検索 2022-07-09 20:46:55 |
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……っ、……ぐ……ガ……ッ!よこせッ!!
(依頼人を傷つけられた怒りと早くこの場から脱出しなければという思考の合間に血が欲しいという欲求が割り込んできて体を支配しようとする。そんな状態で仮面の男達の質問にまともに答えられるはずもなく歯を食いしばっていれば男はこちらに向けていたナイフを依頼人の首元に突きつけた。直後地下全体に地響きのようなものが鳴り響く、尋常ではない音に男は『なんだっ?!』と動揺して狭い部屋を見回した。その瞬間に、ナイフの切っ先が依頼人の首を僅かに掠めた。途端に広がる血の匂いに目をまるまると開く、焦点があっているのか分からない瞳は依頼人の首へ吸い寄せられて赤い一筋が見えた時には理性が飛んだ。叫ぶと同時に縛り付けられていた椅子ごと破壊して立ち上がり拘束を解く、男が驚愕する間に人のスピードを越えて依頼人の肩を捕らえると口を大きく開けた。しかしその瞬間に、今手を添えている体がいつもとは違う人物であると、フィリップではないことに気がつく。おかげで喉を食い破る勢いは衰えて牙を立てて噛み付くに留まった。依頼人は悲鳴を上げて気絶してしまう、溢れ出た血を吸い上げたが直後顔を歪めた。吐きそうになるくらいの腐卵臭に嗚咽しそうになるほどの舌触りの悪さ、極めつけに雑味を詰め込んだような味に思わずむせ込み血を吐き出す。口を乱暴に拭うと「ンだよこれ」と悪態をつき余りの不味さに怒りさえ湧いてきた。今すぐに血が、この渇きを満たす血が、最高に美味い血が、必要なのに。渇きと怒りで頭がどうにかなりそうだ、「フィリップのが」と口にするがここに相手はいない。こちらの隙をついたつもりか男が襲いかかってくるが軽く腕を振っただけで吹っ飛んでいってしまう。腰を抜かしたもう一人の男のナイフを奪って腕を無理やり掴んでナイフで切りつける、そこから出た血を口にしてみるが「くそッ!不味すぎんだよ!」と八つ当たりを言い放って拳を浴びせ意識を奪った。今すぐに血が必要だ、朦朧としながら扉を蹴り飛ばして破壊すると「血が」とうわ言のように呟き、こちらに向かってきた男を殴りつけて意識を奪う。また歩き出して「フィリップ」と無意識に口にするが渇きが癒されることはなく、またこちらを捕らえようとしてきた男の腕を捻って噛み付いてみるが食えたものではなくて「なんでどいつもこいつも不味いんだよ!!」と怒鳴り散らして男を壁に叩き付けた。相手が同じタイミングで侵入し騒動になっているのを知らないまま「フィリップ、」とまた無意識のうちに呟く。意識した行為ではなかったが相手の名前を呟くと僅かに本能を押さえつけられて襲いかかる男をギリギリ殺さずに済んでいた。適当な人間の血を口にしては不味くてえずきながら吐き出すのを繰り返して口が真っ赤に染まった頃、傷口が癒えぬまま動いたせいか渇きは限界を超えて意識さえ混濁してくる。騒動を聞きつけたのかあの時のガタイがいい男がやって来て怒りのままこちらへと襲いかかってくるが制御の効かない体は男を簡単に地面へと捻り倒した。男の額から血が流れる、ドブのような匂いなのに血が欲しくて堪らない。「フィリップ…!」とまた無意識に呟くが本能は限界を迎えてナイフを振りかざせば「もうお前でいい!俺はっ!血がッ!血がッあ゛ああああッ!!」と半狂乱のままナイフを振り下ろして)
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