十杯と飲みたいところだが、明日はレイラとの再会が控えている。そのことを思い出すと緊張から酔いが覚めてきたのか呂律は元に戻り、気を紛らわせる為にメニューへと視線を移した。)
>902
ハァ…分かった。取ってくるから先に応接室で待っていろ。…世話の焼ける弟め。
(袖を掴まれ謝られると、その様は本当の弟のように愛おしく感じられた。レイラは燻られる姉としての本能でにやけそうになるのを必死に抑え、誤魔化すためにため息をつく。ぶっきらぼうな表情ながら優しい手つきでレドの手を解き、注文の品を受け取りに行くため単身で食堂への歩みを再開した。文句を言いながらもその足取りは軽く、どこか楽しそうであった。)
持ってきたぞ。それで本題だが…剣術指南役の打診を受けたそうじゃないか。昨夜、本来お前が帰ってくる筈の時間に宮廷の役人が訪ねてきてな。そのことで話があると言っていた。あの女の元にお前を預けるのは癪だが…剣士として名誉なことなのだろう?判断はお前に任せる。もし受ける意思があるのなら今日の夕方に中央庁舎を訪ねてくれとのことだ。
(しばらくして、レイラは牛乳の入ったマグカップと自分用の紅茶の入ったティーカップを乗せた盆を手に持って応接室に戻ってきた。「勇者を小間使いにするのなんてお前くらいだぞ。」なんて冗談めかした皮肉を言おうとも考えたが、先程謝られた手前流石に意地悪が過ぎる。少し小首を傾げて思案した後、何事もなかったように応接室のテーブルに盆ごと品を置いた。そして、ソファに腰掛けるとテーブルに身を乗り出して頬杖をつき、少し不貞腐れたような表情で、対面するレドの顔を見つめながら本題を切り出す。どうやら昨夜、宮廷の役人がレド目当てでギルドを訪問したらしく、居合わせたレイラに言伝を頼んだようだ。会食から間もなくして剣術指南役の話を掴むとは宮廷の情報網はなかなかのものである。レイラが不貞腐れているのは言わずもがなアリシアにレドを預けたくない葛藤がある為だ。しかし、レドが剣士として名を売る折角の機会を私情で奪う訳にはいかない。故にこうして判断を委ねているのだ。)
用語解説:中央庁舎とは正式名称「デュランダル中央庁舎」。その名の通りデュランダルの行政を担う役所です。交易都市の役所だけあり、外観は大きいお城のような見た目です。
>903
そうだねぇ…けど、料理はいくらでも頼んでいいよ?ここの料理、どれも美味しいからねぇ…♪
(微笑むクレアを見ては可愛いと思いながらこちらも微笑み返して。明日レイラと会うことに緊張しているのだろう、先程まで回っていなかった呂律が元に戻っており…無理もない。久しぶりに会う上に、話からしていい別れ方をしていないのだから…メニューを見るクレアに、どの料理もすごく美味しくてオススメだと笑みを浮かべながら話して)
>904
なっ、宮廷!?近衛隊の者ではなく……?そうか、そういうことか……
レイラさん、剣術指南など口実だ。アリシアはこの国で、何か事を起こそうとしている。そのための手駒、あるいは勇者の人質として俺を手元に置きたいのです。
で、王国もそんな動きを察知したはいいが、国王直属の彼女にはうかつに手を出せない。だから剣術指南の話にかこつけて部外者の俺にアリシアを処断できる手がかりを探せと……いや、いっそアリシアを反逆者として斬れと!そう命じるつもりでしょう。
(つっけんどんながらもその実どこか優しく、楽し気で、言われるままに牛乳を持ってきたレイラが愛らしく感じる。「へへ、ありがとうございます」と笑みをこぼしながらマグカップに口を付けようとした途端、レイラが切り出した話に思わずぎょっとして固まって。まさか即日で剣術指南の情報を持ち帰るとは。宮廷もなんと素早く油断ならない……そして宮中の人間が近衛隊の人事に介入してくるとは、いよいよ剣術指南の話に便乗して不穏分子・アリシア排除に乗り出すか……と察すると、両手でマグカップを握りしめたまま、レイラに自らの見解を述べて。)
国がとうとう重い腰を上げたんだ。俺が動かなくてもいずれアリシアは反逆者として滅ぼされるでしょうが……行ってきますよレイラさん、アイツの首を獲りに……親父もろともね。
実家、いや騎士としての全てを奪った一族を討ち果たし、帰る家を取り戻せば……クレアさんも安らぐでしょうよ……
(レイラの顔に合わせていた視線をマグカップに落とし、自らの覚悟を語って。もうアリシアを救えそうにない。なら当初の予定通り父親共々アリシアを討ち、クレアさんの実家を取り戻そう……結局俺は叶わぬ恋をして、愛してはいけない人を愛してしまった。このファーストキスのミルクの味、アリシアへの想いも、捨てるべきものなのだ……そう葛藤しながらカップの中の牛乳を見つめるレドの眼光は傍から見れば不自然なほど鋭く、声も暗い。)
>889
僕もガキの頃は……獣人には色々と思う事があったから身体能力を継ぎたかったってのは分かるけどね。ピット器官はよく分からないけど…ウラルちゃんの強みは半獣人に見えないとこだと思うよ、聖教国に絡まれないで済むでしょ?
(奪い合いの世界で同年代に見える者ですら高い身体能力に知識と経験を持った獣人は羨ましく…恨ましく…と当時は色々思ったのもあって共感を示すつつ、容姿が人間と殆ど変わらない点をメリットに上げる。聖教が国家を形成する程の力を持つ現代では獣人、半獣人は生きているだけでリスクを負っている……いかに身体能力が高くても街中で異端審問官なんかに襲われれば対処出来るのは一握りだろう……そんな考えからウラルの人間にしか見えない点、反獣人主義者等に襲われるリスクを大幅に減らせる容姿を強みだと思っていた。その容姿も何かを企んでいるようにしか見えない状態では意味が無いが…。何か刺客や罠を張られた気配も無い、そもそも変わらず悪意も感じない……と推測材料に困って「んっと…さっきから楽しそうだけど、何かあった?」と困惑気味な表情で直接聞いて。)
んー…傍目には年上に見えないかもね。ウラルちゃんはこど…いや、若く見えるからね。
(実年齢が年上なのはもはや疑っていないが…体型はともかく16前後の容姿に相応のファッション、そして甘い語り口…年上に見える要素が見当たらず、子供ぽい…と言いかけて若く見えると言い直す。)
そりゃ持ち手だけの東刀なんて高値で売れないよね。実際に見ればウラルちゃんもアレを東刀だと思って……貰えないかもね…
(改めて東刀なのかと聞かれると持ち手だけなのを抜きにしても東刀だと言い切れず…妖刀はアヤトが見てきた武器の中でも特に変わった代物で、ウラルには実際に使っている姿を見せても東刀だと思われるか怪しいレベルだった。なので口頭でこれ以上、特徴を説明すると余計に東刀だと思って貰えなそうな気がして苦笑いを浮かべて「まあ…機会があったら見せるよ」と約束して。)
んー…そっちしか逃げ場は無さそうだね。じゃあ少し走ろうか。
(示された道には起動しているトラップが無いのを認識して…ウラルが魔法の杖を破壊したのを確認して新た杖が現れる前に走り出す。幸い、スイッチが押された場所から一定範囲しかトラップは起動しないようで最初の内は魔法の杖の追撃が飛来するが…しばらく走ればすっかり追撃は止まり、螺旋状の下り坂を走り切れば静かな広場のような場所に出て。)
フフフ、ごめんね、僕のミスで酷い目にあったね。ケガとかしてない?
(長い距離ではないにせよ、突発的な自体で走るには短くない距離を走っても息を乱す様子も無く。落ち着いた場所に出れば自分の凡ミスで酷い目にあわせた…と謝罪しつつも自分がベタな仕組みに引っかかった事に笑っていて。また、同じミスをしないように周囲を警戒しつつ、相変わらず少し楽しそうな様子で怪我をしていないか尋ねて。)
(/すいません、いつも以上に遅くなりました…)
>906
ふむ…何やら面倒なことになったな。そういった謀には疎いのだが…そうだな、私に言えることは一つだけ。レド、お前は自分の正義を貫くといい。
(レドの口から語られたアリシアや宮廷の謀略を聞いて、紅茶を一口含みながら難しい顔で眉を顰めた。普段から人と群れることのないレイラにとって国家規模の謀略など気の遠くなるような話であろう。事の全容も、レドの意志の行く末も分からないが、そんなレイラにも幾つか分かるものがあった。それはレドが面倒事に巻き込まれたということ、そして胸に何か大きな葛藤を抱えていることである。ここは姉として気の利く言葉の一つでもかけるべきだと思い至ると、ブンブンと首を横に振って顰め面を振り払い、自信に満ちた真っ直ぐな瞳をレドに向けて己が正義を貫けと背中を押した。)
>907
そっかぁ…そうだよねぇ…仮にアヤトくんと同年代くらいの見た目でも年上だろうしぃ、身体能力も獣人の方が上だよねぇ…。…あ~、確かにそうかも~。この間デュランダルに聖教国の人が来てたんだけどぉ、普通に話しかけられたよ~?私が半獣人だって、気づいてない感じだったねぇ。
(アヤトと同世代に見える獣人は十中八九アヤトより年上、おまけにそのくらいの獣人でも人間の男性に勝てるくらいの身体能力を持っている者も中には居る…奪い合う世界にいる獣人は尚更そうだろう。当時のアヤトは恐らくそんな獣人を羨ましく思ったり悪く思ったりしただろうと察しつつそう告げて。アヤトの言う通り、獣人や半獣人に見えないのは大きなメリットだ…つい最近何かしらの用でデュランダルに来ていた聖教国の司祭達に普通に話しかけられたことを話して。しかも、明らかに半獣人だと気付いていない様子だった…そう考えれば、獣人としての強みはあまりないがこの現代を生きやすく恵まれてると考え「ちなみにピット器官はねぇ、熱を感知できる器官だよ~」と、ピット器官の説明を簡単に説明して。困惑気味に尋ねるアヤトに「なんでもないよ~?アヤトくん、困ったことがあればなんでも相談してね~?」と、ニコニコ笑いながら答えて。普段であれば普通に見えるのだが、この状況では他意があるように見える。というより、今まさに困ったことが起きている。)
…今、子供っぽいって言いかけたでしょ~?私もう子供じゃないもん、お酒飲めるし~………えーっと…………お酒飲めるもんっ!
(至極どうでもいいところだけ勘が鋭く、子供っぽいと言いかけたアヤトのことをジト~っと見ており。自身の胸に手を添えて、目を閉じながらもう子供じゃないと主張し、大人だからこそできることを挙げていく…………が、お酒以外思いつかず。煙草や葉巻の類は吸わず、普段自分がしてることを思い返しても大人だからこそできることが思い当たらず、商売に関しては未成年でもできる。最終的にお酒でゴリ押しして。)
うん…その東刀、なんだか私が読んでた小説に出てくる剣に似てるねぇ。普段は持ち手しかないんだけど、魔力でできたエネルギー状の刃が出てくるんだよぉ。
(恐らく実際に見ても東刀ではなく、やはり持ち手にしか見えないだろうと思い同じく苦笑いしながら頷いて。その東刀で思い出したことがあり、ウラルが読んでた小説に似たような剣が登場してたこと…その剣も一見持ち手だけに見えるのだが、魔力を流せばエネルギー状の刃が出てくる…ビームソードのような剣だ。ひょっとして、その東刀も似たようなことができるのだろうかと思いつつ「うん、楽しみにしてるねぇ~?」と、笑みを浮かべながら告げて)
うん…!
(後ろを警戒しながらアヤトについていくように奥に向かって走り出して。もう新たな杖が現れたのだろう、後ろから火の玉の追撃が来てそれをかわしながら走り。…だが、割とすぐに追撃は止み何も来る様子がない……何があるかは分からないため、マグナムは仕舞わず握ったまま走り。)
ふぅ…大丈夫だよぉ、誰でもこういうミスはしちゃうからねぇ~。私はどこも怪我してないよぉ、アヤトくんは…?
(走った距離はそこまで長くなく、普段ならウラルも呼吸が乱れることはない…だが、取り乱していたため少しだけ呼吸が乱れており。アヤトの呼吸は乱れている様子はなく、アヤトの身体能力の高さとこういった事態でも取り乱すことのないほどの冷静さから改めて彼の実力の高さを実感しつつ呼吸を軽く整えて。誰にでもこういったミスはあると笑みを浮かべながらフォローして、自分は怪我をしてないことを伝えて、恐らく大丈夫だと思うがアヤトに何処か怪我してないかと尋ねて。そんなアヤトが楽しそうに見えて「フフ、アヤトくん楽しそうだねぇ?」と告げて)
(/大丈夫ですよ、無理をなさらず自分のペースで大丈夫です!)
>905
ありがとうございます。では…ここは無難にフライドポテトを一つ。あ、あとビールをもう一杯お願いします。
(いくらでも頼んでいいと言われてはキラキラした瞳でメニューを眺めながら礼を言って。欲を言えば全部頼みたいくらいには魅力的な品々が並んでいるが、流石に申し訳ない上にそもそもそれだけの量を食べられない。しばらくの思考の後にフライドポテトを頼み、思い出したかのように声を上げてビールも追加で注文した。)
>910
じゃあ私は~…エビフライと…あといつもの奴ちょうだい
(クレアに続いて、特にメニューを見ること無く料理とミミがいつも頼んでいるお酒を注文して。2人の注文を聞いた店主はすぐに準備して…ほどなくして2人に注文した品と酒が届いて。パセリを散りばめたそこそこの量の細切りのフライドポテトと、先程と同じビール。そこそこの大きさのエビフライが4~5本盛り付けられた皿と、聖教国で飲んだのと全く同じリキュール…2人にそれぞれ、頼んだ料理をつけながら食べるであろう調味料の入った小さな器を渡して)
そういえば、クレア…これからどうするの?聖教国からは護衛の件で何度か指名されると思うけど、他の依頼も受けるの?
(ミミが思い出したように、クレアの今後について尋ねて。今まで依頼に行かず酒を飲んでいて、今回の聖女の護衛がブランク明けの依頼だった。聖女の護衛以外に、これから他の仕事もするのかと首を傾げながら問いかけて)
>908
自分の、正義……
(「自分の正義を貫け」というレイラの言葉にはっとして、反芻するように呟くと、手に持っていたマグカップを一口付けて。昨夜のキスの味を今一度味わうかのように、口の中で牛乳を噛み締めながら飲み込むと顔を上げ、同じく真っ直ぐな瞳でレイラを見つめて)
……アリシアの友達が言うには……昔はアイツも真面目で優しい奴だったのに、卒業試験の当日になって、急に今みたいな悪魔じみた女になったそうなんです。実際見てみると騎士学校で習いそうもない技を次々出したり、「地獄の門」なんて騎士の物とは思えない、とんでもなく禍々しい魔法まで使い出したり……昨日今日で出来る真似じゃない。本当に悪魔に憑りつかれたとしか……
……レイラさんやクレアさんには悪いけど、俺はどうにかしてアリシアを救いたい。せめて心の中に巣食う悪魔から、アイツを解き放ってやりたいですッ!
(両手で握りしめるマグカップを震わせながら、これまで見てきたアリシアに関する見解と、彼女に自分がしたいことを主張して。レイラの立場からすれば、今のアリシアの性格が悪魔に憑かれた事に因るものと説明されても妄言にしか聞こえないかもしれない。しかもお互いが慕うクレアの実家を奪った一族に絆されるとは、レイラやクレアへの裏切りとも取れる。だが、今のレドにとってはこれが自分の正義のようだ。ついには興奮のあまり、マグカップを置くなり泣きそうな顔をしながら立ち上がってしまい。)
>912
ふむ…地獄の門…か。その魔法には覚えがある。かつて対峙した上位悪魔が使用していてな。本来人間が扱えるものではない筈なんだ。悪魔憑きなど御伽噺の類いと思っていたが…存外有り得ない話ではないかもしれん。
(「地獄の門」その名を聞いてレイラは神妙な面持ちで顎に手を添えて俯いた。「魔を統べし者」を初めとしてかつて対峙した上位悪魔達が好んで使用していた共通の魔法。本来人間が使える筈のないそれをアリシアが使ったと言うのなら、悪魔憑きなどという突拍子もない話が現実味を帯びることとなる。感情的になったレドの言動から嘘を吐いているとは到底思えず、レイラは再び顔を上げると、真剣な表情でレドの見解を肯定した。)
言っただろうレド、自分の正義を貫けと。あの女がどうなろうと知ったことではないが、お前が救いたいのなら救えばいい。そこに私や姉様の理解など不要だ。
(レイラは言葉を続けてレドの主張までも肯定する。彼女としてもアリシアを毛嫌いこそしているものの、なにも消してしまいたい程に憎んでいる訳ではない。それに背中を押した以上は弟が自分の思う正義を成したいと言うのならそれを否定することは許されないだろう。姉としての信念を元に相変わらず自信に満ちた瞳を向けて、繰り返し自分の正義を貫けと語った。)
>911
そうですねぇ…蓄えもありますし、しばらくの間はまたのんびりしようかなと思っています。
(ビールを再びあおりつつ、小首を傾げて少し考えた後にミミの質問に答えた。かつて活躍していた頃に貯めていた資金はまだ底が見えていない上、酒以外に趣味もない。短い余生を過ごすには十分過ぎる程に余裕があるため、今回の依頼のように特別な事情がない限りはしばらくまた飲んだくれているつもりのようだ。)
過去編「洗礼」
僭越ながら本日より第二騎士団長の任を賜りました。エリーゼ・リファイスです。皆様方と肩を並べられること誠に光栄に思います。若輩の身でありますが、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします!
(王城内に備えられた会議室、騎士団の上位役職者が集う円卓を前に、エリーゼは緊張で猫耳をピクピクと震わせながらも元気一杯に声を張り上げて恙無く自己紹介を終えた。頭を下げながら、癖である「にゃ」という可愛らしい語尾が出なかったことに内心で安堵する。しかし、顔を上げ周囲を見やると拍手を返したのは王国騎士団長のみ。ほかの上位役職者達は興味が無さそうに各々が持ち込んだ資料に目を通していた。歓迎されていない…それを自覚するとキュッと胸が締め付けられるような感覚に囚われる。それもその筈で、数々の功績を元に厳格な審査を経てその地位についた彼らとは違い、エリーゼはたまたま空席に国王の一存で滑り込んだだけのポッと出の存在だ。彼らにしてみれば手放しに歓迎出来る訳がなかった。失意のまま席に着くも、このままでは終われない。仕事上彼らの協力が必要不可欠な為、この定例会議が終わったらまずは個人的な関係から構築しようと心に決めた。)
あ、あの!ヴァレンヌ卿っ!少しお時間いいでしょうか!
(定例会議が終わり、各々が足早に会議室を後にする。上位役職者はその殆どが寝る間もない程の激務である為時間を惜しんで急ぐのも当然であろう。せめて誰か一人でも良好な関係を築こうとエリーゼも慌てて会議室を出ると、周囲に流されずにゆったりとした足取りで日に照らされた廊下を歩む一人の女性の姿が目に付いた。セレステ・ヴァレンヌ、次席補佐官を務める彼女は上位役職者で唯一エリーゼと歳の近い稀有な存在である。これを好機と捉えたエリーゼは、姿が見えなくなる前に廊下を駆け出し、セレステの背後で立ち止まり緊張を振り切って声をかけた。)
チッ…なんでしょう?仕事に関することであればお聞きします。
あっ…いえ、そういうのではなく…同じく祖国に忠誠を誓った身、折角ですし親睦を深められればと思いまして!お忙しい身であることは重々承知していますが、少し立ち話でもどうでしょう…?
興味ありません。では。
(振り返りざまに舌打ちをされたような気がしたが、きっと思い違いだろう。まだ要件すら話していないのだ。向けられた高圧的な視線に怯みながらもエリーゼは曇りのない真っ直ぐな瞳を向けて、同じく祖国を守る仲間として親睦を深めたい旨を伝えた。最初からガツガツ行くのではなく、ちょっとした立ち話から順序だてて交流していこうなんて遠慮がちに構えていたつもりだが、セレステはそれすらも興味がないと切り捨て踵を返した。)
まっ、待ってください…!
(知らぬ間に何か粗相を働いてしまったのだろうか…?ついこの前まで地方勤務の一般騎士だった身の上。高貴な場に於いてまだ知らない常識があったとして何ら不思議はないと、そんな不安が頭を過ぎる。せめて原因を聞いて必要なら詫びを入れよう。誠意に突き動かされるままにエリーゼは立ち去ろうとするセレステの手を掴む。その行為が彼女の逆鱗に触れるとも知れずに。)
触るなッ!害獣風情がッ…!
…うぐっ…苦しい…にゃッ…!
(手が触れた瞬間、鬼の形相で振り返ったセレステに首を鷲掴みにされて、めり込む程に壁に叩きつけられる。衝撃で頭部からは血が滴り、首を絞められていることも相まりエリーゼは薄れゆく意識の中で命の危機を感じ取った。死にたくない…!その一心で腰に携えた剣を抜いて思いきりセレステの脇腹に振りかぶる。経験で劣ると言ってもエリーゼも王国武術大会優勝者、常人であれば今の一撃を受けて致命傷は免れないだろう。しかし、無慈悲にもセレステには傷一つ、服のシワ一つ与えることは叶わなかった。確かに刃はセレステに届いているが、まるで目の前のそれが不変の存在であるかのように手応えが感じられないのだ。もはや抵抗のすべもないことを悟ると、エリーゼの顔からは一層血の気が引いた。)
人間様に生かされている獣の分際で私に抵抗するとは…躾が必要なようですね。
ひっ…ごっ、ごめん…なさっ…うぐぅ…!
これは躾だと言いましたよね?示すべきは謝罪ではなく感謝の心です。
…ありがとう…ございまっ…ぐぁっ…!
なぜ笑顔ではないのですか?上っ面だけの感謝は不要です。
…ハァ…ハァ…ありがとうございます…うぅっ…!なんで…
よく出来ました。ではもう一回。
(エリーゼは首を掴まれたまま、今度はうつ伏せで床に寝かされる。躾とやらを前に恐怖に顔を引き攣らせながら発せられた命乞いを意味する謝罪は無慈悲にも顔を床に叩きつけられる音で掻き消された。どうやらセレステのお気に召す返答ではなかったようで、ゴミを見るような冷たい眼差しをエリーゼに向けて、謝罪ではなく感謝をしろと淡々と告げる。恐怖心に突き動かされるまま震える脳をなんとか働かせ、エリーゼは言われるまま感謝を述べるが、理不尽にもそれすらも再び顔を床に叩きつけられて掻き消された。なぜ笑顔ではないのかという疑問に唖然としながらも、息も絶え絶えにエリーゼは笑顔を作り、感謝を述べる。が、今度は言い終えたと同時に再び顔を床に叩きつけられた。その瞬間、エリーゼの心の中で何かが壊れる音がした。その後も何度も何度も笑顔の感謝を強要されては叩きつけられてを繰り返し、気を失って目覚める頃には通りがかった騎士によって医務室に運ばれていた。獣人の回復力ゆえか身体の傷は驚く程にすぐに治ったが、精神に負った傷はそうはいかない。刻み込まれた恐怖により、この日を境にエリーゼの顔から笑みが抜け落ちることはなかったという。)
>913
ううっ、そこまで俺を買ってくれるなんて……ありがとう姉さん……あっいやレイラさん……
(なんという度量の大きさ……自分を尊重してくれるレイラに感極まって、立ち上がったまま目頭を抑えて震えて。しかも「地獄の門」の話を通して悪魔憑きの話もすんなり信じてくれた。これも勇者として上級モンスターと渡り合った知識と経験の賜物だろう。嬉しくて頼もしくて、つい「姉さん」と口を滑らせた瞳は、嬉し泣きを堪えようと潤んでおり。)
>915
(/えっと、いい人なんですよね……?次席補佐官殿……)
>916
ふふっ、わざわざ言い直さなくてもいいんだぞ。本当の姉だと思っていつでも甘えてくれ。
(口を滑らせて即座に言い直したレドの様子を見てレイラは思わず笑みを零す。ソファから立ち上がり歩み寄ると、自身より頭一つ分背の高いレドの頭を撫でる為につま先立ちで足をプルプルと震わせながら、なんとかその頭に手を添えた。いつでも甘えていいと格好付けた言葉とは裏腹に、キツイ姿勢を痩せ我慢しているせいか顔は引き攣り額には汗をかいていた。)
(/獣人以外にはとてもいい人ですよ^^;仕事の話であれば聞いてくれようとする分聖教国の人間よりはマシなレベルで獣人にも優しいと言えるかもしれません…)
>913
あ~…まぁでも、それがいいのかなぁ。いきなり復帰とかは、難しいだろうし…
(クレアの今後を聞き、色々思うところはあったものの…敢えて何も言わず頷いて。今回の依頼を見返して、何度も禁断症状が現れてしまうクレアを思い出ししばらく単独での依頼は無理だろう。また大きな依頼が来た場合、また誰かが側で支える必要があると判断して。というより、明日会うであろうレイラにこのことを知られると、余計関係が悪化するような…と考えたが、流石にこれは当人達の問題。自分が首を突っ込むことではない…いや、突っ込んだら突っ込んだで余計こじれる気がする…なんてことを考えながら、静かにリキュールを一口飲み)
>917
ね、姉さん……
(必死で小さな身体を伸ばして自分の頭を撫でようとするレイラが微笑ましくて、そして頭に伝わる優しい手の感触が気持ちよくて、顔を赤らめながらはにかんで。だが、話さなければならない。レイラの態度が一変して、彼女に斬り捨てられてもおかしくないことを……レイラが頭を撫でやすいように中腰になりつつも、急に神妙な顔になって)
……話を続けましょう。アリシアがその「地獄の門」とかいう変な魔法を使ってくれたおかげで刺客を追い払えたんですが、アイツもそれで力を使い果たして倒れてしまった……いっそその隙にアリシアを討てばよかったんでしょうが、アイツの友達も「アリシアちゃんを悪魔から救いたい!そのために近衛隊に入ったっす!」って言うもんだから捨て置けなくて……
救援も来る気配が無いし、夜の草原で野宿するのも危ない。だから……近くの宿に逃げ込んで、力尽きたアリシアを徹夜で守る他なく……それで帰りが遅くなったんです。
(顔から汗を垂らしながら、神妙な面持ちでアリシアを宿に連れ込んだことをついに明かして。今までの様子からして昨晩通りがかった馬車にいたのはレイラでは無いと見た。が、風の噂で昨日の事がレイラの耳に入るとも限らない。後から彼女の追及を受けるよりは自分から話すべきだ……無論、そう説明するより他に無いとはいえ、好かない女と一晩共にして朝帰りしたと知ったレイラに激怒されるのは覚悟している。もう、今までの優しい態度を翻されて、どんな仕打ちを受けても構わない……静かに目を閉じながら、彼女の反応を待って。)
>919
あの女と…宿に…?そ、そうか…お前も年頃だからな。そういうこともあるのだろう…わ、私は急用を思い出したからこれで失礼する…しっかり身体を休めておくんだぞ…
(アリシアと一夜を共にしたと聞いて、レイラは動揺を隠せずに後退った。レドの年齢を考えれば異性とそういった関係を持つことは何ら可笑しいことではない。理解を示しつつも、よりによって相手がアリシアな上に、純真無垢なレイラにはその手の話題は少々刺激が強かったようで、顔を真っ赤に染めて慌ただしく部屋を後にする。去り際にレドの身体を気遣う言葉を残したことから、困惑しつつも怒りの感情は特に抱いていないようであった。)
>920
あっ!違っ、待っ……!……ああ、嫌われたかな……
……アリシア、俺の正義……俺を心から愛してくれたお前を救う手立て、さっぱり思いつかない。これ以上魔道に堕ちる前に、剣をもってお前を哀れな人生から解放してやることしか……
(レドは勇者様が自分以上にウブだとは知らない。話を聞くなり急に慌てて部屋から出ていくレイラに手を伸ばして引き留めようとして。ああ、軽薄な男だと嫌われたか……レイラが想像しているであろう共寝などはしていないが、それに等しい事をしでかした以上申し開きは無意味だ。彼女に去られると膝から崩れ落ち、まるで母親に置き去りにされた子供のようにしょんぼりとして。
一人きりになると、床に膝をついたままマグカップに口をつけて。口の中にミルクの味が広がるたび、アリシアへの想いが強くなり、そして空しくなる。アリシアが本当に悪魔に憑かれているから何だというのか……悪魔を祓う手段が無い以上、もう彼女を討つしか無いように見える。テーブルに薄汚い上半身を突っ伏すと、逃れ得ぬ運命に抗えない無力さに涙して。レドの他に誰もいない応接室とその外に、青年のすすり泣きが響き。)
ううっ……俺は弱すぎる。人としても、剣士としても……
さて、そろそろ時間ですねぇ。ククッ、果たしてどんな青年が来るのか楽しみです。
本当に来るんですにゃ?勇者の弟子とやらが聖教国の不都合になる事に協力するとは思えにゃいですけど…
彼はきっと来てくれますよ。そう私の勘が告げています。
はあ…
(中央庁舎の最上階に備えられた会議室、その窓から夕焼けに照らされた街並みを眺めながら、白髪混じりの初老の役人が楽しげにレドの到着を待っていた。その背後に付き従うように佇んでいるのはデュランダル一帯を管轄とする第二騎士団の長エリーゼ・リファイス。騎士団長クラスを護衛につけていることからこの役人の地位は相当なものなのだろう。一見すると両者の表情も相まり楽しそうに談笑しているようにも見えるが、エリーゼの方は笑みこそ浮かべているものの尻尾は微動だにせず垂れ下がり、随分と不服そうな物言いをしていた。獣人の立場からすれば勇者の弟子などという肩書きの男を信用できないのは当然であろう。そんな様子を気にもかけず、役人は己の勘とやらを信じて一層口角を吊り上げた。)
>トピ主様
(/すみません!ちょっと返信遅くなりそうです!
ミミさん(>918)からレスありますので、その間ご対応よろしくお願いします!)
>918
ただ、いつまでも怠けている訳にもいかないので、もしまた大きな依頼を受ける機会があればミミちゃんにご協力をお願いするかもしれません。その時はよろしくお願いしますねっ!
(金銭的に余裕があってもいつまでも怠惰な生活を送ることは健全とは言えない。少しずつでも身体を慣らすためにもそう遠くないうちにまた依頼を受けようと決めたクレアはミミに笑みを向けると、元気一杯に今後の協力をお願いした。)
さて…明日もありますしそろそろお暇しますね。今日は本当にありがとうございました。
(本音を言えばもっと飲みたいがこれ以上は明日に支障が出る。酒への欲求をグッと堪えて立ち上がるとぺこりと頭を下げてミミに礼を言った。依頼の同行のみならずその後にこうしてご馳走まで振舞ってもらい、クレアにとって今日の出来事は前を向く大きなきっかけになったことであろう。顔を上げると、ミミに手を振りながら名残惜しそうに店を後にした。)
>925
もちろんだよ、戦力として力になれるかは微妙だけど~…私にできることなら何でも協力するよ。
(今までのように立ち止まらず、少しずつ前に進み始めているクレアに笑みを返しながら頷き。Aクラスであるミミも決して戦闘力が低いわけではないのだが、カグラのような敵相手には少々不安な様子。いや、今回が異例だった気がしなくもないが…ともかく、自分ができることであれば協力すると告げて)
いいよ~、また飲みに行こうね?今日は本当にお疲れ様、ゆっくり休むんだよ~?
(恐らくはまだお酒を飲みたいのだろうと察して、今回はレイラと会う予定があるため無理だがまた今度飲みに行こうとふにゃりと笑いながら告げて。クレアに労いの言葉をかけながら手を振り返し、クレアの姿が見えなくなるまで見届ける。前に進み始めたんだ、要件は不明だがレイラと会うのも大丈夫だろう…ミミは少し経ってから会計を済ませ、店を出る。途中でオルトロスの夜食に美味しそうな食べ物を購入し、届けてから自宅に戻った。)
>922
「さあ着いたよ、中央庁舎!ここで移住手続するんだよ!」
「な、なぁアーダンよ。ホントにここでいいんだよな?王宮にしか見えないが?」
「アハハ、間違いないって。ホラ、ああして中に入ってく人達もみんな移住者だよ。さ、並ぶ時間が勿体無いからボクらも急ごう!」
「ちょっ、引っ張るなって!……ああもう、都会はハンパないな……」
(朝のデュランダル中央庁舎。冒険者となるため長年暮らした里山からデュランダルへ下りてきた農民・レドは、ここで移住に必要な諸手続を行い冒険者生活の第一歩を踏み出さんとしていた。王宮のごとき威容を誇る中央庁舎に呆然とするレドの手を掴み、同じ目的でやって来た移住者の群れに向かって引っ張っていく小柄な眼鏡の青年は、彼の旧友・アーダン。田舎者のレドと違い、王都の古参騎士の家に生まれた彼はデュランダルの案内などお手の物である。この光景はとうの昔の出来事……時期にして3年ばかり前のことだ。)
……あれからもう三年か。王国の人間に呼ばれてここに来るなんて、昔は想像もできなかった。
アーダン、あの日のように、どうか俺を導いてくれよ……
(そして現在、中央庁舎を正面に捉える大通りに佇むレドは、在りし日の思い出に浸りながら閉じていた瞳を静かに開くと、夕陽で茜色に染まる中央庁舎の頂……奇しくも件の役人達が控える会議室の辺りを見上げて。
一通りの準備を整え、汚れた身なりも小綺麗に改めたレドは要求通り宮廷役人の下へ参じようとしていた。しかし宮廷が国王直属たる近衛隊の人事に介入してきた上、昨日副団長に闇討ちされたばかり。不穏な臭いしかしない。いや命の危険すらある。亡くなった旧友の名を呟いて縋ろうとする姿は、そんな不安の表れだろう。)
勇者レイラ・ハートの弟子・レドである。近衛隊剣術指南の件でお話があるとの事で参った。担当者へお取り次ぎ願いたい。
(不安を払うようにズンズンと歩を進め、陽が落ちて人がまばらになった庁内へ入ると一直線に受付へ迫り、無表情かつ淡々とした口調で受付係に案内を頼んで。
レイラに似た「レド」とは「氷」の意。凍てつく冬の日に生まれた故の名である。今の彼にとってここはもう敵地だ。受付係に対して、名前の通り氷柱のごとく鋭く、そして冷たい視線を突き刺して。)
>927
は、はひ…賜っております…ご案内しますね…
(修羅場とは程遠い役所勤めの受付嬢には耐性がなかったのだろう、まるで敵に向けるもののようなレドの冷たい視線を受けるなり、たどたどしい様子で言葉を返した。当然ながら事前に話は通っていたようで、要件を聞くなりすぐに案内を開始する。背後に感じるレドの気配にビクビクと肩を震わせながらも、恙無く目的地である最上階の会議室に到着すると、扉を開けレドに入室を促すなり足早にその場を後にした。)
ククッ…お待ちしておりました。さ、遠慮なく腰掛けてください。
(会議室で待ち受けていたのは胡散臭い笑みを浮かべて円卓の席に腰掛ける初老の役人。そして、その背後に佇むのは護衛として同席している第二騎士団長であった。白を基調とした仕立ての良い軍服に身を包み、胸に掲げた光り輝く勲章のように眩しい程の笑みを浮かべているものの、感情で揺れ動くはずの尻尾は微動だにしておらず、そのギャップがある種の狂気を醸し出している。デュランダルに於ける騎士団のトップが護衛に指名されていることからこの役人の地位は相当高いもので、おそらく大貴族の類いであろう。この一件に関して宮廷は本気のようだ。役人はレドを視認するなり自らの正面の席に着くように手招きして促した。)
>926
すみません。剣を受け取るまで書く予定でしたが、リアルが忙しく二人同時進行が難しくなってしまいました…ミミとクレアが別れて一応の区切りがつきましたのでこの辺りで聖教国編の一部完結とさせていただきます。長らくありがとうございました!また余力が出来ましたらお声がけさせていただきます!
>928
「見学だと?バカモノめ。これより先は政(まつりごと)の場である。みだりに立ち入る事まかりならんぞ、流れ者!」
「な、なんだとてめぇ!もういっぺん……あ、アーダン!?だから引っ張るなって!」
「ダメだよレド、衛兵に喧嘩売っちゃあ。憧れのクレアさんに見られたら引かれるよ?もう用は済んだし、ギルドに行こう?」
「そ、それはそう……ぐぬぬ、いつか見返してやるからな。」
…………俺も偉くなったもんだ。
(怯える受付嬢など気にも留めず、最上階に入ると感慨深く呟き。三年前は立ち入るに相応しくない流れ者として衛兵に追い返される身の上だったが今は違う。静謐で荘厳な廊下、窓を通して眼下に広がるデュランダルの街並み。「勇者」の関係者として密命を帯びる者であればこそ辿り着ける光景が目の前にある。ここは聖域……この場で語られることはこの国を、何より己自身の命運を左右し、そして後戻りはできない。自分の人生が大きく流転する場に立つ緊張感を隠しつつ、静かに会議室へ入って。)
勇者レイラ・ハートの弟子・レド、お呼びによりまかり越しました。
(「失礼いたす」と断りつつ室内に目を配り、相手の同席者を確認して。待ち受けるはデュランダルを統括する第二騎士団長の獣人・「にやけ面のエリーゼ」。そして大貴族らしき役人……どちらも只者では無いと察しつつ、勧めに応じて着席すると改めて自己紹介して。受付嬢に対するものと同じ無表情・淡々とした声・冷たい眼差しで名乗る姿には「わざわざ呼んだからにはテメーらも名乗れ」という要求が含まれている。)
>909
フフフ、ガキの頃は正面から戦う羽目になってボコボコにされたりもしたね。それって受付で騒いだらしい司祭かな?ウラルちゃん相手なら審問官でもバレないかもね。
(幼少期から父親の方針もあって突出した身体能力を有してはいたが…所詮は子供、正面から戦えばボコボコに負けるケースもあった。なので単純な不意打ちから毒殺の真似事まで…今以上に暗殺者のような手段を使う事も珍しくは無く、そんな日々を思い出して笑って。最近デュランダルを訪れた聖級国の人間となれば平等を謳う王国で差別用語を口にして話題になった司祭の事だろうと推測しつつ、司祭ではまず分からないだろうと納得して同時に審問官すら欺けると考えて。ピット器官についての説明を聞いて地味…と思いつつ、本人も気にしていそうなので言葉にはせず。悪意や敵意は感じない、罠を仕掛けられたりした様子も無い…と表情と態度以外に怪しい点は無い。短い期間だがこれまで接した人なりから刺客や工作員の可能性も低いと考え、今の状況は純粋なる善意によって困らされていると結論付ける。結論を出してもアヤト的には悪意を持つ相手より対応に困る状況に変わりなく対応を決めあぐねていたら……困ったら何でも相談して…と聞こえて。渡りに船と「……なら、一つ相談しようかな。相手の100%の善意で困らされたらウラルちゃんはどうすれば良いと思う?」と問いかけて。)
それだと只の飲んだくれだよ……。他にも何かあるでしょ…………ギャンブルとか。
(目に見えた営業スマイルを浮かべながら「イヤー、ソンナコトナイヨ」と明らかな片言で子供っぽいと言いかけた言い訳をして。胸に手を添えて…目を閉じて……といかにも何か良い言葉が出そうな感じからのお酒のゴリ押しに呆れつつ、流れから大人な行動を挙げようとしているのを察して、自分も大人の行動を挙げるようとするが……年齢制限の類の緩い世界で過ごしてきたアヤトも中々答えを出せず…最終的に捻り出した回答はギャンブルで。)
鋭いね、割と当たってるよ。まあ、多分…その小説の東刀より変わってると思うけどね。
(魔力で刃を形成するのは当たりだが、刃はエネルギーではなく実体の刃だったり、多数の武器種を扱ったアヤトでもあまり見ない機能が搭載されていたり…と恐らく小説より変わった東刀だと説明して。)
僕も大丈夫だよ、危なそうなのは全部斬れたからね。ウラルちゃんに怪我が無くて良かったよ。最近はミスするような仕事も無かったから罠にかかる状況がつい面白かったんだけど…ウラルちゃんに怪我されるのは面白くないからね。
(ウラルの呼気が少し乱れた様子を見て、完全に整うまで行動を止めつつ、自分も怪我は無いと伝える。最近は表裏両方の仕事で欠伸の出るような退屈な仕事が多かったので本職を当てられたのが原因とは言え…自分がベタな罠に引っかかる状況が楽しくて笑ってしまうが、せっかく珍しくパーティーを組んだウラルに自分のミスで怪我をされるのは楽しくないので内心自省する。)
(お言葉に甘えて遅くなりました、またよろしくお願いします。)
>931
アヤトくんが当時どれくらい実力があったかはわからないけどぉ、正面からじゃ勝てないよ~…。かといってぇ、五感が優れてる獣人相手じゃあ不意打ちも気づかれちゃう場合もあるし~…
そうそう、その人だよ~!受付が獣人のお姉さんでぇ、勇者様の呼び方のことですっごく怒鳴ってたらしいんだよ~!…あ~…多分バレないかも~。種族を見抜ける能力とか持ってる人なら、話は別だけどねぇ~。
(当時過酷な環境にいたアヤトの実力は、恐らく同年代に比べればかなり高い方だと予想して。だが、子供の実力はどの程度か知れている…獣人どころか、大人に勝つのも難しいだろう。そんな中獣人と正面から戦うことになってしまったアヤトに「災難だったねぇ…」と、苦笑いを浮かべながら話して。嗅覚や聴覚が優れた獣人相手では、不意打ちに気付かれてしまう可能性ががある…相当上手くやらないと成功しないだろう。当時その場には居なかったが、他の冒険者から聞いたらしくそのことについて話して。勇者…レイラについての呼び方が原因だったようだ…ウラルが司祭達と会ったのは帰り際で「なんだかお酒臭かったけど…酔ってたのかなぁ…?」と小首を傾げて。実際は酒をかけられたのだが…異端審問官は司祭より見抜く目があるとは思うが、それでも欺けそうだとふにゃりと笑みを浮かべながら話して。何にしても、半獣人であるウラルからすればあまり関わりたくない人達だ…。ピット器官の説明をした後「地味でしょ?」と、偶然にもアヤトが心の中で思ったことを口にして。早速アヤトからの相談を聞き、少し考え始めて。100%の善意で困らされてるとはどういうことだろう?もしかすると、アヤトにとってあまり必要ない物…例えば食べ物を定期的に贈られて来てるのだろうかと的外れな推測をしては「難しいねぇ…私だったら、何とかして処分するかなぁ。」と、贈られてきた物を捨てるわけにはいかないから何とかして食べたり知り合いに分けたりして処分するという意味で言ったのだが、肝心な所を省いたせいで物凄く物騒な答えになってしまい。)
だってぇ、思いつかないんだもん。ギャンブルかぁ…ギャンブルはしないかなぁ…ミミが「ギャンブルは破滅への入り口だ」って言ってたからねぇ。
(アヤトの表情や言い訳から絶対子供っぽいと言いかけたことを確信し、少し頬を膨らませて。お酒以外のことが思い浮かばなかったことを素直に認めて、なかなか大人な行動が思いつかないアヤトに「アヤトくんも私と同じだねぇ」と、理由は別だがなかなか出てこないことに対して自分と同じだとニマニマ笑いながら告げて。そんなアヤトが挙げたのはギャンブル…ミミが言っていたことを思い出しながらギャンブルはしないと告げて。破滅…要は大負けして借金まみれになるということだろう。…というより、ウラルの能力を使えば余裕で大金を稼げそうな気がするが…)
へぇ…!どんな東刀か気になるなぁ~…!本当にミミが持っててくれたらいいねぇ
(自分の予想が当たる…が、その小説に出てた剣よりも変わってることを知ると想像を膨らませて。正直魔力で刃を形成するだけでもすごいのだが、更に変わった機能等が搭載されている…実際に見てみたいこともあり、ミミが持ってることを願うばかりである。)
ありがとぉ、アヤトくんはすごいねぇ?飛んできた火の玉を見ずに斬っちゃうし、東国のナイフ…クナイだったっけ?話しながら杖に当てちゃうし…
そっかぁ…確かに、普段のアヤトくんならかからなさそうだよねぇ~。私も冒険者になったばかりのことを思い出してぇ、楽しかったよぉ~♪私は大丈夫だよぉ、それじゃあ…探索再開しよっかぁ
(トラップを排除してくれたことと心配してくれたことにお礼を言って、先程のことを思い出して賞賛の言葉を送り。ノールックで斬ったこともすごいが魔法である火の玉を能力や魔法の類無しで斬る辺り相当な実力を持っていることがわかる。独特な形状のナイフ…クナイを持っている辺り、ひょっとしてアヤトはニンジャなのかと内心思い始めており。身体能力や注意力の高さから普段は掛からないことが分かる…が、なら何故先程罠にかかったのだろうと疑問を持つ原因(ウラル)。冒険者になったばかりの時、こういった罠に引っかかったことを思い出し久しぶりの感覚が味わえて楽しかったと笑みを浮かべながら告げて。もう既に息は整っており、ランタンを手にして再び探索を再開しようと告げて。)
(/こちらこそよろしくお願いします!)
>932
やってみれば不意打ちは意外と効果あるよ、相手によっては色々準備もいるけどね。怒鳴った挙句に獣人差別まで叫んだらしいね、聖教の司祭らしいと言えばらしい振る舞いだけどね。種族を見抜く能力…千里眼とかなら応用出来るかな。それか僕みたいに五感のどれかが鋭ければ判別出来るかもね。
(五感に優れた獣人への不意打ちの準備…例えば視力や嗅覚を奪ったり、鈍らせる薬剤や聴覚を狂わせる音響を放つ魔道具…等、明らかに違法寄りの物ばかりなので具体的に準備物を言うのは避ける。ちなみに…黒夜叉が五感の優れた獣人相手を含めて、不意打ちで最も使用率の高い手法は気づかれないギリギリの距離まで接近して加速の魔眼で相手が対応不可な速度の攻撃で急所を狙う…そんな策とか準備とか置いてけぼり気味の方法である。
アヤトも同じくその場には居なかったが聖教国が勇者を呼び出す…理由によっては本業にも影響が出そうなので少し調べていた。なので少なくともギルド内での一連の出来事は把握していて、平等を謳う他国で獣人差別を叫ぶ司祭の横暴な態度には聖教国の人間らしい振る舞いだと呆れたように評して、ついでに「ちなみに酒の匂いがしたのは頭からお酒をかけられたからだよ。しかも首狩り…いや、クレア・ライデンにね。」と教えて。
種族を見抜く能力…ピンポイントなモノは聞いた事が無いが自分が獣人を判別するなら…と考えれば千里眼と嗅覚…つまり五感が思い浮かんで。
偶然か見透かされたかは分からないが…ピット器官の説明を聞いた際の感想を言い当てられるような言葉に「まあ…地味だね。」と正直に地味だと思ったのを伝える。
食い物の話と受け取った…とは微塵も思っていないアヤトはウラルの答えをその人を消してしまえ…との意味で受け取って。邪魔な人間を消すのはアヤト的には馴染み深い選択肢だが…ウラルからそれが出るのは予想外で冗談を疑うが…人からの相談茶化すような人間だとは思えず、本気で言っていると考え、驚いたような困惑したかのような様子で普段より少し目を見開いて「さすがに困ったくらいでは殺したりするのは無しかな。」とストレートに返して。相手との関係性等を抜きにしても、表の世界の人間、アヤトとして活動している間は困った程度では殺したりはしない方針で活動していたが故の回答である。)
間違いないね、擦って破滅したギャンブル狂いとか治安の良い国とかでも見かけるからね。まあ、ウラルちゃんは賭けに有利になるアクセサリー作れば低リスクで荒稼ぎ出来る気がするけどね。
(アヤトが思い浮かべているのは犯罪組織が運営するような非合法の賭場。なので破滅率とロクでもなさには尚の事、実感があり、実際に破滅した人間も大勢見ているのでギャンブル=破滅を肯定する。が…それはそれとしてアヤトが千里眼による透視を活用可能なポーカーを得意としているようにウラルも特定の賭けに有利なアクセサリーを作れば荒稼ぎ出来るのでは…とか考えていた。)
まあ、ソロで活動するならあれぐらいは出来ないとね。
(普段は1人で活動しているアヤトは先程のトラップの排除での技能くらいは出来て当然…と考えていたのでウラルの賞賛に何でも無い事のように笑顔で言葉を返して。ウラルがクナイを知っている事に反応して「よく知ってるね、ちなみに本場の忍者が使ってたやつだよ。」とアヤトを忍者だと疑うウラルの疑問を助長するかのように所持しているクナイが東国で実際に忍者が使っている物だと説明して。ちなみにアヤトが本場のクナイを所有している理由は…とある忍者部隊に襲撃された際に返り討ちにした上に所持品を丸ごと奪った為である。
「了解、開けるよ…ちょっと待ってね……………よっと!」
探索再開を告げられて進路を防ぐ分厚い木製の扉に手をかける。が…反対側から鍵がかかっているのか…押してを引いても開く気配は無い。少し待つように告げ、しばらく抵抗した末に魔眼による加速を交えた3発の前蹴りでこじ開ける。乱暴な方法だが、アヤト的には慣れた方法なので何でも無かったように「開いたよ」と笑顔で告げて一段と冷気の強くなった通路に歩き出す。
>933
え、そうなのぉ?難しいと思ってたけどぉ…準備って何だろ……お酒を飲ませて酔わせるとか~?
酷いよねぇ、獣人だって人間と同じように生きてるのにねぇ…確かにアヤトくんは匂いで私が人間じゃないって判別してたけど、千里眼ってすっごく遠くを見れる眼でしょ?どうやって判別するのぉ?
(今まで会ってきた五感が優れた獣人達は不意打ちとか効かなさそうだと思っていたウラルは意外そうな表情を浮かべて、アヤトが言った気になる言葉…「準備」とは一体何だろうかと首を預けて。少し考えた結果、酔わせて五感を鈍らせるという答えに辿り着き…違法なやり方ではないものの、五感の機能を鈍らせるという点はアヤトの考えに近いだろう。アヤトの発言にウンウンと頷き、獣人も人間と同じように生きているのに何故そこまで目の敵にするのだろうと呟き。司祭が酒臭かった理由をアヤトから聞き、首狩りという単語に小首を傾げて…どうやら、自分の身の回り以外の冒険者のことは詳しくないようだ。だが、その後の名前には聞き覚えがあり「あ、あのいつもお酒飲んでる人でしょ~?」と、普段ギルドの酒場で酒を飲んでいるクレアを思い浮かべて。ウラルと会った時に匂いだけで人間ではないことを当てていたが、千里眼でどうやって種族を判別するのだろうと首を傾げて。ピット器官の感想については「でしょ~?あんまり使い所がないし…あるとしたら、ダンジョンの罠とか隠し通路を見つけられるくらいかなぁ…。」と苦笑いを浮かべて。アヤトの返答に対して「え?え?殺す??何でそんな物騒な話になるのぉ?」と、こちらも驚いたような表情を浮かべて。食べ物をなんとかして食べる方向で処分する話から何故命を奪う話になったのかは分かっておらず…原因はウラルなのだが…。)
あ………で、でもダメだよぉ。ちゃんとしたお仕事で稼がないと…それに、なんだかズルしてるみたいだし~…。
(アヤトの発言に頷き、ウラルは実際に破滅した人は見たことがないがアヤトが実際にそういった人達を見てきたと思われる発言を聞いてやはりギャンブルは良くないと改めてそう思い。自分の能力を使えば荒稼ぎできるということに全く気づいていなかったようで、一瞬だけ大金持ちになっま自分を想像する…が、その想像を消すように首を横に振り。やはりちゃんとした仕事で稼がないと中身がダメになってしまう可能性があり、何よりズルをしてるようで良くないと告げて。まぁ、実際ズルなのだが…)
私の友達に鍛冶屋をやってるルーちゃんって娘が居てねぇ、その娘が教えてくれたんだ~。それ本物なのぉ?……やっぱりアヤトくん、ニンジャなの?
(トラップの排除に関する技能や知識を持ってる冒険者は多いが、アヤトがやったように全く焦らずかなり手慣れた様子で排除できる人は少ないのではないか…とは思ったが、同じくソロで活動しているエレオノールが罠にかかっても罠の起動装置ごと全部燃やして何事もなかったかのように進む光景が思い浮かび「…ソロで活動してる人、みんなこんな感じなのかなぁ…」などと思い。えらく可愛らしい名前の友人がいるようで、武器に詳しくクナイについて教えてもらったとニコリと笑いながら明かして。アヤトが使ったクナイが本物だと知り、忘れかけてた疑問…アヤトがニンジャかどうかという疑問が再び浮上し、首を傾げながら尋ねて)
お~、すご~い!けど、また罠が作動しちゃうよぉ?
(目の前の鍵のかかった分厚い扉を開けようとしているアヤト、難しそうならヘアピンを使って(やったことはないが)ピッキングをしようかと考えていたが、アヤトが扉を蹴破ってこじ開けることに成功しており。軽く拍手をしながら賞賛の言葉を送るが、こういう扉を無理やり開けようとすると作動する罠も中にはあるため、そう告げて。更に冷気が強くなり、その冷気を放つ何かに確実に近づいていっているのが分かり…ランタンで廊下を照らすと、武器や防具が転がっているのか見えて。比較的新しいのもあれば、かなり古びた物まである…)
お久しぶりです…しばらくリアルが忙しかったことに加えて体調が優れない日が続き、気が付けばかなりの期間空けてしまいました…本当に申し訳ありませんm(_ _)m
まだレドさんはいらっしゃいますでしょうか…?浮上を確認でき次第返信を書かせていただきたいです…!
>935
(/お久しぶりです!ご無事でなによりです……
私の方も返信の間隔が開くかもしれませんが、またお相手していただければ幸いです。)
>930
おやおや…これはご丁寧にどうも。では此方も名乗るとしましょうか。私の名はフランツ、しがない宮廷役人です。そして後ろの彼女はエリーゼ、ご存知かと思いますがこの一帯の治安を担っている者です。
よろしくにゃ~。
(レドの名乗りを聞き届けると役人は満足気に口角を吊り上げた。客人として呼び出しておきながらも、身分の低い者から名乗らせるのは上流階級特有の悪癖であろう。役人もといフランツは手短に自身の紹介を終えると、振り返ることなく背後を手で示してエリーゼの紹介も併せて行った。紹介に預かったエリーゼはレドの内なる緊張を察してか、その緊張を解そうとこの場に似つかないラフな態度でヒラヒラと手を振った。一見すると人当たりの良さそうな振る舞いとは裏腹に、護衛任務中ということもありエリーゼはレドが入室して以降瞬き一つしていない。客人に対する気遣いは勿論のこと、本来の任務に勤しみレドの一挙手一投足を常に監視する様はまさに模範的騎士である。)
さて、本題の前に少し世間話でもしましょうか。最近獣人を中心とした抗議運動が活発でしてね…このことについて君は何か関心を抱いていますか?
(自分達の紹介を終えたフランツは肘掛にだらんと腕を垂らし、リラックスした姿勢のまま、まるで何でもない話をするかのように話題を切り出した。獣人による抗議運動、これはつい先月盗みを働いた獣人の子供に対して近衛兵が過剰な制裁を与えたことで死に至らしめたことに端を発する社会問題である。ただの世間話のように見えて、これは本題の詳細を話す前の最終過程であり、レドが獣人に対してどういった印象を持っているのか、言葉の節々ならその真意を読み取ろうとするものであった。)
>936
(/ありがとうございます!)
>937
エリーゼ……それでは貴女が第二団長殿か。ふふ、貴女の御勇名は私も聞き及ぶところ。お会いできたこと、武芸者として光栄に存じます。
(緊張を解こうとラフに接するエリーゼに思わず笑みを漏らしつつ一礼して。腕一本で第二団長の座を勝ち取った経歴とそれを証明する隙の無い身のこなし。エリーゼはレドの好感の持てる人物ではあるが、今この場で彼女に敬意を払って接するのは獣人への差別意識の無さを証明する意味が大きい。)
私もレイラも回りくどい進行は好きじゃあない。おしゃべりはいいから、アリシア様の話に入ってもらえませんかね。
(一方で椅子にふんぞり返っている宮廷役人・フランツに対しては、こちらも負けじと両肘を机に立て、組んだ指越しに睨みつけて。おそらく抗議運動の話を通してこちらの獣人に対する態度を見たいのだろうが、エリーゼへの丁寧な接し方を見せたから十分だろう。世間話には答えず、本題……というよりその元凶といえる近衛隊の指揮官・アリシアの話に入るよう要求して。)
>938
にゃはは~、そんなに煽てられると照れるにゃ。
(レドに敬意を向けられたエリーゼはヘラヘラとした様子で小恥ずかしそうに頬を掻いた。そこに秘められた真意を理解しつつも、面と向かって褒められることに悪い気はしない。聖教の教えに染まっていればきっと建前でも獣人を持て囃すことなどしないことだろう…と心の中でレドに合格を出しつつも問題が一つ。顔には出していないものの、平民に話を折られたことでフランツが機嫌を損ねて拳を強く握っているのが目に付いた。話が拗れることを嫌ったエリーゼは一歩前に出てフランツに耳打ちする。)
「貴方ほどの大貴族が平民ごときに心を乱されることなどあってはなりませんにゃ。ここは一つ、その寛大なお心で慈悲を与えるべきではないですかにゃ?」
(ご機嫌取りの為の心にもないお世辞を終えたエリーゼは何事もないかのように配置に戻り、それと同時に自尊心が満たされたフランツは不敵に微笑んだ。慣れた様子の一連の動きから、立場上エリーゼにとってこういった板挟みは日時茶飯事なのであろう。ヘラヘラした様子に似合わず苦労人のようだ。そうして気を取り直したフランツによって、抗議運動の背景や近衛隊の性質に触れつつ話は進められた。)
と、まあ…騒動の沈静化が主な目的ですが、我々としてはこれを機に近衛隊の浄化を行いたいのです。レド殿には密偵としてアリシア・ライデンと聖教国の主に金銭面での繋がりとなる証拠を押さえていただきたい。
(近衛隊の騎士達が好んで扱う天秤の意匠が施された装備、応接室に飾られた教皇の肖像画。それらの状況証拠からアリシアと聖教国との間に大きな繋がりがあることは確かである。しかし、信仰の自由を持ち出されては立件など出来る筈もなく、宮廷としてはアリシアが聖教国に買収されているという筋書きでの拘束を目指していることを説明した。その為にもレドには近衛隊内の金の流れと、あわよくばその証拠を押さえることを期待しているようだ。)
>915 のエリーゼの過去との対比になります。
過去編「全ての憂いは剣で断つ」
本日より首席補佐官の任を賜った。クレア・ライデンだ。同輩達よ、よろしく頼む。
(王城内に備えられた会議室、騎士団の上位役職者が集う円卓を前に、緊張した様子もなくクレアは淡々と自らの紹介を述べた。そこには若輩者らしい遠慮や謙遜など微塵もなく、これは「騎士は舐められたら終わりだ。」という父親の教えを愚直に守っての行動である。当然、騎士団に入って数年のひよっこに「同輩」呼ばわりされたことに多くの役職者は納得がいかず、張り詰めた空気が場を支配するがクレアは臆することなく言葉を続ける。)
異論がある者は剣を抜け。この場で斬り伏せる。
(表情一つ変えずに発せられた挑発とも取れる発言に、この場の緊張はピークに達する。一触即発、まさに何かの拍子に衝突が置きかねない不穏な静寂がしばしこの場を支配するが、それを打ち破ったのは意外な人物であった。)
ふっ…あっははっ!いやぁ驚いたよ。この地位に就いて100年余り経つが君のような人間は初めてだ。副団長としてここに歓迎の意を示そう。
ガハハッ!さすがヤツの娘だ。生意気に育ちおって。ワシの右腕たる者それくらいの心意気がなくてはな。
(副団長エリスは腹を抱えて笑い声を上げた。普段こういった会議では眠っているか上の空の彼女がここまで感情を顕にすることは珍しく、周囲の役職者の視線を一点に集める。そして、同調するかのように隣に座る騎士団長ゴルドーも地鳴りのように豪快な笑い声を上げた。刺激の失われた生活を送る年長者達にとって生意気な若者というのは時に可愛く、そして面白く映るものなのだろう。この場のツートップが心底愉快な様子でクレアに歓迎の意を示す拍手を送ったことで、先程までの緊迫した空気はどこへやら、周りの役職者達も空気に流されるまま拍手に加わり会議室の空気は一転して歓迎ムードへと移行したのであった。)
>939
「クレア・ライデンの再来」、か。
(平民の自身に話を折られ、平静を装いながらも機嫌を悪くした大貴族フランツ。それを慣れた様子で宥めるエリーゼに視線をやると、組んだ指で口元を隠しながら彼女の異名を呟いて。レドにとって再来とは剣の腕のことでは無い。若くして優れた実力を持ちながらも政治屋に振り回され、徒労を重ねる姿がクレアと重なるのである。こんな男におもねって姉さん(レイラ)の格を下げる真似はしたくないが、頭ごなしに断って同席したエリーゼの顔を潰すのも可哀想だ……ど、彼女を見つめる視線は静かだ。)
密偵、ですか。てっきり「アリシアを殺(と)れ!」と仰るかと覚悟してましたが……しかし難しい。証拠を掴んだとてまともな裁きが下るかどうか。なにせ彼女の自信には相当な根拠がある様子。彼女自身が国王陛下のお気に入りと見ましたが?
(大方想定通りだったフランツの依頼を聞くと、軽口を叩きつつ椅子に深く腰掛け直して。この男に従っていたら、真相も分からぬままアリシアは反逆者として処刑されてしまう。レドにとっては出来ない相談である。そもそも副団長でさえ命を狙われても戦いに躊躇し、そして見逃した相手。国王との繋がりも深そうで、まともに裁きを受けるとも思えない。まずはその辺をどう考えているのか、困り顔でフランツに尋ねて。)
>940
(/さすがクレアかっこいい……この頃の振る舞いはまるでレイラみたいですね。)
>941
ほほう…随分とお詳しいようですね。しかし心配には及びません、それに関してはしっかりと根回しをしておきますので。
(僅かな期間でアリシアの後ろ盾を見抜いた洞察力に感嘆を漏らしながら、フランツは不敵に微笑むとレドの懸念に心配ないと言ってのける。当然ながら一冒険者に王族の弱みを晒すわけにもいかない為具体的な言及を避けているが、この手の「根回し」というのは真っ当な手段ではないことは確かであろう。)
ああ、もし貴方が彼女に特別な好意を抱いているならば相応の配慮は致しましょう。然るべき処分を下した後に身柄を貴方にお譲りしてもいい。それでもまだ懸念事項が?
(白々しく思い出したかのような口上でフランツは言葉を続ける。それはレドとアリシアが特別な関係を築いていることへの配慮であった。なぜその可能性に辿り着いたのか、答えはフランツの後ろに佇むエリーゼにある。今回襲撃のあった王都とデュランダルを繋ぐ交易路、当然その警備を担当しているのはデュランダルに拠点を置く第二騎士団である。王国騎士団副団長であるエリスの工作によって襲撃の時間のみ警備が手薄にされていたという背景があるのだが、巧妙な隠蔽によりその事実に辿り着くことはなく、第二騎士団が事件の究明と再発防止の為の調査に動くのは当然であった。その中で周辺の宿への聞き取りや宿泊記録の照合によってレドとアリシアの関係が露見してしまったのである。本来知られるべきでないプライベートの男女の関係を暴いてしまったことに負い目を感じてか、エリーゼは苦笑いを浮かべながら、フランツから見えないことをいいことに両手を合わせてレドに頭を下げていた。しかし、皮肉にもこの関係が暴かれたことによってフランツが掲示した条件は、魔を統べし者はともかくアリシア本来の人格にとって悪い話ではない。この話をレドが呑むならば、国家への反逆と取られても可笑しくない罪を問われて尚、騎士身分の剥奪と王都追放程度の処分で済むことであろう。その上で家柄の重圧や嫌々握っていた剣から解放され、アリシアは初めて自分の人生を歩めるのである。そこまで見通してか、フランツは得意気に更なる懸念事項などないだろうと言わんばかりの態度で質問で返した。)
>941
まさに当時のクレアは今も尚レイラの憧れなんです(^-^)ただ、腕っ節や口調だけでなく精神面でもいつか当時のクレアに追い付いけるような成長をレイラが遂げられることを祈っています…
>942
…………大ありですな、閣下。いざ証拠が出なければどうなさるおつもりで?……まさか作れと?
(なんと俺とアリシアの関係を知っている!エリーゼの仕草で事の次第を察すると、呆れ顔をフランツに向けて。なるほど身分違いの二人が結ばれ、かつアリシアを騎士の重圧から解放するには良い条件である。だが肝心の「悪魔」の話がフランツから出なかった以上、アリシアを逮捕したところで彼女が「悪魔」から解放される保証は無い。
その上で、万が一悪事の証拠が出なかった場合の対処をフランツに尋ねて。と言ってもさっきからアリシア逮捕が決定事項かのように話を進めている以上、非道な答えが返ってくるのは目に見えているわけで、これはその確認に過ぎない。肝心な質問には答えず一方的に話を進め、どこまでも人を見下し、恩着せがましい言い草で人の恋心に付け込む。このフランツという政治屋は信用するに値しない。従ったところで約束を反故にするだろう……と、レドの視線は冷めきっている。エリーゼの願いも空しく、早くも交渉決裂の予兆が見え始めた。)
>944
ハァ…いやはや、ここまで強情とは。我々としては確実に証拠が出ると踏んでこうして依頼しているのですがねぇ。もし万が一、貴方が懸念するように彼女が清廉潔白な単なる聖教の信徒だったのならば、その時に改めて考えるとしましょう。
(思いもよらないレドの反発にフランツは呆れ顔で大きく溜め息を吐いた。宮邸としては既におおよその調べは付いているが、近衛隊の閉鎖性により内部調査が出来ない為に証拠の入手が困難な状況にある。そこで剣術指南役に選ばれたレドに白羽の矢が立った訳だが、処分後のアリシアの引渡しを提示してもなおレドが同意しないことにフランツは頭を悩ませる。根本原因たる「悪魔」について、言ったところで与太話だと一蹴するだろうが、フランツが認識していないことで双方の納得の行く着地点を見出せず話が平行線を辿るのは当然であろう。しかし、そんなことは知る由もないフランツは尚も説得を続ける。)
なにも彼女を貶めたいが為にこのような依頼を出している訳ではありませんよ。我々の最優先事項は抗議運動の沈静化。その為にも事件の原因たる彼女に形だけでも処分を下す必要があるんです。これを放置すればどうなることか…想像するだけでも恐ろしい。民の不満はやがて分断の火種となり戦火となる。貴方もその年齢であれば記憶に残っていることでしょう。あの忌々しい飢饉の記憶を、凄惨な結末を。あのようなことは二度と起こさせてはならない…その為にも貴方の協力が必要不可欠なんです。
(そもそもとして宮邸にとってアリシアの処遇はさして重要ではない。抗議運動の沈静化が主目的であり、アリシアへの処分は対外的なアピールの面が強いのである。宮邸が約束を反故にする可能性というレドの懸念を推察してか、そういった内部事情に触れつつ、さらに過去の忌々しい事件を引き合いに出して事の重大さを説明する。かつて飢饉への不満から生まれた反乱分子が殺戮されたように、今回の抗議運動も新たな殺戮の火種になりかねないからである。過去を語るフランツの拳は強く握られており、この国の安寧の為ならば手段を選ばないという強い意志をその瞳に宿していた。私利私欲の為だけに働く役人であればこういった交渉に自ら出向くことはない。少なくとも貴族としての自分の身分と役割に誇りを持っているからこその行動力である。
振る舞いこそ変わらないものの、感情の昂りを察してかエリーゼはすかさずフランツを扇子であおいだ。相変わらずどこまでの気の利く護衛である。)
>945
むむむ……ならばルミナ姫の事はどうお考えですか。口で何と申されても、この国が聡明で慈愛ある彼女が政争や謀略によって追われる地であることは事実……はっきり言って私はこの国に義があるとは思えませぬ。
(思ったよりも誠意があり、また信念を感じられるフランツの主張に押されると、冷や汗をかきながら姿勢を正して。もしかしたら「悪魔」の話も通じるのではという気持ちが芽生えつつも、まだ最大の懸念が捨てきれない。困り顔で最大の懸念……第一王女に対する見解を質問すると、プイッと顔を背けてしまい。
近衛隊に対抗できる勢力の大きさと策謀を好む点からして、フランツとエリーゼは第一王子派とレドは見ていた。この質問の目的は、綺麗事を並べても死んだ政敵の話になればボロが出るだろうという探りが一つ。もう一つは、この話も体よくアリシアを排除して近衛隊をも掌握せんとする第一王子の狡猾な策であり、ほとぼりが冷めたら第一王女のように自分もアリシアも始末する気だろうという疑念の表明である。聡明で慈愛に満ち、尊敬するクレアも慕ったと言われる第一王女。その彼女が第一王子との争いに敗れ他国へ逃れるも、都合よく起きた革命で処刑された悲劇。レドにとってそれはこの国自体が後継者争いという私利私欲にまみれている現状の象徴であり、この国に対する不信、そして憎しみの根幹であった……「こんな無道が許される国など、全部燃えてしまえ」と。)
>946
ほぅ…これまた懐かしいお名前を。えぇ、ルミナ王女殿下の顛末には同情致しましょう。しかし、それまでのお話です。ここで誰が正しいなどと論ずるつもりはありません。常に我々が目を向けるべきなのは今を生きる民なのですから。権力争いにかまける王族への懸念は理解します。時に中央のいざこざが民に波及することもあるでしょう、そうならない為にも常々我々が手を回している訳ですが…不満が拭えないと言うのであれば、この騒動を解決した後にご自身でアリシア殿をお守りすればいい。その刀は決して飾りではないのでしょう?
(この国の内情に対するレドの見識にフランツは感嘆を漏らしつつも、故人への見解は程々に今まさしく直面している問題の重要性を改めて説いた。レドの推察通りフランツは派閥で言えば第一王子派である。しかし、それは単に第一王子の王位継承順位が高い為に無用な争いを避けるべくそこに与しているにほかならない。フランツにとって重要なのは今を生きる民の生活であり権力争いは二の次。この男はどこまでも現状主義者なのである。フランツとしては正義などという綺麗事では民は食わせられないという考えが根底にあるため、血に塗れた王位争いの結末などどう転んでも良いと考えているが、レドの懸念にも自分なりの解釈で一定の理解を示しつつも、一先ずは目の前の危機を解決すべきだと語気を強めた。その後に出来うる限りの根回しをすることを前提で、不満が払拭できないのなら自分でアリシアを守ればいいと提案する。冒険者という身分があれば最悪はアリシアを連れて国外に逃げることも、そのアリシアに見初められた剣技で物理的に守ることも出来るだろうと、レドの腕を見込んでこその発言である。)
>947
なんとご無体な……だが言われてみればそうである。
……アリシア様の処遇は閣下にお任せしてよさそうですな。本題に戻りましょう。
(政敵に対しては一転して素っ気ない態度を取るフランツを脇目に見ながら溜息を吐いて。ルミナ姫を死に追いやってきながら酷い言い草……だがそこに王家統一と民の安泰を最優先とする彼なりの信念を見た。立場や思想は相容れないだろうが、少なくともこの件に関しては信用できる筋の通った男のようだ。ならば過ぎた事や曖昧な未来の問答をしている暇は無い……フランツの粘り強い説得を通してようやく重い腰を上げる気になったレドはアリシアの話に集中すべく、改めて姿勢を正してフランツに向き直って。)
……フランツ閣下に意見具申します。ご懸念の通り今のアリシア様は危険です。騎士学校を卒業なさるまではお優しかったようですが、今の彼女は魔物です。「地獄の門」という魔物の技を使うからだけではありません。頭の中も魔物に成り果てております!
今のアリシア様は度を過ぎた人間種至上主義者です。彼女にとって先の少年殺しなど座興に過ぎない。いずれはここにいるエリーゼ殿も、あのバカ……あ、いや、副団長閣下を含め、あらゆる獣人やエルフ、否、邪魔になるなら人間をも殲滅なさるおつもりでしょう。
実は今、「勇者」レイラも頻繁に彼女の勧誘を受けております。私の剣術指南招聘を含めて戦力拡充の一環と見えます。このままでは内戦突入は必至です。聖教国ばかりかフリード共和国の介入を招いた末に、この国は焼き尽くされるでしょう……今はまさに危急存亡の秋(とき)。事を起こすなら今かと存じます。
(背筋を伸ばして膝に手を置き、冒頭の質問の回答としてアリシアに関する現状報告と意見を述べて。フランツが拾ってくれる事を期待して「悪魔」特有の魔法・「地獄の門」の事も伝えてみる。冷や汗をかき、時折目を伏して苦しそうにしているのは愛する人を裏切るのが辛いからだが……彼女を救うためには今ここで依頼を受けるしかない。既にアリシアも副団長エリスの襲撃にまで及んだ以上、今後行動がエスカレートするのは間違いない。そうなればもう、免罪の余地は無くなってしまう……)
エリーゼ殿!「勇者」とは、自由の表象……我々が嫌うのは獣人では無い。誰かの走狗として使われることだ。
特に私は先の農民弾圧の生き残りにして、アリシア様から愛と名誉を賜った立場ゆえ尚のこと。彼女を裏切って密偵(イヌ)に成り下がるのは心苦しいが、三方良しの結末とするためには止むを得ません。私情は捨てましょう……
(聖教国と関わりの深い「勇者」の一味として自分を警戒しているであろうエリーゼの方を向きながら、「勇者」に連なる者としての信条と、自身の素性を明かして。本来であれば自分たちを弾圧した国家に与するなど御免である。ましてや剣術指南の名誉を捨て、愛したアリシアの恩を仇で返すなどもっての他だ。だがこの国の平和・アリシア・そして自分自身のため、受けざるを得ない話でもある。受諾を決意すると、立ち上がって右手を額に当て敬礼し、叫んで。)
この度の御下命、謹んでお受けいたします。近衛隊の調査を為せるのはアリシア様の信を得たこのレドを置いて他にありません!
>948
そのご決断に敬意を表します。アリシア殿の置かれている状況についても、宮廷の方で新しい観点から調査を致しましょう。ああ、細かい擦り合わせについては騎士団に身を置くエリーゼと行った方が良いでしょうね。私は多忙の身ゆえ、これにて失礼致します。
(レドの決断を聞いてフランツは満足そうに口角を吊り上げると、立ち上がって拍手を送った。魔法は専門外のフランツにとって「地獄の門」と聞いて思い当たる節はないが、レドの表情を見るに出鱈目を言っているとは思えず、宮廷主体で独自の調査を行うことを約束してみせた。宮廷の情報収集能力を持ってすれば「魔を総べし者」に辿り着くのはもはや時間の問題であろう。レドの協力を取り付けたことで後は細部を説明…と言いたいところだが何もこの国の問題はこれだけではない。多忙なフランツはこの場をエリーゼに託して颯爽と部屋を出た。)
わ、私にゃ…!?行っちゃったにゃ…ええと、それじゃレドくん!君の心意気は分かったからまずは楽にしてほしいにゃ。
(騎士団長格だけありこの後自分がすべきことは即座に理解したが、予想外の押しつけにエリーゼは目を丸くした。気を取り直してレドに向き直ると、護衛任務を終えたこともあり、ここで初めて瞬きをする。レドの決意を聞いてその心意気を十分に理解しつつも、エリーゼ自身はあまり畏まった空気を好いていないのだろう。レドに楽に座るように促して自身も先程までフランツが使用していた椅子に腰掛けた。)
近衛隊の剣術指南役と言うことは、勿論王城内にある近衛隊庁舎で寝泊まりすることになるにゃ。慣れない場所に不安を覚えるかもしれないけど…安心てほしいにゃ。ふふん、何を隠そう別任務という建前で私も同行する予定だからにゃ!もしかしたら君にとってその方が不安かもしれないけど…にゃはは…
(エリーゼはひとまず、レドが剣術指南役として派遣された後の流れを簡潔に説明することにした。近衛隊の指南役となれば当然寝泊まりする場所は城内に置かれた近衛隊庁舎になる。そのような場所でどう緊密な連携や連絡を取るのかという話だが、別任務という建前でエリーゼも同庁舎に同行することが決まっているようだ。エリーゼは自身の胸に手を添えて自信満々に微笑んで見せるが、すぐに自嘲気味の苦笑いへと切り替わる。元から自己肯定感は低い方ではあるが、辛い過去までも明かし愛する人すら裏切る選択を取ったレドを少しでも元気付けようとして明るく振舞ったもののテンションが長続きしなかったのだろう。)
>949
……俺が君なら許さないだろう。こんなものが正義で良いはずがない……
アリシア……臆病な俺を……許してくれ……
(フランツが退室しても敬礼を崩さず、ぼーっと突っ立ったままブツブツ呟いて。本来なら悪魔だろうと愛した者を守り殉ずるべきだった。そしてクレアが慕った第一王女の仇などに従わず、いずれ彼らが牛耳る国を滅ぼし、本懐を遂げることが正義のはずだった。だがそれと真逆の、正義とは程遠い決断を下してしまった。アリシアはおろか、クレアにもレイラにも背いた気になり、苦しそうに目を閉じて。
だがこれで良いんだ。アリシアを救うため、人間世界の悲惨へ至る賽を投げさせないためには仕方なかった……と目を閉じながら言い聞かせているとエリーゼの声が聞こえてきたので、「え、ああ。じゃあ遠慮なく」と気の抜けた返事と共に座り直して。)
エリーゼ殿も?第二団長まで御出陣とはすごい力の入れようだな。
俺は平気ですよ……それよりエリーゼ殿の方が危険でしょう。なにせ獣人とあらば、子供だろうと容赦しないのが近衛隊ですから。
(エリーゼの人柄もあり、一転和やかになった空気に合わせて砕けた敬語を使いつつ、前のめりになりながら彼女の話を聞いて。彼女の言う通り第一王子の手の者が同行するのは不安だ。しかしもう引き返せないのだから今更四の五の言う気は無い。むしろこの任務、近衛隊が獣人を敵視する以上彼女の方が危険だろう。いずれ戦う運命ならば、この機会に近衛隊と彼女を潰し合わせるべきなんだろうが……優しくて腰の低い性格までもがクレアの再来に見えるからか、そんな気にもならない。自嘲する彼女に苦笑いを返して気遣いつつ、話の続きを聞くことにして。)
>950
レド君は優しいにゃんね。でも心配は無用にゃ。こう見えても私は結構強いのにゃ!ふふっ、それにいざと時はきっとレドくんが助けてくれる筈にゃ。
(惨い決断を迫られて傷心中だと言うのに、それでも人のことを心配出来るレドの人柄を前にして思わずエリーゼの笑みは柔らかいものとなる。もっとも、エリーゼの実力ならば並の近衛兵など脅威ではなく、その近衛隊の実質的なトップのアリシアが認めた程の実力者であるレドに背中を預けられるなら、尚のこと恐れるに足らないだろうと確信を抱いてすらいた。)
ああ、それで話の続きにゃんだけど…私の身分だと近衛隊の庁舎を自由に動き回れないのにゃ。そこで主に庁舎内の捜索はレドくんにお願いして、私は宮廷とレド君を繋ぐ連絡役に徹しようと考えているにゃ。面倒事を押し付けてるみたいで申しわけにゃいけれど…それで異論はないかにゃ?
(エリーゼはその役職や獣人としての容姿が目立つことで近衛隊の庁舎内を自由に動くことは難しい。そこでアリシアからの信用を勝ち取っているレドが足となり、エリーゼは宮廷からの指示やサポートの仲介に徹しようと考えているようだ。当然リスクや労力がレドに片寄っている提案のため、エリーゼは申し訳なさそうに眉尻を下げ、下手に出て確認を取った。)
>951
フッ、もちろん。最初からそのつもりでした。その上貴女が伝令なら申し分ない。幸運にもアリシア様の旧友の近衛兵から助力が得られそうです。上手く動かしてみせましょう。
それで……俺は何を探ればいいんです?フランツ閣下が仰るにはもう見当が付いてるようですが、できれば事前に把握しておきたいです。なにせアリシア様は警戒心の強い方、無闇にフラフラすれば怪しまれるんでね。
(背もたれに背中を預けゆったり座り直すと、待ってましたとばかりに笑みをこぼしながら提案を快諾して。むしろエリーゼの協力が得られるのが意外だった。しかし彼女も親しみやすい性格だ。なんだかシエルみたいだな……ああそうだ、と、シエルの事も伝える。
後は肝心の調査の内容である。アリシアの警戒を招かないためにも事前に叩き込まねば……と、再度身を乗り出して尋ねて。)
>952
それは心強いにゃぁ。そうそう、肝心な捜し物にゃんだけど。大量の金塊、それが近衛隊庁舎のどこかに隠されている筈にゃ。アリシア・ライデンが近衛隊の指揮権を持って半年間、かなりの頻度で聖教国の荷馬車が近衛隊庁舎に立ち寄るようになったのにゃ。その荷馬車の外観から判断できる痛み具合から推察するに相当な重量の代物が積まれていたことが明らかで、それこそ金塊でも積んでいないと説明がつかないような痛み方だったのにゃ。おそらくは来たる内戦への準備資金…と宮廷は睨んでいるようにゃ。
(相変わらずニマニマと微笑みながらレドの交友関係に感心しつつ、寄せられた質問に経緯を交えながら答えた。宮廷のいう買収の証拠、それは近衛隊庁舎に隠されているであろう大量の金塊である。近衛隊庁舎に立ち寄った馬車の痛み具合からもそれは明らかで、その用途は内戦の準備資金と見るのが自然であろう。この時点で国家反逆罪の罪状で捌くことを視野に入れてもおかしくはないが、あくまで買収に留めるのは宮廷が出来る最大限の温情であった。)
前日譚「新たなる脅威」
まあ…綺麗な麦畑ですねぇ。フフッ、こうして長閑な光景を見ていると…無性に壊したくなります。
やめておけ、グリムハルト。此度の任務が成功した暁にはこれらは全て我々のものだ。無為に壊したところで得はない。
(何処までも続く広大な麦畑の傍らを一輛の馬車が進む。窓から覗く圧巻の光景に、グラキエス帝国の軍人エルフリーデは感嘆を漏らした。眩い陽の光を反射して黄金色に輝く畑、汗を拭いながら黙々と作業に勤しむ農夫。なんとも長閑な光景を前にして、エルフリーデは抑え難い破壊衝動に駆られる。冗談めかしたような物言いで、しかし、覗き込むようにして窓に添えられた彼女の手にはドス黒く禍々しい魔力が蓄積されていく。見かねた同行者コンラッドは腕を組んだ姿勢で彼女を一瞥すると、言葉で制止した。帝国において弱肉強食は国是、弱い者が強い者に従うのは道理である。エルフリーデは不貞腐れたように小さく溜息を吐くと、その手に込めた魔力を散開させた。)
しかし長い道のりですね。帝都から丸四日馬車を走らせてやっと王国入り。王都まではあと半日といったところでしょうか。これだけの労力を掛けたのですから確実に成果を持ち帰りたいですねぇ。
うむ。聖教国が本腰を入れているのだ、内戦に匹敵する騒動があるのは間違いないだろう。その隙に乗じてこの国を取る。それまでは目立つ行動は厳に慎め。
はいはい…分かっていますよ。あのカルト国家と貴方の言葉を信じますとも。
(咎められたことに対する些細な腹いせに、エルフリーデは決して軽くはない費用や労力を引き合いに出して少しでもコンラッドに重圧を掛けようと試みる。しかし、返ってきたのは淡々とした背景説明と更なる小言であった。まったくこの堅物は意に返していないと、そう悟ったエルフリーデは隠すこともなく不貞腐れてコンラッドから視線を外すと、軽蔑している聖教国と彼を並べることで下らない腹いせを終えた。
斯くして、内戦に一枚噛むべく送り込まれたこの二匹のハイエナが王国の未来に暗い影を落とすことになるのかはまだ誰も知らない。)
>953
そうか、そんなことまで……どのみちアリシア様の天下も半年で終わるのか。「不義にして富みかつ貴きは浮雲の如し」、アリシア様に相応しい言葉だな……
……おっと、アリシア様もやりたい放題してくれる。でも実際は巧妙に隠していることでしょう。場所を教えてもらえる程にまで信を得なければ……また馬車が来ることがあれば、搬入に立ち会いたいものです。
(聖教国から金塊を……アリシアの行動が予想以上に度が過ぎたものと知ると肘掛けに頬杖を突いてぼーっと明後日の方を向き、「不正で得た富や名誉など浮き雲のように儚い」という東方の言葉を呟いて。ひとまず宮廷が微罪で済ませてくれることに安堵しつつも気は晴れない。どのみちアリシアは騎士としての立場を追われるのだ。身も心も浮き雲のように儚いアリシアを平民に、そして罪人に貶める。殺すより惨い所業かもしれない……と考えると、涙がひとすじ溢れて。
……だがもう引き返せない。思い直すと頬杖をやめ、エリーゼに向き直って方針を語って。)
それで?俺の方はいただけるんでしょう?賄賂じゃなくて、正当な見返りを。アリシア様の件とは別でね。
冒険者にとって信義により立つ任務の不履行は、万死に値すること。こんな裏切りが噂になれば俺も仕事がもらえなくなる。いや、「勇者」に連なる者が獣人に手を貸したと聞かれればレイラも聖教国から追われてしまう……下手したら俺達は明日から生きられなくなるんだ。それなりの誠意を見せてもらっても理不尽では無いと思いますがね。
それともやっぱり……三途の渡しの六文銭で払うつもりかな?
(金塊の話で思い出したのか、突如荒くれ特有の鋭い目つきに戻ると、指で輪っかを作って誠意……金を要求して。更にはニヤけながら貰うに相応しい根拠をあれこれ並べ、死者に銭を供える東方の風習に触れつつ、「任務が終わったら消すつもりじゃないだろうな」と言わんばかりにキッと睨みつけて。その身振り手振りは大げさだ。実際は本気でたかる気など無く、単にエリーゼをからかいたいだけのように見える。
それにしてもレドは東方の言葉や風習にも通じているらしい。武勇はもちろん知識に自信があるからこそ東の国の刀の剣術指南を受けたのだろうが、この国の一農民がどこで覚えたものか……)
>955
にゃにゃ…?三途の…なんにゃ…?難しい言葉はよく分からにゃいけど、報酬はそれなりの額を期待していいと思うにゃ。押収した金塊も国庫に収められる筈にゃから、宮廷の懐には余裕があるのにゃ。私はお給金が増えるどころか、デュランダルを空けている間にも仕事が増えていくのにゃけど……
(唐突なレドの変わりようにエリーゼの笑みは若干引き攣り、困惑の色が見えた。東方の知識に疎いエリーゼは聞いたこともない言い回しに頭を捻るものの結局その意味に辿り着けず、ピンと立っていた耳が降参だと言わんばかりにふにゃりと倒れる。諦めて分かる範囲でレドの質問に答えることに決めると、宮廷の懐事情も含めてそれなりの額の報酬を期待していいのではないかと推測してみせた。なぜエリーゼでも具体的な金額が分からないのかと言うと、報酬は彼女にとって無縁な話しであるため聞かされていないのである。やりがい搾取で定額で使い倒されるのが公僕であり、今騒動を解決するまでエリーゼの仕事は溜まり続けるのである。その現実を語るエリーゼは、可愛らしい笑みに似合わない死んだ魚のような目をしていた。)
それにしてもレド君は物知りにゃんね。さっきの難しい言葉も…いったいどこで習ったのにゃ?
(語っていて悲しくなる現実から目を逸らす為にエリーゼは自ら話題を変える。学校に通える筈もない農村の出であるレドが異国の風習に詳しいのは何か理由があるのだろうか、小首を傾げ、先程のやり取りの最中から気になっていたそんな素朴な疑問を投げかけた。)
>956
なに、特別手当も引き継ぎも無し!?ひどいじゃないですか……うん、俺の話をしましょう。まあ単純な話。俺の剣の師から教わったんです。俺はデュランダルから離れた山里の農村の出。だけど農作業の思い出はほとんど無い……小さいころ親ごと村を盗賊団に滅ぼされたんでね。
そんな俺を近所で隠遁していた元冒険者の老人が引き取ってくれました。名は「松に鶴」で「ショウカク」。名前通り松のように黒い肌、背が高く真っ白な服の似合う、鶴を見たような男でね。俺は東国から来たこの老人に東刀の扱いばかりか、色々な教養や作法も叩き込まれた。俺にとってはこの老人こそが騎士学校で……俺はこの老人の遺産なんです。
(危険な特別任務に赴く騎士団長に対するものと思えない、エリーゼの雑な扱いに愕然として。頭を掻きながら「変な事聞いちゃったなぁ」と反省すると、あまり扱いの良くなさそうな彼女の話は止め、自分の生い立ちの話に切り替えて。早くに親も家も亡くした自分を、東国から来た東刀使いの老人が親代わりとなりマンツーマンで指導した成果……そんな自身の教養の源を、ゆったりと腰掛けながら遠い目で語って。)
俺は勉強が嫌いでね。そんな俺に「勉強しろ!」「腕自慢なんかこの国には腐るほどいるンだ!頭で差をつけろ!」「東刀使いなら東の国の蘊蓄ひとつぐれぇ喋れるようになっとけ!偉い人にはウケがいいからな!」って、決まったように吠える口うるさい師匠(オヤジ)だった!師匠(オヤジ)とは別に目標となる人……強くて礼儀正しくて、師匠(オヤジ)よりかは清らかな剣士を見出してからは多少やる気になりましたけどね。そうなったらなったで「おめぇ悪魔にでも憑かれたか?」って**た顔でぬかしやがったし。ああもう……
ガサツなくせにやたら知識のある男だった。多くは語らない男でもあったが、今思えばこの国で宮仕えしてた経験があったんでしょうね。それこそ剣術指南のような……口うるさい指導も、俺もまた城勤めが務まる洗練された剣士に育てたいという愛の裏返しだったのかな……
ま、おかげでこうして近衛隊に招かれ、そしてデュランダルの守りたる貴女の直属で仕事ができるんだ。並の冒険者じゃ声すら掛からない仕事と人に関われたんだから、師匠(オヤジ)には感謝しなきゃいけませんね。ふふ。
(そんな老人との勉強の光景を、指差して怒鳴る老人の真似を交えながらうんざりした顔で語って。なお、老人とは別に目標となる剣士を見出してからは勉強に身を入れるようになったと言う。自身のポニーテールはその剣士にあやかったものなのか、その話になるとポニーテールをいじっており。
一介の冒険者にしては妙に教養と礼儀のあった老人を城勤めの経験者と推察し、どこにでもいる武勇一辺倒の猪武者とは一味違う、文武両道の剣士に育てたかったが故の口うるさい指導だったのだろうと語るころには、レドの顔も穏やかになっており。何だかんだで親代わりとして自分が持つ全てを叩き込んでくれた老人には感謝しているのだろう。その甲斐あってエリーゼのような身分高い人との仕事に携われたのだと、身分の割に自信の無い彼女を持ち上げ、話の締めとして。)
>957
…っ……ええと、いい師に恵まれたにゃんね…!やっぱり厳しさの裏には愛があるべきなのにゃ。培ったその知、その力、存分に振るって欲しいにゃ!
(不運にもレドが語った師の特徴はエリーゼが最も恐れる人間を連想させた。黒い手袋、真っ白な軍服、東刀の使い手で教養深い。全くの別人の筈なのに一度連想してしまったものはそう簡単には頭から消えず、怒鳴る仕草の真似事さえもビクンとエリーゼを震え上がらせる。レドが語り終える頃にようやく正気を取り戻し、少し青ざめた顔色ながらも目一杯の笑顔でレドの敬愛する師を称えた。そんな精神状態ながらもしっかりと話は聞いていたようで、「愛」を表すハートを尻尾で形作っておどけて見せながら、師の元で培った知識と技術を愛する人の為にも存分に振るうようにエールを送る。)
>958
エリーゼ殿!人の話を聞いて……あっいや、獣人の尻尾ってこんな芸当までできるのか。御器用なことで……
……エリーゼ殿、ここから見えるデュランダル全てが貴女の縄張り(シマ)なんでしょう?その歳ですごい名誉じゃないですか。眼下では腕自慢の冒険者どもが蟻のように蠢いてるが、束になっても貴女には勝てないでしょう。俺も含めてね。なのに……さっきから何をそんなに縮こまっているんです?正直騎士団長の振舞いとは思えません……
(せっかく大変な身の上話を披露したのに、きちんと聞いていないエリーゼに呆れ果てて立ち上がるが、尻尾のハートに思わず怒る気がそがれてしまい、困惑した苦笑いを浮かべて。
どうやら今の話でエリーゼのトラウマを刺激してしまったらしい。怒鳴った時に怯えてたから上司のことなんだろうか……と思いつつ、カツカツと足音を響かせながら窓際へ歩き。外から見えるデュランダルの街並みを指し、この一帯を治めるエリーゼの功績、そして彼女の実力を讃えて。その表情は真剣そのもので世辞では無い。今までの身のこなしからして実力は俺より上だろう。それなのに役人の太鼓持ちに神経をすり減らしたり、やたら卑屈な笑いを浮かべたりと、まるで下僕みたいな態度……きっと自らが仕える騎士団に貶められたのだろう。そういうところも「クレアの再来」なんだろうな……と同情を覚えると、窓を背に穏やかな笑みで語りかけて。)
同じ使命を背負う身の上、今のうちに愚痴ぐらいは聞きますよ。「仲間は大切にしろい!」と、師匠(オヤジ)も言っている。
>959
レドくん…うぅ…ありがとにゃ。それならちょっとだけ…私の…忘れたくとも忘れられない思い出話を聞いてほしいのにゃ…
(自身の態度を咎めるどころか、包み込むような穏やかな笑みを向けるレドの温かさに触れて、エリーゼは瞳を潤ませた。レドの言う通り、これから国の運命をも左右する使命を共に背負うことになった仲間だ。涙を拭うと、意を決して自身の心を蝕むトラウマの根幹を語り始めた。)
あれは第二騎士団長に任命された日、王城に出向いて諸先輩方に紹介の挨拶に伺ったのにゃ。あまり歓迎はされにゃかったけど……それでも、少しでも親睦を深めようと、全体の挨拶が終わった後に歳の近い次席補佐官殿に個人的にお声掛けしたのにゃ。その時は知らにゃかったのにゃ、あの人が敬虔な聖教の信徒だって…呼びかけた時に触れてしまったのが不味かったにゃ。怖い顔で、凄い力で首を絞められて…苦しくて抵抗したら、尚のこと怒らせてしまったにゃ。「これは害獣に対する躾です。」って髪を掴まれて…何度も、何度も床に頭を打ち付けられて……痛くて…怖くて…でも、躾に対する感謝を示すまで止めないと言われたのにゃ。だから…助かりたい一心で嫌なのに笑顔を作って…ありがとうございますって何度も言ったのにゃ…結局気を失うまで止めてもらえなかったのにゃけど……その日から、この笑顔がこびり付いて離れないのにゃ。笑顔を作っていないと死んでしまうって、きっと生存本能に刻まれちゃったんだにゃ…にゃはは…
(過去を語るエリーゼは落ち着かないのか終始ソワソワと尻尾を振っていた。言葉にしたことで記憶が鮮明に思い起こされ、途中で何度も言葉を詰まらせたり過呼吸気味になりながらも、必死の思いで言い終える。初めて「仲間」にトラウマを打ち明けられたことで多少心が軽くなったのだろう、最後には笑顔をやめられない自分の現状を冗談っぽく言ってみせた。多忙な身でありながら、彼女が今回の騒動の最前線で戦うのは、これ以上この国で種族間のいらぬ争いや理不尽をなくすため、自分と同じ苦しみを他の誰にも経験させたくないという意志の表れであった。)
>960
エリーゼどの!?ああっ、ごめん!ごめんなさい!俺よりよっぽど辛い話をさせちゃって……ごめんなさい。
(なんたる無道、聞くに堪えない。これが騎士団のすることか!させるべきじゃなかった、こんな話……慌ててエリーゼに駆け寄ると肩を抱き寄せ、申し訳なさそうに頭を伏せて。)
……なにが害獣だ。テメーの方がよっぽど人の道から外れてるじゃねーか。そうと知ってたらこんな話、受けるんじゃなかった……!
エリーゼ殿!次席補佐官(じせき)を殺(と)るんだ!うちの姉さんにも加勢してもらおう。「辱めを受けたら、同じ目に遭わせる」それが東刀使いの掟だっ!!!
(だがエリーゼの肩から離れたレドの顔は温かさの欠片も無い憤怒の表情に変わっていた。レドは命より誇りを選ぶ男、そして恥辱をそそぐためなら国が滅びても構わないとする男だ。完全に頭が血が上り、怒りのあまり本来の目的を忘れたレドは腰から刀を外してガン!と鞘を床に突き立てると、任務そっちのけで、レイラまで巻き込んでまで次席補佐官を討とうと言い出して。)
>961
…レ、レド君!落ち着いてにゃ!?もう過ぎたことにゃ!私は大丈夫にゃから…今は目の前のことに集中すべきにゃ。その気持ちだけで、十分嬉しいのにゃ。
(肩を抱き寄せられ、トラウマで乱れた心が落ち着いたのも束の間に、豹変したレドを前にしてエリーゼは額に汗を流しながらアワアワとした様子で説得を試みた。恨みが微塵もないと言えば嘘になるが、祖国の為に身を粉にして働くエリーゼにとって復讐なんてものに興味を抱いたこともない代物で、そんなことに労力を割くならば事件の一つや二つ解決すべきといった正義感の持ち主である。自分なんかの為にここまで怒ってくれるレドに感謝はしつつも、自分を想ってくれるのなら目の前の任務に集中してほしいと、真剣な眼差しで訴えた。)
>962
う……ううむ、そうおっしゃるなら。ただ……これは「勇者」の関係者じゃなくて一人の剣士としての意見になるが……考えておいてください。名誉ある騎士を獣人だからと辱める無道、とても見過ごせない。それにここまで軽んじられてはいずれ任務に障るでしょう。せめて貴女の上司に相談を……
(エリーゼ本人に止められると急にトーンダウンして、憮然としながら彼女の隣に腰掛けて。興奮した息を落ち着かせながら渋々思い直すも、それでもエリーゼを指差し、祖国のため、そして自分のために、いずれは報復すべきだ。それが無理ならせめて上司に相談すべきだと、ギラついた目を向けて。勇者の関係者としては獣人に、まして第一王女の仇の一味なんかに協力したくは無いのだが、それでもエリーゼに対する仕打ちは人として我慢ならず、ついいきり立ってしまった。)
それにしても副団長閣下は何を遊んでるんだ!?人事の相談は無理でも、王国の知恵袋ならこういう時にこそ同席して献策すべきなのに!肝心な時に出てこないで余計なところでしゃしゃり出やがって、あのバカエルフ!
(まだ怒りが収まらず、辺りをキョロキョロすると副団長エリスの不在に腹を立て、拳を握り締めながら怒りに震えて。レドの怒りの原因はこの国難に献策すべき時に出席しない怠慢が一つ。昨日の敗北の屈辱が一つ。そして何を考えているのが全く掴めないのが一つだ。どうやら副団長と宮廷は連携していないようだ。昨日の襲撃だって、第二騎士団との共同作戦だったらとても勝ち目は無かった。いかにもずる賢く勝ち馬に乗るタイプに見えるのに第一王子派では無い……?忠誠を誓うのは現国王だけ?ならなんで昨日俺とアリシアをあっさり見逃したんだ。国王の命で来たのは間違いないはずなのに……考えるほど考えがまとまらない苦悩が抑えられず、天井を仰ぎながら手で顔を覆って。)
あんにゃろう……まさか俺がこうやってもがいてるのを笑ってるんじゃないだろうな。
>963
わ、分かったのにゃ…検討してみるにゃ。ただ…仮に相談するとして、その相手はレド君が言うところのバカエルフなのにゃ。もしかして面識があるのにゃ…?
(レドのギラついた視線に押され、エリーゼは苦笑いを浮かべながらも、相談も選択肢の一つとして検討することに決めた。「怖い先輩にいじめられました。」と訴えて相手にしてくれる上役が果たして騎士団に居るのかという大きな問題があるのだが、それを据え置いて仮に相談をするにしても、騎士団内の序列と役割を考慮するならば、同じ団長格の地位は横並び、その上位に位置する補佐官はその名の通り団長の補佐、となると団長格たるエリーゼが相談すべき直近の上司はバカエルフこと副団長である。レドの言いようからして副団長との面識があることは間違いないが、掴みどころのないあの独特な人柄を知っているのなら、アレに相談したくない気持ちもわかるだろうという意味を込めて面識の有無を尋ねた。)
>964
ん、そうだなぁ……貴女における次席殿みたいな存在、というべきか。
以前俺は副団長と戦う運命にあったが……俺が人生全てを投げ売って鍛えた剣技がまるで効かない。そのくせ向こうの手はさっぱり読めない。どうにか追い詰めて後は全身全霊の奥の手でトドメを刺すだけ、って時もアイツは平然と笑って……切り抜けやがった。挙句の果てにはもう手詰まりだ、終わりだ、って死を覚悟してる俺を置き去りにして……今こうしてここにいられるのも、あの女の気まぐれに過ぎない。あの時ほど自分がちっぽけに感じた時は無かったね……
(怒りのあまり口を滑らせてしまった副団長との面識を指摘されると、顔を覆っていた手を下げて、ぼーっと正面を見ながら副団長との因縁を語って。昨日の事は秘するべきなので詳細はぼかすが、レドにとっての副団長はエリーゼにとっての次席補佐官のような悪夢に等しい存在として、かつての決闘を語る。剣も心も上を行かれ、命を捨てる覚悟すらコケにされ、その上で気まぐれに生かされ、生き恥の屈辱を刻みつけられた女だ。ただエリーゼと違って恐怖よりは無力感を負わされたのだろう。時折悔しさに顔を歪ませる時以外は、魂が抜けたように抑揚無く、無表情で語っており。)
仕事しない女と聞くが……その様子だとやっぱり上司としてはあてにならないようですね。誰がそれを咎められるだろう。そのバカエルフこそ、その長命をもって百年知恵を授ける王の右腕、戦場に出れば敵国数十万人を屠る無敵の副団長なんだから……まるで東方の大陸に千年伝わる、敵国二十万を生き埋めにした将軍のような武功。アリシア様は副団長と戦いになっただけでも剣術指南の資格があると仰ってたが……慰めじゃ無いかもしれない。
だからって……俺は諦めないぞ。というか今回の任務を邪魔するかもしれない。その時こそ、白黒はっきりつけてやるんだ!
(エリーゼをちらっと見ると、やはり噂通り平時の仕事はしない女と悟りつつも、副団長の強大さを語って。語るたびに声に生気が入り、乗り越えるべき壁を見上げるが如く視線が
上がっていき。なんだかんだで羨ましいのだろう。騎士でありながら騎士の義務に縛られない自由が許される圧倒的な強さ、まるで伝記に語られる英雄がごとき桁外れの武功が。
だがそんな相手と今回の任務でまた対決するかもしれない。そうなったら今度こそ決着をつけるのだと、最後は目線鋭く、そして強く決意を語って。)
>965
ふにゃ…!?副団長殿と戦ったのにゃ!?その向上心は尊敬するんにゃけど…何も死に急ぐようなことはしにゃくても……でも、私の立場で言うのも変にゃけど、レド君にはまだまだ伸び代があるのにゃ。きっといつか副団長殿に届くことが出来るにゃ。
(エリスと一戦交えたと聞いて、エリーゼはその衝撃から思わず椅子から転げ落ちる。ぶつけた腰を撫でながらゆったりと再び席に着くと、その向上心を称えつつもレドの身を案じて即時の再戦を宥めることとした。その一方で、エリスと同じく騎士団に属する身の上の為応援するのも変な話だが、自分よりも若いレドにはまだ伸び代がある。すぐには出来ずともいつかはエリスにも届き得るだろうとエールを送った。)
ただ…副団長殿も確かに怪しいのにゃけど、今はそれ以上に警戒すべき存在があるのにゃ。グラキエス帝国…レド君も知っている通り悪名高い侵略国家にゃ。それが聖教国の動きに呼応するかのように、近衛隊の訓練視察の名目で二人の武官を派遣してきたのにゃ。いったい何を企んでいるのにゃら…
(暫しの間を置いてエリーゼは話を続ける。レドの言う通り、何を考えているのかイマイチ掴めないエリスも確かに警戒すべきなのだが、今はそれ以上に不穏な存在がこの王国の地を踏んでいた。「グラキエス帝国」、大陸に悪名を轟かせる侵略国家である。聖教国と近衛隊が不穏な動きを見せているこの時期に、まるで呼応するかのように武官を派遣してきたことにエリーゼは警戒心を募らせているようだ。彼女の耳が再びふにゃりと倒れていることから、事の深刻さは明らかであった。)
>966
(立場を越えたエリーゼの応援で肩の力が抜けると、「フフ、ありがとう。」と礼を返して。第二団長でも戦うこと自体に驚く相手だ、思い詰めない方がいいかもと気を取り直していると……新たなる脅威を耳にして目を見開いて。)
グラキエス帝国……!前に組んでいた女戦士がその隣国の出でしてね。あいつら彼女の家も家族も奪いやがって、やっとの思いで彼女だけがこの国まで落ち延びたんです。
あの強欲な略奪者ども、近衛隊の訓練視察てことはよりによって俺と関わるのか。ま、俺の名も古い言葉で「氷」の意味です。同じ名前で、同じろくでなし……へっ、案外気が合うかもですよ。
(エリーゼからグラキエス帝国の名前を聞くと、苦々しい顔で彼女の方を向き、昔組んでいた女戦士と関わり深い国であることを語って。レド自身は因縁は無いが、彼の昔の仲間はこの帝国の侵略により家と家族を失い、命からがらフィリア王国まで逃れたという。そんな略奪者がこんな遠方の国の訓練視察なんて怪しすぎる。しかも近衛隊ということは俺が関わらなきゃいけないとは……頬杖をついてジョークを飛ばしながら、己の不運を自嘲して。)
>967
うにゃ…そんなことが……けどっ…!レド君と帝国は全然違うのにゃ!そんな風に自分を悪く言わないで欲しいにゃっ!
(かつてのレドの仲間、その大切な家族が帝国の犠牲になったことにエリーゼは同情を寄せた。声のトーンを下げて俯いたのも束の間に、そのすぐ後に発せられたレドの自嘲を聞くなりすぐに顔を上げて否定する。あんな侵略国家と、人の為に怒れるレドが同じな訳がない。冗談でもそんなことは言わせまいと、エリーゼは声を張り上げた。先程までレドが勇気付けてくれたように今度は自分が返す番だ。そう確信したエリーゼはレドの右手を自らの小さい両手で包み込むと、少しでもこの気持ちを伝えようとまっすぐにレドの瞳を見つめた。)
>968
えっ、そ、そういうわけじゃ……あ、いや、失礼……
……ともかく、連中は殺し奪うだけで、戦士としての誇りなど無い略奪者どもです。他国の訓練視察なんかで見識を深める殊勝な連中じゃない、間違いなく侵略が目的でしょう。あのバカエルフより分かりやすいだけマシかもしれません。
それにしてもなぜ聖教国と関わりの深い近衛隊なんでしょうね?あの帝国は聖教国と断絶してるはずなのに。アリシア様もアリシア様だ。あんなの布教の障害にしかならないだろうに。何を考えて……
(冗談を真に受けて自分を励まそうと手を握り見つめるエリーゼに困惑して、少し照れくさそうに左手で頭をかいて。性分なのか、アリシアの件があってもまだ異性に慣れないらしい……何より褒めてくれるのは悪い気がしないし、手も温かい。エリーゼに手を握られるまま瞳を見つめ返し、自らの意見を述べて。特に気になる、聖教国と繋がる近衛隊に接触する点については左手の指を上げながら疑問を提示して。獣人はエルフはおろか、聖教国とすら敵対する帝国の異常性はレドも知るところ。そしてアリシアが帝国を招く意味はもっと分からない。これが「悪魔」の思考なんだろうか……)
>969
そうなのにゃ…なんで寄りに寄って帝国と近衛隊、この二つが交わることになったのか…宮廷ですら意図を読み解けていないのにゃ。ただ、これに関してはきっと現地に行けば分かる筈にゃ。今はその日に備えて身体を休めるのが先決にゃんね。
(帝国と近衛隊、相容れないこの二つが何を接点とした交わることになったのか、レドの当然の懸念はエリーゼどころか宮廷すらもその意図を計りかねていた。エリーゼは一瞬だけ困ったように眉尻を下げるものの、ここで考えても仕方ないと、すぐに気持ちを入れ替えて前を向くことにした。今は来たる日に備えて休息を取るのが最善である。)
指南役の就任日は後日アリシア・ライデンから連絡が来る筈にゃ。私は明日、一足先に王都に向かう手筈ににゃってるから、次に会うのは近衛隊庁舎にゃんね。今日は…君に会えて良かったのにゃ。それじゃレド君、また近いうちに!…あ、そうにゃ。さっき話した通り帝国の連中はもう王都に着いてるにゃ。訓練のない時間は暇を持て余してる筈にゃから、もしかしたらこの街にも出没するかもしれにゃいにゃ…だから帰りはくれぐれも気を付けてにゃ!それじゃーにゃ~。
(別れの前に、包んでいたレドの手を離すと、エリーゼは未だ伝え損ねていた事柄を簡潔に説明した。指南役の就任日は当然ながらアリシアから直接レドに伝えられることとなる。一方で今任務の相棒になるエリーゼはと言うと、建前上は別任務の為早速明日から王都に発つようだ。相変わらずアリシアのことを敬称を付けずフルネームで呼んでいるが、獣人たるエリーゼにとって聖教国シンパなど明確な敵なのだから当然であろう。そうして伝えるべきことを伝え終えると、ぺこりとレドに一礼と感謝を述べて出口へと歩みを進めた。そして、扉を開け半歩身を進めたところで思い出したかのように忠告する。それは暇を持て余した帝国の武官が王都から程近いデュランダルに足を運んでいる可能性。仮に鉢合わせたとしてレドなら大丈夫だろうとエリーゼは信用しているが、警戒するに越したことはない。それだけ言い終えると、気さくに手を振ってエリーゼは完全に会議室を後にした。)
>970
ふふ、了解。共にご武運を。
……第二団長エリーゼか。いずれ相まみえるかもしれないが、討たれたとしても死に様としちゃ悪くない。
(立場は違えど友人のように打ち解けたエリーゼにすっと手を上げ、微笑んで見送る。エリーゼ……「勇者」の背後にある聖教国の禁忌たる獣人だし、クレアが慕った第一王女を死に追いやった第一王子の下での平和など認めたくない。……いずれ戦う運命にあるかもしれないが、一人の剣士としては良い人だ。たとえ討たれても悪い気はしない。中央庁舎最上階。そう訪れる機会など無いしこのまま感慨にふけりたいが長居は無用だ。自分も会議室を後にする。)
「ご苦労様です!」
ん……
(ツカツカと階段を下りていくと、以前レドを追い返した衛兵が敬礼して見送ってくる。昔のレドのことはもう覚えておらず客人として見ているようだ。無造作に敬礼を返すと外に出る。)
「お疲れ様。かっこよかったよ、レド。」
「なんかスゴイ依頼受けたじゃん。もう愛しのクレアお姉様に並んだんじゃないの?」
ふふ、どうも。
「僕がレクチャーした騎士団の話は役に立ったかな?」
もちろん。
「あーしのぜんぶをメチャクチャにした帝国に、ぜったいまけんなよ!」
当然だ!
(建物から正面広場に出ると、左右から眼鏡をかけたローブの青年と、戦士然とした褐色の女性が声をかけて来る。レドは双方に視線を向けては返事しつつ、歩を進める。だがその二人の姿はレドにしか見えない。二人とも一年前に死んだレドの仲間なのだ。この3年で得たもの失ったもの、それぞれ数えきれない。レドは大きく変わった。3年前は右も左も分からぬ移住者としてこの政庁に入り込んだ田舎者が、今はこの国の、そして愛する者の命運を背負った実力者として政庁を出る。そんなことを自覚しながら、日が落ちて明かりが灯り始めたデュランダルの街並みを歩く。冒険者ギルドで夕飯を取って、後は帰って寝るだけ。今夜こそ何も起こらないで欲しいと願い、夜空を見上げながら呟き。)
はぁ……今夜こそゆっくりするぞ。そう何度もバカエルフみたいなバケモノに襲われてたまるかよ。
>971
(ギルドからほど近いとある一角、この一帯は街灯が整備されておらず日が沈むと日中の賑わいが嘘のように閑散としているのが常である。しかし、この日は違った。騎士団とは明らかに異なる灰色の軍服に身を包んだ女性と、その足元に転がる冒険者が一人。広がる鉛のような血の匂いも相まって異様な雰囲気を醸し出していた。)
あらあらぁ…冒険者というのはこんなにもひ弱なんですねぇ。私を楽しませてくれるんじゃなかったんですかぁ?ねぇ?
(女性は心底悦に浸った笑みで、足元に転がる冒険者の首を執拗に踏み躙りながら問いかける。しかし返事はなく、冒険者は血溜まりに倒れ伏したまま言葉にもならない唸り声を上げるだけであった。その冒険者はギルドでは素行の悪さで名の通っているBランク冒険者であり、下心満載で近付いたところ虫の息になるほどの過剰な制裁を受けたというのが事の顛末であった。彼女、エルフリーデにとっては燻っていた破壊衝動を発散させるには嬉しいトラブルではあったのだが、些か不完全燃焼が過ぎる。顔を上げ、この昂りを受けとめてくれる"何か"がないかと周囲を見渡すと、見つけてしまったのだ。足元の男などよりも自分を楽しませてくれそうな存在、レドのことを。足癖が悪いのか、皮が裂けた男の首からグチュグチュと不快な音を鳴らしながら、新たに現れた青年レドに視線を送り、ニコッと外交で培った渾身の笑顔を見せる。天使と見紛う曇りのない笑顔と足元の惨状、このギャップが一層の気味の悪さを際立たせていた。)
>972
「あっ、あの軍服!気を付けてレド!あれが帝国だよう!」
(エリーゼが言うには帝国の手の者が潜んでるらしいが……気がつけば人気の無い場所に来てしまった。早くギルドに行こうと歩を進めていると血の匂いがして……その発生源、帝国のエルフリーデと目が合ってしまう。仲間の女の声が聞こえたせいかそれとも本能か、帝国の者であると一目で察しがついた。またバカエルフみたいなのに遭遇してしまった、もう勘弁して……とばかりに、疲れ切った顔で固まって。)
…………………。
(目線はエルフリーデの瞳に向けたまま倒れている男を確認する。正直、この一年間仲間の死のショックでギルドとは遠ざかっていたし、仲間が生きていた時も酔っ払ったクレアに絡まれたくない、見たくない一心でギルドに長居しなかった。というか他の冒険者については憧れのクレアが属する「不死鳥の翼」以外関心は無く、男の素性は知らない。が、昨日の商人のように助ける意義は無さそうなヤクザ者と判断した。
昨日のバカエルフはまだ正体を隠す頭があったのに、この女は制服姿で堂々と蛮行に及んでいる。しかも、昨日と違って任務でやってるとは思えない。バカエルフ以上に異常な女。この一瞬で今は刺激すべきでないと判断すると、行動に移して。)
みてないみてない、なにもみてない、ぼくはしがないBランクのおとこ、たのしくないたのしくない
(背中を丸めオドオドし、いかにもなぶり甲斐の無い、戦う勇気も無い臆病者の態でブツブツ呟くと、そそくさとギルドへ歩き始めて。剣術指南招聘を控えた今無駄な戦いは避けるべきだ。向こうだって帝国の軍服を着ている以上、暴れ過ぎれば任務に支障が出る。人混みにさえ入れば追ってこれないしギルドも近い。ここは逃げの一手……と判断した。)
>973
う~ん……我が覇道を阻みし愚かなる生命を…
(戦慣れしているエルフリーデにとって所作の一つ一つ、そして無意識の身体の運び方からもレドの三文芝居を見抜くことは容易かった。そして何よりも、明らかに素人には扱えないであろう東刀を携えながらその振る舞いには無理があるだろうと内心でツッコミを入れつつ、小首を傾げて考え込む。レドに戦う意思がないのであれば此方からの一方的な攻撃は明らかに外交問題だ。足下に転がる冒険者の一件を正当防衛で片付けるのとは訳が違う。しかし、満たされないこの欲求をどうにか消化したいエルフリーデはついには悪魔的発想に至った。「地獄の門」、一度対象を拘束すればたちまち地中深くに引き摺り込むこの魔法であれば、詠唱を中断させる為にも相手からの攻撃を誘発することが出来、仮にその程度の危機回避能力すら持たない人間であれば文字通り土に還って証拠は残らない。もはや打たない手はない。そう決心すると口角を吊り上げて、その傲慢な詠唱を始めた。レドの足元にはアリシアの時よりもさらに大きな赤黒く禍々しい魔法陣が出現し、言葉を紡ぐ度に内包された魔力も肥大化していく。)
>974
……ぴぎやぁぁぁああああーーっ!!!!
(聞き覚えのある詠唱を耳にすると、足元に禍々しく赤黒い気配を察する。ピクリと身震いすると、どこから出してるのかマンドラゴラみたいな奇声を発し、兎のように跳ねて魔法の範囲外に出て。忘れもしない。これこそアリシアの切り札、あのバカエルフ、否、副団長エリスをも捕縛した悪魔の魔法「地獄の門」だ。規模はアリシアの物より大きいが、エリスとの戦いでアリシアの到着まで粘れたおかげでこの魔法を事前に目撃できたレドは、気配を性質を察知して逃れたのである。「地獄の門」ではなくエルフリーデ本人に怯えたふりをして、彼女のいる場所から1ブロック先の通りまで逃げ出して。)
「バカ野郎!気を付けろいっ!」
ぐへっ!!た、たすけてください!ひ、人がおそわれて……
「うるせーよ!そのでかい刀でどーにかしろや」
えへへ…これはハッタリで……そ、それよりはやく!きれいなお姉さんがあぶな……うぎゃっ!
「ケッ!早く言えよ!」「ゲヘヘ!」
……フン、デュランダルにバカで下劣な男は不要だ。
あんな魔法を使うなんて、あれも姉さんが言う上位悪魔なのか。どうやらこっちで正解のようだな。
(逃げた先で彼女が蹂躙したのと同類のゴロツキ2人にぶつかる。腹を殴られつつも、ヘタレの演技を続けて助けを求める。確かにこのナリで臆病者というのも無理があるが、そこは「心折れた冒険者」で通す気だ。イメージするのは同じく心折れたクレア。こんな形で憧れの人を模倣するのも滑稽だが……何はともあれレドに下心を煽られたゴロツキどもはエルフリーデの方へ向かってくる。
突き飛ばされて尻餅をつきながらも、彼女の方へ誘導した餌……ゴロツキの背を見ながら、元の怜悧な顔で呟いて。魔法と女自体の正体を察すると、今回の依頼を受けて正解だったと確信した。第一王子派の政治屋に言われるままアリシアを裏切るなんて恥知らずと後悔もしたが、あんな悪魔からアリシアを守るためには宮廷の助力が不可欠だ。)
ま、今は逃げるが勝ちさ。
(あんな魔法まで使って狙われた以上長居は無用。慌てたふりでさりげなく顔をガードすることで殴るよう仕向けた腹をさすって立ち上がって。あの女の相手はゴロツキどもに押し付け、自分は敵が襲えないよう通り沿いにギルドまで走って。)
>975
あらぁ…逃げられてしまいましたか。ま、仕方ありませんねぇ。代わりの玩具を貰ったことですし、これで我慢しましょうか。
(詠唱を中断し、今更追うには既に相当な距離が空いてしまったレドの後ろ姿をエルフリーデは物欲しそうな瞳を向けながら見送った。魔法の発動前に射程圏外に逃れられる勘と脚力、逃した獲物の大きさに後悔しつつも気持ちを切替える。ジリジリと迫り来るゲスな顔を浮かべたゴロツキ達を前にして、新たな玩具を手にした喜びからエルフリーデは舌舐りをする。その数秒後にはこの通り一帯に男達の絶叫がこだました。)
ふんふんふ~ん♪ふふ~ん♪……うぐっ…すみません…お怪我はありませんか…?
(いつもの如くギルドの食堂で酒を浴びる程飲み、上機嫌なクレアは可愛らしい鼻歌を奏でながら帰路に着いていた。千鳥足で、大きく身体を揺らしながら歩く様はまさしくアル中である。そんな状態の彼女が薄暗がりの中から走ってきたレドを避けられる訳もなく、ぶつかった衝撃で鈍い声を漏らしながら地面に倒れた。酔いのせいで起き上がることも出来ず未だに地面に伏したままレドに顔を向けると、真っ先に自分の不注意を詫び、おそらく心配されるべき容態はクレアの方なのだがそんな事は差し置いて、心配そうな眼差しで怪我がないか尋ねた。)
>976
(どうにか帝国の女を撒いたようだ。自分が送り込んだゴロツキの悲鳴にむしろ安堵を抱きつつギルドへ走る。今日は戦いを避けられたが、いずれ昨日の副団長のように敵として立ちはだかるだろう……自らに課された試練の重さに気を取られていると人がぶつかってきた。さっきまでの臆病者の姿は見る影もない、元の荒くれとして相手を睨みつけて。)
ぐっ!どこ見て……ケッ、これだから酔っ払いは嫌いなんだよ。酔っ払いの分際で手貸してもらえるなんて思うなよ。冒険者なら自力で立つんだな。
……まったく、イカれた副団長に野蛮な帝国兵、お次は世話の焼ける飲んべえと来たか。昨日からろくな出会いが無い……
(気が付けば革鎧と剣を纏った冒険者の女が地面に伏している。しかも……漂う酒臭さ、冒険者と思えぬ見苦しい姿に顔をしかめると、手を貸すことも無く酔っ払いを睨みつけ、自力で立てと吐き捨てて。さりとて足蹴にするでも捨て去るでも、体よくお持ち帰りするでもなく、ブツブツ愚痴をこぼしながらも周囲を警戒し、酔っ払いが立つのを待っており。薄暗がりに酔い潰れた女、さっきの帝国兵やゴロツキのような連中の格好の餌食である。そんな目に遭わせるのは忍びないのだろう……このどこか優しい酔っ払いの女が。)
>977
んぐぅ…!えへへ…ご心配お掛けしました。なにやら急いでいたようですが…この先に何かあるんですか?
(身体に力を込めるものの、アルコールに毒された身体はまるで言うことを聞かない。やむを得ず、腰に携えた剣を鞘ごと外し杖代わりにすることでクレアはやっと立ち上がることができた。自分の醜態に小恥ずかしそうに頬を掻くと、ぺこりと一礼して。デュランダルほどの先進都市と言えどこの時間の治安は決して良くはない。手は貸してくれないものの、目の前の青年が自分を心配して見守ってくれていることにクレアは気が付いていたようだ。そして、その気付きと同時に一つの疑問が浮かんでいた。ここで時間を潰せるということは青年は時間に追われて走っていた訳ではないのだろう…ならなぜ走っていたのか、それはこの先で何かトラブルがあったからではないのかと。そこまで思い至ると、さらに足止めしてしまうことを申し訳なく思い苦笑いを浮かべながら真相を問いかけた。酷く酔っているとは言え一流の冒険者、危機管理能力までは喪失していないようだ。しかし、見事な推理をしてみせたものの格好は付かない。当然ながら剣は杖として使われることを想定した作りではなく、剣に体重を預けていては安定しないのか終始クレアの身体はぷるぷると震えているからである。)
>978
「えへへ」じゃねーよ!まったくもう……この先は危ないんだぞ。往けば月夜の野原に天からエルフが舞い降り襲い来る。来れば路地裏から地獄から悪魔の手が迫り来る……ウソじゃない。この街の夜はホントにそんな事が起こる魔境なんだ。
アンタもそのくらい分かってるだろうにこんな暗がりで千鳥足なんて。彼氏にフラれたか?俺はお断りだぞ。俺は酔っ払いの女にいい思い出が……!
(この先の危険を察知する酔っ払いのカンの良さに眉のシワを寄せて驚く一方で、立ったはいいが足取りも覚束ないのに能天気な酔っ払いに呆れ果て、声を荒げて。この先にいかなる危険が待ち受けているか、ウソみたいな実体験を交えながら語るレドは目の前の酔っ払いを直視せず、腕を組んだまま横向きでいる。泥酔した女に良い思い出がないから直視したくないのだ。酔っ払い……クレアから見て左向きに立っているので、独特の中性的な横顔やポニーテール、そして黒装束の腰に帯びる赤く長い東刀の鞘が良く見える。どこかで見たことがあるかもしれない。
この様子でこの先を行けばあの帝国兵に狩られてしまう……結局俺が面倒見るしかないのか。その前に説教してやろうと酔っ払いに向き直ってその全身を見ると急にビクッと硬直する。何か思い出したのだろう。そして取り返しのつかない事をしたと……さっきまでの勢いが急に消え、顔が恐怖で凍り、身体もビクビク震えて怯えている。なんとか声を絞り出すと、ブルブル震える指を恐る恐る指しながら、尋ねて。)
あっ、ああっ……それに「えへへ」って、まさか……
あっあの、アンタの、あっいや、貴女様のお名前は…………
>979
(苦笑いを浮かべレドの小言と注意に耳を傾けながら、その特徴的な出で立ちからつい最近どこかで見たような…と記憶を辿る。しかし、答えに行き着く前にレドの放った一言で思考は遮られた。「彼氏にフラれたか?」、最悪の形での失恋を3年余り引き摺っているクレアにとって、この言葉は古傷を抉るのに十分であった。意思に反して涙が溢れてくる。酒のせいで感情が制御出来ないせいもあるのだろう。遂にはかろうじて保っていたバランスも失い膝から崩れ落ちた。)
えっと…ごめんなさい。私の名前…ですか?クレアっていいます。その…大丈夫ですか?…やっぱりどこか痛めたんじゃ…
(不幸中の幸いと言うべきか、地面に座り込んだことで空いた両手で涙を拭う。きっと相手の目線では小言を言われただけで泣いたように映るのだろう…自分でも情けないなと思いつつ、またも晒した醜態を詫びて質問に答えた。しかし、やっと感情が落ち着いてきた所でレドの異変に気が付くと、声や身体の震えから、ぶつかった時にやはりどこか痛めていたのではないかと心配し、ここでも自分のことは二の次に心配そうな眼差しを向けて。)
>980
く、クレア……不死鳥で、首席殿で、ライデン家の……
ヒエッ!!!クレア様とは知らずに、もっ、ももももうし訳!!!ああ……い、イキってすんません……は、腹切っておわびを……
(ついに立てなくなり泣き崩れる酔っ払いの、涙に濡れて輝くサファイアの瞳、暗がりでも輝く金色の髪、自分と同じ、いや自分が真似したポニーテール、そして何より「不死鳥」のエンブレム……そして「クレア」の名を聞いたレドは全てを悟った。目から涙がこぼれ落ちたかと思えば突如地面に膝をつき、クレアの前に自らの長い東刀を置くと、土下座、いや、五体投地で倒れ伏し……たかと思いきや今度は震える声であぐらをかき、腰からナイフを取り出して。よりにもよって憧れの人を人前で侮辱して、「彼氏」という古傷まで抉ってしまった。エリーゼに教えたように、剣士を辱める行為は万死に値する。責任を取らなければ……と、虚ろな顔でうわごとを吐きながら、切腹を始めようとして。もう完全にパニックに陥っており、ちっとも大丈夫では無い。)
>981
ええと…詳しいんですね……そ、そんなことよりも落ち着いてくださいっ!気にしていませんから…!それに…命で償われても困ります…
(先程まで小言を言っていた初対面の男が、自分の経歴や家柄を呟いたかと思えば豹変して腹を切ろうとしている。その光景を前にしてクレアが抱いた感情はある種の恐怖と困惑であった。顔を引き攣らせながらも、何も無為に命を捨てることはないと必死に宥める。レドの変わりようには皆目検討も付かないが、目の前で失われようとしている命を放っておけるほどクレアは冷酷ではない。その意志を行動でも示すべく、身を乗り出し、酒に毒されてぷるぷると震える手でナイフを持ったレドの腕を掴んだ。)
>982
あっ…………す、すみません。取り乱してしまって……「不死鳥の翼」のクレア・ライデン様ですね。高名な貴女にひどい真似をして、なんてお詫びしたら……
俺は……いや私はBランク冒険者のレドと言います。あっ、苗字はないです……農民なので。
(腹を切る腕を震える手で掴まれたことで落ち着きを取り戻す。強いだけでなく優しい、その姿にどれほど憧れたことか……今さら聞くまでも無いが酔っ払い、否、クレア・ライデンの素性を確認しつつ、地に両膝をつけ、その膝に手を置く座礼で自己紹介して。非礼を働いた申し訳なさでおずおずしているが、姿勢自体は一介の冒険者に取る礼にしては度が過ぎている。どうもこの青年にはクレアが聖教国の聖女様のような貴人に見えるらしい。)
>983
お詫びなんてそんな……あ、じゃあ…立ち上がるのを手伝って頂いてもいいですか?レドさん。
(恭しい態度を取られることに慣れず苦笑いを浮かべながら、詫びはいらないと丁重に断ろうとするものの寸手のところで思い至る。事情は分からないがこんなにも自分に敬意を払ってくれている人間から詫びの機会まで奪ってしまうのは却って残酷ではないのかと。握っていた手を離すと、申し訳なさそうにそのまま差し出して、立ち上がる補助をお願いしてみせた。その仕草、表情までも昨晩のアリシアとそっくりで、やはり近い親類だけあってそうした所作も自然と似るものなのだろう。最後に相手の顔を見つめながら教えてもらった名前を早速呼んでみて返事を待つ。「農民」というワードに少しだけ心が騒めくが、きっと関係の無い集落だろうと自分に言い聞かせて、その心の憂いを掻き消すがごとく少しばかり無理をして笑顔を作った。)
>all
こーんちはー、っと。なんか、楽して稼げる依頼来てないかい?なーに、今日と明日の飯代くらい稼げりゃいいんだけどなー。どう?ちょうどいいのない?
(ギルド内の依頼仲介所。シャラシャラとスケールメイル特有の音をさせながら、めぼしい依頼がないか探しにやってきた。背中には、紋章の入ったマントを纏い、騎士然としたいでたちとは似つかわしくない軽口で受付に話しかけている。)
(/参加させていただきます。よろしくお願いします)
>984
はっはい、もちろんです!さぁ……そうか、聖教国の依頼から戻られていたのですね。同じ国の剣士としてずっと貴女に憧れておりました。こうしてお力になれること、光栄に存じます!
(さっと刀を差し直すと、差し出された手を握るのはもちろんのこと、片方の手はクレアの腰を支え一緒に立ち上がって。昨日と比べて女性への抵抗が減ったのは愛する人が出来たからか、満身創痍のクレアを助けたい気持ちが強いのか、あるいは遥か昔にこの人がもう自分の手に届かない存在と知っているからか……とにかく案外すんなりクレアを立たせられた。
流石に憧れの人に接触しては緊張して身体に力が入るが、それでも紅潮した顔とキラキラした瞳をクレアに向け、昔から憧れていたことを語って。それにしてもさっきまでとは正反対の礼儀正しさである。長い刀の扱いといい、何かしらの形で剣士として社会に出るための教育を受けてきたようだ。)
>986
ありがとうございます。えへへ…面と向かって褒められると少々気恥ずかしいですね。
(手の握り方、腰への手の添え方からは一切のやましさは感じられない。まるで騎士のような紳士的なエスコートに安心し、クレアはそのままレドに身体を預けて礼を言った。「憧れ」なんて言われたのはいつぶりだろうか、慣れない賞賛に頬を赤くして、上目遣いでレドの顔を見やると重ねての礼の意味も込めてニコッと無邪気な笑みを向けた。)
しかし困りましたね…この先に脅威があるならば今日は帰れそうにありません。となると…朝まで呑むしかないようですね!レドさん、行きましょう酒場へ!あ…勿論無理にとは言いません。お忙しいようでしたらその辺に捨て置いて頂いて構いませんので…
(レドの来た道に脅威があるということは即ちクレアの帰路が封じられたことを意味する。どうしたものかと小首を傾げて思考に耽ると、しばらくしてアル中らしい解答を導き出した。帰れないなら夜が明けるまで呑めばいい。レドが付き合ってくれるなら時間が過ぎるのはあっという間であろうと。瞳を輝かせて、この位置からでも見えるギルドに程近い酒場を指差すが、ふとこれは憧れと罪悪感を盾にした強制ではないかと思い至る。声のトーンを落として、あくまでレドの意思を尊重する旨を伝えるものの、一度入ったアル中スイッチのせいか、話の最中にも欲しいものを前にした子供のようにチラチラと酒場に視線を送っていた。)
>987
え、ええっ!さんざん無礼を働いたのに身体を預けていただけるばかりか共に飲み交わせるなんて……!クレア様、首席殿で不死鳥の貴女と語らえること、剣士としてどれだけ夢見た事か……!う、ううっ……!とにかくこの先はタチの悪い奴が暴れてて危険です。今日はここで泊まった方がいい。早速行きましょう!
(思わぬお誘いに感激して子供のように泣き出して。名門で首席補佐官でSランク冒険者。レドのような一介の冒険者は飲み交わすどころか一目会う事すら叶わない相手だ。それもさっき酷い事したのにここまで信頼してくれるなんて。本当に聖女様のよう……実際今のクレアの状態でこの先を進むのは危険だ。提案通り憧れの人を抱きかかえたまま酒場へ歩くが……)
あっあの、クレア様、大丈夫ですか?今日はもうギルドにお泊りになった方がよろしいのでは……
(最大の懸念を涙に濡れた困り顔で尋ねて。この状態でこれ以上飲ませていいのか、顔色からは明らかに不安が見える。憧れの人を抱いても冷静でいられるのは心配の方が先に立つからであり、逆に言えば酔い潰して何かしようという気は一切感じられないのであった。)
>988
だ、大丈夫です…!まだ飲めます!
(流石に泣かれるとまで思っていなかったのか、クレアは反応に困り苦笑いを浮かべると、続いて問い掛けられた懸念には語気を強めて「大丈夫」と強調した。レドを真っ直ぐに見据えたその瞳には必死さが感じられる。勿論、クレアの体質や健康上のリスクなどを考慮すれば全く以って大丈夫ではなく、今日に至っては既に相当量の飲酒をしているため泥酔どころでは済まない可能性が大いにあるのだが、一度アル中のスイッチが入ってしまったからには自分の意思では抑えが効かないのだろう。既に自分の足では酒場に入れる状態にないため、今のクレアはレドに縋るほかにないのである。ここで止めるも飲ませるも全てはレドに委ねられていた。)
>989
あっいやもう飲まない方が……
「ハハッよお姉さん、そんなガキなんかほっといて俺と楽しく」
あ?しばくぞ……おっと失礼。夜のデュランダルは治安が悪い。俺もハラ減っちゃったし、早く中に入りましょう。クレア様。俺が貴女に相応しい人物かはさておき……今日ぐらいはお供します。
(これでまだ飲む気なのか……おねだりするクレアに困惑しつつも、ゴロツキ、先の帝国兵にやられたのと同類が近寄ってきたので、一瞬元の荒くれの眼光と怒気を男にぶつけて。ゴロツキが怖気ついて逃げ去ると元の紳士的な青年としてクレアに向き直り、苦笑いを浮かべながら酒場の入口まで歩くと扉を開いて。酒に溺れる傷心の未亡人、デュランダルに巣食う悪い男の格好の餌である。いつまでも外にいるのは危ない。それこそ昨日のアリシアのように徹夜で介護する決意である……自分が決してカルロスの代わりになれないとしても。)
>990
わぁ…レドさんがいれば安心ですね。ふふっ。
(揉めることなく、手早く輩を追い払ったレドの手腕を目にして思わず感嘆が盛れる。下心のない、安心して身を任せられる異性と最後に触れ合ったのはいつ頃だろうか…なんて考えながら、思ったことをそのまま言葉に出してレドを称えると可愛らしく微笑み、エスコートされるまま店に踏み入った。)
さ、お礼に何でもご馳走しちゃいます!好きな物を頼んでくださいね。う~ん…私はウイスキーの水割りにしましょうか。
(席へ着くとメニュー表をレドに差し出し、助けてくれたお礼にご馳走すると告げて。実際にはそれは建前で、この感情はまるで弟への可愛がりに近いかもしれない。周囲への冷たさとは打って変わって自分に懐いてくれているところ、ちょっと暴走気味なところ…そんなレドの姿をレイラと重ねていた。差し出したメニュー表の裏側のドリンク一覧に視線を向けてしばし考えると、クレアはウイスキーの水割りに決めたようだ。アルコール度数的に身体の状態を考えれば避けるべき部類ではあるが、水割りにしたのはきっと僅かに残る理性によるものだろう。)
>991
ごっごちそう!?そんな、俺ひどい事したのに……あっありがとうございますクレアさん、あっクレア様!えっ、えっとじゃあ俺もウイスキーの水割りに……つまみはえっとえっと……な、なんかオススメありますか?俺ずっと山に籠ってたし、ここは港町だし、魚介でなにか……
(クレアの対面に腰かけると、すっかり頼りにされ気に入られて舞い上がり慌てて注文して。優しい女性に可愛がられて奢られる。ああデジャヴだな。この人も俺を弟のように見ているようだ。それ以上の関係には進めないし進む気も無いが、今後も目にかけてくれるかは今夜の振る舞い次第。酒の頼み方からしてクレアさんも慎みを見せている以上、こちらも相応の振舞いを見せないと。こいつは立派な「面接」だ……と緊張して、クレアを支えている時以上に身体に力が入っている。酒は同じ物を頼むとしてつまみはどうすべきか、奢りだからと言って無節操に頼んだら意地汚いよな……と、そわそわした顔をメニュー表で隠しながらオススメをクレアに尋ねることにして。)
>992
あはは…そんなに畏まらないでください。オススメですか…うむむ……普段お酒以外頼まないので難しいですね…あっ、そうだ。マスター、このお店の魚介系の料理全部お願いしますっ!!
(強ばった様子から緊張を察して、自分に対する過大評価に苦笑いを浮かべながらも、レドがくつろげるように気遣いの言葉をかけた。その後、オススメを尋ねられるとクレアは悩ましげに小首を傾げる。酒が好きでというよりは、現実逃避の手段として酒に依存しているだけのクレアにとってつまみに特別に意識を向けたことはなく、普段通りの一人飲みに関してはそもそも酒しか頼んでいないのである。全く以ってこの店の魚介系の料理に覚えがない訳でもないが、テキトーに名前を上げるのも誠意に欠ける…そうして暫く思い悩んだ末にクレアはハッとした表情で衝撃の解答を導き出した。魚介系の料理を全て頼むという力技。もっとマシな選択があった筈だが、生憎今のクレアは自力で立つこともままならない酩酊状態、一見大丈夫そうに見えてもその思考回路が正常な訳がないのである。勿論少食なクレアが口にするであろう量は僅かであり、殆どレドが食すハメになるのだから新手のハランスメントと言えるだろう。店主は先に注文を受けたウイスキーの水割り二つをテーブルに置くと次なる注文を聞き届け、店の創業始まって以来の大仕事を前に、やる気満々な様子で厨房へと戻っていった。)
同時刻 第二騎士団執務室
ただいま戻ったのにゃ。
…おかえりなさい。
(レドとの打ち合わせを終えて自らの職場、第二騎士団の執務室へと戻ったエリーゼは席に着くと同時に未だ書類仕事に励んでいる同僚に帰還を報告した。その同僚こと副団長セリーヌはエリーゼに視線を向けることもなく、事務的にただ一言返すのみであった。その後はただひたすらに気まずい沈黙が空間を支配する。たまたまセリーヌの機嫌が悪いとかそういった次元の話ではない。エリーゼの就任以降、常にこの執務室には重たい空気が立ち込めているのである。騎士としての序列も経験も、指揮能力でさえも上回っているのに、たった一つ、剣の才だけで自分の座るべき地位を奪われたのだからセリーヌのその屈辱と恨みは計り知れないことであろう。エリーゼもそれを重々承知している為に掛ける言葉が見当たらないのであった。いつまでも慣れない重苦しい空気に嫌気が差し、エリーゼは視線をデュランダルの夜景へと移すものの、暗がりで鏡と化した窓に写るのは空気を読めない自分のにやけ面。抗い難い自己嫌悪に陥ったエリーゼは小さな溜息を吐いた。しかし、いつまでも現実逃避で夜景もとい自分の顔を眺めている時間はない。明日には王都に発つのだから引き継ぎは済ませておこうと、セリーヌに向き直り意を決して話しかけた。)
あ、あの…引き継ぎについてにゃんだけど…
不要よ。自分が何をすべきかくらい分かっているもの。此処での勤務はアンタより長いんだから。
それもそうにゃんね…えーと…
もう帰りなさい。明日は早いんでしょ?後はやっておくから。
あ、ありがとにゃ…しばらく騎士団をよろしく頼むにゃ。
(優秀な部下、それも自分よりも遥かに優れている人間を下に持つと却って扱いに困るものである。薄々予想はしていたが、意を決した引き継ぎをいらないと一蹴されてエリーゼは言葉を詰まらせる。気まずそうにモジモジと指を合わせて次の言葉を探していると、その様子を見かねたセリーヌは呆れ顔を向けて帰宅を促した。部下にマネジメントされては最早どちらが上なのかも分からない。自分の不甲斐なさを噛み締めながら、エリーゼは重苦しい笑顔で礼を言って席を立つ。いっそこの体たらくに恨み言の一つでも吐いてくれれば、むしろ当たり散らしてくれるならどれだけ楽なことだろう。勤勉なセリーヌは仕事に私情を挟まない。だからこそ、この溝が埋まる機会は決して訪れないのである。執務室の扉を前にして、去り際に「しばらく騎士団を頼む」なんて言ったものの、本心ではいつまでも頼みたい。不釣り合いな地位なんて捨ててしまいたい。決して吐けないそんな弱音を胸にエリーゼは帰路に着いたのであった。)
エリーゼと七席の関係性を書かせていただきました!エリーゼの自己肯定感が低い理由がここに詰まっています……七席が感情的な人間なら本心でぶつかって、やがて和解して…なんて展開も有り得たのかもしれませんが、如何せん彼女の人間性が真っ当なせいで心の溝が埋まる機会が訪れることがないのが辛いところです(^^;
>993
ヒェッ……こ、こんなどこにでもいるBランクの男のために……こんなおもてなし受けたの初めてだ……ううっ、ありがとうクレアさん……夢なら覚めないで……
(ぜんぶ!?前代未聞の注文に思わずメニューを落とすと、意図はともかく自分に対して目いっぱい接待してくれるクレアに感動してまた泣き出して。連日の政争や死闘で心身疲れ果てたレドにとって、憧れの人にここまでおもてなしをされることは最早夢に等しい光景であり、このままずっと泣いていそうな勢いである……)
>994-995
(/成り上がり者はつらいよ……レドなら「異論があるなら剣を抜け!」って凄んでそうです(そしてろくなことにならない))
>996
な、泣かないでください…!とりあえず乾杯しましょう…?
(突如泣き始めたレドをあたふたした様子で宥めると、気持ちを入れ替えさせるべく乾杯を促した。既にテーブルに置かれているコップの片方を手に取って突き出し、相変わらずの苦笑いを浮かべたままレドがコップを合わせるのを待つ。
クレアは今まで「尊敬」されることはあっても、何かする度に泣かれるような「崇拝」に近い感情を抱かれたことはない。そのためレイラに近いようで異なる新しいタイプに未だ適応できていないのだろう。その苦笑いが意味するのは若干の疲労であり、即ちレドの言うところの「面接」に於いて、ここで初めて減点が入った形になる。)
(/個での素質と集団での素質はまた違うので難しいところですよね…エリーゼはレド同様に個の素質に優れているので冒険者向けかもしれません(^^;)
>997
うっ、失礼……でもクレアさん、貴女とこうして飲み交わせることが本当に嬉しいです。では冒険者同士の新たな出会いに、乾杯!
(クレアが困惑している様子にはっとして涙をぬぐい、落としたメニューを拾って。いくら名高い「首狩り」様といえども血を見るのは好まないし、褒めすぎるのも巧言と捉えられて印象が悪いようだ。何事もほどほどに……咳払いして平静を取り戻すと、穏やかな笑みでおもてなしに感謝してコップを手に取る。クレアより低い位置でコップを合わせて乾杯し……水割りを一気に飲み干してグラスを置くと、満足げに顔を赤らめて一息吐いて。)
ふぅ……生き返る。
>998
かんぱ~い!いい飲みっぷりですね。いっぱい食べて、いっぱい飲んでください!
(相当仕込まれたのであろう礼儀作法に感心しつつ、レドのその飲みっぷりに目を見張った。クレアが一口飲んだ合間に既に空になったレドのコップに目を向けて、その飲みっぷりを称えると共に再度遠慮はいらないと告げて。そうしていると続々と注文した料理が運ばれてきた。刺身は勿論ソテーにカルパッチョ、様々な調理法で仕上げられた魚料理であっという間に目の前のテーブルが埋まり、終いには両サイドのテーブルすら運ばれてきた料理に埋め尽くされる。)
>999
ま、マジかよ、まるで宴会……いっいただきます!はむっ、むぐっ、うまい!うまい!うまい!ああ、デュランダルで冒険者やっててよかったっ!!
(テーブルを埋めつくす魚料理の数々。農民どころか、一般の冒険者でもこれほどの贅はお目にかかれないだろう。なんだか豊穣亭の料理より輝いて見える……すっかり目をキラキラさせたレドはフォーク片手にデュランダルの海の幸を片っ端から口に入れていき。味が淡白な刺身から味の濃いソテーに……なんて順番は一切考えず、目についたものを片っ端からもぐもぐと掘り進めては早速注文した二杯目の水割りで流し込む。連日の連戦で疲れ切った五臓六腑に、酒と魚が染み渡る。これぞ冒険者の生きがいだ!そんな風に興奮するレドの姿はもう獰猛な荒くれでも礼儀正しい紳士でもない、純朴な冒険者の青年といえるものであった。)
>1000
ふふっ、そんなに喜んでもらえると私も嬉しいです。
(食べ盛りの子は凄いなぁ…なんて思いながら、クレアは食べ物を頬張るレドの様子を微笑ましそうに眺めていた。クレア自身はというと食べ物には一切手を付けず、チビチビと手元の酒に口を付けるのみである。ただでさえ少食な上に、ギルドの食堂で飲んだくれていたせいで最早その胃には食べ物が入る余裕がないのだろう。そればかりか笑顔の裏で、酒を一口飲み込むだけで嫌な動悸を感じる始末である。いよいよ身体が発する危険信号を無視できなくなったクレアは休憩を兼ねてお喋りタイムへと移行することにした。)
レドさんはどうして冒険者になったんですか?
(食べ物を流し込んだタイミングを見計らって問い掛ける。初対面の冒険者同士がまずするであろう在り来りな話題。社交辞令や間が持たない時にこの手の話題を振ることは多いが、クレアは単純にレドへの興味からこの質問を投げ掛けていた。厳格な家で育ったかのような礼儀作法を備えた人間がなぜ冒険者をしているのか、クレアが言えたことではないが、そこに疑問符が浮かぶのは当然と言えるだろう。)
>1001
お姉さん水ちょうだい!ピッチャーでな。
レドさんなんてそんな……俺はただの農民ですよ。身寄りも無いし、騎士にもなれない。他に食う方法を知らなくて東刀(コレ)で稼いでる、よくいる冒険者のひとりってわけです……どうぞ。
(さすがに大分飲んでるクレアの体調は良くないようだ。クレアを差しながら店員に水を注文しつつ、苦笑いしながら素性を語って。もう「クレアに憧れて」は見れば分かると思うので、もう一つの理由「農民である以上他に選択肢が無いから」を、椅子に立て掛けた自分の長い東刀に視線をやりながら語って。
その間にも掻き込んで空けた一皿を店員に下げさせ、空いたスペースにコップと水差しを置かせる。自らコップに水を注ぐと、気分の優れないクレアに差し出して。クレアの疑問通りここまで気配りのできる冒険者もいないかもしれないが、本人は「いっぱしの剣士ならできて当たり前」程度にしか思ってないらしく、肝心の回答が出ることはなかった。)
>1002
そう…ですよね。すいません、変なことを聞いてしまいました。お水ありがとうございま……
(身分制度のあるこの国では生まれによって就ける職業が決まる。言葉が足りないあまり意図を伝えきれず、国民の中でも最下層の地位にあると言っても過言ではない「農民」と知りながらこの質問を投げ掛けてしまったことに自らの無神経を反省した。シュンとした表情で詫びを入れると、差し出された水を受け取り礼を言おうとしたところで流しそうになっていたレドの言葉を思い出す。「身寄りも無い」、この言葉で嫌な可能性が再び頭を過ぎる。レドの年齢で農村集落、そして身寄りがないとなると、あの弾圧の被害者の線が十分に考えられるからだ。次第にクレアの思考を支配したその可能性はトラウマを呼び起こし、受け取ったコップを床に落としたかと思えば、続けざまに胸を抑え、ガシャンという音を立ててクレアも椅子から転げ落ちた。心的要因と何年にも渡る節操のない飲酒によって既にボロボロな身体、この2つが合わさることで遂にクレアは限界を迎えたようだ。ハァハァと過呼吸に陥りながら、動悸の収まらない心臓を抑えて地面に伏している。)
>1003
なっ!クレアさん?クレアさんっ!しっかりして!ギルドだ、ギルドの医務室行きましょう……お勘定!
(突然倒れたクレア。その理由は知る由も無いがクレアの酒害がここまで進んでいたこと、何より地面に伏して苦しんでいる事自体にうろたえつつも、慌てて駆け寄っては倒れた彼女を抱えて。もうごちそうどころでは無い。まだ料理の残るテーブルにおそらく足りているであろう銭袋を置き、刀を差し直すと店を出ようとして。とにかくここから近いギルドの医務室に一刻も早く運ばねば……レドは焦りまくっていた。)
>1004
ごめん…なさい…
(朦朧とする意識の中、クレアは弱々しい声で謝罪した。折角の食事の席を台無しにしてしまったことに対しては勿論、かつて命乞いに聞く耳も持たず、自らが斬り伏せた農民達の幻影に。ピクリとも動かない身体とは裏腹にクレアの動悸は時間の経過と共に徐々に大きくなり、きっと抱き抱えているレドにまでその鼓動が感じられることであろう。生死の境と言っても過言ではない深刻な状況にあった。)
>1005
大丈夫、大丈夫ですからクレアさん。何も心配はいらない。さ、ギルドですよ。
(クレアを背負いつつ、急に衰弱した彼女に声をかけながら夜道を走り抜ける。また何か粗相したのかと気がかりに思いつつも、背中に伝わる彼女の弱々しい感触に哀れみを覚える。この三年、これほどにまで身も心も傷ついていたなんて、こんなことならもっと早く寄り添えばよかった。そんな後悔と、一農民が騎士の名門・ライデン家に連なる者を二度も背負って走る運命の奇妙さを胸に抱きつつ、ギルドの門を空けて。)
急病人だ!医務室!医者!早く見てくれ!
(完全に焦って全身に汗を吹き出しながら、受付に向かって叫んで。正直レドの手に負える状況ではない。今頼りになるのはギルドの医者しか思い付かなかった……)
>1006
(ギルドへ着く頃には既にクレアは意識を失っており、レドの背中でぐったりとしていた。騒ぎに気付いた気怠げな医者はその様子を見て溜息を吐きながらも、すぐに医務室へと誘導すると、クレアをベットに寝かせて診察と治療を行った。)
これは酷いねぇ。もう既に身体の内側はボロボロだよ。それに加えて何かの呪い…彼女の心臓に何重にも巻かれたドス黒い鎖が見える。おそらく力の代償の類いだろう、解呪は不可能だ。ただ、この呪いは今回の発作に因果関係はなさそうだねぇ。節操のない長年の飲酒と過剰なストレス、主な原因はそれだろう。医者の立場から言わせてもらうと、少しでも長生きしたいなら酒はやめるべきだろうねぇ。ま、そんなことをしたら彼女の精神が耐えられないだろうけども。起きたら聞いてあげなよ。酒をやめて廃人になるか、命を削りながら正気を保つか、どっちがいいかね。これにて私は失礼するよ、ハァ…今日はなんでか急患が多いんだ。
(医者は上位の治癒魔法でクレアの容態を落ち着かせると、魔力を込めた瞳で要因を見定める。まず目を見張ったのは心臓に取り憑く禍々しい呪い。「これは長くはないな…」とボソッと不穏な事を呟いてから呪いの概要を説明しつつ、今回の発作には因果関係がないと付け加えて。根本原因は飲酒とストレスであると断定すると、非情な選択肢を突き付けた。応急処置は出来ても、もはやクレアの身体は治癒魔法でどうにかなる域ではない。酒をやめて廃人になるか、命を削りながら正気を保つか、起きたらクレアに選ばせるようレドに言伝を託し、医者は背を向けて再び溜息を吐いた。クレアの少し前に、なぜか三人もチンピラが運ばれてきたせいで医者には余裕がない。既に出来る処置は終えたため、クレアのことはレドに任せて足早にその場を後にした。)
>1007
はぁ?呪い!?いったいなんでまた……おい待てよ!
……「酒をやめて廃人になるか命を削りながら正気を保つか」だと?なめやがって。聖教国の件でクレアさんに尻拭いしてもらったくせに!なんて雑な扱いだ……やっぱりギルドも頼りになりゃしないよ。俺がこの人に尽くすしか……
(治療もそこそこに、まるでクレアに寄り添うことなく足早に去る医者を睨みつけて。この前聖教国の司祭がギルドで無礼を働いた時、ギルドの連中は何もできずクレアさんが黙らせたと聞いた。それをなんて恩知らずな扱い……怒って地団駄を踏んで。それにしても「呪い」ってなんだろう。そういえば3年前、姉さんが正気を失ったクレアさんに余生がどーたらと叫んでたけどそれのことか?気がかりになりつつも、眠るクレアの側に椅子を寄せては腰掛けて。
医者の提言など論外である。どちらにしても彼女は死に急いでしまうから。どうせ今後クレアさんが倒れても今回みたいに対症療法だけして捨て置くのだろう。ギルドも彼女の事などどうでも良いようだ。冒険者の雑な扱いに顔を歪めつつも、自分がこの人を救ってみせると誓い、心身共にボロボロになり倒れ伏すクレアの手を静かに握り、穏やかな顔で誓って。)
……クレアさん、必ず貴女を癒してみせます。たとえ国中焼き尽くしても……そして俺が滅びることになっても!
>1008
…ん……ここは…あっ…!レ、レドさん…!本当にすみません…!あの…これ、今日の支払い分です。どうか受け取ってください…!
(小一時間程してクレアは目を覚ました。ぼーっとした頭で周囲を見渡せば見覚えのある光景が広がっており、ここがギルドの医務室であることはすぐに分かった。次第に意識が覚醒していき、手の温もりとその主に視線を移して、大方の状況を察することとなる。ご馳走すると意気込んだ挙句に途中で倒れて会計まで任せた…その事実に慌てふためいた様子で謝罪すると、すかさず普段から胸当ての中に忍ばせてある金貨を一枚取り出し、まだ温もりの残るそれを自身の手を握るレドの手に滑り込ませて。今日の会計分は勿論のこと、もう一度魚介フルコースを堪能出来る程の金額だが、これはクレアなりの誠意である。クレアの潤んだ瞳から、恐らく受け取らないなんて選択を取ればきっと彼女の気は済まないことであろう。)
>1009
あっクレアさん、よかった気が付いて……えっなにもそんな!当然のことしたまでで……ありがとうございます。大切に使います!
ヤブ……医者がとりあえず治療しましたが、今日はここで休んだ方がいいでしょう。たまにはゆっくり寝てください。付き添いますから。
(目を覚ましたクレアにほっとして声をかけると、彼女から金貨を渡される。その優しさと温もりに顔を赤らめ、素直に両手で受け取りありがたく胸にしまい込んで。疲れ切っているクレアを安心させようと再び彼女の手を握り、今日はここで休むよう穏やかな顔で伝えて。昨日のアリシアの時と同じように、今日も徹夜でクレアを見守る所存である。一見好青年のようだが、うっかり「ヤブ医者」と言いかけた時は一瞬眼の鋭い荒くれ顔に戻っていた。どうも医者の態度が気に入らなかったらしい……)
>1010
い、いえ…お礼を言うのはこちらの方です。その…では、お言葉に甘えて…
(金貨を受け取るなり礼を言うレドに、首を横に振って、ここまで世話になってむしろ感謝するのは自分の方だと告げて。そして、ここで休むように促され、さらには付き添うとまで提案されると、その抗い難い魅力にクレアは頬を赤くして了承した。普段は酒で誤魔化しているがクレアの心は繊細である。誰かが傍に居てくれる…それだけで彼女が安心を得るには十分であった。自身の手を握るレドの腕を無意識に手繰り寄せ、抱き枕のようにして瞳を閉じる。感じるのは心地良い温もりと罪悪感。もし頭を過ぎった最悪の可能性が真実ならば、クレアの心はきっと耐えられないことだろう。未だ真相を聞けずにいる自分の弱さを軽蔑しつつ、今はただ身体を休めることに専念した。)
>1011
ちょっ、クレアさん!?ま、まいったな……いいか、幸せそうだし。
……「己が持つ力を愛に使うか我欲に使うかは、人に委ねられた最後の選択肢だ。レド、おめぇは剣だけでなく心も磨け」か。師匠(オヤジ)、いまやっと実践できた気がするよ……
(クレアに自分の腕を抱き枕にされ、顔真っ赤にして。だがその興奮もすぐ安らぎに変わる。これ以上の関係になれない事は承知の上。憧れの人が自分の腕で癒されている、今のレドはそれだけで嬉しい。
クレアの温もりで落ち着き頭が整理されると、さっき帝国兵にやられていた輩がタチの悪いBランク冒険者だったことを思い出す。同じBランク、アイツも俺も紙一重の存在だが、幸い自分の方は今こうして傷ついた冒険者に癒しを与える存在になれたようだ。師匠の言葉を思い浮かべていると、椅子の中でウトウトしだして。憧れの人の体温を腕に感じていると自分まで眠くなる。これが、強く優しい理想の剣士の腕……)
あぁ、あったかいな……こういう人にこの国を導いてほしいなぁ……
(遠のく意識の中、うわごとを呟いて。目の前の憧れの人の、かつての所業を知らぬまま。)
>1012
…んっ…だめです…カルロス……こんな所で…もぅ…ばか…
(どれ程の時間が経ったであろう、医務室にはすっかり朝日が差し込んでいた。未だ心地良さそうに眠るクレアは、レドの温もりをカルロスに見立てて在りし日の過去を夢に見ているようだ。艶かしいその声色から見ている夢の内容は明らかで、カルロスという男は優男の見た目ながらなかなかのやり手のようである。ばかとは言うものの、カルロス(レドの腕)を抱きしめる力は一層強くなる。)
あっ!レドくん、こんな所に居たっすね!昨日からずっと探して……って何やってるんすか!浮気っすかッ!
(そこにタイミング悪く、近衛隊一の雑用係ことシエルが現れた。その口上から、指南役に関わる言伝を預かってレドのことを探していたようだ。何処を探しても見当たらない為、まさか怪我なんてしていないだろうと、駄目元で訪ねてみたギルドの医務室でレドを見つけたはいいものの、何やら女性の冒険者とイチャついている(シエル視点)。女性の艶かしい声からしておそらくは事の最中…レドがアリシアと一夜を共にした事は近衛隊である彼女からすれば周知の事実であるため、浮気現場に遭遇したと勘違いするのは仕方あるまい。ムスッと頬を膨らませて分かりやすく怒りを示すと、親友アリシアの為に声を張り上げて詰め寄った。)
>1013
………………やばっ、寝ちゃっ………なっ、んなあああっ!?
(気が付けばすっかり寝入ってしまい、差し込む朝の陽ざしで目が覚めると……憧れの人が自分の腕にしがみついて発情している!ああ、クレアは未だ亡き恋人に囚われているのだな、カルロスも意外と床上手だったんだな……と分析する余裕は剣一筋で生きてきたレドには無い。彼女の喘ぎ声と身体の感触に耐えるべく、汗の垂れる真っ赤な顔を片方の手で必死に押さえるばかりであり。)
ばっバカ野郎!病室だぞ!
(そこに見覚えのある顔・近衛隊のシエルがやってきて声を上げるので、顔を赤くしたまま静かに叫んで。病室で叫ぶという非常識に呆れつつも、肩の力が抜けてかえってほっとしており。亡き恋人の想い出に浸っている以上この腕は振りほどけない。さりとて未亡人に手を出す気の無いレドは彼女の艶かしい姿と声に必死で抗うしかない。だが今の騒ぎでクレアは目覚めるはずだ。シエルが現れなければ、彼にとっては拷問に等しい時間が続いたことだろう……)
>1014
それもそうっすね…って!そんなんじゃ誤魔化されませんよ!それに、そこの淫乱女っ!いつまで他人の男に抱きついてるんすかっ!
んぅ…ふぇ…?な、なんのことでしょう…
(ここは病室だと言うレドの忠言にシエルは一時納得しかけるものの、浮気現場にしか見えない光景を前にして平静を取り戻すことなど出来なかった。未だ頬を赤らめてレドの腕に抱きつくクレアを指差すと、そう見えるのも仕方ないが「淫乱女」のレッテルを張って糾弾を始める。あまりの騒がしさにとうとう瞳を開いたクレアは、目覚めと共に夢のことなどすっかり忘れ、状況が読み込めずに困惑した表情で首を傾げた。)
惚けないでください!レドくんとナニしてたんすか!
ああ…これはすいませんっ!恋人がいたとは知らず。その…なんと言いますか。凄く…固くて大きくて…抗いがたい魅力を感じてしまって、つい…
んなっ…!レドくんのサイズなんて聞いてないっすよっ!?
(惚けているようにも見えるクレアの態度にシエルは尚のこと腹を立てて、指した指をぶんぶんと振りながら問い詰める。クレアの方も寝起きの回らない頭で何とか目の前の状況を整理すると、自身がレドの手どころか腕にまで抱きついていることに気が付いて慌てて放した。きっと、目の前の女性はレドの彼女で、恋人の腕を抱き枕にして眠っていたことに腹を立てているのだろう…聖教国の意匠の入った剣から察するに、厳しい戒律を重んじる敬虔な信徒であるならば恋人に気安く触れただけで激高するのも無理はない…と、誤った解釈に行き着き、身を起こすなりベッドの上で正座をしてぺこりと頭を下げた。レドの腕を枕にしてしまったことを、誠心誠意、言葉を尽くして弁明しようとするが寝起きの語彙力では限界があり、これまた誤解を生む表現をしてしまう。そして、案の定言葉の意味を誤解したシエルは、あまりの衝撃と羞恥心に顔を真っ赤にして後ずさる。その様子を未だ怒りが収まっていないと捉えたクレアは顔を上げ、気まずそうな表情と視線でレドに助けを求めた。)
過去編「戦場の花嫁」
(政変から半年、共和制へと移行した反動でフリード共和国の国内情勢は混迷を極めていた。噴出した国民の不満を外へ向けるべく「王家に弾圧されている民衆の保護」なんていう大層な建前を掲げ、共和国首脳部が王国に対し宣戦布告を宣言したのがつい三日前である。初日こそ不意打ちじみた侵攻で優位に立っていたが、やはり兵力・経済力ともに勝る王国に分があり、たったの数日で共和国軍は王国の地を追いやられ、逆に越境される始末であった。そして今まさしく、ザルヴァド・ライデン率いる一団が国境付近の共和国の地方都市「ヴァルモン」を包囲していた。)
ハァ…いつかはこうなるとは思ってましたが、案外早かったですね。
始まってしまったものは仕方あるまい。我々がすることはただ一つ、勝利を決定的なものとして敵の戦意を挫くだけだ。
(都市を一望できる丘の上で、ザルヴァドと副官は攻撃準備が整うまでの間雑談に興じていた。ヴァルモンの街並みは辺境の都市ということもあり閑散としており、聖教会の立てた一際大きな教会だけが異様な存在感を放っている。今回の戦に聖教国は中立を表明しているが警戒するに越したことはない。介入の口実を作らない為にも教会への被害を最小限に抑えるべきだろうと、雑談の傍らにザルヴァドが作戦を思案していると、風に乗せられて、耳触りの良い鈴のような声色の歌が聞こえてきた。古代語で紡がれるその歌が何を意味しているかはまるで分からないが、不思議と耳をすまさずにはいられない魅力が感じられる。名残惜しくも歌声が聞こえなくなった頃、上空に都市を覆う程に巨大な魔法陣が現れ、そこでようやくその場の全員が、歌の正体が魔法の詠唱であったことに気付かされた。)
伏せろッ…!
(ザルヴァドは叫ぶ。それと同時に魔法陣から剣を模した光の雨が降り注ぎ、都市諸共王国の軍勢を一掃した。攻撃が止み、舞い上がった砂塵が落ち着いた頃に姿を見せたのは瓦礫の山と化した都市と、無数の死体と負傷者。今この都市周辺で立っているのは二人だけ、並外れた反射神経で攻撃を躱したザルヴァドと、崩れた教会の中から姿を現した女の司教。魔法の発動者は此奴に違いない…そう確信すると、少なくない仲間を失った怒りに拳を握り締めて司教を睨み付け、司教もまたこちらに気が付いたのか振り返ってザルヴァドに視線を向けた。その瞬間ザルヴァドの中の怒りは消え去り、代わって初めて抱く感情を自覚する。神々しさすら感じる白い祭服に同系色の白髪。日差しを遮る建物が全て倒壊したことでそれらは一層輝いて見えた。「天使が…舞い降りた…」そう呟くと、ザルヴァドは丘を下り、一心不乱に彼女目掛けて走った。なぜ教会が攻撃に踏み切ったのか、本国の意思が働いているのか、考えるべきことは山ほどあるのだが、今はそんなものはどうでもいい。ただ彼女と言葉を交わしたい。溢れんばかりの気持ちを胸に、ものの数十秒で教会の跡地に辿り着くと、ついに二人は対峙することとなる。)
まだ動ける人間がいたとは…恐れ入りました。王国の野蛮人ともなると生命力もお強いのですね。
結婚しよう。
(仕立ての良い祭服に、身に纏う魔力の性質。彼女こそがこの国の枢機卿であることをザルヴァドは一目で見抜くが一切動じることはない。しばらくの見つめ合いの末、先に口を開いたのは枢機卿ことレティシアであった。穏やかな口調とは裏腹に、心底軽蔑した眼差しを向けて皮肉交じりの賞賛を述べる。彼女は聖教の信徒である前に一人の共和国人であり、王国へ恨みや偏見を抱いているのは当然であろう。今回聖教国の意思に反して攻撃に踏み切ったのも彼女の独断であった。そんな敵愾心丸出しのレティシアを前にして、ザルヴァドは片膝を着き、真剣な面持ちで衝撃の一言を放つ。)
……え?は…?い、意味が分かりません…!なぜそうなるのですか…!?
結婚とは男女が生涯を共にする契りを交わすことで…
そんなことは知っています!そういうことではなくてっ!今しがた私は貴方の仲間を大勢手にかけました。そんな相手に求婚するなどとても正気とは思えません!
(初対面、敵同士、それも第一声でプロポーズするなど正気の沙汰ではない。ある種の狂気すら感じる行動を前に枢機卿たる威厳はどこへやら、レティシアはすっかりたじたじになっていた。意味が分からないという言葉を文字通り受け取ったザルヴァドは表情を変えず淡々と結婚の意味を説明するが、彼女が言いたいのは当然そういうことではない。首をぶんぶんと振って、仲間の仇に結婚を申し込むなど有り得ないと、至極真っ当なツッコミを入れた。)
ならば失った命の数だけお前が産めばいいだろう。
なっ…!?そんなに産めるわけないじゃないですか!野蛮人は発想も野蛮なのですねっ!私の身体が目当てなんですかっ…!?
一目惚れだからな、突き詰めればそうなる。で、何人なら産めるんだ?
二人くらいなら…って何を言わせるのですか!そもそも私の純潔は神に捧げるものであって、断じて貴方などに…
そうか…じゃあ信仰を捨てろ、そして結婚しよう。これで解決だな。
(尚もザルヴァドは臆することなく常軌を逸した発言を続ける。奪った命の数だけお前が産めなど、到底まともな倫理観を持った人間からは出ない言葉であろう。恋は盲目と言うが、ここまで来ると狂信の域である。狂信者と狂信者、後のおしどり夫婦なのだから皮肉にもこの時点で既に相性は良かったと言える。ザルヴァドが運命を感じたのも必然であった。瓦礫と死傷者が散乱する凄惨な戦場の真ん中で、その場に似つかわしくない漫才はしばらく続いた。)
あぁ…もうっ!埒が明きません。分かりました…どうせ今日が貴方の命日となるのです。その戯言を聞き入れましょう。貴方が勝てたらですけどねッ…!
(どこまで行っても平行線…というよりは話が通じないことに痺れを切らしたレティシアは実力行使に打って出た。元より王国の軍勢など一人とて生かすつもりはなかったのだ。戯言など適当に流して最初からこうすれば良かったと、無駄な時間を浪費したことに苛立ちを感じながら無詠唱で魔法を放つ。先程の大魔法の簡易版、しかし規模こそ小さいとは言え数百の光の剣がノータイムでザルヴァドに降り注いだ。並の人間であれば為す術なく細切れになることであろう。枢機卿たる超越者にのみ許された理不尽。レティシアは勝利を確信して微笑んだ。舞い上がった砂塵が次第に落ち着きを取り戻し、その先には肉塊…となっている筈のザルヴァドがなんの気なしに立っていた。手には剣が握られており、それは即ち数百発の光の速さの攻撃を全て見切った上で捌いたことを意味する。その現実を見てレティシアは「は…?」と再び間の抜けた困惑の声を漏らす。)
話が早くて助かる。では、次は俺の番だな。
…ちょっ…まっ……うぐっ…!
(勝てば結婚。随分とシンプルに話が纏まったものだと、ザルヴァドの脳内は歓喜に支配されていた。口角を二ッと吊り上げ、ここで初めて笑顔を見せる。まるで獲物を前にした捕食者のような顔に、レティシアは恐怖して半歩後退った。ザルヴァドは傷付けることなく花嫁を迎える為に剣を鞘に収めると、瞬く間に距離を詰め彼女の腹に目掛けて拳を突き出す。これにさすが枢機卿、未だたじろいでいるもののしっかり攻撃に間に合わせ、生み出した魔力障壁で攻撃を受け止める。しかし、既に大魔法の発動で相当量の魔力を消耗しており、目の前の捕食者を止めるには強度が不足していた。バリンと音を立てて障壁は砕け散り、拳が腹にめり込むとその衝撃から痛みを感じる間もなく気を失った。)
うむ、実に清々しい気分だ。まさかこんな場所で運命の出会いを果たすとは。失った同胞達には申し訳ないが…俺は俺の幸福を追求するとしよう。元よりあのような攻撃、防ぎようがないのだ。こうなる運命だったのだと割り切るほかにあるまい。それに、無礼を承知で言うならば失った戦力は彼女一人で十分に補完できる。否、補完どころではないな…払い値の倍額で釣りが来るようなものだ。しかし、気持ちが昂るあまりすっかり失念していた。まだ彼女の名を聞いていないではないか…帰ったらまずは互いに名乗ろう。
(レティシアが倒れる前に先回りして、お姫様抱っこで迎え入れる。ザルヴァドは己が腕に天使を抱いているという事実に、まるで天井知らずの高揚感に浸っていた。そのまま後方部隊と合流すべく歩みを進めながら、報告を取り纏める為に此度の損失について思考する。ハッキリ言ってしまえば失ったものよりも得られたものの方が遥かに大きい。個人的な感情を抜きにして、戦力的な一面だけを見ても枢機卿クラスの大司教というのはそれ程の価値があるのだ。人の上に立つ者としての冷酷な勘定を終えると、ザルヴァドはハッとした表情で天を仰ぐ。ザルヴァドは気持ちが昂るあまり、レティシアは勝利を確信するあまり、方向性は違えど、どちらも目の前のことのみに気を取られて名乗っていなかったのである。斯くして、互いに名前も知らぬまま、ここに一組の夫婦が誕生したのであった。)
少々長い文章になってしまいましたが、クレアの両親であるザルヴァドとレティシアの馴れ初めを書きました!自分で書いておきながら、この両親からまともな感性を持つ子が生まれて良かったと思います…
ちなみにクレアの素の口調が敬語なのは母親の影響です。
>1015
……ああもう……この駄犬が。
(……ダメだこりゃ。いったいどんな会話してんだよ……顔を手で覆い、天を見上げて呆れ果て。とにかくこのバカ、シエルがいる限り収拾がつかない。腕の拘束が解け自由になったレドは立ち上がり。)
あークレアさん、楽にしててください。この大バカをシメてきます……身の程を弁えない駄犬には、教育が必要です。
(正座するクレアを制しつつ、シエルの背中を片手で引っ掴んで持ち上げると、廊下へと向かって。顔を強張らせ、髪を逆立てる怒りの表情からはまるで悪魔のような殺気が溢れている……)
>1016
(/こ、これは団長が一目置くのも当然か……S級クラスの騎士の父に枢機卿の母、クレアもとんでもない血統だなぁ……二人ともクレアの親とは思えないくらい、なんかおかしいですけど。特に父親……)
>1018
えーと…わ、分かりました…
レ、レドくん…?顔が怖いっすよ…?騒いだことは謝りますから…痛いのだけはやめてくださいね…?
(レドの気遣いに頷き脚を崩すと、クレアは心配そうな面持ちで二人の背中を見送った。クレアは未だ二人が恋仲にあると誤解している為、シエルの身を案じながらも下手に口を出すべきではないと判断したのだろう。一方でシエルは、レドの殺気に完全に萎縮して、まさに飼い主に叱られることを察した犬のような状態である。その困惑が感じられる青ざめた表情から、何を反省すべきなのか未だ理解していないことは明らかだが、恐怖で抵抗する気すら起こさず成されるまま連行される彼女に出来ることは必死の命乞いのみであった。)
(/クレアの父親は直情筋肉ダルマなので、一言で言えばバーサーカーですね…一方で母親は典型的な聖教の信徒らしく特定の相手を除けば基本的には温厚です。父親の強さと母親の容姿・内面を上手いこと受け継いだ結果がクレアになります(o^^o))
>1019
まったく……とりあえず、あの夜の襲撃から無事生還できて嬉しいと言っておこう。シエル。
だがな、お前は謝らなきゃいけない。俺にじゃなくて、あの人に……Sランク冒険者・「不死鳥の翼」のクレア・ライデン様にだ!
(シエルを引っ掴んだままズンズン廊下を歩き、人気のない所でシエルを下ろして壁を背に立たせて。再会を喜びつつも、腰に手を当て困り顔で説教を始めて。さらには顔をずいっと近づけるとクレアに謝れと迫って。その顔は殺意より呆れが強く、犬の飼い主というより子供を叱る母親のようである。)
>1020
レドくんこそご無事でなによりっす…一時はどうなる事かと…ってクレア・ライデンってあの…!?で、でも…何を謝れと言うんですか…相手が誰だろうとアリシアちゃんを差し置いてほかの女とイチャつくなんて到底許せないっす!むしろレドくんの方こそアリシアちゃんに謝るべきっすよ!
(再開の喜びにシエルも同様にほっとした様子で返すも、クレアの名を聞いて目を見開いた。騎士団においてクレアの名を知らない者などいない。ましてやシエルにとって、親友であるアリシアと縁のある相手なのだから尚のことである。しかし、相手がクレアだから何だと言うのだ。浮気は浮気、アリシアの為にもここは自分が間違いを正さなければならない。そう覚悟したシエルは先程までの怯えを振り払い、真っ直ぐにレドの瞳を見据えて抗議した。誤解とは言え、真っ直ぐな心魂の持ち主であるシエルは親友の為に本気で怒っていた。まずは誤解を解かないことにはクレアへの謝罪はないであろう。)
>1020
イチャつく……?……俺の手など、あの人には届かん。
(怒りに震え浮気を問い詰めるシエルに対し、レドはその怒りを流すかのごとく、何も知らぬシエルを哀れむがごとく、ただ無表情で溜息を吐いてシエルの脇を通り抜け)
クレアさんは3年前に恋人を亡くされてな。それ以来酒浸りの毎日だ。これは冒険者なら誰でも知っていること……今のも倒れたクレアさんを介抱していただけだ。
……「淫乱女」か。むしろそうであった方が俺も憧れなくて……あの人も幸せだったかもしれない……
(力なく廊下をゆっくりと歩いては、ぽつぽつとクレアの過去と今朝の事情を話して。窓の前に立つと両手を後ろに組んで外を眺めつつ、クレアも「淫乱女」である方がよかったと呟いて。あの人は今も亡き恋人、いや半身の幻影に囚われている。そしてこれからも……そんな憧れの人を男として抱くのは不可能だが、その姿を捨て置くこともできない……残酷な運命を悲しむレドの横顔を伝う涙が、窓から漏れる朝陽でキラキラと輝きを放っており。)
>1022
三年前に…恋人を……?…その…ごめんなさい。私…そんなことも知らないで、浮気なんか疑っちゃって…酷いこと言って…後でクレアさんにもちゃんと謝ります……あ、あの…こんな雰囲気で言うのも気が引けますけど…戻る前にレドくんへの要件を先に伝えてもいいっすか…?内容が内容なんで、部外者に聞かれる訳にもいかないので…
(事情を聞くなりシエルは暗い表情で俯いた。レドの涙からこれは嘘ではないと確信すると、自分の犯した軽率な行動を振り返り、罪悪感に胸が締め付けられるような感覚に陥る。何とか自分まで泣くのを堪えて言葉を紡ぎ、浮気と決めつけて詰めたことをレドに謝罪すると、勿論、酷い暴言を吐いてしまったクレアに対しても後ほど謝罪すると誓った。そして、顔を上げると潤んだ瞳のまま彼女は自分の職務を遂行しようと言葉を続ける。こんな雰囲気で切り出すのも気が引けるが、本来ここへ来たのは指南役に関わる重要な言伝を預かっているからである。空気を読めていないことは承知の上で、人気のない場所にいる今だからこそ話を切り出した。)
>1023
ん……分かればいい。
(潤んだ瞳で誤解を謝罪するシエルに向き直ると、心底ほっとした顔で彼女の肩をポンと叩き。)
内容?……下手に他の冒険者に聞かれたら殺し合いになる事……指南役の件だな。
(辺りを見回しながら人気の無いのを確認し、シエルの正面に立って。灰色の瞳は涙で輝きながらも静かにシエルを睨み、声は冷たく、閉じた口は真一文字に結び、シエルの言伝を真剣に待つ。近衛隊の彼女が来たからには重要な内容だと察している。おそらくは他の冒険者が耳にしたらレドから名誉を奪おうと争い血が流れるであろう話……近衛隊剣術指南の件だと。)
>1024
お察しの通りっす。肝心の日程なんですけど、準備が出来次第速やかに王城に参じて欲しいとのことです。今まさしく第二騎士団長が庁舎に視察に来てるんですけど、どうにも裏がありそうで…アリシアちゃんとしてはレドくんにその監視を任せたいみたいっす。ギルドの前に馬車を停めてあるので、午前中には出発出来るように準備を済ませてください。
(察しの良いレドの言葉に頷くと、シエルは自らの涙を拭ってから詳細を話し始めた。この時期の第二騎士団長による視察、その動きを怪しんだアリシアはどうやらレドにその監視を任せたいようである。指南役という中立的ポジションに置かれているレドを内偵に使うという点は、奇しくも宮廷もアリシアも考えることは同じであった。特にアリシアに至っては一夜を共にした仲である為、レドに向けている信頼は相当なものであろう。急な依頼の為、少しでも早く伝えるべくシエルは昨日から夜通しレドを探していた訳だが、結局こうして当日に伝える形になってしまったこともあり、その表示は申し訳なさそうに眉尻を下げていた。)
>1025
おいおい急な話だな……フン。成り上がりの田舎者が近衛隊に挑むとは、愚かな……
……了解した、言伝ありがとう。他に用件は?
(午前中に王城へ来いとはまた……急な話に頭をかいて。バカエルフに不意討ちを決めるアリシアだ、流石に鋭い。第二騎士団長・エリーゼを怪しんで俺に監視せよと来たか。しかし一歩遅かったな……と、視線を逸らしつつも素知らぬ顔でエリーゼを「成り上がりの田舎者が近衛隊に挑むとは愚かな」と吐き捨てて……自分も同じ立場なんだが。
シエルも自分を探すのに苦労したようだ。ふぅ、と一つ息を吐いて肩の力を落とし表情を緩めれば、穏やかな顔で言伝を受け、他の用件を尋ねて。)
>1026
あはは…レドくんもアリシアちゃんみたいなこと言うんすね。あとは…レドくんへの用事はそれだけなんですけど、実はもう一人探してる人がいまして…帝国の武官さん、どこかで見たりしてないっすか?昨日から見当たらないんで、放っておいて外交問題になるのも面倒なんで連れ帰るよう言われてるんすよ。レドくんが支度してる間に探しておくんで、心当たりがあれば教えて欲しいっす。
(レドが吐き捨てたセリフがアリシアと重なり、シエルは苦笑いを浮かべた。演技だとは微塵も気付かず、内心でやっぱり二人はお似合いかもしれないなんて思いながら話を続ける。レドのほかにもう一人、帝国の武官を探していることを明かして。帝国の人間をあまり長時間野放しにしていると何をしでかすか分かったものではない。アリシアとしては外交問題に発展する前に庁舎に連れ戻したいのだろう。武官の所在に心当たりがないか尋ねるシエルの表情は不安から少しだけ強ばっていた。帝国の野蛮人とこれから一人で相対することになるのだから当然の反応である。)
>1027
北のグラキエス帝国か。そもそもこの国で帝国の人間など見たことないが……ああそういえば。昨日の夜、灰色の軍服を着た銀髪の女がこの辺をうろついていたような。案外近くにいるかもしれないぞ。
……ところでシエル、お前はこの国に帝国の人間が来る事、アリシアが帝国を招いた事をどう見る?……少しは考えて答えを出せよ。そうでなきゃアリシアも浮かばれないぞ。
(帝国武官の所在を尋ねられ、腕を組みながらそれらしい人物、昨日の路地裏の女のことを答えて。それから腕を組んだままシエルを睨みつけ、侵略国家の帝国がわざわざ遠方のこの国に訪問する事、アリシアもアリシアで帝国の人間を招いた事に対する見解を求めて。近衛隊なのだ、ただ剣を振るうばかりでなく政治にも通じておけよ。アリシアもそのために付きっきりでお前に勉強教えたんだろ?……と冷たく睨みつけるレドの視線は厳しい。)
>1028
そうっす、まさしくその人です!ありがとうレドくん、お陰で捜索が楽になりました。
(灰色の軍服に加えて帝国人に多い銀髪、レドの語った特徴はまさしくシエルの探している人物に合致していた。捜索の手間が省けることに喜びを隠せず身を乗り出して礼を言うが、続けられた難しい問いかけと厳しい視線に怯んですぐに半歩後退る。)
か、顔が怖いっすよ…ええと……あの帝国のことですし、友好関係の促進はまずないとして…視察を建前にした何らかの取引きと見るのが無難ですかね…?
(圧に押されるままシエルは必死に頭を捻る。こうした政治ごとはシエルが最も苦手とする分野だが、アリシアの名前を出された以上はそれなりの回答を用意するのが筋である。しばらくの思考の後に、視察を建前にした何らかの裏取引きだと結論付けた。自信なさそうに答えるシエルだが、帝国の特性を考えるなら無償の友好などまず有り得ない。情報の少ない現状では具体的な狙いまでは分からないが、帝国に取って利のある何らかの取引きが行われることは間違いないだろう。)
>1029
ふーむ、取引か。まあいいだろう。正直俺も連中が何しに来たのかさっぱりわからんからな……
まあ、どのみちお前にはもう関係無い事か。剣士を人前で「淫乱女」と貶めたのだからな……さあ、騎士なら腹かっさばいて詫びてもらおうか。
(どうにか答えをひねりだしたシエルにほっとして一息吐いて。正直それだけとは思えないが、なにせ自分でも帝国兵がこの国に来る意味が分からないのだ。シエルが自分なりに結論を出しただけでも満足である……が、今度はドス黒い殺気を帯びながら仁王立ちして、クレアへの非礼を切腹して詫びろとシエルを指差すが……)
……と言いたいが、それはあの人の望むことではない。しかし一剣士としてお前をこのまま帰すことはできない。捜索に行く前にお前にはやるべきことがある……わかっているな?
(すぐ殺気を納めると、すっと歩いて窓にもたれかかって。昨日出会って分かった。クレアは名誉のために血が流れることを好まない。だがせめて帰る前に一言謝るべきだ……やわらかな朝の陽ざしを背に浴びながらシエルを諭すレドは、どこか穏やかだ。)
>1030
ひえっ…わ、分かってます!ちゃんと謝りますから!
(ドス黒い殺気を前にして、シエルは自分の身を抱いて露骨に怯えた様子を見せるが、その後にレドが穏やかな様子へ変わるとホッと一息ついて、筋を通してしっかりと謝罪することを再度誓った。)
クレアさん、本当の本当に申し訳ありませんでしたぁ!
わ、私は大丈夫ですから…汚れちゃいますから、どうか顔を上げてください…
(場所は移り医務室。ベッドに腰掛けたクレアの前でシエルは額を床に擦り付けて土下座をした。立った状態からのスムーズな土下座への移行、洗練された所作から、シエルは相当土下座に慣れている様子である。アリシアの下で日頃から叱責されているのが丸分かりだ。
戻ってきたかと思えば速攻土下座。その光景を前にしてクレアは苦笑いを浮かべながら、シエルに顔を上げるように促した。これは明らかに引いている。必死に謝るあまりクレアの言葉が届いていないシエルのことは一旦放っておいて、反応がオーバーなところを若干レドに重ねながら、クレアは視線をそのレドに移した。)
ひとまず誤解が解けたようで安心しました。レドさん、何から何までありがとうございます。私の介抱はもう大丈夫ですから、あとはご自分のことをなさってください。
(ぺこりと綺麗な所作で頭を下げると、クレアは事態を収拾してくれたこと、そして一晩介抱してくれたことに礼を述べた。近衛隊の人間が尋ねて来たと言うことはレドには何らかの仕事があるのだろうと察し、憂いを断つために、一晩休んだこともあり自分の体調は大丈夫だと告げる。)
>1031
そんな、お構いなく……まだ出立まで間はありますし、一服くらいしてから行きますよ。クレアさんもいかがですか?ホットミルク……疲れた身体には丁度いいかと。
(ひとまずシエルは謝ってくれて安心した……所作がアレだが、と安心した顔を見せる。だがクレアに対しては帰るどころか、手をもじもじとさせながらお互いにホットミルクで一服しないかと提案して。その顔には安心の陰にさみしさが滲んでいる。正直レドは帰りたくない。もっと憧れの人と一緒にいたいのもあるが、何よりクレアの精神面が心配なのである。アリシア、レイラ、あーハゲはいいや。そして……。……次々と親しい人に去られた今、自分が去ってしまったら、誰が彼女の孤独を癒すというのだ……)
聞こえたなシエル?さ、ホットミルク2つ、持ってこい。もちろんお前のおごりでな。それで手打ちにしてやる。いいな?
(土下座ばっかりしているシエルの側にしゃがみ込み、背中をバシバシ叩くと、指二本立てて「ホットミルク2つ持ってこい」と指示して。剣士に向かって人前で「淫乱女」と叫ぶなど斬られてもおかしくないが、これで和解としよう。よろしいかと、クレアにちらりと視線を向けて。低い声に荒い所作、クレアに対する純朴な青年の姿とはまるで異なる、剣に生きる荒くれ者の姿があった。)
>1032
では…お言葉に甘えて。シエルさん、よろしくお願いしますね。
イテテ…は、はい!こういった雑用は得意なので任せてください!
(レドの提案を聞いて、クレアは顎に手を添えて少しだけ考える素振りを見せる。かつて騎士であった身の上から、シエルのことを考えれば贖罪の機会を奪うほど残酷なものはないだろうと結論付けると、小さく頷いて提案を了承した。シエルに向き直り、よろしくと使命を託す様は、窓から差した陽が後光となりまるで聖女のようである。レドに叩かれた背を擦りながら顔を上げたシエルはその様を目に焼き付けて、ぴょんと立ち上がると自信満々に駆け出した。普段ならアリシアに土下座をすれば頭を踏みつけられたまま延々と詰られるのだが、姉妹のごとく容姿が似ているクレアの振る舞いはまるで優しかった頃のアリシアと相対しているような高揚感を与え、シエルはすっかり浮かれていた。しばらくして廊下からは「走るな!」と咎める職員の怒号と「ごめんなさいー!」と情けなく謝るシエルの声がこだました。その声を聞いて、しばらく無縁だった平和な喧騒を身近に感じたことでクレアは思わずクスッと笑みを零して見せた。)
>1033
ふぅ、やれやれ。まだまだ教育が必要と見えるな…….
(しゃがんだ姿勢のまま、騒々しいシエルの様子に思わず苦笑いを浮かべて。シエルが織りなす平和なギルドの喧騒が、気心の知れた冒険者仲間と共に歩んだ昔を思い出す。小言を呟きながらも、どこか穏やかな微笑みを浮かべており。)
クレアさん……一度とならず二度までも、お見事な取り計らい。不名誉は血ですすぐばかりが剣士では無いと……一剣士として勉強になるばかりです。
(後光を背負うクレアに片膝をつき、自分に続いてシエルの事も穏便に解決したことに礼を述べて。「屈辱には血の贖いを」。そんな剣士の在り方を貫いていたら自分の命も、今の平和な光景も無かっただろう。聖女様は聖教国だけではない、この国にも存在する……目を伏してクレアの慈悲に感謝するその姿は実に静かで、穏やかだ。)
>1034
えへへ…私はそんな大層な存在じゃありませんよ。
(照れくさそうに頬を掻きながらレドの言葉に謙遜して。だいぶ酒も抜けたことでテンションが落ち着いたこともあり、さて何を話そうかと小首を傾げて思案していると、丁度よくシエルが戻ってきたのが見えた。盆には二つのホットミルクに加えて皿に乗せられたリンゴとフルーツナイフが置かれていた。)
ただいま戻りました!食堂のおばちゃんに気に入られたみたいでリンゴもサービスしてもらったっす!
おかえりなさい。ふふっ、丁度小腹が空いていたので有難いですね。では、皆で頂きましょうか。
(戻るなりシエルは盆ごとベッドの近くに備えられた机に置くと、フフンと鼻を鳴らして誇らしげに自分の胸に手を添えて、リンゴをサービスしてもらえたことを自慢した。食堂のおばちゃんに初見で気に入られるとは相変わらずのコミュ力である。クレアはシエルを労うと、すかさずナイフを手に持って…瞬間、リンゴは皮を綺麗に剥かれ、一口大に切り分けられた状態で皿に盛り付けられた。シエルにはその動きを目で追えなかったようで、目を見開いて思わず皿を二度見する。腐ってもSランク冒険者、落ちぶれてなおその剣技は健在であった。クレアはナイフを盆に戻し手を合わせると、二人に視線を向けて優しい声色でたった一言放つ。)
いただます。
(かなり軽めの朝食だが二日酔いには調度良い。こうして誰かと朝食を共に出来るだけでクレアの心はいくらか救われたことであろう。)
>1035
お、戻ったかシエル。すごいじゃんかオマケしてもらえるなんて。こればかりは俺も……!?
(椅子を引っ張ってクレアのそばに腰掛けると、ホットミルクに加えてリンゴまで持って戻ってきたシエルに微笑んで。こればっかりはシエルに敵わんなと笑みを浮かべたままリンゴを持つクレアの手元に視線を向けていたが、彼女がナイフを手に取った途端……顔が凍り付いて。な、なんという早業、これがSランク……正直俺が真似できるだろうか。同じく呆然としているシエルを肘で小突いて、耳打ちして。)
な?パネェだろ。これがクレアさんだよ……
>1036
そ、そうっすね…まったく以って真似できる気がしないっす…
ほら二人とも。早くしないと全部食べちゃいますよ~
(追う気すら起きない圧倒的な技量の差を前にして、シエルは未だ呆然とした様子でレドの言葉に頷いた。一方で、何か芸を披露したつもりなど更々ないクレアの目には、二人が自分を蚊帳の外にして何やら仲睦まじく喋っているように映ったらしい。焼きもちで少しだけ頬を膨らませると、リンゴを一片頬張りながら「全部食べちゃいますよ」と、二人の気を引こうと可愛らしい試みをしていた。)
>1038
おっと、いただきます……むむ、うまい。
さあシエル、これはクレアさんの御体(おんからだ)。ありがたく拝領するがいい。
(クレアに促されるとリンゴの一片を口に運んで咀嚼して。アゴを動かすたびに口の中でシャクシャクと小気味良い音を立て、しゃっきりした酸味と優しい甘味が口の中でハーモニーを奏でる。リンゴってこんな美味かったっけ……と、ほのぼのした顔で堪能しており。
もう一片を手でつまむと今度はシエルの口の前に持っていき、仰々しい言い草の後に「はい、あーんしろ」と促して。ジト目でぶっきらぼうな言い方だが、身体はリラックスしている。こういう対等な仲間と接するのも一年ぶりだから……)
>1040
もぅ…子供じゃないっすよ!ま、食べますけどね!
ふふっ、では私からも。はい、あ~ん。
クレアさんまで…!でも、食べますけどね!
(口元にリンゴを運ばれて、シエルはムスッとした表情で子供扱いするなと言うものの、リンゴの甘い香りに抗えずに結局は態度を一転させて頬張った。頬に手を添えて心底幸せそうに味と触感を堪能しているシエルの様子に、思わずクレアも微笑む。仰々しい言い草で食欲をなくしていないかと心配していたがどうやらクレアのその心配は杞憂だったらしい。であれば折角の機会に便乗しようと、クレアもリンゴを一片シエルの口元に運んで「あ~ん」とノリノリで目を輝かせた。レドに見せた反応同様に最初こそ不服そうな態度を取るシエルであったが、結局はリンゴの魅力に抗えずに頬張る。その光景はさながらペットの餌付けであった。)
>1041
ふふ……。……これはクレアさんの御血(おんち)、では無いか……
(クレアとシエル。飼い主と犬……いや姉と妹のように微笑ましい姿にふと笑みを漏らして。だが両手に取ったホットミルクに口をつけると急に沈んだ顔になり、ぼそっと呟いて。口の中でアリシアとのファーストキスの思い出が蘇る。アリシア・ライデン。クレアさんの家……名誉と帰る場所を奪った一族。そんな人間と結ばれておきながらこの場に座るなど、彼女への背信行為ではないのか。この輪の中に入っていいのだろうか……そう考えると一歩椅子を退いてクレアとシエルから遠ざかり、今一度ミルクを口に含みながらさらに呟いて。)
……アリシア……
>1042
レドさん、ぼーっとしてたらシエルさんに全部食べられちゃいますよ~。はい、あ~ん。
そんなに食い意地張ってないっすよぉ!
(愛らしくリンゴを頬張っているシエルの頭を撫でていると、少し引いた位置で何やら浮かない表情を浮かべて考え事に耽るレドの様子が目に付いた。誰しも悩みの一つや二つはあるものだが、人によってその性質は大きく異なる。迂闊に踏み込むべきではないのだろう。そう思考しつつも、せめてこの時間だけは楽しくあってほしい…その一心で、クレアはすかさずリンゴを一片つまみレドに歩み寄り、口元まで運んで「あ~ん」と笑いかける。その後ろでシエルが何やら吠えているが、抗議しながらも皿に乗ったリンゴを次々に頬張る姿からはまるで説得力がない。)
>1043
えっ、俺!?いやそんな……あ、あーん……
(物思いにふけっているといつの間にかクレアが近づいてきてリンゴを片手に「あ~ん」と笑いかけてきた……憧れの人のまぶしい笑顔、母性に抗えるレドではない。顔をほんのり赤くして恥ずかしがりながらも、言われるままに口を開け、リンゴを口に入れてもらい。口の中でリンゴを噛みしめていると、いつも以上に甘くて美味しく感じられる……ひとしきり味わってから飲み込むと、顔を赤くしたまま頬に手を添え、シエルに話しかけて。)
シエル……リンゴっておいしいな……
>1044
ん…?そ、そうっすね。あっ、もうこんな時間です!私は人を探しに行かないとなのでこれにて。レドくんも遅れないようにしてくださいね!
(相変わらず勘の悪いシエルはリンゴの味を称えるレドの言葉に、何を当たり前なことを今さら…と、キョトンとした様子で首を傾げるもリンゴが美味いのは事実であるため、すぐに思考を放棄して頷いた。時計に目を向ければ既に小一時間ほど経過しており、連れ戻す相手の特性を考えるならば捜索や説得込みで決して長い時間は残されていない。二人に頭を下げて別れを告げると、慌ただしく医務室を後にした。)
行ってしまいましたね。なんでしょう…杞憂であれば良いのですが、何だか嫌な予感がします…
(手を振ってシエルの後ろ姿を見送ったあと、ベッドに腰掛け直したクレアは自身の胸に手を添えて俯いた。デュランダルで人を探すだけ。普通なら近衛隊の人間を相手に心配する程の事ではないが、シエルの姿が見えなくなった瞬間から不吉な予感に胸騒ぎが止まらない。部外者としてシエルの任務の詳細を知らされていないクレアだが、悪魔と違わない帝国人の影に、高位の冒険者としての勘が警鐘を鳴らしていた。)
>1045
ああ、またなシエル。気を付けてな。
……ありゃ近衛隊にいる俺の友達(ダチ)でしてね、この国に来た北の帝国兵を探してるそうなんです。実は昨日そいつと遭遇したんですが、これがとんでもないイカれ女だった……昨日の夜クレアさんにお会いした時も、そいつに絡まれて逃げてきたところだったんですよ。
……クレアさんのおっしゃる通り、どうも気分が悪い。何しに来たんだあの略奪者どもは……
(退室するシエルに手を上げて挨拶すると、ベッドに腰掛け直したクレアに椅子を近づける。外に漏れないよう声を潜めつつ、改めてのシエルの説明と、クレアの嫌な予感の元凶たる帝国兵の話をして。あまり広めるべきでは無い話だが、元騎士団の高官として節度のある彼女であれば大丈夫だろう……さっきまでの照れ顔とは打って変わった真剣な表情が、事の重大さを裏付けており。)
>1046
帝国兵が…!?レドさん、すぐにシエルさんの後を追いましょう…!もし人目に付かないところで遭遇したら彼女はっ…!
(帝国兵と聞いてクレアは胸騒ぎの正体に合点がいった。過酷な環境で生きるが故に人を人とも思わない帝国人の残虐性を、騎士団時代の外交経験からクレアは熟知している。シエル一人で会わせるのはあまりにリスクが大きい。そう結論付けるとクレアは立ち上がり、ベッド脇に置いていた剣を腰に携え、すぐに後を追おうと必死な剣幕でレドに訴える。もう身近な誰も失いたくない…焦りからクレアの手は小刻みに震えていた。)
同時刻 王城にて
ハァ…それで、本日はどういったご用件でしょうか?勇者様。
(王城の地下に備えられた取調室。質素な机と椅子しかない薄暗い地下牢のようなその空間で、セレステと、堅牢な手枷を嵌められたレイラは机を挟んで向かい合っていた。大きな溜め息を吐いてからセレステは尋問を始める。いったいどんな理由があれば衛兵ごと正門を吹き飛ばして城に侵入しようという発想に至るというのか…眉間に皺を寄せたセレステの表情には明らかな呆れの色が見えた。)
べつにお前に用があって来たわけではない。枢機卿から、私の弟子がもうじき此処(王城)に来ると聞いてな。ちょっとしたサプライズで待ち伏せしてやろうと思ったんだ。
色々と突っ込み所がありますが…馬鹿な貴女には理解が難しいでしょう。ですので、ここはシンプルに一言だけ。速やかにお帰りください。
(そんなことだろうと想像はしていたが、悪びれる様子もなくレイラの口から語られたあまりに稚拙な理由にセレステは頭を抱えて項垂れた。こんな子供のような感性の人間が「勇者」であっていいのか。あぁ、神よ…教皇よ…心の中で、この世で最も尊い存在に抗議しつつも、それらに肩を並べるべき目の前の存在への深い失望の気持ちを抑え、なんとか平静を装って顔を上げる。なぜ枢機卿が騎士団の内部事情を把握しているのか、許可なくサプライズに王城を使うなとか、聞きたいこと言いたいことは山ほどあるが、懇切丁寧に言葉を尽くしたとしてこの女との問答が成立する気がまるでしない。セレステはある種の諦めに近い感情で割り切ると、早期に面倒事を片付けるべく淡々とした口調で帰宅を促した。)
馬鹿とはなんだ貴様ッ!
ああ、一つご忠告を。この場でそれを解けば拘束具は無意味と判断して手足を折ります。
チッ…
(馬鹿呼ばわりされて直情的なレイラが我慢出来る筈もなく、感情の赴くままに手枷を破壊しようと力を込めるが、意外にもセレステの忠告を聞いてすぐに試みを諦めた。そもそも衛兵の呼び出しでレイラを拘束したのはセレステである。今しがた抗い難い力量差を分からされたばかりのレイラは、その言葉は脅しではないと理解したのだろう。まるで反抗期の子供のように小さく舌打ちをして、不貞腐れた様子でそっぽを向いた。)
それでは帰りましょうか、正門までご案内します。立ってください。
…帰らない。
また我儘を…早く立ってください。
…帰らない。
(一先ずは手荒な真似をせずとも言うことを聞かせられたことに安堵しつつ、セレステは椅子から立ち上がると、レイラの腕を引いて帰宅を促した。しかし、何度腕を引こうとレイラは断固として動かない。意地になっているのだろう。キッと睨みつつも、セレステを見上げるその瞳は今にも泣き出しそうな程に潤んでいた。まるで駄々をこねる子供そのものだが、年下で小柄の女の涙はセレステの庇護欲を大いに掻き立てた。余談だが不死鳥の翼の活動時、クレアはレイラの涙には決して逆らえなかったという。クレアに歳の近いセレステも例に漏れず効果は覿面のようだ。「ハァ…」と再び大きく溜め息を吐くと、ついにセレステが折れて幾つかの条件を提示する。)
分かりました。しかし条件があります。「私の元を離れない。」「身分を隠すために侍女服を着用する。」「お弟子さんと言葉を交わしたらすぐに帰る。」それを守れるのなら暫しの滞在を許可しましょう。
うむ、分かった!早速着替えるぞ。案内しろ!
(先程までの不貞腐れた態度はどこへやら、提示された条件をあっさり飲んだレイラは晴れやかな笑みを浮かべて立ち上がり、自ら更衣室への案内を急かす始末である。その変わり様を前にしてセレステは苦笑いを浮かべつつも、掻き立てられた庇護欲は満たされたようだ。やれやれといった様子でレイラの腕を引き、取調室を後にした。斯くして、レドへ宛てたサプライズ計画は出だしこそ盛大に躓いたもののセレステの協力を得てなんとか成功へと近付いたのであった。)
>1047
クレアさん!?……しかしいくら帝国でも使いの者を斬るはすが。それにそのお身体では……ご、ご心配なら俺一人で追ってきます!
(クレアの剣幕に押される形で立ち上がると、壁に立てておいた自分の長い東刀を引っ掴んで……だがいくら帝国でも外交で来ているのだ、相手の国の者を襲うだろうか?そして何より、病み上がりの彼女を戦わせるのは危険だ……とはいえシエルの無事を確認できないことには彼女のパニックも収まりそうにない……冷や汗をかきつつも焦るクレアを手を突き出して制止し、自分一人で行くと提言して。)
>1048
(/なにやってんだ姉さん……そして次席補佐官……こんなに強いのか……)
>1049
分かり…ました。それではレドさん、よろしくお願いします。私の杞憂であったことを願っています…
(レドの制止にクレアは渋々頷いた。今しがた少し興奮しただけで心臓の鼓動が異様に早くなったことを自覚すると、確かに今の状態では戦いどころかシエルの元に辿り着けるかも怪しいであろうと納得する。悔しさに拳を握りしめながらも、深くレドに頭を下げて想いを託した。)
…ハァ…ハァ…
(昨夜レドが帝国兵エルフリーデと遭遇した通りの路地裏、朝だと言うのに陽も届かない薄暗がりのこの場所で、血溜まりの中にシエルは倒れていた。致命傷は免れているが脇腹を剣で貫かれたことで出血が酷く、呼吸をするのがやっとである。どうしてこんな事になったのか、薄れゆく意識の中でもはやシエルに思考する余裕などなかった。)
あちゃー…やってしまいました。私としたことがつい飲み過ぎてしまいましたねぇ。反省反省っと。どうしましょう?いっそ息の根を止めて証拠隠滅でもしましょうか。
(通路脇のゴミ箱に腰掛け、虫の息のシエルに嘲るような視線を向けながらエルフリーデは思考に耽っていた。手に持つのは度数の高いウイスキーの酒瓶と血に濡れた剣。泥酔状態で背後から声を掛けられたことでシエルを敵と誤認し、条件反射で突き刺したのが事の顛末である。すぐに治療を施して然るべき謝罪をすれば不幸な事故として処理され、大きな外交問題にはならないであろう。しかし、彼女は帝国人の中でも選りすぐりの人格破綻者。それも泥酔状態。まともな判断などする訳もなく、剣の切っ先でシエルの輪郭をなぞりながらニヤっと口角を吊り上げ、いっそ殺してしまおうかなどと物騒なことを呟いていた。)
(/レイラは思い立ったらすぐ行動してしまうので、たまにこうして暴走してしまいます。次席補佐官にお灸を据えられて少しでも反省すればいいのですが……次席補佐官は固有魔法のお陰で日中はスターマリオ状態なのでレイラに勝ち目がないんですよね。固有魔法なしでも、剣技が全盛期クレア並の技量なのでどのみちレイラでは勝ちの目は薄いですが…しかし、レドであれば今後の成長次第で倒せる可能性は十分にあると思います!日中だろうと陽が届かなければ無敵状態になれないので、地面に竜狩りを打ってセレステごと深い穴の中に落ちて、陽の届かない深い底で決着をつける等々…条件付の無敵状態なので攻略法は色々あります!一番の問題はその上でどう勝つかなのですが…)
>1050
ハッ!行ってまいります!
なあ、今黒い軍服の女の子が出ていかなかったか?……チッ、よりにもよって……ありがとう、ごちそうさま。
(案の定、満足に動けないクレアに対して直立不動の姿勢から敬礼をすると急いで退室して。だが出る直前でホットミルクを飲み干すことは忘れなかった……何だかアリシアの加護が受けられそうな気がしたから。
医務室とは一転して明るく賑わう食堂で職員を捕まえ、シエルの行き先を尋ねる。よりにもよって昨日の路地裏の方へ向かったことに舌打ちしつつも、空になったカップを渡しながら礼を言い、ギルドを出て。)
シエル、シエル!……シエルっ!?……なるほど、クレアさんが危惧するわけだ……!
そこまでだ帝国兵。彼女はこの国の近衛兵だ。罪人として裁かれたくなければおとなしく退け。
(シエルの名を呼びながら街道を駆け抜け、昨日の路地裏へ入る。血の匂いを辿れば案外彼女はすぐ見つかった……最悪な形で。朝でも薄暗い路地裏、その血溜まりに倒れ伏すシエルに呼びかけて。
それからシエルを傷つけた者……昨日の帝国兵の女を睨みつけて。血に加えて酒の匂いまで漂ってくる……この女がここまで異常だったとは、甘く見過ぎていた……!今度ばかりは間抜けの演技などしていられない。親指で刀の鯉口を切りつつ、帝国兵エルフリーデを止めるべく叫んで。)
(/うむむ、この帝国女と違ってセレステは話が通りそうだからあまり戦いたくありませんが……戦うとしたら、レドにとっては課題の多い戦いになりそうです。)
>1051
あれぇ…?昨日のお兄さんじゃないですかぁ。こわ~い男達をお兄さんが差し向けるから、私の心はとっても傷付いちゃいました。これはそう、傷心を癒していた最中の不幸な事故なんです。ふふっ、なので誠心誠意の謝罪を見せてくれるならこの子を返してあげてもいいですよ?見たいなぁ…お兄さんの土・下・座。
(レドの顔を見たエルフリーデは小首を傾げて記憶を辿った。昨夜鉢合わせた青年であることに気が付くと、外向きの笑顔を浮かべて酒をあおりながらテキトーな持論を述べる。要するにレドが悪いという滅茶苦茶な論理だが、剣の切っ先はシエルの首に添えられており、エルフリーデの機嫌一つで胴から切り離されることであろう。既に破壊衝動は治まっていることもあり、今度は別の娯楽としてレドに醜態を晒すことを迫った。反応を待つ彼女の顔はまるで悪魔のように悦に浸っている。)
>1052
……俺は近衛隊剣術指南・レドだ。お前も近衛隊に呼ばれているのだろう。これ以上事を起こせば外交問題になる。帝国のためにもここは退くがいい。
(エルフリーデの邪悪な言動に一瞬顔をしかめつつもすぐ無表情になり、淡々と身分を明かしてはこれ以上危害を加える愚を説いて。こんな女の言われるままに土下座したところでシエルが無事でいられる保証は無い。多少の脅しなど気にも留めず平然としているのが強者のやり方だ、いつぞやの糸目女のように……人気の無い路地裏に、レドがエルフリーデへとゆっくり歩み寄る足音が響き渡り、その度にレドの黒いシルエットが大きくなっていく。)
>1053
あ~あ…つまんないですねぇ。昨夜にその調子を期待していたのですが、生憎今は気分ではありません。玩具としては不適格なのでこれはお返ししますかぁ…
うぐ…
(期待していたものとは違うレドの反応を見て落胆したエルフリーデは剣を鞘に収めると、腰掛けていたゴミ箱から降りて、襟首を掴んで乱雑にシエルを立ち上がらせる。意識が混濁しているシエルは痛みに反応して小さな呻き声を上げるのみであった。)
これが死んだら私も帰りが面倒ですし、貴方の言うように外交問題にもなるでしょう。それは少しばかり困ってしまうので。あぁ、安心してください。使った玩具はしっかり綺麗にしてあげますから、私は誇り高き帝国軍人なので♪
…っ…!?やめっ…ゲホッ…たすけ…ゴホッ…
(レドの説得は一応はエルフリーデにも届いていたようだ。確かに外交問題となっては計画が破綻しかねない。その為に彼女は剣と同時に敵意も収め、努めて友好的な振る舞いに切り替えたのである。しかし、クレアが懸念していた帝国人の倫理観、価値観の違いが尚のこと顕著に現れることとなった。彼女の言う玩具の掃除、これは純粋な善意によるものだが、そもそも自然に「玩具」と呼んでいる時点で王国人を人として見ていない。その方法も常軌を逸したもので、まだ半分以上残っている決して小さくはない酒瓶の飲み口をシエルの口に差込み、殆どまっすぐに傾けて無理やり飲ませる。消毒のつもりなのであろう一連の行動だが、文字通り酒に溺れて呼吸もままならず、飲みきれず口から溢れる酒は服を伝い傷口を刺激する。あまりの苦しさと激痛にシエルは意識を覚醒させるが抵抗する力は残っておらず、涙を流しながら目の前のレドに助けを求めた。)
>1054
…………治療はこちらでやる。手当の術も知らないとは、帝国軍も練兵でお困りと見える……せっかくだ、この国で一流の兵学を学ぶといい。
(な、なんだこいつ……!人を人とも思わぬ態度。今すぐ斬り捨てたい!……そんなはやる気持ちを無表情で抑え、エルフリーデの手首を掴んでシエルの口から酒瓶をはがし、酒瓶を投げ捨てて。投げた酒瓶が砕け散り中身が撒き散らされると同時にシエルの身体も奪い、シエルを壁に座らせて。淡々とした口調で冷静に話しつつも、王国人を見下す女に言い返すことも忘れない。)
もう大丈夫だぞシエル、ギルドへ帰ろうな……
……あんたもさっさとアリシア様の下へ向かうがいい。騎士団に捕まらない内にな……では、またいずれ。
(シエルが怯えないよう自分の身体でエルフリーデを隠しつつ、穏やかな口調と表情でシエルに話しかけ、傷口に布を当て包帯を巻く応急処置を済ませるとシエルを背負って。影の中で光る灰色の眼光を背中越しにエルフリーデへぶつけると、ギルドへ戻るべく歩を進めて。いずれこの借りは返す!……シエルとそんな覚悟を背負いつつ。)
>1055
あら?何か無礼を働いてしまったようですね。それならば申し訳ありません。外の文化に併せるのも大変でして。
(酒瓶を投げられ、強引にシエルを奪還された挙句に皮肉まで添えられると、エルフリーデは呆気に取られた様子で小首を傾げた。相手の要求を呑んで友好的に振る舞い、ゴミに等しい王国人に治療まで施してあげたというのに…と、終始無礼を働いておきながらその自覚はないらしい。未知の価値観など考えても無駄なことだと割り切り思考を停止して、きょとんとした表情のまま建前上の謝罪を述べると軽く頭を下げた。)
それではレドさん、また後で♪あぁ、私の名前はエルフリーデと申します。覚えるも忘れるもご自由に~。
(トラブル(自分で起こした)は解決し、もはや此処に留まる理由はない。新しい玩具(レド)も見つけたことで、よくよく考えれば大きな収穫を得られた事に気が付いたエルフリーデは再び笑みを浮かべると、「また後で」と何やら含みを持たせた別れの言葉を残して歩み出した。去り際に名乗りを上げると、軽い足取りで大通りへと出て人混みの中に消えていく。)
うぅ…怖かったっす……レドくんが助けに来てくれなかったら…今頃は…
(エルフリーデが去ったことでシエルはようやく口を開いた。いきなり刺されて死の淵を彷徨ったかと思えば治療と称した拷問で目を覚まし、シエルの感じた恐怖心は相当のものであろう。痛みと、未だに脳裏にこびりついて離れない恐怖に震える声で言葉を紡ぎ、レドに抱きつく力を一強めた。)
過去編「甘いひととき」
夕刻の執務室。窓の外では沈みゆく陽が、庭園の白い石畳を金色に染めていた。
その中でクレアはただ一人、机に向かっていた。
書類の束、無数の判、冷めきった紅茶。
金髪の束が肩に落ち、瞳には疲労の色が滲んでいる。
けれど、彼女は顔を上げない。
この国の秩序を守る――それが自分の使命だと信じているから。
感情よりも義務を、温もりよりも責務を優先してきた。
──だからこそ、気遣いを感じる控えめなノックの音が、張り詰めた彼女の心を僅かに緩めた。
「…入れ。」
扉を開けたのは、青い髪の少女。
セレステは深く頭を下げ、いつものように礼儀正しく立っていた。
けれどその手元には報告書ではなく、小さな箱。
「……何だ、それは。」
クレアの声は、いつも通りの冷静さを保っていた。
だが、セレステの指が少しだけ震えているのを見て、胸の奥に微かなざわめきが走る。
「ケーキです。……私が、焼きました。」
「お前が?」
信じられない、というよりも、ただ意外だった。
騎士学校時代から剣一筋だったこの少女が、自分のために何かを作るなんて。
「先輩、最近ずっとお忙しい様子だったので…。少しでも、リラックスできればと…」
その声は、小さく、けれど真っ直ぐだった。
まるで剣先のように澄んでいて、偽りの欠片もなかった。
クレアは息を呑む。
「首狩り」と蔑まれるようになったあの一件以降、自分が周囲からどれほど冷たく見られているか、誰よりも知っている。
けれど、この部下は――それでも自分に優しさを向けてくる。
「……セレステ。」
名を呼ぶ声が、かすかに揺れた。
セレステははっと顔を上げ、金の瞳がまっすぐにクレアを見つめる。
「ええと…先輩。お口に合うかどうかは……その……」
クレアは言葉を遮るように、そっと箱を開けた。
甘い香りがふわりと広がる。
その香りに、ずっと張りつめていた心の糸が少しだけ緩んだ。
フォークで一口。
やわらかな生地が舌の上で溶け、ほんのりとした甘みが広がる。
「…お前らしい味だな。」
「えっ……?」
「まっすぐで飾り気がない。でも、温かい。」
セレステの頬がわずかに赤く染まる。
それを見てクレアの口元も、ほんの僅かにほころんだ。
「ありがとうセレステ。お前の気持ち、確かに受け取った。」
静かな部屋に、二人の小さな笑みが重なる。
それはどんな名声よりも求めていた、僅かな温もりの瞬間だった。
(/過去編に於ける書きやすい文章スタイルを模索中でして、読みにくかったら申し訳ありません!)
>1056
いや、すまないシエル。俺もついていくべきだった。まさかあれほどの屑だったとは……とにかくギルドへ戻ろう。お前の看病があるし、拝謁も延期してもらわないと。それに……あいつの非道を訴えなきゃならないからな。
(自分の背中で怯えるシエルに首を向けながら、申し訳なさそうに詫びて。とにかく今はシエルのことが第一。険しい顔を正面に向け、シエルを背負いながらギルドへ戻りつつ、今後の方針を伝えて。こんなアクシデントがあった以上、とても今日中に王都へ赴くなんてできない。何より王国兵が領内で帝国兵に殺されかけたのである。立派な外交問題だ、しかるべき所に訴えなければ……そのように逸るレドの足はどんどん速くなっており。)
ちくしょう、こんなことなら巡回中の騎士を捕まえてくりゃよかった。帝国兵エルフリーデ……同じ「エルフ」でも、あのバカエルフの方がまだマシだったな。
>1057
(/いえいえ、これはこれで見やすいと思います!
エリーゼに対しては外道なセレステも、クレアにとっては救いだとは……この国の信仰問題は根深いですね。)
>1058
…延期……?だ、ダメっす…!今のアリシアちゃんには…レドくんが必要なんです…!ハァ…ハァ…私は大丈夫ですから…どうか、アリシアちゃんの元に…駆け付けてあげてください…!
(拝謁を延期すると聞いてシエルの顔は青ざめる。不穏な動きを見せる宮廷と第二騎士団長を前に、自分のせいで親友を無防備な状態で曝すことなど到底納得が出来なかった。自分の容態よりも、そして帝国兵の横暴を訴えるよりも、シエルにとっての最優先事項は常にアリシアである。痛みに耐えながらも必死に言葉を紡ぎ、自分をギルドに捨て置いてでもアリシアの元へ駆けつけるように懇願した。)
(/ありがとうございます!
教義を元にした価値観というのは変え難いですもんね…ただ、セレステはこれでも獣人に対して温厚な方なので、実はエリーゼが安易に触りさえしなければあそこまでブチギレなかったんです…
セレステは基本的に自分含めて4人分(団長・バカエルフ・首席)の仕事をしていて、会議後の尚のこと心身共に疲弊しているタイミングでデカイ虫(聖教徒視点の獣人の見え方)にダル絡みされた挙句に触られるというブチ切れ要件を満たしたからこその衝動なんです。なので、仕事の話であれば獣人相手でも普通に対応してくれます!)
>1059
シエル!私情を挟んでいる場合じゃ……!……それでも俺に行けと言うのだな、シエル。分かったよ、お前のため、アリシアのため……涙を呑んで馳せ参じるとしよう。
誰か、急患だ!兵士が刺されたっ!
(シエルの主張はとても呑めない。泣き寝入りさせたくないし、そして最早シエル一人の問題では無いからだ……だがそれでも、彼女は病室を抜け出してでも俺をアリシアの下へ行かせるだろう。それに、アリシアがあの帝国の女と組んで取り返しのつかない事をする前に止めなければならない……振り向いてうなずくと、シエルの命がけの懇願を受け容れて。
気が付けばもうギルドの前にいた。扉を勢いよく開けると、また昨日のように受付に向かって叫んで。)
>1060
ありがとう…レドくん…!私のことはもう大丈夫…です。レドくんは取り急ぎ準備を…あんまり遅いと、アリシアちゃんが怒っちゃいますから…
(レドの決断を聞いて、冗談交じりに話せるくらいには元気を貰えたようだ。駆け付けた職員に抱きかかえられ、医務室へと運び込まれるのを制止してレドに向き合うと、別れを惜しみつつも強がりの笑みを浮かべてレドを急かして。予期せぬトラブルにだいぶ時間を取られてしまったが、レド単身であれば今から準備をして近衛隊の馬車に乗り込めば予定時刻には間に合うことであろう。シエルが言葉を言い終えると同時に職員は足早に医務室へと歩みを進める。シエルはレドに心配をかけまいと、その姿が見えなくなるまで小さく手を振っていた。)
>1061
シエル!お大事にな、後のことは任せろ……!
(心配そうに手を上げてシエルに別れを告げて。シエルの言う通り急いで準備すべきだが、レドが焦る様子は無い……こんな事もあろうかと、実はもう用意を済ませてあるのだ。)
「う、うわぁ……これが掲示板……」
「どうだい、実績稼ぎには丁度いいだろう?アボット」「「月追いの城」近辺の道路整備……ちょっと寒くない?タルボット」
「フン、「首狩り」なんて過去の遺物さ。今日から俺が賞金首狩りで名を上げてやるぞ!」
「トロルの群れの討伐!?Cランクの俺らに務まるとも思えないぜ」「大丈夫!私にいい考えがあるの」
……Bランクのレドだ。預かってた荷物を引き取りに来た。ああ、「アレ」も忘れずに……「アレ」?それはだな……
(朝からガヤガヤと依頼掲示板に殺到する冒険者達を脇目に見て。俺達も不死鳥の翼の皆も、昔はああして掲示板の前で騒がしくしていた。だが今はもう……と、一瞬切なそうな表情を浮かべると、音も無く静かに歩き出し、出立に備えて預けていた荷物一式を渡すよう受付に伝えて。)
「おっおい、あんたそこは……」
いいんだよ、減るもんじゃなし。
「しっ、知らねえぞ」
(受付に用件を伝えると、そばにあった「勇者」専用席に平然と腰掛けて。事情を知る他の冒険者に注意されても気にせず、むしろ睨み付けて追い返すくらいだ。
三年前に冒険者ギルドの門を叩いた持たざる農民が、今や聖教国の英雄「勇者」に認められ、そして近衛隊剣術指南として王国の闇に迫る者となった。もう自分はBランクという型にはめて語れる存在では無い……自らの数奇な運命に想いを馳せつつ、目を閉じて。)
…………行く前にクレアさんに挨拶した方がいいかなあ。
(それでも出発前に、自分の冒険者の原点たるクレアさんには挨拶しておくべきだろうか。シエルを守れなかった負い目はあるが……と考えを巡らしながら、天井を見上げて。)
>1062
…お疲れ様でした、レドさん。無事…という訳ではありませんが、シエルさんが助かったようで何よりです。
(急患としてシエルが運び込まれたことで病床の余裕がなくなり、既にそれなりに回復しているクレアは医務室からの退室を余儀なくされた。ふらいついた足取りで医務室を出て、ギルドの出口へと歩みを進めていると一際目立つ席に腰掛けるレドが目に付く。進路を変えてそちらに歩み寄り、友人の負傷に気を落としているであろう彼を少しでも元気付けようと、控えめな笑顔を作って労いの言葉をかける。今のクレアは酒が抜けたことで健康状態は確かに回復しているが、その反面精神的に不安定な状態にある。笑顔を作っているものの、手は小刻みに震えてどこかソワソワとした様子であった。そのせいなのだろう、普通ならレドを想ってレイラの特等席に腰掛けていることをそれとなく指摘すべきなのだが、そこまで注意が回っていない。)
>1063
く、クレアさん!?貴女が懸念された通りでした。俺も同行していれば……申し訳ありません。
ひとまずおかけください。まだご気分が優れないようですし……ああご安心を。貴女がここに腰掛けること、誰にも文句は言わせませんから。
(行く前にクレアに挨拶すべきかと思案していると、彼女の方から声をかけてきた。思わずハッとして椅子から立ち上がると、シエルを守れなかった事を頭を下げて詫びて。
医務室を出られたというより追い出されたのだろう……どう見ても調子が戻っていないクレアに空いた椅子を手の平で指し示し、着席を促して。これはレイラの特等席だがそれを気に留める様子は無い。それどころか、この席の事情を承知の上でクレアを座らせる気でいるようだ……)
>1064
いえ、レドさんが謝ることでは……悪いのは帝国の方ですし…
ええと…その…お気遣いは有り難いのですが、私は少し用事が…
(シエルと今日知り合ったばかりの自分よりもレドの方が当然辛いはず…それにも関わらず頭を下げて誠意を示すレドを宥めると、謝るべきは帝国の方だと諭した。そして、続け様に腰掛けるように勧められると、クレアは申し訳なさそうにモジモジと指を合わせて遠慮する。それには幾つか訳があり、レイラとの決別に負い目を感じているのは勿論、喫緊の理由としては手の震えからも分かる通りアルコールの禁断症状が出ているためだ。このまま無理に酒を我慢しては精神が持たない。傷心のレドを後目に酒を求める自分の弱さを内心で蔑みつつ、用事があると言って断りを入れた。)
>1065
待ってください、まだ例の帝国兵がうろついてるし危ないですよ。そ、それに、俺も出発までクレアさんとお話していたいですし……あー、そうだ。もう少し休憩していきませんか?その、個室で……
(理由を付けて帰ろうとするクレアの正面に回り込んで、こちらもあれこれ理由を付けて引き留めて。中腰姿勢からの上目遣いであたふたと説得する有り様からは、帝国兵と対峙していた時の冷徹なオーラは見られない。どこにでもいる青年と化している。
クレアの手の震えを見て「こっ、ここまで症状が進んでるのか……」と内心で冷や汗をかきつつも、適当な個室を借りて休憩することを提案して。これ以上彼女に酒を飲ませていいのか、そもそもギルドの個室で朝っぱらから飲酒なんてできるのか……と不安になりながらも、酒が飲みたくてたまらなそうなクレアに「……クレアさんレベルだったら打ち合わせだとか称して個室で酒飲むくらい、ギルドも許してくれるでしょう……たまには人目を気にせずお飲みください。」と耳打ちして。)
>1066
わ、分かりました…レドさんがそう言うなら…
(相変わらず年下のおねだりに弱いクレアは上目遣いされたことで心臓がバクバクと音を鳴らす。真意を知られているのなら断る理由もないと判断すると、高鳴る心臓を抑えながらも何とか言葉を紡ぎ、小さく頷いて了承した。)
その…本当にすみません。私だけこんな時間にお酒なんて…
(場所は移りギルドの応接室。やはりS級冒険者だけあり職員に事情を説明すればあっさりと使用許可が降りた。テーブルを挟んでレドと対面する形でソファに腰掛けるクレアの前にはビールの入ったジョッキが置いてある。友を傷付けられて傷心中の人間の前で平然と酒を飲めるほど冷徹でも鈍感でもないクレアは、手を付ける前にしっかり断りの謝罪をしてからジョッキを口に運ぶ。半分程飲んでようやくジョッキをテーブルに戻すと、未だ申し訳なさそうに眉尻を下げているものの頬は酔いで赤みを帯びており、手の震えはすっかり止まっていた。命を削って正気を保つとは正しくこの事なのであろう。)
>1067
いやいや!大丈夫ですよ……俺、どういうわけか王城に呼ばれちゃって、クレアさんとお話して緊張をほぐしたかったですし。なにせBランクの農民が王城入りなんて有り得ないことですから。あはは……
(手をバタバタさせながら、謝るクレアを制して。朝から飲酒する彼女を責めるどころか、前向きになれと促す様子さえ無い。昔は酒に溺れるクレアに失望と困惑を抱いたものだ。だが自分も仲間と死に別れ、そして彼女の現実を間近で見た今となってはもう咎める気など起きない。いや、下手な慰めさえも意味を為さないだろう……
密室で憧れの人と二人きり、そしてこれからの任務の重さ。緊張で頬は赤く染まるし、つい頭をかいてしまう。それでもクレアに罪悪感を抱かせまいと、引き止めた理由を説明して。今のクレアにあんまり下手な事……特にアリシアやレイラとのつながりを明かしてしまうと余計に気を重くしてしまいそうだが、シエルとのやり取りやギルド前で待機している馬車の存在からして、自分が今から王城へ行くことは彼女も把握しているだろう。ひとまずそこから話すことにする。)
>1068
王城…ですか。それは大変名誉なことですねっ!しかしお気を付けください。あそこは様々な謀略が渦巻く魔境…下手に政治に干渉しては碌な目に遭いませんから。
(王城と聞いてクレアは顔を引き攣らせて暫しの間固まった。幾つかの思い出と、それを覆い隠す程の苦難の日々。様々な情景がフラッシュバックしてフリーズしたのだろう。ハッとした表情で意識を現実に戻すと、無理をして笑顔を作り、努めて明るい声色で王城に招かれた名誉を称えた。なぜBランク冒険者が招かれるに至ったのか、近衛隊とはどういう繋がりなのか、腑に落ちない点は幾つかあるが、王城に関連する話には秘匿義務があっても可笑しくはない。あえて詮索せずに、経験に則った王城でのアドバイスのみを伝えることにした。)
>1069
……!心得ております。あの栄華な王宮こそ、地獄の門。俺の剣の師は事ある毎にそう呟いていましたから。
オヤジ……いや師匠はこの国を快く思っていませんでした。その様子では貴女も……そんな国に剣士として尽くすのが果たして正しいのか……俺には分かりません。
(引き攣る顔、痛々しい作り笑い、重い言葉……そんなクレアの様子に自分も真顔になって、冷や汗をかいて。彼女の様子から騎士時代は名誉どころかむしろトラウマであったことを察すると、師匠の言葉を交えて同調しつつ自らの長い刀を膝の上に乗せて。
宮廷に従いアリシアを止め、救うことは、クレアを虐げた宮廷を増長させることになる。本当に密命を受けて良かったのか?いっそアリシアに従って腐り切ったこの国を転覆させる方が、クレアやアリシアの救済になるのではないか……迷いを語りながら両手に取った自らの刀を見つめるその視線は下に落ちており、表情も憂鬱で。)
>1070
なるほど、お師匠様が宮仕えを…それならば無用な心配でしたね。
正しさというのは曖昧なもので、立場によって如何様にも変わります。焦って決めずとも、実際に色んなものを見てから決めても良いかもしれません。とは言いっても、間違いだらけの人生から今も逃げ続けている私が偉そうに言えたことではありませんが…
(師匠が宮仕えだったことを知ると、今さら要らぬ心配だったことを悟り苦笑いを浮かべる。それでも、自らの正義を見い出せずに憂鬱な表情を浮かべるレドを放ってはおけず、余計なお節介かもしれないとは思いつつ、「正しさ」への持論を述べた。早計な判断の連続で後悔まみれの自分の経験から、物事を見極めることの重要さを解くクレアの顔は至って真剣である。しかし、言い終える頃には、何もかも間違えて大切なものを全て失った自分の現状を自虐気味に笑ってみせた。)
過去編「美しい世界」
凍てついた風が吹き荒れるグラキエス帝国北辺。
その雪原の外れに、ひとつの貧しい農村があった。
そこに生まれた少女――エルフリーデ・グリムハルトは幼くして飢えと寒さを知り、弱者が踏みつけられるこの国の「掟」を身をもって学んでいた。
ある晩、村が闇に包まれたとき、使いに出ていた彼女は運悪く人攫いの一団に捕まった。
「嫌だ、離してっ!お願い誰か、助けてっ…!」
助けはない。叫んでも誰も振り向かない。
こんな光景は、この国では日常の一幕に過ぎないからだ。
「グヘヘ、上玉じゃねぇか。売れば銀貨十枚はくだらねぇ。」
必死の抵抗も虚しく、数発殴られて大人しくなった彼女は、鎖で繋がれ馬車に押し込まれた。虚ろな瞳には月光が冷たく映る。
同乗した人攫いの下衆な言葉も既に届かない。混濁した意識の中で、ただ積荷と共に揺られていた。
希望なんてない。
力こそが全てのこの国の不条理を呪い、そして受け入れたとき、皮肉にもその「力」こそが彼女の運命を変えた。
道中、馬車が立ち寄った廃墟の教会。
かつて聖教の神を祀っていたその場所は、帝国軍によって焼かれ、黒く炭化した木材と崩れた石壁が残るだけだった。
しかし、そこにはまだ“何か”が潜んでいた。
人攫いたちが焚き火を囲む中、馬車を引き摺り降ろされ、男達の欲望に染まった視線を一身に受けた正にそのとき、エルフリーデは囁きを聞いた。
――「力が欲しいか?」
それは耳ではなく、魂に直接響く声だった。
次の瞬間、焼け焦げた祭壇の奥から黒い霧が溢れ出す。
それは「腐敗の悪魔」――聖教会が祀っていた未知の存在だった。
叫び声とともに人攫いたちは一人、また一人と崩れ落ち、腐り果てた。
血と肉が溶ける匂いが辺りに漂う。
焚き火が消え、静寂と暗闇が支配する中で、少女の瞳だけが青く輝く。
「……あぁ、これが、力。…ふふっ、あははっ!」
返事を待たずして、未知の存在が自分の魂と溶け合ったことを実感する。心臓が高鳴り、言い知れない不快感に自らの身を抱くが、それが治まった時、青黒く禍々しい魔力が全身を覆った。
この力があれば、もう理不尽に怯えることなんてない。これからは私が奪う側に立つんだ。
自信に満ちた彼女の瞳が捉えた世界は、生まれて初めて美しく見えた。
>1071
ありがとうございます……そのお言葉、痛み入ります……!
自分が苦しくても、こうして人のために寄り添える……クレアさんは強い人です。それにひきかえ俺は……クレアさんに憧れて冒険者になって三年、貴女のために何もできなかった。「少しくらい話したら」って仲間の声も聞かずに、今の貴女から目を背け続けた……逃げ続けてるのは俺の方なんです。すみません……
(クレアの諭しにはっと顔を上げると、姿勢を正し、深々と頭を下げて。経歴に見合わぬ自信の無さ。よほど苦しい人生を送ってきたのだろう……それでもこうして自分に手を差し伸べてくれる彼女の優しさが胸に沁みる。
一方の自分はそんな苦労も知らず、酒で苦しみを紛らわせるクレアを敬遠するばかりだった。自分の方こそクレアの側に立つ資格は無い。でもこればかりは白状しなければならない……と、涙を流しながら今一度頭を下げて詫びて。)
>1072
(/レドより先に破滅による救済を願っていたとは……エルフリーデ、案外レドと似た者同士かもしれませんね……)
>1073
あ、謝らないでください…!決してレドさんが負い目を感じることでは……それに、謝るべきは私の方なんです。お聞きした素性から薄々勘づいていましたが、ずっと…黙っていたことがあります。到底、許されることではないのは重々承知の上で、それでも謝らせてください…
(頭を下げられたクレアは慌てた様子でレドを宥めた。自分の心を蝕む数々の要因とレドは当然ながら何の関係もない。それでも彼が負い目を感じているのは偏に優しさ故であろう。その優しさが一層クレアの罪悪感を膨れ上がらせる。自分の犯した罪を知らずに、あまつさえ憧れを持っている。その姿を見ていられず、覚悟を決めたクレアは姿勢を正してレドを真っ直ぐに見つめた。許されるなんて思ってもいない。今すぐにでも逃げ出したい。そんな臆病な気持ちを無理矢理抑えつけて、震える声でクレアは前置きを述べる。)
…かつて行われた農村への大弾圧、その全ての指揮を執ったのは私です。本当に…申し訳ありませんでした…
(深々と頭を下げて己が罪を告白した。何をされても構わない。奪った命は決して戻らないのだから、それくらいは当然のことだ。そんな覚悟を持っての行動だが、やはり本能には抗えず、レドの次なる言葉と行動を待つクレアの身体はビクビクと震えていた。まだ何を言われた訳でもないのに涙が止まらない。レドの気が済むのなら、罵声を浴びせられた方が、殴られた方が、何もされず贖罪の機会を奪われるよりきっと良い筈なのに、人間の身体というのは難儀なものである。本能的に恐怖する一方で、クレアは自分のその臆病な振る舞いが間違ってもレドの優しさに付け入ることのないように祈っていた。)
>1073
(/同様に辛い境遇を持ちながらも、曲がりなりにも真っ当に生きているレドを見て、エルフリーデが人の心を取り戻すことを信じています!)
>1074
なっ……!?嘘だ、そんな……!
(まさかのクレアの懺悔に、思わず立ち上がって。静まり返った応接室に、膝に乗せた刀がガチャンと床に落ちる無機質な音が響く。
自分は別に被害を受けてない。それでも「首謀者に会ったら斬り捨ててやりたいぜ……」と憤慨した非道な弾圧。目の前の憧れの人がその首謀者だったのか。無辜の人の血に塗れた手で、俺にリンゴを分け与えていたのか……今までの人生すべてを否定されたような気がして、何もかも切り刻みたくなる。)
………………。
(一方で落とした刀を拾う素振りは無い。ガタガタと震えたまま、青ざめた顔でクレアを見つめるばかりだ。レドは葛藤している……なぜ斬れる。自分一人の罪では無く国家の罪と言えるのに、明かさなければ目の前の青年はクレアを慕う無垢な存在でいられたのに……それでも逃げずに自ら十字架を背負わんとする人をなぜ斬れる?罪の報いにしては重すぎる生き地獄を味わってきた人をなぜ斬れる?手が血に塗れてもなお、人に尽くし、人のために戦い、優しくリンゴを分け与えてくれる人をなぜ斬れる!?斬れるわけねぇだろ!!!)
………………………………。
(レドの次なる言葉と行動を待つクレアであったが、肝心のレドは立ち尽くしたまま一向に動かず、口さえ開かずにおり。否、動けないし何も言えないのだ。冷や汗と震えが止まらぬ身体が崩れ落ちないよう全身に力を入れ、吐き気を抑えるために口を噤むので精一杯だから。
レドは激情に駆られてクレアを斬るほど馬鹿では無いが、罪を背負うクレアに救済を与えられるほど人間が出来ているわけでも無い。だから何もできない……それでも今度こそ、今度こそ、憧れの人の真実から逃げずに向き合うんだ……何もできないレドであったが、瞳孔の開き切った瞳を泣き崩れるクレアから逸らすことだけは決してしなかった。)
>1076
…レド…さん?…ひっ…
(いつまで経っても殴られるどころか罵声の一つもない。恐る恐る顔を上げると、瞳孔を開き切ったレドと目が合い、反射的に小さく悲鳴を上げてびくりと身体を震わせる。きっとこれがレドなりの向き合い方なのだろう。そうとは分かりつつも、心の奥底では報復的手段を以ての救済を求めていたクレアにとって、それはあまりに残酷な現実であった。レドが救いを与えてくれないのなら、いっそ自分の手で…と無意識に腰に携えた剣に手を伸ばす。リンゴの皮剥きと同様、首を落とすにしても、腹を貫くにしても、クレアの技量であれば柄に触れた瞬間に事は済む。本能的な生への執着からか、柄へと伸ばしつつある手には僅かな躊躇があった。)
>1077
……!まっ、待ってください。
(ついにクレアが剣に手を伸ばし始めると、愕然と口を開いて。自分に恥をかかせた相手すら血を流さずに赦す人が、自らの罪を命で贖おうとしている。な、何か言わなきゃ……と、震えながら手の平を突き出し、何とか言葉を絞り出しながら制止して。)
俺は……ちっぽけな男です。貴女を裁くことも、慰めることもできない。だからせめて、貴女のご決断を見守らせてほしい……ただご決断の前に……これだけは言わせてください。
(突き出した手を胸に置き直すと深呼吸して気持ちを落ち着かせ、口を開いて。この短時間で急激に疲れ果てたのか声は弱々しいが、それでも瞳孔が元に戻った灰色の瞳をしっかりとクレアに向け、「ただ見守る」という決意を語って。
この人の闇は深すぎる。俺などが裁いたり慰めたりする資格は無い。だからせめて見守りたい……自分が挫折に沈んだ時そばで見守ってくれた、バカエルフとは比べ物にならないほど優しいエルフの人のように。)
逃げて……逃げてくださいクレアさん。俺には貴女が重荷を背負いすぎて……どうにも立ち行かなくなっているように見えます。
俺は貴女と向き合うことから逃げない。でも貴女はもう逃げていい……もう逃げてもいい頃だと、俺は思うんです……
(クレアの側に寄って跪くと、クレアを見上げて涙を流しながら「もう逃げていい」と懇願して。優しいエルフの人はそっと依頼書を差し出すことで俺を奮起させた。が、この人の場合は逆だ。この人はもう戦い過ぎた。これ以上自分一人で何もかも背負わないでほしい……捉え方によっては自決を促すような残酷な発言に聞こえるかもしれない。それでもいい、このどうにも立ち行かなくなって絶望した魂が救われるなら……静まり返った応接室に、クレアを想って流す涙が床に落ちる音までもが響き始める。)
>1078
レドさん……ありがとうございます。であれば…もう少しだけ逃げてみます…
(レドの言葉を聞いてクレアは剣に伸ばしかけた手を膝の上に置いた。「逃げていい」、その言葉は偶然にもかつての主人が最後に下した命令と同じものであった。このまま命を絶つこともある種の逃避ではあるが、きっと、あのお姫様はそんな事を望んでいない。それに、元より長くはない命。今それを捨てたところで何になるのか。自分の軽率な行動を恥じると共に、大切な事を思い出させてくれたレドに礼を言った。何かが解決した訳ではない。けれど、今はそれでいいのかもしれない。先程まで泣き崩れていたクレアの表情は、ほんの少しだけ憑き物が取れたように晴れていた。)
>1079
(思い止まってくれたようだ。緊張の糸が解け、大きく息を吐くと、両腕がだらんと垂れ下がって。このつかの間ですっかり力が尽きてしまった。アリシアとの会食や第一王子に連なる政治屋との交渉……なんならバカエルフ、副団長との戦い以上に消耗したかもしれない。)
……貴女の血塗られた手は、俺とシエルを赦し、リンゴを分け与えてくれた手でもある。そのように……俺は信じています。
(涙を拭い、床に膝をついたまま、安らぎの見え始めたクレアの片手に自らの両手を添えて。俺は忠義や信念から逃げた情けない男。クレアさんの家を奪った一族のアリシアと、クレアさんとその主君の仇である第一王子……騎士としてのクレアさんを追い詰めた者どもに与する男だ。本来ならこんな汚い手でクレアさんに触る資格など無い。恨まれるべきは俺の方……それでも今だけは、一人の人間としてクレアさんの側にいたい……俯きながら膝をつき手を添える姿は、まるでレドの方がクレアに赦しを乞うているように見える。)
>1080
こんな手で良ければ、またいつでもリンゴを切ってあげますね。
(すっかり消耗した様子のレドを見て、無理をさせてしまったことを反省して眉尻を下げると、握られていない方の手で優しくレドの頭を撫でた。己が罪を告白しても、こうして慕ってくれることにクレアの心がどれ程救われていることであろう。レドのサラサラの髪の感触を確かめるように、しばらく気の向くままに撫で回していると、応接室の壁に掛けられた振り子時計が十一時を伝えた。もうじきギルドを発つべき頃合のようだ。)
こらこら、お菓子は逃げませんからちゃんと並んでくださいね~
(王都に聳える聖教会の大聖堂、その隣に併設された孤児院に第三王女の侍女リズリットは、クッキーやチョコなど個包装された菓子が満載された台車を引いて訪れていた。彼女の姿を見つけるなり、孤児院の中から駆け出してきた子供達はきゃっきゃと興奮した様子で台車を取り囲む。子供達の元気な様子にリズリットは柔らかな笑みを浮かべ、手馴れた様子で一列に並ばせた。なぜ宮仕えの彼女が孤児院で菓子を配っているのか、答えは同じ第三王女陣営に属する近衛隊副長のアリシアにある。大の子供好きであり、聖教国との繋がりを持つアリシアは時たまこのような形で孤児院の面倒を見ており、多忙な自分に代わって身近な侍女、とくに人間種であり性格の良いリズリットを派遣しているのであった。)
(/アンナ背後様、絡み文を投下させていただきました!)
>1082
午前の外回りはこれで終了、大分信徒も増えてきてこの国で活動するのも楽になってきたものね。"獣臭い"のが難点だけど
(先程までフィリア王国内の信徒の集まりに参加していた様で一息つきながら、大聖堂までの道を歩いており。大通り1つ見ても聖教国の国章や、関連する建物が増えてきている事を感じ取れてか、自分や同じく活動する同志達、そして本国の威光が徐々にこの国を侵食していくその様子に、満更でもない顔を浮かべる。人間種以外の種族も住まうこの土地は、古くから聖教国で育った自分にとっては人間種以外の存在は度し難い苦痛もあったがこうして王国に住む人間が自分の信ずる国の信徒になっていく事は救済であると信じて今まで活動してきたので些細な障害にしかならない。決して態度に出さずに仮面の笑顔を浮かべて道行く信徒や民に会釈しながら大聖堂の近くまで来ると何やら大聖堂の横が騒がしい事に気付いて)
…?何か催し物でもあったかしら…はっ!?あの御方は!!
(疑問符を浮かべながら考える仕草をして、何か行事でもあったかと考え込むのも束の間、姿が見えたのか慌てた様子で小走りに大聖堂の横…孤児院へ向かい)
ふぅっ…いつもありがとうございます、リズリット様。アリシア様からのお恵みにございますか…?
(自分も何度かギルドでも見た事のある、この王国に住むものならば知らない者は少なくない、そしてこの王国の大聖堂で働く者ならば馴染も深い人物である彼女を見て、急いで駆け付ければ声をかけ、恭しく頭を垂れる。こうして何度も孤児院へ来訪してはさまざま事情でこの孤児院に身を寄せる孤児たちの面倒を見てくれている存在である為、聖堂や教会の聖職者の間でもとりわけ人気の人物を前に、山積みのお菓子の台車を見ながら来訪の目的を聞き)
(/ありがとうございます!!早速絡ませていただきます…!気難しい子ではありますがどうぞよろしくお願いいたします!)
>1081
クレアさん……へへっ。
(クレアに愛おしく頭を撫でられると思わず彼女を見上げ、子供のようにはにかんで。もう彼女には届かないと思っていた自分の手が、彼女の安らぎになれたことが何より嬉しい。この手の温もりこそ、血塗られた過去の哀しみを乗り越えた先にある優しさか。やっぱり俺は間違っていなかった。彼女に憧れた俺の目に狂いは無かった……と、しみじみしながら頭を撫でられて。
だがふと視線を逸らした途端、その瞳は怜悧な戦士の目つきへと変わる。視線の先にあるのは十一時を指す振り子時計。クレアのような優しき者が排除される魔境。人を手にかけても何の罪悪感も抱かぬ悪漢どもの伏魔殿……王都への旅立ちの時だ。)
おっと、そろそろ出発しないと。このまま一緒にいたかったのに……
あの……もしよろしければ、最後に教えていただけませんか。リーダー……貴女にずっと寄り添い続けたカルロス様のことを。いや、なんというかその、貴女が愛するに足ると信じた男なら、同じ男として目標にすべきだと……そう思いましてね。
(一歩下がってクレアの手から離れつつ、膝をついたまま彼女を見上げ、神妙な表情で尋ねて。「不死鳥の翼」リーダー、カルロス。今もクレアの胸の中にある長年の恋人……否、半身の事をだ。
今回の任務は危険極まりなく、生きて帰れる保証は無い。これがクレアさんとの最初で最後の出会いになる可能性は捨てきれない以上、今聞いておきたいのだ。彼女には酷かもしれないが、同じ女性を愛した男として俺も心に留めておきたいから……と、恐る恐る言葉を選びながらも、その眼差しは真剣で。)
>1083
こんにちは、アンナさん。ええ、そうなのです。ふふっ、アリシア様ったら本当に子供が大好きなのですから。
(顔馴染みの司祭アンナに声をかけられると、リズリットも軽く会釈を返した。子供達のみならず、わざわざ駆け寄ってきてくれた司祭様も元気なことだなと感心しつつ、アンナの推察通り今日もアリシアの使いで来たことを告げる。あの冷徹で、人を人とも思わない副長の人間らしい一面を改めて認識すると、安心感からか思わず笑みが零れた。)
私としても、ずっとお城勤めだと息が詰まってしまいますので、こうして息抜きが出来る機会は有り難い限りです。最近では帝国の武官が視察に訪れているので気が気ではありませんよ…はぁ…
(続けて、こうして使いに出されることへの自身の心境を語る。王位継承を巡る謀略が渦巻く王城では些細な事でトラブルに巻き込まれる為、誰が誰を支持しているだとか、小難しい政治の話を常に意識して振る舞わなければならない。それに加えて今は帝国の人間までも招かれており、情勢は混沌を極めているのである。そんな魔境から離れることを許される時間はリズリットにとって束の間の休息のようなものであり、開放感から大きな溜息を吐いた。)
>1084
カルロス…ですか?ええと、彼は…顔は良いですけど、ちょっとおバカで、変態で、剣もダメダメで……う~ん…言葉に表すと難しいですね。ただ一つ、はっきりと言えることがあります。彼は誰よりも優しかったです。
(不意にカルロスについて尋ねられると、クレアは暫し苦い表情で固まった。当然、カルロスのことを片時も忘れたことはないが、だからこそ自ら心の傷を抉るような真似をしたくはないのが正直なところである。しかし、レドの真剣な眼差しを見て、きっと彼にとって必要なことなのだろうと意を決すると、ついに重たい口を開いた。何年も連れ添った、隣に居るのが当たり前だった半身とも言える恋人を言語化するというのは思いのほか難しく、クレアはたどたどしい様子で思い立った特徴を一つ一つ挙げていくが、咄嗟に出てくるものと言えば悪いものばかりである。事実であるのだから仕方ないが、これは不味いとクレアは唸りながら小首を傾げ、今一度カルロスについて考える。自分はカルロスの何処に惚れたのか…長考の末に一つの結論に辿り着いた。「優しさ」、それこそがカルロスの本質である。辛い時に常に寄り添い、求めている言葉を掛けてくれる。クレアにとって、勉学や腕っ節などどうでも良いと思える唯一無二の魅力であった。)
>1084
カルロス…ですか?ええと、彼は…顔は良いですけど、ちょっとおバカで、変態で、剣もダメダメで……う~ん…言葉に表すと難しいですね。ただ一つ、はっきりと言えることがあります。彼は誰よりも優しかったです。
(不意にカルロスについて尋ねられると、クレアは暫し苦い顔で固まった。当然、カルロスのことを片時も忘れたことはないが、だからこそ自ら心の傷を抉るような真似をしたくはないのが正直なところである。しかし、レドの真剣な眼差しを見て、きっと彼にとって必要なことなのだろうと意を決すると、ついに重たい口を開いた。何年も連れ添った、隣に居るのが当たり前だった半身とも言える恋人を言語化するというのは思いのほか難しく、クレアはたどたどしい様子で思い立った特徴を一つ一つ挙げていくが、咄嗟に出てくるものと言えば悪いものばかりである。事実であるのだから仕方ないが、これは不味いとクレアは唸りながら小首を傾げ、今一度カルロスについて考える。自分はカルロスの何処に惚れたのか…長考の末にハッとした表情を浮かべて一つの結論に辿り着いた。「優しさ」、それこそがカルロスの本質である。辛い時に常に寄り添い、求めている言葉を掛けてくれる。クレアにとって、勉学や腕っ節などどうでも良いと思える唯一無二の魅力であった。カルロスの優しさを語るクレアの表情は最初の苦い顔から一転して、温かな笑みを浮かべていた。)
(/少し訂正致しました!)
>1085
教会としてもアリシア様のご厚意には感謝のしようもございません。子供達もリズリット様がいらっしゃるのを楽しみにしておられましたよ?ふふっ…子供は私も好きです。元気いっぱいで純粋で穢れを知らない。此処にいる子供達はそれぞれ事情がありますが…私も元気を貰っています
(既に多数の聖教国の司祭や諜報員…果ては工作員が多数入り込み、策謀が巡り人間種至上主義が着々と根付きつつあるこのフィリア王国で例え偽善であっても、孤児に対して救いの手を差し伸べる存在には打算抜きで感謝を述べる。お菓子を貰ってはしゃぐ子供達を見て、笑みを浮かべながら自分も子供が好きだと零す。だが彼女の言う「好き」の中には純粋あるが故に政治思想を植え付けやすく、知恵をつけて賢しくなった大人よりも信徒化させやすいからという邪悪な感性も入っている。)
確かに…お付きともなるとご苦労も絶えないでしょう。こうして少しでも息抜きが出来るならば今後もいらして下さい、子供達も待っていますから。何ならば私で良ければお話をお聞きしますよ?
(聖教国の教会内でも派閥闘争なんてものは多々あった。彼女にとっては教皇を信ずる者同士何を争う必要があるのか無意味な争いにしか見えなかったが王国の、ましてや彼女は第三王女の侍女と記憶している。王族内では日常茶飯事なのだろう。相手の声色からもその気苦労が聞いて取れたため労う様に言葉をかけて。ゆっくりと大聖堂を指差し、司祭として祈りのポーズを見せれば告解もやりますよ、と笑みを零す)
…帝国の武官までも…ですか。色々としがらみも多い中で遠方の国とも牽制合戦…心中、お察し致します。教会としても帝国とは因縁浅からぬ間柄故、何も起きなければ良いのですが
(だがその後に聞こえてきた帝国の武官、というワードを聞けばその顔からすぐに笑みが消える。彼女にとっては仇敵にも等しい国でもある為憎悪の感情が滲み出そうになるが気取られないように言葉を選んで、既に国交断絶状態にある祖国と帝国に対して王国がどうなってゆくのかを憂いて)
>1088
あぁ…聖教は帝国との間に色々あったのですよね…では、暗い話題はこのくらいにして、お言葉に甘えて世間話でも致しましょうか。罪の告白は少々気恥しいので…またの機会に。
(笑みの消えたアンナの表情から帝国の名前を出したことは迂闊だったと反省し、告解まではいかずとも世間話でもしようと提案して。自らの罪、主君を裏切る行為の数々はとても人に明かせるものではない。いつか罪悪感に苛まれ自死すらも選択肢に入れることがあるのなら、その時に利用しても良いかもしれないと、気恥しさを装う照れ笑いの裏で重たい考え事をしていた。話しているうちにも並行して菓子を配り終え、孤児院の中へ戻っていく子供達の笑顔に、リズリットの荒んだ心も幾分か癒されたようだ。)
>1087
ふっ、あははっ!俺の師匠(オヤジ)も似たような男でしたよ。つまりなんとも人間臭くて……誰より人間らしい方だったわけですね。
(ハハ、カルロス様は聖人どころか案外抜けてる男だったとはと、思わず大笑いして。だがそこに師匠(オヤジ)……剣の教えは立派だったけど、その実ガサツで寂しがり屋で未練がましいダメ男……たとえ不完全でも、人に愛を与える優しい男の事を見出だした。カルロスも師と同じように、なんとも人間らしい方と締めくくると、同じく温かな笑みを返して。その笑みには感心とあきらめが含まれる。「あぁ……こりゃ勝てんわ」と。)
クレアさん、貴重なお話をありがとうございました。俺はちっぽけなカラスに過ぎないが、剣士として行ける所まで羽ばたこうと思います……貴女方おふたりの、優しさを胸に。
(そろそろ退室する頃合いだろう。立ち上がって落とした刀を拾い、差し直して。カルロス様……クレアさんを長年支え続けたその優しさは尋常では無い。そして罪に苦しみながらも人を救わんとするクレアさんもまた……二人に届くのはいつの日か。改めてクレアの側に立つとカラスのように黒ずくめの身体をピンと伸ばし、穏やかに微笑みながらの敬礼を別れの挨拶として。)
>1090
ふふっ、そうかもしれませんね。
…はぁ…それではレドさん、お城勤め頑張ってください。レドさんならきっと、どんな壁も乗り越えられると信じています。
(「人間らしい」。この表現にクレアは心底納得がいき、レドの大笑いに釣られたことも相まって思わず吹き出した。よく食べ、よく寝て、夜にはどこに隠していたのであろう体力を発揮する。まさに人間らしさを体現したカルロスの振る舞いを鮮明に思い出し、笑わずにはいられなかったのである。しばらく思い出し笑いで肩を震わせていたが深呼吸をして平静を取り戻すと、レドを真っ直ぐに見つめて激励の言葉を掛けた。)
…スー…スー…
(ギルド前に停められた近衛隊の馬車の中、エルフリーデは片側の座席を占有して横になり、心地良さそうに眠っていた。夜通し遊び呆けた挙句に朝から酒瓶を空けていたため眠気に抗えなかったのであろう。悪魔のような性格とは裏腹に、窓から差した光に照らされて輝く銀髪も相まり天使のような寝顔である。別れ際にレドに告げた「また後で」という台詞はこの馬車での再会を指していたのである。シエルが任務を優先するあまり刺されたことを事件化しないことを見越していたようだ。帝国の武官を連れ帰れというアリシアの命令もあり、馬車の御者も特段気にする素振りはない。)
>1089
はい…お察しの通りかの国と聖教国は既に敵対関係といっていいもので。リズリット様もお気を付けください。帝国の者達は危険な思想を抱いております
(帝国内の教会で働いていた彼女にとってはまさしく思い出したくもない思い出の1つでもあった。幸い地理的にも王国と帝国は遠く、互いに牽制し合っている段階の為まだ脅威という脅威は見えてはいないが帝国で受けた焼き討ちの被害者でもあった為か、王族に近い位置にいるリズリットに忠告の意味も込めて気をつけろと零して)
ふふ、神はいつも皆を見ておいでです。悩まず告解する事できっとお許しになられます…いつでもお待ちしておりますよ。して、貴女は第三王女の侍女であった筈。第三王女…ルイーズ様はご息災であられますか?
(両手を合わせて祈りの格好を取ったまま、目を瞑って静かに告げる。彼女の抱える事情の全てを知っている訳ではない為聖職者としての言葉で、優しく諭すように声色を落とし、そして目を開けて笑みを浮かべて。ふと、思い出したかのように彼女が仕える主君、第三王女について問うて。孤児院へは王国騎士副隊長、アリシアの名代で来てはいるが本当の主君は第三王女ではないのかという口調でリズリットを見ては、その主君の身を案じて)
>1092
ご忠告痛み入ります。はい…ルイーズ様は今朝も変わらず元気なご様子でしたよ。最近では嫌いだったピーマンも食べられるようになられたのです。うぅ…立派に成長されました。
(本音を言えば聖教徒でないリズリットにとって、帝国も聖教国も似たようなものだと考えているのだが、当然ながらそんな失礼な印象は心の内に留めて素直に忠告に感謝を述べた。続けてルイーズの話題に移ると、リズリットは己が抱える罪悪感から一瞬だけ視線を逸らすもののすぐに戻し、今朝の様子、そして嫌いな食べ物を克服できたことまで伝える。ルイーズの成長を語る際には大袈裟にもハンカチで涙を拭う仕草を見せる。ルイーズのことが好き過ぎてという訳ではなく、これは罪悪感を紛らわす為の空元気である。)
>1093
まぁ…それはそれは。まだまだお若い身ではありますが1つ1つ、成長なされているのですね…アリシア様もさぞお喜びでしょう。
(彼女の素性を知らないアンナは、その心に住まう闇と罪の重さを測り知る事は出来ない。しかしながら聖教国とも関わりの深い王国の近衛騎士の長たるアリシアが擁立する王位継承者候補の微笑ましい一面に、聖教国出身者としての思惑抜きで若き第三王女の成長を喜んで)
しかし…こうしてお恵みを下さるアリシア様とは一度お会いしてお話を聞きたくはありますね…もしかすれば聖下(教皇)や聖女様あたりは既に会われているのかもしれませんが。
(こうして孤児院へ寄付や孤児たちに施しを与えてくれる存在は、いち聖職者としても尊敬に値するものであり羨望の眼差しを向けながら、王城のある方向を見て。派閥闘争うず巻く伏魔殿とも言えるその場所は何も知らないアンナにとっては手の届かない、高みにある場所のようで)
>1091
ありがとうございます!ではこれにて。……あっ、またリンゴ食べさせてください!
(クレアさん、いい顔になった。満面の笑みで激励の言葉に応えて退室……そして廊下に出ると無邪気に笑いながらリンゴの話を持ち出すと一礼してドアを閉め、今度こそクレアの前から姿を消して)
ふぅ…………分かったか?俺が会うのをためらった意味が。
「あー……うん、まあね。昔のレドが相手しちゃダメな人だったわあれは……メンゴメンゴ」
「アハハ……ごめんよ、ボクも見抜けなくて……いい顔になったねレド。あの人の言う通り、今のレドなら何でも乗り越えられそうだよ。」
「いってらレド。生きて帰ってくるんだぞ。愛しのアリシアちゃんと一緒にね。」
ああ、行ってくる。土産話ならたっぷり持って帰るから楽しみにしていろよ、お前たち……
(静まり返った廊下。ふと脇を見やれば、光差す窓の下に昔の仲間・眼鏡の魔法使いと褐色の女戦士の姿が見える。彼らには「敬遠してないでクレアと会え」と尻を叩かれたが、昔の未熟な自分がクレアと会っていたらお互いを傷つけるだけで終わってただろう、と、仲間に呆れ顔を向けて。しかし十分な経験を積んだ今の自分は多少なりともクレアさんの癒しになれた。剣術指南としてもやっていけるだろう……仲間の見送りの言葉に親指を上げて応えると、踵を返して廊下を出て。もっとも、傍から見ればレドが誰もいない窓の光にブツブツ独り言を吐き、親指を立てているようにしか見えないが……)
「あっお前!向こうに「首狩り」がいただろう!俺と会わせろっ!」
ああ?何だよ急に。いいからどけよ。というか、会ってどーすんだよ。
「知れたこと!あの女を倒して、今日から俺が「首狩り」として名を上げてやる!」
…………バカなことを。
「なっ、なんだと!?」
そんな二つ名、喜んでお前にやるよ。その方があの人も安心するだろう。というか、もういないんだ「首狩り」は。今あそこにいるのは「首狩り」でも騎士様でもない。長い戦いで哀しみを背負った、一人の女性……
「ふざけんな!」
(食堂に戻ると、先ほど掲示板の前で「首狩り」に代わり名を上げると息まいていた男に絡まれる。レドは元の荒くれとして冷たく睨みつけていたが、やがて目の前の男が「賞金首狩りとして悪を倒す剣聖」などと「首狩り」の意味も知らずに崇めていた昔の自分と重なって憐れみを覚え、静かに説得し始める。そんな姿に逆上した男が襲い掛かってくるが……)
「グッ……!?ガハッ……!」
……お前じゃあの人には勝てない。いや、あの人を斬って名を上げたところでその先には何も無い……無駄なことだ。
「たっ、たす……ぐがっ……」
覚えとけ。これこそが、首を狩られる痛み……血に酔う前に引き返すんだな。
(突っ込んでくる男の首に左手を差し込むと、そのまま壁に叩きつけて。首から血が流れるほどにきつく締め上げられ苦しむ男をレドは冷徹に睨み、淡々と諭し、諭し終わったところで手を離す。)
あぁ……やっちゃった。俺もまだまだ、あの二人のように優しくなれねぇなぁ……
(首を押さえてせき込み泣きながら去る男を尻目に、男の血の付いた左手を残念そうに眺めて。俺もクレアさんやカルロス様には程遠いな……血を見ずにはいられない性分という意味では、俺もあの帝国兵の女と同類かもしれない……と溜息を吐くと、手近にあった布巾で血を拭って。唖然とする周囲の冒険者には目もくれず受付に向かって静かに歩き、預かっていた荷物一式を引き取ると、新たなる試練……外に控える近衛隊の馬車に乗り込むべく、扉を開けてギルドを出た。)
>1094
はい、つい先月に聖教国に赴かれて、その際に教皇様に謁見し、聖女様とは会食をされたと聞いているのです。こちらにも何度か予定の合間を縫われてお伺いしていたのですが…ご多忙の身ゆえ滞在時間も限られますし、おそらくアンナさんとはタイミングが合わなかったのでしょう。私の方からもアリシア様にそれとなくお伝えしておきますね。
(アンナの推測通り、アリシアは既に教皇や聖女との接触を図っていた。リズリットにはその目的は不明だが淡々と知り得る事実を告げる。上位の騎士とはいえ一国の長に謁見出来ることには確実に裏がある。諜報機関に属する者として、あわよくばこの機会に教会側の人間から情報を収集出来ればと考えていたが、反応を見る限りアリシアとの接点がないアンナは白のようだ…と、笑顔の裏で品定めしていた。であれば詮索は程々に通常の会話を維持すべきだろうと判断し、会って話をしてみたいと言うアンナの要望をアリシアへ伝えることを約束した。)
>1095
ええ、勿論です。はぁ…
(応接室を去るレドの後ろ姿を、クレアは温かな笑みを浮かべたまま手を振って見送った。完全に姿が見えなくなると、また一人になってしまった寂しさから小さく溜息を吐き、ビールに口を付けてその孤独を紛らわす。しばらく感傷に浸っていると、応接室のドアがノックされギルドの職員が顔を出した。職員の手には王家の家紋の封蝋で閉じられた手紙が握られており、事態を察したクレアは顔を引き攣らせる。レドのお陰もあり少しだけ前を向けるような気がしていたタイミングで、黒い鷲の紋章が新たな波乱の幕開けを告げた。)
貴殿が冒険者のレド殿とお見受けする。シエルの救出ご苦労であった。さ、あまり時間は残されていないんだ。準備が済んだのなら速やかに乗車してくれ。
(全身黒ずくめのポニーテール、この特徴からレドを特定することは容易かったことであろう。レドがギルドから出てくるなり甲冑に身を包んだ馬車の御者が声を掛けた。近衛隊は当番制で御者を回している為、面識のない様子から以前会食の場に手配された御者とは別の人物である。御者は同じ近衛兵としてシエルの一件で建前上の礼は言うものの、随分あっさりと話を済ませて乗車を促した。近衛隊一の雑用係と自称するだけあって、シエルはアリシア以外にも邪険にされていることが容易に窺える。そのことを一層肯定するかのように、御者が馬車のドアを開けると、中には騒動の犯人であるエルフリーデが心地良さそうに眠っているのであった。)
>1096
やはり既に御目通りを…少し羨ましい部分もございます。私達のような司祭職では聖下に御目通りすら叶わぬ身。アリシア様のような高潔で聡明な御方ならば、と聖女様もお考えになられたのでしょう…
お口添え感謝いたします。父なる神の下に、貴女の進む道に光多からん事を
(王国の騎士の長たるアリシアが既に教皇や聖女と接触している事を聞くと、何となく分かっていたのか視線を下に向ければぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。諸外国に赴き動向を探りながらその地で信徒を増やす諜報、工作員の一面を持ち程度行動の自由が許されている駐在司祭という立場の彼女でも雲の上の存在にも等しい教皇や聖女には個人での御目通りすら叶わないと漏らして。そして卑屈になってしまったと顔を上げればリズリットの心遣いに再び手を合わせて静かに目を閉じ感謝の意を伝えて)
…そういえば、最近は王国内で亜人達の抗議活動も活発化してきておりますね。つい先日も少し離れた教会近くでありまして…「鎮圧」にあたったのです。リズリット様の方は大丈夫ですか?奴ら、しきりにアリシア様のお名前を出しておりましたので…
(ふぅ、と一息ついてから切り出した話題は、王国内で起きている獣人のデモの事で。人間種至上主義を掲げる聖教国にとって人間種以外の存在は差別の対象とされる存在であるが故に、アンナの口調も当然と言わんばかりに獣人とすら言わず亜人呼び。とても聖職者とは言えないがアリシアと関わりのある彼女も何か被害は受けていないかと心配したようで)
>1097
「おい見ろよ、近衛隊だぜ……チッ、聖教国の手先が何でギルドに」
「誰か乗るぞ……あれ誰?」「さあ?なんか見たような気もするが」
「近衛隊の関係者にしちゃ野暮ったいな」「こら、早くしなさい!こっちだって馬車乗るんだから」
(昼前を迎えたギルド前。正面に堂々と停車する近衛隊の馬車の周囲に人だかりができている。高貴さとは縁の無い冒険者たちの拠点に似つかわしくない荘厳な馬車はそれだけで冒険者の注目の的になるが、近衛隊の排除対象となる獣人やエルフは忌々し気に馬車を睨むか、そそくさと立ち去っていく。
やがてポニーテールを揺らした黒ずくめの青年……レドが無造作にギルドの扉を開けて馬車へと歩き出すと、冒険者たちの注目はそちらへ集まる。周囲の冒険者たちには目もくれず、横柄な態度を取る御者を無言で睨みつけると、催促を無視して馬車の後部に回り、荷物を積み始める。積み終わると荷物をガサゴソまさぐってから、御者の正面に立って。)
言葉に気を付けろ。
(御者に鋭い視線を突き刺すレドの肩回りには白布がはためいており。これは受付で「アレ」と指示しておいた、師匠・ショウカクから誕生日に貰い受けたケープである。いつの日かレドが宮仕えをする日のためにとショウカクが着用していた羽織をリメイクして作られたこのケープは太陽を浴びてなめらかに輝き、カラスのように黒いレドを彩る。)
本来なら「勇者」レイラを通して抗議すべきところを我が友・シエルに免じて行ってやるのだ。お前の顔が潰されないだけありがたく思え。
(眉間に皺を寄せながらドスのきいた声で御者を罵るレドの姿からは、クレアに応対した時のような純朴な雰囲気は消えている。そもそも王国内で帝国兵が兵士を襲うなど本来は剣術指南どころの話ではない上、帝国兵を連れ帰るために身体を張ったシエルを邪険に扱われては怒りが隠せないものだ。御者を睨みながら馬車に乗ると、自分でドアを閉めて)
はぁ……なんでこんな帝国兵なんかと……。こん……な……?
(赤鞘の野太刀を抱きながら腰掛けると、まるで子供のように眠る帝国兵の女にちらりと視線をやり、うんざりして溜息を……あ、あれ。帝国兵……?おかしいな。何度も何度も視線をやると、隣で安らかな寝息を立てているのがあのシエルに暴行した女・エルフリーデと確認し……「は、はぁ!?」と口を押さえながら叫んで。口を押えたまま、驚きと困惑と……絶望に目を開きながら、呟いて)
おいおいクレアさん……いきなりとんでもない壁が来ちゃいましたよ……
>1098
なんだか最近は物騒ですよね…私は何ともありませんが、近衛隊の方は大臣クラスの獣人から説明責任を追求されたりと、忙しそうな印象を受けるのです。
(聖職者らしい仰々しい感謝の言葉に、なんだか身に余る栄誉を受けたような気がして、リズリットはにかんだ笑みを浮かべた。話題が獣人達の抗議活動へと移ると、アンナのなんとも攻撃的な表現に顔を引き攣らせるのを我慢して、神妙な面持ちとなり自身の近辺の状況を伝える。当然ながら、同じ陣営とはいえアリシアとの直接の上下関係を持たないリズリットには飛び火していないが、アリシアの属する近衛隊は宮廷内の獣人有力者達を中心に槍玉に上がっていた。亜人に偏見を持たないリズリットにとって、本心では自業自得だろうと思っているものの神妙な面持ちを崩さずに哀れんでみせる。)
>1099
チッ…庶民風情が…
(鋭い視線を突き刺された御者は吐き捨てるようにレドの出自を罵ると、踵を返して馬に跨った。プライドの高い近衛兵にしてみればアリシアに気に入られただけと捉えている、ぽっと出の冒険者に凄まれたことが癪に触ったのだろう。レドが乗車したことを確認すると、乱暴に馬車を走らせた。)
…うぐっ…痛いなぁ…
おや、レドさんじゃないですかぁ。待ちくたびれて寝てしまいましたよー。これからしばらくは同じ屋根の下で寝食を共にする身、今から親睦を深めようではありませんか。
(馬車が急発進したことでエルフリーデは壁に頭を打ち付けた。ここに来るまでに宿でシャワーを浴びてきたのだろう、甘い石鹸の匂いを漂わせながら身を起こすと、レドの姿を視認するなりニヤついた笑みを浮かべて話しかける。その様はまるでシエルの一件などなかったかのように馴れ馴れしく、そもそも自分が過ちを犯したという認識がないのであろう。今のところは敵意を見せておらず言葉通りの友好を求めているが、美しい見てくれとは裏腹に悪魔にも等しい倫理観である。)
>1101
ったく、こんな血生臭いシンデレラを世話をしろってのか。夢もへったくれもねぇな……アリシア様も別便にしてくれよ……
(エルフリーデを拒絶するがごとく、眉間に皺寄せ腕を組んでブツブツ呟いて。冒険者から近衛隊剣術指南というシンデレラストーリー。だがその実態は胡散臭い近衛隊の馬車に横柄な御者、お城にいる王子は継母より意地悪な第一王子、そして何より、馬車に乗るのはシンデレラではなく血と酒の臭いしかしない帝国兵……夢と希望もあったもんじゃない地獄のような現実に、がっくりと溜息を吐いて。
雑な発進で身体が揺れる。そこに御者の怒りと侮蔑を察して「野郎、なめやがって……」と吐き捨てていると、今の振動でエルフリーデが起きてしまった……げんなりした顔を、目覚めた彼女に向けて)
……俺は嫌だね。誰かさんのせいで疲れてるんだ、寝るから起こしてくれるなよ。
(今朝の所業など無かったかのようにいけしゃあしゃあと挨拶するエルフリーデに、腕を組んだままぷいっと顔を背けて。その顔に案外怒りは無い。今は波を立ててはいけない、シエルに制されている、というのもあるが、倫理観が違い過ぎて話が通じそうにない諦めの方が勝るのである。
それでも、一瞬ちらっとエルフリーデに視線が行って。密室に漂う石鹸の香りに、どこかアリシアに通ずる悪魔的な美貌と魅力……完全に無視できるレドではなかった。)
>1102
冷たいですねぇ…王国人には人の心がないのでしょうか。
(当然の如くつれない態度を取るレドに、エルフリーデは身を身を乗り出して顔を覗き混むと、ジト目を向けて抗議した。人の友人を刺しておいて驚くほど綺麗なブーメラン発言である。透き通るような蒼眼にレドの顔を映しながら、どうすれば彼の気を引けるのか思案していると、帝国人らしい野蛮な発想に至った。)
我が覇道を~…ふふっ、冗談です。けど、レドさんが寝てしまうのなら、暇を持て余して使ってしまうかもしれませんねぇ。
(完全な脅迫である。レドのよく知る魔法の詠唱を口ずさみ、途端に赤黒く禍々しい魔法陣が車内に顕現しかける。しかし、全貌を現す前に詠唱を中断したことで霧散した。忌憚のない笑顔で冗談とは言うものの、自分に構わなければ使用する可能性を示唆している。レドの技量を持ってすれば発動前に止めることも可能だと思われるが、無視されるくらいなら、そのいざこざでさえエルフリーデにとっては娯楽なのだろう。大人しく暇つぶしに付き合うか、相手にせずに無理やり付き合わされるか、ないも同然の選択肢を提示した。)
>1103
んなっ!?…………あぁ、なんて野蛮なんだ、アリシア様も何故このような帝国兵を……なあ、なんでだよ。
(見覚えのある悪魔の魔法によって車内が赤黒い地獄絵図と化すとさすがに身震いするが、霧散と同時に呆れに転じて溜息を吐いて。近衛隊の馬車でこんなことを実行に移したら王国に断罪されるどころか本国に帰れない。そんなこともわからないのか?脅迫の仕方さえ知性のかけらもない……
こんな奴にシエルを刺したことを非難したところで、それは害鳥に「畑を荒らしてはいけません」と説くようなものだ。なんでこんな害鳥が近衛隊に招かれたのやら……ひとまずその蒼い瞳にジト目を刺しつつ、そもそもアリシアに呼ばれた理由を聞いて。)
>1104
そんなもの決まってるじゃないですかぁ。両国の親睦を深める為ですよー。私としては貴方が剣術指南役に指名された理由の方が気になりますけどねぇ。若い無名冒険者を招くなんて、何か裏があるとしか思えません。宮廷、聖教国、はたまた新勢力か…果たして貴方はどこの差し金なのでしょうか。ふふっ。
(レドから話題を振られたことに嬉しそうにニコッと微笑むと、派遣された建前上の理由を述べるに留めた。後先を考えない愉快犯と言えど、流石に帝国側の真意を易々と明かすほど愚かではないらしい。エルフリーデは言葉を続け、逆にレドが指南役に選ばれた真意を尋ねる。レドがエルフリーデを訝しむのと同じように、エルフリーデから見たレドもまた同様の対象であった。なにも暴れる為だけにデュランダルを訪れた訳ではなく、選択肢の最初に「宮廷」を持ってくる辺り、調査対象の姿形を知らない制約の中で短時間の内にレドの素性や総合庁舎での宮廷役人との接触まで調べ上げたことが窺える。返事を待つエルフリーデの顔は心底楽しそうにニマニマとした笑みを浮かべており、そこに敵意はなく、一愉快犯として状況がより煩雑化することそのものを楽しんでいるかのようであった。)
>1100
本当に物騒です…帝国も軍備拡張を進めているとの噂もあります。亜人達もそうですが本当の敵は神に背く人間…差し迫った脅威ではないとの事ですが名が通るという事はそれだけ敵も作りやすくなる…王国の象徴である王家ともなれば毎日の様に糾弾が起きているでしょう。ああ、神よ…
(他国文化を排斥し独自路線を推し進め始めた帝国を間近で知ったアンナは、偏見も勿論あるが脅威度は獣人達と同じなのか常に槍玉に上げられ続ける王国の近衛隊、及び王族の面々を憂いて静かに神に祈って。リズリットが抱える事情、立場、そして王国内で渦巻くどす黒い闇の部分を知らないアンナはこうして2人きりで喋っているからなのか奥底に眠る性格が垣間見えた。聖教国の人間として植え付けられた根底意識もあってか発言は無礼極まりないものだが情勢を憂い神に縋り、そして導かんとする信仰心は本物なので歪にも見えて)
………名残惜しいですがそろそろ巡回の時間が近づいてきました。長々とお時間を頂戴してしまい申し訳ございません、リズリット様。
お恵み頂いたアリシア様…そして第三王女ルイーズ様にも宜しくお伝えください。…貴女に神のご加護があらんことを。
(大聖堂の大時計を見やれば、自身の職務を遂行せねばと腰を上げる。孤児院への寄付の礼、としては長々と時間を取ってしまったと深々と頭を下げて謝罪を述べれば、仮面の笑顔に等しい柔和な笑みを浮かべて。重ねて礼を申し上げれば権杖を手に持つと、外回りに行く為に法衣のフードを被ってはシャンシャン、と数回打ち鳴らしてその場を後にしていき)
(/返信遅れて申し訳ございません;一度区切りとさせていただきたいです。別の絡み文を出し直そうと思います!)
>1106
いえ、こちらこそ巡回前だと言うのに息抜きに付き合って頂いたこと、お礼申し上げるのです。それでは、いってらっしゃいませ。
(時間を取ったことを謝罪されると、リズリットは自分の方こそ巡回前という忙しい中で時間を取ってしまったと、忌憚のない笑みを浮かべて感謝の言葉で返した。お互いに謝ってはなんだか辛気臭いという、場をしらけさせない為に王城内で培われたコミュニケーション能力からの判断である。話を終えると、侍女らしい丁寧な所作で頭を下げて、「いってらっしゃいませ」とアンナの後ろ姿を見送りながら思考に耽った。一見人が良さそうな司祭でさえ亜人への差別を隠そうともしない…自らの真の主人である第一王子ジェラルドの為にも、やはり危険分子たる聖教会の動向には気を配っておくべきだろうと心に刻んだのであった。)
(/了解致しました!こちらこそあまり返信出来ず、また、お互いに特殊なポジションのキャラということもあり、なかなか方向性を見い出せずにグダってしまい大変申し訳ありません…)
>1105
俺は「勇者」の弟分だ。あの人は無名だろうと分け隔てなく接してくれる方だが政(まつりごと)は好まない。だからアリシア様との会食に俺が代理で行くことになって……そこでお眼鏡にかなったというわけだ。
というわけで、それは俺に聞いてもしょうがない。アリシア様に直接伺うことだな……親しいんだろう?今朝みたいなことしでかしても見逃してもらえるくらいには……
(エルフリーデを横目に見ながら、刀を抱きながら腕を組んで質問に答えて。今朝正体を明かしてから今までの間に自分の素性はおろか、宮廷の事まで探り当てるとは……単なるサイコパスではないと眉間に皺を寄せるが、宮廷のことは触れなかった。なにも嘘ではない。宮廷の存在は横槍に過ぎない。「勇者」の伝手でアリシアと出会い、糸目野郎と切り結んだ腕を認められ、それから……という経緯自体は事実であり、そこに招かれる側の意志が介入する余地は無い。
レドがこうして宮仕えする日が来る時のためにと師匠が遺した白いケープを指で撫でながら話し終えると、「なにが親善目的なものか、他国で暴れておいて」と言わんばかりにエルフリーデを睨み、アリシアとの関係を質問して。ここまでの分析力がありながら今朝の暴挙、アリシアに抗議されないと知った上での行動だろう。アリシアもまた招聘当日になって部下に捜索させる辺り、エルフリーデの気性を把握しているらしい。何より今朝の狼藉の黙認……この帝国兵とアリシアは親しい間柄か……あるいは相当な利害関係がある、とレドは見ていた。)
>1028
へぇ、つまり貴方とアリシアさんはそういう関係ってことなんですねぇ。これは思いがけない収穫を得ました。
そうですねぇ…私は貴方ほど親密ではありませんが、彼女にはそれなりに親近感を抱いていますよ。きっと彼女もまたそうなのでしょう。なにせ同類ですから。
(会食を機にお眼鏡にかなったと聞いて、エルフリーデはニヤッと口角を吊り上げると、揶揄うような口調で二人が恋仲なのだろうと推測を立てた。間違いではないのだが、その特異な経緯の詳細を話せない為にこのような結論に至るのは当然であろう。皮肉交じりにレドほどアリシアとは親密ではないと前置きしつつ言葉を続けると、自分自身とアリシアとの関係を「同類」と例えた。レドがその意味に辿り着くわけがないと踏んでいるのか、挑発的な笑みを浮かべているが淡々と事実を述べたに過ぎない。自分もアリシアも同じく悪魔憑きであると。)
>1109
同類ねぇ……あんたアリシア様と違って子供好きには見えないが。
ああ……せっかくだから観光案内してやろう。あの城みたいなのがデュランダル中央庁舎だ。デュランダルは冒険者の都……冒険者になりたくてここに移住する奴は、まずあそこで住民登録をする。いわば冒険者のはじまりの地というわけだな。
(頬杖を突くと、エルフリーデに「子供を慈しむアリシアとお前のどこが同じなんだ、一緒にするな」とばかりにジト目で溜息を吐いて。アリシアとの関係は見抜かれたが、周知の事実だから何の痛手も無い……というかそうでもなければ無名の平民が近衛隊に招かれるはずもないから。だがこの恋も、いま自分が帯びている使命を果たせば壊れるであろう、脆く儚いものだ……
ふとエルフリーデ側の窓の外から見えるデュランダル中央庁舎に視線が行くと、思い出したかのように指をさしつつ説明して。冒険者のはじまりの地、天を衝く城のごとき庁舎。レドはあそこに控える宮廷=第一王子派に呼び出され、「国の平和のためアリシアの罪を暴け」という密命、人間として終わっている任務を受けた。密命を受けてもなおレドの心は迷っている。「農民を弾圧せよ」「愛する者を裏切れ」と命じる国がもたらす平和。そんな偽りの平和などいらない、クレアさんを苦しめ泣かせた国などむしろ滅びればいい、とレドは考える。
だが宮廷の助力を得なければ、アリシアの「同類」……アリシアと同じ悪魔の魔法を操るこの帝国兵に、この国もアリシアも、そしてクレアさんも呑まれてしまう……葛藤に苦しみながら説明をするレドの声には覇気が無い。)
>1110
お察しの通り、たしかに子供は甚振っても面白くないので好きではありませんねぇ。今の貴方みたいに覇気がない人も。ですから…私を楽しませる為にも元気を出してください。こうすれば多少は気が晴れますか?
(レドの推察の通りエルフリーデは子供を好いていない。玩具になり得ないからという極めて自分勝手な理由を、さも当然のことかのように淡々とした様子で述べた。そして、その対象には覇気のない声色で観光案内をするレドも当てはまったようだ。中央庁舎には目もくれず代わりにレドの顔を覗き込むと、その頭に手を置いてニコッと微笑む。不憫な動機に似合わず、その様はまるで傷心の青年を慰める天使のようである。頭を撫でれば元気が出る…親しい人や憧れの人、このような関係性の人間からされたなら、それも有り得ることであろう。しかし、そういった人間関係を無視したエルフリーデの思考は短絡的で、まるで子供のような発想と言って差し支えない。それは彼女自身が人との温かな繋がりを経験したことがない故であり、帝国の劣悪な環境が今の彼女の人格を形作ったことを如実に表していた。)
>1111
あの、人の話を……様子のおかしい人だ。バカエルフ以上に……
(人の話を聞かずに頭を触ってくるエルフリーデに呆れ顔を向けながらも、されるがままに頭を撫でられて。人を刺したり突然頭が良くなったりと思ったら、今度はまるで子供のような無邪気な有様……考えが読めない。バカエルフ以上に。「エルフ」なだけに。
動機はひどいが……何はともあれ子供をいたぶる趣味は無く、人を元気付けようと寄り添う気はあるらしい。頭を撫でられるたび、レドの顔も穏やかになる。)
帝国兵エルフリーデか……愉快な遠足になりそうだな。
(エルフリーデの微笑みを見つめながら、彼女の頭に自らの手をポンと置いて。天使のような笑顔に、酒浸りなところ……何故かクレアさんを思い出す。あの人も罪悪感を捨てたらこの帝国兵のようになるのだろうか。この女と共に往くこれから先の道中、そして生活に、一体何が待ち受けているのか……と思いを巡らせながら、ただ彼女の蒼眼に自らの灰色の瞳を向けて。)
>1112
…な、何をしているんですか…べつに私は気を落としていませんよ…?
(頭に手を置かれる直前、エルフリーデは怯えたようにびくりと身体を震わせると、反射的にレドの頭から手を離して腰に携えた剣に添えた。帝国では人に触れられる時、悪意や敵意によるものが殆どである為だ。そうした事情から、自分が触れるのならまだしも人に触れられることには特に警戒している事が窺える。一連の所作から、今朝の騒動も結果的に楽しんでいたとはいえ故意ではないのだろう。レドに敵意がないと判断すると、抵抗することなくその手を受け入れるものの、きょとんとした様子で小首を傾げてその意図を尋ねた。)
>1113
む……!?
あっいや、同じ屋根の下で寝食を共にする身なら、お互い触れ合って元気を分かち合おうと思ったんだが……触られるのは嫌か。すまない。
(頭を触った途端急に剣に手をかけるエルフリーデに真顔になって。今まで多数の女性に触れてきたが、ここまで警戒されたのは初めてだ。クレアさんですら俺に接触を許したのに……と戸惑っていると、エルフリーデが再び自らの手を受け入れる。シエルを刺した経緯はともかく、シエルを蹂躙したことには変わりが無い。そして一方的に人の頭を触っておきながら自分の頭を触るのは許さないでは、身勝手が過ぎる。コイツに謝る必要など本来は無い。無いが……もしかしたらこの女もまた、接触を極度に恐れるほどに虐げられた人間なのかもしれない……こればかりはどうも俺の方が軽率だったかもしれない……と、困り顔になりながら頭を触った経緯を説明し、ゆっくりと彼女の頭から手を離しつつ詫びて。)
>1114
いえ、嫌というわけでは…ただ、怖いんです。祖国では、隙を見せると命も有り金も全て奪われてしまうので。平和なこの国ではそんなこと滅多にないでしょうし、この国の価値観に沿った振る舞いを心掛けてはいるのですが、触れられるとなるとつい反射的に身構えてしまうんですよねぇ。
(語られた経緯に納得するとエルフリーデは完全に警戒を解いて、友好的なビジネススマイルを貼り付けた。決してレドに触れられることが嫌だった訳ではなく、寧ろ心地良いとすら感じていた。気恥しいそんな感情は内に留め、決して不快感からではなく祖国で培った防衛本能が働いたに過ぎないことを説明すると、比較的治安の保たれている王国に合わない自らの体質に、困ったように頬に手を添えて眉尻を下げた。)
あぁ…決して同胞が野蛮だと言いたい訳ではありませんよ?そこは誤解なきように。
剣術指南に選ばれるほど学のあるレドさんであれば歴史の一端はご存知かもしれませんが…少々遠い遠い昔話を致しましょうかぁ。
我々の御先祖様は大陸中央の肥沃な大地に住まう農耕民でした。しかし、悲しいですねぇ…恵まれた土地というのは誰もが欲するものです。欲に目が眩んだ周囲の異民族は剣を手に、農具しか握ったことのない非力な御先祖様達を雪と氷に覆われた不毛の地に追いやりました。ふふっ、可哀想そうですねぇ。食い繋ぐには獣を狩るしかありません。生きる為に、農耕民だった御先祖様達は鍬ではなく初めて剣を手にしました。けれど、獣など無限に湧いて出てくるものではありません。狩れば狩るほどその数を減らしていき、やがては小兎すらもいなくなってしまいます。そうなれば、後は隣人から奪うしかありませんねぇ。仲間内は勿論、かつて自分達を追いやった異民族すらも新たな狩りの対象です。鍬の振り方は忘れてしまっても、剣さえ振るうことができれば食い繋げると、御先祖様達は素晴らしい気付きを得てしまいました。そうして誕生したのが「力こそ正義」を国是とする我が祖国です。めでたしめでたし。
我々は奪うほかに生きる術を知りません。かつて我々がされたように、弱き者から奪うのは正当な権利です。だから決して野蛮などとは思わないでください。これは立派な文化なのですから。
(前述の説明では帝国人が野蛮だという誤解を生みかねない。そう考えたエルフリーデは、指南役に選ばれるほどの人間ならば知っているかもしれないと前置きしつつ、帝国誕生にまつわる長い昔話を語った。明るい口調に似合わず紡がれる物語は迫害の歴史。奪う以外に生きる術を失った哀れな農耕民達のお話である。今や農具の振り方も忘れた帝国人が、それも雪に閉ざされた不毛の大地で自給自足の生活を営むことは不可能であろう。生きる為に奪う、かつて奪われたのだからそれは正当な権利なのだと、たとえ同胞に命や金品を狙われようとそれは文化なのだと、エルフリーデは本気で信じている。おそらく彼女のみならず殆ど全ての帝国人に共通する認識なのだろう。その振る舞いは、クレアが懸念していた帝国人の価値観の違いを如実に表していた。)
>1115
そうか、そんな歴史が。きっとご先祖も再び弱者として抑圧されたくないと必死で戦ったんだろう。野蛮どころか当然の帰結だな……
(エルフリーデの語るグラキエス帝国史を頷きながら聞き入って。「力こそ正義」。だがその実態は、侵略により祖国を追われ、生き残るためには暴力に縋るしかなかった弱者による復讐国家……暴力や略奪に走るのは自らを強者と示したいため……弱者になりたくないという恐れの裏返しだろうと、静かに目を閉じ結論付けて)
(レド!あんたなに絆されてんだよ!こんな……略奪者なんかに!)
(早まるなペトラ。今こいつ一人をぶちのめしても意味がない)
(だって……)
(これは……単なる悪の帝国なんかじゃない)
(ふと窓の外に視線をやると、帝国に迫害された昔の仲間・女戦士ペトラの怒りの形相がレドにだけ見える。憤慨する仲間に首を振りつつ、自らの東刀を撫でて。俺だって、飢饉には弾圧で返すこの国で生き残るために鋤でなく剣を握った身の上だ。正直気持ちは分かる……)
ま、立派か野蛮かはさておき……触られるのが嫌な理由はよくわかった。ここまで生き延びるのも大変だったろうな。
(どうやら帝国人の暴力性は文化や信条として根付いているようだ。王国の価値観とは到底相容れそうにないが、咎めたところで不毛な問答になるだけだろう……ひとまずエルフリーデに静かな目線を送り、触られることすら恐怖を感じる帝国でここまで生きてきたことを労って。)
>1116
ええ、それはもう大変でしたよぉ。人攫いに捕らえられたことだってあります。だって私可愛いですから。ふふっ、あははっ!…ハァ…ハァ…
(レドの労いの言葉に同調すると、人攫いに捕まった過去を冗談交じりに明かした。神秘的にも見える銀髪を靡かせて、忌憚のない笑みを浮かべるエルフリーデは確かに王国の基準で見てもかなりの美人である。可愛いのは事実だが、この傲慢な自画自賛に自分でツボって、耐えきれずに吹き出した。腹を抱えてしばらく笑い転げ、ついには疲れ果てると、ストンと自身の頭をレドの肩に置いてもたれかかる。触られることを恐れるエルフリーデが自分の身体を人に預ける、その行動は言葉にしないまでも、レドがエルフリーデから一定の信頼を得たことを意味していた。帝国の歴史を聞いて理解を示してくれたレドに対してのある種の敬意なのだろう。自分の雪のように冷たい肌とは違うレドの体温をその身に感じながら、エルフリーデはニコッと微笑んで「人肌の温もりも悪くはありませんね。」と耳元で囁いた。
そうこうしている内にも馬車は王都の地を踏み、窓から見える光景には陽の光で純白に輝く王城が姿を覗かせる。)
>1117
エルフィ……
(人攫いに捕まった過去を自画自賛をまじえて笑いながら語るエルフリーデに、悲し気な目を向けて。一見傲慢だが、人はどうにも辛い事を話す時はかえって笑うという。城勤めの過去を思い出して作り笑いを浮かべたクレアさんのように、この女もまた……憐れみのあまり返す言葉が無く、エルフリーデの愛称を呟いて。)
んなっ!?近ぇよばか!……まあいいや。
(突然自分の肩に頭を預け、耳元で囁いてくるエルフリーデにびくっとして、顔を赤くしながら叫んで。アリシアがいるのに異性と、それも帝国兵となんてくっついていられないが、アリシアのような悪魔的な魅力と、今まで人の温もりを知らずに生きてきたかのような肌の冷たさに負けて引き?がせず、結局恥ずかしがりながらも彼女の接触を受け入れて。そうこうしている内に見えてきた王城を見ながら、どこか観念したかのように呟いて。)
……女慣れするのもまたカルロス様に近づく一歩だしな。
>1117
エルフィ……
(人攫いに捕まった過去を自画自賛をまじえて笑いながら語るエルフリーデに、悲し気な目を向けて。一見傲慢だが、人はどうにも辛い事を話す時はかえって笑うという。城勤めの過去を思い出して作り笑いを浮かべたクレアさんのように、この女もまた……憐れみのあまり返す言葉が無く、エルフリーデの愛称を呟いて。)
んなっ!?近ぇよばか!……まあいいや。
(突然自分の肩に頭を預け、耳元で囁いてくるエルフリーデにびくっとして、顔を赤くしながら叫んで。アリシアがいるのに異性と、それも帝国兵となんてくっついていられないが、アリシアのような悪魔的な魅力と、今まで人の温もりを知らずに生きてきたかのような肌の冷たさに負けて引きはがせず、結局恥ずかしがりながらも彼女の接触を受け入れて。そうこうしている内に見えてきた王城を見ながら、どこか観念したかのように呟いて。)
……女慣れするのもまたカルロス様に近づく一歩だしな。
(/一部文字化けがあったので訂正します……)
>1119
エルフィ…随分と可愛い名前で呼んでくれるんですねぇ。軍では「馬鹿」や「愚図」だの碌なあだ名を付けられないので、なんだか新鮮な気持ちです。
(呟かれた可愛らしい愛称を繰り返すと、少しの間を置いてエルフリーデは口角を吊り上げた。馴れ合いを良しとしない帝国軍に於いてあだ名とは悪口が常である。初めての愛称が余程気に入ったのか無意識にレドの腕に抱きつくと、真っ直ぐにその瞳を見据え、言語化出来ない内なる喜びを「新鮮な気持ち」と言い表した。あまりに強く抱き締めているため、エルフリーデの豊かな双丘はレドの片腕を完全に飲み込んでいる。そんなやりとりの最中にも馬車は進み、遂に城の正門に到着した。改修工事でもしているのか門は幕に覆われており、警備に当たる衛兵も通常数人のところを数十人体制の厳戒態勢である。そして、眠たそうにあくびをしながら、臨時で編成されたであろう警備隊の指揮を執っているのは緑髪のエルフの騎士…レドもよく知るバカエルフであった。)
>1120
く、苦労してんだなエルフィ……ああっでも、そろそろ離れた方がいいぞ?ほら、城に着くし!アリシア様に見られたら大変なことに……
(なにげなく呟いた愛称が相当気に入ったエルフリーデがレドの腕を強く抱きしめると、ますますあたふたし出して。しなやかにきらめく銀髪、華やかな香り、吸い込まれそうな蒼き瞳、そしてつい視線が行ってしまう、自らの腕を飲み込む……で、でかい……なんだか心まで飲まれそうだ。でもここまで懐かれたからには振りほどくわけにもいかず、ひとまずついに目の前に現れた窓の外の王城を指差して気を逸らそうとして。
だが城の正門に入って「あるもの」を目にした途端、レドのあたふたした動きは急に止まり、歯を食いしばり始めて。エルフリーデに抱かれていない方の手は自らの東刀をがっちりと握りしめ、抱かれた腕を包み込む豊満な感触の源には目もくれずに、瞳孔の開いた瞳を窓から見える「あるもの」に突き刺して。「あるもの」とは?なぜか幕に覆われた正門ではない。レドが睨みつけている「あるもの」とは緑髪のエルフであり、本来は正門の警備などするはずのない人物。自分とレイラの命を狙い、自らの技をことごとく防いだ挙句に野原へ捨て置いた因縁の相手。共和国数十万殺し。百年王の側に仕える魔女にして、王に仇なす者を闇に葬るフードの死神……フィリア王国騎士団副団長・第二席エリス・フィンベル!その忌むべき名の代わりに、自らが付けたまたの名を顔を歪ませながら呟いて。)
バカエルフ……!馬鹿な、なぜこんなところに……!
>1121
私よりもあんなエルフの方がいいんですかぁ?そうだ、レドさん。今晩はアリシアさんと三人で楽しいことしましょうよ。ね?
(すっかり外にいるエリスにレドの関心が向けられたことに、エルフリーデは少しだけ妬いてしまったようだ。一層身体を密着させると、エリスから興味を逸らすべく甘い声色でレドの耳元に囁く。恋愛においては純真なアリシアが同意する訳もないのだが、エルフリーデにはそんなことは関係ない。断るのならアリシアの目の前で見せつけるまで、がっちりとレドの腕をホールドしている様からはそんな本気度合いが窺える。
一方で馬車は何事もなく正門を通過するが、その刹那、自らに向けられた敵意に気が付いたエリスはレドに視線を返して、挑発するかのようにニヤッと口角を吊り上げた。エルフ種特有の高潔さはどこへやら、相変わらず性格の悪いエルフである。)
過去編「たとえ命に代えても」
近寄らないでッ…!
(王城の一室に、罵声と共にティーカップの割れる音が響く。声の主はカトリーナ、フィリア王国の第二王女である。王族の中でも聡明で、他国に嫁いだ姉に代わり王位継承の有望株に数えられている一人だ。そんな彼女が今、珍しく気が立っている様子であった。罵声を浴びせられたメイドは信じられないといった様子で後退ると、ついには耐えきれずに部屋を飛び出した。後にはカトリーナと散乱した破片のみが残される。)
あちゃー…どうしたのさ。君が取り乱すなんて珍しい。私でよければ話を聞かせてくれないかな?
(騒ぎを聞きつけたエルフが一人、その部屋へと足を踏み入れた。彼女は王国騎士団副団長を務めるエリス。困り顔で頭を掻きながら、ご乱心の王女に臆することなく歩み寄ると、まだ成長途上にある少女の為に膝を折り曲げて、親身に話を聞こうと試みた。)
エリス…あなたは、私の味方…?
勿論だとも。あぁ…王族を守るのが私達騎士の仕事だからね。
(不安げに瞳を揺らしたカトリーナの問いかけに、「勿論だ」とエリスは考えるまでもなく返答する。しかし、あまりに返答が早すぎたためか、カトリーナの目には未だ疑念が感じられた。更なる質問を投げかけられることを察したエリスは少しだけ視線を宙に彷徨わせ、取って付けたかのような理由を並べると、カトリーナは押し黙って頷く。どうやら納得してくれたようだ…エリスは心の内で胸を撫で下ろした。)
お姉様が、亡くなったと聞いたわ…群衆に石を投げられながら…首を刎ねられたと……こんなのおかしいわ、絶対に裏があるの!きっとお兄様が…だから誰が味方か分からなくて…怖くて……私…わたし…死にたくないのっ…!助けて、エリス…!
(涙ながらに心情を打ち明けたカトリーナを見て、エリスの胸は締め付けられる。あぁ…賢いこの子は姉の訃報を聞いて真相に辿り着いてしまったようだ…腹違いの兄弟達が普段と変わらない日常を過ごす中で、この子だけが現実と、身に迫る脅威を見据えている。カトリーナの置かれている状況を冷静に整理すると、エリスは覚悟を決めて瞳を開いた。この子の不安を取り除けるのは私しかいない…私であるべきなんだ。)
そっか…それは怖かったね。大丈夫…全部、私に任せてよ。君は絶対に私が守るから。
本当に…?
私は100年この国を守ってきた副団長さ。人っ子一人守るくらい造作もないよ。
(カトリーナを抱き締めて、頭を優しく撫でる。従者が信用ならないというなら食事だって用意するし、あらゆる身の回りの世話をしたって構わない。文字通り、エリスは全て任されるつもりであった。いつもののらりくらりとした様子など微塵もない姿を前にして、真っ直ぐな瞳でカトリーナが投げかけた問いかけは疑念ではなく最終確認である。エリスは自信満々に胸に手を置いて、己が実績と職務にかけて守り抜くことを誓った。)
そこまで言うなら信じるわ。でも、どうしてそんなにも尽くしてくれるの…?
だって君は………君の亡きお母さんと約束したんだ。何があっても君を守るって。たとえ命に代えてもね。
そう…お母様と……お母様のお話色々聞きたいわ。私、会ったことないもの!
ええと…別の話題にしないかな?もっと楽しそうな話があると思うけど…
勿体ぶらずに教えなさいってば!
(エリスの言葉と表情に嘘は感じられない。しかし、騎士としての使命感に駆られて、というのはエリスの人柄を知る人間であれば誰もが疑問を抱かずにはいられないだろう。どうしてここまで尽くしてくれるのか、カトリーナの尤もな質問に何かを告げようとしたエリスは思い留まり、ばつが悪そうに視線を逸らして暫し言い淀んだ。思考を終えて、言葉を待つカトリーナに視線を戻すと、これは、彼女が産まれてすぐに亡くなったという母親との約束なのだとエリスは語る。「たとえ命に代えても」、この言葉に、決して他人事ではない覚悟を宿して。母との約束と聞いてカトリーナはさらに興味を示すが、これまたエリスはばつが悪そうに天を仰ぎ見た。なんとか話題を逸らそうとするがカトリーナはなかなか引き下がらない。問答の末に最後にはカトリーナが折れて、代わりに一晩中エリスの生い立ちや趣味趣向、果ては恋愛遍歴まで、根掘り葉掘り質問責めされたのであった。)
>1122
ちょっ!何言ってんだよ!そんな親善あるか!あんた何しに……
(さすがにエルフリーデが密着を強くして、その上耳元で爆弾発言をしてきてはレドの意識もエリスから彼女へと戻る。身体をバタバタさせて彼女の密着に抵抗しようとするが……)
な…………ッ!
(緑髪のエルフがこちらに気味の悪い笑みを返してきた途端、またしてもレドの顔と身体は一瞬で凍り付く。まるで全てを見通したかのようなその笑みに心臓を射貫かれた感覚がする……思わず握りしめた刀も手から落としてしまい。しばしの硬直の後、思わず顔から流れ出た冷や汗を指で拭って)
人を弄ぶしか能の無いバカエルフめ、そうやっていつまでも笑っているがいい!この世に生まれて二十余年、いつも命を張ってきたこの俺だ。百年物の置物とは格が違うと、証明してやる……!
(エリス・フィンベル。百年王に仕える副団長。だがレドからすれば意味もなく自分を生かし、今こうして自分がもがいているのを笑うために何百年も生きている性悪エルフにしか見えない。……そういう女が第一王子派という安牌に属していないのは何故だろう……という疑問を頭の片隅に残しつつも、そのふざけた糸目をいつかひんむかせてやる!と改めて誓うと、冷や汗で湿った手を握りしめ、歯を食いしばり、エリスのいた方へ怒りの形相を向けて)
……というわけでシリアスな雰囲気で行きたいんだ。そろそろ離れてくれないかなエルフィ?
(何はともあれ当面の心配はこの帝国兵、エルフリーデだ。自らの腕を包む柔らかい感触にちらっと視線をやってから、彼女の顔に困り顔を向けて。敵意は逸らしたが別の意味で心配になってきた。夜這いとかされないかな、天井裏とかで寝た方がいいかもしれない……)
>1124
仕方ありませんねぇ…レドさんはほかの女にご執心のようですし、今日は諦めてあげます。
(レドが抵抗する度にぷるんと擬音を出して揺れていた双丘は、困り顔を向けられたことでついに腕から離れた。どんな感情であれ、自分以上にあのエルフがレドの気を引いたことが面白くないのであろう、エルフリーデは不貞腐れて窓の外に視線を向けてしまう。しかし、「“今日は“諦める」という言葉からも分かる通り、レドの貞操の危機は依然として健在のようだ。
しばらくして、馬車は王城の敷地内に併設された近衛隊庁舎前で停車し、黒い軍服に身を包んだ二名の近衛隊騎士に出迎えられる。馬車の中から見える二人の顔は爽やかな笑みとは裏腹に瞳に光が宿っておらず、「不気味な組織」という世間一般的な近衛隊の印象を裏付けるものであった。)
>1125
ふぅ……そうむくれるなよエルフィ。ありゃ俺の人生を変えた女……命がけの恋人なんだ。
(エルフリーデのとてつもない武器の感触が腕から離れたのを感じ取ると、つい今までその感触が残っていた腕に視線をやり、安堵の溜息を吐いて。すっかり拗ねてしまったエルフリーデに静かな視線を向けつつ、先のエルフの事を語って。エリス・フィンベル。第一王子派でもアリシア派でも無い副団長。行動原理はまるで分からないが、今回の件で介入してくることは間違いないだろう。その時こそケリをつけてやると誓いながら窓の外をちらりと見ると、いよいよ近衛隊庁舎に到着したと気付く。)
さあ着いたぞエルフィ。支度はいいか。
(エルフリーデに呼びかけながら落とした刀を拾い、出迎えの近衛兵を無表情で見つめて。どこまでも人をコケにするバカエルフのものとはまた違う、張り付いたような気味の悪い笑顔だ。会食で初めて会った時のアリシアのような……あれも悪魔憑きなのだろうか、と考えを巡らせつつ、馬車のドアが開くのを待って。)
>1126
へぇ…人生を。それでは、そう遠くないうちに私もレドさんの人生を変えてあげます。楽しみにしていてくださいね。
(エルフによって人生を変えられたと聞いて、エルフリーデは対抗意識を燃やしたようだ。視線をレドに戻したかと思えば、二ッと口角を吊り上げて、自分の手でレドの人生を変えてみせると宣言する。その目はまさしく捕食者のものであり、人生を変えるとは即ち既成事実を作るということに他ならない。レドが身を守る為にも、屋根裏で寝るという選択肢はもはや現実的なものになりつつあった。宣言を終えると同時に外で控える近衛兵によって馬車のドアは開かれ、支度を終えたエルフリーデはレドの確認の言葉に頷いて、共に馬車を出る。)
お待ちしておりました。エルフリーデ殿、そしてレド殿。エルフリーデ殿はコンラッド殿の元へ、レド殿はアリシア様の元へ別々にご案内致します。
(馬車を出た二人に男の近衛兵が恭しく頭を下げる。行き先が異なる為、別々に案内する旨を伝えると、もう片方の女の近衛兵にエスコートされる形でエルフリーデはその場を後にした。またすぐに会えるのだが、名残惜しそうにチラチラとレドに視線を送る様はなんとも乙女らしい。残された男の近衛兵の方も「お荷物はお部屋まで運んでおきますのでご心配なく」と前置きした上で、レドをエスコートすべく背を向けた。VIP待遇に慣れている為か、所作の一つ一つが丁寧で洗練されたものであるが生気のない瞳も相まり、まるで精巧な人形のような不気味さを醸し出していた。)
>1127
は、はぁ。そりゃどうも……
(なんだか変な方向にスイッチが入ってしまったエルフリーデの宣言に何とも言えない顔を向けて。馬車を降り、近衛兵の片割れにエスコートされ去り行く彼女の背中をげんなりした顔で見送って……ああ、ゆっくり寝られる保証すら無いとはとんでもない話を受けたものだ……だがある名前が頭に引っかかると真顔になる。「コンラッド殿」、連れの帝国兵だろうか。帝国もアリシアも、この王国で一体何を……と考えつつ、案内係の近衛兵に向き直って。)
ん……かたじけない。これからよろしく頼む。
(近衛兵に淡々と挨拶して後をついていき。何とも底の見えない男だ。近衛じゃなくて刺客の間違いじゃ……この配下の有り様といい帝国を呼び寄せた件といい、アリシアも最早悪魔に呑まれてしまったか。あの夜のことは幻だったのだろうか……一抹の不安を抱えつつ、眼前にそびえ立つ白き王城を見上げて。農民が王城などを目の前にしては緊張で立ち竦むだろうが、色々なものを抱えるレドは緊張どころではない。表情も足取りも、むしろ静かだ。)
ま、やるだけのことをやるんだ。そうだろう師匠(オヤジ)。
(師匠から貰い受けた白きケープをはためかせつつ、視線を近衛兵の背中に戻して。天を黒鷲が覆い、地に悪魔が笑うこの王城に、いま一羽のカラスが舞い降りる。)
>1128
レド殿をお連れ致しました。
(シエルが特異なだけで基本的に近衛兵は馴れ合いを好まないようだ。道中振り返ることなく淡々と歩みを進め、ものの数分で近衛隊庁舎の最上階へと辿り着く。そこに佇むのは今やアリシアのものとなった近衛隊長執務室。扉をノックして短く要件のみ伝えると、「通してください。」というアリシアの指示に従い、そのまま扉を解放してレドへ入室を促した。)
レド殿、お待ちしておりました。突然のお呼び立て、申し訳ありません。お疲れでしょうしソファに…と言いたいところですが、すみません。もう一つ我儘を聞いてほしいのです。少しだけ…甘えさせてください。
(レドの顔を見るなりアリシアは仕事の手を止めた。机の上には山積みの書類が並んでおり、騎士団の役職者が如何に激務かを物語っている。視線のみで近衛兵を下がらせると、二人きりになって初めてアリシアはその顔に柔らかな笑みを浮かべた。軽い足取りでレドへと歩み寄り、ひとまずは急に呼び立てたことを詫びる。本来であれば、レドの労をねぎらって休憩がてら雑談と言いたいところだが、今のアリシアはそれどころではない。レドと一夜を過ごしてからというものの胸の高鳴りが治まらないのである。頬を赤らめながら、抑えられない衝動に抗うこともなくレドに抱き着くと、その胸板に顔を埋めた。しばらく全身でレドを感じて落ち着きを取り戻すと、普段とは違うレドの装いに上目遣いで感想を告げる。)
そのケープ、良くお似合いですね。
>1129
(近衛兵に従いながら庁舎の中を進んで。道中は雑談一つさえ無く、響くのはカツカツという足音ばかり。やがてアリシアの待つ執務室に辿り着くと、ただ事務的な彼女の声が返ってくる。親しみやすさとは程遠い国王直属の近衛隊、二十越えたばかりの俺がどうやって剣術指南するべきか。そして今アリシアはどうなっているのだろう……無表情の下に悩みを隠しつつ、入室すると「冒険者レド、お召しにより参上しました。」とアリシアに一礼して。)
あ、アリシア様!?お会いしとうございました……
……このケープは亡き師の形見にして宮仕えの装い。これを纏いながらアリシア様にお仕えできること、光栄に存じます……!
(意外!アリシアの様子はつい今朝がた友人を帝国兵の生贄にした指揮官と同一人物とは思えないほど優しい。そう、一夜を共にしたあの日の時と同じだ。驚きと安堵に顔を緩めながら、アリシアの身体を受け入れて。上目遣いの彼女に視線を合わせ、照れながら褒められたケープの事を語って。ふと机を一瞥すれば山積みの書類が見える。そこにアリシアが抱える近衛隊の、そして名門ライデン家の惣領としての重責を感じ取れば、彼女を優しく抱きしめて。羽二重で織られた白絹のケープ。冒険に持ち出すには勿体無く、宮仕え用に、アリシアの下へ参じるために取っておいたそれはなめらかに輝き、レドの印象をより柔らかくする。)
>1130
なるほど、お師匠様の美的センスには感服致します。今やご挨拶に伺えないことが残念でなりません…
(レドの話を聞きながらケープへと視線を移すと、形見でありながら非常に状態が良い事に気が付く。きっと仕立ての良い品なのだろう、レドの黒い装いに対象的な純白のケープは良く映える。もし、いずれレドが纏うことまで考えていたならば、そのセンスには感服するほかにない。愛おしそうにケープの手触りを確かめながら、今や挨拶に伺うことも叶わないレドの亡き師へと想いを馳せて、アリシアは顔を伏せた。そして、同時に何かに気付いてピタリと動きを止める。そう、先程まで別の女(エルフリーデ)が密着していた事もあり、石鹸の甘い匂いがレドに移っていたのだ。アリシアはゆっくりと顔を上げると、不安に瞳を揺らしながら問いかける。)
レド殿…その…決して浮気を疑っている訳ではないのです。ただ、ほかの女の匂いがしてはどうにも不安になってしまって……再会して早々にはしたないのは承知していますが…今一度、愛を確かめさせてください。
(まさかレドが帝国兵に目を付けられたなどとは想像もしていないが、冒険者である以上は性別問わず様々な付き合いがあるのだろうとアリシアは理解しているつもりである。決して浮気ではないと、レドに対する信頼は揺らいでいない。しかし繊細なアリシアは、異性としての魅力がないのではないかと、自分自身に対する言い知れない不安が心の奥底で燻っていた。その不安を拭う為にも、再会早々に身体を求めることははしたないと承知の上で、瞳を潤ませてキスをせがんだ。レドも気が付いている通り今のアリシアは本来の人格である。きっとレドとの接触がその人格を呼び覚ますトリガーとなっているのだろう。あの夜と同じく、一人の恋焦がれる乙女としての懇願であり、皮肉にも、これから先アリシアを裏切ることになるレドへの洗礼でもあった)
>1131
う……事情は後で説明します。ただひとつだけ……アリシア様。俺はいつでも、アリシア様の味方ですよ……
(どうやらエルフリーデの匂いを嗅ぎ取られたらしい。やってくれたなあのバカエルフ二世……と、一瞬気まずそうな顔をしながらも、すぐ穏やかな顔になってアリシアの願いを受け入れて。「俺はいつでもアリシア様の味方」。彼女を裏切る密命を帯びておきながら恥知らずな発言だ。しかしアリシアに潜む悪魔が聖教国どころか、帝国、果ては同じ悪魔まで呼び寄せた以上、彼女を止めなければならない。せめて今だけは彼女の孤独と重責を癒してあげたい……そんな葛藤を胸に目を閉じ、アリシアの頭と身体をそっと抱き寄せれば、彼女の唇に自らの唇を重ねて。)
>1132
んっ…ふっ…レド殿…その言葉を聞けて安心しました。いつまでも…お慕いしております。
(目を閉じ、甘い吐息を漏らしながら身体を委ねる。しばらくして顔を上げると、未だ興奮の冷めない潤んだ瞳をレドへ向け、愛おしそうに彼の頬に手まで添えて、信頼と、変わらぬ愛の言葉を紡いだ。唇を重ねたことで不安が拭えたのだろう、緊張が解けてアリシアの身体は脱力し、一時的に、あの夜と同じくレドの支えなしでは立つこともままならない状態となっている。激務によるストレスの反動でもあるのだが…今はそれすらも心地良いといるほどに、全幅の信頼を置いた相手に全てを委ねるような感覚に快感すら覚えていた。その危うさは、未熟な身体と精神に悪魔を宿し、神経を擦り減らしながら政にかまける彼女の限界が近いことを示すものでもあった。)
>1133
ん……っっ…………!
……はぁ、はぁ…………アリシア様、だいぶお疲れのようで……一旦ソファで休みましょう。気の済むまで側におりますから。
(愛する人の柔らかい唇を心の赴くままに吸ってから、紅潮した顔、潤んだ瞳をアリシアに向けて。彼女の優しい手を頬に受けるその顔の距離は、お互いの熱い吐息がぶつかり合うほどに密着している。ああ、こうしていつまでも愛を交わせていられたら……と願いつつアリシアを抱き寄せていると、彼女の柔らかい身体にまるで力が入っていないことに気付く。あの「地獄の門」とやらを使った形跡も無いのに。どうやら近衛隊という重責そのものが彼女を苦しめているらしい……アリシアの膝裏に手を回すとお姫様抱っこして、ソファに座って休みましょうと提案して。無論ライデン家としての誓いがある以上、事を起こす気は無い。共に座ることでアリシアを心身共に癒したいだけである。穏やかな顔がそんな下心の無さを物語る。)
>1134
お気遣い感謝します。そうですね…色々と話すべきこともありますし、ひとまず休憩に致しましょう。
(熱い口付けを終えてしまったことに名残惜しさを感じるも、抱え上げられたことで再びアリシアの胸はときめいた。口付けを交わす時とは違ってお互いに目を瞑っておらず、赤く染った顔を見られるのが恥ずかしくて、思わずアリシアはレドの胸板に顔を埋める。そんな状態でも何とか言葉を紡いで休憩に同意すると、ソファに移るまでにレドの負担を減らすべく、身体が揺れないようにギュッと力を入れて抱き着いた。エルフリーデよりは小ぶりなものの、服の上からでも分かる確かな柔らかさがレドの身体を包み込む。)
>1135
はわっ!?アリシア様!?……こ、こういうのも、心地よいものですね。あはは…………あっいや、すみません。座りましょう……
(アリシアに強く抱きしめられると、彼女を抱きかかえた状態のままうろたえて。密着が強くなって、彼女特有の温かくて柔らかい感触も肌に伝わってくる。このままずっとこうしていようか……と流されそうになると、首をブンブン振って思い直し、動き始めて。御者もそうだが、こうしてアリシアの寵愛を受けて剣術指南になったことを快く思わない人間は近衛隊の中にも腐るほど存在するだろう……「愛人枠で選ばれた男」などと見られては彼女も傷つく。実務面でも支えにならねば……と決意すると、アリシアを静かにソファに座らせ、自らも隣に座って。)
>1136
ふふっ、レド殿が望むなら…好きに触っても構いませんよ。ああ、でも…今はまだ早いですね。そういうのは夜に取っておきましょうか。
(初心なレドの反応を見てアリシアの内なる嗜虐心が刺激された。顔を上げると、レドが狼狽えた要因たる双丘に手を添えて、艶かしい笑みと声色で好きに触っても良いと言ってのける。揶揄い半分、本気半分といったところであろう。相変わらず、隙を見せればすぐに小悪魔的な振る舞いをする女である。アリシアの恋愛観では口付けのみならず、多少なら婚前に身体に触れることもセーフのようだ。レドなら勢いのまま一線を越えることはないだろうという確かな信頼があってこその提案でもあり、返事を聞く前からまるで確定事項かのように夜にしようと言い出すあたり、アリシア自身も乗り気の様子である。座らされたソファで、レドに寄りかかりながら上目遣いで顔を覗き込み、反応を伺うその様子は心底楽しそうであった。)
>1137
んなっ!?かっ、からかわないでくださいよアリシア様……
あ……そういうことでしたら、夜部屋に人が寄り付かないようにしていただけませんか……その、間違って誰かに見られたり……入ってこられたら大変なので……
(「触っても構わない」、そんな挑発的な言葉に面食らって身体をビクッとさせて。ついその柔らかな双丘に手が伸びそうになるが、おあずけを食らうとピタッと止まって。すっかり翻弄されている。これは悪魔じゃなくて素の性格なんだろうか……と、むずむずした顔になって。レドは小悪魔的な女に弱いのだ。
何か思いだしたかふと天井を見上げると、すっかり赤くなった困り顔をアリシアに向け……いや、彼女の小悪魔的笑顔に目が反らせなくなって、夜部屋に人が寄り付かないようお願いして。男として断る理由は無いが、エルフリーデが乱入してきたら最悪だ……そうなればどんな淫らな、いや恐ろしい光景になることやら……とアレコレ想像すると、指を頬で掻いて。)
>1138
それもそうですね…では、今夜は私の部屋にお招き致しましょう。そこならば誰も訪ねてくることはないでしょうから。
それに……じつは、レド殿の泊まり先はあの猫と同室で手配しているんです。最愛の人を別の異性と寝泊まりさせることは不本意なのですが、自由に動かれては困りますし…やむを得ません。レド殿にはご不便をお掛けしますが、ご協力をお願いします。そ、その……色々と溜まった時は私を頼ってもらえれば…精一杯頑張ります…
(レドの懸念を聞いて、アリシアは顎に手を添えて少し考える素振りを見せると、レドを私室に招くことに決めた。一般の宿舎に比べれば遥かに立ち入りのハードルが高い為、レドの不安を拭うには十分だろうという判断である。そして、言いにくそうに視線を下げ、間を置いて言葉を続けるアリシアは、さらなる理由…衝撃の事実を明かした。その内容はエリーゼの監視のためにレドと同室で宿泊先を手配したというものである。不本意だと言うアリシアの言葉に嘘はなく、説明の最中にも無意識にレドの服の袖を強く握った。年頃の青年が同年代の異性と相部屋、何がとは言わないがきっと溜まるものもあるだろう。万が一にも間違いを犯さぬように、そういった困り事は自分に任せてほしいと告げるアリシアであったが、内容が内容の為に先程までの小悪魔的余裕は既になく、いつの間にか自分を見据えるレドにも負けない程に顔が赤く染まっていた。)
>1139
~~~~~~!!!
いっいけませんアリシア様!シエルから事の重大さは伺っています!おっ、俺もひとかどの剣士、任務に集中しますから!こ、今夜もそういう事はなさらなくて結構ですから……!
(アリシアのとんでもない発言に、袖を握られてない方の手で顔を覆い、声にならない声を上げて。顔などはもう溶岩のように真っ赤で、湯気まで出るほど熱くなっている。私室に招かれるだけでも相当なことなのに、エリーゼの監視に際しての「困り事」の処理までさせたら、もうアリシアの婚前の誓いを守れない……!首をブンブン振りながら、上ずった声でアリシアの提案を否定して。)
>1140
そ、そうですか…それ以外にも何かあれば遠慮せず相談してくださいね。
コホン…では、本題に移りましょう。指南役の具体的な職務内容をこちらの契約書に纏めてあります。ご確認の上、問題がなければサインをお願いします。
(レドの仕草や表情などから自分を思いやってのこととは理解しているが、全力で否定されたことに少しだけ自信をなくしたのだろう。アリシアは暫しシュンとした表情で俯くものの、咳払いをしてすぐに話題を切り替えた。袖から手を離し、そのまま自らの懐に収めていた封筒を取り出す。中には指南役の詳細が書かれた契約書が仕舞われているようだ。正式な書類だけあり小難しい言い回しで記載されているが、内容は大まかに以下の通りである。
・招集期間は二ヶ月 ・出勤は週三日 ・一日の実働時間は二時間 ・給金は月額で金貨十枚 ・成果次第で追加報酬あり
宮仕えだけあり、平民が休まず働いてやっと月収が金貨5枚ということを考えれば破格の待遇であった。そして、最後の追加報酬の一文のみ筆跡が異なることから加筆されたものであることは明らかであり、綺麗ながら丸みを帯びた女性らしい字体を見るにアリシアの好意であることが窺える。)
>1141
ははっ。では確認します……。……身に余る光栄です。ご厚遇に感謝いたします。…………。
(契約の話に入ると一転して氷のように冷たく静かな顔つきになり、アリシアの懐のぬくもりが伝わる契約書を両手に持ち、その文面を目で追って。たったこれだけの労働時間でこんな大金が……しかも近衛隊剣術指南という名声までつくからには、実際に得られる富はこれ以上と見える。剣を振る以外に生きる術のない、明日も知れない冒険者や剣術使いならこぞって仕官を求め……なんならこの指南役の座をかけて決闘まで始めるだろう。そんな厚遇を改めて認識すると、静かに礼を述べて。
ふと、クレアからもらった金貨が忍ばせてある胸元にそっと手を当てつつ、アリシアの机の書類の山……騎士としての重圧を空しそうに眺めて。クレアさんは騎士として誰より強く清らかだったのに……いや、だからこそ騎士社会に心を壊された。そしてアリシアもまた……おそらくこの国で剣術指南をしていたであろう師匠(オヤジ)が多くを語らなかったのも今は分かる。この王国には優れた者、優しい者を潰す魔性が潜んでいるのだ……
この破格の待遇を誇る剣術指南もまた、剣士の心を歪める甘い罠。もしこんな剣の職など無い、剣を取らずに生きられる世界があったなら、クレアさんもアリシアも幸せでいられたろうか。もしそんな世界が拓ける機会に巡り合えたなら、俺は二人をその先へ送り出し……黙って去ろう。俺は剣を振ることしかできないから……)
……おっと失礼しました。謹んでお受けいたします、ご厚遇に見合う働きを……んん?
(……などという妄想に逃げている暇は無い。首を振って改めて視線を契約書に戻して。いずれ裏切るその日まで、せめて指南役としてアリシアを支えたい……矛盾した想いを胸にペンを取ろうとした矢先、ふと明らかに筆跡が違う最後の一文が気になって、そこを指差しながらおずおずと質問して。)
あの、この「追加報酬」とはいったい……?これはアリシア様が書き足されたようですが……
>1142
さすがレド殿、お気付きになられましたか。ええ、それはほんのお気持ちです。レド殿は指南役の任とは別に監視任務がありますので、その分の報酬を「追加報酬」という形で加えさせていただきました。額にして金貨二枚を予定していますが…ご不満でしたら引き上げることも検討致しましょう。
(契約書を眺めるレドの冷たい顔つきを、アリシアは自身の頬に手を添えてうっとりと眺めていた。レドならば筆跡の違いにも勘づくだろうと予想していたが、案の定それについて質問が飛んでくる。アリシアはニコッと微笑んでレドの慧眼を称えると、「追加報酬」の真意を明かした。通常の指南役とは異なり、監視役としてレドは赤の他人(とアリシアは思い込んでいる。)のエリーゼと決して短くはない期間を同室で過ごすことになる。その心的負担を考慮してのアリシアの計らいであった。勿論のこと監視任務は機密事項の為、あえて成果次第の追加報酬と表情を濁したのであろう。指を二本立てて追加報酬の予定額を伝えるアリシアは、それでも足りなければ増額も考える旨を話すが、この提案は、同室で過ごす中でレドがエリーゼに惹かれてしまうのではないかという恐れの現れでもあった。)
>1143
なるほどそういう事で……なに、それだけ頂戴できれば満足ですよ。むしろお心遣いに感謝するばかりです。
(「追加報酬」の真意を知るとふっと笑い、増額の提案には首を振って答えて。別にタダでもいいんだが、アリシアの好意を無にするのも失礼だ。最初の提示通り金貨二枚で了承するとペンを取る。”Ledo”。たった四文字、苗字すら無い自らの名をさらっと紙に書き記すと、ペンをそっと置いて。)
もうひとつ。あの猫に魂を売ることはありません。もし約束を違えたら……この命、アリシア様に差し上げましょう。
(サインを終えると、一転してアリシアが懸念している猫(エリーゼ)の事を冷たく語って。アリシアに密命を感づかれないため意識しているとはいえ、騎士として苦しんだクレアを見て以来、エリーゼの事は半ば本気で見下し始めている。獣人だからでは無い。宮廷≒第一王子派だからである。あの男は独自に私兵を飼っていると噂で聞く。エリーゼ……良心的な人とはいえ彼女も結局王子の飼い犬、いや飼い猫に過ぎないのだろうか……
言い終えると自らの長い東刀をわずかに抜く。赤鞘から覗く白刃に右手親指を添えて指に傷をつけると、先の署名の隣に血で濡らした親指を擦りつけて。血判。紙の上に血を置いた物が何の証明になるのだろう。これから裏切るというのに……それでもアリシアへの愛の証は示したい。事が露見したら彼女に刺されても構わない……そんな気持ちを刻んだ契約書を左手でそっと、アリシアの前に滑らせて。)
>1144
ふふっ、謙虚で誠実…貴方のそんな所が堪らなく愛おしいです。
それでは、確かに受け取りました。これからよろしくお願いしますね。レド先生。
(欲をかくこともなく、それでいて自分の不安を汲み取り、目に見える形でそれを払拭して見せたレドの行動にアリシアの頬は堪らず緩んだ。こちらも言葉で愛を示すと、差し出された契約書を懐に仕舞い、未だ血の滲むレドの右手を優しく両手で包み込む。裏切られるとも知らずに眩い笑みを浮かべ、今しがた契約を結んだことで指南役となったレドに対して嬉しそうに敬称を付けて呼ぶその様は、真相を知る宮廷の人間が見れば滑稽に映ることであろう。自ら裏切り者を招き入れ、アリシアの政局が大きく不利に傾いた今、契約書は単なる雇用関係を示す紙切れではなく、アリシアのその後の人生をレドに背負わせる代物と化したと言っても過言ではない。それは対価として得られる金貨よりも余程重たい代償であった。)
>1145
先生だなんてそんな。はは、こそばゆいな……近衛隊剣術指南、謹んでお受けいたします。この剣をもってアリシア様のために尽くしましょう。
(「先生」、自分とは縁遠い肩書きで呼ばれ思わず照れ笑いして。政治屋め。人の愛を利用して、しかも「ご自身でアリシア殿をお守りすればいい」などとナメた口をきく。まるで任務が終わったら二人とも始末すると宣言されたようなものだ。だからこそ消えても困らない野良冒険者など使うのだろうが。勝負は始まったばかりだ、どっかで出し抜いてやる……まだ何にも思い付かないけど。そんな決意を胸に秘め、血のにじむ自らの右手を優しく包むアリシアの両手に左手を添えると、穏やかに微笑みながら忠誠を誓って。)
>1146
ありがとうございます。その言葉…とても頼もしいです。
さて、トラブル続きでレド殿もお疲れでしょう。そろそろお部屋に…
(まるでプロポーズかのような忠誠の言葉に、アリシアは顔を真っ赤に染めて感謝を述べる。
この時間が永遠に続けばいいのに…そんな思いを胸の内にしまって名残惜しそうに手を離すと、レドの疲労を考慮して別れを切り出した。エリスとの闘いや報告を受けた今朝のトラブル…自分の前では顔に出さないだけで、きっと休息が必要な状態に違いない。契約書にサインを貰った以上はこれ以上呼び止める理由もない。色んな理由を付けてアリシアは自分を納得させて、なんとか言葉を紡ぐものの、タイミング悪く扉をノックする音に遮られる。続けて「入って宜しくて?」と扉越しに幼い声色ながら格調高い喋りで質問が投げかけられると、その声を聞いてアリシアは苦笑いを浮かべながらも「お入りください」と、そう返すほかになかった。)
ふふっ、御機嫌ようアリシア。少し時間が出来たから遊びに来てしまったわ。あら…先客がいたのね。お邪魔だったかしら?
滅相もございません。今しがた用事を終えたところです。
此方はレド殿。本日より近衛隊の指南役を引き受けてくださいます。
へぇ、若いのに凄いじゃない。指南役の名に恥じない働きを期待しているわね。
(開かれた扉から姿を現したのは第三王女ルイーズ・フィリア。その容姿は瞳の色を除けば今は亡き第一王女の生き写しのよう。そんな彼女がアリシアを筆頭に近衛隊から次期王位継承者として支持されていることは、この国の政治に詳しい人間には周知の事実である。そんな間柄のため、度々こうして近衛隊庁舎まで足を運んでいるのだろう。扉からアリシアの元まで歩み寄るまでの身のこなし、幼い容姿に似合わない丁寧な所作の一つ一つは、王族の教養の高さを示すと同時に年相応の振る舞いも出来ない不自由さを感じさせるものであった。そして、目を引くのは王女だけではない。後ろに従える二人の侍女。一人は犯罪組織「サンクタ・ラミア」の所属を示す黒蛇の刺青を頬に刻んだ凛とした銀髪のエルフ、もう一人は一見朗らかな雰囲気を纏いながらも暗殺者特有の癖で不自然なまでに足音を消して歩く茶髪の侍女。どうにも第三王女陣営は訳ありの人間が多いようだ。アリシアの紹介を聞いてルイーズはレドに顔を向けると品定めするように目を細め、その年齢で指南役に選ばれた栄誉を称えながらも、地位に見合う相応の働きを見せるように釘を刺した。ここは凡ゆる謀略の渦巻く王城、こんな幼子でもそう簡単に人を信用することなど出来ない…まさしく魔境と呼ぶに相応しい場所であった。)
>1147
……!お初にお目にかかります、ルイーズ殿下。この度近衛隊指南役を仰せつかりました、レドと申します。お目通り叶いましたこと、光栄に存じます。
(思いがけない来客……第三王女ルイーズ、アリシアが擁立する最年少王位継承者。人生において初めて拝謁する王族の存在を確認すると立ち上がり、すっと右手を胸に添えると、静かに頭を下げながら自己紹介して。頭を下げる角度は深すぎず、そして膝はつかない。剣術指南はあくまで外部招聘の技官であり、臣下の礼の義務は無いからだ。
「冒険者」。鍛えた剣や魔法を操り、いくばくかの報酬と引き換えに依頼を遂行する者たち。支配という名の権力、忠義という名の束縛が横行する世界において、何にも与する事のない例外的な存在である。礼は尽くすが服従はしない、レドの立礼はそんな冒険者の矜持の表れと言ってよい。)
若輩者ではありますが、東刀使いとして相応しき働きをお見せする所存。以後よろしくお願い申し上げます。
(頭を戻すと視線は鼻のあたりに向け、そのルミナ姫に似た顔をむやみに睨みつけないようにして。両脇に控えるふたりの侍女には視線を向けず、ただ視界の端に入れるにとどめる。異様な刺青のエルフはもちろん、茶髪の方もただならぬ身のこなし。第三王女の用心棒だろう。こちらもジロジロ見るべきではない。まるで貧民街の犯罪組織のような淀んだ雰囲気を放っているが、呑まれたら剣士として終わりだ。幼子でありながらこちらを小僧扱いする第三王女の挑発的な態度にも流されず、静かに、簡潔に、そして堂々と、ふだんろくに使わない改まった敬語で口上を述べて。)
>1148
ふーん…ま、せいぜい頑張りなさい。
用事は終わったのでしょう?アリシアは私が借りるから貴方は部屋に戻ってなさい。セレナ、ご案内して差し上げて。
(金の為なら何でもする下賎な輩…冒険者に対してそんな偏見を抱いていたルイーズだが、少なくとも目の前の指南役はそれなりの振る舞いを心得ているようだと、ツンとした態度の裏で一定の評価を下していた。しかし、生まれたその瞬間から政争の渦中にある王族の信頼を勝ち取るにはまだ足りない。最初から期待など捨てているかのような歳に似合わない冷めた視線は、無垢とは程遠いこの幼子の心を開くのに相応の時間と実績を要することを示していた。厄介払いするかのように部屋に戻れと催促すると、お付きの侍女…セレナと呼ばれた刺青のエルフに案内を任せた。)
そういう訳ですので…レド殿もお疲れでしょうし、しばらくお部屋でお寛ぎください。…また夜にお呼び致します。
(警戒心を隠そうともしない主の振る舞いにアリシアは再び苦笑いを浮かべつつ、こちらはレドを気遣って部屋への移動を促した。最後にコソッと耳打ちして夜の約束を取り付けると、口元に手を添えて悪戯な笑みを浮かべる。
一方で、案内を任されたセレナは既に扉に手をかけ、レドの様子を窺っている。決して急かす意図はないのだが、人見知りのせいで言葉が出ない上に目つきが悪い為そう捉えられてもおかしくはないだろう。この後、二人で廊下で何を話そうか、どう話題を振るべきか…人見知りなりに色々悩んでいるのだが、その険しい表情は傍から見ればレドを睨んでいるようにしか見えない。)
>1149
ッッ……!んん、恐れ入りますルイーズ殿下。では失礼いたします。
(去り際のアリシアの悪戯に思わず身震いするがここは殿下の前。咳払い一つして気持ちを切り替えると、第三王女に一礼して。それにしても自らの侍女に近衛隊庁舎の案内をさせるとは、どうやら近衛隊は第三王女の私兵と化しているらしい。第三王女を支持するアリシアを密命で排除した暁には彼女も粛清されるだろう。「政治屋め、何が「我々の最優先事項は抗議運動の沈静化」なものか。完全な権力争いじゃないか」という気持ちと「とはいえ確かに近衛隊も第三王女も歪んでいる。放置すれば内乱が起きて……クレアさんが安心して暮らせなくなる」という気持ちのせめぎ合いを凛とした表情の中に隠しつつ、案内を務める刺青の侍女、セレナに向き直って。)
セレナ殿、私も近衛隊庁舎には不慣れ……よしなに頼みます。
(刺青の侍女、セレナの目つきがやけに鋭い。気味の悪いさっきの近衛兵といいこの侍女たちといい、これじゃ近衛隊じゃなくて暗殺教団だと内心で突っ込むが、セレナの場合は表情が険しすぎる。たぶん緊張だろう……と判断すると緊張をほぐすべく、穏やかに微笑みながら彼女に案内をお願いして。)
>1150
うん…任せて。
(レドの方から話しかけてくれたこともあり、未だ緊張は残るもののセレナの表情は幾分か柔らかいものとなった。口下手なのか最低限の返事を返すに留まるが、僅かに吊り上がった口角を見るに随分と嬉しそうな様子である。ルイーズに一度頭を下げてから、扉を開いて歩みを進めた。)
あ、あの…その…レドさん。初めて会う人だから警戒していたけど…ルイーズ様は本当は凄く良い人なの。だから…嫌いにならないでほしい…
(二人きりの廊下を進みながら、セレナはなんとか緊張を抑えて言葉を紡いだ。厳つい頬の刺青に似合わず、そのたどたどしい喋り方はまるで小動物のよう。話す内容はというと、先程の主の振る舞いの弁明である。幼くしてこんな魔境に身を置いていれば人間不信にもなるであろう…ルイーズのそんな境遇を哀れみ、セレナは少ない語彙力ながら、レドにも事情を理解して貰おうと努めていた。「凄く良い人」なんて言われても抽象的過ぎる表現だが、セレナの瞳と声色からは彼女なりの必死さが窺える。)
>1151
ふふ、心得ておりますセレナ殿。冒険者とは信頼の得がたい職ですから致し方ありません。なによりアリシア様がお仕えするからには……あっいや、失礼……
(ルイーズの事を弁明するセレナに歩くペースを合わせつつ、心得ていると微笑んで。とはいえレドも多くは語らないし必要以上に褒めない。この王都という魔境、とりわけ王族に関する話題は下手な発言が命取りになる。目の前の純朴そうな刺青のエルフとて、宮廷のスパイかもしれないのだ……と弁えていたつもりだったが、話の流れでエルフと敵対する聖教徒のアリシアを褒めようとしてしまい、気まずそうに顔を逸らして。)
>1152
…気にしないで。確かにあの人は怖いけど…きっと貴方にとっては良い人だから、私はそれを否定しない。
(アリシアの名前が出ると、セレナはピクリと身体を震わせた。エルフである彼女が、身近で権力を持つ聖教徒に恐怖心を抱かない筈もなく、これは本能的な拒絶反応である。しかし、それでも尚セレナはレドの意思を否定せず、真っ直ぐな瞳を向けて、立場によって見え方も異なるだろうと寛容な姿勢を示した。勿論、先程の自らの弁明を受け入れてくれたレドへの配慮という面もあるが、何よりもここでアリシアを否定することはルイーズへの裏切りに等しい。高い忠誠心から自らの意見を押し殺しているようであった。)
それに……本国の司祭よりはマシだから。痛いことはしないし…一応は人として扱ってくれる。だ、だから…そこまで嫌いじゃない……かも…?
(目の前のレド、そしてルイーズの為にもセレナは自らもアリシアの美点を見つけようと考え、良いところ探しというポジティブな思考に耽っているとはとても思えない険しい表情で小首を傾げ、言葉を続けた。思い出すのはアリシアと二人きりになった際に言われた皮肉の数々……アリシアが優しさを見せるのはレドか、ルイーズのような子供だけで、悪魔に憑かれているのだから当然だが基本的に性格が悪いのである。記憶を何周かした後に結局アリシアの良いところ探しは諦め、代わりに聖教国の司祭と比較するに至った。奴らに比べれば幾分かマシという最低クラスの評価だが、セレナはレドを気遣い、それを理由に嫌いではないと断言しようと試みる。しかし、嘘をつけない性分故に意図せず疑問形で締め括っていた。)
>1153
司祭……セレナ殿、貴女は……いや、よしておきましょう。時には多くを語らない方が良い時もある。
(「司祭よりはマシ」「一応は人として扱ってくれる」。セレナの言葉を聞いて思わず彼女の経歴を問いたくなったが、神妙な面持ちで首を振り、問うのをやめて。顔の刺青、首枷、そして今語った断片的な過去……根掘り葉掘り聞かずとも、セレナが凄惨な人生を送ってきたことは明らかだ。彼女を傷つけないためにも自分からはこれ以上問わないことにする。
ふと、天井を見上げて物思いにふける。聖教国の亜人への暴虐はレドも耳にしている。アリシアに恐怖を抱いてもなお、彼女と懇意にしている自分を立ててくれる優しいセレナが奴隷として痛めつけられるとは、世間は残酷だ。この人じゃなくてあの糸目野郎が代わりに弓矢の的にされればいいのに。ああでも、アイツはその日の内に司祭どもを皆殺しにして脱走しそうだな……と想像すれば、げんなりした表情で首を振って。)
おっと、私は聖教徒ではありませんよ。私が信じているのは己自身……この東刀(ダンビラ)ですから。
(さて、そんな彼女に何を話せば良いのやら。ひとまず聖教徒を恐れるセレナを安心させるべく、ふっと笑って自分は聖教徒ではないと明かして。そして刀を腰から外して右手に持てばギュルギュルと手の中で回転させ、その長さと鞘の紅の深さを存分にアピールしたところでビタッと回転を止めて。)
>1154
そうだとは思っていたけど…確信を持てて安心した。レドさん、貴方も私にとっての良い人。その刀も貴方に扱われて本望だと思う。
(亜人への分け隔てのない態度、過去を詮索しない気遣い、それらの要素からレドは聖教の信徒ではないと予想していたが、本人から明かされたことでようやく確信を得られた。安心から、セレナも釣られて笑みを見せると、レドもルイーズと同じく「良い人」に認定する。語彙力の少ないセレナにとって、良い人というのは最大級の信頼の証のようだ。剣に心得のあるセレナは続けて、レドをその刀に相応しい人間であるとも評価した。これは、上等な武器を持つ者に対して、それが決して飾りなどではないという、一剣士としての惜しげもない賛辞である。言い終えると、立ち止まってレドに向き直り、右手を差し出して握手を求めた。これからの親愛の意味と、剣士としての自らの慧眼を保証する為の行為であろう。奴隷に堕ちるまでに何度も剣を振るってきた彼女の手には癒えることのない幾つもの古傷が付いており、まさしく剣士の手であった。)
>1155
マジかよ嬉しいな!俺の鬼蟷螂(オニドウロウ)も喜んで………うっ!げほっげほっ……な、何でもありません……
……ルイーズ殿下のお側に仕える貴女のお眼鏡に叶うとは光栄なこと。改めてよろしくお願いします……同じ戦士としてね。
(レドの差し料、師から賜った剛刀「鬼蟷螂(オニドウロウ)」。確かに並の東刀では無いが、その持ち主のレドは掃いて捨てるほど存在する農民上がりの冒険者のひとり。刀も自分も褒めてもらえる機会などそうありはしない。なのでつい行儀の良いフリをするのを忘れ、素の口調ではしゃいでしまった……それに気付くと大きく咳をして紳士のフリに戻る。恥ずかしさで頬を赤くしつつも、セレナが差し出した右手……傷だらけの戦士の手を自らの右手で穏やかに掴み、握手して。)
>1156
私の前では楽に喋って。その方が嬉しい。
(レドの素の口調を聞いて、恥ずかしがっている彼の反応を他所にセレナは嬉しそうに瞳を輝かせた。帝国出身の彼女はエルフリーデと同じく人の温もりに飢えている。意図せず発せられたラフな言葉使いに感動を覚えるのは必然であろう。手を握ったまま歩みを再開すると、自分の前では楽に喋って欲しいとレドに注文を付け、その足取りは数段軽いものとなっていた。まるで新しい友が出来たかのような高揚感に浸っているのも束の間に、最悪のタイミングで前述の同郷との邂逅を果たしてしまう。)
あらぁ、レドさんじゃないですかぁ。ふふっ、ラミアの屑と随分親しそうですね。
(廊下の先から現れたのはレドに異様な執着を見せる帝国兵のエルフリーデ。首と右脚には別れの際には着けていなかった包帯を巻き、両脇に松葉杖を抱えてのなんとも痛々しい姿での登場である。おそらくデュランダルでの勝手を上官にこっぴどく叱られたのであろう。仲睦まじく手を繋ぐ二人の様子に妬いたのか、圧を感じさせる笑みを浮かべて真正面に立ちはだかった。手負いとはいえ、帝国兵を前にしたセレナは酷く怯えた様子で震えており、握った手には一層力が込められる。)
>1157
ははっ、ありがたいね。どうもお行儀よくしてるのに慣れなくてな。じゃあ行こうか…….
……セレナ?なるほど、俺に任せな。
(楽に喋ってほしいと言われるとニコニコしながらセレナの手を握りつつ歩いて。早くも打ち解けられて嬉しい!と足取り軽やかに歩いていると、目の前にあの帝国兵エルフリーデが立ちはだかる。自分の手が強く握られる感触からセレナの怯えを感じ取れば、エルフリーデをきっと睨んで)
エルフィ!なにが屑だ。この人はな……
……なんだよそのケガ。ははーん、さては今朝の件で上官にリンチされたな?確か……コンラッド殿、だったか?
(エルフリーデに指をさしてセレナへの侮辱を咎めようとしたが、見ればずいぶんズタボロではないか。この短時間で外交問題にならずに彼女を暴行できる者、コンラッドとかいう彼女の同行者の仕業だろう。「力こそ正義」を謳い暴力を正当化するエルフリーデが暴力を甘んじて受け入れていること、彼女から聞いた軍内部での扱いのひどさから察するに、そのコンラッド某は上官と見た。今朝の暴走の件で制裁されたんだなと、セレナに握られてない方の手を顎にやりながら、ケガの経緯を推察して。)
>1158
ええ、ご名答です。しかし、レドさん…そんなエルフと親睦を深めるとは関心しませんねぇ。彼女の頬の刺青、それは帝国の犯罪組織「サンクタ・ラミア」の紋様です。いくらエルフが好きだと言ってもつるむ相手は選ぶべきだと思いますよ?
違う…私はもうラミアの人間じゃない…
屑は黙っていてください。私はレドさんとお話しているんです。
(レドの鋭い推察に、エルフリーデは心底愉快そうにニヤッと口角を吊り上げて賞賛した。しかし、続けられる言葉は何処か呆れを孕んでいるように低い。セレナの頬に刻まれた黒蛇の刺青は帝国に悪名を轟かせる犯罪組織の所属を示すもののようだ。先程述べられた「ラミアの屑」とはその蔑称なのだろう。敵愾心剥き出しのエルフリーデは見下すような笑みを浮かべながら、馬車の中でレドがエリスに釘付けだったことも踏まえてエルフが好きなのだろうと皮肉を交え、暗にセレナと決別しろと圧をかけた。一方でセレナは怯えながらも声を絞り出し、今は犯罪組織に身を置いていないと否定するも、エルフリーデの牽制を受けてレドに身を寄せて黙り込む。不安そうなにレドの顔を見上げるセレナの瞳は、まるで見限らないでと縋るようであった。任せてと言われながらも口を挟んだのも、今しがた出来たばかりの友を失いたくなったが為だろう。)
>1159
(グラキエス帝国の犯罪組織「サンクタ・ラミア」。仲間に先立たれてヤケになり、あてもなく彷徨っていた貧民街で聞いたことがある。怯えながら自らを見上げるセレナの頬に刻まれた黒蛇を見下ろすと、彼女の経歴を察する。だがレドにとってそんな過去はどうでもいい。無言・無表情の中に「大丈夫だ」という気持ちを込めてセレナに頷くと、エルフリーデに向き直って。)
そのナントカの屑は俺の友人。そしてこの国の第三王女・ルイーズ殿下のお側衆だ。いま彼女はお役目の最中、そこをどいてもらおう。
……そのナリで何ぬかしたってカッコつかないぜエルフィ。しょうもない八つ当たりなんかしてないで、アンタも大人しく養生するんだな。
(「よく言うぜ、昨日今日と他所の国で犯罪を重ねといて……しかもそれで上官に凹られたくせに」という呆れを込めながら、エルフリーデに強い眼差しを向けて。胸を張り、力強い声でセレナを弁護する一方で、自業自得と言うべき無惨な姿を晒しているエルフリーデには「やれやれ」と呆れた笑いを向ける。どのみち帝国兵に第三王女の使いを阻まれる謂れは無い。言い終わるとあえてかしこまった口調で「ではセレナ殿、まいりましょうか」とセレナに微笑んで、エルフリーデの脇を通ろうとして。)
>1160
っ…まだ話はっ…!
なにを遊んでいる、グリムハルト。貴様には別の任を託した筈だが。
ちっ…これは申し訳ありません。少し戯れが過ぎましたね。それではレドさん、また後ほど。
(尚も引き下がらないエルフリーデは、脇を通り過ぎようとするレドの手を引こうと身を乗り出すが、廊下の先から現れた上官の圧に押されて思い留まった。筋肉の塊とも形容すべき巨漢、コンラッド・シュタール。その背丈は長身のレドよりも頭一つ分高く、一歩進む毎に決して古くはない廊下の床が軋む程の体躯である。魔力の量も常人の域を逸脱しており、分厚い鎧のように身に纏ったそれは魔術師でなくとも視認できる。そういった現時点で可視化されている能力値だけ見てもおそらくはレイラと同格であろう。そんな化け物はレドやセレナには目もくれず、エルフリーデに忠告したかと思えば足早にその場を後にした。先程制裁を加えられたばかりのエルフリーデもこれには逆らえず、コンラッドの背に向けて頭を下げ、不本意と言わんばかりに唇を噛み締めてレドを一瞥すると、すぐさまコンラッドの後を追う。)
レドさん…ありがとう。ごめんなさい…少しだけ、休ませて。
(エルフリーデとコンラッドが去った後、セレナはレドの腕に抱きついて顔を伏せてしまった。帝国で迫害されている亜人にとって帝国兵は恐怖の象徴…それも将軍クラスのコンラッドを前にした動揺は相当のものだろう。セレナの心臓の鼓動はレドにも伝わるほどに激しく波打っていた。セレナからすればレドは悪魔から身を挺して守ってくれた存在であり、こうして身を寄せることで心を落ち着かせているようだ。)
>1161
!!
(突然の床の軋み、そして廊下の先から現れたプレッシャー……帝国将・コンラッドの存在を感知・視認するとピクリと身体を震わせて。まずでかい。俺よりでかい。不死鳥のハゲ並のタッパだ。そして何より、恐るべき魔力。見た目や体格・雰囲気はまるで違うが、かつて戦ったバカエルフ並の強者と認めざるを得ない。瞳孔が開ききり、口が真一文字に結んだレドの顔はコンラッドに釘付けで、エルフリーデの挨拶に反応できない。向こうがこちらに一瞥もくれないまま去っていき、姿が見えなくなると思わずふぅと溜息を吐いて。帝国将コンラッド……まるで氷の魔人というべき男であった。)
セレナ、よく耐えた……昔のことも奴らのことも気にするな。そういうことで俺は離れない。
(連中が去り、自らの腕にすがりつくセレナの頭を片方の手でそっと撫でて。宮廷の密命もアリシアも関係ない。すべては目の前の人を理不尽から守りたくてやったことだ。セレナの気の済むまで彼女を抱きつかせてやりつつ、コンラッドが去っていった廊下の先を苦々しく睨み、呟いて。)
シカトしやがってこの野郎……アレで親睦のつもりかよ。
>1162
うん…信じてる。レドさんのお陰でもう大丈夫…さ、行こう。
(しばらくしてセレナは顔を上げると、離れないと言うレドの言葉を信じて頷いた。その顔にはもう憂いはなく、すっかり平常心を取り戻したようだ。少しだけ頬を緩め、控えめな笑みを見せると、レドの手を引いて案内を再開する。歩くこと数分、宿泊者用のエリアに辿り着く。廊下には複数の絵画に混ざってちゃっかりと教皇の肖像画が飾られており、その額縁だけ埃を被っていないことからエリーゼへの嫌がらせで最近設置したのだろう。アリシアの性格の悪さは相変わらずである。肖像画の真正面、505とドアに刻まれている部屋の前でセレナは立ち止まった。)
ここが貴方と猫ちゃんの部屋。鍵は中にあるはず……その…今日はありがとう。貴方に出会えて良かった。
(やっと手を離し、レドに向き直ったセレナは名残惜しそうに瞳を揺らした。今後もしばらくは会おうと思えば会える距離にはいるのだが、王女の傍仕えも暇ではない上にアリシアという最大の壁がある。仕事上とはいえ、きっと今日のように纏まった時間を過ごす機会はなかなか訪れないことであろう。せめて別れ際に改めて感謝を伝えようと、セレナは丁寧に頭を下げた。)
>1163
猫ちゃ……いや、何でもない。案内ご苦労だった。俺も新しい友達ができて嬉しいよ。
(仮にも第二団長であるエリーゼを「猫ちゃん」なんて雑に呼ぶセレナについ反応したが、首を振って自らの言葉をさえぎって。分団長なのにナメられてんなぁ、と憐れみつつ、部屋の前に飾られた他国の最高指導者・教皇の肖像画、王国近衛隊に相応しくない異物に視線をやって。アリシアも陰険な……俺と子供に優しいアリシアと悪女のアリシア、どっちが本物なのか……と物思いにふけりたくなるが、今は目の前のセレナに集中するべきだ。彼女に向き直ると、会釈して案内の礼を伝えて。)
セレナ、剣術指南としてアドバイスしよう。過去を気に病むことは無い。罪人上がりの武官てのは、歴史を見れば珍しいもんじゃない。
何より……人は罪を犯したらそれで終わりじゃない。過去の罪を悔いながらも、そこから立ち上がって立派に生きることもできる……それが人の可能性というもんだ。俺が師匠と並んで尊敬する剣士の方が、そうであるようにな。
(互いに忙しく、立場も違うふたり。再び会話する機会がそう訪れるとは思えない。彼女もそう思っているだろう……と、セレナの揺れる瞳を見て察すると、彼女の瞳を見据えながら助言を残して。とりわけ「過去の罪を悔いながらも立派に生きている憧れの剣士」のことは罪人の出であるセレナにどうしても伝えておきたかった。いずれ密命を果たせば彼女とも敵対するだろう。それでも今は一人の剣士として彼女の励みになりたい……アドバイスを終えると右手を上げて敬礼し、「健闘を祈るよ。」と微笑んで。)
>1164
その言葉…忘れない。レドさんも頑張って。……それじゃ、またね。
(過去の自らの所業に罪悪感を抱えているセレナにとって、レドの言葉は心に響いたようだ。言葉数は少ないながらも、レドを真っ直ぐに見つめる瞳からはセレナの真剣さが窺える。最後にこちらからもレドの健闘を祈ると、踵を返してその場を後にした。
一方その頃、王都の高級な宿と遜色ない内装が施されている505号室の真ん中で、エリーゼはまるで死んだ魚のような目で床にうつ伏せて倒れていた。エリーゼの顔の真横には皿に盛られた粒の山…そう、市販の猫の餌が置かれていたのである。というのも聖教の価値観に毒された近衛隊、その庁舎の内部に於いて獣人は人ではない。宮廷側もやむを得ず近衛隊の意向を汲んで、宿泊届けに指南役のペットとしてエリーゼの名を記載していたのだ。そうなれば当然の如く人間の飯が運ばれてくる訳もなく、また、ペットの独断で庁舎からの外出を認められる訳もない。つまり、この二日間エリーゼは何も食べていないのである。先程のセレナの「猫ちゃん」発言も何ら含みのあるものではなく、単に書類上の情報だけを見て、この部屋の中にレドの飼い猫が先に運び込まれたのだろうという誤解からであった。)
お腹が減ったにゃ…
>1165
ふっ……セレナ、いいエルフだなぁ。それにひきかえあの糸目は。優しい人が苦しんで、あんなのがのさばるなんて世も末だぜ。アイツが奴隷になればいいのによ、あの人殺し野郎……。……まあいい。
(やわらかく微笑みながらセレナを見送るが、彼女が見えなくなると一転険しい顔になってエリスへの悪態を吐き始めて。セレナといいクレアさんといい、優しい人ほど苦しみ、踏み潰される世の中。のうのうと生きているのは、バカエルフのような権力者の悪党ばかり。アイツこそ奴隷になればいいのに……と、悪態を吐きつつも未だ腑に落ちないことがある。あの戦闘中の猟奇的な態度と戦闘後の達観した態度、どうも同じ人物に見えない。戦闘中の悪態は挑発だったのか?何よりなんで、俺を見逃したのか……首を振って考えを止め、ドアノブに手をかけるが……)
……誰かいる!バカエルフか?まさかそんなはずは……
(ドアの向こうに気配を感じ、手を止めて。近衛隊の庁舎に忍び込むとは大胆不敵な。エリスか?それにしてはさっきの帝国将のようなプレッシャーが無いが……一歩下がって刀の鯉口を切ると、バン!とドアを開け放って勢いよく室内へ突入し、前転しながら部屋の中央へ躍り出る。だが目についたのは猫の餌と……見覚えのある猫耳の獣人が力なく倒れている姿。まったく状況が飲み込めずに呆然と立ち尽くすと、エリーゼに声をかけて。)
えっ、エリーゼ殿!?どっ、どうしたんです……?
>1166
……。レドくん…!待ってたにゃ!
(声を掛けられたエリーゼは虚ろな瞳でレドに視線を向けた。こんな状態でもなお薄ら笑いを浮かべているあたり、次席に刻まれたトラウマは相当なものなのだろう。しばらくして目の前の人間がレドであることに気が付くと、瞳に光が宿って飛び起きる。)
宮廷も近衛隊も酷いのにゃ!どうやら私はここに泊まるにあたってレドくんのペットとして登録されてるらしいにゃ…それで毎食猫の餌が届けられるんにゃけど……こんなの食べられるわけないにゃ!という訳で私は空腹にゃ。レドくん、いや、ご主人様!一緒に食堂に行ってほしいにゃ!
(エリーゼは尻尾をぶんぶんと振って、笑顔の中に怒気を込めながらも自分の置かれた状況を説明した。知らぬうちにペット扱いで登録されていたこと、猫の餌しか運ばれて来ないこと、そして当然ながらペットは一人で外出出来ない。エリーゼがこれ程までに不満を顕にするのも当然の扱いである。アリシアによる嫌がらせという面も勿論あるが、ペット扱いとすることでエリーゼの行動を制限する狙いが主だろう。権力を持つ聖教徒ならではの策略だ。二日間に渡り何も食していないエリーゼはすぐにでも腹を満たしたいようで、身を乗り出してレドの顔を覗き込むと、あくまでペットの立場から共に食堂に行って欲しいとお願いした。)
>1167
なに、ペット!?近衛隊はともかく宮廷もひっどい扱いだな。多種族共生が聞いて呆れる……とっ、とにかく急いで何か腹に入れましょう。ああ、ご主人様はよしてくださいよ。仮にも第二団長からそう呼ばれるとどうもしっくりこないので……
(第二団長がペット扱い!?空腹!?あんまりなエリーゼの扱いに呆然として。アリシアの立場からすればエリーゼをペット扱いすることで動きを封じる策にもなるから理に叶っているが、問題は宮廷の方だ。多種族共生を謡う国、しかもエリーゼを密命で送り出す立場でありながら、国是に反する近衛隊の言われるままに彼女をペットとして登録するなんて、分団長に対する扱いとは思えない。こんな扱いをする国のために命を賭して戦えと言うのか……エリーゼを気の毒に思いつつも、笑ったまま怒る彼女の顔や、栄えある騎士団の分団長なのに人を「ご主人様」と呼ぶプライドの無さには困惑する。顔を引きつらせつつ、食堂へ向かうべく部屋を出ることにして。)
>1168
んにゃ、レドくんが嫌ならそうするにゃ。それじゃあ案内するにゃ~。
(レドの要望に頷いて呼び方を戻すと、エリーゼは軽い足取りで食堂までの道中を先導する。空腹を満たせることが余程嬉しいのだろう、レドの目の前で彼女の尻尾が右へ左へとリズミカルに揺れていた。これ程の仕打ちを受けてもすぐに切り替えることや、一時的なものとは言えペットの身分にすんなり適応するなど、エリーゼもまた不憫な扱いに曝され過ぎて人格が歪んでいるのだろう。人懐っこい仕草の裏にはそんな闇が潜んでいた。
雑談もそこそこに、近衛隊庁舎を出て、騎士団の本庁舎へと繋がる長い渡り廊下に差し掛かる。渡り廊下の脇、薔薇の咲き誇る庭園にエリーゼはふと視線を向けるなり、思わず顔を引き攣らせた。ベンチに腰掛け、自らの膝を枕にして第二王女を寝かしつけているエルフの姿…レドにとっては本日二度目のエリスとのご対面である。門の修繕が終わったことでようやく臨時の警備任務から開放されたのだろう。その間に癇癪を起こした第二王女との埋め合わせの最中なのだが、心地良く眠る王女の頭を撫でるエリスの表情はいつもの腹の立つニヤケ面ではなく随分と温かいものであった。のも束の間に、エリスはレド達の気配に気付くなり口角を吊り上げ、侮蔑の意を孕んでいるかのような見慣れたニヤケ面へと戻る。)
やあ少年、奇遇だね。それと七席のおまけの子。私になにか用かな?
っ……な、なんでもないのにゃ…たまたま目に付いただけで…
(エリスは当然の疑問を投げかける、単に挨拶する訳でもなくただ視線を向けられたとなれば何か用事があるのではないかと勘繰ったのだろう。まずはそれなりに印象に残っている将来有望な若者のレドから声を掛け、次にさして興味のないエリーゼ。エリーゼに至っては名前も覚えていないかのように振る舞い、第二副団長である七席のおまけという不名誉なあだ名で呼ぶ始末だ。性悪エルフのそんな扱いには、さすがのエリーゼもご立腹なのだろう、苦笑いを浮かべて視線を逸らしながらも、握った拳が怒りと悔しさで震えているのが分かる。)
>1168
んにゃ、レドくんが嫌ならそうするにゃ。それじゃあ案内するにゃ~。
(レドの要望に頷いて呼び方を戻すと、エリーゼは軽い足取りで食堂までの道中を先導する。空腹を満たせることが余程嬉しいのだろう、レドの目の前で彼女の尻尾が右へ左へとリズミカルに揺れていた。これ程の仕打ちを受けてもすぐに切り替えることや、一時的なものとは言えペットの身分にすんなり適応するなど、エリーゼもまた不憫な扱いに曝され過ぎて人格が歪んでいるのだろう。人懐っこい仕草の裏にはそんな闇が潜んでいた。
雑談もそこそこに、近衛隊庁舎を出て、騎士団の本庁舎へと繋がる長い渡り廊下に差し掛かる。渡り廊下の脇、薔薇の咲き誇る庭園にエリーゼはふと視線を向けるなり、思わず顔を引き攣らせた。ベンチに腰掛け、自らの膝を枕にして第二王女を寝かしつけているエルフの姿…レドにとっては本日二度目のエリスとのご対面である。門の修繕が終わったことでようやく臨時の警備任務から開放されたのだろう。その間に癇癪を起こした第二王女との埋め合わせの最中なのだが、心地良く眠る王女の頭を撫でるエリスの表情はいつもの腹の立つニヤケ面ではなく随分と温かいものであった。のも束の間に、エリスはレド達の気配に気付くなり口角を吊り上げ、侮蔑の意を孕んでいるかのような見慣れたニヤケ面へと戻る。)
やあ少年、奇遇だね。それと七席のおまけの子。私になにか用かな?
っ……な、なんでもないのにゃ…たまたま目に付いただけで…
(エリスは当然の疑問を投げかける、単に挨拶する訳でもなくただ視線を向けられたとなれば何か用事があるのではないかと勘繰ったのだろう。まずはそれなりに印象に残っている将来有望な若者のレドから声を掛け、次にさして興味のないエリーゼ。エリーゼに至っては名前も覚えていないかのように振る舞い、第二副団長である七席のおまけという不名誉なあだ名で呼ぶ始末だ。性悪エルフのそんな扱いには、さすがのエリーゼもご立腹なのだろう、苦笑いを浮かべて視線を逸らしながらも、握った拳が怒りと悔しさで震えているのが分かる。)
(/名前欄にエリスを入れ忘れたので再掲です!)
>1170
あぁ……俺までハラ減ってきたな。エリーゼ殿、ここの食堂のおススメは……
……エリーゼ殿?……え……?なんだあれは、いったい何がどうなって……
(なんだかすっかりペットの振る舞いが板についてしまっているエリーゼのご機嫌な尻尾を見ていると、こっちまで腹が減ってきた。鳴り出したお腹をさすりながら彼女の後をついていき。なにせ朝から、いや連日心身をすり減らしているのだ。早く食事したくてウズウズしていると急にエリーゼが顔を凍り付かせて立ち止まる。自分も彼女の視線の先に目をやると……同じく立ち尽くして。
バカエルフ!?なんだあの聖母のような優しい微笑みは……本当にバカエルフなのか!?驚くのはエリス本人ばかりではない。彼女の膝で眠る第二王女を視認すると冷や汗が出始める。第二王女カトリーナ・ローゼンベルク・フィリア。「王国の至宝」と謳われる美女だが中身は愚物と聞く。一方でさしたる有力な支持者は聞かない。奴はあの穴馬にすらなれない駄馬を支持しているのか?宮廷にも近衛隊にも与せずに?一体どうして!?信じがたい光景を目の当たりにして、口が半開きになって。)
なっ、クレアさん!?ううっ……!バカな、こんなバカな……!
(そうやって二人を見ていると急に顔を押さえてふらつき出して。目眩がしたのだ。あろうことか、第二王女を母親のように慈しむエリスがクレアに見える錯覚を覚えてしまったのである。バカな、クレアさんとあの女が重なるなんて……見てはいけないものを見た気がしたレドの顔は急に青くなり出して。)
……行きましょうエリーゼ第二団長殿。こんな雑兵、相手するまでもない。
(だが気がつけばエリスも元のしたり顔に戻ってエリーゼを侮辱している。やっぱり幻覚か。俺も疲れてるんだ……と思い直すと、背を丸めたままヨロヨロと歩き始める。どのみち王女の前で事を荒立てるわけにはいかない。エリスへの当て付けとしてエリーゼを役職付きで呼び、城門の警備などという副団長に似つかわしくない任務を行っていたエリスを「雑兵」と力無く腐すのが精一杯だ。先の死闘では羽織っていなかった白いケープをはためかせながら歩くとエリーゼの肩をそっと叩き、エリスを無視して立ち去ろうと促して。)
>1171
そ、そうだにゃ…こんな所で道草食ってる場合じゃないのにゃ。
無視とは傷付くなぁ。君達が何を企んでいるのかは知らないけれど、せいぜいその結果が私を利することに期待しているよ。
(先を急ごうというレドの提案を聞いて、冷静さを取り戻したエリーゼはこくりと頷く。エリーゼにとって七席との比較は地雷であり、先のエリスの発言は彼女にとってペット扱い以上に癪だが、今は密命の最中。下らない挑発に乗ってエリスに情報を探られるようなことはあってはならない。そう決心が付くと、再びレドを先導する形で歩みを進めた。
そんな2人の背を見送りながら、エリスは不敵な笑みを崩さずに語りかける。言葉通りに何を企んでいるか知らないなんて事はなく、含みを持たせた言い方から分かる通り、エリーゼの警戒も虚しく実際には宮廷の意向を把握しているのだろう。第一王子派閥に身を置く分団長の派遣や、無名に等しい冒険者と宮廷の接触。レドに全幅の信頼を置き、ある種のフィルターがかかっているアリシアは例外として、それなりの情報収集力を持つ第三者目線からでは、宮廷が何かを企みそれにレドが関わっていることを察する程度は造作もない。無視された手前、当然ながら返事が返ってくる期待などしていないが、要するにこの性悪エルフは「全部知ってる。利害が一致しているから私の為にも頑張れ。」と神経を逆撫でするエールを送ってきたという訳だ。その意味に気付いたエリーゼの苛立ちはブンブンと揺れる尻尾に現れているが、それ以上の反応は見せない。言葉を送り終えたエリスもついには2人への関心は失せ、視線を王女へと戻すと慈しむような表情を浮かべて、割れ物を扱うような繊細な手つきで再び頭を撫で始めた。)
>1172
ハッタリですよエリーゼ殿……獣人の貴女が近衛隊から出てきたんだ。誰もが怪しむことを自分だけ見抜いたと吹いて、優位に立とうとしてるだけ……ちょっと待っててください。
(エリスに手が出せぬまますごすごと立ち去ろうとした矢先、彼女の挑発を聞くと丸まっていた背筋を伸ばし、苛立つエリーゼに耳打ちする。第一王子派=宮廷の獣人が無名の冒険者を引き連れて、獣人禁制の近衛隊庁舎から現れたのだ。一目で怪しいと王城の人間なら誰もが気付くだろう。疑って当たり前のことをさも自分だけが見抜いているように振る舞ってマウントを取りたいだけ……という真相(であってほしいこと)を呟いて。
密命の事、察していようがそれは構わない。察した上で傍観者を気取ってる奴の態度が気に入らない!せめて口喧嘩で打ち負かしたい!眉間に皺寄せ、歯ぎしりすると、180度ターンしてエリスに鋭い視線を突き刺して。)
期待している?何を偉そうに。何も分かってないくせに超越者を気取りやがって。そうやっていつまでも脇から人を弄んでいられると---ちっ、またか!
(本来の粗野な口調でずけずけとエリスをなじりながら彼女に詰め寄る。そしてエリスを指差しながらさらに罵り眼前に迫ろうとするが……あと数歩の所で指差したまま止まってしまって。さっきの穏やかな顔と、王女が枕にして安らかに眠る膝。それを目の前で見ると振り上げた拳が下ろせない。今度ばかりは幻覚として片付けられない、またしても奴に負けてしまったと思い知らされると、苦々しく指差した手を下ろして。)
……クレアさん、まさか奴の中にもあるんでしょうか。正しさってヤツが……
(指差していた手をクレアからもらった金貨が眠る胸の上に添え、彼女の教えを思い出しながら呟いて。副団長エリス、どう見ても傍観者を気取って人を弄ぶバカエルフにしか見えないが……もしそうであったなら、王女がこうも安らかに彼女の膝で眠るわけがない。ますますこの女の事が分からなくなってしまった……ただの悪女であったなら、ただただ憎んで断罪できたものを。
それでもいつかこの女の心の内を解き明かし、その糸目を開かせてやる。そう胸の中で誓うとケープをばさりと翻しながらエリスに背を向け、エリーゼの下へ戻って。)
>1173
取り付く島もないにゃんね……でも、レドくんカッコよかったにゃ!今回は相手が悪かっただけで、きっと常人なら押されていたに違いないにゃ。気を取り直して美味しいもの沢山食べるのにゃ!おすすめはハンバーグ定食にゃ~。
(「取り付く島もない」、レドが詰め寄った先にいるエリスの様子を見てエリーゼはそんな感想を漏らした。あれだけの近距離でなじられて聞こえていない筈はないが、まるで何事もないかのようにエリスは王女の頭を撫でるのみである。あの我が道を往く副団長が一度興味の失せた相手の言葉に耳を傾けるとも思えない、そしてレドもまた引くことはないだろう。そんな想像をしていたが、どういった心境の変化か、存外すぐにレドが引き返してきた。エリーゼはレドが戻ってくるなり、その肩を尻尾で撫でる。レドの何か考え事をしているかのような表情を見て、落ち込んでいるものと思っての彼女なりに励ましであった。レドの一歩先を歩いて先導しながら、エリーゼは努めて明るく振る舞い、空気を変えようと昼飯の話題に話を逸らした。)
>1174
エリーゼ殿……へへっ、どうやらお互い気持ちよくメシが食えそうですね。副団長怖くて指南役が務まるかってんだ!
(未練がましくエリスの方に首を向けていると、肩にふわふわした感触を覚える。エリーゼが尻尾で撫でて励ましてくれたようだ。あのバカエルフに何か届いたとも思えないが、一方的にアレコレ言われたまま黙って去るよりはお互い気が晴れたかもしれない。エリーゼの励ましに応えるべく握った右腕を上げ、左手で右腕を叩くガッツポーズをしてみせると、悪ガキのような笑いを浮かべながら彼女の後を付いていき。思えばこんなガキ大将みたくドヤ顔で笑えたのは同年代の冒険者仲間と共に活動していた時以来かもしれない……エリーゼの励ましは確かにレドの気持ちを軽くしたのであった。)
>1175
そうにゃそうにゃ、その調子にゃ~。何事も恐れていては始まらないにゃ!
(まるでガキ大将のような振る舞いを見せるレドに、エリーゼはノリノリで調子を合わせる。レドと一つしか変わらない年齢ながら騎士団の分団長の地位に就いている彼女にとっても、同年代とのこうした関わりは希少なのだろう。まるで友達のような掛け合いを今や懐かしい騎士学校時代の青春に重ねていた。「何事も恐れていては始まらない」、レドの調子を上げるべくなんの気なしに口から出た言葉であるが、まさかこの言葉がすぐに自分に降ってかかるとは、この時のエリーゼは思ってもいなかったことであろう……)
それを食べたら私の執務室まで来てください、大切な用事があります。案内はソレがしてくれることでしょう。
(数百人が収容できる巨大な食堂、レドと共に人気のハンバーグ定食を受け取り席に着いたのも束の間に、エリーゼにとっての恐怖の象徴は現れた。ウェーブのかかった青髪に鋭い金色の瞳、そして何より目を引くのは、腰に携えた聖教国の意匠の刻まれた白い東刀。王国騎士団長次席補佐官にして第四席、「傷無し」のセレステである。現役の騎士の中でも間違いなく最強格に数えられる一人が、レドを視認するなり颯爽と目の前に現れたのだ。対してエリーゼはセレステの気配を察知した段階から既に喋らず、ただカタカタと震えるのみである。レドの案内を任されてもなお言葉を発することも出来ず、まるで人形かのように何度も肯定の意で頭を前後に振っていた。刻まれたトラウマは余程深刻な様子である。そんなエリーゼの様子を見て、セレステもまた、返事くらいしろと言いたげに不満そうに眉間に皺を寄せた。)
>1176
うへぇ、すげぇな。騎士団の食堂ってのは。ギルドとは大違いだ……へへ、何はともあれメシだメシだ!いただきま……
(騎士団の食堂、大規模ながらも整然とした光景は雑多な雰囲気のギルドの食堂とはまるで違って見えた。ケープを背もたれに掛け、辺りをキョロキョロ見回しながら初めて見る光景を堪能する。そして子供のようにニコニコしながらおススメのハンバーグ定食にあり付こうとした矢先……エリーゼが凍り付いているのと、人の気配……青い髪の女の気配に気が付いて手が止まり。言葉すら発せぬほどに怯えるエリーゼを見て気配の主を察した……「番号付き」の四番手にして神竜すら傷つけられぬと言われる騎士団最強格。そしてクレアさんの元部下……次席補佐・セレステ、エリーゼにトラウマを植え付けた張本人だ。
エリーゼを「ソレ」と呼び、冒険者にとって数少ない楽しみである食事を邪魔して、そして部下ではない自分に対して名乗りもせずに一方的に用件を押し付ける。クレアさんの教えを受けたとは思えない傲慢な態度にはエリーゼ抜きでも腹が立つ。すっと立ち上が……らずにナイフとフォークを再び動かして。)
あの、失礼ですがどちらさまで?なにやら私をご存じのようですが、私は現在近衛隊副長・アリシア様の指示のもと行動しております。御用のおもむきに関してはアリシア様のお許しを得てからにしていただきたい。
そもそもご覧の通り私は食事中です。他人の食事中にやむを得ず用件を伝える時は、まず非礼を詫びて名乗るのが騎士の作法ではないのですか。
(どうやら向こうはこちらを知っているようだが、そもそもレドはアリシアと契約した外部の技官である。名乗りもしない無礼な人間からアリシアの頭越しに指示を受ける筋合いなど無い。セレステのことは見向きもせずにハンバーグを口に運び、敬語でセレステの無作法を指摘して。口調こそお行儀良くしているが、全身から纏う雰囲気は冷たく他人を寄せ付けない、本来の荒くれ冒険者のそれだ。)
>1177
にゃにゃにゃ…!レドくん…にゃにを……
ああ、それは失礼致しました。私はセレステ、次席補佐官を務めている者です。今は詳しくは言えませんが、これは貴方にとっても大切な用事です。勿論私が強制出来ることではありませんので、貴方のご意思に判断は委ねますが…来なければきっと面倒事になるとだけ言っておきましょう。アリシアさんに関してもご心配なく、むしろお喜びになるかと。
(レドの見せた素っ気ない態度に、隣に座るエリーゼはセレステへの恐怖心から顔が青ざめていたが、そんな扱いを受けた当の本人、セレステは特に腹を立てる様子もなく、むしろ納得したようにポンと手を叩き素直に受け入れて訂正してみせた。レイラの我儘を聞いてあげている手前、その弟子が指示に従うのは当然というスタンスで話を進めたが、レドの立場に立って考えてみれば、事情を知らない状態で行動を強制されることは良い気分ではないのだろうと、そして、無知無学な冒険者(セレステの偏見)、それもあのバカ(レイラ)の弟子ならば王国十騎士に名を連ねる自分を知らなくても何ら不思議ではないという、悪意なく失礼極まりない誤解を同時にしていた。典型的な聖教徒らしく人間種には優しいことで定評のあるセレステだが、レドには誤解に起因した哀れみの視線を無意識に向けてしまう。
レイラのサプライズ成功のためにもどう誘導すべきかとセレステは頭を捻りながら、言葉を選んで説得を試みる。レドが来なければレイラが癇癪を起こすことは想像に難くない…そのままの意味での面倒事になるという意味なのだが、言い終えた後にまるで脅しのようなニュアンスであることに気が付くと、アリシアが喜ぶような内容であると補足した。これは、兼ねてよりレイラと親睦を深めることを狙っていたアリシアにとって、レドを貸し出すことでレイラのご機嫌取りが出来るのだから、きっと事後報告でも構わないだろうという考えであるが、やはり事情を話せないことがネックとなって政治的な意味に捉えられかねないことにセレステは内心で辟易していた。)
>1178
…………。
(目を閉じたままセレステの主張を聞き、付け合わせのブロッコリーを咀嚼して。口では「判断は委ねる」と言っておいて、実際は権威と脅迫により選択を押し付ける。しかもどうやら冒険者である自分を見下しているようだ。これを無自覚のうちにやってるのが腹立たしい……傲慢な権力者ムーブに不快感を覚えて眉間に皺を寄せて。口の中でブロッコリーを転がしながらクレアと聖教国司祭の揉め事の噂を思い返す。ギルドで狼藉を働いてクレアさんに酒をぶちまけられ、その腹いせで権威を盾に依頼を押し付けた司祭とこの女は同類だ。クレアさんの教えを受けたくせにあの人から何一つ学ばなかったんだな……どこまでも腐りきった奴め。かつての部下が人々を苦しめている姿を見たらクレアさんも悲しむだろう。あの人のためにもこの女……斬る!
……という蛮行を働くわけにもいかず、固茹での緑の塊を歯で噛み潰すことで殺意を抑える。水を一口つけてそれを流し込むと布巾で口を拭い、すっと立ち上がって。)
「傷無し」のセレステ殿でしたか。これは失礼いたしました。しかし重ねて申し上げますが、私もアリシア様から近衛隊指南役の任を賜り、彼女の指揮下で行動する身の上。いくらセレステ殿のお頼みといえどもこの場ではいそうですかと同行してはアリシア様の面目が立ちませぬ。正式な要請であれば、まずはアリシア様に権限と目的を明記した書面を通してからにしていただけますかな。
(頭を下げてセレステに詫びつつも、再度アリシアの許可を要求して。用件も言わずに独断で近衛隊指南役を連れ回す無礼に従ってはアリシアやエリーゼのためにならない。苦笑いを浮かべ穏やかに話してはいるが、この場でセレステに従う気は一切見せないのであった。)
>1179
はぁ……分かりました。そちらの事情もあるのでしょう、速やかに手続きを済ませますので後ほどアリシアさんに確認してください。
(エリーゼはすっかり白目を向いて動かないがそんなものはどうでも良い。その横で、頑なにこの場で了承しないレドの姿勢を見て、師匠(レイラ)が頑固なら弟子も同様だなと、セレステは思わず溜息を吐いた。王城内の政になんら関係のない外部の人間だからこそ簡単に動かせるものと考えていたが、この様子だと着任早々に既に何かしらに巻き込まれているのだろうと察し、今まさしくレイラのせいで振り回されている自分と重ね合わせて少しばかり同情を寄せる。渋々と言った様子でレドの要求を呑むと、手続きの為にその場を離れようと背を向けかけるが、ふと思い立って一つの質問を投げかけた。)
クレア先輩はお元気でしたか?
(レイラの弟子ともなればクレアと何らかの関係を持っている可能性は十分に有り得る。そうでなくとも、S級冒険者の近況ぐらいは同じくデュランダルの冒険者ならば知っていてもおかしくない。そうした可能性を踏まえての何気ない質問であった。アリシアが反対する可能性は限りなく低い為、この後またレドとは顔を合わせることになる筈だが、現状のクレアとレイラの関係が複雑なことくらいは噂に聞いている。故にレイラがいない今しか聞けない内容なのである。かつての憧れであった先輩が、恋人を失って以降長らく落ちぶれていた筈が最近になって、自らの信仰の聖地である聖教国からの依頼を見事にこなしたと聞く。きっと何か良い意味での心境の変化があったのではないかという淡い期待を寄せて、返答を待つセレステはその金眼を少しだけ輝かせた。)
>1180
エリーゼ殿、起きてくださいエリーゼ殿。
……セレステ殿、お心遣いは感謝いたしますが何も個人的な事情でお頼みしているのではございませぬ。これは同じような事があればいつ、どなたにでもお願いしていたこと。指揮系統と目的を明確にした上で主から離れなければ、主を蔑ろにすることになってしまいますから。
クレア殿に関しても……私からはあれこれ申し上げられません。あの方は今も悩んでおられる。他人が軽々しく語ればあの方を傷つけることになりますから。ただ……クレア殿は正義の剣よりも、傷ついた人の隣に立つ剣を選んでおられる。それだけは申し上げておきます。
(セレステに逆らったからなのか、気絶してしまったエリーゼを起こそうと彼女の肩を揺さぶって。それからセレステに向き直ると、自分の越権行為をこちらの事情の問題にすり替えてくるセレステにやんわりと「事情は関係ない、一般論だ」と釘を刺して。
クレアの話も首を振って、多くを語らないようにして。どうもセレステは自分が正しいと信じて疑わず、無自覚に人を見下し、自分の都合よく物事を解釈するタイプらしい。はっきり言って自分の正しさを疑いながらも人に寄り添い続けるクレアさんには相応しくない女、酒を浴びせられた司祭と同じく彼女に拒絶される存在なのだ。むやみに語ってコイツの自己正当化の材料にされたら、クレアさんはますます傷つく……と考えながら、言葉を選んで慎重に話して。)
>1181
はぁ…
そうですか…もし先輩と会う機会があれば、くれぐれもお身体に気を付けてとお伝えください。それでは、また。
(自分に向けて釘を刺すようなレドの言葉に、セレステはまともに聞く気がないのか視線を明後日の方向に逸らした。レドの言ってることはご尤もだが、セレステの立場からすれば、単にそっちの身内のバカを迎えに来いと言うだけの話なのである。そこに何か別の目的がある訳でもなく、お迎えに許可もなにも必要はない。事情を話せればここまで話が拗れることもないのに…と視線を逸らしたまま再び溜め息を吐いた。いっそ全部話してしまおうかとさえ思ったが、レドの驚く様を想像しながらウキウキと侍女服に袖を通していたレイラの顔を思い出すと良心が痛む。そもそも、問答無用でレイラを城から叩き出せば良かったものを、こうして自ら面倒事を引き受けてしまった自分の甘さに無性に腹が立つ。その苛立ちを間違ってもレドへ向けてしまうことがないように視線を逸らしているのだが、傍から見れば態度が悪いように映ることであろう。そして、クレアの話へと移るとやっとセレステは視線を戻すが、期待していたような返答は得られずに僅かに輝いていた瞳も残念そうに色褪せた。しかし、レドの発言の意図は分かりかねるが、「傷ついた人の隣に立つ剣を選んだ」という言い回しには少しだけ興味を唆られる。かつて、副官だった自分とクレアが方針を巡って初めて口論となった農民の大弾圧。その時に持ったクレアの印象は正義と秩序を重んじる堅物……時を経て、もしくは何かのきっかけで良い意味での変化があったのだと思い至ると、セレステの心にはほんの僅かに温かな感情が芽生えた。顔には出さず、最低限の社交辞令上の口上をレドに託し、ついにセレステはその場を後にする。)
んにゃ……はっ…!気を失ってたのにゃ…もうあの人はいないにゃんね。うぅ…レドくん、食欲がなくなったからハンバーグあげるにゃ。
(セレステが立ち去ってしばらくして、エリーゼはハッとした表情で目を覚ます。辺りを見渡せばセレステはレド達の席から遥か遠く、食堂の出入口付近でなにやら首席と痴話喧嘩(日常と化した光景のため騎士達にはそう揶揄されている。)しているが、それだけ離れていればエリーゼの精神状態に問題はないようだ。しかし、受けたショックのせいで二日分の食欲はどこかへ消え、ブロッコリーを一つ自らのフォークに刺すと、それ以外を皿ごとレドに寄せた。)
>1182
……行ったか。エリーゼ殿すみません、あんまり力になれなくて。にしても次席補佐め、分団長を召使いみたいに扱うなんて。そもそもなんの用事……
(一礼し、立ち去るセレステの背中を静かに見つめ、ため息を吐いて。心なしかクレアの話題の時は穏やかに見えた。ただ気配りと余裕が無い女なのかもしれない。であれば共にクレアを慕う者同士で親しくなれる……ある一点さえなければ。
着席すると、いまだセレステへのトラウマを負い、食欲を失くしハンバーグを寄越してくるエリーゼに眉尻を下げて詫びて。それから遠方にいるセレステを苦々しく見つめ……ていると彼女が口論しているのが見えた。その相手の……見覚えのある覆面男を指差しながら、エリーゼに尋ねて。)
え、エリーゼどの?あのマスクマンはいったい……
>1183
あ、謝らないでほしいにゃ!レドくんが負い目を感じることじゃないのにゃ。
(何ら非がないにも関わらず誠実な対応で詫びるレドに、エリーゼは目を丸くして慌てた様子でそれを止める。書類上の一時的な関係とはいえ主従関係にあるにも関わらず、こうして会って日も浅い自分に気を配ってくれる。そんなレドの人柄にエリーゼの警戒は僅かに解けつつあった。一呼吸置いて落ち着きを取り戻すと、続けられたレドの質問に答えて。)
あのマスク男はヴァルター殿。今の首席補佐官で、最も強く美しき獣人…を自称してる変人にゃ。美しいとは欠片も思わにゃいけど、強いのは確かなのにゃ。一度手合わせしたこともあるけど、私の剣がかすりもしにゃかった…にゃはは。
たぶん、あの人に攻撃を当てられるのは団長と前任のクレアさんくらいかにゃ?
(レドが指差す仮面の男、ヴァルターに視線を向けながら頬杖をついて、エリーゼは彼への私見を述べた。嫌いとまではいかないもののあまり良い印象は抱いていないようで、最も強く美しき獣人を自称する変人と、そう彼を語るエリーゼは苦笑いを浮かべている。ただ、自らの経験から彼の剣の腕は認めているようで、エリーゼの見立てでは勝負が成り立つのが団長とクレアぐらいのものだと断言した。クレアに関しては全盛期を基準にしているが、どちらも王国の剣士の最高峰と言っても差し支えない。それに準ずる技量を持っているからこそ、ああしてセレステを怒らせることに何ら危機感すら覚えていないのだろう。)
>1184
ヴァルター……そうかあいつか!しっかし奇天烈な仮面だなぁ、顔隠して何が美しいだよ。
……バカエルフの次はバカマスクか、揃いも揃いってどっから拾ってきたのやら……おもしろくないっ!
(エリーゼの説明を聞きながら自分のハンバーグをがっついて。あれがクレアさんの後任の仮面男ヴァルターか……見た目も中身も変な男だなぁ、騎士団の上位者はろくでもない連中ばっかりだ、とヴァルターをジト目で見ていたが、彼の強さの話になると急に真顔になって目を見開いて。団長とクレアさんしか敵わないだと!?次席補佐セレステですら相当出来る女と見ていたのにそれ以上とは……そして糸目野郎より上なのか。面白くなさそうな顔で一気に自分の皿を空にすると、エリーゼのハンバーグに視線をやって。)
……エリーゼ殿、食べましょう。食事は剣に油を差すみたいなものだ。剣士は食べたくなくても食べなきゃいけない。食べて力つけて……連中を追い越しましょうよ。
(エリーゼはヴァルターも好かないらしい。いけ好かない性格の相手に剣士としての自信を折られたらそうもなろう。次席補佐はいわずもがな、バカのくせにエリーゼをバカにするバカエルフ、そしてあの仮面男……嫌な上司に囲まれ、宮廷からはペットとして送り出されてはエリーゼも気が滅入るだろう。せめて自分が出来る範囲で彼女を元気づけてやりたいと、差し出されたエリーゼのハンバーグの皿を戻して、微笑んで。)
>1185
…分かったにゃ。もっと強くなって、みんな見返してやるにゃ!
(レドの説得に応じて、すっかりスイッチの入ったエリーゼはようやく食事に口を付けた。美味しそうにハンバーグを頬張っていると、今しがた話題に上がった人物、ヴァルターが軽快な足取りで二人に歩み寄る。既にセレステの姿はなく、暇を持て余しているのだろう。)
久しいなエリーゼ。ジェラルド殿下との会食以来か。良い良い、若人は沢山食べなくてはな。
して、其方の若人はもしや…噂の指南役とお見受けする。我が名はヴァルター!最も強く美しき獣人だ。しばらくはこの城で顔を合わせる機会も多いだろう。よろしく頼む。
(断りなく二人の正面の席に腰掛けたヴァルターは、まず目に入ったエリーゼの食に対する姿勢を褒めると、満足そうにうんうんと頷いた。対するエリーゼは「久しぶりにゃ。」と短く返すだけの塩対応である。その声色からは、面倒なやつに絡まれたという心の声が漏れ出ているかのよう。そんな様子はお構いなしに、ヴァルターが次に目を付けたのは指南役を引き受けたばかりのレドであった。二十歳そこそこの年齢でその任を引き受ける例は稀で、内情に詳しい騎士団の上位者レベルには既にレドの存在は知れ渡っている為である。高らかに名乗りを上げたヴァルターは、表情すら読み取れないその気味の悪い仮面の瞳にレドの顔を映しながら、己の手を差し出して握手を求めた。)
>1186
おいでなすったか、マスク怪人!
(エリーゼに食欲が戻ってほっとしたのもつかの間、あの仮面男が迫り来るのを見てぼそっと呟き。噂をすればナントヤラとはよく言ったものだ。やたら足取りが軽いわ勝手に正面に座るわ、なより疫病対策に使われるという嘴みたいなマスクが実に不吉だ。もう騎士というより怪人に見える。とはいえ騎士団の高位者に粗相もできない。まずは目の前に着席したヴァルターに一礼して。
エリーゼと共にジェラルドと会食したということは、こいつも第一王子派らしい。そして獣人……意地悪ジェリーちゃんはケモナーなんか?と淡々とした表情の下で分析していたが……)
噂の……?なんと、私をご存知でしたか首席補佐ヴァルター殿。近衛隊指南役レドと申します。よろしくお願いいたします。
(こちらを把握しているヴァルターの発言に目を丸くして。どうやら俺の話は想像以上に騎士団の中で広まっているらしい。ひょうきんなくせに、仮面のせいでバカエルフ以上に表情が読めない。そしてエリーゼの塩対応からして次席補佐とは別ベクトルで厄介な相手なのだろう。そんな相手にこちらを知られているのは癪だが、まずは礼儀正しく挨拶してから手を差し出してきたヴァルターと握手して。)
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