トピ主 2024-07-26 06:44:45 |
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前日譚「王の剣」
教会の勢力を削ぎたい?それはまたどうして?
(王城内のとある一室にて、副団長エリスは国王の言葉に首を傾げて質問で返した。相談役という立場から、国王が内密に事を進めたい時には度々こうして密談を重ねている。)
あぁ…確かに最近怪しい動きがあるのは承知しているよ。それならさぁ、まずは近衛隊のあの子を罷免したらいいんじゃないかな。どう見ても聖教国のシンパでしょうよ。って…それは出来ない?ハァ…彼女との間に何があるのかは聞かないけどさぁ…じゃあどうするのさ?
(どうやら国王は国内の分断を憂いて、手遅れになる前に教会の勢力を削りたいらしい。それならまず一番きな臭い近衛隊、特に副長のアリシアを追放すべきだと提案するが国王は首を横に振る。きっとエリスの預かり知らぬところで何かあるのだろう。主君の突かれたくない所を無理に突くことはないと考え、ため息を吐きながらもエリスは国王が納得のいく代案を求めた。)
勇者を始末する…?陛下は自分が何を言ってるか分かってるの?最悪は聖教国と戦争に……まぁ書類上の戦力差が正しいなら勝てるだろうけど…それよりも勇者をどう仕留めるつもり…?まさか私に…
(勇者を消すという大胆な提案にエリスは呆れ顔を浮かべるものの、内心では一定の理解を示していた。教皇の寵愛を受ける勇者の存在は王国にとって潜在的な脅威の一つである。勇者が意図せずとも、その名声が轟く度に教会の良い宣伝となる上に、勇者の支援を理由に王国各地に教会の関連施設(工作拠点)が建てられている現状がある。それらを基盤とした近年の王国における信者の増加傾向を鑑みれば、いずれ王国は内側から食い破られることであろう。そうなる前に手を打ち、十分に勝算があるのなら戦争も辞さないということだ。しかし、エリスが最も懸念しているのは誰が勇者を仕留めるかということである。騎士団長は表でしか動かせない以上、必然的に勇者と互角に渡り合えるのはもはや自分しかいない為である。)
はいはい…分かりましたよ。元より私は君の剣だから。正攻法じゃあちょっとしんどいから多少の血が流れることは勘弁してよ。
(ジト目で国王の顔を見やりながら、乗り気ではないが命令された以上は仕方がないと割り切って、エリスは王の剣として命令を賜った。「王はその知を持って民を導くが、外敵から身を守る術を持たない。ならば剣である私が代わりに外敵を排除するのが道理である。」磨り減って殆ど空っぽになった心の中に未だ残る、何代も前の王に誓ったその信念だけを胸にエリスは意を決して勇者討伐へと赴いた。)
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