トピ主 2024-07-26 06:44:45 |
|
通報 |
>1136
ふふっ、レド殿が望むなら…好きに触っても構いませんよ。ああ、でも…今はまだ早いですね。そういうのは夜に取っておきましょうか。
(初心なレドの反応を見てアリシアの内なる嗜虐心が刺激された。顔を上げると、レドが狼狽えた要因たる双丘に手を添えて、艶かしい笑みと声色で好きに触っても良いと言ってのける。揶揄い半分、本気半分といったところであろう。相変わらず、隙を見せればすぐに小悪魔的な振る舞いをする女である。アリシアの恋愛観では口付けのみならず、多少なら婚前に身体に触れることもセーフのようだ。レドなら勢いのまま一線を越えることはないだろうという確かな信頼があってこその提案でもあり、返事を聞く前からまるで確定事項かのように夜にしようと言い出すあたり、アリシア自身も乗り気の様子である。座らされたソファで、レドに寄りかかりながら上目遣いで顔を覗き込み、反応を伺うその様子は心底楽しそうであった。)
>1137
んなっ!?かっ、からかわないでくださいよアリシア様……
あ……そういうことでしたら、夜部屋に人が寄り付かないようにしていただけませんか……その、間違って誰かに見られたり……入ってこられたら大変なので……
(「触っても構わない」、そんな挑発的な言葉に面食らって身体をビクッとさせて。ついその柔らかな双丘に手が伸びそうになるが、おあずけを食らうとピタッと止まって。すっかり翻弄されている。これは悪魔じゃなくて素の性格なんだろうか……と、むずむずした顔になって。レドは小悪魔的な女に弱いのだ。
何か思いだしたかふと天井を見上げると、すっかり赤くなった困り顔をアリシアに向け……いや、彼女の小悪魔的笑顔に目が反らせなくなって、夜部屋に人が寄り付かないようお願いして。男として断る理由は無いが、エルフリーデが乱入してきたら最悪だ……そうなればどんな淫らな、いや恐ろしい光景になることやら……とアレコレ想像すると、指を頬で掻いて。)
>1138
それもそうですね…では、今夜は私の部屋にお招き致しましょう。そこならば誰も訪ねてくることはないでしょうから。
それに……じつは、レド殿の泊まり先はあの猫と同室で手配しているんです。最愛の人を別の異性と寝泊まりさせることは不本意なのですが、自由に動かれては困りますし…やむを得ません。レド殿にはご不便をお掛けしますが、ご協力をお願いします。そ、その……色々と溜まった時は私を頼ってもらえれば…精一杯頑張ります…
(レドの懸念を聞いて、アリシアは顎に手を添えて少し考える素振りを見せると、レドを私室に招くことに決めた。一般の宿舎に比べれば遥かに立ち入りのハードルが高い為、レドの不安を拭うには十分だろうという判断である。そして、言いにくそうに視線を下げ、間を置いて言葉を続けるアリシアは、さらなる理由…衝撃の事実を明かした。その内容はエリーゼの監視のためにレドと同室で宿泊先を手配したというものである。不本意だと言うアリシアの言葉に嘘はなく、説明の最中にも無意識にレドの服の袖を強く握った。年頃の青年が同年代の異性と相部屋、何がとは言わないがきっと溜まるものもあるだろう。万が一にも間違いを犯さぬように、そういった困り事は自分に任せてほしいと告げるアリシアであったが、内容が内容の為に先程までの小悪魔的余裕は既になく、いつの間にか自分を見据えるレドにも負けない程に顔が赤く染まっていた。)
>1139
~~~~~~!!!
いっいけませんアリシア様!シエルから事の重大さは伺っています!おっ、俺もひとかどの剣士、任務に集中しますから!こ、今夜もそういう事はなさらなくて結構ですから……!
(アリシアのとんでもない発言に、袖を握られてない方の手で顔を覆い、声にならない声を上げて。顔などはもう溶岩のように真っ赤で、湯気まで出るほど熱くなっている。私室に招かれるだけでも相当なことなのに、エリーゼの監視に際しての「困り事」の処理までさせたら、もうアリシアの婚前の誓いを守れない……!首をブンブン振りながら、上ずった声でアリシアの提案を否定して。)
>1140
そ、そうですか…それ以外にも何かあれば遠慮せず相談してくださいね。
コホン…では、本題に移りましょう。指南役の具体的な職務内容をこちらの契約書に纏めてあります。ご確認の上、問題がなければサインをお願いします。
(レドの仕草や表情などから自分を思いやってのこととは理解しているが、全力で否定されたことに少しだけ自信をなくしたのだろう。アリシアは暫しシュンとした表情で俯くものの、咳払いをしてすぐに話題を切り替えた。袖から手を離し、そのまま自らの懐に収めていた封筒を取り出す。中には指南役の詳細が書かれた契約書が仕舞われているようだ。正式な書類だけあり小難しい言い回しで記載されているが、内容は大まかに以下の通りである。
・招集期間は二ヶ月 ・出勤は週三日 ・一日の実働時間は二時間 ・給金は月額で金貨十枚 ・成果次第で追加報酬あり
宮仕えだけあり、平民が休まず働いてやっと月収が金貨5枚ということを考えれば破格の待遇であった。そして、最後の追加報酬の一文のみ筆跡が異なることから加筆されたものであることは明らかであり、綺麗ながら丸みを帯びた女性らしい字体を見るにアリシアの好意であることが窺える。)
>1141
ははっ。では確認します……。……身に余る光栄です。ご厚遇に感謝いたします。…………。
(契約の話に入ると一転して氷のように冷たく静かな顔つきになり、アリシアの懐のぬくもりが伝わる契約書を両手に持ち、その文面を目で追って。たったこれだけの労働時間でこんな大金が……しかも近衛隊剣術指南という名声までつくからには、実際に得られる富はこれ以上と見える。剣を振る以外に生きる術のない、明日も知れない冒険者や剣術使いならこぞって仕官を求め……なんならこの指南役の座をかけて決闘まで始めるだろう。そんな厚遇を改めて認識すると、静かに礼を述べて。
ふと、クレアからもらった金貨が忍ばせてある胸元にそっと手を当てつつ、アリシアの机の書類の山……騎士としての重圧を空しそうに眺めて。クレアさんは騎士として誰より強く清らかだったのに……いや、だからこそ騎士社会に心を壊された。そしてアリシアもまた……おそらくこの国で剣術指南をしていたであろう師匠(オヤジ)が多くを語らなかったのも今は分かる。この王国には優れた者、優しい者を潰す魔性が潜んでいるのだ……
この破格の待遇を誇る剣術指南もまた、剣士の心を歪める甘い罠。もしこんな剣の職など無い、剣を取らずに生きられる世界があったなら、クレアさんもアリシアも幸せでいられたろうか。もしそんな世界が拓ける機会に巡り合えたなら、俺は二人をその先へ送り出し……黙って去ろう。俺は剣を振ることしかできないから……)
……おっと失礼しました。謹んでお受けいたします、ご厚遇に見合う働きを……んん?
(……などという妄想に逃げている暇は無い。首を振って改めて視線を契約書に戻して。いずれ裏切るその日まで、せめて指南役としてアリシアを支えたい……矛盾した想いを胸にペンを取ろうとした矢先、ふと明らかに筆跡が違う最後の一文が気になって、そこを指差しながらおずおずと質問して。)
あの、この「追加報酬」とはいったい……?これはアリシア様が書き足されたようですが……
>1142
さすがレド殿、お気付きになられましたか。ええ、それはほんのお気持ちです。レド殿は指南役の任とは別に監視任務がありますので、その分の報酬を「追加報酬」という形で加えさせていただきました。額にして金貨二枚を予定していますが…ご不満でしたら引き上げることも検討致しましょう。
(契約書を眺めるレドの冷たい顔つきを、アリシアは自身の頬に手を添えてうっとりと眺めていた。レドならば筆跡の違いにも勘づくだろうと予想していたが、案の定それについて質問が飛んでくる。アリシアはニコッと微笑んでレドの慧眼を称えると、「追加報酬」の真意を明かした。通常の指南役とは異なり、監視役としてレドは赤の他人(とアリシアは思い込んでいる。)のエリーゼと決して短くはない期間を同室で過ごすことになる。その心的負担を考慮してのアリシアの計らいであった。勿論のこと監視任務は機密事項の為、あえて成果次第の追加報酬と表情を濁したのであろう。指を二本立てて追加報酬の予定額を伝えるアリシアは、それでも足りなければ増額も考える旨を話すが、この提案は、同室で過ごす中でレドがエリーゼに惹かれてしまうのではないかという恐れの現れでもあった。)
>1143
なるほどそういう事で……なに、それだけ頂戴できれば満足ですよ。むしろお心遣いに感謝するばかりです。
(「追加報酬」の真意を知るとふっと笑い、増額の提案には首を振って答えて。別にタダでもいいんだが、アリシアの好意を無にするのも失礼だ。最初の提示通り金貨二枚で了承するとペンを取る。”Ledo”。たった四文字、苗字すら無い自らの名をさらっと紙に書き記すと、ペンをそっと置いて。)
もうひとつ。あの猫に魂を売ることはありません。もし約束を違えたら……この命、アリシア様に差し上げましょう。
(サインを終えると、一転してアリシアが懸念している猫(エリーゼ)の事を冷たく語って。アリシアに密命を感づかれないため意識しているとはいえ、騎士として苦しんだクレアを見て以来、エリーゼの事は半ば本気で見下し始めている。獣人だからでは無い。宮廷≒第一王子派だからである。あの男は独自に私兵を飼っていると噂で聞く。エリーゼ……良心的な人とはいえ彼女も結局王子の飼い犬、いや飼い猫に過ぎないのだろうか……
言い終えると自らの長い東刀をわずかに抜く。赤鞘から覗く白刃に右手親指を添えて指に傷をつけると、先の署名の隣に血で濡らした親指を擦りつけて。血判。紙の上に血を置いた物が何の証明になるのだろう。これから裏切るというのに……それでもアリシアへの愛の証は示したい。事が露見したら彼女に刺されても構わない……そんな気持ちを刻んだ契約書を左手でそっと、アリシアの前に滑らせて。)
>1144
ふふっ、謙虚で誠実…貴方のそんな所が堪らなく愛おしいです。
それでは、確かに受け取りました。これからよろしくお願いしますね。レド先生。
(欲をかくこともなく、それでいて自分の不安を汲み取り、目に見える形でそれを払拭して見せたレドの行動にアリシアの頬は堪らず緩んだ。こちらも言葉で愛を示すと、差し出された契約書を懐に仕舞い、未だ血の滲むレドの右手を優しく両手で包み込む。裏切られるとも知らずに眩い笑みを浮かべ、今しがた契約を結んだことで指南役となったレドに対して嬉しそうに敬称を付けて呼ぶその様は、真相を知る宮廷の人間が見れば滑稽に映ることであろう。自ら裏切り者を招き入れ、アリシアの政局が大きく不利に傾いた今、契約書は単なる雇用関係を示す紙切れではなく、アリシアのその後の人生をレドに背負わせる代物と化したと言っても過言ではない。それは対価として得られる金貨よりも余程重たい代償であった。)
>1145
先生だなんてそんな。はは、こそばゆいな……近衛隊剣術指南、謹んでお受けいたします。この剣をもってアリシア様のために尽くしましょう。
(「先生」、自分とは縁遠い肩書きで呼ばれ思わず照れ笑いして。政治屋め。人の愛を利用して、しかも「ご自身でアリシア殿をお守りすればいい」などとナメた口をきく。まるで任務が終わったら二人とも始末すると宣言されたようなものだ。だからこそ消えても困らない野良冒険者など使うのだろうが。勝負は始まったばかりだ、どっかで出し抜いてやる……まだ何にも思い付かないけど。そんな決意を胸に秘め、血のにじむ自らの右手を優しく包むアリシアの両手に左手を添えると、穏やかに微笑みながら忠誠を誓って。)
>1146
ありがとうございます。その言葉…とても頼もしいです。
さて、トラブル続きでレド殿もお疲れでしょう。そろそろお部屋に…
(まるでプロポーズかのような忠誠の言葉に、アリシアは顔を真っ赤に染めて感謝を述べる。
この時間が永遠に続けばいいのに…そんな思いを胸の内にしまって名残惜しそうに手を離すと、レドの疲労を考慮して別れを切り出した。エリスとの闘いや報告を受けた今朝のトラブル…自分の前では顔に出さないだけで、きっと休息が必要な状態に違いない。契約書にサインを貰った以上はこれ以上呼び止める理由もない。色んな理由を付けてアリシアは自分を納得させて、なんとか言葉を紡ぐものの、タイミング悪く扉をノックする音に遮られる。続けて「入って宜しくて?」と扉越しに幼い声色ながら格調高い喋りで質問が投げかけられると、その声を聞いてアリシアは苦笑いを浮かべながらも「お入りください」と、そう返すほかになかった。)
ふふっ、御機嫌ようアリシア。少し時間が出来たから遊びに来てしまったわ。あら…先客がいたのね。お邪魔だったかしら?
滅相もございません。今しがた用事を終えたところです。
此方はレド殿。本日より近衛隊の指南役を引き受けてくださいます。
へぇ、若いのに凄いじゃない。指南役の名に恥じない働きを期待しているわね。
(開かれた扉から姿を現したのは第三王女ルイーズ・フィリア。その容姿は瞳の色を除けば今は亡き第一王女の生き写しのよう。そんな彼女がアリシアを筆頭に近衛隊から次期王位継承者として支持されていることは、この国の政治に詳しい人間には周知の事実である。そんな間柄のため、度々こうして近衛隊庁舎まで足を運んでいるのだろう。扉からアリシアの元まで歩み寄るまでの身のこなし、幼い容姿に似合わない丁寧な所作の一つ一つは、王族の教養の高さを示すと同時に年相応の振る舞いも出来ない不自由さを感じさせるものであった。そして、目を引くのは王女だけではない。後ろに従える二人の侍女。一人は犯罪組織「サンクタ・ラミア」の所属を示す黒蛇の刺青を頬に刻んだ凛とした銀髪のエルフ、もう一人は一見朗らかな雰囲気を纏いながらも暗殺者特有の癖で不自然なまでに足音を消して歩く茶髪の侍女。どうにも第三王女陣営は訳ありの人間が多いようだ。アリシアの紹介を聞いてルイーズはレドに顔を向けると品定めするように目を細め、その年齢で指南役に選ばれた栄誉を称えながらも、地位に見合う相応の働きを見せるように釘を刺した。ここは凡ゆる謀略の渦巻く王城、こんな幼子でもそう簡単に人を信用することなど出来ない…まさしく魔境と呼ぶに相応しい場所であった。)
>1147
……!お初にお目にかかります、ルイーズ殿下。この度近衛隊指南役を仰せつかりました、レドと申します。お目通り叶いましたこと、光栄に存じます。
(思いがけない来客……第三王女ルイーズ、アリシアが擁立する最年少王位継承者。人生において初めて拝謁する王族の存在を確認すると立ち上がり、すっと右手を胸に添えると、静かに頭を下げながら自己紹介して。頭を下げる角度は深すぎず、そして膝はつかない。剣術指南はあくまで外部招聘の技官であり、臣下の礼の義務は無いからだ。
「冒険者」。鍛えた剣や魔法を操り、いくばくかの報酬と引き換えに依頼を遂行する者たち。支配という名の権力、忠義という名の束縛が横行する世界において、何にも与する事のない例外的な存在である。礼は尽くすが服従はしない、レドの立礼はそんな冒険者の矜持の表れと言ってよい。)
若輩者ではありますが、東刀使いとして相応しき働きをお見せする所存。以後よろしくお願い申し上げます。
(頭を戻すと視線は鼻のあたりに向け、そのルミナ姫に似た顔をむやみに睨みつけないようにして。両脇に控えるふたりの侍女には視線を向けず、ただ視界の端に入れるにとどめる。異様な刺青のエルフはもちろん、茶髪の方もただならぬ身のこなし。第三王女の用心棒だろう。こちらもジロジロ見るべきではない。まるで貧民街の犯罪組織のような淀んだ雰囲気を放っているが、呑まれたら剣士として終わりだ。幼子でありながらこちらを小僧扱いする第三王女の挑発的な態度にも流されず、静かに、簡潔に、そして堂々と、ふだんろくに使わない改まった敬語で口上を述べて。)
>1148
ふーん…ま、せいぜい頑張りなさい。
用事は終わったのでしょう?アリシアは私が借りるから貴方は部屋に戻ってなさい。セレナ、ご案内して差し上げて。
(金の為なら何でもする下賎な輩…冒険者に対してそんな偏見を抱いていたルイーズだが、少なくとも目の前の指南役はそれなりの振る舞いを心得ているようだと、ツンとした態度の裏で一定の評価を下していた。しかし、生まれたその瞬間から政争の渦中にある王族の信頼を勝ち取るにはまだ足りない。最初から期待など捨てているかのような歳に似合わない冷めた視線は、無垢とは程遠いこの幼子の心を開くのに相応の時間と実績を要することを示していた。厄介払いするかのように部屋に戻れと催促すると、お付きの侍女…セレナと呼ばれた刺青のエルフに案内を任せた。)
そういう訳ですので…レド殿もお疲れでしょうし、しばらくお部屋でお寛ぎください。…また夜にお呼び致します。
(警戒心を隠そうともしない主の振る舞いにアリシアは再び苦笑いを浮かべつつ、こちらはレドを気遣って部屋への移動を促した。最後にコソッと耳打ちして夜の約束を取り付けると、口元に手を添えて悪戯な笑みを浮かべる。
一方で、案内を任されたセレナは既に扉に手をかけ、レドの様子を窺っている。決して急かす意図はないのだが、人見知りのせいで言葉が出ない上に目つきが悪い為そう捉えられてもおかしくはないだろう。この後、二人で廊下で何を話そうか、どう話題を振るべきか…人見知りなりに色々悩んでいるのだが、その険しい表情は傍から見ればレドを睨んでいるようにしか見えない。)
>1149
ッッ……!んん、恐れ入りますルイーズ殿下。では失礼いたします。
(去り際のアリシアの悪戯に思わず身震いするがここは殿下の前。咳払い一つして気持ちを切り替えると、第三王女に一礼して。それにしても自らの侍女に近衛隊庁舎の案内をさせるとは、どうやら近衛隊は第三王女の私兵と化しているらしい。第三王女を支持するアリシアを密命で排除した暁には彼女も粛清されるだろう。「政治屋め、何が「我々の最優先事項は抗議運動の沈静化」なものか。完全な権力争いじゃないか」という気持ちと「とはいえ確かに近衛隊も第三王女も歪んでいる。放置すれば内乱が起きて……クレアさんが安心して暮らせなくなる」という気持ちのせめぎ合いを凛とした表情の中に隠しつつ、案内を務める刺青の侍女、セレナに向き直って。)
セレナ殿、私も近衛隊庁舎には不慣れ……よしなに頼みます。
(刺青の侍女、セレナの目つきがやけに鋭い。気味の悪いさっきの近衛兵といいこの侍女たちといい、これじゃ近衛隊じゃなくて暗殺教団だと内心で突っ込むが、セレナの場合は表情が険しすぎる。たぶん緊張だろう……と判断すると緊張をほぐすべく、穏やかに微笑みながら彼女に案内をお願いして。)
>1150
うん…任せて。
(レドの方から話しかけてくれたこともあり、未だ緊張は残るもののセレナの表情は幾分か柔らかいものとなった。口下手なのか最低限の返事を返すに留まるが、僅かに吊り上がった口角を見るに随分と嬉しそうな様子である。ルイーズに一度頭を下げてから、扉を開いて歩みを進めた。)
あ、あの…その…レドさん。初めて会う人だから警戒していたけど…ルイーズ様は本当は凄く良い人なの。だから…嫌いにならないでほしい…
(二人きりの廊下を進みながら、セレナはなんとか緊張を抑えて言葉を紡いだ。厳つい頬の刺青に似合わず、そのたどたどしい喋り方はまるで小動物のよう。話す内容はというと、先程の主の振る舞いの弁明である。幼くしてこんな魔境に身を置いていれば人間不信にもなるであろう…ルイーズのそんな境遇を哀れみ、セレナは少ない語彙力ながら、レドにも事情を理解して貰おうと努めていた。「凄く良い人」なんて言われても抽象的過ぎる表現だが、セレナの瞳と声色からは彼女なりの必死さが窺える。)
>1151
ふふ、心得ておりますセレナ殿。冒険者とは信頼の得がたい職ですから致し方ありません。なによりアリシア様がお仕えするからには……あっいや、失礼……
(ルイーズの事を弁明するセレナに歩くペースを合わせつつ、心得ていると微笑んで。とはいえレドも多くは語らないし必要以上に褒めない。この王都という魔境、とりわけ王族に関する話題は下手な発言が命取りになる。目の前の純朴そうな刺青のエルフとて、宮廷のスパイかもしれないのだ……と弁えていたつもりだったが、話の流れでエルフと敵対する聖教徒のアリシアを褒めようとしてしまい、気まずそうに顔を逸らして。)
>1152
…気にしないで。確かにあの人は怖いけど…きっと貴方にとっては良い人だから、私はそれを否定しない。
(アリシアの名前が出ると、セレナはピクリと身体を震わせた。エルフである彼女が、身近で権力を持つ聖教徒に恐怖心を抱かない筈もなく、これは本能的な拒絶反応である。しかし、それでも尚セレナはレドの意思を否定せず、真っ直ぐな瞳を向けて、立場によって見え方も異なるだろうと寛容な姿勢を示した。勿論、先程の自らの弁明を受け入れてくれたレドへの配慮という面もあるが、何よりもここでアリシアを否定することはルイーズへの裏切りに等しい。高い忠誠心から自らの意見を押し殺しているようであった。)
それに……本国の司祭よりはマシだから。痛いことはしないし…一応は人として扱ってくれる。だ、だから…そこまで嫌いじゃない……かも…?
(目の前のレド、そしてルイーズの為にもセレナは自らもアリシアの美点を見つけようと考え、良いところ探しというポジティブな思考に耽っているとはとても思えない険しい表情で小首を傾げ、言葉を続けた。思い出すのはアリシアと二人きりになった際に言われた皮肉の数々……アリシアが優しさを見せるのはレドか、ルイーズのような子供だけで、悪魔に憑かれているのだから当然だが基本的に性格が悪いのである。記憶を何周かした後に結局アリシアの良いところ探しは諦め、代わりに聖教国の司祭と比較するに至った。奴らに比べれば幾分かマシという最低クラスの評価だが、セレナはレドを気遣い、それを理由に嫌いではないと断言しようと試みる。しかし、嘘をつけない性分故に意図せず疑問形で締め括っていた。)
>1153
司祭……セレナ殿、貴女は……いや、よしておきましょう。時には多くを語らない方が良い時もある。
(「司祭よりはマシ」「一応は人として扱ってくれる」。セレナの言葉を聞いて思わず彼女の経歴を問いたくなったが、神妙な面持ちで首を振り、問うのをやめて。顔の刺青、首枷、そして今語った断片的な過去……根掘り葉掘り聞かずとも、セレナが凄惨な人生を送ってきたことは明らかだ。彼女を傷つけないためにも自分からはこれ以上問わないことにする。
ふと、天井を見上げて物思いにふける。聖教国の亜人への暴虐はレドも耳にしている。アリシアに恐怖を抱いてもなお、彼女と懇意にしている自分を立ててくれる優しいセレナが奴隷として痛めつけられるとは、世間は残酷だ。この人じゃなくてあの糸目野郎が代わりに弓矢の的にされればいいのに。ああでも、アイツはその日の内に司祭どもを皆殺しにして脱走しそうだな……と想像すれば、げんなりした表情で首を振って。)
おっと、私は聖教徒ではありませんよ。私が信じているのは己自身……この東刀(ダンビラ)ですから。
(さて、そんな彼女に何を話せば良いのやら。ひとまず聖教徒を恐れるセレナを安心させるべく、ふっと笑って自分は聖教徒ではないと明かして。そして刀を腰から外して右手に持てばギュルギュルと手の中で回転させ、その長さと鞘の紅の深さを存分にアピールしたところでビタッと回転を止めて。)
>1154
そうだとは思っていたけど…確信を持てて安心した。レドさん、貴方も私にとっての良い人。その刀も貴方に扱われて本望だと思う。
(亜人への分け隔てのない態度、過去を詮索しない気遣い、それらの要素からレドは聖教の信徒ではないと予想していたが、本人から明かされたことでようやく確信を得られた。安心から、セレナも釣られて笑みを見せると、レドもルイーズと同じく「良い人」に認定する。語彙力の少ないセレナにとって、良い人というのは最大級の信頼の証のようだ。剣に心得のあるセレナは続けて、レドをその刀に相応しい人間であるとも評価した。これは、上等な武器を持つ者に対して、それが決して飾りなどではないという、一剣士としての惜しげもない賛辞である。言い終えると、立ち止まってレドに向き直り、右手を差し出して握手を求めた。これからの親愛の意味と、剣士としての自らの慧眼を保証する為の行為であろう。奴隷に堕ちるまでに何度も剣を振るってきた彼女の手には癒えることのない幾つもの古傷が付いており、まさしく剣士の手であった。)
>1155
マジかよ嬉しいな!俺の鬼蟷螂(オニドウロウ)も喜んで………うっ!げほっげほっ……な、何でもありません……
……ルイーズ殿下のお側に仕える貴女のお眼鏡に叶うとは光栄なこと。改めてよろしくお願いします……同じ戦士としてね。
(レドの差し料、師から賜った剛刀「鬼蟷螂(オニドウロウ)」。確かに並の東刀では無いが、その持ち主のレドは掃いて捨てるほど存在する農民上がりの冒険者のひとり。刀も自分も褒めてもらえる機会などそうありはしない。なのでつい行儀の良いフリをするのを忘れ、素の口調ではしゃいでしまった……それに気付くと大きく咳をして紳士のフリに戻る。恥ずかしさで頬を赤くしつつも、セレナが差し出した右手……傷だらけの戦士の手を自らの右手で穏やかに掴み、握手して。)
>1156
私の前では楽に喋って。その方が嬉しい。
(レドの素の口調を聞いて、恥ずかしがっている彼の反応を他所にセレナは嬉しそうに瞳を輝かせた。帝国出身の彼女はエルフリーデと同じく人の温もりに飢えている。意図せず発せられたラフな言葉使いに感動を覚えるのは必然であろう。手を握ったまま歩みを再開すると、自分の前では楽に喋って欲しいとレドに注文を付け、その足取りは数段軽いものとなっていた。まるで新しい友が出来たかのような高揚感に浸っているのも束の間に、最悪のタイミングで前述の同郷との邂逅を果たしてしまう。)
あらぁ、レドさんじゃないですかぁ。ふふっ、ラミアの屑と随分親しそうですね。
(廊下の先から現れたのはレドに異様な執着を見せる帝国兵のエルフリーデ。首と右脚には別れの際には着けていなかった包帯を巻き、両脇に松葉杖を抱えてのなんとも痛々しい姿での登場である。おそらくデュランダルでの勝手を上官にこっぴどく叱られたのであろう。仲睦まじく手を繋ぐ二人の様子に妬いたのか、圧を感じさせる笑みを浮かべて真正面に立ちはだかった。手負いとはいえ、帝国兵を前にしたセレナは酷く怯えた様子で震えており、握った手には一層力が込められる。)
>1157
ははっ、ありがたいね。どうもお行儀よくしてるのに慣れなくてな。じゃあ行こうか…….
……セレナ?なるほど、俺に任せな。
(楽に喋ってほしいと言われるとニコニコしながらセレナの手を握りつつ歩いて。早くも打ち解けられて嬉しい!と足取り軽やかに歩いていると、目の前にあの帝国兵エルフリーデが立ちはだかる。自分の手が強く握られる感触からセレナの怯えを感じ取れば、エルフリーデをきっと睨んで)
エルフィ!なにが屑だ。この人はな……
……なんだよそのケガ。ははーん、さては今朝の件で上官にリンチされたな?確か……コンラッド殿、だったか?
(エルフリーデに指をさしてセレナへの侮辱を咎めようとしたが、見ればずいぶんズタボロではないか。この短時間で外交問題にならずに彼女を暴行できる者、コンラッドとかいう彼女の同行者の仕業だろう。「力こそ正義」を謳い暴力を正当化するエルフリーデが暴力を甘んじて受け入れていること、彼女から聞いた軍内部での扱いのひどさから察するに、そのコンラッド某は上官と見た。今朝の暴走の件で制裁されたんだなと、セレナに握られてない方の手を顎にやりながら、ケガの経緯を推察して。)
>1158
ええ、ご名答です。しかし、レドさん…そんなエルフと親睦を深めるとは関心しませんねぇ。彼女の頬の刺青、それは帝国の犯罪組織「サンクタ・ラミア」の紋様です。いくらエルフが好きだと言ってもつるむ相手は選ぶべきだと思いますよ?
違う…私はもうラミアの人間じゃない…
屑は黙っていてください。私はレドさんとお話しているんです。
(レドの鋭い推察に、エルフリーデは心底愉快そうにニヤッと口角を吊り上げて賞賛した。しかし、続けられる言葉は何処か呆れを孕んでいるように低い。セレナの頬に刻まれた黒蛇の刺青は帝国に悪名を轟かせる犯罪組織の所属を示すもののようだ。先程述べられた「ラミアの屑」とはその蔑称なのだろう。敵愾心剥き出しのエルフリーデは見下すような笑みを浮かべながら、馬車の中でレドがエリスに釘付けだったことも踏まえてエルフが好きなのだろうと皮肉を交え、暗にセレナと決別しろと圧をかけた。一方でセレナは怯えながらも声を絞り出し、今は犯罪組織に身を置いていないと否定するも、エルフリーデの牽制を受けてレドに身を寄せて黙り込む。不安そうなにレドの顔を見上げるセレナの瞳は、まるで見限らないでと縋るようであった。任せてと言われながらも口を挟んだのも、今しがた出来たばかりの友を失いたくなったが為だろう。)
>1159
(グラキエス帝国の犯罪組織「サンクタ・ラミア」。仲間に先立たれてヤケになり、あてもなく彷徨っていた貧民街で聞いたことがある。怯えながら自らを見上げるセレナの頬に刻まれた黒蛇を見下ろすと、彼女の経歴を察する。だがレドにとってそんな過去はどうでもいい。無言・無表情の中に「大丈夫だ」という気持ちを込めてセレナに頷くと、エルフリーデに向き直って。)
そのナントカの屑は俺の友人。そしてこの国の第三王女・ルイーズ殿下のお側衆だ。いま彼女はお役目の最中、そこをどいてもらおう。
……そのナリで何ぬかしたってカッコつかないぜエルフィ。しょうもない八つ当たりなんかしてないで、アンタも大人しく養生するんだな。
(「よく言うぜ、昨日今日と他所の国で犯罪を重ねといて……しかもそれで上官に凹られたくせに」という呆れを込めながら、エルフリーデに強い眼差しを向けて。胸を張り、力強い声でセレナを弁護する一方で、自業自得と言うべき無惨な姿を晒しているエルフリーデには「やれやれ」と呆れた笑いを向ける。どのみち帝国兵に第三王女の使いを阻まれる謂れは無い。言い終わるとあえてかしこまった口調で「ではセレナ殿、まいりましょうか」とセレナに微笑んで、エルフリーデの脇を通ろうとして。)
>1160
っ…まだ話はっ…!
なにを遊んでいる、グリムハルト。貴様には別の任を託した筈だが。
ちっ…これは申し訳ありません。少し戯れが過ぎましたね。それではレドさん、また後ほど。
(尚も引き下がらないエルフリーデは、脇を通り過ぎようとするレドの手を引こうと身を乗り出すが、廊下の先から現れた上官の圧に押されて思い留まった。筋肉の塊とも形容すべき巨漢、コンラッド・シュタール。その背丈は長身のレドよりも頭一つ分高く、一歩進む毎に決して古くはない廊下の床が軋む程の体躯である。魔力の量も常人の域を逸脱しており、分厚い鎧のように身に纏ったそれは魔術師でなくとも視認できる。そういった現時点で可視化されている能力値だけ見てもおそらくはレイラと同格であろう。そんな化け物はレドやセレナには目もくれず、エルフリーデに忠告したかと思えば足早にその場を後にした。先程制裁を加えられたばかりのエルフリーデもこれには逆らえず、コンラッドの背に向けて頭を下げ、不本意と言わんばかりに唇を噛み締めてレドを一瞥すると、すぐさまコンラッドの後を追う。)
レドさん…ありがとう。ごめんなさい…少しだけ、休ませて。
(エルフリーデとコンラッドが去った後、セレナはレドの腕に抱きついて顔を伏せてしまった。帝国で迫害されている亜人にとって帝国兵は恐怖の象徴…それも将軍クラスのコンラッドを前にした動揺は相当のものだろう。セレナの心臓の鼓動はレドにも伝わるほどに激しく波打っていた。セレナからすればレドは悪魔から身を挺して守ってくれた存在であり、こうして身を寄せることで心を落ち着かせているようだ。)
>1161
!!
(突然の床の軋み、そして廊下の先から現れたプレッシャー……帝国将・コンラッドの存在を感知・視認するとピクリと身体を震わせて。まずでかい。俺よりでかい。不死鳥のハゲ並のタッパだ。そして何より、恐るべき魔力。見た目や体格・雰囲気はまるで違うが、かつて戦ったバカエルフ並の強者と認めざるを得ない。瞳孔が開ききり、口が真一文字に結んだレドの顔はコンラッドに釘付けで、エルフリーデの挨拶に反応できない。向こうがこちらに一瞥もくれないまま去っていき、姿が見えなくなると思わずふぅと溜息を吐いて。帝国将コンラッド……まるで氷の魔人というべき男であった。)
セレナ、よく耐えた……昔のことも奴らのことも気にするな。そういうことで俺は離れない。
(連中が去り、自らの腕にすがりつくセレナの頭を片方の手でそっと撫でて。宮廷の密命もアリシアも関係ない。すべては目の前の人を理不尽から守りたくてやったことだ。セレナの気の済むまで彼女を抱きつかせてやりつつ、コンラッドが去っていった廊下の先を苦々しく睨み、呟いて。)
シカトしやがってこの野郎……アレで親睦のつもりかよ。
>1162
うん…信じてる。レドさんのお陰でもう大丈夫…さ、行こう。
(しばらくしてセレナは顔を上げると、離れないと言うレドの言葉を信じて頷いた。その顔にはもう憂いはなく、すっかり平常心を取り戻したようだ。少しだけ頬を緩め、控えめな笑みを見せると、レドの手を引いて案内を再開する。歩くこと数分、宿泊者用のエリアに辿り着く。廊下には複数の絵画に混ざってちゃっかりと教皇の肖像画が飾られており、その額縁だけ埃を被っていないことからエリーゼへの嫌がらせで最近設置したのだろう。アリシアの性格の悪さは相変わらずである。肖像画の真正面、505とドアに刻まれている部屋の前でセレナは立ち止まった。)
ここが貴方と猫ちゃんの部屋。鍵は中にあるはず……その…今日はありがとう。貴方に出会えて良かった。
(やっと手を離し、レドに向き直ったセレナは名残惜しそうに瞳を揺らした。今後もしばらくは会おうと思えば会える距離にはいるのだが、王女の傍仕えも暇ではない上にアリシアという最大の壁がある。仕事上とはいえ、きっと今日のように纏まった時間を過ごす機会はなかなか訪れないことであろう。せめて別れ際に改めて感謝を伝えようと、セレナは丁寧に頭を下げた。)
>1163
猫ちゃ……いや、何でもない。案内ご苦労だった。俺も新しい友達ができて嬉しいよ。
(仮にも第二団長であるエリーゼを「猫ちゃん」なんて雑に呼ぶセレナについ反応したが、首を振って自らの言葉をさえぎって。分団長なのにナメられてんなぁ、と憐れみつつ、部屋の前に飾られた他国の最高指導者・教皇の肖像画、王国近衛隊に相応しくない異物に視線をやって。アリシアも陰険な……俺と子供に優しいアリシアと悪女のアリシア、どっちが本物なのか……と物思いにふけりたくなるが、今は目の前のセレナに集中するべきだ。彼女に向き直ると、会釈して案内の礼を伝えて。)
セレナ、剣術指南としてアドバイスしよう。過去を気に病むことは無い。罪人上がりの武官てのは、歴史を見れば珍しいもんじゃない。
何より……人は罪を犯したらそれで終わりじゃない。過去の罪を悔いながらも、そこから立ち上がって立派に生きることもできる……それが人の可能性というもんだ。俺が師匠と並んで尊敬する剣士の方が、そうであるようにな。
(互いに忙しく、立場も違うふたり。再び会話する機会がそう訪れるとは思えない。彼女もそう思っているだろう……と、セレナの揺れる瞳を見て察すると、彼女の瞳を見据えながら助言を残して。とりわけ「過去の罪を悔いながらも立派に生きている憧れの剣士」のことは罪人の出であるセレナにどうしても伝えておきたかった。いずれ密命を果たせば彼女とも敵対するだろう。それでも今は一人の剣士として彼女の励みになりたい……アドバイスを終えると右手を上げて敬礼し、「健闘を祈るよ。」と微笑んで。)
>1164
その言葉…忘れない。レドさんも頑張って。……それじゃ、またね。
(過去の自らの所業に罪悪感を抱えているセレナにとって、レドの言葉は心に響いたようだ。言葉数は少ないながらも、レドを真っ直ぐに見つめる瞳からはセレナの真剣さが窺える。最後にこちらからもレドの健闘を祈ると、踵を返してその場を後にした。
一方その頃、王都の高級な宿と遜色ない内装が施されている505号室の真ん中で、エリーゼはまるで死んだ魚のような目で床にうつ伏せて倒れていた。エリーゼの顔の真横には皿に盛られた粒の山…そう、市販の猫の餌が置かれていたのである。というのも聖教の価値観に毒された近衛隊、その庁舎の内部に於いて獣人は人ではない。宮廷側もやむを得ず近衛隊の意向を汲んで、宿泊届けに指南役のペットとしてエリーゼの名を記載していたのだ。そうなれば当然の如く人間の飯が運ばれてくる訳もなく、また、ペットの独断で庁舎からの外出を認められる訳もない。つまり、この二日間エリーゼは何も食べていないのである。先程のセレナの「猫ちゃん」発言も何ら含みのあるものではなく、単に書類上の情報だけを見て、この部屋の中にレドの飼い猫が先に運び込まれたのだろうという誤解からであった。)
お腹が減ったにゃ…
>1165
ふっ……セレナ、いいエルフだなぁ。それにひきかえあの糸目は。優しい人が苦しんで、あんなのがのさばるなんて世も末だぜ。アイツが奴隷になればいいのによ、あの人殺し野郎……。……まあいい。
(やわらかく微笑みながらセレナを見送るが、彼女が見えなくなると一転険しい顔になってエリスへの悪態を吐き始めて。セレナといいクレアさんといい、優しい人ほど苦しみ、踏み潰される世の中。のうのうと生きているのは、バカエルフのような権力者の悪党ばかり。アイツこそ奴隷になればいいのに……と、悪態を吐きつつも未だ腑に落ちないことがある。あの戦闘中の猟奇的な態度と戦闘後の達観した態度、どうも同じ人物に見えない。戦闘中の悪態は挑発だったのか?何よりなんで、俺を見逃したのか……首を振って考えを止め、ドアノブに手をかけるが……)
……誰かいる!バカエルフか?まさかそんなはずは……
(ドアの向こうに気配を感じ、手を止めて。近衛隊の庁舎に忍び込むとは大胆不敵な。エリスか?それにしてはさっきの帝国将のようなプレッシャーが無いが……一歩下がって刀の鯉口を切ると、バン!とドアを開け放って勢いよく室内へ突入し、前転しながら部屋の中央へ躍り出る。だが目についたのは猫の餌と……見覚えのある猫耳の獣人が力なく倒れている姿。まったく状況が飲み込めずに呆然と立ち尽くすと、エリーゼに声をかけて。)
えっ、エリーゼ殿!?どっ、どうしたんです……?
>1166
……。レドくん…!待ってたにゃ!
(声を掛けられたエリーゼは虚ろな瞳でレドに視線を向けた。こんな状態でもなお薄ら笑いを浮かべているあたり、次席に刻まれたトラウマは相当なものなのだろう。しばらくして目の前の人間がレドであることに気が付くと、瞳に光が宿って飛び起きる。)
宮廷も近衛隊も酷いのにゃ!どうやら私はここに泊まるにあたってレドくんのペットとして登録されてるらしいにゃ…それで毎食猫の餌が届けられるんにゃけど……こんなの食べられるわけないにゃ!という訳で私は空腹にゃ。レドくん、いや、ご主人様!一緒に食堂に行ってほしいにゃ!
(エリーゼは尻尾をぶんぶんと振って、笑顔の中に怒気を込めながらも自分の置かれた状況を説明した。知らぬうちにペット扱いで登録されていたこと、猫の餌しか運ばれて来ないこと、そして当然ながらペットは一人で外出出来ない。エリーゼがこれ程までに不満を顕にするのも当然の扱いである。アリシアによる嫌がらせという面も勿論あるが、ペット扱いとすることでエリーゼの行動を制限する狙いが主だろう。権力を持つ聖教徒ならではの策略だ。二日間に渡り何も食していないエリーゼはすぐにでも腹を満たしたいようで、身を乗り出してレドの顔を覗き込むと、あくまでペットの立場から共に食堂に行って欲しいとお願いした。)
>1167
なに、ペット!?近衛隊はともかく宮廷もひっどい扱いだな。多種族共生が聞いて呆れる……とっ、とにかく急いで何か腹に入れましょう。ああ、ご主人様はよしてくださいよ。仮にも第二団長からそう呼ばれるとどうもしっくりこないので……
(第二団長がペット扱い!?空腹!?あんまりなエリーゼの扱いに呆然として。アリシアの立場からすればエリーゼをペット扱いすることで動きを封じる策にもなるから理に叶っているが、問題は宮廷の方だ。多種族共生を謡う国、しかもエリーゼを密命で送り出す立場でありながら、国是に反する近衛隊の言われるままに彼女をペットとして登録するなんて、分団長に対する扱いとは思えない。こんな扱いをする国のために命を賭して戦えと言うのか……エリーゼを気の毒に思いつつも、笑ったまま怒る彼女の顔や、栄えある騎士団の分団長なのに人を「ご主人様」と呼ぶプライドの無さには困惑する。顔を引きつらせつつ、食堂へ向かうべく部屋を出ることにして。)
>1168
んにゃ、レドくんが嫌ならそうするにゃ。それじゃあ案内するにゃ~。
(レドの要望に頷いて呼び方を戻すと、エリーゼは軽い足取りで食堂までの道中を先導する。空腹を満たせることが余程嬉しいのだろう、レドの目の前で彼女の尻尾が右へ左へとリズミカルに揺れていた。これ程の仕打ちを受けてもすぐに切り替えることや、一時的なものとは言えペットの身分にすんなり適応するなど、エリーゼもまた不憫な扱いに曝され過ぎて人格が歪んでいるのだろう。人懐っこい仕草の裏にはそんな闇が潜んでいた。
雑談もそこそこに、近衛隊庁舎を出て、騎士団の本庁舎へと繋がる長い渡り廊下に差し掛かる。渡り廊下の脇、薔薇の咲き誇る庭園にエリーゼはふと視線を向けるなり、思わず顔を引き攣らせた。ベンチに腰掛け、自らの膝を枕にして第二王女を寝かしつけているエルフの姿…レドにとっては本日二度目のエリスとのご対面である。門の修繕が終わったことでようやく臨時の警備任務から開放されたのだろう。その間に癇癪を起こした第二王女との埋め合わせの最中なのだが、心地良く眠る王女の頭を撫でるエリスの表情はいつもの腹の立つニヤケ面ではなく随分と温かいものであった。のも束の間に、エリスはレド達の気配に気付くなり口角を吊り上げ、侮蔑の意を孕んでいるかのような見慣れたニヤケ面へと戻る。)
やあ少年、奇遇だね。それと七席のおまけの子。私になにか用かな?
っ……な、なんでもないのにゃ…たまたま目に付いただけで…
(エリスは当然の疑問を投げかける、単に挨拶する訳でもなくただ視線を向けられたとなれば何か用事があるのではないかと勘繰ったのだろう。まずはそれなりに印象に残っている将来有望な若者のレドから声を掛け、次にさして興味のないエリーゼ。エリーゼに至っては名前も覚えていないかのように振る舞い、第二副団長である七席のおまけという不名誉なあだ名で呼ぶ始末だ。性悪エルフのそんな扱いには、さすがのエリーゼもご立腹なのだろう、苦笑いを浮かべて視線を逸らしながらも、握った拳が怒りと悔しさで震えているのが分かる。)
>1168
んにゃ、レドくんが嫌ならそうするにゃ。それじゃあ案内するにゃ~。
(レドの要望に頷いて呼び方を戻すと、エリーゼは軽い足取りで食堂までの道中を先導する。空腹を満たせることが余程嬉しいのだろう、レドの目の前で彼女の尻尾が右へ左へとリズミカルに揺れていた。これ程の仕打ちを受けてもすぐに切り替えることや、一時的なものとは言えペットの身分にすんなり適応するなど、エリーゼもまた不憫な扱いに曝され過ぎて人格が歪んでいるのだろう。人懐っこい仕草の裏にはそんな闇が潜んでいた。
雑談もそこそこに、近衛隊庁舎を出て、騎士団の本庁舎へと繋がる長い渡り廊下に差し掛かる。渡り廊下の脇、薔薇の咲き誇る庭園にエリーゼはふと視線を向けるなり、思わず顔を引き攣らせた。ベンチに腰掛け、自らの膝を枕にして第二王女を寝かしつけているエルフの姿…レドにとっては本日二度目のエリスとのご対面である。門の修繕が終わったことでようやく臨時の警備任務から開放されたのだろう。その間に癇癪を起こした第二王女との埋め合わせの最中なのだが、心地良く眠る王女の頭を撫でるエリスの表情はいつもの腹の立つニヤケ面ではなく随分と温かいものであった。のも束の間に、エリスはレド達の気配に気付くなり口角を吊り上げ、侮蔑の意を孕んでいるかのような見慣れたニヤケ面へと戻る。)
やあ少年、奇遇だね。それと七席のおまけの子。私になにか用かな?
っ……な、なんでもないのにゃ…たまたま目に付いただけで…
(エリスは当然の疑問を投げかける、単に挨拶する訳でもなくただ視線を向けられたとなれば何か用事があるのではないかと勘繰ったのだろう。まずはそれなりに印象に残っている将来有望な若者のレドから声を掛け、次にさして興味のないエリーゼ。エリーゼに至っては名前も覚えていないかのように振る舞い、第二副団長である七席のおまけという不名誉なあだ名で呼ぶ始末だ。性悪エルフのそんな扱いには、さすがのエリーゼもご立腹なのだろう、苦笑いを浮かべて視線を逸らしながらも、握った拳が怒りと悔しさで震えているのが分かる。)
(/名前欄にエリスを入れ忘れたので再掲です!)
>1170
あぁ……俺までハラ減ってきたな。エリーゼ殿、ここの食堂のおススメは……
……エリーゼ殿?……え……?なんだあれは、いったい何がどうなって……
(なんだかすっかりペットの振る舞いが板についてしまっているエリーゼのご機嫌な尻尾を見ていると、こっちまで腹が減ってきた。鳴り出したお腹をさすりながら彼女の後をついていき。なにせ朝から、いや連日心身をすり減らしているのだ。早く食事したくてウズウズしていると急にエリーゼが顔を凍り付かせて立ち止まる。自分も彼女の視線の先に目をやると……同じく立ち尽くして。
バカエルフ!?なんだあの聖母のような優しい微笑みは……本当にバカエルフなのか!?驚くのはエリス本人ばかりではない。彼女の膝で眠る第二王女を視認すると冷や汗が出始める。第二王女カトリーナ・ローゼンベルク・フィリア。「王国の至宝」と謳われる美女だが中身は愚物と聞く。一方でさしたる有力な支持者は聞かない。奴はあの穴馬にすらなれない駄馬を支持しているのか?宮廷にも近衛隊にも与せずに?一体どうして!?信じがたい光景を目の当たりにして、口が半開きになって。)
なっ、クレアさん!?ううっ……!バカな、こんなバカな……!
(そうやって二人を見ていると急に顔を押さえてふらつき出して。目眩がしたのだ。あろうことか、第二王女を母親のように慈しむエリスがクレアに見える錯覚を覚えてしまったのである。バカな、クレアさんとあの女が重なるなんて……見てはいけないものを見た気がしたレドの顔は急に青くなり出して。)
……行きましょうエリーゼ第二団長殿。こんな雑兵、相手するまでもない。
(だが気がつけばエリスも元のしたり顔に戻ってエリーゼを侮辱している。やっぱり幻覚か。俺も疲れてるんだ……と思い直すと、背を丸めたままヨロヨロと歩き始める。どのみち王女の前で事を荒立てるわけにはいかない。エリスへの当て付けとしてエリーゼを役職付きで呼び、城門の警備などという副団長に似つかわしくない任務を行っていたエリスを「雑兵」と力無く腐すのが精一杯だ。先の死闘では羽織っていなかった白いケープをはためかせながら歩くとエリーゼの肩をそっと叩き、エリスを無視して立ち去ろうと促して。)
>1171
そ、そうだにゃ…こんな所で道草食ってる場合じゃないのにゃ。
無視とは傷付くなぁ。君達が何を企んでいるのかは知らないけれど、せいぜいその結果が私を利することに期待しているよ。
(先を急ごうというレドの提案を聞いて、冷静さを取り戻したエリーゼはこくりと頷く。エリーゼにとって七席との比較は地雷であり、先のエリスの発言は彼女にとってペット扱い以上に癪だが、今は密命の最中。下らない挑発に乗ってエリスに情報を探られるようなことはあってはならない。そう決心が付くと、再びレドを先導する形で歩みを進めた。
そんな2人の背を見送りながら、エリスは不敵な笑みを崩さずに語りかける。言葉通りに何を企んでいるか知らないなんて事はなく、含みを持たせた言い方から分かる通り、エリーゼの警戒も虚しく実際には宮廷の意向を把握しているのだろう。第一王子派閥に身を置く分団長の派遣や、無名に等しい冒険者と宮廷の接触。レドに全幅の信頼を置き、ある種のフィルターがかかっているアリシアは例外として、それなりの情報収集力を持つ第三者目線からでは、宮廷が何かを企みそれにレドが関わっていることを察する程度は造作もない。無視された手前、当然ながら返事が返ってくる期待などしていないが、要するにこの性悪エルフは「全部知ってる。利害が一致しているから私の為にも頑張れ。」と神経を逆撫でするエールを送ってきたという訳だ。その意味に気付いたエリーゼの苛立ちはブンブンと揺れる尻尾に現れているが、それ以上の反応は見せない。言葉を送り終えたエリスもついには2人への関心は失せ、視線を王女へと戻すと慈しむような表情を浮かべて、割れ物を扱うような繊細な手つきで再び頭を撫で始めた。)
>1172
ハッタリですよエリーゼ殿……獣人の貴女が近衛隊から出てきたんだ。誰もが怪しむことを自分だけ見抜いたと吹いて、優位に立とうとしてるだけ……ちょっと待っててください。
(エリスに手が出せぬまますごすごと立ち去ろうとした矢先、彼女の挑発を聞くと丸まっていた背筋を伸ばし、苛立つエリーゼに耳打ちする。第一王子派=宮廷の獣人が無名の冒険者を引き連れて、獣人禁制の近衛隊庁舎から現れたのだ。一目で怪しいと王城の人間なら誰もが気付くだろう。疑って当たり前のことをさも自分だけが見抜いているように振る舞ってマウントを取りたいだけ……という真相(であってほしいこと)を呟いて。
密命の事、察していようがそれは構わない。察した上で傍観者を気取ってる奴の態度が気に入らない!せめて口喧嘩で打ち負かしたい!眉間に皺寄せ、歯ぎしりすると、180度ターンしてエリスに鋭い視線を突き刺して。)
期待している?何を偉そうに。何も分かってないくせに超越者を気取りやがって。そうやっていつまでも脇から人を弄んでいられると---ちっ、またか!
(本来の粗野な口調でずけずけとエリスをなじりながら彼女に詰め寄る。そしてエリスを指差しながらさらに罵り眼前に迫ろうとするが……あと数歩の所で指差したまま止まってしまって。さっきの穏やかな顔と、王女が枕にして安らかに眠る膝。それを目の前で見ると振り上げた拳が下ろせない。今度ばかりは幻覚として片付けられない、またしても奴に負けてしまったと思い知らされると、苦々しく指差した手を下ろして。)
……クレアさん、まさか奴の中にもあるんでしょうか。正しさってヤツが……
(指差していた手をクレアからもらった金貨が眠る胸の上に添え、彼女の教えを思い出しながら呟いて。副団長エリス、どう見ても傍観者を気取って人を弄ぶバカエルフにしか見えないが……もしそうであったなら、王女がこうも安らかに彼女の膝で眠るわけがない。ますますこの女の事が分からなくなってしまった……ただの悪女であったなら、ただただ憎んで断罪できたものを。
それでもいつかこの女の心の内を解き明かし、その糸目を開かせてやる。そう胸の中で誓うとケープをばさりと翻しながらエリスに背を向け、エリーゼの下へ戻って。)
>1173
取り付く島もないにゃんね……でも、レドくんカッコよかったにゃ!今回は相手が悪かっただけで、きっと常人なら押されていたに違いないにゃ。気を取り直して美味しいもの沢山食べるのにゃ!おすすめはハンバーグ定食にゃ~。
(「取り付く島もない」、レドが詰め寄った先にいるエリスの様子を見てエリーゼはそんな感想を漏らした。あれだけの近距離でなじられて聞こえていない筈はないが、まるで何事もないかのようにエリスは王女の頭を撫でるのみである。あの我が道を往く副団長が一度興味の失せた相手の言葉に耳を傾けるとも思えない、そしてレドもまた引くことはないだろう。そんな想像をしていたが、どういった心境の変化か、存外すぐにレドが引き返してきた。エリーゼはレドが戻ってくるなり、その肩を尻尾で撫でる。レドの何か考え事をしているかのような表情を見て、落ち込んでいるものと思っての彼女なりに励ましであった。レドの一歩先を歩いて先導しながら、エリーゼは努めて明るく振る舞い、空気を変えようと昼飯の話題に話を逸らした。)
>1174
エリーゼ殿……へへっ、どうやらお互い気持ちよくメシが食えそうですね。副団長怖くて指南役が務まるかってんだ!
(未練がましくエリスの方に首を向けていると、肩にふわふわした感触を覚える。エリーゼが尻尾で撫でて励ましてくれたようだ。あのバカエルフに何か届いたとも思えないが、一方的にアレコレ言われたまま黙って去るよりはお互い気が晴れたかもしれない。エリーゼの励ましに応えるべく握った右腕を上げ、左手で右腕を叩くガッツポーズをしてみせると、悪ガキのような笑いを浮かべながら彼女の後を付いていき。思えばこんなガキ大将みたくドヤ顔で笑えたのは同年代の冒険者仲間と共に活動していた時以来かもしれない……エリーゼの励ましは確かにレドの気持ちを軽くしたのであった。)
>1175
そうにゃそうにゃ、その調子にゃ~。何事も恐れていては始まらないにゃ!
(まるでガキ大将のような振る舞いを見せるレドに、エリーゼはノリノリで調子を合わせる。レドと一つしか変わらない年齢ながら騎士団の分団長の地位に就いている彼女にとっても、同年代とのこうした関わりは希少なのだろう。まるで友達のような掛け合いを今や懐かしい騎士学校時代の青春に重ねていた。「何事も恐れていては始まらない」、レドの調子を上げるべくなんの気なしに口から出た言葉であるが、まさかこの言葉がすぐに自分に降ってかかるとは、この時のエリーゼは思ってもいなかったことであろう……)
それを食べたら私の執務室まで来てください、大切な用事があります。案内はソレがしてくれることでしょう。
(数百人が収容できる巨大な食堂、レドと共に人気のハンバーグ定食を受け取り席に着いたのも束の間に、エリーゼにとっての恐怖の象徴は現れた。ウェーブのかかった青髪に鋭い金色の瞳、そして何より目を引くのは、腰に携えた聖教国の意匠の刻まれた白い東刀。王国騎士団長次席補佐官にして第四席、「傷無し」のセレステである。現役の騎士の中でも間違いなく最強格に数えられる一人が、レドを視認するなり颯爽と目の前に現れたのだ。対してエリーゼはセレステの気配を察知した段階から既に喋らず、ただカタカタと震えるのみである。レドの案内を任されてもなお言葉を発することも出来ず、まるで人形かのように何度も肯定の意で頭を前後に振っていた。刻まれたトラウマは余程深刻な様子である。そんなエリーゼの様子を見て、セレステもまた、返事くらいしろと言いたげに不満そうに眉間に皺を寄せた。)
>1176
うへぇ、すげぇな。騎士団の食堂ってのは。ギルドとは大違いだ……へへ、何はともあれメシだメシだ!いただきま……
(騎士団の食堂、大規模ながらも整然とした光景は雑多な雰囲気のギルドの食堂とはまるで違って見えた。ケープを背もたれに掛け、辺りをキョロキョロ見回しながら初めて見る光景を堪能する。そして子供のようにニコニコしながらおススメのハンバーグ定食にあり付こうとした矢先……エリーゼが凍り付いているのと、人の気配……青い髪の女の気配に気が付いて手が止まり。言葉すら発せぬほどに怯えるエリーゼを見て気配の主を察した……「番号付き」の四番手にして神竜すら傷つけられぬと言われる騎士団最強格。そしてクレアさんの元部下……次席補佐・セレステ、エリーゼにトラウマを植え付けた張本人だ。
エリーゼを「ソレ」と呼び、冒険者にとって数少ない楽しみである食事を邪魔して、そして部下ではない自分に対して名乗りもせずに一方的に用件を押し付ける。クレアさんの教えを受けたとは思えない傲慢な態度にはエリーゼ抜きでも腹が立つ。すっと立ち上が……らずにナイフとフォークを再び動かして。)
あの、失礼ですがどちらさまで?なにやら私をご存じのようですが、私は現在近衛隊副長・アリシア様の指示のもと行動しております。御用のおもむきに関してはアリシア様のお許しを得てからにしていただきたい。
そもそもご覧の通り私は食事中です。他人の食事中にやむを得ず用件を伝える時は、まず非礼を詫びて名乗るのが騎士の作法ではないのですか。
(どうやら向こうはこちらを知っているようだが、そもそもレドはアリシアと契約した外部の技官である。名乗りもしない無礼な人間からアリシアの頭越しに指示を受ける筋合いなど無い。セレステのことは見向きもせずにハンバーグを口に運び、敬語でセレステの無作法を指摘して。口調こそお行儀良くしているが、全身から纏う雰囲気は冷たく他人を寄せ付けない、本来の荒くれ冒険者のそれだ。)
>1177
にゃにゃにゃ…!レドくん…にゃにを……
ああ、それは失礼致しました。私はセレステ、次席補佐官を務めている者です。今は詳しくは言えませんが、これは貴方にとっても大切な用事です。勿論私が強制出来ることではありませんので、貴方のご意思に判断は委ねますが…来なければきっと面倒事になるとだけ言っておきましょう。アリシアさんに関してもご心配なく、むしろお喜びになるかと。
(レドの見せた素っ気ない態度に、隣に座るエリーゼはセレステへの恐怖心から顔が青ざめていたが、そんな扱いを受けた当の本人、セレステは特に腹を立てる様子もなく、むしろ納得したようにポンと手を叩き素直に受け入れて訂正してみせた。レイラの我儘を聞いてあげている手前、その弟子が指示に従うのは当然というスタンスで話を進めたが、レドの立場に立って考えてみれば、事情を知らない状態で行動を強制されることは良い気分ではないのだろうと、そして、無知無学な冒険者(セレステの偏見)、それもあのバカ(レイラ)の弟子ならば王国十騎士に名を連ねる自分を知らなくても何ら不思議ではないという、悪意なく失礼極まりない誤解を同時にしていた。典型的な聖教徒らしく人間種には優しいことで定評のあるセレステだが、レドには誤解に起因した哀れみの視線を無意識に向けてしまう。
レイラのサプライズ成功のためにもどう誘導すべきかとセレステは頭を捻りながら、言葉を選んで説得を試みる。レドが来なければレイラが癇癪を起こすことは想像に難くない…そのままの意味での面倒事になるという意味なのだが、言い終えた後にまるで脅しのようなニュアンスであることに気が付くと、アリシアが喜ぶような内容であると補足した。これは、兼ねてよりレイラと親睦を深めることを狙っていたアリシアにとって、レドを貸し出すことでレイラのご機嫌取りが出来るのだから、きっと事後報告でも構わないだろうという考えであるが、やはり事情を話せないことがネックとなって政治的な意味に捉えられかねないことにセレステは内心で辟易していた。)
>1178
…………。
(目を閉じたままセレステの主張を聞き、付け合わせのブロッコリーを咀嚼して。口では「判断は委ねる」と言っておいて、実際は権威と脅迫により選択を押し付ける。しかもどうやら冒険者である自分を見下しているようだ。これを無自覚のうちにやってるのが腹立たしい……傲慢な権力者ムーブに不快感を覚えて眉間に皺を寄せて。口の中でブロッコリーを転がしながらクレアと聖教国司祭の揉め事の噂を思い返す。ギルドで狼藉を働いてクレアさんに酒をぶちまけられ、その腹いせで権威を盾に依頼を押し付けた司祭とこの女は同類だ。クレアさんの教えを受けたくせにあの人から何一つ学ばなかったんだな……どこまでも腐りきった奴め。かつての部下が人々を苦しめている姿を見たらクレアさんも悲しむだろう。あの人のためにもこの女……斬る!
……という蛮行を働くわけにもいかず、固茹での緑の塊を歯で噛み潰すことで殺意を抑える。水を一口つけてそれを流し込むと布巾で口を拭い、すっと立ち上がって。)
「傷無し」のセレステ殿でしたか。これは失礼いたしました。しかし重ねて申し上げますが、私もアリシア様から近衛隊指南役の任を賜り、彼女の指揮下で行動する身の上。いくらセレステ殿のお頼みといえどもこの場ではいそうですかと同行してはアリシア様の面目が立ちませぬ。正式な要請であれば、まずはアリシア様に権限と目的を明記した書面を通してからにしていただけますかな。
(頭を下げてセレステに詫びつつも、再度アリシアの許可を要求して。用件も言わずに独断で近衛隊指南役を連れ回す無礼に従ってはアリシアやエリーゼのためにならない。苦笑いを浮かべ穏やかに話してはいるが、この場でセレステに従う気は一切見せないのであった。)
>1179
はぁ……分かりました。そちらの事情もあるのでしょう、速やかに手続きを済ませますので後ほどアリシアさんに確認してください。
(エリーゼはすっかり白目を向いて動かないがそんなものはどうでも良い。その横で、頑なにこの場で了承しないレドの姿勢を見て、師匠(レイラ)が頑固なら弟子も同様だなと、セレステは思わず溜息を吐いた。王城内の政になんら関係のない外部の人間だからこそ簡単に動かせるものと考えていたが、この様子だと着任早々に既に何かしらに巻き込まれているのだろうと察し、今まさしくレイラのせいで振り回されている自分と重ね合わせて少しばかり同情を寄せる。渋々と言った様子でレドの要求を呑むと、手続きの為にその場を離れようと背を向けかけるが、ふと思い立って一つの質問を投げかけた。)
クレア先輩はお元気でしたか?
(レイラの弟子ともなればクレアと何らかの関係を持っている可能性は十分に有り得る。そうでなくとも、S級冒険者の近況ぐらいは同じくデュランダルの冒険者ならば知っていてもおかしくない。そうした可能性を踏まえての何気ない質問であった。アリシアが反対する可能性は限りなく低い為、この後またレドとは顔を合わせることになる筈だが、現状のクレアとレイラの関係が複雑なことくらいは噂に聞いている。故にレイラがいない今しか聞けない内容なのである。かつての憧れであった先輩が、恋人を失って以降長らく落ちぶれていた筈が最近になって、自らの信仰の聖地である聖教国からの依頼を見事にこなしたと聞く。きっと何か良い意味での心境の変化があったのではないかという淡い期待を寄せて、返答を待つセレステはその金眼を少しだけ輝かせた。)
>1180
エリーゼ殿、起きてくださいエリーゼ殿。
……セレステ殿、お心遣いは感謝いたしますが何も個人的な事情でお頼みしているのではございませぬ。これは同じような事があればいつ、どなたにでもお願いしていたこと。指揮系統と目的を明確にした上で主から離れなければ、主を蔑ろにすることになってしまいますから。
クレア殿に関しても……私からはあれこれ申し上げられません。あの方は今も悩んでおられる。他人が軽々しく語ればあの方を傷つけることになりますから。ただ……クレア殿は正義の剣よりも、傷ついた人の隣に立つ剣を選んでおられる。それだけは申し上げておきます。
(セレステに逆らったからなのか、気絶してしまったエリーゼを起こそうと彼女の肩を揺さぶって。それからセレステに向き直ると、自分の越権行為をこちらの事情の問題にすり替えてくるセレステにやんわりと「事情は関係ない、一般論だ」と釘を刺して。
クレアの話も首を振って、多くを語らないようにして。どうもセレステは自分が正しいと信じて疑わず、無自覚に人を見下し、自分の都合よく物事を解釈するタイプらしい。はっきり言って自分の正しさを疑いながらも人に寄り添い続けるクレアさんには相応しくない女、酒を浴びせられた司祭と同じく彼女に拒絶される存在なのだ。むやみに語ってコイツの自己正当化の材料にされたら、クレアさんはますます傷つく……と考えながら、言葉を選んで慎重に話して。)
>1181
はぁ…
そうですか…もし先輩と会う機会があれば、くれぐれもお身体に気を付けてとお伝えください。それでは、また。
(自分に向けて釘を刺すようなレドの言葉に、セレステはまともに聞く気がないのか視線を明後日の方向に逸らした。レドの言ってることはご尤もだが、セレステの立場からすれば、単にそっちの身内のバカを迎えに来いと言うだけの話なのである。そこに何か別の目的がある訳でもなく、お迎えに許可もなにも必要はない。事情を話せればここまで話が拗れることもないのに…と視線を逸らしたまま再び溜め息を吐いた。いっそ全部話してしまおうかとさえ思ったが、レドの驚く様を想像しながらウキウキと侍女服に袖を通していたレイラの顔を思い出すと良心が痛む。そもそも、問答無用でレイラを城から叩き出せば良かったものを、こうして自ら面倒事を引き受けてしまった自分の甘さに無性に腹が立つ。その苛立ちを間違ってもレドへ向けてしまうことがないように視線を逸らしているのだが、傍から見れば態度が悪いように映ることであろう。そして、クレアの話へと移るとやっとセレステは視線を戻すが、期待していたような返答は得られずに僅かに輝いていた瞳も残念そうに色褪せた。しかし、レドの発言の意図は分かりかねるが、「傷ついた人の隣に立つ剣を選んだ」という言い回しには少しだけ興味を唆られる。かつて、副官だった自分とクレアが方針を巡って初めて口論となった農民の大弾圧。その時に持ったクレアの印象は正義と秩序を重んじる堅物……時を経て、もしくは何かのきっかけで良い意味での変化があったのだと思い至ると、セレステの心にはほんの僅かに温かな感情が芽生えた。顔には出さず、最低限の社交辞令上の口上をレドに託し、ついにセレステはその場を後にする。)
んにゃ……はっ…!気を失ってたのにゃ…もうあの人はいないにゃんね。うぅ…レドくん、食欲がなくなったからハンバーグあげるにゃ。
(セレステが立ち去ってしばらくして、エリーゼはハッとした表情で目を覚ます。辺りを見渡せばセレステはレド達の席から遥か遠く、食堂の出入口付近でなにやら首席と痴話喧嘩(日常と化した光景のため騎士達にはそう揶揄されている。)しているが、それだけ離れていればエリーゼの精神状態に問題はないようだ。しかし、受けたショックのせいで二日分の食欲はどこかへ消え、ブロッコリーを一つ自らのフォークに刺すと、それ以外を皿ごとレドに寄せた。)
>1182
……行ったか。エリーゼ殿すみません、あんまり力になれなくて。にしても次席補佐め、分団長を召使いみたいに扱うなんて。そもそもなんの用事……
(一礼し、立ち去るセレステの背中を静かに見つめ、ため息を吐いて。心なしかクレアの話題の時は穏やかに見えた。ただ気配りと余裕が無い女なのかもしれない。であれば共にクレアを慕う者同士で親しくなれる……ある一点さえなければ。
着席すると、いまだセレステへのトラウマを負い、食欲を失くしハンバーグを寄越してくるエリーゼに眉尻を下げて詫びて。それから遠方にいるセレステを苦々しく見つめ……ていると彼女が口論しているのが見えた。その相手の……見覚えのある覆面男を指差しながら、エリーゼに尋ねて。)
え、エリーゼどの?あのマスクマンはいったい……
>1183
あ、謝らないでほしいにゃ!レドくんが負い目を感じることじゃないのにゃ。
(何ら非がないにも関わらず誠実な対応で詫びるレドに、エリーゼは目を丸くして慌てた様子でそれを止める。書類上の一時的な関係とはいえ主従関係にあるにも関わらず、こうして会って日も浅い自分に気を配ってくれる。そんなレドの人柄にエリーゼの警戒は僅かに解けつつあった。一呼吸置いて落ち着きを取り戻すと、続けられたレドの質問に答えて。)
あのマスク男はヴァルター殿。今の首席補佐官で、最も強く美しき獣人…を自称してる変人にゃ。美しいとは欠片も思わにゃいけど、強いのは確かなのにゃ。一度手合わせしたこともあるけど、私の剣がかすりもしにゃかった…にゃはは。
たぶん、あの人に攻撃を当てられるのは団長と前任のクレアさんくらいかにゃ?
(レドが指差す仮面の男、ヴァルターに視線を向けながら頬杖をついて、エリーゼは彼への私見を述べた。嫌いとまではいかないもののあまり良い印象は抱いていないようで、最も強く美しき獣人を自称する変人と、そう彼を語るエリーゼは苦笑いを浮かべている。ただ、自らの経験から彼の剣の腕は認めているようで、エリーゼの見立てでは勝負が成り立つのが団長とクレアぐらいのものだと断言した。クレアに関しては全盛期を基準にしているが、どちらも王国の剣士の最高峰と言っても差し支えない。それに準ずる技量を持っているからこそ、ああしてセレステを怒らせることに何ら危機感すら覚えていないのだろう。)
>1184
ヴァルター……そうかあいつか!しっかし奇天烈な仮面だなぁ、顔隠して何が美しいだよ。
……バカエルフの次はバカマスクか、揃いも揃いってどっから拾ってきたのやら……おもしろくないっ!
(エリーゼの説明を聞きながら自分のハンバーグをがっついて。あれがクレアさんの後任の仮面男ヴァルターか……見た目も中身も変な男だなぁ、騎士団の上位者はろくでもない連中ばっかりだ、とヴァルターをジト目で見ていたが、彼の強さの話になると急に真顔になって目を見開いて。団長とクレアさんしか敵わないだと!?次席補佐セレステですら相当出来る女と見ていたのにそれ以上とは……そして糸目野郎より上なのか。面白くなさそうな顔で一気に自分の皿を空にすると、エリーゼのハンバーグに視線をやって。)
……エリーゼ殿、食べましょう。食事は剣に油を差すみたいなものだ。剣士は食べたくなくても食べなきゃいけない。食べて力つけて……連中を追い越しましょうよ。
(エリーゼはヴァルターも好かないらしい。いけ好かない性格の相手に剣士としての自信を折られたらそうもなろう。次席補佐はいわずもがな、バカのくせにエリーゼをバカにするバカエルフ、そしてあの仮面男……嫌な上司に囲まれ、宮廷からはペットとして送り出されてはエリーゼも気が滅入るだろう。せめて自分が出来る範囲で彼女を元気づけてやりたいと、差し出されたエリーゼのハンバーグの皿を戻して、微笑んで。)
>1185
…分かったにゃ。もっと強くなって、みんな見返してやるにゃ!
(レドの説得に応じて、すっかりスイッチの入ったエリーゼはようやく食事に口を付けた。美味しそうにハンバーグを頬張っていると、今しがた話題に上がった人物、ヴァルターが軽快な足取りで二人に歩み寄る。既にセレステの姿はなく、暇を持て余しているのだろう。)
久しいなエリーゼ。ジェラルド殿下との会食以来か。良い良い、若人は沢山食べなくてはな。
して、其方の若人はもしや…噂の指南役とお見受けする。我が名はヴァルター!最も強く美しき獣人だ。しばらくはこの城で顔を合わせる機会も多いだろう。よろしく頼む。
(断りなく二人の正面の席に腰掛けたヴァルターは、まず目に入ったエリーゼの食に対する姿勢を褒めると、満足そうにうんうんと頷いた。対するエリーゼは「久しぶりにゃ。」と短く返すだけの塩対応である。その声色からは、面倒なやつに絡まれたという心の声が漏れ出ているかのよう。そんな様子はお構いなしに、ヴァルターが次に目を付けたのは指南役を引き受けたばかりのレドであった。二十歳そこそこの年齢でその任を引き受ける例は稀で、内情に詳しい騎士団の上位者レベルには既にレドの存在は知れ渡っている為である。高らかに名乗りを上げたヴァルターは、表情すら読み取れないその気味の悪い仮面の瞳にレドの顔を映しながら、己の手を差し出して握手を求めた。)
>1186
おいでなすったか、マスク怪人!
(エリーゼに食欲が戻ってほっとしたのもつかの間、あの仮面男が迫り来るのを見てぼそっと呟き。噂をすればナントヤラとはよく言ったものだ。やたら足取りが軽いわ勝手に正面に座るわ、なより疫病対策に使われるという嘴みたいなマスクが実に不吉だ。もう騎士というより怪人に見える。とはいえ騎士団の高位者に粗相もできない。まずは目の前に着席したヴァルターに一礼して。
エリーゼと共にジェラルドと会食したということは、こいつも第一王子派らしい。そして獣人……意地悪ジェリーちゃんはケモナーなんか?と淡々とした表情の下で分析していたが……)
噂の……?なんと、私をご存知でしたか首席補佐ヴァルター殿。近衛隊指南役レドと申します。よろしくお願いいたします。
(こちらを把握しているヴァルターの発言に目を丸くして。どうやら俺の話は想像以上に騎士団の中で広まっているらしい。ひょうきんなくせに、仮面のせいでバカエルフ以上に表情が読めない。そしてエリーゼの塩対応からして次席補佐とは別ベクトルで厄介な相手なのだろう。そんな相手にこちらを知られているのは癪だが、まずは礼儀正しく挨拶してから手を差し出してきたヴァルターと握手して。)
| トピック検索 |