検索 2022-07-09 20:46:55 |
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……んっ、…フィリップ……いい子だな…
(相手が吸血しやすいように、そしてより相手の本能を掻き立てるように胸元のボタンを外して素肌を晒す、案の定相手は欲しくてたまらないと言わんばかりの鳴き声を上げていて衝動に負けそうになっている姿にどうしようもなく高揚していた。背中を押してやれば相手は震える声を出す、その吐息は冷たい肌からは想像ができないほど熱くて脳がクラりと揺れた。いっその事相手が理性に完全敗北して吸血鬼の本能のままに求められても構わないのにと飛躍した考えが一瞬過ぎる、それを相手が恐れているのを分かっているからこれ以上煽ったりしないのだが。人間と同じ柔らかな唇が触れて直後人間にはない一際鋭い刺激が走ると思考を通らない声が溢れる、より強く抱き締められるのを感じれば両腕を背中に回して掌で優しくそこを撫でた。体から血が抜けて意識がふわりと浮かび上がる感覚に苛まれながら無意識のうちに名前を呼ぶ、この感覚の分自分のものが相手に取り込まれたのならばそれさえも幸せに感じてしまう。この行為に罪悪感を抱かないよう優しく背中を撫でるのを続けながら邪魔にならないよう極軽く頭に擦り寄って甘んじて吸血を受け入れていて)
…ん、……は、ぁ……
(甘くとろけて幸せな味が舌に触れて喉を伝う。こんなにも甘くて美味しいのは久しぶりの血だからか、それとも相手から与えられているからなのか判断がつかないまま本能のまま吸い付き体内に取り込んでいく。もっと食らいたい、全部自分のものにしてしまいたいと吸血鬼としての本能が刺激されて獲物を押さえる指に力がこもるが優しく背中をなでられ名前を呼ばれるとこの行為すら受け入れられているのが分かって肩の力が抜ける。血を食らうというよりも相手の存在を確かめるように吸血を続けた。やがて体が満たされ相手がすり寄ってくるのを感じれば一線を越えない内に吸血痕に舌を這わせて傷口を閉じてからゆっくりと顔を離す。まだ口の中には相手の味が残っていて無意識に唇を舌で拭っている間も視界がぼやけるほどの満ち足りた倦怠感と余韻がゆっくりと身体に広がっていく。ほかの人の血を吸ったときはそんなことはないのに、相手の血だけはふわふわと酔うような満足感があってまた相手の温かさを求めるようにまた肩に顔をうずめると「…きみの血、甘くておいしい」と感想の呟きを零して)
……ぁ、…っ、ん……ハ……なら毎日飲めばいいじゃねぇか…
(薄暗いガレージの中、時折相手が血を飲み込む音が微かに聞こえてくる、こちらを逃がさないように抱き締める手に力が入って指先が肌に食い込めば痛みとなるのにそれが相手から向けられるものならば胸を満たしてしまう。牙と指が食い込む痛みと血を取られて薄れていく思考、どちらも加害的なものなのにそれらは相手が唯一自分に向けるもので、そんなものでさえ独占しているのならばただただ感じるのは幸福だけだった。やがて食いこんでいた牙が抜かれる感覚があって痛みが無くなればポッカリと物足りない穴ができあがり思わず切なげな声を出す、傷口を塞ぐために舌が這えば違う刺激が加わってまた声が溢れた。血が抜かれ思考がまともに動かず惚けた顔で相手を見る、そこには吸血し終えてこちらと同じく恍惚とした顔で舌舐りをする相手がいて今まさに捕食されたのを見せつけられたようで背筋が悦で震えていつの間にか熱くなった吐息を吐き出した。再び顔を埋める相手を抱き留めて優しく頭を撫でてやる、何時の間にか相手に吸血をされて他では得られることのないもので満たされるようになってしまっていて正直相手に吸血されるのは幸福な行為のひとつになっている。それを躊躇する相手に以前の話を思い出せば「なぁ、フィリップ」と声をかける。今度は遠慮なく相手に擦り寄りながら「前言ってたお前にたくさん血を吸われればお前みたいな吸血鬼に近づくって話、そろそろ真剣に考えねぇか?」と伺うように問いかけて)
…ん、……嫌だ、何回言われても変わらないよ。君を人間という理から外すようなことはしたくない。
(心も体も満たされて顔を離せば切なげな声が聞こえる。血を抜かれて惚けたような表情を見せる相手に顔を埋めれば頭を撫でられて長く息を吐いた。血はその持ち主によって味や口触りが違うが相手の物は特段美味しくて心が震えそうな味だ。だからこそ毎日摂取なんてすればハマりきってしまうのは目に見えている、だからこそ今の頻度で抑えている訳だが相手に名前を呼ばれると自然と顔を上げる。今度は相手から擦り寄ってきてそれを緩く撫でながら様子を伺っていると以前少しだけ漏らした話題を振られて動きを止める。吸血鬼と触れ合いその牙で血を吸われ続けていれば少しずつその体は吸血鬼の都合のいい形に変化していく。それを今でも心苦しく思っているがさらにその先を求められるとキッパリと反対の意志をしめす。自分に近づくのは良いことばかりではない、この街を愛して大切に思っていることや優しく何事も真剣に取り組むところを見れば人として一生を過ごして欲しいと思うのは自然なことだろう。さらに人が吸血鬼に近づく方法の一つが頭に浮かぶと苦々しい顔をして「…それにその方法を完了させるには僕の血を飲まなければならないんだ。人間である君がそんなことする必要ない、君はこのまま普通通りに生きてくれ」と契約の一部を明かすと共に頭を優しく撫でつつ頑固反対の姿勢を取って)
なっ、ンでだよ!!……お前の血を飲むのの何が問題なんだよ。お前はずっと美味い血を飲めて俺はずっとお前とここでお前と過ごせて、何の不都合もねぇだろ
(吸血という甘美な行為に酔っている今ならば相手の決心も揺らぐだろうかと以前に聞いた所謂相手の眷属になるという話を振ってみる、しかし相手から一切迷うことなくキッパリと断られてしまってふわふわしていた思考は一気に冴えて思わず叫んでしまった。その後に続いたのは常套句の言葉で思わず顔を俯かせる、相手はこちらが人間のままでいることに強い拘りを持っているが何処に問題があるのかこちらには分からない。吸血鬼の都合のいいように体が変わると説明されたが吸血はこちらも望むもので餌に成り下がるという意味では決してないはずだ。吸血鬼の眷属になりたいのではなくただ相手と同じになりたいだけ、しかし相手はこちらを【人間】と称してそれが無慈悲にシャッターを下ろされ拒絶されたような、虚しくて突き刺さるような寂しさが襲い来る。頭を撫でられただけでそれは癒えなくて相手に強く抱き着き今度はこちらが肩に顔を埋める、普段は世話を焼いて子供扱いすることもあるのにこの話題になるといつもこちらが駄々を捏ねる子供のようになる。胸の痛みを和らげるように息を吐き出して「人間って呼ぶなよ」と小さな声で文句をつける、人間の力で精一杯強く抱き締めると「普通に生きたら、お前にとって俺は瞬く間しか一緒にいられねぇじゃねぇか」と相手の世界から排除されることにまた寂しさを覚えていて)
…そんな簡単な話じゃない。吸血鬼になるってことは今君が知っている街の人の死を全員分見送る立場になることだ、昼間も簡単に外に出られなくなる。…君には普通の、光の生活を送って欲しい
(相手の提案をキッパリと断ればすぐに反対の声があがる。どんなに頭が蕩けかけようともここは譲れない一線で文句を言う相手をじっと見つめる。だが相手からは強く抱き着かれてしまって人より低い体温の腕でそれを受け止めた。相手に散々言われるが現実はそう簡単な話ではない。長い寿命を得ると知り合った人間は先に死んで全員を見送る立場となる、誰とも同じ時間を共有することは出来ない。それに光に弱くなれば必然的に夜にしか街を歩けなくなる。相手の探偵という仕事においては致命的なデメリットになるだろう。今こうして相手と一緒にいることでさえ相手の寿命を削っていると思えば心苦しくて視線が自然と伏せられていく。慈しむようにこの頭を撫でて吸血鬼の闇側でなく明るい人間の世界の人であることを強く願う。それは相手の言う通り長い人生の中で一部だけを共有することに他ならないが頭をくっつけ軽く擦り寄ると「君の事は忘れないよ」と別れを前提とした言葉を送って)
……それがお前が抱えてる悲しみなら一緒に背負わせてくれ。日光の問題は日傘でどうにでもなる。この街の人の死を永遠に見送ることになっても、それよりも、俺は……
(必死に眷属化に問題はないと訴えてみるが相手の結論が変わることはない、抱き留められはするがどうしても踏み込めない厚い壁が相手との間にある気さえしてくる。相手がデメリットとしてあげるそれらはきっと相手が長い時を生きるうちに抱えたものなのだろう。相手は数え切れないほどの人の命を見送ってきたはずだ、いつか自分がその中のひとりになるのが耐えられない。探偵の仕事もやりにくくなるかもしれないが全くやれないわけじゃない、相手が先程口にした例を言い返してみるもののそれで相手の心を変えられる気はしなかった。頭を撫でられるが宥められているように感じて飲み込むことができない、眷属になれば愛するこの街で普通以上に沢山の悲しみを目にすることになるのだろうが、それよりも相手を選びたい。いつの間にか縋るような言い方になりながら胸に秘めた気持ちを、もっと深い関係を望む言葉を口にしようとする、しかし相手がこちらを思って同族になるのを拒絶している気持ちも分かって一瞬言い淀んでしまうと、その隙に別れにも近い言葉を言われ息を飲んでそのまま瞳を揺らした。擦り寄られる心地良さより相手と離れざるを得ない事実が、共にいることを望まれないことが、何よりも胸に食いこんで痛い。喉が詰まって苦い味がする、瞳の奥が握りつぶされるように締まる、「ンなこと言うなよ…」と小さく捻り出すのが精一杯で抱き締める手でそこにある布を強く握ると「…置いていかないでくれ」と震える声で縋るように懇願して)
…君の気持ちは嬉しいよ、ありがとう。こんなに思って貰えるのは幸せだね。
(こちらが挙げたデメリットに関して相手がその対処法をあげていく、その必死さや健気さが心に染みて温かくなるがやはり相手の人生を大きく変えてしまう願いには頷けない。こちらにしがみついてくる相手を優しく撫でて宥めていたがその中の一つで相手どの記憶を大切にして忘れないと告げるとその瞳が揺れた。苦々しい顔をして小さく呟いて精一杯求めてくれる相手に目を細めると頬に手を添え、そこを撫でながら感謝を伝える。今ある記憶の中では相手が一番強く自分を思ってくれて、大切な人だ。だが、だからこそ相手には幸せな普通な人生を過ごして欲しい。寿命を思えば置いていくのは君だろう、とは口には出さず曖昧な笑みを浮かべて自分の想いを伝える。このままでは相手がずっと沈んだ顔になりそうで少し悩んでから「えいっ」と声に出すとその体を横抱きに持ち上げる。血を吸ったばかりでは力が有り余っていて後ろの羽で軽く宙に浮かぶと上下に軽く動きながら「血を貰って体もすっかり元気になったし街に行こうよ、翔太郎」と明るい口調で声を掛けて)
…っ…………な、…そういう約束だったな。もう日も沈んでるだろうしハロウィンの様子見に行くか
(頬に手を添えられてその手は冷たくともこちらを思う暖かい言葉が降ってくる、それが何より相手の優しさで心からの感謝だと分かっているのに、それもこちらを拒絶するような言葉に思えてどうにもならない現実に目を強く瞑って顔を俯かせた。こんなに近くにいるのに相手との距離はあまりにも遠い、だがこれ以上縋ったところで相手の心変わりがないのも分かっている。この関係にいつか訪れる終わりに打ちひしがれていれば突然体が宙に浮いて声がでる、どうやら相手に抱えられたようでそのまま地面から離れれば目を開いて丸くした。見た目は華奢なのにこちらを軽々と持ち上げるくらいには相手は正真正銘の吸血鬼らしい。意識的に明るい声を出す相手にゆっくりと息を吐いて自分の願望を沈めていく、誰かに追い縋るなんてハードボイルドじゃないと自分に言い聞かせるが同時に心の何処かが軋む音が聞こえた。こちらも無理やり笑みを浮かべれば螺旋階段の上を指差し「あそこまで頼むぜ、フィリップ。あ、外では飛ぶなよ?」となるべくいつも通りを意識して冗談めかして言い)
ああ、任せてくれ。
(相手の願いは叶えられないと遠回しの意味を込めて感謝を伝えたがやはりその顔は俯いてしまう。このままずっと押し問答を続けてもどうしようもなく、相手の体を持ち上げると驚きの声が上がった。湿っぽい空気を切り替えるように明るい声を掛けると相手からも全てを飲み込んだような様子が見えてその優しさに胡座をかいていることに胸は痛みつつこちらも軽い笑みを浮かべて頷いた。そのままふわりと浮かび上がったまま螺旋階段をすっ飛ばして扉をくぐり抜け事務所スペースに向かう。そのまま降ろすことなく相手こだわりのハット掛けの元に向かうとそこから独断でピンと来た物を選んで相手の頭に被せる。角度も調整していつもの相手の姿を作りあげれば満足そうに「これで良し」と呟いた後「じゃあ行こうか」と告げてから横抱きのまま事務所を後にして外への階段を降りていこうとして)
…ありがとよ、フィリップ。……な、待て待てっ!このまま出ていけるわけねぇだろ!!下ろせ!
(空を飛ぶという感覚は何度経験しても慣れない、先程あんな話をしたあとではこれも相手との間にある決して埋められない差なのだと思ってしまって胸に痛みが突き刺さるが相手の軽い笑みを前にこちらも同じく小さく笑みを浮かべていた。そのままガレージを出れば抱えられたまま帽子が選ばれ被せられる、拘りの帽子を相手に選ばせて良いくらいには気を許していて抱えられたまま世話を焼かれるなんて甘やかされる行為に照れ臭そうに笑って、同時に胸の痛みは少し和らいだ。いつもクールでハードボイルドな男で居ようとしているが相手の前では不意に肩の荷を下ろしてしまう、それは相手が吸血鬼という長命で人智を超えた存在であるから以上に相手だからというシンプルな理由なのだがそれを伝えたことはなかった。擽ったい気持ちになっている間にいつの間にか事務所を出て階段を下っているのに気が付く、そこでようやくハッとして相手の腕をバシバシと叩いて制すると無理やり腕の中から抜け出した。危ないところだったと息をつけば「俺のハードボイルドなイメージが崩れるとこだったぜ」と一人呟く。咳払いをして改めて相手の方を向けば「会場は風.都.タ,ワ,ーの周りだ。ちゃんと人間のフリしろよ?」と釘を刺して)
元々崩れてそうだけど…、わかってるよ。行こう、翔太郎
(相手にハットを被せて出発する準備が整えば相手を抱き上げたまま事務所を後にして階段を下る。その途中急に相手が暴れだしてこちらの腕を何度も叩いてくれば仕方なく怪我しないように気を付けながら地面に降ろした。これくらいどうってないことだと思うのだが相手は妙に気になるらしい。いつもの枕詞であるハードボイルドの意味を以前調べたことがあるが自分の前はもちろん、外でもそれにあてはまっているとは思えなくて思わずツッコミを入れる。そして改めて前置きをされると子ども扱いされているようでちょっぴり拗ねた顔をしつつ夜に染まってハロウィンのオレンジや黒のイルミネーションで彩られてた風.都.タ,ワ,ーを指さしてそちらの方に歩き出した。少しして街の中心に近づいてくればちらほらと仮装している街の人を見かけるようになる、興味深そうにキョロキョロしながら歩いていたが風.都.タ,ワ,ーに近づきハロウィンの飾りや音楽が流れてくるようになれば目を輝かせて辺りを見渡す。血を吸ったおかげか吸血欲求が出ることもなく普段夜に出歩く分ここまで人が居て賑わっている街の姿を見ることがなければ「夜なのに凄い人の数だ…!」と興奮気味に声を上げていて)
ハロウィンは夜が本番だしな。さっき言ってた依頼ってのはこの会場の見回りだ。だから適度に様子見つつ浮かれねぇように…
(探偵として何より大事にしているハードボイルドであること、この街の探偵の最低条件なのに相手からは元々崩れているなんてツッコミを受けてしまいきっちり「崩れてねぇよ!」とツッコミ返してしまった。ハットの位置を直してから会場に向かえば日が落ちてもまだまだ会場は賑わっていて多くの人が仮装して歩いている。相手はずっと忙しなく周囲を見回していて目を輝かせている、先程子供扱いされて拗ねたばかりなのに子供っぽくはしゃぐ姿に「離れんなよ」と小言を言いながらも口角は上がっていた。相手にとってはこれだけの人がいることも珍しいようで返事をしながらもっと人が多い場所につれていけばどんな顔をするのだろうと想像してしまう。夏祭りであれば夜で人も多く、花火も見ることができてうってつけだろう。相手がこちらのことをずっと覚えていてくれると言うのならできるだけ楽しい時間で記憶を満たしておきたい。密かに新たな予定を立てつつ夜の依頼について伝えておく、会場は暗く仮装のおかげで正体を隠すことが出来る場所故不穏な動きがあったのだ。そんな事情もあり油断は出来ないと伝えようとした時、イベントスタッフらしき人がこちらに駆け寄ってきて『そこのフェイスペイントのお兄さん!お菓子集めやってみませんか?』とジャック・オ・ランタンを模した小さなお菓子入れを差し出してきて)
なるほど、なら色んなところを回った方がよさそうだね。…お菓子集め?
(珍しい周囲の景色を見まわして目を輝かせていると相手から依頼の内容が教えられる。どうやらこのハロウィン会場の見回りのようでこの場所の雰囲気も楽しめて一石二鳥だ。不審な人物に遭遇したとしても相手とならばなんとかなるだろう。気を引き締める相手に対して楽観的な様子で歩いていると狼男の仮装をしている人がこちらにやってきて不思議な形をしたかごのようなものを差し出してきて反射的に受け取る。フェイスペイントというワードがぴんとこなかったものの自分たちに話しかけられているとわかれば首を傾げる。話を聞くところによると同じように会場にいるイベントスタッフに合言葉を言うとお菓子が貰えるらしい。一つ一つ形が違っていて全部集めるとちょっとした景品もあるとのことだ。『凄く気合の入った格好されてますから楽しめるはずですよ!』とさらに言われると相手の方を見て「この辺りを見回るなら参加してみてもいいかい?」とキラキラした目を向けながら尋ねて)
あ……まぁ会場を一周するついでならいいか…でも仕事中だからな!あんまりはしゃぐなよ!
(気の抜けないこちらに対して相手は好奇心全開でそれが目に付いたのか狼男の仮装したスタッフが近づいてきて、その瞬間にこのイベントの目玉のひとつを思い出すと思わず声が出る、この催し物を教えられて相手が興味を示さないはずが無いと今までの経験から瞬時に分かったからだ。スタッフから説明を聞き相手は案の定目を輝かせるとその目をこちらに向ける、これはもうダメだと言っても聞かない目だ。それにこうやって人の多い場所で相手がこんな顔をすることなんて今までになくて、それを思えば相手にこのハロウィンというイベントを楽しんで欲しいという気持ちが勝ってしまった。格好だけでも呆れたため息をつくが人の中で楽しもうとする相手に嬉しさが勝って口角をあげながら了承の返事をする、一応釘は刺して置いた。狼男のスタッフは『楽しんで下さいね!』と言ってその場を去っていく、気を抜かないようにしつつ会場を回ることを決めるもふと思い至ればすました顔で相手の方を見て「そういやさっき言ってた合言葉って、お前知ってんのか?」と浮かれるなと言っていた本人が楽しげに問いかけて)
君より重ねている年は多いのだから子供扱いしないでくれ。 勿論知っているよ、トリックオアトリートというのだろう?
(相手から了承を得ることが出来れば無邪気に喜んでカゴを握り締める。だが先程から相手に何度も釘を刺されていれば若干ムッとしながら自分の方が年上だと主張する。見た目は相手と同じくらいか少し下に見えるかもしれないが既にその十倍以上は優に生きているのだ。スタッフが驚いたのには気づかないまま手を振って別れると相手に合言葉について聞かれる。何処か嬉しげな様子にこちらも得意げな表情を浮かべて本などで得たハロウィンの合言葉を披露する。仮装した子供などがお菓子を貰う為に使うお決まりの言葉のようでふと良いアイデアが浮かぶと少し口を大きく開けて牙を見せながら「トリックオアトリート!」と相手に声を掛けて)
誰が言ってんだよ…え、……ほんとは子供用だけど、悪戯は勘弁、…
(相手は見た目こそ、特に今夜は人間とほとんど変わらないが悠久の時を過ごす吸血鬼なわけで、再三釘を刺せば抗議の表情を浮かべる。だがそういう行動こそが子供っぽいわけでついついこちらもそういう扱いをしてしまうのだ。呆れ半分に誤魔化しつつお菓子を貰う合言葉を尋ねてみる、流石本の虫なだけあって人間の文化もバッチリのようだ。それなら安心だと返事をしようとした矢先、相手は何かを思いついたようでこちらと目が合う、直後それこそ吸血鬼らしく牙をこちらへ見せながらハロウィンの合言葉をこちらへと言ってくれば言った先から子供っぽいことをする相手に思わず笑ってしまった。イベント会場を回る以上知り合いに声を掛けられるかもしれないと内ポケットに忍ばせていた大玉のキャンディを取り出す、気取った仕草をしながら相手に差し出そうとするがハタと思い直すと手を引っ込めて「…さっき甘いのをお前にやったよな?」と笑いを噛み殺してすました顔をしながら先程の吸血のことを持ち出して)
ハロウィンの会場にいるなら君も対象だろう?…え、確かに甘かったけど、あれはお菓子じゃないし…
(相手と目があえばここぞとばかりに合言葉を口にしてお菓子をねだる。先ほど子ども扱いしないようにとはいったがこれは話が別だ。得意げに相手を見つめながら待っていれば相手のジャケットの内ポケットからキャンディーが取り出されて目をきらきら輝かせる、手を出して待っていたがその途中でひっこめられて笑みをかみ殺しきれていない表情で先ほどの話を持ち出されると思わず固まってしまう。確かに相手の血は何物にも代えがたいくらい甘美な味で凄く甘かったがハロウィンで渡されたりするお菓子ではない。だがもともとのトリートの意味であるご褒美を考えれば大きくは間違ってはいない。筋が通っているのか通っていないのかと悩んでぶつぶつとつぶやくと何とか頭をこねくり回してから「…先払いは認めてない」と屁理屈をこね始めて)
…そこまでこのキャンディが欲しいなら仕方ねぇな。吸血鬼は甘いものに目がねぇって覚えとかねぇと
(内ポケットからキャンディを取り出せば相手は途端に目を輝かせて、そんな物欲しそうな姿を見せられてはちょっとした悪戯心が擽られてしまう。悪戯を回避する為の【お菓子】はもう渡したと言えば相手は固まってしまう、そこからなんとかキャンディを貰おうと理屈を捏ねくり回す姿は聡明な長寿種とは思えないほど可愛らしくて口元は何度かニヤけてしまいその都度グッと結び直していた。漸く理屈を捻り出した相手を暫くジッと見つめて悩むような伺うような視線を向けたあと、上機嫌な声色で言葉だけはしぶしぶキャンディを渡すことにする。ハロウィン定番の合言葉を使って今すぐ甘いものが欲しいのならとキャンディの包装紙を自ら破くと中身を摘んで相手に差し出し「ほら、口開けろ」とさらに子供扱いして)
っ、僕は単にハロウィンという文化を満喫してみたいだけで……ん、
(何とか相手の理屈をつき返そうと屁理屈を捏ねて主張してみれば暫し相手と見つめ合うことになる。こちらも負けじと見ていて相手が折れるとぱぁっと表情を明るくするが上機嫌にからかい混じりの言葉を言われると子供っぽくごねていたように見える態度だったのに気付いて固まり、咳払いをする。あくまで文化を楽しむために乗ったのだと主張するがそれがまた子供っぽいことには気付かず視線を迷わせていたが相手が包装を破ってキャンディを差し出してくるとつい視線はそちらに向かう。このまま素直に貰ってしまえば更に子供扱いされてしまうが甘いキャンディは欲しい。プライドと欲求の間で揺れて視線を迷わせていたが結論を決めれば顔を近付ける。大きく口を開けてキャンディを食べるが摘んでいる相手の指先まで口に含むとじっと相手を見たまま軽く甘噛みをして「…はまひね」と感想を呟いて)
ならこの甘いキャンディも食っとかないとな。……、…ッ?!バカお前っ!!
(悪戯の代わりの甘いお菓子として相手にキャンディを差し出せば途端にその表情は輝いて遂には笑みを浮かべてしまう、こちらより何年も長く生きているように見えない無邪気な顔にどうしようもなく胸は擽られた。揶揄うようなことを言えば漸く自分の振る舞いに気付いたのか咳払いをするが当然遅く、口元がニヤけるのを抑えられないまま封を切ったキャンディを差し出す。更なる子供扱いに相手は迷っていたようだったがもう取り繕ったって過去は変えられない、口元を緩ませたままにしていれば相手は顔を寄せて口を開けた。牙がチラリと唇の後ろに見える中、相手はこちらの指ごとキャンディを口に含んで目を瞬かせる、刹那の間指先が口内の暖かさに包まれた。直後そこが甘噛みされると予想外の刺激に思わず肩を跳ねさせる、先程吸血された直後で最中の感覚がぶり返すと一気に顔を赤くさせた。慌てて指を引っ込めると文句にもなっていない言葉を叫ぶ、周囲にはイベントに参加している人が多く行き交っているというのに人の目があるところで平時から離れたことをするなんて。顔の赤みを隠すようにハットを目深に被れば「イベント参加すんだろ!俺じゃなくてスタッフにトリックオアトリートって言えよ!!」と今更な文句をさらに叫んで)
だって君から一番に貰いたかったんだ。 じゃあ他にも合言葉を行ってお菓子を集めに行こう!
(澄ましているように見せているが先程から口元がにやけていてこちらの反応を楽しんでいるのが分かる。相手の思い通りというのは少々気に入らなくてキャンディと一緒に相手の指先を口に含む。そのまま甘噛みして見せれば分かりやすく肩を跳ねさせその表情も大きく変われば悪戯が成功したようで笑い声を零す。相手が指を引っ込めると口の中には甘い飴だけが残って軽く転がしながら真っ赤な顔を覗いて調子の良いことを言う。普段ならあまりしないがこの祭りの様な賑わいならば誰も気に留めたりはしないはずだ、文句を叫ぶ相手にくすくすと笑いながらもイベント参加への前向きな言葉を聞けばその手を引いて、かごの中に入っていたスタッフのいる場所のヒントを見ては次の場所へ弾む足取りで向かった。【ツリーの近くにいる大きな鎌を持った死神に注意!】と書かれた場所に向かえば人の身長を超える大きなツリーにお菓子やハロウィンの飾りがあってその隣には死神の装いをしたスタッフがいた。ツリーを見ては「こういう飾りつけをするのはクリスマスという文化では無いのかい?」少々首を傾げて疑問を呟きつつ死神に近づくと「トリックオアトリート!」とやる気たっぷりに声を掛けて)
ッ、…そうかよ……だァっ?!待てフィリップ!!
(相手を子供扱いして楽しんでいたはずなのに予想外の行動にすっかり立場は逆転して必死に顔を隠しているのに相手はわざわざその顔を覗き込んでくる、視線から逃れようとするがその前に放たれた何気ない、しかしこちらを特別扱いする一言に心臓が強く鼓動を打つ。更に顔に血が上るのを感じて小さな声で返事をするのが精一杯だった。こちらのことなど気にせずやる気満々の相手は目を逸らしている隙にこちらの手を取って勝手に進み出してしまう、またも文句を叫ぶが相手の表情が先程よりも煌めいて見えれば大人しく手を引かれることになった。ヒントを頼りに最初の場所へとたどり着く、相手はツリーを見上げて疑問を口にしていて「そこは運営とか、大人の事情だろ」と返事をしておく。きっとハロウィンが終わってすぐ始まるクリスマスの設営も兼ねているのだろう。若干怪しくともかぼちゃやコウモリが飾ってあれはそれはハロウィンのものだ、傍にいた死神のスタッフに相手が声をかければスタッフはにこやかに何かを取り出し、そしてこちらを見る。暫く目があったあと『仲良しのお兄さんも!』と言われそこで漸くまだ手を繋いだままなのに気がつけば慌てて相手から離れた。咳払いをしてその場を誤魔化せば「トリックオアトリート…」と言うが『もっと元気よく!』とやり直しを命じられ、数度ラリーが続いた後に漸く『ではお菓子をどうぞ!次は丸い明かりに照らされた狼男に気をつけて!』とお菓子をゲットした。若干げっそりした顔で貰ったお菓子をみれば「なんだこれ?クッキーだが…変な形だな」と見た事のない形状に色んな角度からクッキーを見ていて)
……ふふ、…君もお菓子が貰えて良かったじゃないか。…本当だ、何の形だろう。
(ツリーに関して触れれば大人の事情だと妙な答えが返ってくるがスタッフを見つければ早速近づいて合言葉を口にする、するとスタッフはにこやかに微笑むが相手の方を見ればそちらにも合言葉を求めている。ほぼ無意識につないだままだった手を解かれると「あ」と声を零すが咳払いしながら合言葉をぽつりとつぶやく姿を見ればつい口元がにやける。小声ではダメだったのかスタッフに何度も言い直すように言われてそのたびにトリックオアトリートと恥ずかしそうに口にする姿を見ればニヤケは止まらず籠で口元を隠しながらその様子を見守っていた。自分と同じくらいの声量になってようやくスタッフからオッケーを貰うと可愛らしくラッピングされたお菓子を受け取る。スタッフがほかの子にも対応しに行けば相手の右隣に並んで楽しそうに揶揄いの言葉を投げかけた。なかなか珍しい姿が見れたことにご機嫌になりつつ相手がクッキーを見ていれば一緒にそこを覗き込む。クッキーによくある丸や四角の形ではなく何とも言えない形をしていれば興味がわいて顔を動かして観察を続ける。切れ端という可能性もなくないがスタッフの持っていた袋の中には似たような形のものが揃っていたような気がする。最初のスタッフの説明を思い出すと「もしかしたら全部集めたら何かの形になる…とかじゃないかい?」と可能性を口にして)
ったく、ハードボイルドな男に甘いものは似合わねぇのに……確かに、全部形が違うって言ってたし、最後まで巡ったら答えが分かるようになってんのかもな
(相手がお菓子集めをするのを隣で見守る予定がうっかり参加することになってしまった、まさか合言葉にやり直しがあるとも思わず隣で笑いを隠しきれていない相手に余計に恥ずかしさを覚えながらなんとか合格することができた。楽しそうな相手に思わず愚痴を零しながら奇妙な形のクッキーを眺める、適当に作った形でもないようだが何かの形をしているわけでもない。ピンと来ずにクッキーを四方から見ていたが相手からこれが大きな形の一欠片なのだと言われれば納得するように頷く、最初の説明でも形が違うお菓子を集めてという指示があったがそれは最後にひとつになることを意味しているのかもしれない。最後まで答えの分からない仕掛けに好奇心を擽られやる気を見せながら返事をする、これは完成させるまでやるしかなさそうだ。先程死神に言われた言葉を思い出し「この会場の中で丸い明かりに照らされてるミイラ男っていやあそこしかねぇな」と会場内を歩き出す、そのまま風.都.タワー前の広場にやってくれば「丸い明かりってあれじゃねぇか?」と中央に吊るされたミラーボールを指差し)
(/すみません、先程のレスで狼男被っていたのでミイラ男に変更しています。一応ご報告まで…/こちら蹴りでお願いします)
ならばなおさら全部集めなくては! …本当だ、キラキラしてる丸い光だね
(妙な形のクッキーを前にして組み合わせて作るパーツの一つだと可能性をあげてみれば相手もそれに乗っかってくる。すべてを集めたときにちょっとした景品があるといったのもそれに関連するかもしれない。単にお菓子を貰う行為から軽い謎解きのようなものに変化すればわくわくは増すばかりでこちらもやる気になって次のヒントを探す。そうして少し移動すると相手の案内で広場へとやってくる、そして相手の指さした先に爛々と光る妙な物体を見つければ頷いてその下に向かう。夜の中でもあたりの光を反射してきらきらしている物体に目を奪われていると『こんにちはー!』と陽気な口調で声がかかる。そこには全身包帯でぐるぐる巻きの人物がいて姿に似合わず陽気に手を振っている。ハロウィンでは定番であるらしいミイラ男の姿を興味深く見つつふと思い浮かぶことがあれば相手のそばに寄ってこそこそ話のように「…この前大けがした時の君みたいな格好だね」と素直な感想をつぶやいて)
ん?…、…あそこまでじゃねぇよ!ってか年中吸血鬼のやつに言われたくねぇよ!!
(今回のお菓子集めのイベントはただ合言葉を言って回るだけでは無いお楽しみ要素があるらしくこちらがやる気を見せれば相手も更にイキイキとしていて早速次の場所へと向かう。本来の仕事が見回りであるのを思い起こして周囲に目を配りながらも相手と並んで広場の方へと向かう、こちらの読み通りミイラ男を発見する事が出来ればあとは合言葉を伝えるだけだ。しかしその前に相手が傍に寄ってくるとこちらも体を傾け近づく、そこで耳打ちされたのは先日包帯を体中に巻いた時のことで思わず突っ込んでしまった。声色からして揶揄う意図はなくただの感想なのだろうがあのミイラ男は胴体から手足、頭に至るまで包帯でグルグル巻きにされている。対してこちらは胴体だけだ、決して全身ではない。相手に人間の体は不便だなんて言われたがそもそも打撲だけであれだけ包帯を巻いた医者が悪いのだ。それにこちらは一時的にでもミイラ男もどきだったわけだが相手は年がら年中正真正銘の吸血鬼なのだ、このお菓子集めの途中に吸血鬼がいることを願いつつ陽気なミイラ男に「トリックオアトリート!」と合言葉を伝えると無事また見慣れない形のクッキーを手にして)
僕は元々この体だったのだから仕方ないだろう、…やっぱり不思議な形をしているね。
(全身を包帯でぐるぐる巻きの姿を見れば思い出すのは相手が大けがしていた時の姿で素直にそれに似ていると告げれば相手からは盛大なツッコミが入る。吸血鬼の治癒能力に比べて人間は回復が遅い、ずっとあの姿のままかと一時期は思ったが無事に治って何よりだ。それに対してこちらが吸血鬼だと言ってくるがそれは元来のものだと反論しつつこちらもミイラ男に合言葉を口にした。そうして貰ったのはやはり見慣れない形のクッキーで試しにさっき貰ったクッキーと組み合わせていろんな角度から見てみるがまだその全体像は見えない。『次は音楽が鳴る所で悪戯好きが待ち構えているよ!』とヒントをもらう。そこら中で賑やかな音が響いているがここに来る途中に大きなイベントステージがあってかなりガンガンに音楽が流れていた。「次はステージの方かな」とワクワクしながら次の行き先を考えていると妙な気配のようなものを感じて思わず振り向く、そこには変わらず仮装した人たちやお菓子を持った通行人が楽しそうにしていて特に異変は無い。だがその奥の路地になっている暗闇で何かが動く影と小さな音を感じ取ると僅かに眉を寄せた、他の人のように楽しむわけでもただ通り過ぎる訳でもなく、何かを伺うような動きに相手の依頼内容を思い出す。だが逃げるようにその気配も去ってしまえば相手の方に視線を戻して「…何かいるね、君の依頼に関係あるか分からないけど」といつものように吸血鬼の性質から感じ取った物を共有して)
…、……やっぱ動きやがったか。警戒した方が良さそうだな
(相手も無事に合言葉を伝えて奇妙な形のクッキーと次の場所のヒントを貰う、悪戯好きがどんな仮装かは予想出来ないが音楽が鳴る所というのは相手の予想通りステージのことを指しているのだろう。同意するように頷いたところで相手の顔つきが鋭くなる、何かあったのかと見つめていれば不穏な動きを感じ取っていたようでそれを伝えられればこちらも顔つきを険しくさせた。吸血鬼である相手は人間よりも遥かに耳がよく気配を察知する能力も長けている、相手が何か不穏な影を感じ取ったのなら何かを仕掛けようとしている輩がいるのだろう。数日前からイベント会場設営中にこちらを観察している人間がいると相談を受けて引き受けたこの警備だが運営側の懸念通り何かを企んでいる奴がいるらしい。ここからはより気を引き締めた方が良さそうだ、相手に目配せをしたあと見回りを兼ねてひとまずはステージの方へと向かった。イベントステージの方に近づけば今も地元の高校生バンドが演奏の真っ最中で周囲に音が鳴り響いている、ステージの前には観客がいてその周囲をぐるりと囲むように飲食系の露店が並んでいた。並んでいるひとつの店前に悪魔のような姿をしたスタッフを見つける、合言葉を伝えるべきなのはきっと彼女だろう。しかしそのいくつか隣の店で何やら数人が店前に溜まっているのが見えた。ステージの音楽に掻き消されているがなにやら言い争っているように見える、店員は困った顔をして店前にいる男達の顔は何処かニヤついていた。トラブルならば対応すべきだろうと相手の肩を軽く叩いてそちらへ向かう合図を送る、そして近づこうとしたその瞬間、店のテントの中にひとりの男が入ってきた。店員は絡んで来る客に対処するのに必死でステージの音楽も相まって侵入者に気づいていない、そして侵入した男は店の奥に置いてあった金庫を引っ掴んで飛び出していくのが見えた。反射的に体が動き出すと「行くぞフィリップ!」と叫びながら男を追いかけるため駆け出して)
っ、ああ!…僕は上から回り込むから挟み撃ちにしよう。
(妙な動きを感じ取って相手に伝えれば相手は顔つきを険しくする。まだ確定ではなさそうだが怪しい動きがあるのは間違いない。だが逃げてしまっては追うことも出来ず、ひとまずは見回りを続けて再び尻尾が出る機会を待った方が良さそうだ。かごを持ったまま今度はイベントステージに向かう、壇上では若い人間たちが楽器を演奏していて周囲の店も集客に声を張り上げているのもあってかなり騒がしい。周りを警戒するとともにイベントスタッフを探していると相手に肩を叩かれ示された方に視線を向ける。どうやら何かトラブルが起きているようで相手の後ろをついていこうとした矢先反対側のテントの隙間から男が入っていき、少ししてから金庫のようなものを持って飛び出していく。その男が店員に絡む者の一人にアイコンタクトのようなものを送ったのが見れば共犯だと察して相手の声がけに頷いて駆け出した。男は得意げで会場を突っ切っていくが自分達に追われていると気付けば裏路地へと入っていく。路地は日が沈むと暗くなるのに加え、普段この辺りで営業している店も表に露店を出しているせいか灯りがない。人目につかないならば自分の能力を活かそうと空を指さして相手に方針を伝えるとその場から一気に飛び上がる。犯人の動きを追いながら壁を飛び越え、逃げて行こうとする先に回り込んで降り立てば犯人は足を止める、引き返そうとするもその後ろからは相手が追いかけていて見事な挟み撃ちに「観念したまえ」と得意げに声を掛けて)
頼んだ!……大人しく盗ったもん、…そいつ金庫持ってねぇ!
(二人で走り出せば窃盗犯はこちらの存在に気が付いたようで路地裏へと入っていく、しかしこの街で自分以上に裏道に詳しい人間はいないのだ。暗い道でも難なく全速力で走っていれば隣を走る相手は空を指さす、周辺の人はハロウィン会場にいてほとんど灯りがないのなら相手が派手に動いても問題無いだろう。大きく頷いてその後を任せるとこちらはひたすら窃盗犯を追い続ける、真っ直ぐな一本道へと追い込めばそのタイミングで相手が空から回り込んで行く手を塞いだ。暗い夜にしか使えない手だが夜の世界で吸血鬼から逃げられる人間などいやしない。驚愕する犯人に盗んだ金庫を取り上げようとするが走り出した時には確かに持っていたはずのそれが無くなっていることに気が付き声をあげる、直後脇道にこちらを伺う影を見つけバレたのを察した影は金庫を手にその場から走り始めてしまう。暗がりでハッキリとは見えなかったが店先で騒いでいたうちのひとりだ、いつの間にか金庫の運び手を変えたらしい。相手なら人間ひとり抑え込むのは容易いと判断すると「ジンさん呼ぶからそいつ抑えといてくれ!俺は金庫を追う!」と叫べば再び犯人を追って走り出す。直ぐにジンさんへ連絡をいれて相手の元に向かうよう伝えれば再び全速力で暗がりの道を走り始めて)
こんな短時間で協力を…分かったっ!
(いつもの連携で道の両端を塞ぎ追い詰めたと思えば得意げになり奪った金庫を回収しようとするがその手や服には無くて目を丸くする。同時にわき道から物音がすればそちらに金庫が渡ったのだと察して驚きの声をあげる。まさかひたすら追いかけっこをしている間に物品の受け渡しをする時間があったとは。相手から指示が飛べば返事をしながら目の前の男を力で地面に押さえ込んで動けないようにする、その間相手は金庫を持った男を追いかけていき加勢したい気持ちを押さえながら警察を待った。少しするとパトカーの音が近づいてきて見慣れた二人がやってくる、事務所や夜に何度か会ったことのある刑事で相手の頼りにしている人だ。吸血鬼ということは隠しているため牙などが見えないようにしながら状況を説明して身柄を任せると犯人と相手の後を追う。暗闇でも働く目と耳で辺りを探りながら相手の気配を辿って追いかけ漸く遠くに相手の背中が見えるようになれば「翔太郎!」と叫んで)
(先程の一人を相手に任せて金庫を持ったもう一人を追う、距離はあったが庭たる風.都.の地形は把握済みで微かに聞こえてくる足音を頼りに一気に距離を詰めた。犯人はそこそこの重さのある金庫を持っていてスピードも落ちている、あっという間に追いつくと犯人の肩を掴み動きを静止した。「観念しやがれ!」と叫んで無理やり金庫を奪おうとした瞬間、男がこちらに振り返り『しつけぇんだよ!!』と叫ぶ、視線は金庫に向いていて視界の端に鈍く光るものが見えた。本能で危険を察知すると金庫に手を伸ばすのを止めて拳を握り男に狙いを定める。しかしこちらが踏み込むのが一歩遅い、振りかぶった拳が男に届く前に鈍く光るサバイバルナイフが肩へと突き刺さった。肉を抉られる感覚に顔を歪めながら拳を振り抜くが速度が落ちたそれは男に届くことはない、こちらの拳を悠々と避けた男はその拍子にサバイバルナイフを引き抜いて、遠ざかるナイフと共に赤い血が爆ぜるのが見えた。同時に背後から相手の声が聞こえる、それが幻かどうか判断がつかないまま体がふらついたところにトドメの一撃を食らわせようと男は再びナイフを振り上げていて)
…ッ、触るなっ! …なにしようとした?
(必死に気配を探ってやっとその背中が見える。叫んで追いつこうとするがその様子は少しおかしくて体がふらついたように見えた。次の瞬間、風に乗って相手の血の匂いが強く香ってぞくりと腹の底が震える。そして相手の前にいる犯人がきらりと光る何かを振り上げたのを確認すれば何かが起きたかを瞬時に理解してしまって目の前が真っ赤になる。相手に危害を加えた、自分のモノに手を出されたと認識した途端冷たいはずの体が煮え立つような感覚と共に瞳孔を細くして声を張り上げた。即座に動いた体は人ならざる速度と力で男を捉えて掴んだ腕を逆方向に捻じ曲げる。男が悲鳴をあげる前に手で喉を掴むとそのまま地面に叩きつけ爪を食い込ませる。怒りよりも深く冷たい感情に支配されているのを感じながら尋問のように問いかけ、制御の効かない手で泣き叫ぶ男の首の骨を折ろうとしていて)
……っ、……それだけは、ダメだ……俺達は、罪を、数えさせるだけで……罪を、裁くのは警察や裁判所の、仕事…だ……
(痛みに耐えるのに必死で他のことに気が回らない、そんな状態ではこちらに向かってナイフが振り上げられても反応することすら出来なかった。しかし直後空気を震わせるほどの声が響いて風よりも早い何かが横を通り過ぎていく、派手な音の後に漸く相手がいることに気が付き安堵するが、その手が犯人を絞め殺そうとしているのが見えれば一気に正気を取り戻した。慌てて駆け寄るが足がもつれてほぼ倒れ込むようにして後ろからしがみつく、この街の探偵として超えてはいけない一線を口にしようとするが何故か口は上手く回らなかった。しかし相手が例え人智を超えた存在だとしてもこの街の人を殺した事実を作りたくなくて必死に手を伸ばして首を絞める手に自分の手を重ねる、その手が自分の血に塗れていることには気が付かなかった。男の首から手を剥がそうとするが力を込めることすら出来ない、相手に血を与える時はあんなに心地好いのになぜ傷口から血が溢れ出すのはこんなにも苦痛なのか理解出来なかった。そのまま血と共に力は失われて相手の背中からずり落ちるようにして地面へと倒れる、シャツを自らの血で真っ赤に染めながらも再び相手に手を伸ばせば「フィリップ、…」と名前を呼んで)
君なんかが、翔太郎に…、でもっ!…ッ、翔太郎!
(自分の大切な物を傷つけ、命まで奪おうとした。それだけでまともな理性は吹き飛んで目の前の敵を排除しなければという思考にかられる。徐々に手に力を込めて怒りと恨みを込めた低い声をあげながらその骨を折ろうとして居れば後ろから何かに抱きしめられる。乱れる感情の中でも相手の声だけは良く響くが途切れ途切れで辛そうであればそんな状態にした男への怒りは増して食い込ませた爪が首に傷をつける。衝動のまま殺めようとしていたがこちらの手に生暖かい温度と強い相手の香りがすれば意識がそちらに向かう、そこは今までないほど赤に塗れていてそれが相手のモノだと認識すれば腹の底が一気に冷たくなる。人間は血を多く流したら死んでしまう、そんな当たり前のことを思い出し、同時に背後から相手の体がずり落ちれば今度は相手が居なくなる恐怖に襲われ男を投げ捨てると相手の名前をさけびながらしゃがんで相手に縋る。ハードボイルドだと自慢するシャツは真っ赤に染まっていて更にその面積を増やしている。伸ばされた手を咄嗟に掴むと自分の体温とそう違わないような気がして「嫌だ、ダメだ、死なないでくれ」とパニックに陥りながらぎゅっとそこを握りしめ何度も「翔太郎」と呼ぶ。いつかは別れが来ることは覚悟していたが決して今すぐにという話ではない、傷は思っているよりも酷くこのまま救急を呼んでも間に合うか分からない。顔を歪め相手に縋りつきながら人間の脆さと喪失への恐怖を痛感していれば一つの方法が浮かんだ。ずっと拒んでいた話だが相手が救われるなら、と考えが過ぎれば強くその手を握って「翔太郎、さっきの僕に近しい存在になりたいって言っていたの、本気かい?」と確認をとるように、或いは願うような口調で問いかけて)
フィ、リップ……ずっと、…言わなきゃ、ならねぇと思ってた……お前は、俺が人間の世界、から…外れるのを嫌がってたけど……俺はもう、…お前と出会って、世界を…変えられちまって、んだよ、…
(体から血と力が抜けていく、なんとか伸ばした手を相手が掴むがいつもは冷たいと感じるそれさえも今は暖かく感じた。パニックに陥る相手を少しでも落ち着かせるために頭や頬を撫でてやりたいのにそのための力ももう残っていない。相手に握り締められた手を握り返そうとするもそこに込められる力も失われていった。いつか必ず訪れる別れに痛みを感じていたがまさかこんなに早くその時が訪れるとは思わなかった、人間の世界で行われるハロウィンというイベントを楽しんで欲しかったのにこれでは辛い思い出になってしまうだろうか。相手にこんな悲痛な顔も想いもさせたくないのに体は言うことを聞かず血が流れ出していく、しかし相手がより一層強く手を握ってガレージでの会話を持ち出せば目を僅かに開いて瞳を揺らした。失われていく思考の中でもその意味はハッキリと分かる。どちらにせよ時間はもう少ない、軋ませながら胸に押し込めた想いを伝えるために大きく息を吸うと赤く染まる視界の中で相手を真っ直ぐ見つめる。そして口を開いて自らの気持ちを伝えた。何度も繰り返した押し問答の中で気づいていたのに相手を困らせるかもしれないと口に出来なかった想い、力を込められない代わりに血に塗れた人差し指を相手の指に絡ませ繋げると「俺は、お前が好きだ、フィリップ…お前の一生が、欲しい…それが永遠、なら…俺も…そうなりたい」と自らの想いと願いを伝えて)
…翔太郎、…僕も同じだ。…僕のせいで君の人生が変わってしまうのが怖くて遠ざけていたけど、多分君を手放す選択肢なんて最初から無かった。…どんな形だろうと僕と生きてくれ、翔太郎
(段々相手から力と熱が失われていく、近づいてくる死になりふり構っていられず相手の背中に腕を回してその身体を抱きながらガレージでの会話を振れば閉じようとしていた目が開いてその瞳が揺れた。もう殆ど気力も籠っていないのに必死に伝えようとする言葉に耳を傾け少しでも零さないようにする。既に変わっていたと聞けばこちらも目を見開いて人差し指が絡ませるように繋がれると感情が大きく揺さぶられた。相手が強く強く思ってくれているのが伝わってきて、言葉にならない想いが相手の名前として零れるとプライドも建前も捨てて真っすぐ相手を見ながら本音の言葉を紡いでいく。もう相手を離したくないと強く思えば誓いと願いを伝えるように言葉にして呼吸が薄くなりつつある唇に口付けた。人間を眷属にするための条件、それを満たそうと自らの舌を強く?みちぎれば痛みと共にそこから溢れだした血を相手の口内に注ぐ。後頭部に手を添えて飲み込みやすいようにしていたがやはり舌程度では量が足りない。一旦唇を離すと男が落としたナイフが視界に入って腕を伸ばし拾い上げると「僕の半分あげるよ、翔太郎」と微笑んで喉を掻っ切れば溢れる血の出る傷口を相手の口元に宛がって)
…フィリップ……、…ッ……は、……、____
(きっとこちらが頷くだけでも相手は同じ決断をしただろう、しかし何度も繰り返してきた問答を終わらせる時を、二人の関係を永遠に変えてしまうこの決断を、互いに迷いなく選び取る為に奥底に沈めていた本音を途切れ途切れに今出せる全力で伝える。相手はこちらと同じく目を大きく見開いた後、何よりも聞きたかった言葉を伝えられて痛みではなく幸せで息が詰まりそうになる、溢れ出す感情を前に相手の名前を口にするのが精一杯だった。相手の顔が寄せられてそのまま唇が重なる、薄れゆく意識の中、吸血の時とはまた違う穏やかな幸せがじわりと広がった。直後口の中に鉄の味が広がりその違和感に一瞬体が固まる、だがそれが相手の血だと認識すればこれが相手の味なのだと脳に刻み込んでゆっくりと嚥下した。その瞬間からぼやけていた視界は輪郭と色を取り戻す、唇が離れ見上げれば相手に抱えられていることに気がついてまともに息をすることも出来た。脅威的な回復力に驚いていたが相手はおもむろに脇に落ちていたナイフを拾い上げる、こちらを見つめ月を背後に携え微笑む姿は何とも神秘的で、しかしその言葉は優越感を煽るもので目を離せなくなる。そのまま相手が迷いなく喉を切れば思考が追いつかなくて息をするのさえ忘れてしまった。一切の躊躇がないその姿に一瞬畏敬の念が過ぎるが、それもこちらを同じ世界に引き入れるものなのだと思えば幸福が勝っていく、飛び散る赤が今は美しくも見えた。相手の顔が寄せられて傷口が口元に添えられる、そこから絶え間なく流れてくる血は最初こそ鉄の味がしたがだんだん甘美で美味いものに変化していって気がつけば夢中でこちらに注がれる相手の半分を体内に取り込んでいた。流れ出る分だけでなく軽く傷口に吸い付いて相手のものを取り込んでいく、口の周りが相手の血で真っ赤に染まった頃には肩に出来ていた傷は綺麗に無くなり痛みも無くなっていて)
……、…翔太郎、…多少は拒絶反応が出るものらしいけど、どうやら相性バッチリだったみたいだね。
(相手の体にちゃんと力がこもってこちらの血を飲むのが分かればこの頭を優しく撫でる。溢れ出るこちらの血を分け与えるように抱き締めていれば次第に相手の意思で吸い付くようになっていて初めて吸血される側の立場になると自然と口角が上がった。やがて触れていた相手の肩の傷口が塞がっていて、さすがに分け与え過ぎて頭がくらくらしてくればゆっくりと傷口から引き離して相手を見つめる。吸血鬼らしく口の周りを真っ赤に染めているのを見れば小さく笑って名前を呼びながらそれを拭ってやる。人間から吸血鬼に近い存在に変わる変異の際は拒絶反応や酷い痛みを生じる事があると聞いたことがあったが相手にその様子はない。感心と喜びを込めて声を弾ませながら感想を口にすれば「ちょっと周りの見え方とかも違うと聞いたことがあるけど…どうだい?」と様子を伺って)
フィリップ…俺達が相性悪いなんてあるわけねぇからな。見え方…おぉ、街灯ねぇのにさっきよりはっきり見えんな
(気がつけば宛てがわれた傷口から夢中になって相手の血を飲んでいる、甘くて体の隅々まで行き渡るようで口にしているだけで幸福が溢れ出して脳がクラクラと揺れた。やがて相手が離れる頃には落ちかけていた意識はしっかりとして体から抜けた血以上に生気が溢れ出ている気がする、口元を拭われれば心底幸せそうに笑みを浮かべ心のままに名前を呼ぶが血を吸いすぎたのか逆に相手がふらついてしまって思わず体を支えた。普通は拒絶反応が出るものだと聞けば覚えがなくて目を瞬かせる、今まで以上に体が軽くなった心地はあるが痛みや不快な感覚は一切なかった。きっとそれも相手の血を飲んだからだろうと勝手に結論付ける、相手から与えられるものをこの体が拒むはずも無い。体の変化を聞かれて周囲を見回せば真っ暗なはずの道なのに先程よりも細部までしかもより鮮明に周囲を見ることができる、逆に空を見上げた時に星の光が眩しく感じるほどだ。他にも変化があるのではと思った時に真っ先に浮かんだのは相手が持つ怪力でおもむろに相手の両脇に両手を入れるとそのまま持ち上げる。いつもの数分の一しか力を込めていないのに軽々と持ち上がって相手の体をまるで猫のようにブランとさせたまま「おぉ!すげぇ軽い!」と感嘆の声をあげて)
夜に目が効くのが吸血鬼だからね、これで漸く同じものを見てると言え、っわ!! 何するんだい、降ろしたまえ!!
(相手の様子を伺ってみるがやはり違和感も痛みもないようで逆に不思議そうにする始末だ。相性の良さと何度か相手の血を吸っていたから体の適合がしやすかったのだろう。辺りを見るように促せば夜でもはっきり見える景色に相手が感嘆の声をあげる。今まで自分はこの視野で世界を見ていたわけだが相手が眷属になったなら真の意味で同じものを同じように見えるようになったといえるだろう。あんなに相手が人間でなくなるのを恐れていたのに今は同族になったことに安心して微笑みながら言葉を述べていると急に両脇に手を差し込まれ体が宙に浮かぶ。思わず情けない声をあげてしまってその恥ずかしさからぱしぱしと相手の腕を叩く。人間ならば痛いと感じるほどの強さだが吸血鬼相手ではさほど強い衝撃でもなくされるがまま抱き上げられながら何やら騒いでいて)
ほんとの猫みてぇだな。…ほんとに、同じようにもの持てるようになって、同じ世界が見えるようになって……同じ時間を生きられるようになったんだな
(ブランと持ち上げてみれば相手は情けない声のあと持ち上げられたまま暴れ始めるが難なく持ち上げ続けることが出来る、人間の時だって相手を抱えることは出来たが感じる重さは全く違って動きも加われば本当に相手は猫に見えてくる。抗議するよう叩かれる手は加減はしていない、それなのに痛みは感じず戯れの範疇だ。一緒に暮らし始めた当初は力加減ひとつも擦り合わせるのに一苦労したがもうそれも必要ない。相手を持ち上げ見上げながら直前の微笑みと言葉を思い返せば胸がいっぱいになって自然と笑みが浮かぶ、相手との種族の違い、価値観や視点、生きる長さ、それらの違いを楽しむことだってあったがいつか来る別れに何度胸を痛めたか分からない。しかしもうそれを心配する必要もなくなったのだ。口にしていくうちにもう相手との別れを考える必要はない喜びが溢れ出て相手を地面に下ろすと同時に引き寄せ強く抱き締める、相手と同じく体温の低くなった体をくっつけると視線を交えて「これからずっと、よろしくなフィリップ」と口角をあげれば顔を寄せて唇を重ねて)
…っ、翔太郎………ああ、よろしく。
(今までと違って簡単に相手に持ち上げられてしまうと下ろすように抗議するも相手は楽しそうに感想を言うだけだ。そのうち穏やかな笑みを浮かべると噛み締めるように言葉を述べていく、その内容は恐らくずっと相手が抱えていた不安であろうことが分かって息が詰まると零れるように名前を呼ぶ。本当の意味で相手と共に歩むことが出来るようになったと思えば込み上げるものがあって地に足が着くと同時に相手に抱き寄せられるとこちらからも腕を回してぎゅっと抱きしめる。以前のような温かさは無くなってしまったがそれでもその体温は心地好くて無意識に目を細める。やがて唇が重なると目を閉じて相手に身を委ねる、吸血のような衝動を満たしてくれる本能的な喜びはないがじわじわと湧き上がる幸せに表情が緩む。暫くキスを続けてゆっくりと離れるとこちらからも共に歩んでいく旨の言葉を送る。そして相手の頬に手を添えると「君は僕の血を宿した眷族だ。だから僕が死ぬ時は君も死んでしまうし、君が死んでも僕は存在を保てないだろう。もう君だけの体ではないのだから気をつけたまえ」と怪しく微笑んで眷族の立場を説明して)
…え、俺が死んだらお前に影響あんのか?なら気をつけねぇと
(相手を抱き締めると向こうからも抱き締められる、力加減をする必要もなく真に共に生きる事が出来るのが嬉しくて先程のおかえしにこちらも唇を重ねた。長い時間その柔らかな感触を味わってゆっくりと離れる、相手から一線引かれるのではなく共に歩んでいく返事をされれば嬉しさで体が震えていた。頬に手を添えられると変化した体について説明を受ける、眷属という響きも相手が死んだ時にこちらも消えることも、闇の世界の掟と言うより何より大切な相手との特別な繋がりに思えてどうしようもなく胸は弾んでしまう。しかしこちらが死んでも相手が消滅してしまうのは予想外で思わず内容を聞き返してしまった。眷属という名前からてっきりある意味替えのきく存在かと思っていたが今になって相手の『半分をあげる』という言葉の意味を理解するとじわじわとまた幸せが広がってくる。相手とは文字通りの一心同体、ひとつの命を共有するような二人だが一人のような存在だ。吸血鬼は不老不死ではあるが不死身ではない、相手の為にも行動には気をつけなければならなさそうだ。幸せを噛み締めていればもうひとつ眷属の特徴を思い出して「…俺の血って、お前にとってもっと美味くなってんだよな?」と伺うように聞いてみて)
与える血の量によって眷属の力は決まるのだけど君がゴクゴク飲み干すものだから同じくらいの力関係になったみたいだ。…ああ、僕の血が巡った分最適化されて美味しくなっているかもしれないね
(唇の柔らかな感触を覚えつつ相手の体についての変化を説明する。自分が死んでしまえば相手も消えるという説明には何処か嬉しそうにしていたのに反対も同じであると伝えれば何故か驚いていた。家来や簡単な戦力として増やすならそれこそ初めの舌を?みちぎった血の量だけでも良かったが一緒に時を歩むなら同列でいたい。自らを半分分け与えた相手には自分と同じだけの力や生命力が授けられたようで一蓮托生のような強い契約が結ばれたことになる。その由来と結果を揶揄い交じりに告げてするりと頬を撫でていると相手がふと気付いたように吸血について聞いてくる。血には相性があってそれは結びつきが強いほど美味しく感じるという。気に入った人間の血を長く美味しく頂く為に眷属にする、という話があるくらいその効果も強いようで素直に頷いて肯定を示しつつ相手の顔をじーっと見つめれば「…くれるのかい?」と首を傾げて)
そりゃ…お前の血、美味かったし……最適化、か…ッ、……せっかくお前の眷属になったんだから、そりゃな、
(名前は眷属ではあるがどうやら多くの血を取り込んだことで受け継ぐ力も同程度になったらしい、またも相手の半分という言葉が身に染みて、それを迷わず与えてくれた相手に感謝と幸福と優越感が一気に押し寄せ思わずニヤけてしまいそうだった。口元が緩むのをなんとか抑えながらついでに言い訳もしておく、飲んでいる途中で体質が変わっていったのだろうが吸血を通して相手を取り込む甘美な幸せをすっかり覚えてしまったようだ。人間を眷属にするのは吸血鬼にとって都合のいい体に作り替える意味合いもあるのだと聞いた事があったが相手の血を大量に取り込んだ今こちらの体は相手にとても都合のいいものになっているはずだ。確認を取れば間違いないようで自分が相手にとって最高のご馳走にもなったのだと思えばまたふつふつと幸福が湧き上がって浮き足だってしまいそうになる。直後相手がこちらを静かに見つめているのに気がついて目を合わせれば首を傾げておねだりされてしまい心臓が強く鼓動を打った。一気に頬を赤くしてしまうがそれは自分が望むことでもあって目線を泳がせながらハッキリしない口調で肯定を伝える。だがここは外で、何よりも傍に伸びて放置しっぱなしの犯人がいることを思い出せば「…、こいつの片付けが先だ!ジンさんに連絡してくる」と相手から顔を隠すように離れると直ぐにジンさんへと電話を始めその間に顔の赤みを鎮めていて)
僕の血も君にとって美味しい物になっているだろうね。…ふふ、あ。じゃあ早く片付けてしまおうか。
(元々相手との相性は良くて甘美な味だったが今ではその何倍も美味しく仕上がっているに違いない。そしてそれは相手にとっても同じでお互いにとってお互いが最高の味になっていて思わぬ出来事ではあったが吸血に困ることは無さそうだ。今までずっと吸血する側だったが相手にならば身を捧げるのも悪くない。その話を振ってきたならばその気なのだろうとじっと相手を見つめていればこちらに顔が向いて目があった。確認の様なオネダリを口にすれば吸血鬼なのにその顔を赤くして目を泳がせていて見慣れた反応ににやりと口角が上がった。ちゃっかり承諾の返事をもらうことが出来ればつい笑い声を零したが急にこちらから離れて探偵モードに切り替えようとしていれば思わず声をあげるもお楽しみが出来たとばかりに声を弾ませて事件の処理を手伝うことにした。すっかりのびている犯人に近づいて記憶が曖昧になる軽い催眠をかけて首を掴んでいたことを忘れさせると持ち去ろうとしていた金庫を回収する。そして警察がやってくれば事の顛末を多少脱色しながら説明して盗まれた金庫を渡せば感謝を伝えられた、これでひとまずは一件落着だろう。色々と話し込んでいれば刃.野.刑事は相手の方を向いてじっと見てから『…何がこの前と雰囲気というか纏う空気が変わったな』と鋭い指摘をしていて)
なんだよジンさん……えっ?!いや、あーそれは……ほら俺がもっとハードボイルドになったってことだろ?
(こちらの体はすっかり作り変えられたらしく同じく相手の血はこちらにとっても甘美なものらしい、それは先程十分に経験したもので目を泳がせながら頷いていた。命を分け合うだけでなく互いの血が最高の食事で食い合う関係にあるのだと思えば何とも背徳的で、しかし二人きりで完結する世界に腹の底まで幸福で満たされてしまう。とはいえ相手の仕草に心臓が撃ち抜かれるのは相変わらずで赤い顔を隠す為にジンさんを呼んだ。それに、初めてこの体の血を吸って貰う時は二人きりで誰にも邪魔されない場所がいい。こちらが警察を呼ぶあいだ相手は催眠を使って男の記憶をいじっている、これで人間を超えた力を持つ存在のことは忘れてくれるだろう。その後はいつも通り事の顛末の説明や金庫の引渡しを進めていたが途中妙な視線を感じてそちらへ顔を向ける、視線の主はジンさんだ。こちらを見つめる姿に訝しげな顔をしていたが図星を突かれる指摘を受ければ目を見開いて思わず間の抜けた声を出してしまった。眷属にはなったがまだ見た目に明確な変化は訪れていない、それなのに人間を外れたことをよりにもよってジンさんに当てられてしまうとは思わなかった。なんとか言い訳を探すも思いつかずいつも通りに返してみるが『そんな訳あるか』とツボ押しで頭をこずかれてしまい「いって」とまったく痛くないのに口にしておく。ジンさんが首を傾げながら離れたところで相手に近寄ると「なんでバレてんだよ、ジンさん吸血鬼ハンターの末裔とかじゃねぇよな?!」と伝承を元にした憶測の憶測を耳打ちして)
どうだろう、そういう血筋は残ってるとは聞くけどそれよりも君の挙動不審に気づいたと言う方が信憑性は高そうだ
(相手が逃げるようにこの件の解決の為に動きはじめればこちらもある種の証拠隠滅に動く。あらましを共有して後は警察に任せるようになった所で刃.野.刑事がじっと見ていて違和感に気付いたような発言をすれば思わずこちらも固まった。見る限りはまだ大きな変化は起きてないが長年の付き合いの賜物なのか鋭く違いを指摘していて、相手は思いっきり動揺して何とか誤魔化しているが明らかに挙動不審だ。納得したのかしてないのか分からない態度で一旦離れていくと相手が近付いてきて焦ったように耳打ちされる。血筋については分からないが吸血鬼に変化したことへの動揺や高揚、ちょっとした癖やぎこちなさに気付いたといった可能性の方が高いだろう。すっかり吸血鬼の立場になった相手にクスッと笑うと「あーでも、君が吸血鬼に近い存在だと分かれば銀の杭とか聖水で討伐されてしまうかもしれないね?」と楽しそうに冗談を飛ばしていた。やがて警察の方に引き継ぎが終わると後は任せることになって解放される。また会場に戻るのも良いが今は相手とだけ過ごしたい気持ちの方が強くなっていると「帰ろうか、翔太郎」と微笑んで伝え)
残ってんのかよ!…、ダメだ。俺が討伐されたらお前が死んじまう。その時は……なんとかジンさんの記憶を消すしかねぇな
(ジンさんが妙に鋭い事があるのをすっかり忘れ吸血鬼に特化した能力があるのではないかと相手に問えばまさか適当に口にした吸血鬼ハンターの存在が現存しているとは予想外で思わず声を上げてしまう。故意に命を狙われない限りはほぼ不死に近い存在のはずだが天敵がいるとなれば話は別だ。しっぽを掴まれないように気をつけねばと思っていれば相手が冗談めかしてこちらが討伐されてしまう可能性を口にする、ジンさんが銀の杭と聖水を振りかざす絵面の面白さに考え至る前に自分の死が相手の死に直結することを思えば真剣に首を振った。ようやく相手と対等になって長い時間を過ごすことが出来る体になったのだ、先程のように唐突に別れが訪れるのは困る。冗談めかした相手とは対照的に自分がどうこうよりも相手が死なないようにと真剣な表情で対策を考えていた。やがて警察から解放されると相手から声が掛かる、「あぁ」と返事をして事務所への道を歩いた。以前よりもはっきり明るく見える道を歩き事務所へと帰ってくる、二人きりの空間になったということは先程の約束を果たす時でもあって、しかしそれを言い出すタイミングが分からず途端にソワソワとし出す。何処かぎこちない動きで帽子を金具にかけてしまい、相手の方に向き直るも視線は泳いで「あー…風呂とか入ったほうがいいのか?」と余計な気を回しつつ問いかけ)
ただいま。……意識し過ぎだよ。おいで翔太郎。
(冗談半分に自分が吸血鬼だと気付かれて討伐されるかもしれない可能性を告げれば真剣な顔で首を振っていて目を瞬かせる。先程の言葉をしっかり受け止めているのが分かって嬉しいような落ち着かないような擽ったい気持ちになる。相手との変化を強く感じていると警察から解放されてふたりで事務所に帰ることにした。階段を上っていつもの挨拶を口にしながら中に入る、貰ったお菓子をテーブルに置いたりして片付けなどをしていると相手は妙にそわそわし始めてハットを金具をかけ終わると視線を泳がせている。それだけでも口元がニヤけてしまうのに更に余計なことを言い出せばつい笑い声を零して楽しそうに言葉を投げかける。緊張が伝わって来るとまずはそれをほぐそうとソファーに座ってからその横をポンポンと叩いて相手を招いて)
しょうがねぇだろ……っ、…おぅ……
(先程二人きりになってからとおねだりを先送りにしたわけだが今がその二人きりになった時間なわけで、満を持しておねだりを叶えるというこの状況に落ち着きを失ってしまった。相手はいつだってこちらの血を飲む時美味そうに、そして幸せそうにしていたが、相手の血を与えられ更にこの体が美味しく作りかえられているとなればどんな顔をするのだろうと想像してしまう。同時にそれがこちらにとってもどんな心地なのか、楽しみなような若干不安なような、複雑な気持ちを抱えて余計に落ち着きを無くしていた。おねだりを先延ばしにするのも兼ねて風呂を提案するが、そこで漸く相手がこちらを見て笑っているのに気が付き余計に恥ずかしくなってゆらゆらと体を揺らしながら目線も同じくフラフラとさせていた。すると相手からこちらを招くようにソファを叩きながら呼ばれる、子供を呼ぶような言い方は普段ならば不服なのだが長命の余裕で受け止められているようで悪い気はしない。カクついた動きで隣へ座るもソワソワは止まらない、さすがに男として余裕が無さすぎるだろうと頭を振ると無理やり気持ちを立て直しニヒルな笑みを浮かべ「前より美味くなってんだから吸いすぎんなよ」といつもの保護者らしく釘を刺すようにいって)
流石にさっき吸ったばかりだしそんな事しないよ、…多分。…翔太郎、【こっち見て】
(落ち着きのない相手につい笑っていれば相手は恥ずかしそうに視線を揺らす。その姿を見るのだって可愛らしいが事を先に進めたくて自分の隣に招く。ふらふらと近付いてきて隣に座る相手にまた口角が上がってしまいながらその様子を見ていれば頭を振っていつもの笑みを見せる。そしてさっきの落ち着きのなさは何処へやら、保護者ぶったことを言われるとそんな事は無いと告げるがさっきも理性を飛ばしかけた自分が眷族となった相手の血を前にまともに居られるとは断言出来ず一瞬目を逸らした。だがせっかくならその変化を相手にも感じて欲しくてふと良い考えが浮かぶと相手の名前を呼んでこちらから目を逸らせなくなる催眠をかける。相手が人間の時は決して掛けようとも思わなかったが思いが通じ合った今なら多少許されるだろう。相手の視線を奪うとその手を取ってその目を見ながら慈しむように手の甲や手のひら、手首にかけてキスを落としていき、時折甘噛みしながら牙を宛てがう所を探して)
そこは大丈夫って言っとけよ。…ん?…、…ァ…な、ん……待っ……ハ、…ん……
(落ち着かない心を無理やり鎮め相手の隣に座りいつもの調子で声をかければいつも通り冗談めかした返事が返ってくると思いきや不安な返事がされて思わずツッコんでしまう。人間時既に美味かった血が眷属となりさらに美味さが増しているなんて相手も未経験のことではあるのだろうが。大事にはならないだろうと予想していると名前を呼ばれて目を合わせる、直後また新たな【オネダリ】がされた。相手のお願いは脳の芯に響くようで一瞬思考がふわりと浮かび上がる、相手がこちらの手をとって優しく口付ければ全ての思考と視界が相手に奪われた。慈しむように何度も落ちるキスを肌と視覚、両方から享受して相手に愛でられているのだと強く思い知らされる、それは何よりも幸福で、同時に羞恥が湧いた。それなのに先程のように視線は揺れなくて相手を、殊更口付けるその唇を、ずっと見つめ続けてしまう。顔が動かせもしないことに一瞬戸惑いを覚えるが鋭い牙が肌を掠めればその思考も掻き消えた。ついに眷属になって初めて相手に吸血されるのだと思えば妙に昂ってしまって呼吸が荒くなる、何度も接触を繰り返しそれを視界に収めるうちにいつもより敏感に刺激を拾いあげるようになってしまって体が僅かに震えた。しかしいざ牙が宛てがわれて一瞬体を強ばらせるも甘噛みだけで終わってしまい刹那だけ熱が上がって下がるのを繰り返して知らぬ間に顔が赤くなっていく、やがて牙が肌に触れる度に肩を跳ねさせるようになってしまって、しかし望みのものは与えられなくて悩ましげに眉を下げると「…焦らすなよ」と文句をつけて)
……ん、…じゃあ、お言葉に甘えて……っ、
(視線と意識を奪ったまま相手の手に口付ける。愛でるように弄ぶように軽い口付けと時折甘噛みを繰り返していればその呼吸は荒くなって瞳にも熱が籠っていくように見えた。冷たいはずの顔に血が通って赤く色付いていくのを目を細め楽しそうに眺めてそのまま同じ事を繰り返していれば次第に牙が触れる度に敏感に相手の体が跳ねるようになる。甘噛みの頻度を増やしていくと相手の眉が下がって不満げに文句をつけられ、言質をとったとばかりにニヤリと笑うと手を掴み直す。そのまま見せ付けるような姿勢を取ると牙を立てて手首の内側に噛み付いた。肌を突き破って溢れ出た血が舌に触れた途端脳を揺さぶる程の強い幸せが脳が突き抜ける。今までの全てを塗り替えるほどの甘美な味に無意識に熱い息が零れた、脳が痺れる程の極上のご馳走に喉が鳴って更に相手の手首に吸い付いて)
っ、……フィリップ……ン、……っ、……
(視界が固定され相手がこちらの手を愛でる様を、あるいは狙いを定める様を見せつけられて、待ち望んだ好意をお預けされればとうとう急かすような文句をつけてしまう。相手はこちらの言葉を聞いて口角をあげていて罠にかかったような感覚にゾクリと背筋が震える、腕が見せつけるような位置に固定されれば羞恥で目を逸らしたいのに相手を見つめる目は動かすことが出来なかった。心臓だけが早く大きく鼓動を打って吐き出す息さえ震える、期待と羞恥と先が分からない不安が入り交じり名前を呼ぶことしか出来なかった。そのまま手首に相手の牙が食い込み鋭い痛みが走る、皮膚が一等薄いそこが食い破られ血が溢れ出す感覚がした。途端に相手の熱い息が肌を掠め喉が鳴るのが聞こえる、傍から見ても相手がこちらの血を美味いと感じているのが手に取るように分かる。こちらの血に夢中になる姿は体が震えるほど幸福で知らぬ間に恍惚とした表情で相手を見つめながら相手の肩を優しく撫でると行動だけでなく相手の口からも感想を聞きたくなって「…俺の血、前より美味くなってるか?」といつもより浮ついた口調で問いかけて)
……っ、は……ン、美味しい…好きだ、……
(相手の手首から滴る極上の味に体は震えて先程まで保っていた余裕も吹き飛ばしてその手首に吸い付く。もう人間でなくて同類だと思えば尚更で手を捕まえたままその味に酔いしれた。相手の視線を感じながら肩を撫でられていれば自然と目を合わせる形となり単なる食欲だけでなく心まで満たされていく。熱い息を零してそのまま味わっていたが何処か浮ついた口調で味について問われると味に酔いしれたような表情でこくりと頷き至高のものだと伝える。想像以上のそれにもっと欲しい欲とじっくりと味わいたい願望が重なって夢中になっていれば理性も緩んで味と相手への好意が混ざり合った言葉が零れる。これを知ってしまえば手放せそうになくて相手を掴む手に更に力を込めて吸血しながら「今までで一番だ…」と更に言葉を重ねて)
…、……そうか……そりゃ、嬉しいな…フィリップ、
(体を震わせ喉を鳴らし夢中で吸い付くその姿から答えは分かりきっていたが、自らの血の味について問えば目があって頷く姿が見える。その瞳は酔いしれたように惚けていて相手の意識全てがこちらに向いて夢中になっている事実に優越感で胸が高揚した。こちらの瞳も同じく浮かれているのには気が付かないまま不意に好意の言葉を向けられると目を見開く、相手から初めて聞くその言葉はその意味が何処に向いているのか関係なくこの胸を華やかにして止まない。こちらを掴む手に力が籠って顔をそらせぬまま、というより今はもう自らその姿を視界に収めたい気持ちのまま、吸血する姿を見つめる。手首に吸い付くのは相手の姿を見ることか出来て心満たされるものがあるがそこから溢れる血の量は少ない、それに相手と距離もある。そう思えば出かける前のことが頭に過ぎり名前を呼んで視線を合わせる、そして自らネクタイの結び目に指をかけると「首から飲んで欲しい、」と自ら望めば首を覆う布を解いて)
…、…っ……翔太郎、……は…ぁ…
(夢中になって相手の手首を捕まえて吸い付いていると名前を呼ばれて顔をそちらに向ける。その目は先ほどより浮かれているように見えてくらりと脳が揺れた。そして顔を向けた先で先ほどと同じようにネクタイを解き始めると目を丸くする。一度はハロウィンの会場に行くために隠されていた肌が露出されていき、鼻孔を甘い香りが擽る。あの場所に?みついた時の味と今しがた味わった至極の甘味が結び付けば無意識に生唾を飲み込んでいて誘われるように体ごと相手に近づく。距離を詰めるほどその香りは強いものになっていきその首筋に顔を寄せると軽くすり寄る。自らここを明け渡すような仕草に本能が刺激されると余裕なく相手の名前を呼ぶと今度は予告なしにその肌に牙を突き立てた。その瞬間牙とは比べ物にならないほどの量と濃さの血があふれ出てきて脳を焼くような味と幸せが全身を駆け巡る。息継ぎのための息を吐きながらも夢中になってその血に食らいついて)
…、……あッ、は……ん、……フィリップ、…
(もっと近くに相手を感じながらこの心地に酔いしれたくてより血が溢れ出す素肌を自ら晒す、こちらを向いていた相手の目は開かれてご馳走を前にした子供のように生唾を飲み込む姿を見ればゾクゾクと体の芯が震えた。こちらの血に酔いしれる姿をもっと見たい、元より吸血に夢中になる姿は好きだったが眷属となりその反応はより顕著でもっと自らの虜にしたい。そして他の血なんて見向きもせず自分だけに吸血して欲しい。浮き足立ち舞い上がった思考で一層独占欲は煽られる、ふらりと誘われるように近づいて覚束無い声で名前を呼ぶ姿にはまた体が震えた。甘えるように擦り寄る体を抱き締める、そして予告なく鋭い牙が肌を突き破れば一瞬意識が飛びかけた。直後甘い痺れが訪れ脳内に広がれば思考がふわりと浮き上がるような幸福が体中を塗りつぶす。相手に血を吸われる度浮遊感は増していく、眷属となった今人間の時よりも多く相手に血を与えられるはずだ。抱き締める腕で相手の服を強く握る、夢中で吸血する姿から未だ目線は外れず同時に幸せそうな笑みを浮かべれば「…俺、お前に血を吸われんのすげぇ好き」と浮遊感に苛まれたまま囁くと傍にある耳の縁へ軽く口付けを落として)
……っ、…は、僕も、すき……んっ、…
(誘われるまま首筋に顔を埋めより濃く量の多い血を喉を立てながら飲むと思考が全て相手によって塗りつぶされる。相手の体を捕まえて捕食しているはずなのに相手からも抱きしめられてこの行為を許されていれば甘やかされているような気分になり心まで満たされていた。血を与えてその分を今吸って二人の体に流れるものを交換し合うような儀式で目の前の相手が何よりも大切な存在になっていく、ふわふわと相手に酔いしれながら吸血をしていれば囁くような声で好意を伝えられて冷たいはずの体がぶわっと熱を持つ。自分も想いを伝えたくて拙くも同じ言葉を返して擦り寄った。また違う箇所に牙を立てようと顔を少し離したタイミングで耳の縁に口付けが落ちてぴくっと肩が跳ねる。何ともない戯れのキスにまで反応してしまえば首筋から顔を上げて十分に血を吸って光を宿しながら揺れる瞳で相手を見つめる。吸血への欲より相手への思いが溢れると「翔太郎」と大切な物を扱うように頬を撫でながら名前を呼び更に顔を寄せると今度は唇を重ねて)
…ハ、ぁ……フィリップ?…、…
(相手にこちらの血が取り込まれる度に思考の浮遊感は増していく、その心のままに浮かんだ気持ちを言葉にすれば抱き締めていた体が熱を持った。吸血鬼でも体が熱くなることかあることに、そして何よりこちらの好意の言葉に反応したことに、ただただ幸せを感じて擦り寄る相手を横目で見たまま緩んだ笑みを浮かべていた。やがて肌に刺さっていた牙が抜かれる、次の位置を探す間、心が動くまま耳に口付ければ相手の顔がこちらへ向いた。てっきり吸血を続けるものかと思って伺うように名前を呼べば優しく頬を撫でられ特別大切なものを呼ぶ声色で名前を呼ばれ、そこに乗った想いごと受け取れば幸せで脳が蕩けていくようで無意識のうちに熱い息を吐く、そのまま唇が重なった。首筋からまだ血は流れている、それが極上の味だというのにそれよりも相手は自分との口付けを選んだ。その事実を理解すると喜びが胸に咲き誇って相手の体をぎゅっと強く抱き締める。この想いが少しでも伝わるように重ねた唇に軽く吸い付いて小さく高い音を響かせた。相手と想いが通じ合うことが、これからもずっと一緒にいられることが、こんなにも幸福だとは思わなかった。だがひとつまだ相手から聞いていない言葉がある、行為と重ねた言葉ではなく自分だけを対象にその言葉を聞きたい。重ねていた唇をそっと離すと至近距離で蕩けた瞳で見つめながら「フィリップ、」と名前を呼ぶ。相手を抱き締める腕にまた自然と力が籠って「俺のこと好き?」と問いかけて)
……、なんだい? …っ、…好きだよ、僕の生涯の中で一番好きだ。
(至近距離で相手を見つめ今度は衝動ではなく心の赴くままに顔を寄せて唇を重ねる。そこには血がないはずなのに特別甘く感じられてその体温が心地良い。小さく高い音が響いて相手と触れ合っていることを感じれば心は満たされ愛でるように撫でながらキスを交わす。だが相手がそっと唇を離せばその体温は失われて少々物足りなさを顔に浮かべながら目を開ける、その状態で名前を呼ばれるとじっとその瞳を見つめ返しながら問いかける。腕に力がこもって逃げられないようになってからずっと本心であっただろう問いかけがされると大きく瞳が揺れる。それはずっと言いたくても相手の重荷になるからと種族の差で口にしなかった言葉で相手と別れるまで言うつもりが無かった言葉だ。だが相手はずっと自分と一緒になりたいと言ってくれて眷属になった後も嬉しそうにしてくれている。結果的にすべての条件がクリアになってしまえば気持ちを整えるように一呼吸置くとその目を見ながら好意を口にする。今までも気まぐれで一緒に居た人間はいたがこんなにも大切にして傍に居たいと思ったのは相手だけだ。こつんと額を合わせると「…君が眷属になってくれて嬉しい」と更に素直な気持ちを伝えて)
…っ、……、……へへ、……俺もフィリップが好きだ…お前の半分になれて、俺も嬉しい
(相手と交わす口付けは暖かくて柔らかくて何故か甘くてこちらを撫でる手は最高に心地よいがそれをほんの少し止めてでも聞きたい言葉がある。その単語はもう既に聞いていたが、自分だけに向けられた言葉が聞きたかった。物足りなさそうな相手の目を見つめ問いかければ相手の目が大きく揺れる、口が開かれるまでの数秒が永遠に思えて催眠などなくとも視線を逸らすことなど出来なかった。再び視線が交わる、そして待ち望んだ言葉を伝えられると今度はこちらが大きく瞳を揺らした。相手からの想いは伝わっていたが言葉にされれば更に幸せは増す、その口調からその言葉以上に想いが乗っているのは明白だった。相手が生きてきた長い時の中で一番大切だと伝えられれば何よりも幸せで、嬉しくて、愛おしくて、あらゆる感情が溢れ出せば感情の制御が効かなくて何故か目の奥がジワリと痺れて泣きそうになってしまう。それを誤魔化そうと笑うがどことなく幼い笑い声になって額が合わさってさらに相手の気持ちを言葉として伝えられれば軽く擦り寄りながら改めてこちらの気持ちを伝えた。もう違う存在だと悲しむことも置いていかれる未来に寂しくなることもない、これからもずっと一緒にいられるなら「じゃあ俺は永遠にお前の恋人でいられるんだな」と浮かれた思考のまま少し照れくさそうに言って)
(/やり取りの途中ですがこちらで少しご挨拶を…本日で検索様と出会って5年目に突入しましたね!改めてこれほど長く、また楽しくやり取りさせていただいていること感謝しております。本当に毎日幸せな日々です。ありがとうございます。今年はパロ系統や時間軸をずらすお話を提案していただいて一気に物語の幅が広がってますますやりたいお話が増えましたし、何よりここの二人の香水を作れたことが大きな思い出になりました。大切な宝物を検索様と一緒に作れたことが何よりも嬉しくて、検索様としか出来ないことだなと噛み締めております。これからもこれまで通りお互いのペースでやりたいことをてんこ盛りにしたお話を紡いでいきましょう。これからもよろしくお願いします!)
…そうだね、いつか死んでしまう時まで君と一緒だ。君と一緒に居れば微塵も寂しくないだろうね。
(やっとずっと押さえ込んでいた気持ちを伝えて自分の人生の中でも一番だと伝えると見つめる相手の瞳が揺れて潤んでいくのが分かった。ずっと気持ちにこたえられなかった分背中に腕を回してぎゅっとその体を抱きしめる。こつんと合わせた額は以前のような体温はないはずなのになぜか暖かくて自然と口角が上がる。幼い笑い声と相手からも気持ちが伝えられると腕に力を込めてその存在を大切に愛でる。出会う人間は必ず先に死んでその悲しみが多くならないように一線を引くようになってからは一生を共にする者の存在など考えていなかったが照れ臭そうに将来の話をされると目を細めてその頭をまたなでる。自分には相手がいる、それだけで心強くてこの先何があろうと何とかできる気がした。ふわりと笑みを浮かべるとまた短くキスを送って改めて「ずっとそばにいてくれ、翔太郎」とお願いして)
(/日々探偵様とやり取りさせていただいてあまり意識はしてなかったのですがもう5年目になるんですね…!濃密な時間を過ごして5年が長いような短いようなといった具合ですがこちらこそこれほど長く沢山のやり取りをさせて頂いてありがとうございます。こんなに長い間やり取りさせて頂いてもやりたいことが尽きないのはひとえに探偵様が相手だからとひしひしと感じております。やり取りの間でも自然と以前の会話や出来事が出てきたりと積み重ねた時間を感じることが多く、いい意味で原作とは違う二人になっていってることが凄くうれしいです。これからも是非いつものノリとペースで沢山の時間が刻んでいけたらと思います、こちらこそこれからもどうぞよろしくお願いいたします!/こちら蹴りで大丈夫です)
あぁ、その時は俺も一緒に消えるからきっと同じ場所にたどり着く。…、……お易い御用だ。これまでお前が感じてきた寂しさも孤独も悲しみも、俺が二度と経験させねぇ
(いつも心掛けているハードボイルドな振る舞いは頭から抜け落ちてしまって今はもう相手と飾らない心で向き合い幸せを共有することしか考えられない。幸せが体中に溢れて止まない中、強く抱き締められればそこに込められた感情まで伝わって来るようでまた額に擦り寄っていた。つい浮かれたことを言えば頭を撫でられその心地良さに目を細める、しかしその言葉の裏には相手の過去が見え隠れしていた。再び唇が短く重なれば新たなお願いがされる、その願いに自らの誓いを重ねながらそっと相手の胸板に手のひらを置いた。手のひら越しに相手の心臓の鼓動が伝わってくる、互いの血を交換して契の上でも離れられないがそれ以上に相手から離れようなんて微塵も思わない。手のひらで相手の芯を温めるようにしながら真剣な顔で「俺の命はフィリップと一緒だ。だから、ずっと傍にいるって誓う」と伝えたあと直ぐに緩んだ笑みを向ける。今度はこちらから顔寄せ誓いの証のように唇を重ねる、直ぐには離れていかず柔らかな場所を重ね続けるとその甘い心地に浸って)
…うん、僕もずっと傍に居る、もう置いていかない。……、…
(相手の頭を優しく撫でながら将来のことについて思いを馳せていると相手の掌が胸板の上に置かれる。まるでちゃんと居ることを確かめるような仕草に軽くその上から手を重ねた。そして力強くこちらの願いを聞き入れてくれると返事がされればずっと張っていた意地のようなものも解けて安心した笑みを浮かべる。そして改めて真剣な顔でこの先もずっと傍にいると誓ってくれれば瞳を揺らして、大きく頷きさっき相手に縋られた不安を溶かすようにこちらも約束を口にした。そして相手の顔が近づいてきて唇が重なるとそっと瞼を閉じて触れる柔らかさと温もりに身を委ねる、先ほどと違って直ぐに離れて行かない相手を抱きしめながら今までの分を埋め合わせるようにキスを続けた。暫く経った後瞼を開けるとゆっくりと唇を離す、血は吸っていないはずなのに満ち足りているような心地がすれば「…君とのキスだけで生き延びれるかもしれない」と真面目な顔で呟いて)
(/お世話になっております。そろそろお話していた部分は区切りが良さそうだなと思うのですがせっかくならば少し時間軸を先に進めて探偵君が変化した生活や体質に慣れてきた頃もちょっぴりやりたいなと思うのですがいかがでしょうか。または今回はこの辺りで終えて別の機会にじっくりと吸血鬼パロバージョンの事件や依頼をこなすのもアリかな…とも思っているのですが探偵様のご希望などありましたらお聞かせください)
あぁ、…お前もずっと俺の傍にいてくれ。……何言ってんだ、これからもちゃんと食事してるか確認するからな
(こちらが相手の胸板に存在を伝えるように手を置けば相手の手が重なる、そのまま誓いを口にすれば相手の瞳は大きく揺れて今まで見た中で一番穏やかな笑みを浮かべれば、より相手の深い所に触れたような、より濃く交わったような、そんな気がしてまた目の奥が熱くなる。それを緩んだ笑みで誤魔化し唇を重ねる、腕に力が込められてこちらからも呼応するように抱き締める腕に力を込めた。再び唇が離れるがもう相手は物足りなさそうな顔はしていない、しかし満ち足りたまま理論から外れたことを言えば思わず笑ってしまった。長寿で聡明な相手の思考をここまで溶かしていることにまた幸せと優越感を感じながら相手の頬に手を添え親指の腹で撫でる、その柔らかさを感じながら「まぁキスもいつだってしてもいいけどな」とおどけて言ったあと、後から恥ずかしくなって目線を泳がせていた)
_____フィリップ、起きてるか?
(吸血鬼の眷属になってからいくらか日が経った頃、夕日が沈みかけた時間帯に事務所にやってくれば肌を厳重に覆っていた長袖のジャケットに手袋とマスク、ハットとマフラーをとって所定の位置へと片付ける。今の季節には少々早い格好だが肌を日光から隠すにはこれくらいした方がいい。あの日から明確に自分の体質が変わった。夜目が効くようになったのはもちろん、日光は天敵になり夕日でさえ刺さるような痛みを感じるようになった。分かっていたことではあったが日中に外を歩き回ることは出来なくなってお陰で家から出られるのは夕日が沈みかけた時間からだ。相手にはそれでも早いと言われているが事務所が開く時間帯が夜になった分なるべく早く表の札を【OPEN】にしたいのが本音だ。事務所内を見回す、一日の最初に相手と顔を合わせる時『おはよう』が正しいのか『こんばんは』が正しいのか、未だに定められないまま相手を探していて)
(/お世話になっております。区切りをどうしようかと思っておりましたが、今吸血鬼パロがめちゃくちゃいい感じですし是非このまま眷属になって少しした頃の時間帯もやらせていただきたいです!二人の関係性が変わってからの変化や時々眷属の力にまだ慣れてない探偵など出来ればと思います。吸血鬼パロでの事件も是非やりたいです!体が頑丈になってさらに無茶するようになったり荒事を引き受けるようになったりしてちょっと喧嘩してしまう、なんてことが出来れば面白そうかなと。なんなら続きでやってしまってもいいかなと思いますが、後にお楽しみに取っておくのもいいので悩みどころです……ひとまず上はそれっぽく初めておきましたのでこちらは一旦止めてこのままふんわり続けても、こちらでご相談続けさせていただいてもどちらでも大丈夫です!)
おはよう、翔太郎。今日も随分と早い出勤だね。
(決定的な日から幾らか経った頃、上の方から物音が聞こえてくればガレージで読んでいた本を一旦閉じて螺旋階段を登る。事務所に続く扉を開けると装備品を外して片付けに行く相手が居て最近見るようになった光景を敢えて何も言わずに眺めていた。完全に日が沈んでからでもいいのに、少しでも事務所を早く開ける為に相手はいつもこの時間に来る。前は朝から来てたことを思えば遅い出勤ではあるが吸血鬼基準では十分早起きに該当するだろう。前はどちらかが無理をしていた分今は長い時間を過ごせる事に気持ちが弾むのを感じながら相手が何かを探すそぶりをしていれば優雅にこちらから声をかける。普段の姿になった相手の元に近づいてから顔や首などを入念に観察して特に異変が無いのを確認すれば「何処も日に焼けてないみたいだね」と安堵の表情を浮かべて)
(/続きの文章ありがとうございます!それでは是非是非ちょっと慣れてきた頃をやってしまいましょう。せっかくですので続きをやってしまってもいいかもしれません。より無茶をするようになってしまう探偵君と喧嘩して暫し冷戦状態になったりその状態で探偵君がやられてしまって助けに行くってのも楽しそうです。初めての飢餓状態とか色々盛り込みたい要素はあるのですが探偵様の方でも希望があればお聞かせください)
おぅ、おはようフィリップ。夜だけじゃ来れねぇ人もいるかもしれねぇしなるべく早く開けねぇと。…お前にも影響あんだから抜かりねぇよ
(素肌を一切出さないよう体を覆っていた衣服を片付け相手を探せばガレージへ続く扉が開く、どうやらもう起き出していたらしい。時間は夕方でも『おはよう』で良いのかと内心思いつつ、優雅な声に口角をあげながら挨拶を返す、そのまま相手はこちらに近づいてきて体中をマジマジと観察していた。不思議そうな顔をして見守っていたがどうやら日焼けのチェックだったらしい、安堵する姿に大切に思われているのだと実感すれば擽ったい気持ちになって口元が緩んだ。相手の眷属となり体質は顕著に変化したが見た目の方は変化がゆっくりなのか、それとも変化しないのか、とりあえず今は時間帯を変えただけで探偵事務所は変わらず続けられている。夕方に事務所を開けるのに唯一不便なのが家から事務所までの道のりで「今はこの格好で違和感ねぇけど問題は春以降だな。考えとかねぇと」と悩みの種を口にして)
(/ではこのまま慣れてきた頃の二人から依頼まで一気にいってしまいましょう!ざっくり考えた流れですと、この後護衛の依頼が来て探偵が対応→襲撃されるも守り抜いたことから同じ人物から度々護衛を頼まれるようになる→何度も襲撃されて怪我も増えてくるがその度に検索くんの血を飲んで回復し段々怪我に対して無頓着になる→大怪我しても反省のない探偵に検索くんが怒る、みたいな導入でどうでしょう?そこから喧嘩して血を飲まないままに再び護衛をするも力が出せずに護衛対象を人質に取られてしまって動けなくなり、そのまま一日経ってどちらかが飢餓状態になって暴走、みたいなのでいかがでしょうか?探偵ひとりで動くところはどんどん圧縮して飛ばしつつ喧嘩と暴走に重きを置いてやり取りさせていただければと思います。ざっとこちらの想定を書き出してしまいましたが改変していただいても全然問題ありませんので検索様のやりたいこともお聞かせいただければ!)
…それなら君もここに住めばどうだい?移動しなければ日の光を浴びることもないだろう
(特に露出しがちな部分をチェックするが特に変化はない。少し浴びたくらいでは致命的なことになることはないが警戒するに越したころはないだろう。吸血鬼の体質になってもこの街を大切にしていることは変わらないようで今日もこれから事務所を開けるつもりのようだが相手がぽつりと悩みを口にすればじっとその様子を見る。確かにあの格好でこの時間に街を歩いていれば目立ちすぎる、その解決法を少し悩んでから相手も自分と同様に一緒にここで生活することを提案してみる。移動する手間がない分相手の望み通り事務所を早めに開けることもできるし万が一のことがあってもすぐに察知することが出来る。「遮光カーテンさえ買ってくればこの事務所でも過ごせるし寝具もちょうど奥に休憩用のやつがあったはずだ」と事務所奥のスペースを指さし反応を伺ってみて)
(/その流れ良いですね!段々怪我に無頓着になるし慣れない内から能力や派手に動きすぎてしまう探偵君と大切だからこそ起こる検索が出来そうです。探偵様の流れでも良いですし、もしも地雷でなければ喧嘩して吸血できないまま護衛に出て更に怪我をしてしまって飢餓状態になる→吸血鬼の本能が疼いてしまい血が欲しくて近くの人間である依頼人を襲おうとしてしまうor実際に襲ってしまう→検索が止めに来るという暴走の流れでも面白いかなと思いました。今は検索の味しか知らない所を他人の血を知って不味いってなる探偵君も出来そうですしより特別感が協調されるかなと思います)
…………そうか、俺がここに住んじまえばいいのか。でも毎日あのベッドってのは…
(今でも季節に対して厚着しすぎているくらいだが冬を超えてしまえばいよいよあの格好は不審者に分類されてしまう。だがこの時間から事務所を開けるのは譲れない部分でもありどうしたものかと頭を悩ませていた。するとこちらを見つめていた相手からここで暮らすことを提案されて思わぬことに目を瞬かせる、つまりそれは相手と同じ場所で暮らすということ。ここに住んでしまえばまだ日がある時間に外を歩く危険もなければ遮光さえしてしまえば何時でも相手と共にガレージだけでなく事務所で過ごすことも出来る。願ったり叶ったりな状況だが事務所奥に置かれた簡易ベッドを指さされると少々難を示す。一夜を過ごすくらいなら問題ないが毎日あそこでは気が休まらない。それに一緒の空間にいるのに相手と離れ離れになってしまうのも何処と無く寂しくて「…いっそベッド買っちまうか。……デカイやつ」とボソリと自分の願望を含めて呟いて)
(/せっかくのパロですので本編ではやらないようなこともやりたいですし、探偵が飢餓状態になって人を襲ってしまうとこまで是非やりたいです!依頼人の血が不味くて敵まで襲って命を奪おうとしてしまうとこに検索くんが止めにくる、みたいなのができれば楽しそうかなと!そこから検索くんの血を貰ってよりこの関係に没頭してしまう的なのが出来れば嬉しいです。大枠は決まってきましたが、他に調整しておくとことかありそうでしょうか?/なければ蹴っていただいて大丈夫です!)
…、…それもいいかもしれないね。長い間過ごすなら快適な環境を整えるべきだ
(移動する必要もなく生活を共にすることが出来る、まさに一石二鳥の解決策を提案すると相手の目が瞬いた。しっくりきたといった反応を見せる相手に自然と笑みが浮かんで新たな予感にわくわくしていたが寝る場所として簡易ベッドを指さすと相手は抵抗を示す。元が人間ならば寝具にもこだわるのだろうかと若干首を傾げていたがぽつりとその解決策の呟きが聞こえてくると今度はこちらが目を瞬かせる番だった。大きな奴、ということは一人ではなく自分も含まれているのはすぐに分かった。生活リズムなどの違いから誰かと一緒に眠った経験はほとんどないが生涯を共にする相手ならばそれも悪くない。口元に笑みを浮かべてそれっぽい理由をつけながら賛成を示すとちょっと悪戯心も湧いて傍に近づくと「そしたら一緒に眠れるね、翔太郎」と敢えて言ってなかった部分を揶揄うように口にしてご機嫌な笑みを見せながら様子を伺って)
だよな。……なッ、…その、つもりだ…
(今後の生活のことを考えても今の家を手放して二人でこの事務所に住んだ方がいい、そこまで近くにいるならば眠る時だって一緒でも良いはずだ。その話は追々することにしてとりあえず大きめのベッドを買うことを決める、相手は目を瞬かせたがこちらの真意には気づいていないようで軽く返事をしていた。あとは荷物をこちらに移す算段を整えるだけかと考えていた矢先、不意に相手が近づいてきて目を向ける。そしてこちらの考えを見透かすようなことを言われれば目を見開いて言葉が詰まって固まってしまう、大きめのものを選択した時に相手も同じ事を考えていたのが嬉しいような、あっさりこちらの考えを読まれてしまったのが恥ずかしいような、いたたまれなくなると目線が泳ぐが誤魔化すことも出来ずポツリと呟くように同意する。だがそれはそれでまた恥ずかしくなってきて「仕方ねぇだろ!お前の棺は一人用だし簡易ベッドも二人じゃギリギリだし!それならでかいのあった方が…」と叫んでしまうが、最初から二人で寝ることが前提だったと白状したもので墓穴を掘ったのに気がつけば口を噤んで眉を下げる、どうにもならなくなるとその場から逃げるようにキッチンへ向かった。落ち着く為にも紅茶を飲もうと茶葉が入った袋を手にするが焦った頭ではすっかり力加減のことを忘れてしまって、人間の時と同じ感覚で袋を破けば力が入り過ぎてしまい『パァンッ』という派手な音と共に袋は切り裂かれ紅茶葉が派手に散らばって)
ふふ、一緒に寝て欲しいと思われているようで何よりだ。…あ。人間の時とは力加減が違うのだから気を付けたまえ
(近づいて揶揄い交じりに言葉をかけると分かりやすく相手は固まる。わざわざデカいと付け加えるくらい意識しているのは丸わかりだったがじっと相手を見ていると目線は泳ぎながらも肯定の返事がされて機嫌は高まっていくばかりだ。並べられる言葉も照れ隠しの言い訳のように思えて口に手をやりくすくす笑いながら弾む声で感想を告げた。これから生活を共にするための新たな変化を感じていたのだが相手の方は眉を下げたと思えば逃げるようにキッチンに向かう。おおかた紅茶を入れようとしているのだと分かれば自分の分も入れて貰おうとカップを棚から出して持ってくる、丁度その時相手が力任せに開けようとした袋が破裂し派手な音と共に茶葉が散らばってしまえば思わず声を上げて動きを止める。どうやらまた力加減を間違えたようでカップをテーブルに置くと散らばった茶葉を集めて片づけを始める。人間の時から一般的な成人男性よりは力や体力が高い相手だったが眷属になって身体が人ならざるものになってから更に強くなっている。人間の時と同じ動きをすると壊れてしまう物が多く普段から気を遣っているのだが相手はまだ慣れていないようだ。散らばった茶葉を片付け終えると散らばらずに残った袋の中身を新たな袋に移し替えながら「暫くはその身体に慣れる練習だね」と軽い口調で続けて)
やべ……、悪い…そろそろ慣れたと思ってたんだが…日に日に力も強くなってんだ
(眷属になって冷たくなったはずの体は羞恥で熱が上がってしまって場を誤魔化そうとキッチンへ向かう、これからは四六時中一緒に、生活リズムさえも一緒なのだと思えば舞い上がるのも相まって力加減を誤ってしまった。目の前で弾ける袋に一瞬呆気に取られる、後ろから相手の声が聞こえてくればハッと意識を取り戻して謝罪を挟んだ後慌てて相手と共に散らばった茶葉を片付けた。見た目の変化がない代わりに中身は少しずつ人間から外れていっている、その中でも顕著なのが筋力だ。相手の血を飲んだ直後もなかなかの怪力になっていたがその力はまだ成長中らしい、おかげで力調整の日々だが今のように焦って理性を欠いている時はやらかしやすい。犯人を追いかける時に異常に早く走りすぎてしまったりバットで襲われた時も簡単に止めてしまったりと事例は後を絶たない、相手は軽い調子だがこちらの中ではあまり軽視が出来なくて「依頼の時には特に気をつけねぇと…誰かを傷つけたくねぇし」と自分の手のひらを見つめながら呟き)
与えた血の量が多かったから馴染むのに時間がかかっているのだろうね。…大丈夫、君ならちゃんと制御できるはずだ。
(一緒に茶葉を片づけながら相手の話を聞く。普通の眷属は一時間か長くとも一日もすれば体が出来上がるが相手には自分の半分の血が注がれている。相性が良かったとはいえ体になじんで完全に変化してしまうまでにはもう少し時間がかかるのだろう。人間だった時の頃がある分なかなか難しいだろうと思うが心配そうに手のひらを見つめる姿を見れば相手の頭に手を伸ばして安心させる言葉をかける。こういったことは精神的な影響も大きい、それに相手ならば致命的なことはしないだろうという確信があって頭を優しくなでながら軽く微笑んで見せた。それから少し考えて「心配なら僕のことを考えたり僕に触れていると思えば良い。恋人に手荒な真似はしないだろう?」と自信たっぷりにもう一つの方法を提示する。そんなことを話しているとすっかり夕日が沈んで暗くなった事務所のドアがノックされて)
じゃねぇと困る、……そうだな。お前を傷つけることは絶対しねぇから、万が一の時はフィリップのこと思い出す
(心が乱れている時や咄嗟の時ついつい体が変化したことを忘れてしまう、それこそハードボイルドな男のように感情に流されずいつでもクールにいられたらこの体を簡単にコントロールできるのだろうが現実はなかなか上手くいかない。人間でないことがバレるのもマズイことを考えれば自分を戒めるように決意を固めていたが不意に相手の手がこちらに伸びてきて頭を撫でられた。途端に張っていた気持ちは緩んで幸せな心地が広がる、誰かに甘える機会が少なかったせいか特別な相手から大切にされるように頭を撫でられればずっとこうやって甘えたくなってしまう。撫でる手に軽く擦り寄っているうちに口元は緩んでいく、そして何かあった時の対処法を伝えらられば照れくさそうに笑った。確かにこうやって相手が傍にいるうちは力を見誤ったりはしない、茶葉袋のことさておき相手が隣にいるだけでこれだけ安心できるのだから誤った道を行くこともないだろう。こちらも緩んだ笑みを見せてからその後は相手がいれる紅茶を楽しむこととなった。一息ついたところで事務所のドアがノックされる、扉を開けるとそこには高級そうなスーツをきた男が立っていた。中に招き入れて早速依頼を聞けばその内容は護衛だった。どうやら機器に使用する最新鋭の制御チップを開発したらしく、どこから嗅ぎつけたのかきな臭い組織が買取を申し出てきたそうだ。それを断り信頼のおける会社へ今夜引き渡すことになっているのだが万が一に備えて周囲を警護して欲しいというのが今回の内容だ。活動時間も今からならば問題はない、それに眷属の体質なら危険察知は得意分野だろう。直ぐに依頼を受けることを決めれば相手の方に向き「俺向きの依頼だな。行ってくるから留守は任せたぜ、フィリップ」と声をかけて)
ああ、そうしてくれ。__…僕はついていかないでいいのかい?
(相手の頭をゆっくりと撫で始めると相手の緊張のような物が解けて自ら手のひらに擦り寄っていく。焦っている時に力加減を間違えてしまうならとこの肩肘はらずに気が抜ける瞬間と自分の存在を思い浮かべるように伝えれば相手は照れくさそうに笑って釣られてこちらも軽く微笑む。何もないのが一番ではあるがその時にストップをかけることや気持ちを沈めるきっかけになればいいと願いを込めて頭を撫でていた。そうして落ち着いた後入れ直した紅茶を飲んで一息ついているとドアがノックされる。人間だった時は昼間に依頼を受けることが多かったためこうしてやり取りを見ていられるのは結構新鮮だ。少し後ろで様子を伺うようにしながら依頼内容を聞いていると今回の依頼が護衛だと分かる。それもかなり急な話のようで今から出てくると聞くと立ち上がって同行の有無を尋ねる。相手の実力を信頼していないわけではないがきな臭いがどれくらいか分からない以上厄介なことに巻き込まれる可能性だってあるはずだ。先ほどの話がちらついてじっと相手を見ながら様子を伺っていて)
ん?あぁ、大丈夫だ。……さっきのがあるしな
(相手に留守番を頼むと伺うような視線が向けられ目を瞬かせる、その後同行を問われると少々驚いた後小さく笑みを浮かべ首を振る。これまで昼間に依頼を受けていた関係で基本的には全てをひとりでこなしていた、夜の依頼に気紛れで相手が着いてくることもあったがそんな流れもあって今回の依頼も当たり前にひとりで行くつもりだった。先程あんな話をしたばかりなのもあってこちらを気遣ってくれたのだろう、その想いに口元が緩みそうになるのを無理やり引き締めながら相手に近づくと依頼人に気づかれないように耳打ちをする。万一があっても先程のおまじないが効いてくれるはずだ。それに大切に思う相手を危険な場所に連れていきたくない、どんなに相手が丈夫であろうとそれは危険に晒していい理由にはならないだろう。日もすっかり落ちて厚着も必要なさそうだ、ハットを被ると「じゃあ行ってくる」と軽く手を振ってから依頼人と事務所を出た。そこからは、結論から言えば依頼人の予想通りだった。チップの引渡し兼会食を行う会場を仮面を被った男達に襲撃されたのだ。バットやらナイフやら物騒なものを持っていたが正直眷属となった体の前では太刀打ちできるものではない、バットの打撃は感じないしナイフで切り裂かれて血は出るものの直ぐに止まってしまう。それなりに苦戦するフリをして力加減を気をつける方が大変だった。結果的に会場にいた依頼人を含む全員を守りきり無事に交渉は終了、襲撃犯は全員警察に引き渡した。依頼料は後日振り込んでくれるとのことで依頼人とも別れて事務所へ帰ってくる、体はなんともないが殴られたり切りつけられた痕跡は残っていて、多少体力を使った関係で喉は渇きを覚えている。そうなれば欲しいものは決まっていて扉を開けて事務所へ入ると「ただいま。…フィリップ?」と相手を呼んで)
おかえり。……、
(滅多なことがなければ命には支障はないとは思うが心配が覗いて同行を持ち掛ける。だが相手は首を振って大丈夫と返した後耳打ちで先ほどの提案の話を出して来れば何も言えなくなってしまう。ここで素直に行かせるのが信頼だろうと自分を納得させると「ああ、いってらっしゃい」と軽く手を振りながら相手と依頼人を見送った。それから久しぶりに一人となって本を読んだり紅茶を入れたりしていたが何処となく落ち着かない。だが留守番を頼まれた手前、相手を探しに外に出掛けて行き違いになるのも気が引けて暗くなった外を頻繁に見ながら待っていた。それから暫くして階段を登ってくる音が聞こえて椅子から立ち上がる。扉の方に向かったタイミングで相手がドアを開けて顔を見ると出迎えの言葉を掛ける。あの日のように血塗れになっていないことに一旦安堵するように息を吐くが一瞬だけ相手の血の香りがして動きを一旦止めた。その元を辿るように相手の恰好をよくよく見てみればお気に入りのジャケットや靴に擦れた跡や血痕を発見してまた一瞬固まる。それから相手を見れば「怪我したのかい?」と少し低くなった声で問いかけて)
ただいま。…あー結局軽く襲撃受けちまってな。でも無事に依頼人は守れたし、プロみたいだって感心されちまって。おやっさんの知り合いだったみたいで鳴,海.探.偵.事.務.所はやっぱり頼りになるって褒められちまった。知り合いにも宣伝してくれるってよ
(事務所の扉をくくればすぐに相手が出迎えてくれて行きしなと同じく手を挙げるが相手は動きを止める、低い声で質問されれば一瞬動きを止めて目を逸らした。何となく怒っている空気を察しれば眷属になった日のことを思い出す、こちらを傷つけた誰かに怒っているのだろうか。結果軽い調子で依頼の顛末を説明する、実際あの時と違って人ならざる力を手に入れた今危ない場面はなかったのだから問題という問題は起きていない。スーツについた埃を軽く払うがナイフで切りつけられ裂けてしまった部分は流石にどうにも出来ない、買い替えが必要だがそれを補填できるようないい事もあった。依頼人との道中この事務所を選んだ理由がおやっさんだったことを知り、依頼後にはかなり感心されて同じ系統の依頼人が近いうちにやってくるという。そんなこともありかなり浮かれ調子だが、体の回復でも物理的にも血を失い体は潤いを欲していて「それでだな、フィリップ…喉乾いちまって、貰ってもいいか?」と期待の目を向け問いかけて)
…まあ人間相手ならそう簡単に危ない目に合うことはないだろうけど…、ふぅん…
(目ざとく相手の服の異変に気付いて質問すれば一瞬気まずそうに目がそらされる。依頼の顛末を説明されるが何処となく物事を軽く見ているように思えてそのまま視線をそらさないでいた。人間の頃から丈夫で滅多に大けがして帰ってこないことは知っている、だがその一方であの日の光景が脳裏を過ぎって楽観視している相手を信用しきれないでいる。自分に言い聞かせるようにもぽつりとつぶやいていたが対称的に相手はかなり浮かれた様子で褒められたことや師匠の名前があがったことに嬉しそうにしている。相手にとって大切な探偵という仕事にやりがいを持って笑顔なのは悪くないが知り合いにも宣伝する、つまり似たような荒事にかかわる依頼人がやってくる可能性を考えれば歓迎することはできず少し不服そうに相槌を打っていた。若干不機嫌になっていたが改めてというように期待を込めて吸血のお願いをされると求められたことに少し機嫌をよくして「良いよ」と返事をすれば吸いやすいようにとソファーに移動する。それから服を軽く緩めると相手を見て「好きなところから吸いたまえ」と身をゆだねて)
助かるぜフィリップ。…なら遠慮なく
(事の顛末をなるべく心配をかけないように、ついでに襲ってきた人間に怒らないように、軽い調子で話す、相手は何処が不服そうな声を出しているがおやっさんの縁でここに来てくれて成功を収めてしかもまた仕事が増えるだなんてかなり良い状況だ。相手も分かってくれるだろうと内心軽く考えつつ吸血をお願いすれば一転相手の表情は少し明るくなりソファへと移動する、吸血はするのもされるのも至福の時間で腹を満たす以上に相手と共に生きているのを強く実感する時間でもある。しかしそれはそれとして今は体を回復し腹を満たすために相手の血が欲しい。相手に緩く抱きつけば首元に顔を埋める、軽くそこへ擦り寄れば眷属となって敏感になった嗅覚が相手の香りを捕まえて思わず安堵の息を吐いた。同時に皮膚の下に流れる赤い血の香りさえするようで体が本能で震える、首筋に口を宛てがうと軽く甘噛みしてから人間の時には八重歯だった小さな牙でプツリと肌に穴を開けた。途端に甘美な香りが口から鼻腔へ突き抜けていく、脳を揺さぶる香りにクラりと酔ったよう思考が揺れれば溢れす血を取り込んでいく。時折唇と肌の間で高い音を響かせながら甘くて美味い血を夢中に飲んでいれば傷口はみるみる塞がっていって)
…ん、…随分とこれも慣れて来たね
(少々引っかかることはあるものの相手に求められて傷を癒やす吸血に異論はない。ソファーに移動して身を委ねると相手が軽く抱き着いてきてこちらも腕を回してくっつく。相手が顔を寄せて肌を髪が触れると擽ったそうに笑いつつ待っているとそこが軽く甘噛みされた。まだ小さな牙が肌を貫いて軽く痛みを発すれば小さく声をあげる。血が溢れる感覚がしてそれを唇で拭って取り込む姿を見れば人間から吸血鬼になったのだと再認識して、実感を口にしながら傷が癒えていくのが見えれば褒めるようにその頭を優しく撫でる。吸血鬼は吸血によってある程度傷を癒やしたり気力を取り戻すことができる、だが勿論傷が深くなるほど体力を消耗すればするほど必要になる時間や量、そして血を欲する渇望は強くなっていく。まだ変化したばかりの相手にはコントロールは難しいだろうと判断すれば「血は幾らでもあげることは出来るけど、まずは怪我をしないよう無茶するのは控えたまえ」と優しく撫で続けながら今後の動きについて釘を刺しておいて)
ちゃんとフィリップと同じってことだ。……分かった、気をつける。……ご馳走様
(こちらが軽く腕を回せば相手からも抱き締められる、吸血にあたって必要ない行為と言えばそうだがこんな幸せを感じる時間に相手の存在をもっと感じたくなるのは当たり前だろう。肌を食い破ると相手から小さく声があがる、この瞬間はいつも少々罪悪感を感じてしまう。相手が人間だったこちらの吸血を避けていたことも理解できるがそれ以上に口から摂取し心身を満たす相手の血は甘美でいてその美味さ以上に幸福だ。今は血への渇望が増していていつも以上に血が美味く感じる。そのまま頭を撫でられると心地良さは一気に増して肌の傍で笑いながら嬉しそうに同じ存在になったことを喜んで抱き着く腕に力を込め、より夢中になって相手の血を啜った。しかし頭を撫でられながら釘を刺されると一瞬動きを止める、相手はどうやら襲撃犯への怒りよりもこちらを心配してくれているらしい。大切な人から想われていることも嬉しくて頭を撫でられたまま軽く擦り寄り返事をする、これからは心配をかけないためにももっと上手く立ち回らなければ。やがて相手の血によって腹が満たされ満足気に一息ついたあと傷口を塞ぐために舌を這わせる、顔を上げて食事後の挨拶をしたあと額をコツンと合わせると「ありがとなフィリップ。俺、お前がいるからここに帰って来れる」と満たされた心地で礼を言って)
なら良い。…ちゃんと傷も塞がったみたいだね。ああ、ここで待ってるからちゃんと帰ってきてくれ
(相手を緩く抱きしめながら身を預けてその頭を優しく撫でる。吸うのに慣れてきた相手と同様にこちらも吸われる側にはだんだんと慣れてきた。自分の物が相手に取り込まれる幸せを味わいながらくっついていたがこれからの動きを含めた釘をさしてみると相手は一瞬動きを止める。相手と目が合って頷く返事と共に擦り寄られると漸くさっきまで抱いていた不安やモヤモヤが相手に届いて解けたような気がして安堵の息をつくとこちらかも擦り寄って大切な存在を確かめた。そのまま血を与えていてふわりとした浮遊感にも見た幸せを噛みしめていると十分に満たされたようで相手の牙が離れて出来た傷口を舐められる。穴がちゃんと塞がって綺麗になったが相手の方の傷もすっかり元に戻ったようだ。さっきまで血のついていた肩などを撫でて確かめているとこつんと額が合わさって視界いっぱいに相手の姿が映る。その状態で礼を言われると小さく笑って自分はここに居るのだと誓うように告げた。そのままぎゅっと抱き着いて初めてできた誰かが待ってくれている居場所を確かめていたがふと視界に入った時計は深夜の終わりに近い時刻を示していた。顔を上げて相手と目を合わせると「体はともかく精神的な部分も疲れているだろうし今日はもう寝ようか」と提案して)
お易い御用だ。…そうだな。今日はよく働いたし、今後忙しくなりそうだしな
(体も心も相手にくっつきながらの吸血で存分に満たされて額をくっつける、自分の居場所を感じていれば相手は小さく笑ってこちらの言葉も受け入れられるとまた幸せが広がった。まだ眷属の力に不安が残る部分はあるが相手が傍にいると思えば制御できるし、帰る場所があれば正しい道を選んでいくことができる。更に強く抱き締められればこちらからも腕に力を込めて擦り寄っていたがどうやらそろそろ日が差す時間がやって来るらしい。それは即ち夜の眷属が眠る時間だ。傷口は回復したが喧騒の疲れも癒しておきたい、それにきっと明日から忙しくなる。視界いっぱいの相手と目を合わせるとこちらから短く口付けを送る、このまま同じベッドで眠れればどんなに幸せだろうと心待ちにしながら相手におやすみを送って帰路へとついた。そして翌日、早速住処を移していこうとまずはクローゼットに眠っていた物品を箱に詰め込んで持ってきてガレージの片隅に置く。こうやって少しずつ荷物を持ってくればいずれ引越しも終わるだろう、本格的に二人で眠れるベッドを探さなければ。荷物を持ちながら事務所へやってくるのが二日ほど続いた後、日が落ちた事務所の扉を誰かが叩く、やって来たのはこの前の依頼人と同じく高級なスーツを着た男性だった。なんでもこの前襲ってきた組織に同じく狙われているらしい、極秘プロジェクトの内容が収められたケースごと守って欲しいという依頼だった。早速おやっさんが繋いだ縁がもたらした依頼に気合いは十分で、どこか浮かれ調子のまま「期待には応えねぇとな。行ってくるぜフィリップ」と自信を宿してまた事務所を出ていって)
……いってらっしゃい。
(二人で確かな幸せをかみしめる時間を過ごしていたが時計を見れば日が差す時間が近くてそろそろお互い眠った方がよさそうだ。寝ることを提案すれば相手から短い口づけが送られ、軽く微笑むとこちらからも軽いキスを送った。一緒に寝る提案を受けた後では別れるのは寂しがったがこれもあと数日だと思い相手を見送ってガレージへと戻った。それから相手が身の回りの物と一緒に出勤するようになりガレージの中に相手の私物が置かれるようになってから数日後。いつものようにのんびり過ごしていればまたスーツを着た男性がやってくる、その身なりに嫌な予感を覚えたが見事にそれは命中してこの前の依頼人の同業者だという。同じ組織に狙われていると聞けば眉をひそめ難色を示すものの隣の相手は気合十分で断る気などさらさらなさそうだった。何処か浮かれた様子に終始不機嫌な表情を見せつつもここで言って止まるような人物ではないのは承知の上だ。苦々しく見送りの言葉を向けるが去っていく足音にやはり嫌な予感がすれば周囲に紛れるための上着だけ引っ張ってきて尾行するために事務所を後にした。相手と一緒に居て探偵のテクニックなどはあらかた習得済みだ。気配に気づかれないようにしながら夜道に向かっていく相手と依頼人の後を追いかけて)
兵器、ですか……ッ、あいつら…!
(早速舞い込んだ新たな依頼にこちらは終始ご機嫌だったが何故か相手は不機嫌で見送りの言葉も何処か素っ気なかった。こちらを心配してのことなのだろうが事務所の名前が売れて悪いことなど無いだろう。それに相手の言うように人間相手ならば遅れを取ることなんてない、元々喧嘩慣れしているのなら尚更だ。眷属の力がある今この系統の依頼は最も得意とするものかもしれない。一番大事である襲撃犯の追求を疎かにしたまま依頼人と共に合流地点まで歩く、そこで車に乗ってホテルへと向かうそうだ。夜に紛れる術は吸血鬼の方が格段に上で相手が着いてきていることなど微塵も気付きはしなかった。歩きながら同じ組織に狙われているのが気掛かりだと話してみれば詳しくは言えないがとある組織が兵器転用できる技術を集めていると聞かされる。嫌な響きに眉を顰め歩いていれば目的の車が見えてきた。直後その車の影からあの仮面を付けた男達がゾロゾロと出てくる、後ろへさがろうとするが退路にも仮面をつけた男が出てきて囲まれてしまった。仮面の男が『またお前かよ』と悪態をつく中、依頼人を物陰に隠して前回を反省しジャケットを依頼人に預ける。ニヒルな笑みを浮かべ指でかかってこいと合図してやると男達が襲いかかってきた。相変わらずゴルフクラブやら包丁やら物騒なもの揃いだがこの体の前では意味もない。時折殴られたり刃物が掠めるものの大したダメージにはならず次々敵を沈めていたが依頼人へ向かおうとした一人をノしたところで不意をつかれて鉄パイプが頭にクリーンヒットした。ハットでは防御にならず皮膚が裂ける感覚がする、お気に入りの帽子に血がついたのにカッとなれば「なにすんだ!」と怒りのまま腕を振って敵を薙ぎ払った。すると敵の体はボールのように吹き飛んで数人を巻き込んでいくと「やべ、」と思わず口にして)
…っ、…翔太郎!
(夜に紛れるのは吸血鬼の特権で気配を消して相手の後を追う。依頼人との会話も断片的に聞こえてきて不穏な単語に眉を顰めた。やはり危険な事に関わってるのではないかと疑念を抱いていると相手が近付いていった車の影から仮面の男達がぞろぞろ出てくる。相手と依頼人を囲んでしまうが相手はそれを挑発して乱闘を始める。だが男達は素手ではなく武器や物騒なものを手にしていれば背筋が冷えた、時折相手に当たって血が溢れてその匂いが香るとぐらりと本能が刺激される。それでも相手が優勢で次々倒していっていて動くべきか悩んでいると目の前で鉄パイプを構えた男が振りかぶって相手の頭に直撃し、その光景に目を見開く。また相手を傷つけられた、漂った血の匂いに一気に理性は振り切れて相手の名前を叫びながら加速して接近する。その間にいる人間も簡単に薙ぎ倒して一掃してから相手のそばにやってくると酷く心配した表情で顔を覗き込み「…大丈夫かい?」と怪我の状態を確認して)
な、フィリップ?!お前なんでここに、
(軽々と人間を吹き飛ばしてしまいマズイと思えば動きを止めてしまう、それは周辺の敵も同じで目の前で起こったことが信じられないといった様子だった。ほぼ同時に聞き慣れた声が聞こえ敵を薙ぎ倒しながら近づいてくる影を見れば驚いて目を見開く、そこにいたのは事務所に置いてきたはずの恋人で思わず裏返った声が出た。傍までかけよってきた相手は周囲の喧騒など気にせずこちらを酷く心配していて、状況についていけず戸惑っていたが人間を軽々と吹き飛ばしてしまう相手の存在に仮面の男達は及び腰でついには撤退の号令がかかってその場から逃走してしまった。呆気にとられているうちに包囲網は解除され、『助かった、のかな?』という依頼人の言葉で正気に戻ると相手の両肩に手を置き一旦離れるように無言で促す。その後依頼人からは改めて礼を言われて車に乗り込むのを見送れば依頼料は明日にでも振り込むという言葉の後車は去っていった。暗い道で改めて二人になれば相手の方を振り返る、今度はこちらが不機嫌な顔を浮かべて「ンで来たんだよフィリップ!俺だけでも十分に対処できたのに…敵も逃げちまったから手掛かりも掴めなかっただろ。俺一人で十分だったのに…」と一人で依頼を完遂できなかったことに不満を覚えつつ少々八つ当たり気味に文句をつけて)
…どこが十分だったんだい? あんな強い一撃を受けて、人間だったらあっさり死んでてもおかしくなかった。力の制御も出来てなかったようだし少々君は自分を過信しすぎだ
(周りの男を片付け一直線に相手の元にやってくると様子を伺う。動けないほどの致命傷ではなさそうだが今も血が出ていて眉を下げながら相手を見ていた。周囲の男たちが撤収の号令をかけて逃走していくのも気にもせず相手を見ていたが両肩に手を置かれて離されると素直にそれに従った。そうしていると依頼人と相手の間で依頼のやり取りがされて依頼料の打ち合わせが終わった後車を見送る。そうして二人きりになればまた怪我の様子を確認しようとするがその前に相手は不機嫌そうな表情を浮かべてとげとげしい口調でこちらに不満をぶつけてくる。普段なら受け流せる内容ではあるが目の前で手を出された光景が脳裏に焼き付いていれば一人でもできると言い張る相手の態度が引っ掛かってしまう。そしてつい低い声で問うと声に感情が乗ってしまう。相手が受けた鉄パイプの攻撃は人間であれば死んでしまってもおかしくないものだった。なのに相手はそれでも十分だったという、己を大切にしない態度と八つ当たりな態度にますますといらだってしまえば先ほど男を投げ飛ばしてしまったことをあげて相手の実力にケチをつけて)
(/お世話になっております。とてもいいところなのですが今日から明日の夜にかけて返事が難しそうです…。また明日の深夜にはお返事できるはずでお待たせすることになるのですが把握のほどよろしくお願いいたします。)
…、……人間だったら、だろ?もう俺は人間じゃねぇんだからちょっとくらい大丈夫だ。力の制御は……気をつける。それよりも俺はお前が勝手に街に出て変な噂になる方が心配だ。さっきも簡単に人吹き飛ばしてたし、そういう意味じゃ人の事言えねぇじゃねぇか
(八つ当たりに近い状態で相手に向かって叫べばいつもより低い声が聞こえてきて思わず体を固めてしまう、僅かに滲む静かな怒りが凄みになってヒートアップした心にブレーキを掛けた。相手は相変わらずこちらを心配しているようだが今の状態では正直過保護だ、元々怪我ありきの職業なのだから眷属の体になった範疇で無事であれば何の問題もないだろう。実際頭を殴られ血は出ているが明日には治る傷だ。鉄パイプのせいで帽子が型崩れしてしまったことの方が重大で頭から外すと埃を払い形を整える、血が着いてしまっている以上はクリーニングに出さなければならないと自分よりも帽子を心配していた。言い訳に近い返事をしていたが力の制御という意味で言えば相手だって疎かになっていただろう、こちらより華奢な男が次々屈強な奴らを吹き飛ばしていったのだから。もう少し文句を言いたい気持ちもあるがあの仮面の男達が戻ってきても厄介で「とりあえず今日は帰ろうぜ」と話を切り上げて事務所へ向かって歩き出し)
(/お世話になっております。お返事について承知いたしました。いつも通り背後優先ですしこちらも土日は相変わらずのペースですのでお気になさらず!検索様のお返事はいつでも嬉しいものですが、検索様が無理されるのも心苦しいのでお返事はゆっくり明日でも大丈夫ですので!いつも通りのんびりお待ちしております!/こちら蹴りで大丈夫です)
ちょっとくらいでは、…これくらいは別にどうにでも出来る。…ああ、
(明らかに攻撃を受けたはずなのに相手はそれでも一人で何とか出来たとへらっとしている。元より自身をおざなりにする傾向にあったが眷属になったことで自分の頑丈さを過信して盾にしているように見えれば相手の言葉端が引っかかってまた声を上げてしまう。自身ではなく帽子を手に取り汚れを気にする素振りを見れば頭の怪我を何とも思っていない姿に初めて眷属にしたことを後悔して眉を顰めていた。力の制御については思う所があるのか多少響いたようだがこちらにまで指摘が飛んでくると少々拗ねたように大丈夫だと返す。普段は街に出る事が無いのだから噂になった所ですぐに立ち消えるし最悪暗示でも掛ければいい。そうして静かな言い合いをしていたが相手が話を切り上げて一人で歩き出してしまうと自分が冷静でないことに気付き、軽く一呼吸置いてから短く返事をしてその横に並んだ。普段よりも並ぶ距離が開いていて言葉少なのまま事務所に戻ってきて「ただいま」とだけ言って中に入る。無言で片付けや整理をしていれば自然と相手の頭の傷が視界に入る、この前と同じく吸血すれば回復するだろうがそしたらまた無理をするのではないかと思えばこちらから言い出せず見ない振りをして紅茶を入れに行き)
(/お返事不要とありましたがお言葉に甘えて今日に返信させて頂きました。こうして無理せずに関係を続けていられるのも探偵様の優しさと寛容さ、そしてお互いのペースという言葉を毎回使って下さるからこそだと思いますので有難い限りです。背後の都合で少しペースの落ちる日も出てくると思いますが探偵様とはずっとやり取りしていきたいと考えていますのでこれからもよろしくお願いします。/こちら返信不要です)
ただいま。……フィリップ。…次はもう怪我しねぇようにするから、その……血もらっても、いいか?
(今回はこちらも下手を打ったがそれを言うなら相手も同じだ、何かあっても吸血鬼の能力でどうとでもできるというのなら眷属の力でどうにかなっているうちはこちらも同じはずで「人の事言えねぇじゃねぇか」とボソリと呟いていた。そのままいつもより距離を保ったまま事務所へと帰ってくるとハットを脱いでクリーニングに出すため金具ではなくテーブルの上にそれを置く。ちらりと相手を横目で見る、どうやらキッチンに向かったらしく紅茶の用意をしているようだ。きっとこちらが何を欲しているかは分かっての行動だろう。普段の食事だって相手の血は美味いものだか前回経験した血を失って心身共に疲れがある時に飲む血は更に美味い。今は前回と同じくらいの出血だが頭を殴られてそちらに体力を使った分喉の渇きは今回の方が大きい。二人きりの空間になって空腹の体は敏感に相手の匂いを嗅ぎ分けて食欲を煽ってくる。だがこのままではきっと血は分けて貰えないだろう、今日のことを間違っているとは思わないが確かに頭に一発もらってしまったのは油断があったかもしれない。何処かはっきりしない足取りで相手の元へ向かう、そしてカウンター越しに相手の正面に立つと伺うような視線で相手の心配が薄くなるように次回への反省を口にしながら血が欲しいと申し出て)
……、…仕方ないな。 またこうやって無茶をして怪我をするようなら数日吸血禁止だ。…ほら、
(相手から逃げるように、また自分を落ち着かせるためにキッチンに向かう。お湯を沸かして、少し止まってから二つのカップを並べて紅茶を入れていけば上品な香りが広がっていった。そうしているとふらふらとした足取りで相手がこちらに近づいてきて正面に立たれると視線を向ける。そのまま無言で見つめていると相手から次への反省が述べられて暫しその瞳を見つめた。人の性質はそう変わる物ではない、また同じ状況になれば同じ行動を取ってしまう懸念はあるが控えめに伺うような視線を向けられ続けていれば強く拒否し続けられる訳ではなく深く溜息をついて準備の手を一旦止める。これ以上意地を張ったって良いことは無いだろう。軽く首元を解きながら次回同じことが起きた時の罰を言い渡して釘を刺しながらも今日の吸血を許可すると相手の元に近づいた。誘うように首筋を晒す状態になるとちらりと相手を見て)
……気をつける。……、…
(二人の周囲には相手がいれた紅茶の匂いが漂っている、いれたてで香り高いが空腹の体はそんな中でも相手の匂いを嗅ぎ分けてしまった。一度血を欲してしまえばこれ程までに吸血欲を掻き立てられるとは思わず相手との距離が出来ているのを分かっていても血を求めずにはいられなかった。暫く見つめていれば相手は折れたようで条件付きで吸血を許された。素肌が晒された途端にクラりと思考が揺さぶられて逸る気持ちのまま足速に近づいて両肩を掴むと我慢も効かずに首筋に噛み付く。途端に甘美な味が心身を満たして渇きを潤していく、噛みつきながら無意識に吐息をついた。暫く血を飲んでいれば吸血衝動は落ち着いて同時にポケットの中にある端末のことを思い出して相手に見えない所で表情を曇らせる。ハットを片付ける時に端末が着信を知らせてちらりと内容を確認したが、それは明日の護衛の依頼だったのだ。この状態で相手に仕事が入ったことを言えるはずもない、しかし血だけは求めてしまっていることに罪悪感を感じればゆっくりと口を離して唾液で傷口を塞いだ。相手との約束は怪我をしないこと、それだけならば依頼に行ったって守れるはずだ。心ではそう言い訳しても相手と目を合わせられず「ありがとよ、助かった」と短く礼を言って直ぐに離れる、その後紅茶を飲む時間はあったが帰り道と同じくどことなくいつもより距離を開けて結局はいつもの距離を取り戻せないまま帰宅することになった。そして翌日、まだ相手が寝ているであろう時間に『一件仕事終わらせてから事務所に行く』とメッセージを入れてから家から直接依頼人の元へと向かった。そして真夜中も過ぎた頃、なるべく足音を立てないように、しかし荒い呼吸は止められないまま事務所へとやってくる。音を立てないように、すなわち相手に気づかれないようにそっと扉を開ける。事務所に入ってきた探偵は肩に深い刃物傷を受けてシャツを派手に赤色に染めていた。奇しくも眷属となった日と同じ怪我をしているがあの日より痛みは遥かにマシだった。とにかくこの格好を相手に見られないようにと事務所の奥へ移動すると着替えを探し始めて)
……っ、…翔太郎、? なんだい、それは
(相手に吸血を許して身を差し出すとこれまでよりも勢いよく首筋に噛みつかれる。痛みに思わず声をあげるも相手は気にすることなく血を啜っていて普段よりも本能が強いことに妙な焦りを覚えていた。吸血が終わって傷口がふさがれるも視線が合わずに離れてしまう、それから紅茶を飲む間も妙な距離感が出来ていて上手く言葉も交わせなかった。そしてゆっくり休みたいから、といつもより早い時間で相手が事務所を後にすればそれを止めることも出来ず一人残された。相手と出会って、眷属になって初めて妙な焦りや不安がずっと胸を燻っているがどうしていいか分からず、またずっと距離をとって過ごしていたせいで相手の自宅の場所も知らなくてどうすることも出来ない。朝が近づいてきても眠れず狭い棺の中に入って無理やり瞼を瞑って時間を過ごし、数時間たってやっと眠りに落ちた。そんな状態ではいつもより起きるのが遅くなってぼんやりとした中でガレージ内に起きてくる。時計を確認していつもなら相手が起こしに来る時間をとっくに過ぎていることに違和感を持ち、いつの日か渡された端末で相手からのメッセージを見て嫌な予感を覚えた。身支度を整える暇もなく事務所スペースに向かおうと階段に近づいたところで嫌な血の匂いを感じてしまう。昨日も感じたそれに背筋が冷たくなると飛んで階段をすっ飛ばして事務所スペースに入る、そこには更に血の匂いと相手の匂いは濃くなって恐る恐るそのもとに向かう。そこには肩に深い切り傷が入り血を流している、あの時見た光景そのままの相手がいて思考も息もすべてが止まった。目の前が一気に真っ赤になって、なのに手先や体が冷たくなっていく。昨日あんなにもう怪我しないといったのに。その姿を認めたくなくて震える声で名前を呼ぶ、しなくてはいけないことも衝動もごちゃ混ぜになって頭が真っ白になるがまた仕事に行ったことやこんな状態で帰ってきても自分に声をかけずに隠ぺいしようとしたころを理解してしまえば低く冷たい声で問いかけていて)
あ、……いや……昨日、撤退していった奴らとまたカチあっちまって。昨日の俺達見て武装を強化してきやがったんだ。鉄パイプとか釘バットとか……サバイバルナイフとか…まぁ、シャツは派手に汚れちまったが体は眷属になってたおかげでこの通り問題ねぇよ。依頼も無事終わったし
(引越しの為少しずつ荷物を事務所に移動させていたがまさか仕事着一式を移動させたのがアダになるとは思わなかった。なんとか相手に見つかる前にデスク脇に置かれたストック分から隠蔽用のシャツを取り出そうとする、それを手に取った瞬間に気配を感じて振り返れば相手が傍に立っていて思わず顔が引き攣った。約束のためになんとしても隠し通さなければならなかったのに、よりにも寄ってあの時と同じ傷を相手に見せたくなかったのに。相手がこちらの名前を呼ぶがその声は震えていて様々な感情が入り交じっているのが良く分かる、その中には怒りも当然あるだろう。低い声で問いかけられればその色はより濃くなって息を詰まらせた。慌てて立ち上がって無意識に取り出したシャツを後ろ手に持つ。自分が相手の信頼を裏切っていることはよく分かっている、しかしおやっさんの縁から繋いだこの依頼を断りたくない。その願いと、もっと打算的な、相手の血が欲しいという欲望が相まって口から出たのはとぼけながらの言い訳だった。大量に血を失ってしまって昨日よりも吸血欲が上がっている、相手を視界に納めいつもより敏感になった嗅覚が相手の匂いを捕らえて血が欲しいと体が掻き立てられる。その衝動はなんとか相手を説得して血を貰わなければという焦りに変換されて、返事の隙を作らぬよう立て続けに喋り続けた。昨日よりも体はなんともないのだと必死にアピールして、最後には「血を飲めば全部治っちまうしな」と本音を滲ませる言葉を付け加えて)
……ッ…、そういう話じゃなくて、人間だろうと眷属だろうと関係なく僕は君に傷ついて欲しくないっていうのがどうして分からないんだい!それとも僕の意見なんて聞くに値しないと言いたいのかい
(対峙した相手の顔は分かりやすく引き攣っていて立ち上がったと思えば何かを後ろに隠した。やましい事であることは認識しているようで冷たい目線を向けていれば弁解を始める。だがどう考えても偶然あの男達に遭遇する訳でもなく、あのメッセージの仕事は昨日の依頼の続きなのだろう。そして自分には一方的な報告だけでまた無茶をした、つまり昨日の時点で約束など守る気はなかったのだろう。溢れ出ている血の匂いを感じ取って本能が疼いているはずなのにそれ以上に裏切られた絶望に胸を貫かれて上手く息ができない。今まで他人と太い一線を引いてきて良くも悪くも深く関わることがなかった分胸の底がえぐられるような感覚に耐えられそうになかった。こちらに口を挟ませないようなマシンガントークの後吸血をあてにする発言が聞こえるとぷつりと何かが音を立ててちぎれた。湧き上がる感情を言葉としてぶつけるように叫び、冷たく鋭い視線を送る。相手を大切にしたいのに相手自身がそれを蔑ろにする歯がゆさと苛立ちに支配されて八つ当たりのように言葉を重ねる。感情のままであることに気付いて呼吸を挟むがそれでも収まらず睨むように見ると「…今日は血は吸わせない、僕は君の回復の為の道具でもないし僕のことをどうでも良いと思うならお願いと聞く必要ないだろう?」と強い口調で宣言して)
それは……ッ!ンでそうなるんだよ!!大体俺はこれくらいの怪我大丈夫だって前々から言ってんだろ!お前の気持ちはありがてぇけど心配しすぎなんだよ!…おやっさんが繋いでくれた縁で護衛の仕事が立て続けに来てる。今の俺ならこの仕事を全部受けられる!それの何が悪いってんだよ!風.都のために今持ってる力を全部使ってるだけだろ!
(この怪我を納得してもらうために必死で言い訳を重ねるが相手に響くことはなくてその声はさらに低く、目線は鋭くなっていく。こちらを心配する叫びには心が揺さぶられて目線が揺らいだが、直後吸血を拒否されると目を見開いて怒りを滲ませた声で叫んだ。相手の気持ちも理解は出来る、何より自分が相手に傷ついて欲しくない。しかしこの街の探偵である以上誰かが泣いているのを放っておくわけにはいかないのだ。今それを実現する力を持つ以上、全力をかけて依頼を遂行するのがこの街の探偵の責務だろう。相手の想いも回復要員扱いしてしまっている自覚もきっちりと持っているのに吸血への渇望のせいで怒りが上回ってしまって上手く感情をコントロールできない、多少の痛みを我慢すれば舞い込んだ依頼を全て解決できるのにそれを止めようとする相手が今は探偵業の障害のように思えた。相手に詰め寄って顔を付き合わせる、その瞳は怒りと、相手の血を求める人外の色を宿していて「明日も護衛頼まれてんだ。きっと今日より派手な乱闘になる。 あの仮面の集団を潰すためにも俺は行かなきゃならねぇんだ。だから、お前の血がなきゃ困る」と威圧するようにこちらも低い声を出しながら再び吸血を要求して)
君の身を犠牲にしなければ達成できない時点でまともな依頼ではないし、そんな仕事する必要ないだろう。…ならば尚更協力なんて出来ないし勿論血だって飲ませない。それに君は一回、その傷の重みを知るべきだ
(感情のままに低く鋭い目つきで言葉をぶつければ目線が揺らぐが吸血の拒否を突き付けると途端怒りの声があがる。今までため込んできた分を爆発させるように怒りをぶつけられるがどれも言い訳にしか聞こえなくて冷めた目を向ける。相手が探偵という仕事や想いを大切にしているからこそその意志を尊重してきたが極限を言えば特別な人以外の人間がどうなろうと微塵も興味がない身としてはそんな妙なこだわりのために相手が傷つくことが許せなかった。だからこそ昂った頭では正常な判断が出来なくて理解してくれない相手に対してわざと棘のある言い方で探偵の仕事をけなしてしまう。怒りと渇望に染まった人外の瞳で詰め寄ってきて威圧するように求めらえるが更に危ない場所に向かうと分かればもちろん承諾することなんかできず低く硬くなった声で拒絶の返事を返す。こんな目に合っているのに明日も同じ依頼を受けようとしているのもそうだが何よりこの状況でも自分に協力を持ち掛けたり助けを求める姿勢がないのが一番腹立たしくて体の芯が冷えていくようだった。相手の様子を見るに眷属といえど今日受けた傷は深いのだろう、すぐに回復するからこそまた無茶を重ねるのではと思考が及ぶと痛々しい傷からは視線を逸らし目の前にいる相手の肩に押して軽く突き放してその横を通り過ぎる。相手が動けるようになる前に事態を解決してしまえばもう巻き込まれないで済む、ちらりと外を見てまだ夜明けが来ていないことを確認すれば「ちょっと出てくる、今日は帰らないかもしれない」とだけ告げて玄関に向かって)
ッ!!…依頼人は助けを求めて鳴.海.探,偵.事.務.所に来てんだ!まともだとか必要ないとか、お前が判断すんなよ!この事務所の探偵じゃねぇお前が口出してんじゃねぇ!!……勝手にしろ。俺はやるべきことをやるだけだ
(相手がこちらの言う事に聞く耳を持たない事と喉の渇きが怒りをさらに加速させて胸に溜まったものを吐き出すが相手の瞳は相変わらず冷たく意見を変えるつもりは無いようだ。それにさらに苛立ちを募らせていたが相手が探偵の仕事を、そして頼ってきた依頼人を貶すようなことを言えば頭の中でブチりと糸が切れる音が響く。変わらず吸血を拒否されれば怒りはますます増して肩を押されたところで我慢の限界を超えた。振り返りながら怒りのままに声を張り上げてはっきりと相手と探偵との間に線を引いた。そもそもは相手を助け出した時に自分のせいでおやっさんを亡くしてしまったのだ、そのおやっさんの意思を自分が継がなければ誰がこの街の涙を拭うというのだ。そのために己を犠牲にするなんて、当たり前だろう。勝手に出ていこうとする相手から視線を逸らし冷たい声で素っ気なく返事をすると握りしめたままのシャツを手に事務所の奥へ引っ込んでいく。相手が外へ出たタイミングでシャツを脱ぐと体についたままの血を軽く拭ってから新たなシャツを着た。相手の匂いが残る事務所では吸血衝動が刺激されて喉が異様に渇く、水をがぶ飲みするがそれで癒されるわけもなく思わず悪態をついた。そのタイミングで端末が着信を知らせる、電話に出てみれば明日約束していた依頼人で焦った声で『マズイんだ翔太郎くん。奴らに囲まれそうだ』と聞こえてきて肝が冷える。明日研究所から荷物を運ぶのを護衛する予定だったがその前に研究所へ直接あの仮面の男達が攻めてきたようだ。直ぐに向かうことを伝えれば事務所を飛び出しバイクに乗って現場へ向かう、研究所につけば依頼人が男達に囲まれているところだった。バイクのままその場へ突っ込むと仮面の男を薙ぎ倒していく、相変わらず物騒な装備が多いが多少攻撃を受けながらでも難なく制圧できる。しかし今回は数だけは多く既に依頼人が囲まれていたのも相まって『動くな』という声が響く、そちらに目を向ければ依頼人がガタイのいい男に捕まり拳銃を突きつけられていた。怯える依頼人の顔を見れば指先さえ動かさず男を睨むことしか出来ない。直後派手な発砲音が響いて胸板に激しい痛みが走る、撃たれたと認識出来たのは数秒で直ぐに意識は暗転した。ガタイのいい男は周りに指示を出すと依頼人と探偵の体を無理やり車に押し込んで何処かへと連れ去っていって)
……、…宜しく頼むよ
(苛立ちと感情のままに外出する旨を伝えると相手からはそっけなく冷たい声が返される。勢いよくドアを閉めたせいで大きな音が鳴るがそれだけで気分は晴れずに夜の街に飛び出した。最近ではこうして夜に一人で外に出る機会は少ない、その原因を思えばまた感情が乱れそうになるが小さく息を吐いて気持ちを落ち着かせた。勢いで出てきたものの相手の依頼人のことや仮面の男達のことはほとんど知らない、相手の探偵業にあまり関わっていないことを痛感させられながら更に闇に紛れる方に進む。まずは情報を集める手を増やそうといつもの合図で寄ってきた蝙蝠とカラスに手のひらを引っ掻いて作った傷から血を与えて一時的な眷属にする、こちらが分かっている情報を伝えて引っかかる物を探すように使役の令を送れば一斉に空に飛び立っていった。それから街中をあてもなく探し回ってみるもめぼしい情報は得られない。夜風に当たっていれば少しずつ頭も冷えてきて相手に酷いことを言ったかもしれないと不安が過ぎる、だが今更戻るにしても上手く話せる気がしない。落ち着かない心境で綺麗な満月の空を見上げているとぐらりと一気に波の様な気持ち悪さと喪失感が襲ってきて咄嗟に柱を支えにする、初めて感じる強烈な不快感に眉を顰めていれば直後使役していた蝙蝠から妙な音の察知報告があがる。偶然にしては出来過ぎたタイミングにいても経っても居られずにまだ街の中でありながら飛び上がりその場所に向かう。その道中、下ですれ違った車から一瞬だけ見知った匂いが香る。それがついさっき濃く嗅いだ血の匂いだと気付けば背筋は冷え切って方向転換してその車の追跡を始めて)
……、……っ……どこだ、ここ?
(海辺の倉庫街を何度も曲がった先、ただの輸入倉庫のフリをしたその中には仮面の男がチラホラと歩いている。本命はその更に地下で仮面の男達が息を殺してひしめき合っていた。その中の一室、捕らえた人間を逃がさないため広い施設の一番奥に備えられたその部屋には人間を痛めつける為の道具だけが備わっていた。最初に感じたのは痛みで意識を無理やり叩き起されると目を開ける、朦朧とした視界がゆっくりと視界を結んで周囲を見回した。認識できたのはどうやら何処か暗い部屋の一室らしいということだけ、体を動かそうとするが直後ミシリと音が響いて自分が椅子にロープで括り付けられていることに気が付いた。撃たれた箇所は未だにじわりと痛い、いつもならば傷が塞がっていてもおかしくないのを考えればきっと体内の血が足りないのだろう。状況が分からず思わず呟きを零せば『おいマジかよこいつ本当に生きてやがる』と声が聞こえてくる、声の方に顔を向ければそこには数人の仮面の男と同じく椅子に括り付けられた依頼人の姿があった。依頼人は怯えきっていてなぐられたのか頬が腫れ上がっている、その瞬間に意識が覚醒しぶわりと怒りが湧き上がるが同時に異常な喉の渇きを覚えた。依頼人に危害を加えられたことに怒らなければならないのにそれ以上に体が血を渇望している。ここが何処か分からないがこちらがしくじって依頼人を危険に晒しているのだ、一刻も早く依頼人を救わなければならないのに脳内は甘美な血が欲しいという欲求で塗り潰されそうになって瞳が揺れる。そんなこちらの様子など気にもせず男達はこちらにナイフを向けると『お前にも聞いてやる。例の装置は何処だ』と覚えのない事を聞かれ、しかし答える余裕もなくただ己の吸血衝動を押さえつけるのに必死で)
……ここだ。 …、…
(かすかに抱いた違和感と勘のようなものを元に一台の車を追いかける。流石に吸血鬼の力を持ってしても車の速度には及ばないが大体の方角を掴めばあとはそれを辿るだけだ。そうしてたどり着いたのは海辺の倉庫でやけに辺りが静かなのもあって様子を伺いながら気配を探る。その中で特に仮面の男か出入りしたり何処かに連絡を取りあっている倉庫を見付ける。そして多くの人間の匂いと共に微かにだが相手の血の匂いを感じて眉を顰める。恐らく相手はこの中だ。吸血鬼としてあまり目立った行動はしたくないのだが特別な存在に何かするつもりなら取り戻すまでだ。正面から入ろうとすれば当然仮面の男に引き止められるが持ち前の力で逆に腕を取って押さえ込み床に沈める。そうしてあっという間に見張りを何とかしてしまうと倉庫の中に侵入する。まだ息のあった者から連絡が入ったのか既に臨戦態勢の男に出迎えられ「ちょっと返して欲しい者があるから通してくれないかい」と聞いてみるも当然簡単に通してくれそうにない。人数差で詰められないよう近付いてきた男の体勢を崩しそのまま体を集団の中に投げ飛ばす。冷静さに欠いているせいか力の制御が出来ず人体から鳴ってはいけない音と壁から轟音が建物全体に響いた。人ならざる能力と怪力をふるいながら男達を薙ぎ倒していき、血をたどって相手を探して)
……っ、……ぐ……ガ……ッ!よこせッ!!
(依頼人を傷つけられた怒りと早くこの場から脱出しなければという思考の合間に血が欲しいという欲求が割り込んできて体を支配しようとする。そんな状態で仮面の男達の質問にまともに答えられるはずもなく歯を食いしばっていれば男はこちらに向けていたナイフを依頼人の首元に突きつけた。直後地下全体に地響きのようなものが鳴り響く、尋常ではない音に男は『なんだっ?!』と動揺して狭い部屋を見回した。その瞬間に、ナイフの切っ先が依頼人の首を僅かに掠めた。途端に広がる血の匂いに目をまるまると開く、焦点があっているのか分からない瞳は依頼人の首へ吸い寄せられて赤い一筋が見えた時には理性が飛んだ。叫ぶと同時に縛り付けられていた椅子ごと破壊して立ち上がり拘束を解く、男が驚愕する間に人のスピードを越えて依頼人の肩を捕らえると口を大きく開けた。しかしその瞬間に、今手を添えている体がいつもとは違う人物であると、フィリップではないことに気がつく。おかげで喉を食い破る勢いは衰えて牙を立てて噛み付くに留まった。依頼人は悲鳴を上げて気絶してしまう、溢れ出た血を吸い上げたが直後顔を歪めた。吐きそうになるくらいの腐卵臭に嗚咽しそうになるほどの舌触りの悪さ、極めつけに雑味を詰め込んだような味に思わずむせ込み血を吐き出す。口を乱暴に拭うと「ンだよこれ」と悪態をつき余りの不味さに怒りさえ湧いてきた。今すぐに血が、この渇きを満たす血が、最高に美味い血が、必要なのに。渇きと怒りで頭がどうにかなりそうだ、「フィリップのが」と口にするがここに相手はいない。こちらの隙をついたつもりか男が襲いかかってくるが軽く腕を振っただけで吹っ飛んでいってしまう。腰を抜かしたもう一人の男のナイフを奪って腕を無理やり掴んでナイフで切りつける、そこから出た血を口にしてみるが「くそッ!不味すぎんだよ!」と八つ当たりを言い放って拳を浴びせ意識を奪った。今すぐに血が必要だ、朦朧としながら扉を蹴り飛ばして破壊すると「血が」とうわ言のように呟き、こちらに向かってきた男を殴りつけて意識を奪う。また歩き出して「フィリップ」と無意識に口にするが渇きが癒されることはなく、またこちらを捕らえようとしてきた男の腕を捻って噛み付いてみるが食えたものではなくて「なんでどいつもこいつも不味いんだよ!!」と怒鳴り散らして男を壁に叩き付けた。相手が同じタイミングで侵入し騒動になっているのを知らないまま「フィリップ、」とまた無意識のうちに呟く。意識した行為ではなかったが相手の名前を呟くと僅かに本能を押さえつけられて襲いかかる男をギリギリ殺さずに済んでいた。適当な人間の血を口にしては不味くてえずきながら吐き出すのを繰り返して口が真っ赤に染まった頃、傷口が癒えぬまま動いたせいか渇きは限界を超えて意識さえ混濁してくる。騒動を聞きつけたのかあの時のガタイがいい男がやって来て怒りのままこちらへと襲いかかってくるが制御の効かない体は男を簡単に地面へと捻り倒した。男の額から血が流れる、ドブのような匂いなのに血が欲しくて堪らない。「フィリップ…!」とまた無意識に呟くが本能は限界を迎えてナイフを振りかざせば「もうお前でいい!俺はっ!血がッ!血がッあ゛ああああッ!!」と半狂乱のままナイフを振り下ろして)
…ねぇ、翔太郎何処?…っ、この匂い……、っ、しょう、たろう?
(急がなくてはという焦りとこんなところに相手が居る不快感と立ち塞がってくる怒りで感情は入り乱れているのに妙に思考は冷静で人外の力で男たちを倒していく。辺りに血が漂って暫く血を吸えてない体は渇きを訴えるがもう他所で吸血をするつもりはなくて足でその体を端に避けた。ある程度片づけたところでまだ息のあるリーダーっぽい人物のもとにしゃがみこんで低い声で居場所を尋ねるとどこか怯えたように奥の扉を指さす。衣類を整えてからその扉に向かい、地下への階段を下りていけば更に濃くなった血の匂いと悲鳴にも似た叫び声が聞こえてきて嫌な予感に足を急ぐ。進んでいけば血を流しながら地面に倒れうめき声をあげている仮面の男の姿があって目を見開く、まるで怪物に襲われたような姿に事務所を出る前の必死に血を欲しがる相手の姿が重なって背筋が冷える。急いでその通路を進んでいけば叫び声と大きな物音の発生源に近づいていき、施錠された扉を足で思いっきり蹴り飛ばして穴をあければそこに人間に襲いこの状況を生み出した怪物がいて目を見開く。見知った顔に服、そして匂いも全部見知ったものなのに凄惨すぎる現場に目の前の人物が一瞬相手だと理解出来なかった。瞳を揺らし伺うように名前を口にしていたが相手がきらり光るもの、刃物を持って狂乱しながら振り下ろそうとしていればとっさに体が動いて全ての力をもってして相手の元に駆け寄る。人間はどうなっていいが相手の手は汚したくない、ただその一心で人間と相手の相手に身を滑り込ませると「翔太郎!!」と叫んだ。だが勢いを持った腕の動きは簡単に止まらず振り下ろされた刃物がこちらの肩に命中して深く突き刺さる。うめき声と悲鳴に似た声が喉から絞り出されて途端血があふれ出すが相手のことを止めたくてふらついた体を踏み出して相手のそばに寄ればまた「っ翔太郎」と名前を呼びながら制止させるように相手に抱き着いて)
…っ!!……え、…フィリップ?……あ、あぁああっ!
(血が、血が、今すぐこの喉を渇きを満たす血が、失った分を癒す甘美の味が必要だ。目の前にある血はドブの匂いしかしないがもう背に腹はかえられない、不快な血への怒りと吸血衝動が綯い交ぜになって体が突き動かされるままにナイフを振り下ろした。手から刃物が肉を引き裂く感触が伝わる、しかし直後芳醇で甘美な香りを嗅ぎ取れば動きを止めた。渇望した美味い血の香りがして飲みもしていないのに酔ったように頭を揺さぶるが直後体を抱き締められて愛しい声が聞こえてくれば間の抜けた声が出た。柔らかな感触とここに居ても良いと思える安心感、何よりもずっと離れたくないと思う優しい匂い、あれだけ体を支配していた本能が抜け落ちて確かめるようにその名前を呼ぶ。傍にある体を掴めば漸く相手がいるのだと気が付いた。しかし同時に今ナイフを突き立てた体が、溢れ出る血が、相手のものであると認識すれば体がぐちゃぐちゃに引き裂かれた気がして悲痛な叫び声をあげる。今自分がナイフを突き立てたのは、傷つけたのは、何よりも大切な恋人だったのだから。こちらを抱き締める体はいつもより力無くこちらからも腕を回すと「フィリップ!!」と叫ぶ、あれだけ血を欲していたのに香り立つ相手の血の誘惑よりも相手への気持ちが遥かに上回っていた。深く突き刺さったナイフは血を絶えず溢れ出させて今も赤が相手の服に広がっていっている、頑丈だと思っていた相手がこれほど弱っているのは見た事かなくて肝が冷えて焦りと自分が相手を傷つけたのだという絶望とで息が出来なかった。加減も分からず自分の服を引きちぎると肌を露出させる、そこには銃弾が貫通した跡があって未だに完治せず血が滲んでいる。相手を強く抱き寄せて傷口へ近づけると「フィリップ!早く飲め!俺のせいで…お前が死んじまう!早くッ!!」となんとか相手を回復させようとして)
翔太郎、…大丈夫、これくらいじゃ死んだりはしないよ。…ん、
(なんとかすべての力を使い人間と相手の間に割り込むと振り下ろされたナイフを自分の体で受け止める。ふらりとしながらその身体を抱きしめて名前を呼ぶと意識が戻ったかのように身体の動きが止まって目を合わせた。こちらの存在を認識した途端悲痛な叫び声をあげて先ほどとは違う乱れ方をすると腕に力を込めてもう一度名前を呼び何とか落ち着かせようと試みる。刺された箇所はじくじくと痛み絶えず血を溢れさせていてくっついている二人の服を赤く染めていく、パニックになっている相手の背中を擦って落ち着かせていると力いっぱいに引き寄せられ胸元に顔が近づく。そこにはさっきまで無かった貫通した穴があって何があったかを想像すれば顔を顰めた。冷静な頭で体の方は大丈夫だと告げるも目の前の傷から溢れる血の匂いが、そして痛々しく残った傷に目が奪われると本能のまま口を近づける。傷口に唇を当て軽く吸い付くとこんな状況でも甘美で力が満ち溢れるような特別な味が口に広がって至福の息が零れる。全身が喜び指先まで広がっていくような感覚を覚えながら血を啜れば肩口の傷は少し癒えて流れる血の勢いも収まっていく。完全に治りきらない内に離れてその傷に舌を這わせて穴や傷を塞ぐ。周囲の血も舐め取って綺麗にすると再度相手と目を合わせて「苦しい目に合わせてすまない、飲んでいいよ」とまだ血の流れ出している肩の方に顔を抱き寄せて)
フィリップ……、……俺……すまねぇ…俺のせいで…俺が、お前を…ごめん……俺が、しくじったから……ごめん…俺が、お前を…傷つけた……こんなに、させた…本当にすまねぇ…俺のせいだ…
(目の前で溢れる相手の血とふらつく体を前に相手が死んでしまうかもしれないと焦燥に駆られて必死で自分の血を与えようとする。相手が**ば自分も同じ運命であるだなんて、そんな話は頭から外れてただ相手を生かすために必死だった。背中を擦られ大丈夫だと言われるも自分が相手を殺してしまうかもしれないという絶望は拭えなくて傷口から吸血する相手をジッと見つめていた。安堵するような吐息が肌を掠めればそこで初めて相手の無事が見えて息をつく。しかし相手はまだ傷が癒えきっていないのに口を離して困惑するように名前を呼ぶ、傷口の周りまで綺麗にされて目が合えば謝罪と共に吸血が許されて目を見開くと瞳を揺らした。そのまま傷口の方に抱き寄せられたがそこで固まってしまう。傷口からは何者にも変え難い甘美な香りが漂ってくる、他の人間の耐え難い匂いとは違う本能を掻き立てるような美味そうな匂い。しかしその傷口は何よりも大切な存在を傷つけた痕で相手にナイフを突き立てた何よりの証拠だった。少しずつ呼吸が浅く早くなっていく、これ以上その傷口を見ていられなくて自らの手のひらに唾液を塗りつけ傷口に塗り込みそこを塞いだ。そのまま相手を抱き締めるが上手く力が入らない、血への渇望と喉の痛みが限界を超えて意識が朦朧としてくる。その状態では言わなければならない謝罪も覚束無くて途切れ途切れに言葉を紡ぐ、少しずつ体の力も失われて凭れかかるようになりながら「もう、フィリップを傷つけたくない…俺また、見境なくなるかもしんねぇ」と弱々しく口にしながら肩に顔を埋めていて)
…翔太郎、大丈夫だよ。吸血鬼の体が頑丈なのは君がよくわかっているだろう? それに僕たちにとって吸血は傷つけることじゃなくてお互いを確かめ合う行為だ。
(あふれ出る血を貰うと幾らか傷や痛みもマシになって傷口を閉じてから顔をあげると相手から名前を呼ばれた。相手の方にも吸血を許して傷口に抱き寄せるがその途中で固まってしまって腕の中の相手の呼吸が浅く早いものになっていく。血を吸おうとしないことに目を瞬かせるも聞こえてくる自責と謝罪の言葉に相手の抱いている感情を察して胸が痛くなった。トラウマに近い形になって怯えながらも力なく抱きしめてくる相手の背中にまた手を添えると優しくそこを撫でながら名前を呼び、大丈夫だと何度も声をかける。相手にとって自分を傷つけたことが大罪のような受け取り方をされているがこれくらいの損傷はなんてこない。それよりも相手が無事だったことが何倍にも価値があるのだから。慰めるように相手の体と頭を抱いて落ち着かせるように言葉をかけていく。肩に埋められた頭を優しくなでて自分たちの間の吸血は加害行為ではないとすり寄って自らの存在を伝えながら言葉を掛けていく。弱弱しい体をもう一度強く抱きしめると「何かあったら僕が絶対に止めるしまだ未熟な君に殺されたりはしない、だから心配しなくていい」と不安を取り除く言葉を掛けて)
…、…フィリップ……お前が傍にいてくれたら、ちゃんと制御できるよな……ありがとう…
(どうしようもなく喉は渇いているのにまた衝動のままに動いてしまうのか怖い、相手に傷を付けることなんてしたくない。それなのに相手を抱き締める腕は解くことが出来ず離れたくない。身勝手な行動をする自分自身にも嫌気が差していた。思考力も薄れどうしようもなくなっていれば相手の手のひらが背中に添えられる、体温は低いはずなのにそれは何よりも暖かくて心地良い。名前を呼ばれて落ち着かせるように背中を撫でられれば朦朧として早くなり過ぎた呼吸が撫でるスピードに合わせてゆっくりになっていく、頭にも手が添えられ撫でられれば引き裂かれた思考もまた貼り合わされていった。そして自分達における吸血の意味を伝えられこちらに擦り寄る相手の存在を感じれば緊張が解けるように吐息を漏らす、眷属になってから何度も互いに血を交換してきたがそのどれをとっても幸福な時間だった。相手の匂いを、体温を、味を感じて溶け合うような至福の時間。こちらに回された腕にまた力が籠って強くその存在を感じる、何処よりも安心できる場所がここなのだと思い出せてくれる。そして数日前に交わした会話を思い出してこちらからも軽く擦り寄った。大切な恋人に手荒な真似はしない。ゆっくり顔をあげ相手と目線を交わす、顔色は悪いが焦点の結んだ瞳で見つめれば礼を伝えた。そして再び肩に顔を埋めるとなるべく痛みがないようにゆっくり牙を肌へと沈み込ませる、プツリと皮膚を破った瞬間に何物にも変え難い甘美な味が口の中に広がって酩酊するように思考が揺れ思わず息を吐いた。次々に溢れ出る血を啜れば渇ききった土に水が注がれるように体の隅々まで満たされていく、相手を抱き締める腕にも少しずつ力が戻っていった。渇ききっていた体に相手の血はあまりに美味すぎで思わず高い音を立てながら血を吸い上げてしまう、その音に自分で気づいて思わず口を離してしまった。相手も万全ではないのだから吸血しすぎるのも良くない、それならばと先程の刺し傷に顔を寄せる。相手にしてもらったのと同じように傷口周辺についてしまった血に舌を這わせるとそこに付着している血を丁寧に舐め取っていって)
…ああ、だから安心してくれ。…ん、……もういいのかい?
(怖がっている相手を優しく撫でていくと段々と呼吸も落ち着いてきて低い体温を共有しながら声をかける。今からする行為は大切な人の血を奪うような加害行為ではなくお互いの味や体温、存在などを共有してともにいるための行為なのだと告げていると相手からも落ち着いたような声で擦り寄ってきてその頭をまた撫でる。相手の顔が上がって目があえば顔色の悪さにまた胸を痛んでしまうが軽く微笑んで見せて受け入れる意思を示す。再び相手が肩に顔が埋められて牙が皮膚に沈み突き破られると相手に抱き着く腕に力が籠る。相当飢餓状態だったのか吐いた息が肌を掠めて力を込められながら吸い付く姿を見れば漸く肩の荷が下りたような気がして背中や頭を撫で続けながらその様子を見守る。段々と相手が回復して体にも力が戻っていくのを感じると自然と口元も緩んだ、だが高い音を立てながら血を吸い上げられたと思ったら急に相手が離れて行って顔を覗き込みながら様子を伺う。相手の口元は肩の傷に向かい、その周囲の血を丁寧に舐められ始めるとくすぐったさと健気さに小さく笑い声を零すと「翔太郎」と名前を読みながらまた撫でていた。そうして漸く取り戻した穏やかな幸せに浸っていたが廊下の奥から騒がしい人間の声と足音が聞こえてぴくっと耳を反応させる。この被害を受けて仲間でも呼んだのだろうか、この状況を邪魔されることに分かりやすく表情に不機嫌オーラを浮かべて睨むようにそちらを向けるもはやく二人の場所に帰りたいという想いも強まると「何だか騒がしくなってきたし早く帰ろうか」と軽い調子で声を掛けながら相手の膝裏に手を通して軽々しく横抱きにして持ち上げながら相手の顔を見て)
…お前が倒れたら困るだろ…フィリップ……のあっ?!……そうだな、俺も早くお前と一緒に帰りたい
(牙が肌を食い破った瞬間相手の体は強ばってまた傷つけてしまったと思考が過ぎるが優しく撫でられたままであれば余計な考えは溶けさっていく。そのまま撫でられ続ければ全てが受け入れられている気がして血を飲むだけでは満たされない幸福が体の隅々まで広がっていく、相手の血は今までで飲んだどれよりも美味くて夢中で相手のものを体内に取り込み続けた。しかし吸血しすぎても負担がかかるだろうと口を離せば伺うように顔を覗き込まれる、あの時の約束通り大切な恋人に手荒な真似はしない。体に付着した血を丁寧に舐め取っていればこちらを呼ぶ相手の声が鼓膜に響いて血の甘さと混じりあって脳を痺れさせる、撫でられる幸せも相まってふわりとまた心が軽くなってその分幸せが満ちれば応えるように名前を呼んでいた。しかし不意に廊下の奥が騒がしくなってここが敵地の真っ只中であるのを思い出す、早く脱出しなければと緊張が走るが反して相手は軽い調子でいて、声を掛けられ返事をする前に体が宙に浮けば思わず変な声が出た。まだここは危険な場所でこれからあの仮面の男達が来ることを考えれば、いつもならば文句を言って自ら相手の腕を抜け出すだろう。しかし今はここから離れたくない。何度も大丈夫だと言われて撫でられて二人だけに許される吸血という行為で相手の存在を確かめた今、相手のに居たいと、相手の腕の中でこのまま甘えていたいと願ってしまった。せめて男達に顔を見られないようにと帽子を目深に被りながら傍にある胸板に擦り寄る、少しだけ帽子を上げてチラリと相手を見上げると「任せていいか?」と伺うように問いかけて)
ああ、もちろん。君はここでゆっくりと休んでくれたまえ
(あれだけ苦しんでいた相手の顔に穏やかな笑みが浮かんで漸く全てを取り戻したと安堵と幸せに浸っていたが廊下の奥が騒がしくなればそちらに意識を向けざるを得ない。早く脱出した方が良さそうな状況に軽々しく相手を抱き上げると変な声があがった。普段ならば何かと抵抗や文句をつけてきそうな場面だが相手は腕の中に納まったままだ。そしてハットを深くかぶりながらもこちらに擦り寄り賛同の返事が聞こえてくれば機嫌は一気に良くなる。帽子の間から目が覗いて窺うように聞こえれると口端は緩んで弾む声で返事をした、そのまま帽子越しに軽くキスを落とすと相手を持ち上げたまま歩き出す。廊下の奥から仮面の男達が襲ってくると相手に当たらないように躱して浮きながら蹴りを飛ばす。そのまま階段を飛ばして最短距離で地上に出ると建物の柱を蹴りだけでへこませ今にも崩壊しそうな状態にしてから倉庫を後にした。外に出れば夜明けが近いのか東の空が白みはじめていた、日が上がってしまえば吸血鬼は動けなくなってしまう。相手の体をしっかり抱き直すと「一気に飛ばすから掴まっていてくれ」と告げてから一気に加速して風の街の事務所へと向かって)
…ありがとな、フィリップ……っ、おぅ。頼んだ
(相手の腕の中に収まっている場合ではないのは分かっているが今はここをどうしても離れたくない。ここには正気を失うほどの渇きも大切な人を傷つけてしまう絶望もない、ただ愛しい人の存在と幸せがあるだけだ。この場を任せることにすれば上機嫌な返事が聞こえてきてこちらも口角をあげる、帽子越しに口付けを受ければさらに口元は緩まるが同時にもっと甘くて暖かいものが欲しくなって物足りなさを感じればせめてもと額を胸板へと押し付けていた。そうしているうちに男達がこちらへと迫ってきて相手が動きやすいよう首に両腕を回してさらに密着した体勢になる、敵からの攻撃は面白いくらい当たらなくて宙に浮かびながら蹴りでノックアウトしていく姿は優雅でさえあった。思わず飛べるのはずるいと言いかけるが反省がないと怒られそうなので黙っておくことにする。宙へ浮かぶ心地に揺られたまま地下から出れば相手は柱を蹴り飛ばし倉庫を半壊状態にして思わず目を見開く。これでここの組織はもう派手に動くことは出来ないだろう、あとでジンさんに連絡しておかなければ。外へと出ると日が登りかけていて思わず抱き着く腕に力が入って表情が強ばる、しかししっかり抱えるように腕の位置が変わるとその頼もしさに再び口元が緩んでさらに腕に力を込めた。そのまま白む夜空を一気に駆け抜けていく、太陽は自分達にとって天敵ではあるが朝の空気は良く澄んでいてそれを飛びながら感じることなんてない。ゆっくりと呼吸すると「こんな風、感じたことねえ…」と思わず呟いて)
こんな時間に外に出て空を飛ぶ機会なんて滅多にないから確かに新鮮だ。…そろそろ着きそうだ
(彼らの根城を後にしてしまえばもうあとは帰るだけだ。相手を抱いたままバランスを崩さない程度の加速で空を駆け抜けていく。腕の中で相手が安心して身を預けてくれて風を感じている姿を見ればまた口元に笑みが浮かぶ。普段ならば太陽に当たらないように夜明けのかなり前から事務所に戻ることを促されるからこんな時間に外にいることはない。そろそろこうやって空を飛ぶのも朝になってしまえばかなり目立ってしまう。くすくすと笑いながら更に羽を動かして加速して帰路を急いだ。そうしていれば見覚えのある区画が見えてきて速度を落としながら下降していく、そして事務所の屋上にたどり着くとそっと地面に着地して相手もゆっくりと腕から降ろす。ふらつかないように支えながら相手と目を合わせると「…おかえり、翔太郎」と声をかけて)
良い朝だな。……ただいま、フィリップ。…とりあえず中入るか
(相手の腕の中で澄んだ風を受けて事務所へと帰っていく、もうすぐ朝日に耐えられなくなりそうだがそれでも誰もいない風.都の空を二人きりで移動するのは特別な時間にも思えた。やがてさらにスピードがあがってあっという間に事務所の屋上へと帰ってくる、腕の中からそっと降ろされてふらつかないよう支えられ随分な好待遇だ。それを数時間前は過保護だと切り捨てていたが今は大切にされているのだと素直に受け止めることが出来る。相手から出迎えの言葉を掛けられれば無事に二人の場所へ帰ってこれたのだと、そして相手の傍に居ていいのだと、また思えて小さく笑みを浮かべながらこちらも挨拶を返した。喧騒が落ち着いていろいろと言わなければならないことはあるがもうすぐ太陽が登ってくる、ひとまずはそれを避けようと手を取るとしっかりと繋いで事務所へと戻っていった。カーテンを締め切り陽の入らない事務所へやってくれば帽子を傍らに置きそっと手を離して相手の正面に立つ、そして深く頭を下げると「すまなかった」と改めて謝罪した。今回の事態を招いたのは間違いなく自分だ、舞い上がって見誤って相手を心身共に傷つけた。「俺が無茶して怪我を軽んじてた事もちゃんと警告してくれてたのに、意地張って聞かなくてすまねぇ。お前の血を飲んだら何とかなるって甘えてたんだ。それでお前に嘘も着いたし、傷つけちまって…俺が未熟だった」と反省を口にして)
そうだね。…、本当にどれだけ心配したと思っているんだい。幾ら眷属になろうとも人の性質、君のハーフボイルドな所までは変わりやしない
(屋上に降り立って相手を下ろし、出迎えの言葉をかけるとその顔に笑みが浮かんで呼応する帰宅の挨拶がされる。漸く元に戻すことが出来たと表情を緩めていれば夜明けが近いと手を取られてしっかり繋がれた手をこちらからも握り返して事務所の中に入った。遮光カーテンで太陽の光を遮って安全な空間にすると相手が帽子を外して傍らに置いてから正面に立って目を僅かに開く。そして頭を下げて謝罪されると突然のことに固まってしまった。なんてことのない人間相手ならばそもそも心配しない、したとしても強く拒否された時点で去っていただろう。相手だからこそ気になって心配してこちらのいう事を聞かない態度に腹を立てて、心乱されて傷ついたのは間違いない。そしてそれはこれからずっと一緒にいるなら伝えるべき感情だと思えば数秒沈黙した後、溜息交じりに相手の言葉を肯定する。体が変わろうとも魂までは変わらない。相手の良い部分も悪い部分もそのままで今回はその未熟な所が吸血鬼の体と悪い様に噛み合ってしまった結果だろう。一歩近づいて相手の肩にぽんと手を置き、顔を上げさせながらその頬に手を添えるように移す。普段言われているワードを使いながら相手を見つめ「でも今の君には僕が居るだろう?」と自らの存在を伝えて)
ぐ、…今回のは言い返せねぇ……、…え?…あ……そうか、お前…あの時……一緒に行ってくれようとしたのに、俺が断ったのか
(無事に帰って来ることは出来たがこのままではいつも通りに戻ることは出来ない、自分の弱さに、何より傷つけた相手にきちんと向き合わなければこの先悠久の時を一緒に居る資格は無いだろう。頭を下げて謝罪すれば呆れ混じりの返事がされて息を詰まらせる、いつもならば即座に否定する半熟という言葉も今回は言い返す資格はひとつもないだろう。立て続けの依頼に舞い上がり、ひとりで出来ると実力を見誤って、相手を危険に晒しまでしたのだから。振り返ってみればハードボイルドな男の片隅にも置けない。相手の言葉によってさらに自分の未熟さを痛感させられ益々顔が下がりそうになるが、その前に肩に手を置かれて体が元の位置に戻って頬に手を添えられ目線を交わすと瞬きをする。そして告げられた言葉にまた目を瞬かせながら間の抜けた声が出た。直後に数日前のやり取りを思い出して声が溢れる。今までは依頼があると突然ついて行くと言い出すことが多くて、それは相手の気紛れだったのだろうが、数日前のそれは一緒に行かないのかの確認だった。即ちそれはこちらを案じて言ってくれた問いかけだったのだろう。ただ好奇心のままについてくるのではなく、一緒に依頼にかかってくれるという相手の申し出だった。あの時の言葉を漸く理解すると今度は伺うように瞳を向ける、頬に添えられた手の暖かさを感じながら一歩近づいて相手の腰に腕を緩く回せば「フィリップ…これからも今回みたいに俺一人じゃ出来ねぇ依頼がきっと出てくる。その時には、俺と一緒に解決してくれねぇか?この街の探偵として」と静かな声で問いかけて)
…良いよ。君のやりたいことを否定するつもりもないし生涯を共にするなら一緒に探偵をするというのも楽しそうだ。僕達二人ならばきっと何でも出来るだろう
(普段なら即座に否定されるワードも今回は思う所があるようで言葉を詰まらせている。だが相手にずっと反省して欲しい訳ではなく自分の思いを伝えるために頬に手を添え目を合わせながらこちらの想いを伝えた。何を言われたのか分からないように目が瞬いて間の抜けた声が聞こえてきたがすぐに数日前のやり取りに思い至ったようで整理するように呟いている。そして伺うような目がこちらを向いて軽く抱きしめられながら共にあることを持ち掛けられると少しの間見つめてから軽く笑みが浮かべて承諾の返事をした。元より相手のやりたいことを取り上げる気が無い、単にそこに自分が居ないのが不満だっただけで相手とならば探偵という仕事も面白そうだ。これからまた長い間生きるのを考えれば良い生きがいになるかもしれない。するりと頬を撫でて二人ならば出来ると自信たっぷりの表情で告げる。それからぎゅっと抱きしめると「これでもう探偵じゃないくせに、とは言わせないよ」とあの言い合いの中で引っ掛かっていた言葉を引き合いに得意げに告げて)
…フィリップ……あぁ、これからは探偵もお揃いだ。お前となら俺だけじゃ出来ないことも、それ以上のことも、何だってできる
(相手と目を合わせて自分が歩む道も共に歩んで欲しいと願いでる、刹那の間見つめ合って承諾の返事がされると嬉しさが溢れて顔を明るくさせ嬉しさを噛み締めるように名前を呼んだ。おやっさんから継いだ探偵という仕事、相手が日中動けないのもあって一緒に探偵をすることを想像もしていなかったが今やその条件も同じになっている。相手と血も命も時間も共有しているのならば風.都.の探偵という仕事も共有したっていい。頬を撫でられるとその心地に浸るように目を閉じる、そのまま強く抱き締められるとこちらも背中に腕を回してその体を強く抱き締めた。言い合いの中で放ってしまった言葉を引き合いに出されると思わず苦笑いを浮かべるがこれからはその差もない、それももう同じだ。一人では手に負えないことがあるのは今日嫌という程味わったが相手とならば既に何でも出来る気がして同じ言葉を繰り返しながら軽くすり寄る、大切な恋人を抱き締めながら「…俺の仕事にお前を巻き込んで怪我させたくなくて誘ってなかったが、お前の方が遥かに強くて丈夫だったな」とこちらこそ過保護だったかもしれないと軽く笑いながら呟く。しかしふと顔をあげれば「でも今後、力の制御気をつけろよ。今日みたいに人前で飛んだり吹き飛ばしたりすんのはマズイだろ」と全く人のことを言えない点に釘をさしていて)
君が心配しすぎなんだよ、僕の方が吸血鬼としても荒事にしても先輩だ。 君がそれを言うのかい?まあでもこれから平穏な生活を送るためにも気をつけた方がよさそうだ
(承諾の返事をすれば相手は嬉しそうに微笑む、ぎゅっと強く抱きしめ合って仕事も日常も相手ともにある未来を想像して口元はつい緩んでしまう。すり寄ってくる相手を優しくなでて取り戻せた存在を確かめていると相手の呟きが聞こえてきて同意だと頷く。なぜか相手は自分を守ろうと躍起になっている様子だったがそもそも相手より歳も重ねていて眷属になったとはいえ自分がオリジナルで歴も長い。それを感じさせないくらい対等に接しられていたからと思えば何処かくすぐったくもあるが今は対等な立場になったならと得意げに先輩面を見せる。だが相手が顔を上げて今日の振る舞いについて指摘されるとぱちりと目を瞬かせてから相手もだと言葉を返す。だが今日は相手を取り戻すためとはいえ珍しく力の制御が効かなくて目的を果たすために好き勝手に動いていた自覚はある、一人ならばある程度好き勝手に動いても構わないし怪我を負おうと自己責任だ、何か問題が起きればその土地を離れても良い。だが探偵としてここに居場所を作るのならば、そして相手とともにいるためなら多少は目立たないようにふるまう必要があるだろう。じっと相手を見つめると「君がずっと一緒にいてくれるならたぶん大丈夫だ」とまた楽しそうに微笑んで)
それは今日十分実感したっての。ならフィリップが吸血鬼の先輩で俺が探偵の先輩ってことで。……俺がお前から離れるわけねぇだろ
(まだしっかりと二人揃って探偵として依頼は受けたことがないのに一緒ならば何でも出来る全能感が胸を満たして止まない、擦り寄った頭を撫でられて相手からしか与えられない心地に浸ってもう傍から離れられる気がしなかった。ただ人の事を言える立場ではないが本来隠れなければならない人外ながら派手に暴れたのは事実、一応釘を刺してくと案の定反論は返ってくるがこの街で探偵を続けるための選択を取ってくれればまた口元に嬉しさが滲み出ていた。相手がこちらをじっと見つめる、暫くこちらも見つめ返していれば楽しそうな声が聞こえて笑みを浮かべる、もう少し顔を寄せて額をこつんと合わせお互いの視界をお互いでいっぱいにするとずっと傍にいることを改めて誓うように口にした。息遣いすら聞こえる距離でこちらからも真っ直ぐ見つめれば「だからフィリップもずっと一緒にいてくれ」と同じ願いを口にする。そのままさらに距離を縮めてゆっくりとした動作で唇を重ねる。数秒互いの体温を交換したあとそっと離れて再び至近距離で見つめあえば嬉しさと幸せが最高値を超えてそのままの距離で破顔して)
…ん、…いわれなくともずっと一緒だ。……ねえ、翔太郎
(暫し目を合わせて見つめ合いながら楽しそうに微笑むと相手もまた柔らかな笑みが浮かぶ。こつんと額同士を合わせてさらにくっつくと視界は相手でいっぱいになって大切な人がそばにいる実感をかみしめる。相手が願いを口にしてこちらが答える前に顔が近づいてくればそっと瞼を閉じた。少しして肌よりも暖かい体温が唇に触れて小さく息が零れる。たった数秒のような、それでいて長いようにも感じるキスをして少しだけ離れていくとまた瞼を開けて相手を見つめる。弾む声でともにあることを伝え、軽くすり寄りながらこの幸せと暖かさをかみしめていた。いつまでもこうしていたい所だが安心したところで一晩中喧嘩したり外で騒動に巻き込まれたりして溜まっていた精神的かつ肉体的な疲れがどっと溢れてきた。普段ならば吸血すれば平気なのだがお互いに血を失って吸血の量も遠慮したせいで十分に回復しきれていない。体を休めたいが相手と離れてしまうのは惜しくて視線を迷わせると少し遠慮がちに名前を呼んで「…少し狭いかもしれないけど、今日は一緒に寝るのはどうだい?」と伺うように提案して)
ん?なんだ?…、……俺も今日はここから帰りたくねぇと思ってた
(何よりも一番近い距離で見つめ合いながら願いを口にすれば直ぐ様こちらと同じ答えが返ってきてまた幸せは胸に溢れていく。こちらに擦り寄る感覚に擽ったさを覚えてまた小さく笑いながら二人だけの時間に浸っていた。しかし不意に相手の視線が揺れて伺うように声を掛けられる、相手の様子を見守りながら返事をすれば何とも可愛らしいオネダリがされて目を開いた。自分より遥かに長い時を生きてきて人を超える力を持って吸血鬼では先輩だなんて得意げにしていた相手が健気にお願いをする姿はなんとも愛おしい。それに相手に今声を掛けられるまでこの後ひとりで家に帰るなんて選択肢は微塵もなくて、つまりはこちらも同じ気持ちであるのに気付かされた。今度はこちらから頬に手を添えて視線を固定する、親指の腹で優しく頬を撫でながら同じ気持ちであることを伝えた。どれだけ心身共に疲弊していようとも、例え狭いベッドであろうとも、相手の隣が何処よりもよく眠ることが出来て安心できて、心を安らげることが出来る。再び顔を寄せてもう一度体温を共有する口付けを送れば少し屈んで相手の肩と膝裏に腕を回す、先程運ばれたように今度はこちらが相手を横抱きにして持ち上げると「今日の夜をお前と一緒に迎えたい」と少々キザな、しかし飾らない本音の言葉を伝えて)
(/お世話になっております。そろそろ区切りかと思いましてお声がけさせていただきました。体が丈夫になったら探偵は絶対に無茶をする範囲を広げると思ってましたのでそこを深掘りしつつシリアスで吸血鬼が出てくる物語らしくバイオレンス方面なお話もできてとても楽しかったです!吸血鬼の先輩として起こりうることを熟知してる検索くんと眷属としての能力を過信している探偵の王道なすれ違いをしつつ言い合いの中でも検索くんが探偵を案じてくれているのがとても分かって探偵の若造感を強調出来る感じも新鮮で楽しかったです。助けに来てくれる時の検索くんも静かな怒りで人を超えた力で敵をなぎ倒していくのがとてもかっこよかったです。それでいて最後にいつも通り甘えるのが本当に本当に可愛くて背後まで心臓掴まれていました。今回もありがとうございました!
この後ですが少々悩んでおりまして、このままもう少し二人のやり取りを続けるか、エピローグ的にベッドを購入して探偵が完全に引っ越した日をやるのも楽しそうかなと思っています。ただ長らく吸血鬼パロやっていますので、ここら辺で一旦区切って元の二人で検索くんが飲み会についていく話やサウナでの我慢比べの話、サウナならプチ旅行をくっ付けてもいいかな等など思っておりますが、検索様はいかがでしょうか?もし吸血鬼パロで他にやりたいお話やいつもの二人のお話等などあれば教えていただければ幸いです!)
…!…わ、…僕も同じだ。
(言ってもいいものかと少し悩んだもののこれから一生共にあるならと今日の望みを口にすると相手の目が開かれる。そして頬に手を添えられ撫でられながら相手もまた帰りたくなかったのを知れば少し驚いた表情を見せた後、緩い笑みを浮かべた。今日は一緒に眠って夜も一緒に過ごせる。昨日は眠れなくて起きたときにはすでにメッセージがきて仕事に出ていたのもあって離れていかないというだけで心が弾んだ。また顔を寄せて口づけを交わして柔らかな幸せに浸っていると相手の腕が肩と腕に回って不意打ちに持ち上げられると思わず声を上げてしまう。相手の顔を見れば今だけは妙にきまった言葉を告げられて顔に熱が集まる。視線を迷わせてから相手の首に腕を回してこくんと頷くとおとなしく運ばれることにした。普段は使うことのない簡易ベッドは相変わらず狭いが奥に詰めて寝転がる。ここのカーテンも閉め切ってしまえば完全な暗闇で相手の姿しか見えなくなる、手を引いて相手も横に寝かせると「…翔太郎、」とまた名前を呼びこちらからも軽い口づけを送って)
(/こちらこそお世話になっております。特殊な体質だからこそ普段よりがっつり負傷描写もしつつ仲違いから救助までたっぷりとシリアスとかっこいいお話が出来て楽しかったです。いつもとは逆に探偵君の方が慣れていないことが多く、それでいて探偵としての使命に燃えている所がかみ合っていて無茶が出来るからこそ出来ると意地を張ったり売り言葉に買い言葉だったりとすれ違いも沢山出来て良かったです。普段は守られている立場であることを良いことに吸血鬼という建前で色々めちゃくちゃにも出来てそこも楽しかったです。立場や体質が変わっても落ち着くところが一緒なのも好きでこれからのことを想像できる終わり方になったと思います、こちらこそありがとうございました。
このまま続けるのも良いですがせっかくならまた後の楽しみにするのもありかなと思うのでいったんいつも通りの二人に戻るのはいかがでしょうか。検索が探偵君の飲み会についていく話良いですね!また少し長めに旅行やお泊まりする話はやりたいと思っていたのでサウナはそっちにくっつけてしまいましょう。またはそろそろ数字的に大台も近いので少し前に話していた指輪を買いに行く話や二人の中での記念日的なイベントでもいいかななどと思っているのですが探偵様はいかがでしょうか)
(/一旦こちらだけで失礼します。大台に合わせてやりとりの方も記念なお話にするのめちゃくちゃ良いですね!検索様が大切な時に取っておきたいと仰っていただいてた指輪を買いに行くお話をぜひさせていただければと!検索くんが飲み会についていく話も旅行なお話も二人の可愛いやり取りが沢山見れそうですのでぜひ後々やらせてください。指輪のお話にあわせて記念日的なお話をするのも一緒にするのはいかがでしょうか?前々から物語上検索くんの誕生日が不明なのでそれに変わる記念日を探偵が考えている、的な話をぼんやり考えていたのですが、二人で初めて依頼を解決した日を記念日にする、というのはいかがでしょう。探偵がサプライズ的に記念日を設定して指輪を買いに行く、二人で話しているうちに記念日を設定することになって指輪を買いに行く、検索くんがなんらかのきっかけで指輪を買いたいという話になり前々からサプライズを考えていた探偵が最後に今日が記念日だと明かす、等など色んなパターンが考えられるのですが検索様がご希望の展開ありましたら教えてください!)
(/では是非是非そうしましょう!何かしらきっかけで探偵君が検索に誕生日を聞く→分からないという回答→誕生日がないなら、とその日or近日が初めて依頼を解決した日でサプライズでその日を記念日に決める→当日に記念日だと明かして一通りやり取りした後、来店予約してある店に行って指輪を購入…みたいな流れが浮かんだのですがいかがでしょうか。探偵君の方の誕生日も判明していないので偶然近かったから一緒にでも良いですし、次の布石にしても楽しそうです)
お、今日は弁当屋のおばちゃんの誕生日か。…、…
(すっかり風.都.に吹く風が冷たくなってきた今日この頃、昼下がりの鳴,海,探,偵.事.務.所は午前中に捜し物の依頼をひとつ終えて落ち着きを見せていた。この調子であれば午後はパトロールになりそうだと計画を立てつつふとカレンダーを見やる、今日の日付を改めて確認すれば街の人の誕生日であるのを思い出して今日は弁当屋に顔を出してお昼はそこで調達しようとルートを決めていく。いつも世話になっている人の誕生日をぼんやりと順番に思い出し、ついでに自分も誕生日が近いのを遅れて思い出していたがそこでハタと動きを止めた。そして相手の方を見る。あの夜に組織の元から連れ出した相手は記憶喪失の身で常識すら欠けていていろいろ教えるのに苦労したものだが、相手自身のことを積極的に聞いた事がないかもしれないと思い至る。年齢も分からないと言われた時点でパーソナルな情報は一切覚えていないのだろうと思い込んで聞き逃していて相手の誕生日を祝うという場面は今までになかった。もしかしたら覚えていたりするのだろうかと気になれば相手の方に近づいて「なぁフィリップ。今までちゃんと確認したことなかったんだが、お前の誕生日っていつなんだ?」と何気なく聞いてみて)
(/流れ考えていただいてありがとうございます!ぜひぜひそんな感じで、探偵が誕生日を知らないことを確認して後日サプライズで指輪を買う予約してて二人でちょっとしたお祝いをする感じでいきましょう。探偵は検索くんと全部一緒であるのを望むと思うので探偵の誕生日も記念日にくっつけちゃっていいかなと思います。ひとまずそれっぽく始めさせていただきましたのでいい感じに乗っていただければ幸いです!背後共々良き記念になるようなお話にいたしましょう!/こちら何もなければ蹴りで大丈夫です!)
……誕生日? …分からない。実験記録のデータベースにも記載は無かったしあったとしても不必要な情報だから抹消されているだろうね。
(ある日の昼下がり、大きな依頼も無く午前中は相棒が探し物の依頼に出ただけで平和な時間を過ごしていた。冬の近付いてきたガレージは寒く事務所スペースに居ることも増えてきたが今日も事務所ソファーに腰がけて本を読んでいた。そうしていると相手が近付いて来る気配を感じて顔を上げる。誕生日、というワードを聞けば僅かに首を傾げ、人が生まれた日を指す言葉だと分かれば時間差で首を振って否定の返事をする。フィリップと名付けられる前の記憶は消されていて実験記録のパーソナル部分にも生年月日の類の記載は無かったはずだ。彼らの研究していた分野を考えれば大した情報でもなかったのは容易に推測がついて淡々とした口調でその事実を述べると視線を本に戻してから「それがどうしたんだい?」と投げかけて)
まぁそりゃそうだよな……あーいや、誕生日っていやその人が主役の特別な日だからなるべくおめでとうって伝えたいと思ってんだけど、そういやお前には言ったことなかったと思ってな
(ソファーに腰掛け本を読む相手に今更ではあるが改めて誕生日について聞いてみる、反応は案の定といったところだ。やはり名前以外の相手の情報は組織によって消されてしまっているらしい。誰しもが持つ一年に一度訪れる誕生日というその人にとって特別な日、それを不必要としている組織にも腹が立つし自身の誕生日に関心が薄そうな相手にも少々寂しさを覚える。その人が主役である誕生日におめでとうの祝福と普段のありがとうの感謝を伝える日、その人の笑顔が見れる良い日であるのだが一番近くにいて大切である肝心の恋人にはそれをした事がなかったのだ。気がつけば相手は早々に視線を本に戻している、相手は記憶喪失に悲観的ではないが何も無いのは何よりも自分が物足りない気がして「お前が主役の日があって、ここに居てくれてありがとうって伝えて、お前が喜んでる顔を見てぇし」と自身の気持ちを整理するように言葉を続けるも、少し置いてクサイことを言っているのを自覚すれば口を変な形にしながら目線を泳がせて)
…そういうものなのかい?
(こちらが誕生日を知らないと言えばやはり、と言った反応が返ってくる。単に産まれた日が分かっているかどうかで何か変わるのだろうかと再び本に視線を戻していたが相手は何かこだわりがあるように話を続ける。そのまま相手自身の気持ちを綴られると本を閉じながら照れくさそうにしている相手にまた視線を向けた。思えば所長が誕生日の時は朝から猛烈にアピールしてきて相手がケーキを買いに行くのを命じられて3人で囲んで食べた。その時の所長の顔は確かに幸せそうに見えた。未だに自分が祝われるという状況がピンと来なくてキョトンと首を傾げる。だが相手が自分をそうしたいと言うのなら出来れば叶えてあげたい。暫し考え込むようにしてからふといい案が浮かぶと「なら君が決めてくれ、僕の誕生日」と真面目な顔で提案して)
えっ?!いやいやそういうもんでもねぇだろ。決めるにしても適当ってのも…
(要は相手の幸せを願ってそれを形にする機会であるのが誕生日だが相手にはそれがない、こちらが勢いのまま喋りすぎて挙動不審になっている間も相手は相変わらずピンと来ていないようで首を傾げていた。暫し何かを考えた様子の相手は真面目な顔でこちらが誕生日を決めるように言ってきて変な声が出る、誕生日はその人が生まれた日だがそれを勝手に決めるというのはまた何とも言えない。それに決めるにしてもその日に何らかの意味がなければ相手も誕生日に対して思い入れが持てないだろう。無理やり作るものでもないが相手が特別な幸せを感じる日を増やしたい思いはある、どうしたものかとこちらも考えた所で再びカレンダーが目に入った。そして近しい日付に紐づいた記憶が蘇ると暫く動きを止める、やがて小さく笑みを浮かべた。相手の方に向き直ると「まぁ俺の方でいろいろ考えとく」と場を誤魔化すような返事をして出入口の方へ向かうと帽子を手に取り頭に乗せる、これはいろいろと考えるべきものが多そうだ。事務所の扉へ向かうと「じゃあパトロール行ってくるから留守番よろしくな」と伝えると計画を胸に秘めたまま外へと出ていって)
君が決めてくれた日ならちゃんと覚えるよ。…?分かった、行ってらっしゃい、
(何やら悩みこむような相手にそちらで決めるように提案すれば変な声があがる。自分にとって誕生日に思い入れが無い以上いつであろうと構わない。だが相手がくれるならば彼がつけてくれた名前のように自分に馴染むような気がする。軽くも真面目な顔で言葉を続けていると相手が何かに視線を向けた後小さく笑っていて首を傾げる。何かを思いついたようだがすぐには教えてくれないようで釈然としないものはあるものの表情を見る限り悪い物ではなさそうだ。パトロールに行くという相手をいつも通り見送るとさっきまで視線を向けられていたであろう壁に目を向ける。そこにはカレンダーがあったが誕生日というキーワードからかつて相手のことを調べた時に出てきた生年月日と今日が近い事に気付く。その人の幸せを願う日ならば大切な相手に感謝や想いを伝えたい。少し悩んでから本を手に取りガレージへの螺旋階段を降りていくと腕を広げ地.球.の.本.棚にアクセスすれば「キーワードは…誕生日」と早速検索を始めて)
__よし、フィリップ。突然だがお前に伝える事がある。ひとつ目は今日が休みってことだ。もちろんアキコの許可も取ってある
(相手と誕生日の話をしてから数日後、ついに決行日がやってくるとひとまずはいつも通り家で支度を済ませる、普段ならばこのまま事務所へ向かうところだがその前に声を掛けて相手の正面へと立った。そして人差し指を一本立てると本日探偵業が休みであることを伝えた。所長様から休みをもぎ取るため諸々の事情を話した時は散々騒がれたものだが約束通りこの日の休みを獲得し相手には黙っておくというという条件も守られたようだ。そのままもう一本指を立てると「二つ目はこれから出掛けねぇかって誘いだ」と提案すると一瞬目を泳がせる。誕生日に変わる相手の特別な日を作りたいという思いから始まったこの計画はその意味を相手が理解しなければ意味が無い、視線を相手に戻せば何処か緊張した面持ちで「お前と一緒に行きたいとこがあんだ」と真剣な口調で言って)
え、…いつの間に手を回していたんだい。…行きたい所、…分かった。
(誕生日について検索してみれば家族などに寄って祝われる日という記述が多く現代では広く親しまれている文化らしい。誕生日に送られるものなどに範囲を広げて調べているとあっという間に夜になって普段はすぐ興味を失うことの多いワードがずっと頭に残っていた。そんな日から数日ほど、支度を済ませていつも通り事務所に行こうとしたタイミングで相手に止められ、今日が休みと聞けば目を瞬かせる。昨日帰るときにはそんな素振りが無かった当たり前もって話を通していたのだろう。驚きの反応を示していると次に出掛ける誘いがされる、休みの日に何処かに出掛けることはすっかり当たり前になってきているが相手の目が泳ぎ、その後の緊張したような雰囲気から普段とは違う様子を感じ取ると同じ言葉を繰り返しつつこくりと頷く。相手が望む場所なら何処だろうとついていく、そして軽く相手の手を取れば「案内してくれ、翔太郎」と声を掛けて)
__この前、お前の誕生日がいつかって話しただろ?お前は俺が決めれば良いって言ってたけど、お前にとって特別な日じゃねぇと意味がねぇと思ってな。それで、俺達にとって特別な日があるって気づいたんた
(今日が休みだと明かせば案の定相手は驚いた顔をしていて滑り出しは順調だと思わず口角を上げる、その後自分でも気付かぬうちに真剣な顔をして行きたい場所があることを伝えれば相手もいつもとは何処と無く違う反応で頷いていた。手を取られるとこちらからも手を握って外へと繰り出す、繋いだ手はそのままに人目を避けながら裏道を歩いた。そしてまた不意に先日のやり取りを会話に引き出す、相手にここに居てくれてありがとうを伝える日、何か意味を持たせたいと思っていたがちょうどいい二人の思い出があった。繋がった相手の手をギュッと握る、相手の方を向いて目があったところで「今日は俺達が初めて一緒に依頼解決した日なんだ。俺とお前が二人で一人の探偵として一歩踏み出した日だ」とその特別な日が今日であることを明かして)
特別な日?…、確かにそうだったね。もう一つの僕たちの始まりの日
(相手の手を取って外に出ると相手に導かれるまま裏道を歩く。どこに行くのかと軽いクイズを自分の中で考えているとふいに数日前のやり取りを振ってくる。結局相手が何を思いついたのか聞けずじまいだったが何処か嬉しそうに告げられる特別な日というワードにまた目を瞬かせる。あの夜の日付は過ぎていると関係が進んだ夏祭りの日付でもない。その答えを求めるようにじっと相手を見つめるとその手がぎゅっと握られる。そしてその特別の理由が告げられると目を見開いて、それからそれが示す意味に柔らかな笑みが浮かぶ。あの島で初めて変身したが最初から二人で一人だったわけではない。最初は自分はガレージにこもりっきりで相手が怒りながら世話をしてくれて、それこそ背伸びをしながら相手が独りで探偵をしていた。きっかけがなんだったかは覚えてないがド.ー.パ.ン.ト絡みの事件に地.球.の.本.棚が使えると伝えて相棒のワードで本を絞り、得た情報から犯人を見つけ二人で変身してメ.モ.リ.ブ.レ.イ.クを果たす…今のスタイルと同じように二人で依頼を解決した最初の日だ。それを覚えていること、そして誕生日にその意味を持たせようとしてくれるのがうれしくて口元を緩めると「確かにあの日、君の相棒が生まれたといっても過言ではないね」とくすっと笑って)
…、…俺の相棒が生まれた日、か。その言い方が一番しっくりくるな。ならお前の相棒が生まれた日でもあるし、まぁ……つまり俺達の誕生日ってわけだ
(相手にとって特別な日であり自分にとっても特別な日、その意味を伝えれば驚いたように目が開かれた後に柔らかな笑みが浮かんでこちらも口元が緩んだ。相手に出会った始まりの夜、最初に変身したのはあの日だったが二人で探偵として歩み始めたのは間違いなく数年前の今日だろう。あの日確かに自分達は鳴.海.探.偵.事,務.所の探偵としてお互い足りない部分を補い合ってこの街の涙をひとつ拭った、そしてその歩みは今もこうして続いている。相手は笑いながら誕生日と掛けた言い方をするが何よりもその言葉は胸にストンと収まって噛み締めるように小さく頷く、今日という記念日に誕生日としての意味も重ねるならば互いの相棒が生まれた日、というのが一番相応しい言葉だろう。話して歩くうちに目的地が近くなってくる、表の道は人もいるだろうと一旦止まって相手の正面へ回ると繋いだ手ともう片方の手をとって重ね両手で包み込んだ。再び少々緊張した面持ちになると「それでだな、今日は初めて記念日をお前と祝いたいと思ってんだが…記念日なら相応しいプレゼントが必要だろ?」と何処か伺うように問いかけて)
ああ、共にこの街で生きて行こうと決意した日だ。プレゼント…君がさっきから妙に緊張している辺り普通の物では無さそうだね
(誕生日にかけて相手に並び立つ相棒になった日だと告げると噛みしめるように頷くのが見えた。そして相手にとっての相棒になったように相手もまた自分の相棒になった日と聞けば幸せが湧いてきて先ほどまで何ともなかった今日という日付が凄く大切な日に思えてきた。誕生日という言葉に特別な意味がこもって笑みを零していると裏道の終わりが見えてくる。すると相手は正面に回ってきて両手を温かな手で包み込まれる。そしてまた何処か緊張しているような様子でプレゼントというワードが聞こえてくれば今向かっている行き先が何をするところなのか察しがついた。普通の服や日用品を買いに行くならばわざわざ休みを取ってこうして改めていくことはない。ならばそのプレゼントもまた強い意味をもつ者なのだろうと考えることが出来ればじっと相手を見つめ「君との特別なプレゼント欲しいな」と素直な願望を伝えて)
お前には隠し事できねぇな……俺もそう思ってな、そこの道から出た先にジュエリーショップがあんだ
(相手の両手を包み込み今日一番の山場を迎える、絶対に外すことが出来ない状況にいやでも緊張してしまった。しかしそれも相手に指摘されてしまえば思わず笑みを浮かべる、相手は相も変わらずこちらを見つめ続けてくれていて小さな変化すら気付くのも容易いのだろう。思いっきり緊張が前面に出ていたことはさておき、相手から特別な日に相応しい特別なプレゼントを望まれれば温かな気持ちが溢れてさらに口角は上がる。互いの相棒が生まれた日、共に生きていくと決意した日、それを最初に祝うのに相応しいプレゼントを考えた時、随分前に買おうと約束していたものが頭に浮かんだ。相手に傍にいてくれてありがとうと伝えこれからも永遠にある誓いを形にするもの、軽く息を吐いてから相手を真っ直ぐ見つめると「今日の記念に、結婚指輪買わねぇか?」と真剣な口調で言って)
…!…欲しい、君との特別を示す証を身に着けたい。
(立ち止まった相手に手を取られて暫し見つめ合う。ずっと緊張していることを指摘すると相手は笑みを浮かべて今回の目的地が告げられる。ジュエリーショップなんて普段立ち寄ることのない店だ。そこで購入するもの、と考えて先ほどから言っている特別に繋がる物が一つ浮かんで一瞬固まった、窺うように視線を向けると相手が軽く息を吐いてから真剣な眼差しでこちらを見つめ、結婚指輪というワードが出てくれば目を見開いた。今までの出来事や会話の中で出てきた二人の繋がりを示す特別なモノ、お互いに欲しいと望んでその会話だってしたが中々機会が無く後回しにしていた。普通の物よりずっと高価な指輪は確かに今日の様な特別な日に買うべきだ。ずっと頭の片隅にあったものを買いに行くと知れば嬉しさがじわじわとこみ上げてきて包まれている相手の手を握り返しながら深く頷き、自分も特別な指輪を望む。今からはまるであろう相手の指の根元を軽く撫でながら「何回目かのプロポーズだね」と楽し気に笑って)
っ、……、…そうだな。何回しても慣れねぇけど。でもお前と最期まで一緒にいたい気持ちは変わらねぇ
(海辺の結婚式場で風,都.タ.ワ,ーとガジェット達に見守られながらあげた二人だけの結婚式、あの日にいつか買いに行こうと約束して長らく機会が無かったがこの特別な日の何よりも特別なプレゼントに結婚指輪は最も相応しいだろう。しかしそれは再び永遠の誓いをするのと同じで真剣な顔で相手に指輪の購入を持ちかければ相手は驚いた顔をした後、少しずつ笑顔が滲み出て手を握り返されて深く頷く姿をみれば一気に喜びが爆発してこちらも笑みを浮かべる。その後にじんわりと温かな幸せが広がって照れくさそうに笑った。これから指輪がはまる指を相手の指先がなぞってそこから温かな幸せが広がる心地がする、互いが永遠に共にある証であり誓い、もうすぐお互いの指にお揃いでそれがはまるはずだ。こちらからも握った手を軽く撫でてから名残惜しくもゆっくり離して、しかし直ぐに直ぐ隣へと並べば「俺の知り合いに頼んで周りの目が気にならねぇようにしてもらってるからゆっくり選べるはずだ。…行こうぜ、フィリップ」と声をかければ裏道を出てすぐにあるジュエリーショップへと向かって)
ああ。……なんというか、少し緊張するね
(お互いに笑みを浮かべてこの後に訪れるであろう幸せに揺蕩う。相手とともに一緒にある誓いは何があっても変わりはしないが形となって身に着ければ日頃でもことあるごとに実感できるはずだ。お互いに握っていた手を軽く触れ合わせてから表を歩くために一旦手を放す。だがその分横に並んで声がかかると目的のジュエリーショップに向かった。普段は利用しないような店の雰囲気に緊張と好奇心をにじませながら相手に続いて中に入ると店員がすぐに相手に気付いて「左様ですね、こちらにどうぞ」と声をかけ奥の方に通される。その間にも透明のガラスのケースの中には指輪やネックレスなどいかにも高価な品が展示してあってキョロキョロと辺りを見渡していた。これまた高級そうなソファーに通されて隣り合うように座る、何やら準備を始める店員を見ながら相手に近寄ると内緒話のようにぽつり呟いて)
あぁ、俺も流石にこういう店は初めてだしな……
(二人の特別な日に特別な指輪を決める為に二人揃ってジュエリーショップへと入る、落ち着いた照明の店内に明るく照らされたガラスケースが幾つも並んでいて独特の雰囲気だ。その中で顔見知りを見つければ目線を向ける、硬い口調で話しかけられればこちらも「よろしくお願いします」とやや緊張気味に応じて席へと案内される。口が堅く信頼できる知人で相手とのことはある程度話しているがしっかと接客してくれるようだ。辺りを世話なく見回す相手の服の端を軽く引っ張りつつ移動し事務所のものとは比べ物にならない柔らかさのソファーに少々面食らっていると相手から耳打ちされる、こちらも同じ意見で小さく頷きながら同じく耳打ちして返事をしていた。雰囲気のある所では自然と背筋が伸びるもので店員から『本日はご来店いただきありがとうございます。』と深々と頭を下げられ釣られてこちらも頭を下げる。早速ですがと断りをいれられながら目の前の机にベルベット生地のジュエリートレイが置かれるといくつか指輪が置かれていく。ごくシンプルなもの、宝石が目立つもの、奇抜な形、鮮やかな差し色が入ったもの、様々な種類が置かれていくと『まずはお二人の指輪をどんなものにするかイメージを掴んでいきましょう。気になるものはございますか?』と問われて)
…普段使いするなら飾りが大きい物とか繊細なものは避けた方が良さそうだね。
(ソファーに座って準備されていく中、相手に耳打ちすればどうやらこちらも同じようで緊張のまま内緒話を続ける。相手が話を通してくれていることもあって人目を気にする必要はなさそうだが慣れない場所と空気はやはり落ち着かない。やがて店員がやってきて丁寧に頭を下げられるとこちらもそれに合わせ、丁寧な仕草でジュエリートレイが並べられていく。いかにも宝石の乗った高そうなものから造形が凝っているもの、シンプルなものなどこれだけでも色んな種類がある。それらを観察しながらまずは避けた方が良い条件をあげていく。職業柄危険なことや厄介なことに巻き込まれることが多く、その仕事に支障があるものやすぐに壊れてしまうものは避けた方が良いだろう。そうなるとシンプルな造形のものになっていくがそれでは特別感が無いような気もしていつも以上に真剣な顔で指輪を見ていく。そうしていると『お仕事に付ける方だと内側に名前とか記念日、ちょっとしたメッセージを刻印される方も多いんですよ』と店員から説明がされて「内側か…確かにそこなら目立たずに特別感が出る」と感心した声をあげていて)
……そうだな、なんかに引っかかっちまっても困るし…指輪は大切にするけど外側の装飾は掠れちまう可能性もあるし、そうなると見た目はシンプルで内側に二人の名前と今日の日付を入れるのが良さそうだな
(結婚指輪と一口に言ってもその種類は実に様々でずらりと並べられるだけで圧倒されてしまう。この中から選ぶのも一苦労だと眺めていると相手がまずは除外すべき要素を挙げる。探偵業をやっていれば激しく動くことも多く動きに支障が出ては困る、現状ハードボイルドではない犬猫探しが多いことを考えても指輪の外側はシンプルなものの方が良いだろう。右手の小指に既にひとつリングをつけていることを思えば派手なものは避けるべきだ。となると一気に候補は見た目がシンプルなものに絞られる、チラリと横目で相手を見れば真剣に指輪を見つめていて二人の特別を選ぼうとしている姿に密かに胸は華やいだ。そうしていれば店員から内側に装飾する案を出されて相手と共に感心する、シンプルな結婚指輪をつけている人も多いが内側に意味を込めているのかもしれない。それに地面を転がされる機会も多いのを思えば装飾は削れてしまわないように内側がいいだろう。指輪のイメージを固めていれば『内側の装飾と一緒に小さな宝石を埋め込むことも出来ますよ。それぞれお好きな色の宝石を添える方が多いですね』とカラーバリエーションの表が差し出される。こういう時はお互いの色を交換するのが常だが「お揃いの指輪なら一緒の色がいいな…」と思ったことをつい口にしながら表を眺めていて)
ああ、そうしよう。二人の色を並べるのもアリだけど…あの、これ以外にアレキサンドライトは置いてますか?
(外に飾りをつけられない分、内側への刻印を提案されて同意するように頷く。内側にあれば誰かに見られることなく自分達だけの特別感を感じることが出来るだろう。大まかな方向性だけ決めていると店員から更に装飾の案が出される。差し出されたカラーバリエーションの表には定番の宝石が並んでいて色も豊かだ。眺めている間に相手の願望の呟きが横から聞こえてくるとどうするのが一番良いかと考える、左右にそれぞれ一粒ずつ埋め込むのもそれらしいがふと以前調べたワードが脳裏を過ぎると表には無いのは承知で店員に尋ねてみる。すると店員は少し驚いた顔をしてから『ありますよ、少しお待ちください』と言って一旦裏へと戻っていった。少しして戻ってきた店員の持つジュエリートレイには小粒の綺麗な緑色の宝石が乗っていた。これだけでも美しいのだが店員がライトを取り出して光を当てると赤がかった紫へと色が変わる。その変化を間近で見ると感嘆の声をあげて「実物を見るのは初めてだけどやはり神秘的だね」と興奮気味に告げた後「この宝石は当たる光によって色が変わって見えるんだ」と相手に解説して)
アレキサンドライト?……あ!すげぇ、色が変わった!俺達にピッタリじゃねぇか。流石だなフィリップ!
(特別な指輪にするなら今までと少し趣向を変えて二人で同じものを望んでみる、しかし表に並べられた色でしっくりくるものは無かった。それぞれの色がハッキリとある以上は難しいだろうかと考えていた矢先、相手が聞き慣れぬ名前を店員に伝える。それを聞いて何かピンとくるものがあったのか店員は一度店奥へと移動していて、合点がいかないまま不思議そうな顔で相手を見ていた。やがて店員が戻ってくるとトレイに置かれたのは綺麗な緑色の宝石だ、相手を示す色を宿したそれだったが徐に店員がライトを当てるとその色は自身を示す紫色に変わって相手と共に感嘆の声をあげた。子供っぽく興奮して相手の方をみれば目が合って解説が挟まる、こんな二人にピッタリの宝石があるだなんて知らなくて満面の笑みのまま相手を褒める。直後それなりの格式の店であるのを思い出して軽く咳払いして場をリセットしたが、二人の反応に店員もにこやかな笑みを浮かべ『それでは指輪の内側にお二人の名前と日付、そしてこちらのアレキサンドライトを埋めましょう。』と進行を続けてくれる。出されていた指輪が一旦片付けられて代わりにシンプルな見た目のものが並べられていく、『内側に文字と宝石をつけるなら少しだけ厚みのあるものをオススメします』と言葉が添えられる中、シルバーでほんの少しだけ波打つようなデザインの指輪が目に留まる。それを指さすと「これ、風が吹いてるみたいじゃねぇか?」と相手の方を見ると反応を伺って)
前に調べたときに気になっていたんだ。石によって色の雰囲気も変わるのだけどちょうどいい色でよかった。…本当だ、風に吹かれているみたいで他のものと区別化も出来るデザインだ
(あたる光によって自分の色である緑から相手の色である紫に変化するさまを見ると相手も子供みたいに興奮する。昼と夜で表情が変わる宝石とも呼ばれているが探偵と仮.面.ラ.イ.ダ.ー、相棒と恋人などさまざまな顔を持ちそのすべてが二人一緒である自分たちにピッタリだろう。以前その色が自分たちっぽいと記憶していたと告げ、個体差の面でも今見せてもらったものは文句ない。これも運命の出会いかもしれないとはしゃぐ相手と同じく口元は緩みっぱなしで指輪を決めていく。内側のデザインが決まればいよいよ指輪自体の形を選ぶことになるがシンプルな見た目ではどれにするか決めきれない。すると相手から声がかかって指さされた指輪を見る、造形はシンプルながら一部だけが波打つように加工されていて相手の言う通り風を受けたように見えてくればシルバー部分が特別輝いて見えた。他の物とも少し差のあるこのデザインが一気に気に入るとぱぁと表情を明るくして「これにしよう、翔太郎!」と賛成を示して)
俺もこれが気に入っちまった。こいつにするか
(ひとつの宝石の中に二つの色を兼ね備えたアレキサンドライトは二人で一人の探偵である自分達にこれ以外考えられないくらいに相応しく、個体差があるのならば尚更この色味に運命を感じてしまう。相手から以前調べていた知識だと聞けば喜びが湧き上がって人前だというのについ口元が緩んでしまう、この知識に辿り着いた時に自分達に結びつけて想ってくれたこと、そしてそれを忘れずにいてくれたこと、そのどちらもが嬉しかった。後は指輪自体を決めるだけだったが目を惹かれた風のイメージのリングを指させば相手も同じく目を奪われて一気に顔が明るくなる、この反応だけでもう購入は決まったも同然だった。二人の意見が一致すれば店員は『承知しました。』とにこやかに笑みを浮かべてその後の手続きを進めてくれる。文字を刻む際のフォントや刻む場所など細かい箇所を決めていき、最後に左手の薬指のサイズが図られる。いよいよここに指輪がはまるのだと思えば一気に期待が湧き上がって同時に幸せも胸に溢れてくる。一通りの話が着けば『それでは他にご希望はございますか?』と最後の確認がされて)
うーん、特には無いかな。…あ、指輪のケースは二つが並んだやつの方が良い。
(内側のデザインから指輪の形まで決まればいよいよ想像だけしていたものが形になって行く。細かく刻印のフォントや場所、宝石の配置などを決めていき最後に指のサイズが測られるといよいよ完成に近付いていることに幸せと照れ臭さが混じった感情が膨れ上がって落ち着かない。店員の持つオーダーシートが全部埋まった所で最後の確認をされると特に問題はないと答えるが資料の中に指輪を仕舞うケースが目に入ると注目を向ける。指輪については異論は無い、だがそれが収められたケースにも一つずつ入っているパターンと一緒にしまってあるパターンがあるようでその話はまだしてない。基本的には常時つけることになるだろうが外す時も一緒に居たくて隣同士に並んであるケースを指さして希望を伝えた。それ以外に特に無ければ「君は何かあるかい?」と尋ねて)
ならケースはそれにするか。俺の方はこれ以上はねぇからこれで決定だな
(店員から最後の確認をされると相手はケースの方を指差す、迷わず二つを一緒にいれられるケースを選ぶのを見ればまた嬉しくて擽ったくて口元が緩んだ。指輪は常に身につけているだろうが家に帰って仕舞う時にも一緒の場所にいるのだと思えば、それも自分達らしくて同意して頷いていた。こちらにも確認がされるが今ので満足していればこれ以上はないと返事をする、それを聞いた店員は『承知いたしました。少しお時間いただければ完成いたしますのでこちらでお待ちいただけますか?』と確認をされて頷くと店員は机に並べられていたものを下げて再び店の奥へと移動した。一時二人きりとなれば軽く息を吐く、相手との一世一代の指輪を決め終えて気が抜けて、しかし期待は止まなくて、ソファーの柔らかさもあって何処と無く落ち着かない。二人きりなのをいい事に相手の方へ手を伸ばすとその手をとって緩く繋ぐ、左手の薬指の付け根へと目線を落として軽く摩りながら「つけるのが楽しみだな」としみじみ呟けば顔を上げて相手と目線を合わせ、じわじわとまた幸せが胸に湧き上がれば我慢出来なくなって軽く笑って)
ああ、世界で二つだけの僕達の指輪だからね。無くしたり傷つけないようにしなければ
(こちらがケースを決めて相手も異論がなければ決めることは以上だ。問題ないと告げると準備してくれるようで店員は奥へと移動していった。もう少し選ぶのに難航するとも思ったがぴんと来るものがあって案外あっさりと決まった。安堵するように息を吐いていると相手の手が伸びてきて机の陰になるところで緩く繋がれる。薬指の付け根を指先が撫でるとくすぐったくて小さく笑いつつこくりと頷く。相手とお揃いの物は家には多いがこうして普段身に着けるものにはそう多くない。また一つ相手との繋がりが持てることに声を弾ませつつ軽く握り返しながら呟く。刻印があれば自分達だけの物になるだろうがその分既に大切にしたい気持ちは高まってきていて、これからの取り扱いについて呟いていればふと相手の方を見て「これで君が多少は落ち着いた行動を心掛けてくれればいいのだけど」と含みのある笑みと言い方をして)
な、ハードボイルドな探偵はいつだってクールなんだから問題ねぇだろ
(指輪選びは順調に進んで、つまりそれはいい廻り合せがあってお互いの望むものが同じだった証拠だ。机の下で緩く手を繋いでまたひとつ相手との繋がりが形として増えた幸せに浸る。手を握り返される心地を感じて相手の言葉に頷く、二人の特別な記念日のお祝いに揃えた相手の特等席に座ることを示す証、それを傷つけたり失くすわけにはいかない。しかし相手が含みがあるように、恐らく釘を刺すようにこちらの行動を制する様なことを言えば心外だと言わんばかりに反論する。反射的に言い返したものの時間が経てば経つほど今までの行動が脳裏に過ぎる、拳を使ったり何かに巻き込まれて転んだり、最も心配なのは地面を転がされた時だが、指輪を傷つけたり最悪壊してしまう可能性だってある。暫く動きを止めて考えた後「昼間はネックレスにして首からかけといた方がいいかもな」と思い直したように言って)
君の場合、ネックレスにしても何処かに引っ掛けてきそうだけど。それにちゃんとここに付けないと周りにアピール出来ないだろう?
(こっそり手を繋いで出来上がる指輪に想いを馳せていたが普段の相手の行動について指摘すれば相手からは反射的な返事がされる。指輪をなくしたり傷つける可能性は普段の行動を見ても相手の方が高いだろう。それは相手も自覚があるのか暫く考え込むように止まった後ネックレスにすると聞けば少し眉を寄せる。ネックレスの方がゆとりがある分、振り回したり飛んで行ったりしてしまいそうだ。だがそれよりも問題点があって相手の手を取ってその薬指に指を添えるとじっと相手を見つめ独占欲のこもった言葉をかける。二人の証でもあるが同時に周りへ大切な人が居るというアピールのアイテムでもあって特別な箇所に身に着けていなければ意味がない。ぎゅっと手を握ると「せいぜい無茶はしないことだね」と楽し気に告げて)
なら服の下に、…っ……まぁ、そうだな……指輪はそういう意味だよな……俺はお前のもんなんだって、ちゃんと示す為に大切にする
(指輪を首からさげる案を出せばせっかく何処かに引っかからないようシンプルなデザインにしたのに本末転倒だと指摘を受けて何も言い返せずたじろいでしまう。それならば何処かに引っかかる心配もなく傷つける可能性もない服の下に入れることを提案しようとするが、その前に手を取られて言葉が途切れる。そして独占欲を隠さない言葉と共に視線を注がれ指輪がはまる場所を撫でられればドクンと派手に心臓が跳ねた。誰かの元に行く気は毛頭ないがここの隣以外何処にも行かせない鎖に似た行為、それが自分に注がれていることにどうしようもなく喜びを覚えて、しかしストレートに伝えられらのが恥ずかしくて、目線を泳がせる。何とか手を握り返すとポツポツとなんとか言葉を紡ぎながら楽しげな顔をチラリと見てこちらも小さく笑みを浮かべた。そうしていると奥から足音が聞こえてきてそっと手を離す、店員がトレーの上に相手が指定したケースを携え戻ってきた。きっとあの中に二人の指輪が入っているのだろう。『お待たせいたしました』と店員がケースを手に取ろうとするがその前に「完成品は二人で見てぇんだけど、このまま貰ってもいいか?」と声をかける。それを聞いた店員はにこりと笑って『承知いたしました。何か不具合がありましたらこちらにお持ちください』と言ってそのまま手提げ袋にしまってくれる。相手の方に目を向けると「俺達の指輪は事務所で初披露にしねぇか?」と提案して)
そうしようか。なら僕たちの場所に帰ろう、翔太郎。
(相手がほかの人に好かれやすいのは周知の事実で既に大切な人が居るというアピールと牽制の為にそのまま指輪としてつけることを望むと相手の言葉は途切れて目が泳ぐ。だが手がしっかりと握り返されて相手が自分のモノだと主張されると口元は緩んで「そうしてくれ」と微笑んだ。そうしているうちに店員が戻ってきてそっといつも通りの距離に戻る、ケースの中身を見せてくれようとするが相手がそれを止めていてキョトンした反応を見せる。だがその理由を聞けば思わず笑い声が零れて店からも問題ないことを聞けば相手の方を見て賛成を示す。そうと決まれば早く事務所に向かいたくて相手の名前を呼ぶと会計に進む。提示された額は結婚指輪と希少な石を使ったのもあってかなり高い額だったが全てを出すと言い張る相手に半分この理屈を出してごねることで何とか穏便に済んだ。手提げ袋を受け取り店員に見送られながら店を後にするがやはり袋の中身が気になってつい視線を向けてしまう。どんな仕上がりになったのが楽しみで何度も袋を持ち上げては中を覗きこもうとして、ついには大切に腕の中に抱え、気持ち早足で休日の事務所に向かって)
___よし、なら早速お披露目するか
(互いの相棒が生まれた日を祝し、互いが最期まで相棒であることを宣言し、いついかなる時も共にあることを誓う結婚指輪、それを相手とだけ共有したくて事務所でケースを開けることを提案すれば隣からは笑い声が聞こえてくる。何よりも特別な指輪を初めて見る瞬間すら誰にも見られたくない、自分のものだけにしておきたくてついお楽しみを取っておいてしまった。支払いに関してはかっこよく決めたかったが相手の全て半分この理屈には勝てず二人で得た分から支払うことになった。それも二人で一人の探偵に相応しいのかもしれない。帰る道すがら相手はずっとそわそわとしていて何度も袋に視線を向けてついには腕に抱え込んでしまう、楽しみが隠しきれないその姿に特別な幸せを感じながら事務所へと急いだ。事務所の鍵を開け看板は【CLOSE】のまま中へ入る、いつも通り帽子をしまって上着を脱いで、一通り落ち着いた所で相手に声をかけた。あれだけ楽しみにしていた相手を前にこれ以上お預けなんて出来ないだろう。あの夜に二人で一人に変身して、この事務所で互いに相棒になった。その場所で袋からリングケースを取り出すと相手の左隣に立つ。そこから一歩相手に寄ってピタリと寄り添って視線を交える、小さく笑みを浮かべてから二人の前にリングケースを持ち上げた。「開けるぞ」とまたどこか緊張のまとった声で言ったあと、そっとケースの蓋を開ける。中には白い布地の中に静かに並ぶ二つの、自分達の指輪があった。シンプルなシルバーだが一部風のように波打つデザイン、その内側には二人だけを示す意味が刻まれている。ゆっくりと息を吐くと「俺達の指輪だ」と噛み締めるように言って)
ああ。…! 僕達の指輪……翔太郎、
(落とさないように、大切なものを抱えて事務所に戻ってくる。休日だから勿論所長も依頼人も居なくてあの日依頼を解決した時に似た状況だ。上着類を片付けて相手から声がかかると多少緊張しながらケースを取り出すのを見守る。右隣で声かけに小さく頷き、そっと高級そうなケースを開かれると中から二つの指輪が現れて思わず息を飲んだ。風のように波打つデザインでそのうねりの隙間から自分達の色に移り変わる宝石がちらりと見える。自分達だけの指輪が目の前にあることをじわじわと実感して、隣から呟きが聞こえてくれば同じ言葉を繰り返して指輪を見つめていた。だがこの指輪は鑑賞のために購入したものではない。本来の意味を果たすためにも小さく息を吐いてちらりと相手の方を見ると名前を呼び、左手を目の前に差し出してから「…君がつけてくれるかい?」とお願いして)
もちろんだ。…フィリップ。これからどんなことがあっても俺はお前の隣にいて支える。最期まで走り続ける。ずっと…愛してる。だから、俺の隣にいてくれ
(二人の目の前でケースを開けて見せれば隣の相手が息を飲むのが分かる、ケースの中に収められた二人の特別な指輪を前に相手と出会って、誰とも到達した事の無い関係に至って、それが形になった事に喜びと感慨深さとが胸に溢れて心が暖かいのに興奮が止まらない。チラリと相手の方を見れば同じく名前を呼びながらこちらを見る相手と目が合う、ケースの中の指輪まで今か今かとその時を待ちわびている気がした。左手を差し出す相手に喜びはまた華やいで自然と口角を上げるとケースをテーブルへ置き、そっと丁寧に相手の分の指輪を取り出してから相手の正面へと立って左手をすくい上げるように取る。真っ直ぐ相手を見つめながら再び誓いを立てる、何度求められても変わらぬ内容を瞳を見つめながら宣言すれば、その左手の薬指にそっと二人の指輪をはめ込んで)
(/お世話になっております。ついに検索様と大台に到達したこと、まずは心より感謝申し上げます。こんな数に検索様と到達することができるなんて夢にも思っていなくて、でもまだまだやりたいことは溢れていて、通過点なのですがここまでたくさんのやり取り、物語を検索様と紡げたこと、とてもとても嬉しく思っています。毎日こうやって検索様とやり取り出来ることが本当に嬉しくて楽しくて、少々大袈裟ですが生きる糧になっています。元があるお話ですがやり取りを続けるうちにどんどん世界が広がってここの二人の姿をもっと見たいと思うのは、ひとえに検索様と好きな展開が同じで近しい価値観を持っていて同じものを楽しめるからで、そんな人に出会えて年単位でやり取りさせていただいていること、改めて感謝しております。少し前に背後文でも書かせていただきましたが、検索様のお返事はいつだってどんな内容なのか楽しみで貰えれば嬉しいのですが、長らくお付き合いを続けて背後事情も当然変わっていると思っていますので、これからもお互い背後優先で無理のないペースで、ずっとずっとやり取りさせていただけますと嬉しいです。めちゃくちゃ計画した訳ではなかったのですがこの大台と共に検索くんに指輪を渡せて、またこれも検索様との縁のひとつかなと思っています。長くなってしまいましたが検索様と検索くんのことがただただ大好きです。これからもどうぞよろしくお願いします。)
……翔太郎。 あの場所でただ言われるがままに動く道具がフィリップという人間になれたのは全部君のおかげだ。僕は僕の意思でこの命が尽きるまで君のそばに居たい。 …僕もこの地球の何より君が好きで、愛してる。これまでも、これからもずっと一緒だ、翔太郎。
(目が合って左手を差し出すと相手の口角が上がる。言いたいことが通じたようでケースから一つ指輪が取り出されて正面にやってくると手が取られた。真っ直ぐと向けられる瞳は最初の時とは変わらない、寧ろその熱と想いは増していて無意識に背筋が伸びた。何度だろうと変わらない誓いを告げられて想いと願いが伝えられると胸の底が震えて幸せで満ちていく。そして左手の薬指に二人で決めた特別な指輪が収まると一段と光り輝いているように見えて目を奪われると共に口元に笑みが浮かんで仕方ない。手を開いたり握ったりしてそこにある実感を確かめていたが相手にも同じものを授けたくてケースに残ったもう一つの指輪を手にして相手に向き直る。名前を呼んで真っ直ぐ相手を見ると相手と共にいる相棒、そして一生を共にする恋人として誓いを立てる。ずっと胸にあってこれまでもここからも変わらない想いを伝えると相手の左手をすくうように取ってその薬指にお揃いの指輪をそっとはめて、満足そうな笑みを見せて)
(/こちらこそお世話になっております。あと少しの所から多少意識はしていたのですが最高のタイミングで探偵様と大台を迎えられたこととても嬉しく思っております。年月もそうですがここまで沢山の、そして深くて濃いやり取りを続けてきたこその数字だと思っていますのでこの日を迎えられて良かったです。こちらも探偵様とやり取り出来るのが毎日凄く楽しくて、もはや生活の一部になっております。最近では時間軸を変えたりパロや少し踏み込んだ話まで色々としてきましたがその中でもブレることなく楽しめて色々な思いつきを遠慮なく組み込めるのも近しい価値観で絶対的な信頼が置ける探偵様がお相手だからこそと思っております、いつも本当にありがとうございます!時間や物語を積み重ねていったからこそのやり取りも多くて本当に二人が生きているように感じています。言葉に出来ない程探偵様と探偵君のことが大好きで大切で、是非これからも沢山やり取りしてくれると嬉しいです。これからもお互いのペースで無理せずお話を続けていきましょう。よろしくお願いします。)
フィリップ……すげぇ幸せだ
(何度口にしても変わらない誓いを伝えて指輪を相棒で恋人の左手の薬指へとはめる、その間相手の視線は指輪へと奪われていてその顔に幸せが滲んでいればこちらの胸にも幸せが咲き誇って止まない。相手が薬指にはめられた指輪を見つめ手を動かしているのを見れば感情が溢れすぎて無意識に吐き出す息が微かに震えていた。そしてケースに残っていたもうひとつの指輪を相手が取り出す、名前を呼ばれれば真っ直ぐと見つめて紡がれる言葉をひとつも聞き逃さないように向き合う。何度聞いてもその真っ直ぐな言葉と誓いはこの体にじわりと染みて指の先々まで広がって幸せと温かさで満たされていく。何時だって自分が帰るべき場所が相手の隣なのだと改めて実感していれば左手を取られて薬指に指輪がはまる、それは帰るべき場所を示すものでもあって喜びと幸せが溢れて止まなくて抱えきれなくなった想いが吐息となって流れ出して顔には笑みが滲んでいた。左手にはまった指輪を愛おしげに見つめる、互いの左手の薬指に同じ指輪がはまって二人の繋がりはより強く目に見えるものになった。幸せを滲ませながら名前を呼ぶも我慢が効かなくなって一歩踏み込んで相手を抱き締める。指輪のはまった左手を相手の頬に添えれば愛しい恋人の顔を視界にたっぷりと収めて、それでも足りなくなってしまえばさらに近づき唇を重ねて)
僕もだ。……ん、…翔太郎。
(あの式場でしたものと同じ真っすぐで変わらない想いを誓うとその左手の薬指に指輪をはめる。相手の視線がそちらに行き、その顔に幸せそうな笑みが浮かぶのが見えればこちらまで嬉しくなってその姿を見つめていた。普段指輪をしない分、その存在を意識することになって自らも自分の指輪を何度も見てしまう。恐らくこれからそう長くない時間をかけてこの姿が当たり前になっていくのだろう。そんな幸せを噛みしめていれば相手が近づいてきてその腕に閉じ込められる。少しひんやりとする金属の感触を伴って頬に手が添えられるとこちらも目を細め同じ思いだと告げる。何も言わずに顔が寄せられると無意識に瞼を閉じて恋人としての特別な好意を受け入れる。ただ触れ合っているだけなのに幸せはあふれ出して軽く腕を回して抱き着きながら長い間キスを続けた。やがて瞼を開けてほんの少しだけ離れると至近距離で相手の名前を呼ぶ、そして幼くも満面の笑みを見せながら「最高の記念日だね」と弾む声で告げまたこちらから顔を寄せ二回目の口づけを交わして)
……フィリップ。お前と出会って間違いなく今日が最高の日だ。…、……そういや記念日に欠かせないもんをもうひとつ用意してんだ
(何よりも特別で二人の為だけに作られたこの世にふたつしかない結婚指輪、それを互いの薬指に添えれば喜びは溢れて止まらなくて距離をゼロにすると唇を重ねる、背中に回る腕の体温が心地よく溢れる幸せはさらに膨らんでいって長い間この距離から離れることは出来なかった。相手としか得られない特別な幸せに心は舞い上がっていて、まるでこのまま二人の体も宙に浮かんでしまう気がするほど経験した事ない幸福が体中を満たしている。やがてゆっくりと唇は離れて視界いっぱいに愛しい人の顔が広がる、そんな状態で相手らしい無邪気で満面の笑みが浮かべば胸が痛くなるほど心を掴まれて心が震える程の幸福にこちらも笑みを溢れさせた。名前を呼んで軽く頷いていれば再び唇が重なる、また直ぐに離れられる気はしなくて暫く相手からの口付けに浸って広い事務所の中で限りなく二人で近づいて幸せに揺蕩う。やがて再び唇を離して至近距離で見つめればもうひとつこの日に相応しいものを用意したことを明かす、額をこつんとくっ付けて軽くそこに擦り寄りながら「なんだと思う?」と楽しげな口調で聞いて)
…、…もう一つ? なんだろう…祝い事ならケーキ、とかかい?
(あるべき場所を見つければもう離れる事なんて出来なくてぎゅっと抱き着いたまま唇を交わす、一度離れても幸せはあふれるばかりで言葉にできない分を伝えるようにまた顔を寄せて唇を重ねた。直ぐに離れる気がしなくてただその温かさと幸せを実感するように軽く相手を抱きしめながら長く、長くキスを交わす。やがてゆっくりと離れるも近い距離は保ったままでご機嫌に相手を見つめていたがこつんと額を合わせながらもう一つ何か準備していると聞き目を瞬かせる。こういった祝いの場を経験したのも片手で足りるほどだ。記念日に欠かせないものと聞いてもピンとくるものはなく考え込むように呟く、唯一浮かんだのはクリスマスなどに食べたケーキだが朝からずっと一緒にいたが何処か店で調達できる時間はなかったように思う。何処か楽し気な相手に一応浮かんだ回答はしつつ、答えを急かすようにじっと見つめて)
流石は俺の相棒、正解だ。ま、正確には俺が用意したんじゃねぇんだけど…こっちだ
(幸せに浮かされて普段はしないような他愛ないクイズを出してみれば相手は目を瞬かせて考え始める、その仕草すら愛おしく楽しげに見つめていればやがてひとつの答えが出されて直ぐ様正解を求めるように見つめられれば思わず口元を綻ばせてしまった。ぎゅっと腕に力を込めながら正解を言い当てたことを褒めつつ種明かしをするように小さく笑う。少々名残惜しいがそっと腕を解いてそのまま相手の手を取った。繋いだ手の一部は金属の感触がして無意識に口角は上がってしまう、そのままキッチンの方へ移動すれば冷蔵庫を開けた。そこには小さな箱がひとつ鎮座していて『私からのプレゼントなんだから感謝しなさいよ!』と所長様らしいメッセージカードが添えられていて思わず笑ってしまう。箱を取り出しながら「今日を俺達の誕生日にするって言ったらプレゼントが必要だって言ってくれてな、指輪買いにいってる間に用意してくれたんだ」とさらに種明かしをする。キッチンに置いた箱をまたそっと開ければ二人分の小さなフルーツケーキに『翔太郎くんフィリップくんお誕生日おめでとう!』のチョコプレートが添えられていて所長からのプレゼントに笑みを浮かべれば相手の方を見て)
…アキちゃんからのプレゼントだ!っ…、…こんなことされたの、初めてだ
(お祝いに必要なものと聞いて浮かんだものを回答すれば腕に力を籠められながら正解だと言われるもいまいちピンとこない。相手が用意したものでないと聞けば尚更できょとんとしながらも手を取られると軽く握り返しながらその後ろをついていく。たどり着いたのはキッチンで相手が冷蔵庫を開けると昨日見たときには無かった小さな箱が入っていた。その上にはメッセージカードが添えて会ってそれを読んで送り主が誰か分かれば思わず声をあげる。思わぬサプライズに浮かれながら相手の種明かしを聞けば納得するとともにその心遣いに胸が暖かくなる。相手の休みの申請と合わせて考えてくれたプレゼントなのだろう。箱を冷蔵庫からテーブルに移してそっと開けるのを見守ると中からは小さなフルーツケーキとチョコプレートのメッセージが添えてあって大きく目を見開いた。誕生日なんて意識すらしていなかったのに、この特別な日を祝ってくれるひとがいる、誕生日だと言葉を送ってくれる人がいるのだと強く感じることが出来れば嬉しさや幸せなどが一気にこみあげてきて息が詰まる。昂った感情で薄っすらと瞳が嬉し涙で濡れながら素直な感想を告げると「アキちゃんには明日お礼を言わないと。それと…誕生日ってうれしいものだね、翔太郎」と少し照れ臭そうに微笑んで)
……良いもんだろ?でもアイツだけにその表情すんのはいただけねぇな。…誕生日おめでとう、フィリップ
(冷蔵庫に隠されていた所長様からの誕生日プレゼントをお披露目すると相手は興奮気味に声をあげる、中からケーキを取り出せば誕生日にだけ貰える特別なプレゼントに目を丸くしていた。こちらも所長の想いの籠ったプレゼントに胸が暖かくなる、今日の計画を話した時にいの一番にケーキが必要だといってくれたのも嬉しかったがチョコプレートに二人の名前が刻まれているのをみればその喜びはますます大きくなった。チラリと相手を見れば感極まったのか息を詰まらせて薄らと瞳に膜を張っている、この表情は後日ぜひ所長に伝えなければならないがこんなにいい表情をアキコにだけ独り占めされるのは癪だった。相手の誕生日を祝いたいのは誰よりも自分なのだから。照れ臭そうに笑う表情にさらに心を掴まれれば余計に相手を自分のもとへ取り返したくなって一歩近づきピタリと寄り添うと腰に手を回して引き寄せる、そして今までに言う機会のなかった言葉を相手へと送った。変わらぬ親愛を込めてこめかみにひとつ口付けを送ると「俺もお前の誕生日祝えて嬉しい」とまたひとつ初めてを積み重ねた事に喜びを感じる。しかし今日は相手の誕生日と共にこちらの誕生日も兼ねたもので一拍間を開けてから口付けを落とした部分へ擦り寄ると「フィリップ…俺のためにケーキにあうコーヒー入れて欲しい」とねだって)
ありがとう、翔太郎。最高の一日だ。…ふふ、分かった。最高の一杯にしようか
(ケーキは今まで何回も食べたことはあるが特別なメッセージの乗った記念日の物は初めてで今日の為に準備し居てくれたのだと思えば胸が温かくて仕方ない。なんてことのない日が特別な日になった幸せを噛みしめながら誕生日というワードを使えば一歩近づいてきて腰に腕が回される形でくっついた。その口調が何処か張り合うようにも聞こえて小さく笑うと相手に顔を向け、告げられた言葉と軽い口づけにまた口元を綻ばせてありのままの感謝を伝えた。初めて祝ってもらった今日という日は最期の時まで忘れることは無いだろう。弾む声で感想を述べていれば相手が擦り寄ってきてコーヒーのリクエストがされれば思わず笑い声を零してその頭を撫でながら承諾の返事を返す。さっきから貰ってばかりでこちらからお返しが出来ていない。それが自分の淹れるコーヒーをリクエストされるならばこれまでで一番のコーヒーを飲ませてあげたい。やる気を見せこちらからも頬にキスを落とすとくっついたまま少し移動してお湯を沸かし始める。普段の反応から相手が気に入っている豆をチョイスして挽いていくと部屋中にいい香りが広がっていく。手際よく準備を進めてお揃いのカップを用意すると真剣な顔つきで普段よりも丁寧に、気持ちを込めてお湯をかけてじっくりとコーヒーを抽出していき)
あぁ、頼んだぜフィリップ
(誕生日のお祝いの言葉を向ければその口元は綻んで礼を言われればこちらの口角も上がってしまう、今日という日が相手にとって特別に幸せな日になっているなら何よりだ。そしてこちらからもコーヒーをリクエストすれば当たり前のように承諾されて頭を撫でられるとさらに口元を崩してグリグリと相手に擦り寄る、こんな骨抜きにされた姿を見せられるのも、受け入れられるのも、相手だけだ。頬に口付けられて擽ったそうに笑えばくっついたまま移動を始める、途中隣にいるだけでは物足りなくなって後ろから抱きつくようにするとその手際を眺めていた。その間も楽しみを隠しきれなくて、それと自分からリクエストしておいて視線が自分に向いていないのが少し不満で、時折後頭部に頬を擦り寄せ自分の存在をアピールしておく。豆がひかれて良い香りが周囲に広がると思わず深呼吸をする、抽出の工程になれば集中を流石にそぐことはできず「俺はケーキ用意しとく」と声をかけて後頭部に口付けてから離れた。大好きな人がいれる大好きなコーヒーの香りに包まれながらケーキ用の皿とフォークを用意する、箱の端に取り付けられていたロウソクを取り出すとケーキの縁に立てていった。相手がコーヒーを持ってくるタイミングでロウソクに火をつけると「誕生日ならこいつもしとかなきゃな」と楽しげに言って)
任せた。…よし、出来た
(相手のリクエストに応えるために移動して準備をしていると相手は後ろから抱き着いてその様子を見守っているのを感じる。くっつく体温が心地よくて時折頬が擦り寄ってくれば作業の手を止め軽く頭を撫でてやったりしながら豆を準備していた。一番大切な抽出の段階に移ると相手がケーキの用意を申し出て軽い口づけにまた口元が緩むのを感じながら相手にそちらを任せて最後の仕上げに移る。雑味が入らないように地.球.の.本.棚の最適化した温度、時間、角度でお湯を注ぐと二人分のマグカップに綺麗なコーヒーが注がれていく。最後の一滴まで注ぎ終えて納得いく仕上がりに呟きを零しているとテーブルの方では準備が進んでいてマグカップを持ってそちらに移動する。同じタイミングでロウソクに火が灯されるとぼわっと暖かい灯りが広がって思わず感嘆の声をあげる。ろうそくの火を吹き消すのが誕生日の定番の行動であることを思い出すとせっかくなら、と事務所の明かりを消しに行く。まだ完全に外は夜にはなってないが薄暗くなった空間にろうそくの光が辺りを照らしてチョコプレートの文字が良く見えるようになる。上機嫌に相手の隣に並ぶと「誕生日の人がこれを吹き消すのだろう?」と確認と共に楽しそうに笑って見せ)
そっちも準備バッチリだな。…あぁ、誕生日の奴の特権だ。吹き消す時に心の中で願い事すんのを忘れんなよ
(テーブルにコーヒーが運ばれてくると自分ために入れられた一杯はいつにも増して良い香りがして思わず深呼吸する、こちらの望みが叶えられ上機嫌なままロウソクに火を灯せば相手が電気を消して薄暗い空間にキラキラとケーキが浮かび上がった。隣にやってきた相手の腰に再び手を回して引き寄せる、ロウソクの光はケーキだけでなく相手の楽しそうな笑顔も煌めかせてこの幸せな瞬間を逃さないように腕に力を込めた。ロウソクの火を吹き消すのを確認されれば頷き答える、主役だけが行える特別な行為なのだと何処か得意げに説明するとチラリとケーキを見てからまた相手の方に目線を戻す。こちらが願うことは何時でも決まっている、指輪に込めるのと同じ願いと二人が健やかに暮らせるようにという願い。手を伸ばしてケーキを少しだけこちら側へ引き寄せればその間ロウソクの光が左手の薬指にある指輪に反射して煌めきを放つ、それにまた言いようのない幸せを感じて口元を緩ませながら「いくぜフィリップ」と声をかける。少しだけケーキに顔を近づければ「せーの、」と音頭をとって相手に合わせてロウソクの火に向かって息を吹きかけて)
分かった。…せーの、…! お誕生日おめでとう、翔太郎
(薄暗い中でろうそくの優しい光が灯るとさきよりもずっとケーキが輝いて見える。その綺麗さに目を奪われていると腰に腕が回されてまた体がくっついた。さりげなく引き寄せられる仕草にまた胸が満たされるのを感じながら尋ねれば主役の特権だと説明されまたわくわくは増してこくりと頷いた。ケーキが引き寄せられて二人の目の前にやってくれば期待に輝く目を相手に向けてアイコンタクトを送る。今何かを願うとしたら来年もその次の年もその先も今日と同じように特別な日を祝いたい。そんな思いを胸に抱きながら同じタイミングで声を出してケーキの右半分のろうそくに息を吹きかければ相手と一緒にすべての火を消すことが出来た。薄暗くなっても喜ぶ相手の顔はよく見えてすぐにそちらを向けばこちらも無邪気な笑みで初めての相手の祝いの言葉を送ってそのまま勢いでぎゅっと抱き着く。その存在を強く感じながら「君が生まれてきて、こうやって出会えてよかった」と素直な感想を伝えて)
っと、…ありがとう、フィリップ。俺もお前が生まれてきて、出会って今もこうして一緒に居てくれてよかった。…ずっと一緒にいてくれ
(ドライバーがなくとも相手と息を合わせるなんて造作もないことだ、掛け声と共に左半分のロウソクを消せば二人で全ての火を消すことが出来て今日はそんな小さな成功すら愛おしくて嬉しい。その感情は顔に出ていたようでこちらを見る相手の顔にも無邪気な笑みが浮かんでお祝いの言葉を向けられればぎゅっと強く胸を掴まれた。この世で一番愛する恋人から特別な言葉を向けられる嬉しさは格別で息の仕方を忘れるように固まっていれば相手がこちらへ飛び込んできて慌てて抱き留める。強く抱き締められれば息をつくと共にじんわりと幸せは広がって、ここに居るのを肯定されるような言葉を向けられれば大切なものに大切だと想いを伝えるようにこちらからもぎゅっと強く抱き締めて互いの頬をくっつけた。また相手の傍から離れ難くなってしまったが煌めくケーキと香り立つコーヒーを放っておくわけにはいかない、「誕生日ケーキ食うか」と浮ついた声で言えば軽く口付けを送ってからそっと離れる。部屋の電気を付けてキッチンからナイフを持ってくるとフルーツケーキを二つに切り分けた。上に乗っていたチョコプレートは相手の方へと乗せるとフォークを手に取ると早く食べようと相手に目配せし)
ああ、もちろん。 …いいのかい?
(相手に溢れる感情のまま抱き着くとしっかりと受け止められて、更に腕が回ってきて強く抱きしめられる。何か一つでもボタンを掛け違えていればきっと出会う事の無かったと思えば今こうして一緒に誕生日を迎えられることが何よりも嬉しい。そして頬をくっつけたまま自分の存在を認めて受け入れてくれる言葉を聞けば体から力が抜けて軽く擦り寄った。そうして抱きしめ合っていたが相手からケーキの事に触れられるとこくりと頷いて準備を再開する。明かりをつけて相手がケーキを半分にするがそれでもいつも食べるカットケーキよりも多くてその上にはこんもりとフルーツが乗って美味しそうだ。避けられていたチョコプレートが切り分けられた自分のケーキに乗せられると目を見開き窺うように視線を向けるがその目を子供みたいに輝かせる。特別なケーキになれば口元は緩んだまま「いただきます」と手を合わせてから一口分をとりわけ口に運ぶ。ふわふわのスポンジ生地にちょうどいい甘さの生クリーム、そしてみずみずしいフルーツの食感が重なってその味に口角があがる。すぐに相手を見れば「幸せの味だ」と嬉しそうに感想を告げて)
初めての誕生日なんだしプレゼント追加だ。……、…そうみたいだな
(二つに分けても十分大きいケーキにこれはお返しが大変そうだと内心楽しげに思いながらチョコプレートを相手にそのまま渡す、相手は驚いたようだったが途端にその瞳は無邪気な輝きを見せてそれだけでお釣りが出るくらいにはチョコを渡して良かったと思えてしまう。相手に合わせて「いただきます」と口にするがその顔は相変わらず子供のように煌めいていてつい視線が離せなくなってしまう、そのまま最初の一口を食べるのを見守れば咀嚼したあとにすぐその口角は上がった。直ぐ様相手の瞳がこちらへ向けばまた胸が暖かくなる、このケーキの喜びをいの一番に自分へ知らせてくれたのが何よりも嬉しい。弾む心のまま何の断りもなく顔を寄せれば今しがたケーキを食べたばかりの口に軽く口付ける、ケーキの甘さを纏った相手の唇はより特別なものになっていてこちらも相手の瞳を見つめながら幸せそうに、しかし少し悪戯っぽく笑みを浮かべていた。甘さが広がる空間でこちらもケーキをひとかけらフォークですくうと口に運ぶ、程よい甘さにフルーツの瑞々しさがよくあっていて「色んなフルーツが楽しめていいな」と感想を口にしていて)
ん、今日はケーキだけじゃなくて君も甘いみたいだ。…翔太郎、あーん
(相手からチョコプレートもプレゼントの一つだと言われると自然と口元に笑みが浮かぶ。当たり前のように与えられる特別がうれしくて弾む気持ちのままケーキを口にした。その感想をすぐに相手に共有すると何も言わないまま顔が近づいてきて唇が重なる、一瞬驚くもその意図を理解すればこちらも緩く笑って相手の態度が特段甘やかしモードなのを揶揄い交じりに指摘した。大好きな恋人と一緒に過ごす時間は何よりも贅沢で相手がケーキを食べる様子をつい目で追って何も気取ることなく食べる姿にまた些細な幸せをかみしめる。だが相手と一緒に居ればもっと近づいて特別なものが欲しくなって自分のフォークで主役とも呼べるいちごの乗った部分をすくうと相手の名前を呼びそのまま目の前に差し出して)
なんせ特別な日だからな。…ん、……甘酸っぱくて美味いな…、……
(二人の特別な指輪を揃えて初めての特別な日を二人で祝う、そんな中で何よりも愛しい相手が喜びに浸って笑顔を煌めかせていればこちらにも幸せは積もって止まなくていつも以上に特別な時を過ごしたくなってしまう。普段甘いなんて言われれば即座に反論するところだが今日は別だ、互いの相棒が生まれた日を、恋人が隣に居てくれる事を、今日はお祝いしたい。ケーキに舌鼓を打っていれば相手は一際輝くいちごをすくい上げこちらに差し出してくる、ケーキの主役とも言えるそれが自分に与えられる特別さ、贔屓されている嬉しさ、甘やかされているこそばゆさ、全てが綯い交ぜになって口元を緩ませると体を少し乗り出して差し出されたものを口に含む。柔らかなスポンジと生クリームに甘酸っぱいいちごは良く合って思わず目を細めながら咀嚼する、今はその幸せを直ぐに共有したくなって再び体を乗り出すと相手にまた軽く口付けた。甘酸っぱさを唇に乗せて離れると何かいわれる前に今度はこちらがメロンがのった部分をすくい上げ相手に差し出す、「お前の色だからな」と上機嫌に言いながらその顔をじっと見つめていて)
…、あーん。…ん、美味しい。
(普段なら甘いと言えば即反論されただろうが今日はいつにも増して表情も態度も甘々だ。それが自分の前だからということが分かりきっていれば心は弾んでイチゴの乗ったケーキを差し出す。それを嬉しそうに食べて貰えるとこちらもふわりと笑みが浮かんで自分がケーキを食べた時と同じくらい、寧ろそれ以上に満たされていく。すると相手が近づいてきてまた軽く唇が重なる、今日何度目かのキスにすっかり慣れて自然と受け入れつつ何か揶揄う言葉を投げかけようとしたところでメロンの乗った部分をすくいあげ目の前に差し出されると一旦言及は諦め、口を開けてフォークの先の甘味を口に含む。メロンの濃厚な甘さとケーキ部分の相性はピッタリで咀嚼しながら口角をあげて感想を述べた。相手から貰った物をじっくりと味わってからコーヒーを口にすると適度な苦みがケーキとマッチして思わず至福の息を零した。「コーヒーともバッチリ合う」と自画自賛しながらもう一口飲むと「君も飲んでみたまえ」と得意げに促し期待の眼差しで見つめていて)
それなら何よりだ。……今日はこれを飲まなきゃケーキが完成しないからな
(浮かされるままに何度も口付けを送ってそれを誤魔化すようにメロンが乗ったケーキをお返しとして差し出す、ケーキを口に含むと相手はまた口角を上げ幸せそうな顔を浮かべていて、そんな顔を見るだけでも甘くて幸せな心地が胸を満たした。そのままコーヒーを飲む姿までジッと見つめてしまって至福の息を吐く姿にこちらも幸せが募る、そこで声を掛けられると相手に夢中になりすぎてまだコーヒーを口にしていないことにようやく気がついた。期待たっぷりな眼差しに思わず笑みを浮かべながらカップを手に取るとコーヒーを一口飲む、芳しい香りが鼻を通り抜け程よい苦味は甘いフルーツケーキと良く調和している。思わず「美味いな」と呟くもその味が何よりこちらの好みにバッチリであるのに気がつくと照れ臭そうにまた笑って「俺が大好きな味だ」と飾らない感想を口にする。相手が自分のために入れてくれたコーヒーをもっと楽しみたいがケーキと一緒でなければその美味さは最大限引き立たない。となれば必要なのはケーキの方で一旦椅子を降りて二人の椅子をピタリとくっ付けて、くっつきながら座り直せば相手の方へ向き「フィリップ、もっとコーヒー飲みてぇからもう一回ケーキ食いてぇ」と強請って相手の方へ口を開けて)
君の為に入れた一杯だからね、リクエスト通りだろう? …しかたないなぁ
(特別丁寧に入れたコーヒーはその手間の分いつもより美味しく感じられて息が零れる。そしてその一杯を相手にも飲んでほしくて期待を込めた目で見つめると相手は笑みを浮かべながらカップに口をつけた。自信はあるもののドキドキしながらその様子を見守っていると素直な感想が呟かれ、さらには大好きな味と言われれば一気に気分は上がって得意げな顔で答えていた。誕生日に見合う贈り物になったようで一段落していると相手が一旦椅子から降りたかと思えばこちらにくっつけてきて動きを止める。ケーキを食べるのには不便な、だけどすぐそばに恋人の存在を感じられる距離感となると相手と目が合う。そんな状態でケーキを強請られるとつい声にも甘さが乗ってキウイフルーツとクリームがたっぷり乗った所をフォークで切り分けて乗せる。わざとゆっくり、見せつけるように相手の口元に運ぶと「美味しいかい?」と楽し気に問いかけて)
あぁ、間違いなく最高の一杯だ。…ん、…
(こちらのリクエスト通り自分のためにいれられたこの世界で一番美味いコーヒーに浸っていたがもっと相手が入れてくれたこれを一番最高の状態で味わいたくて広い事務所の中で窮屈に身を寄せ合う。そしてケーキをねだれば言葉はツンとして、しかし声色はたっぷり甘さを含んでいて自分の願いが叶えられる予感に口元は緩みっぱなしになってしまう。その甘さはフォークの上にも現れていて相手を示す色を宿したキウイにこんもりと生クリームが盛られていればその分相手に想われているのだと実感できて余計に口は締まりが無くなってずっと上機嫌に口角をあげてしまう。すくわれたケーキを見ていたがなかなかこちらにはやってこずチラチラと相手の方を見てタイミングを伺う、ようやくフォークが差し出されれば口を開けて一口でケーキを食べた。勢いがあまって口端にクリームが着いたのにも気付かず咀嚼する、しかし本番はこれからで口の中が落ち着いてから相手が入れてくれた最高のコーヒーを飲んだ。調和の取れた甘さの中に溶けゆくような苦味が口元に広がって先程よりも一層コーヒーが美味しく感じる。自分の為に入れられたコーヒーを最大限に味わうとホッと至福の息が出て相手にピタリと寄り添うと「最高に美味い…ありがとな、フィリップ」とその味に浸りながら礼を言って)
どういたしまして。ここまで喜んで貰えると入れた甲斐があるものだね。
(こんもりと乗った生クリームとキウイフルーツの部分をすくってゆっくりと差し出すと相手の視線を感じて、それにまた笑みを零しながらフォークを差し入れた。一口で食べた相手の口端にはクリームがついてしまっていてその自分しか見ることのできない緩い姿に優越感を覚えつつあえて指摘しないでいると味わうようにコーヒーに口を付けるのを見守る。わかりやすく表情が緩んで味わっているのが分かればこちらまで嬉しくなって寄り添ってきた相手に手を伸ばすとその頭を優しくなでる。きっかけこそ些細なものだったがここまで喜んでもらえるのなら極めた甲斐があるというものだろう。沢山の幸せに包まれながらケーキとコーヒーをゆっくりと、二人の時間をかみしめるように食べていく。時折食べさせ合ったり軽い口づけを交わしたりと甘い時間を過ごしていればあっという間に最後の一口になってしまってまとめてフォークの上にのせると「あーん」とまた口の前に差し出して)
ん、……、…最後まで美味かった
(相手から差し出されたケーキと相手が入れてくれた特別なコーヒーを存分に味わう間、背伸びもカッコつけもしないただの左.翔.太.郎のままで甘い時間を過ごす。礼を言えば軽く頭が撫でられてさらにふわふわとした甘くて浮ついた幸せは加速して「へへ、…」と相手にしか見せない幼い笑い声を漏らしていた。ピタリとくっついたまま何度も二人にしか許されない甘いやり取りを重ねていればあっという間に誕生日ケーキはなくなってしまう。相手の皿に残った最後のひと口すらこちらに差し出されると幸せを滲ませた笑みを浮かべてそれを口に含んだ。生クリームの優しい甘みと柔らかなスポンジ部分を味わい、特別なコーヒーを飲めば最後まで至福の時間は続いて一息つきながらその幸せに揺蕩う。こちらも最後のひと口を纏め最後まで残しておいたぶどうを乗せると「今日この後はフィリップと二人だけの時間にしてぇな」と心のままに希望を伝えながら相手の方へと差し出して)
ん、元よりそのつもりだよ。…ごちそうさまでした、今まで食べたケーキの中で一番美味しかったね
(最後の一口分を相手に差し出すと柔らかな笑みを浮かべて何の遠慮もなく口にするのを見れば満足げな笑みを見せる。そして当たり前のように相手の最後の一口分がすくわれて相手の色と同じブドウが乗せられると幸せそうに目を細めながら顔を近づけフォークの先を口にする。蕩けそうなくらい美味しいその味と幸せを噛みしめるように十分に味わうとフォークを置いて、その代わりに相手にくっつく。初めての誕生日ケーキは今まで経験した中で一番美味しかった、その理由はもう分かりきっていて相手に身を寄せたまま顔だけ相手の方を向けると緩く抱き着いて「最高のプレゼントだ」と弾む声で告げながらまた軽く口づけを交わして)
同感だ…、……お前が喜んでくれたなら俺も幸せだ
(こちらの願いを伝えればそれは当たり前のように受け入れられて、その当たり前が今は何よりも幸せに感じる。ここにいて良いのだと思える。差し出したケーキが相手の口に吸い込まれていくのを眺めて美味そうに咀嚼する姿をずっと眺めていた。やがて相手はこちらへとくっついてこちらもフォークを置いて右隣から伝わる恋人の体温に浸る、特別なケーキが今までで一番美味しかったのはきっと最高のお揃いを互いの指に宿したからだろう。相手が緩く抱きついてくればこちらからも腕を回して軽く抱き寄せる、上機嫌な声にはこちらの胸まで弾んで簡単に恋人の幸せが伝播した。そのまま軽く口付けを受ければ途端に表情はまた緩んで飾らない笑顔を浮かべる。相手の頬へと手を添える、薬指に携えた指輪を柔らかな頬に当てながら「誕生日はいいもんだろ?」と全く関心を示していなかったのを思い起こして揶揄うように言ったあと再び唇を重ねて)
…ああ、是非来年も、その次もずっと先もこうやってお祝いしたいくらい特別な日になった。
(溢れる想いは言葉だけでは足りなくて相手を抱き寄せて軽く口づければそこは不思議と甘い気がしてまた頬が緩む。こうやってなんてことがないことでも幸せを感じるようになったのは相手とここから新たな一歩を踏み始めたからだ、頬に手を添えられるとまた肌とは違う質感を感じるがさっきとは違って相手の体温が馴染んでいてほんのり暖かい。そこに無意識に擦り寄っていると相手から近づいてきて唇が重なれば暫し目を閉じて身を委ねていた。それから少ししてゆっくりと瞼を開いて離れると柔らかな笑みを見せて相手の問いかけに肯定を示す。またぎゅっと相手を抱きしめ「誕生日も、運命も、指輪もぜんぶお揃いだ」と上機嫌に呟き、指輪のついた左手で髪を優しく撫で始める。「翔太郎」と名前を呼ぶとまた愛おしい気持ちが溢れてこめかみや頬に軽くキスを落として)
俺も、来年も再来年も、その次も、何回でもお前と今日を祝いてぇ……俺達、二人で一人だからな。……、…フィリップ…
(指輪を付けた手を相手の頬に添えればそこに相手が擦り寄ってきて愛おしさは増していく、今日何度目か分からないキスをすれば相も変わらず幸せは胸に華やいだ。柔らかな笑みのままこの先ずっと相棒の生まれた記念日を祝うことを望まれればこちらも口元を綻ばせて同じことを望む、相棒に、そして恋人に隣に居てくれてありがとうを伝える日なんて何度来たって幸せだ。強く抱き締められればお揃いがまたひとつ増えた事を共に喜んで自分達にしか相応しくない言葉を口にする、全てを半分こにして等しくお揃いに出来るのはこの世に相手しかいない。不意に相手の手が伸びてきて指輪のついた手で髪を撫でられる、いつもの柔らかな感触の中に今までにない感触のものがある事に心が震えるほど嬉しくて思わず相手を抱き締める腕に力が籠った。感極まった所に名前を呼ばれればまた心は舞い上がって柔らかな口付けが振ってくれば擽ったそうに目を細め表情を綻ばせて相手を見つめる。この幸せを象徴するような心地がもっと欲しくなれば「左手でもっと撫でて欲しい」と願いを伝えて続きを促すように愛おしさのまま今度はこちらから頬や目尻にキスを落として)
ああ、そうだね。…ふふ、了解した。
(何度だって恋人だけの特別なキスを交わすと胸に幸せが満ちてそのぬくもりを求めるようにすり寄って抱きしめる。今日という日付は今回で終わりではなくこれからさっきもずっと一緒にいるならばこれからも何度もやってくるのだ。二人の時間を積み重ねていく予感にまた心が擽られながらいつものフレーズを聞けば楽しそうにうなずく。背負っているものもこれからの未来も半分こでともに歩んでいく大切な存在をもっと愛でたくてその頭を撫で始めると相手から更に強く抱き着かれた。完全に心を許していることがわかる仕草に優越感を抱いていたが細まった目がこちらを向いてもっと撫でるように求められるとぱちりと瞬きした後破顔して了承の返事をする。軽く抱き寄せ、こちらに身を預けさせるとその頭を優しく左手をメインに撫で続ける。時折髪を緩く指の間を通したりすると指輪の段差の部分に引っ掛かったりして、その存在を感じながら相手も嬉しそうなのが見えれば手は止めずに「これで撫でられるの、好きかい?」と問いかけて)
…あぁ、好きだ。お前が俺と同じ指輪してるんだって実感できる。俺がお前のもので、お前が俺のものだって…嬉しくなる
(二人だけにしか使えない自分達を示すフレーズを口にすれば相手からは楽しそうな声が聞こえてくる、大切なものも記念日も毎日も運命も、全てが半分こでお揃いの今、もはや相手は自分の半身、もしくはそれ以上の存在でなくては生きていけないこの世で一番大切なものだ。そんな人にその人にしか許されない目一杯甘やかされる行為を望めば相手はまた嬉しそうに笑ってつられてこちらの顔も綻んでしまう。抱き寄せられると相手に預ける体重を少し増やして首筋に顔を埋めた。相手の左手がこちらの頭を撫でる、暖かで柔らかな手の中で優しく相手の体温が移った金属が当たればその度に幸せは溢れて、時折指輪と髪が絡まると相手との繋がりがまたひとつ増えた気がして背中に回す手でそこにある服を掴んだ。相手に問いかけられれば首元に埋まったまま軽く頷く、今は気取ることなんて出来なくて心に浮かんだままの言葉をいつもより少し拙い語彙で伝えて、結局は小っ恥ずかしくてなって誤魔化すように傍にある首筋にキスを落とす。頭を撫でられ溢れた幸せを相手に少しでも返すように戯れ啄むように首に口付けていく、時折悪戯心が働いて唇の先で食むような仕草も混じえていると「このまま溶けてフィリップとひとつになっちまいそう」と浮かれた事を口にして)
…そっか、僕も新しいお揃いで君と特別なつながりが持てて嬉しい。…ん、君とならそれも悪くないかもしれない。
(相手を軽く抱き寄せてその存在を感じながら頭を撫でるとおとなしく身を預けられて縋るように服がつかまれるのが分かる。普段よりも甘えているように見えれば優しく何度もその頭を撫でながら言葉でもそれを聞きたくて問いかけてみれば少し拙く素直な返事がされまた笑みが零れる。当然のように零される独占欲やお揃いに喜ぶ気持ちが愛おしくて仕方ない。首筋に次々に落とされるキスがくすぐったくて軽く身動ぎしながらこちらも撫でた場所に重ね掛けするように髪にキスを落とした。相手は街の誰にだって優しいがこうやって特別なつながりを持てるのは自分だけだ、明日からそれをアピールできると思えばまた胸は満たされていく中触れる唇で肌を擽られると笑い声ととも小さく声を零す。そして浮かれたような甘い言葉が聞こえてくればありえないとわかっていながらそうありたいと願ってしまえばこつんと頭同士をくっつけ柔らかな口調で同意しながら軽くすり寄る。全身で相手を感じながら「好きだよ、翔太郎」と溢れる気持ちを口にして)
へへ、…髪にキスされんのも嬉しい……俺も、フィリップの事が世界で一番大切で、好きだ
(こちらからキスを送ればそれ以上に頭は撫でられて口付けも追加されれば胸は喜びに擽られて思わず首元に擦り寄る、髪にあたる相手の唇は手のひらとはまた違う柔らかさを持っていて、相手から与えられる様々な感触を全て享受出来るのもきっとこの世で自分しかいない。首に口付ける度に擽ったそうにする相手が愛おしい、浮かれた言葉さえあっさり受け入れられてしまえばふわふわとした幸せは増すばかりで脳内は相手の事だけで満たされていく。体勢が変わって額同士がくっつけばこの瞳に映るのは愛しい人しかいない、擦り寄る感覚にまた笑みを零すと溢れるままに胸にある変わらない気持ちを伝える。指輪を渡す時はあれほど緊張したのに不思議なものだ。想いは溢れて止まらなくて、柔らかな体温に包まれ浮かされるままに相手に口付ける。ずっとくっついて互いの体温を交換するうちに溶けてひとつになりたいという浮かれた願いは膨れてしまって間近で相手の瞳を見つめると「フィリップ…もっとお前に近づきたい」とまた願いを口にすればそこを開けるのを促すように舌先で唇の間をなぞって)
ならそれもお揃いだ。…翔太郎、ん……
(溶けてしまいたいと願うならそれを少しでも叶えようと体勢を変えて額同士をくっつけてしまう。今日は朝からずっと浮かれていて、それが咎められることなく寧ろ甘やかされていれば助長していくばかりだ。軽くすり寄って思いを伝えれば相手からも同じかそれ以上の言葉が返ってきてそれすらお揃いと称すると小さく笑った。そうしてくっついていれば自然とまた距離が縮まって唇が触れ合う。すこし離れる間も視線は相手に捕らわれたままで更に近づくことを望まれると目を細め名前を呼ぶ。更に舌先が唇を擽るとぴくっと小さく肩を跳ねさせるも求められるまま口を開いて自らも舌をのぞかせる。下唇を舐めてちゅ、とわざとらしいリップ音を鳴らすと頭を撫でていた手を背中に回して軽く抱き寄せながら求めるようにキスを続けて)
ん、…へへ、……フィリップ……ほんとに溶け合っちまいそうなくらい、幸せだ
(同じ想いを口にすればそれらは全てお揃いとなって二人の特別となる。互いの境界線さえ無くしたくてさらに近づくようオネダリをすれば柔らかな声で名前が呼ばれる、その声は同じく柔らかく鼓膜を揺らして浮遊感のある幸せを増長していった。舌先で擽る悪戯に相手は反応を示して楽しげに笑っていれば、お返しとばかりに下唇が舐められて高い音が鳴り体も心も擽ったくてまた幼く笑う。手が背中に回って抱き寄せられれば思わず預ける体重を増やして唇を重ねる、相手の唇を食むように動かして開かれたそこから溢れた唾液が互いの唇を艶めかせた。時折吸い付けば戯れるような高い音は響いて幸せに口角を上げながら互いの体温を交換するキスを続ける、やがて極僅かに唇を離せば相変わらず浮かれた言葉を口にして先程相手がしてくれたように指輪を宿す左手で相手の頭を撫でると「最期まで一緒だからな、フィリップ」とまた変わらぬ誓いを立てて再び唇を重ねて)
(/お世話になっております!そろそろ区切りかと思いましてお声がけさせていただきました。大台に向けての記念日なお話でしたが検索くんと、検索様と、最高の形で記念を迎えられて本当に本当に良かったです。大台とお話をリンクさせることは全く考えていなかったので提案していただいて本当にありがとうございました。二人のお互いへの想いが溢れて何度も誓いを立てて全部をお揃いにして半分こにする二人が本当に愛おしくて、今後何かあった時もこの日のことを思い出すんだろうなと思えるお話になりました。今回もありがとうございました!
この後の展開ですがいかがしましょうか?このままもう少し二人の時間を取ってもいいですし、ここで二人の絆を深めるようなお話が出来ましたのでカ.オ.ワを絡めた通常回なお話、せっかく話題に出たので時間軸をずらして初めて二人が互いの相棒で探偵になった日をやってもいいかな、なんて思っておりました。どの方向性のお話でもいいかなと思うのですが検索様のご希望はいかがでしょう?)
…ん、ああずっと君の側にいる
(相手と一緒に居れば体温も高まって本当に溶け合ってしまう程くっついて唇を重ねる。唇に吸い付いたり軽くすり合わせたりと更に踏み込んで相手を感じる為のキスを続けていた。唇がお互いの唾液で艶めいて隙間が無いほどくっついて相手の体温や感覚に浸る。やがて僅かにだけ相手が離れて行けば目を細めてじっと相手を見つめる。甘く気持ちがこもった言葉とともに優しく頭を撫でられると相手の指にはまったお揃いの指輪の存在を強く感じることが出来てふにゃりと笑うと軽く擦り寄る。きっと何年経って同じ記念日を過ごしたとしてもこの気持ちは変わらない。改めて誓うように傍にいると告げると今日何度かの触れる恋人の温もりに身を預けて)
(/こちらこそお世話になっております。指輪の話が何度かあった時から記念日か何かの節目に二人としての記念日も作りたいなと思っていましたので今回の様な話ができてとても良かったです。お互いの気持ちを再確認しながらありのままの想いを伝え合う二人が可愛くて愛おしくて背後共々特別な時間となりました。宝石も調べるうちに二人にピッタリな物が見つかってそのまま採用して頂いて嬉しい限りです。、最高の記念日として大切なお話が出来て良かったです、今回もありがとうございました。
色々あげて頂いてありがとうございます、せっかくですのでお互いの相棒になった日の話をやるのいいですね!!歯車がかみ合い始めた日で今に繋がる予感を感じさせるようなお話してみたいです! こちらのイメージとしてはそれまで探偵君が世話をしながら一人で日常的な依頼を引き受けこなす、師匠を頼ってやってきた依頼人のド.ー.パ.ン.ト絡みの依頼を引きうけ、なかなか手掛かりがつかめない中検索が地.球.の.本.棚を使う事を気まぐれに提案してそこから何となく協力するようになって…みたいな流れなのですが探偵様のイメージするものや希望等はありますか?)
(/一旦こちらだけで失礼します。
指輪に埋め込む宝石はエクストリームに合わせて白色がいいかな、くらいで思っていたのですが、あんなに二人にピッタリな宝石があるとは!と背後でめちゃくちゃ感動してました。二人のために調べて探して下さったのがもうめちゃくちゃ嬉しいです……やり取りの中でまた指輪のお話が出てくるのを楽しみにしています。
それではお互いが相棒になった日にいたしましょう!この記念日のやりとりをしている中で絶対にいつかやりたいと思っていたのでこの流れのままやっちゃいましょう。そして大まかな流れ考えていただいてありがとうございます!ぜひぜひこちらも今の二人に繋がるお話にしたいので、そちらに加えて、になるんですが…確か当初はドライバーにメ,モ,リ.ブ.レ.イ.ク機能がなくて犯人を殺すしかなく探偵が犯人を追い詰めきれない、みたいな設定があったと思うので、ずっと探偵として煮え切らない事しかできなかったところにこのタイミングで検索くんがメ.モ.リ,ブ.レ.イ.ク機能を追加してダブルとして戦う覚悟も決まる、みたいなのを入れてみるのもいかがでしょうか?おやっさんを頼っての依頼を無碍にできず、でも調べていくうちにメモリの関与が見受けられて八方塞がりになったところに気まぐれに検索くんが該当メモリを検索して…みたいな流れでどうでしょう?)
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