検索 2022-07-09 20:46:55 |
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…フィリップ……、…ッ……は、……、____
(きっとこちらが頷くだけでも相手は同じ決断をしただろう、しかし何度も繰り返してきた問答を終わらせる時を、二人の関係を永遠に変えてしまうこの決断を、互いに迷いなく選び取る為に奥底に沈めていた本音を途切れ途切れに今出せる全力で伝える。相手はこちらと同じく目を大きく見開いた後、何よりも聞きたかった言葉を伝えられて痛みではなく幸せで息が詰まりそうになる、溢れ出す感情を前に相手の名前を口にするのが精一杯だった。相手の顔が寄せられてそのまま唇が重なる、薄れゆく意識の中、吸血の時とはまた違う穏やかな幸せがじわりと広がった。直後口の中に鉄の味が広がりその違和感に一瞬体が固まる、だがそれが相手の血だと認識すればこれが相手の味なのだと脳に刻み込んでゆっくりと嚥下した。その瞬間からぼやけていた視界は輪郭と色を取り戻す、唇が離れ見上げれば相手に抱えられていることに気がついてまともに息をすることも出来た。脅威的な回復力に驚いていたが相手はおもむろに脇に落ちていたナイフを拾い上げる、こちらを見つめ月を背後に携え微笑む姿は何とも神秘的で、しかしその言葉は優越感を煽るもので目を離せなくなる。そのまま相手が迷いなく喉を切れば思考が追いつかなくて息をするのさえ忘れてしまった。一切の躊躇がないその姿に一瞬畏敬の念が過ぎるが、それもこちらを同じ世界に引き入れるものなのだと思えば幸福が勝っていく、飛び散る赤が今は美しくも見えた。相手の顔が寄せられて傷口が口元に添えられる、そこから絶え間なく流れてくる血は最初こそ鉄の味がしたがだんだん甘美で美味いものに変化していって気がつけば夢中でこちらに注がれる相手の半分を体内に取り込んでいた。流れ出る分だけでなく軽く傷口に吸い付いて相手のものを取り込んでいく、口の周りが相手の血で真っ赤に染まった頃には肩に出来ていた傷は綺麗に無くなり痛みも無くなっていて)
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