無常を鳴り散らすトーキー[大正浪漫]

無常を鳴り散らすトーキー[大正浪漫]

かっぱ  2015-10-08 14:54:24 
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日本橋、酩酊の街の動乱、好景気に生まれたシナリオ

ハイカラフィルムに収められた、愛のノンフィクション

畢竟、私達の浪漫など人屑の一つなのかもしれない。



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  • No.75 by 夢前 雷蔵  2017-03-22 01:46:50 


___。(耳に届く声は記憶の閉じ箱の中に大事に秘めていた物ではない、本物。突然の来訪者を夢じゃなく現実と受け入れるのはそう易々といかない、意識せずとも二年前のあの日一目で恋をした端麗たる彼との日々は無駄に長い己の生涯の中で満ち足りた物だったと言う証明で。足元に這わせていた眼を上げる切欠は、良いのか悪いのか。そんな情報が届いたからでしかならず、神経がぴりぴりと鋭利な瞳孔を刻む眼で改めて向き合う様に、洗練され青く澄んで光るような美しき顔を捉え。四十になる老い耄れた窶れ面が、萎んだ風船の様な情けない身体を動かし行えることは一つだけ。埃被るショーケースの中、一つだけ磨かれた汚れ一つない学帽を洋菓子でも取り出すように手の平にのせてから差し出すこと「坊ちゃんは、之を取りに来た。……だろう」これを渡してしまえば、霞む様に胸に残り続けていた夢も潮時。繋がりが全て断ち切れてしまう、頭ではわかりながらも世間の道から逸れた奇人から出来る唯一の言い訳づくり。彼が再びここへ来た真意は分からない、気紛れかもしれないし懐かしさに花を開いてかもしれない。それでも堂々と背筋を伸ばし胸を張り真摯な物腰で言葉を選ぶ様子を見ていれば助け舟を出さずにはいられない。「学帽一つ管理できない不甲斐ない男じゃ、嫁さん守り切れねぇもんなあ」逃げているのは何からか、己には分からないがどうでも良い。片方の口角を歪と持ち上げ不器用たる笑みを作りながら「懐かしさに浸るには打って付け。此処は何も変わっちゃいない」より磨きのかかる容貌の彼は変化が全てだった事だろう、感動の挨拶は言えず仕舞いに己も含めて時の止まる書斎を一瞥し)

  • No.76 by 浪花津 千  2017-03-22 10:54:47 


(空白の時が絶えず流れゆく中で生まれた、胸の奥にふつふつと泡立たる焦らしい感情にぴったりと当て嵌る名前を付けれれば、浅ましくも今すぐにでも聞かせてやれるのに。けれど浮かぶ言葉は疚しいものばかり、既に弱り果てるその心身に誤った言葉を吐き付けば、きっと今以上憤怒し 傷口を掻き回すかもしれない。大体二年前の当初は物珍しさ故に訪れただけの理由、怒りを覚える以前の問題かと脳裏を過ぎった刹那、眼前に現るショーケースに目を奪われ。己からすれば何の価値もない唯の学帽を自身の身の回りより大切に保管するそれを事故とはいえ書物の雪崩の中で発見した記憶が波のように押し寄せ。それを差し出し何を言っているのであろう、鮮明に浮かぶ記憶が優先され声など遮断さられてしまった。なんとも言えぬこそばゆい感覚に陥り知らぬうちにいつの間にか瞳を細めて頬を緩ませて学帽を受け取るとまじまじと見下ろし、そして不意に唇を開いて「そんなもの、売ってしまえば生活の足しとなったでしょうに。…そう、そんなものを取りに来たのではないのです。もっと大切なものがこの場所にはあるんだ。」被ってきた帽子を傍に置き去り、学帽のツバとその真後ろを両手で摘み学舎に登校する早朝の如く、ぐっと頭に被せ。少々この部屋のインクの香りが染み付いているがそれもまた愛おしく、手持ち無沙汰になった相手の骨ばんだ掌に己の両手を重ねるように包み込むと、長い前髪の間の瞳を捉えて静寂を断ち切るように低くゆっくりと「_____先生、迎えに来ました。」セピア色にあの日で止まったままの幽霊屋敷の主を、今一度その顔に控えめな笑みを浮かべさせよう。もう離すまいと言わんばかりに指先に少しばかり力を込めて)貴方は望まないかもしれないが、会いたかった。もうずっと、先生が書き連ねる文字ばかりをなぞり。虚しさと歯痒い思いが満たされたいと疼くのです。

  • No.77 by 夢前 雷蔵  2017-03-22 14:52:46 


(手にした学帽はまるで時間を埋め取り戻すように持ち主の元に帰って行く。″そんなもの″でないから、彼の面影を残す帽子がショーケースに存在を置いていたと知っての上の癖して語るのだとしたらタチが悪い。良い性格をしていると嫌味のひとつでも宣うてやろう、薄い唇を薄らと開いた所で学帽を被る途端にあの日々を色濃く思い出して言葉を綴れずに。射抜かれたのは記憶だけじゃなく、心の臓を止めてしまう程成長し艶を持った彼が己の中の思い出に触れると禁断を手にしたように思考が止まり。手持ち無沙汰に指先を猫の手のように丸めて力の入らない握りこぶしを作り上げると、今度はその手を取られて我に返る。リアリスト、現実主義、己はどちらと言えばそれらに属すると自負が出来る。有りもしない戯言を信じる言葉は出来ない、勇気のない腑抜け者だ。手を伸ばす事が罪である、身分違いなんて簡単な枠には収まらない。己にとっては憧憬の全て、その彼が迎えに来たと語れば現実味は薄く。真っ直ぐに見据えるその眼を見てしまえば意見は言えないとばかりに被さる学帽のツバを落とすように触れて目深に被せてから「坊ちゃんが此処を覚えてただけで十分だ。__忘れ物は之だけ、もう頼むから」会いたいと言われて俺もと答えられれば何と簡単か、まるで愛でも語っているように聞こえるのは己が彼に今も尚掠れることなく不純な恋慕を抱いているからなのだと言い聞かせ、「ここの事は忘れてくれねぇか」顔を隠したのは目を見ては嘘も付けない、心にもない事を言うのは存外胸を痛めるのだと初めて知る。ツバに触れさせた指先を落として、彼の正常を願う。「下手に読むから思い出が美化されちまう。……今の此の世、文字書きなんざ掃いて捨てるほど有り余ってるだろ」あんに、己の本を読むなどでも言うように語るのはそうでもしなければ己が彼を離れられないからで、息苦しい圧迫感を喉に覚えながら苦し紛れと心を鬼にし呟いて)

  • No.78 by 浪花津 千  2017-03-23 00:36:47 


(彼の肉体的な逃亡でなくとも闇の深まった視界が何を物語っているのかは猿でも理解出来よう。婉曲的な拒絶、この眼球にさえ嫌気がさしているのだろうか、はたまた有無を吐けないよう口枷のつもりか。円滑を欠くなど此の23年の間全く知る由も無かった、何も無い白紙の日々に色を付けたいのは一方的な願望で終わりを迎えようとしている。漸次緊張で地団駄していた脈拍は一段と深く底を突き抜けギシギシと軋んでは羨望した光景を剥がれ落として行く。この身を保つ力が少しでも衰えていたのならきっと震えていたかもしれないが微動だし無い身体はまるで石のように重く、終わらせる勇気が形づかず。幼少時代にこの感情を味わっておけば、訴えを呑み込む余裕はあったかもしれないが残された片腕を繋げたままでいるのは己が未だ未熟な人間であると証明している「____嫌だ。」本能が勝手に吐き出した言葉を自覚したのはその数秒後。「何故忘れないといけないのです。何故貴方以外の人間を考えなくてはならないのです。」胸の中では塞き止められ無くなった疚しい感情が細い隙間を通り抜けて喉へ打ち付け。見事な程の独善的発言に既に辟易しきっているかもしれないが、何も伝えずその場を去るなるなど後々己を厭悪しても足りまい。狭められた視界からもう一度瞳を見つけようと躙り寄るよう一歩。大股で近付けば握る手を心臓付近まで持ち上げ「その気になれば本気で追い返せるでしょう?俺は先生の弱さに漬け込み甘える男です。軽々と了承するなど考えないで下さい。厭ならば、この腕を振りほどいて大声を上げて助けを求めて下さい。」誰よりも慎ましい彼が自らを優先する事が出来ないと知った上で、浅ましい我欲を抑制する事を知らずに欲望を曝け出して)

  • No.79 by 夢前 雷蔵  2017-03-23 01:31:24 


(教育を一から百まで受けて来た育ちの良い坊ちゃんは、恐らく大人の申し出を断らない。大人に出来る事は彼を正しい道へ進ませる為に嘘だろうと毒だろうと吐かねばならないのだ、__綺麗事は予想だにしていない彼の拒否により身の縮む思いとなり頭が痛い程の緊張に変化を遂げる。何故如何してと腑に落ちない面を叩きつける様に詰められた距離と直接的すぎる言葉に顔を背ける事も出来ず、そんな時ですら目を奪うまでの美しさに見惚れる本能に素直な不埒な欲がどうしようも無い。耳奥がキイ__ンと彼の言葉以外を通さなくなる中で喉に苦い灰汁のような酸が込上げるのを堪えて、腹をくくる様に正面に目を合わせるよう彼の瞳だけを写し。既に躊躇いすら消し去る、もうどうでも良い、どうせ彼を断ち切るのなら最後に好き勝手しても許されるべきだ!胸が轟くように震え変な威勢を作り上げて震える唇に力を籠める。キリと口内に歯を立てれば広がる鉄の味に負けじと、自らも距離を詰め、彼の身体を壁へ押し付ける様に貧相な腕に力を入れて。「良いか、よく聞け」酸素を吸い込めばヒュウと情けない音が鳴り、心の内側からの圧迫感に骨が折れる錯覚を。「俺は坊ちゃんを犯してやりたいと、手の届かない高級娼婦を見るのと同じ気持ちでしか思った事がない。――出会ったころから一度も純粋な目でなんて見て無いんだよ」品性下劣な言葉を探し向けるのは己の持つ下劣さを極限までに現す為、開き直る様に眉間に皴を作りながら「厭なら如何するべきか理解出来るだろ」壁に押し当てた手の爪で壁をガリと引掛いて、次第に眉尻は頼りなく落ち下がる。再び全身に鳥肌を立てるように得体のしれない恐怖を堪え)

  • No.80 by 浪花津 千  2017-03-23 08:36:31 


(えらく距離の縮んだ空間に緊迫した空気が溜まり淀んでいるように感じられる理由はきっと、彼の病的に青ざめた顔色と何かに非常に怯えた瞳に加え、己の卑しい鼓動が張り裂けんばかりに打つから。言われずとも一言も逃さぬつもりで傾けた耳に入るは想像を遥かに超えたもの。普段なら顔を背けたくなる筈の言葉も真っ直ぐに受け止めては、そう直ぐには思考が追いつかず、やや目元を険しくさせて唇を貝のようにぴったりと閉じて。「………」答えが出る頃には十分な時間が必要ではあったが、彼の言葉が己を自ら退散させる為の道具かそれとも長年内に秘めてきた赤黒い本音の想いか、どちらであってもそんな珍奇な理由で二年ぶり再会を泡とさせる気など毛頭に無い。淡い思い出の中の登場人物として終わらせてやるものか、彼の勇敢な告白は手放すまいとした固執の念を返って深めるばかり、哀れに思うも己に漬け込まれたのが最後だろう。「もう無関心で顔を見ると嫌悪するとでも言えば、諦めていましたが、惜しい事をしましたね。」悪質なのは己の方だ、彼が不純な想いを抱いていようがそれが己を否定するものでなければ、嬉しく感じられる。ついにおかしくなったのか?いや、これでもかと言う程正常である。「先生こそ早く助けを求めたらどうです。まあ最も、今からなんて到底間に合いませんが」二度と彼を置いて行った後悔を味わいたくは無い、二年もの間で己の中の彼の存在は随分変化してしまった。なんと名をつけて呼べば良いのだろう胸を締め付ける感情を露わに出来たら良いのにともどかしく、何とか伝えるべくして取った行動は後に懺悔するものとなり。____彼の頬骨の浮き上がった頬に手を添え、怯えた小鳥をあやすが如く撫でるようにして喉元まで滑り落とせば首に指を引っ掛け親指は彼の顎へと当て。垂れた瞳は艶目かしく感じられ愛おしく想う。易々とその首を引き寄せると震える唇をそっと塞ぎ)

  • No.81 by 夢前 雷蔵  2017-03-23 11:37:22 


(仮定の話をするとして、己が彼の立場である。見目麗しき容貌を持ち教養も嗜んでいる、他ならない家柄に産まれ生涯の伴侶も決まっている。謂わば、安心安全で不安など影も差さない環境で生きてきたにも関わらず、幽霊屋敷に住まう得体の知れない世辞にも醜悪としか言い難い見目の奇人と名高い酒漬けの老い耄れ小説家に色目で見られていると聞けば堪ったものじゃない。これまでに読んだどんな書の数多の登場人物の中で一番不遇で恐ろしい経験になることだ。__それを、彼は逃げるでも暴れるでもなく壁に押し付けられたまま脅し掛けているのは己の筈なのに精神ばかりは追い詰められる様に沈黙が流れる。緊迫に振動する心臓は勢い強く中身の伽藍たる肋骨を折ってしまいそうだ。触れる手の平には幼さなど見えず、力強い男性的に変化していた。憎らしい程に美しく、説明のつかない恋慕に身を焦がし……壁に這わせた手の爪が割れる、パキリと音を立て端から亀裂が入り深爪になる。唐突に順応できず、我が身厭わず体が強張り力強く爪を立てたのが原因だ。愈々、今のこれは過去を捨てきれない己が飲み込んだ錠剤の副作用で見ている希望的夢と言われる方が現実と認めるより納得が行く、角度を変えて衰えた肺に酸素を送ってから再び口付けを交わして抱き寄せる。抱き寄せる間際"好きだ"と三文字分の言葉を音無く唇の動きで零してしまい、慌てる様に顔を背けてから"さらり"と指馴染みの良い髪越しの後頭部に手を当てて、骨骨しい己の肩口へ。)

  • No.82 by 浪花津 千  2017-03-24 08:10:45 


(/大変充実したやり取りを毎度楽しくさせて頂いています!背後の都合によりお返事が本日の夕方以降になるかと思います。気持ちを楽にして待ってて頂ければ光栄です。常に荒波に放りだそうとする息子ですが、今後とも宜しくお願いしますね!このレスは蹴って頂いて構いません)

  • No.83 by 浪花津 千  2017-03-24 21:29:05 


(逃亡の間を与えなかったのは意図した事、ただ"そうしたかった"と思うそれ以外の何かが突き動かしたとしても盃が満たされてゆく。遊君の様な腰付きだろう、心に薄荷に似た後味が残りるも満更でもない。彼と罪で繋がれた感覚が何故か嬉しい。この身が彼の肩口へと寄せられる間際、短く動く唇が何を空中に放ったのか、背く顔を瞳で追って「______何て?」何とも薄い身体がこれまでの生活を物語っているよう細く、固く、繊細で温かい。濃い彼の香りが鼻腔を通じて麻酔のような恍惚感が押し寄せ思わず立ちくらむ。触れてしまえば宙で分解してしまい戻らなくなりそうな彼の背を空気を含むようにしてそっとい抱き締める。途端、あの唇の口の動きが鮮明に思い浮かび気付いてしまった。彼の気持ちでは無い、己が抱く彼に対しての感情。霧が晴れたような感覚、同時に思春期のような気恥ずかしさ「先生の爪を看てあげますから、なんと言ったかもう一度教えて下さい」思わず気が付かないフリをする悪事が働く、困惑する彼をもっと見つめていたい。その顔を赤面させ狼狽えさせたい、強欲が湧く。胸に響く彼の鼓動、追いかけるよう自らの鼓動も足を早めて。今も尚後ろめたさを感じているのであろうその心身を宥めるよう背を数回叩いた後、曲線がなくとも女性のようなほっそりした腰へ、その腕を下ろして手を組み)

  • No.84 by 夢前 雷蔵  2017-03-25 00:19:15 


(抱き締める腕に感じる暖かさと、顔を寄せた先に学帽から香るのは彼の物なのに色濃いインクの匂いばかり。そんな違和が心を乱すと心が波立ち騒いだままに落ち着きが消える、痛い位の心臓の動きを堪えながら抱くのは後悔の念ばかり。何故、どうして、我慢が出来なかったのだ。この口は我慢をせずに欲望を漏らしてしまったのか、もう一度と言葉を強請られたことでその思いは一層と強まりサーと血の気が引く。自責の念が激しく迫り、ワナワナと力なく乾燥した唇が震えを帯び。それでも正直な体は彼が優しい手で背を叩いてくれるその衝撃に簡単にも冷静さを取り戻してしまい、羞恥に染まる初々しさなんてとうに枯れてしまった。情けないまでに眉尻を深く下げ、爪などどうでも良いのだ。顔を背け彼を見る事なんて出来る筈も無く伏せた眼は壁を見つめて「___悪い、」本音を吐露した悔しさに口惜しさに掠れる声が紡ぐのは一つの謝罪、「こんな俺が好きになっちまって、……御免」気持ちを伝えてしまえば綺麗な思い出のままでもいられない、それでも逃げる場が無ければ伝える他が無く未練が糸を引いて切れないのにダラダラと口惜しみつつ生涯で最初で最後だろう愛の告白を、己に押さえつける様に腕に込めていた力もダラリと抜け落ち自己卑下に拍車が掛かり「俺はずっと坊ちゃんに、……坊ちゃんだけに恋をしてた」腕の中に有る温もりに浸ったままいっそ息が止まれば良いのだ、後悔と同等に、それ以上に浮かぶ焦れた恋心を燃やさんばかりに自嘲の笑みを口元に蓄えながら呟いて)

  • No.85 by 浪花津 千  2017-03-25 02:11:18 


前にも言いましたが自分を卑下しすぎです。ただの万年筆も、ただのインクも、貴方の手の内では役目を果たす喜びに満ちているでしょう。けれどこの上無い文才の持ち主は自分を押し込める事も厭わない。…そんな謙虚な所が自負すべき全てだ。
(生まれ持った気質なのか彼はこんな時でさえ、否、自分を押し込めず本音を語ろうとする時こそ奥ゆかしく謙虚だ。その大元且つ原因は己の存在が大きく関与していると自覚をしていても、謝罪を受ける見覚えが無い。何故ならば心身を掻き回し、隠す事が出来ぬよう逃げ道を塞いだのは紛れも無く己なのだ。強引に誘導した末にやっとの思いで吐き出すように伝える彼は今後罪悪感に苛まれ頭を抱える日々を送る事を知った上で言わせた。自分自身に苦笑する、何とも浅ましい。それでも、追求した言葉が形収まるとこの上ない幸福感が満ち溢れ指先をしびらせ。彼から身を離すも顔を覗き込むなどはせず、割れてしまったと思われる爪を目視し「その言葉が嘘でなければ、俺が先生に抱いているものも同じだ」内側のポケットからまだ真新しいハンカチを取り出すと爪にあてがいその上から自らの掌を重ね「いつしか貴方に恋慕の情を抱いていたのです。今日までこの感情がなんなのか明確に名を付けることができませんでしたが…」視線は未だ伏せ目がちにハンカチに向けられ、数回深呼吸を。あまりの静けさに秒針の進む音が煩く聞こえてくる、今更気恥ずかしさに口ごもりそうになるが意を決して顔を上げればしっかりとその瞳を捉え「愛おしく思うのです、その声もその顔も全て。…初めての感情なんだ。」真剣なあまりつい子供じみた口調になってしまい、述べた後に納得がいかない様子で口元をへの時に曲げて)

  • No.86 by 夢前 雷蔵  2017-03-25 17:17:48 


(本の僅かにでも自分を認める事が出来る性分であったならば、今、息をする事すらやっとの意識は和らいでいた事だろう。指先に生じるジンジンと熱を持つ痛みなど既に意識に点を残すことも無く、真直ぐに己を捉えて幼さの残る言葉を語るあどけない彼の表情や声に全てが消えて。信じられない、と瞳孔を開いた眼で真直ぐに目の前の彼の瞳を見つめれば真剣たるその表情にヒシヒシと石を積み上げるような後悔は姿を消して"く"と微かに肩を揺らし息を漏らすように喉奥を燻ぶる笑い声を上げて「__俺を現実に戻すくらいなら、今、坊ちゃんの手で殺してくれよ」泡が弾けりゃ目が覚めて、セピア色の書斎には埃が舞い、今日も今日とてなけなしの良心で文章を綴る廃れた生活に戻る位ならこの夢を永遠に。薄い皮を張る様にぼこりと膨れる喉仏を露出する為顎を上げて首を伸ばし。「それじゃなきゃ報われない」これまでの生涯で、悪い意味を持たずに心臓がこうも高鳴る事が有っただろうか。重ねられた手の平に頼りなく、それでも欲に勝てず遠慮がちと力を込めて目の前に本物の彼がいて己にとってこの上の無い都合のいい言葉を語り掛けてくれていると実感すればするほどに酒を呑んだ時の様な高揚感を覚え、顔に熱が集まれば血色の悪い顔に仄かな赤みを取り戻す。今更恋だ愛だと語る日が来るとは、焦れる思いが気恥ずかしさに姿を変えると「坊ちゃん、坊ちゃんが、__いや。良い、……」最初こそ後々の自身が傷つくことを恐れて彼を遠ざける言葉を向ける為口を開き、続く言葉はもう何も言葉が出ることなく前髪を揺らし頭を左右に少しだけ振ってから顔を寄せて恐る恐ると端正なその顔を近くで眺め、長い睫毛も男らしく凛々しい顔つきも忘れる事など出来る筈も無かった。慈しみ、愛を語る代わりに頬へ口づけを落とし)

  • No.87 by 浪花津 千  2017-03-26 01:37:32 


_____おかしな事を言わないで下さい。
(対象に眉を寄せ顔を顰めては静かに戒める。彼を思うが故に比喩的表現であろうとも気に食わない、時折想像も付かぬ事を呟くからヒヤッとさせられるのだ。これではいつか本当に実現するかもしれない、短い言葉の中には下手な言えば四六時中監視を余儀無くするかもしれないぞと忠告の意味合いも込めて。___嗚呼、それでも何とも幸せそうな顔をするもんだと自ら瞳を合わせる彼の様子をスクリーンの外から眺める様な感覚でぼんやりと見つめ。まるで己を高嶺の花か何かと勘違いしているようだがそんな高貴なものでは無い、乱れた髪束を一つ摘み優しく揉み解す。その髪が柔らかく解けて行くのを眺めて一人の男を手に入れたのだと遅れて実感し、この部屋もこの屋敷も彼を閉じ込める為の囲いの中の様な感覚に陥る。戒めるべき対象は己なのかも知れない「俺が良からぬ事をしでかさない様に先生もその都度制して下さい。」出来る事なら外の世界に連れ出したい、それが本来己が彼に味合わせたかった願い。これからの事と彼の事、二つの事を同時に考えて行くには少しばかり脳が追い付かず頬に柔らかな感触が触れるまではその耳は音を遮断して「………!」急に糸が切れた様にぱっと顔色を明るくするなり、これまでの空気をガラリと変えて瞳の内側からより一層の輝きを放って彼を見やり「暫くの間此処に住みます、家出をしてやるのです、良いでしょう?先生!」勿論そんな大荷物は鞄の中には無い、誰かに予め伝えてもいない、たった今思い立った事である。脚に繋がれた見えぬ鎖は断ち切れずとも、微かなひと時を存分に浸っても良いのでは無いかと自らが耳に吹き込むのだ)

  • No.88 by 夢前 雷蔵  2017-03-26 13:17:09 


(顰めた表情ですら道行く女性が見ればその険しさすらも目をパっと覚ます様な冷たさを孕む差すような美しさに惚れ惚れとすること間違いが無いだろう、咎めるような言葉すらも彼が意識の中に己を置いてくれていると言う執着心にも似た感情に身を置いて。まるで、どちらが年上とも分からなくなる髪を梳かす手付きに気を抜いてしまえば依存が当然とばかりに彼の事を独り占めしてしまいたい欲を抱いて。__そんな微睡のように愛しい感覚を長い人生の中で初めて得るも、続く"家出"と言う発言から忘れかけた彼の家柄を冷や水を浴びせる様に思い出し、触れていた体を弾ける程の動きで引き離し「__」良いとも悪いとも綴らない口は今まさに夢と現実、本能と理性の間に苛まれて揺れ動き。指先に宛がわれたハンカチをギュウと握る様に力を込めて殆ど見惚れる様に彼の動きを追いかけていた目線は極まりが悪そうに下を泳ぎ。このまま此処で好きなだけ過ごせば良い、と思う反面で伴侶の候補がいる真っ当な世界に返してやらなければと血の気が引いて。遠慮がちと落としていた瞳を再び上げれば「それが坊ちゃんの将来に影響を与えるなら良いとは言えない。……言えないが、坊ちゃんを傍に置けるこの機会をみすみす無くすなら俺は何も言わずに判断を委ねたい」ボソリ、ボソリと呟きのように返す言葉は何処までも自分勝手で何処までも狡い物。彼の判断に己が意見を出さないと言う自分勝手の極みたる発言に自己嫌悪を、彼に被せた学帽を彼の頭から外すべく手に取ると「これを取りに来ると理由にして、またいつでも来るのでも」長い間、己の傍に寄り添ってくれた学帽の艶めくツバを指先でツーとなぞり暗に返さないことを示す様な発言を)

  • No.89 by 浪花津 千  2017-03-26 17:19:09 


(限られた選択に背ばかり向けてはいられない日が来るとは重々承知しているも、美徳など当に灰に返して今更掬ってやるつもりは微塵も無く。清濁併せの世の中で多少の蜜を啜ったとしても誰も咎めまい、少なからず彼が直接的に制裁を受ける事はきっと有り得ない。世間の関心に躍らされてばかりでは死んでも死にきれぬであろう、後悔はしたくないのだ。_____己の思いとは裏腹に、世間に忠実な彼はその身を引き剥がして掌から逃れて行く。理解している事を他者がもう一度口にして煩わしく感じるあの感覚が身に纏い心が軋むように痛み。「__…いつでも来る、か。」彼なりの配慮だと脳は理解しているが、"夢の様な日々を君と離れないで生きてみたい"など歯の浮くような台詞はこの現状ではとうに語れる口では無い。いつの間にか曇天から降り注ぐにわか雨に人々の活気溢れる声は薄まり、代わりに騒音の自動車が行き交って流れた時間を悟る。「なら、日を改めて伺う事にします。今度は先生が安心して受け入れられるよう万全を整えてもう一度、"家出"をするので」彼の不安を根こそぎ引き抜けば、伸し掛る責任感を振り落とし、二度目と瞳に不安を浮かべずにいられるのではないかと思い立ち提案をぶつける。宛ら名案だと言わんばかりに胸を張るが、一応落ち着いたままの状態で賛成を口にするか聞く為に首を傾け「"家出"といっても数日家を空けると予め言うから…いいでしょう?」もう一押しするよう言葉を付け加えて今一度問いかけ)

  • No.90 by 夢前 雷蔵  2017-03-26 18:26:56 


(今こそ幸せと幸を噛み締めればその後の落差である不幸が恐ろしい、素直に目の前の幸せだけを噛み締める事が出来ればどれ程までにこの世界とは生きやすいことか。それでも、己にとって世界の全て、この端麗たる彼は完璧と言う様に己の不安までもを掻き消してしまう。床ばかりを舐める様に落とした眼差しは続く提案に持ちあがり、必要以上の心配を全て拭われた上で叶う欲に塗れた願望をそれ以上断る理由なんて有る訳が無くて、彼の思惑通り、への字に落ちる口角の口元はその中で不器用にも笑みに変わり。「雨、__玄関の所に傘が有るから。好きなの持ってけよ」顎を使い玄関先を示せば離れた体を再び寄せて「あんまり待たせるな、傘はそれ一本しか無いんだ」気が緩み破顔する事は羞恥に勝てず、口内をぎりと噛むことで己を律し浮かれそうになる思考を留め。寄せた手の平で張の有る、それでいて柔らかい頬を人差し指の背で撫でる様に触れ、待っている事と少しばかり溢れる欲で彼が来る事を急かす様な言葉を送り。___目まぐるしい程トントンと進む話は追いつくことがやっとであり、寧ろ追いついているかさえも怪しく。狐につままれたと言われても驚かないほど、見送る事は出来ずにいつもと変わらず書斎の扉まで足を進め後ろ髪引かれ名残惜しむようにその姿が見えなくなるのを視線ばかりが素直に追いかけ、一度だけ彼の元に渡り再び己に戻された学生帽をショーケースの中へ戻しては少しずつ蝕むように訪れた実感に年甲斐も無くカァと顔を赤く染め生唾を呑みこむ、触れた唇を割れた爪の指先でなぞれば、今もまた思い出される様な熱に冷静さを欠き。早鐘打つ心臓を抑え込むためにアルコールを手にしたところで、彼の顔を思い浮かべては瓶を取らずにまた置いて。久しぶりに、睡魔は来ずとも不快にならない、星の数ほどの罪難題に責められる事無く酒の無い夜を過ごし)

  • No.91 by 浪花津 千  2017-03-26 21:10:57 


(気色を伺うまでも無く不器用ながら小さな笑みが溢れる様子につられて安堵し微笑みが浮かび。血の通う指先が頬を伝うのをまるでいつ離れてもおかしくない野生の蝶が逃げてしまわない様、微動出せず息を潜める。指が離れるまでは瞼を閉じて全てを遮断させ心身共に僅かに繋がり合う肉の境目を堪能な彼のを味わい。来るまではこの屋敷に後ろめたさを感じていたが今では我が家に戻るのが難に近い、いつか必然の日常に別れを告げれるようこの世の秩序に願をかけ新しい空気を吸い込んで瞳を開き。遅れ気味に頷き肯定の意を示し「______直ぐには難しいですが、成るべく早くまた戻ります。」今度の置き土産も学帽で満足なのだろう、身支度を整え訪れた時より軽い足で書斎の扉を開けば真新しい空気が広がっているように感じられ大きく深呼吸を一つ。「では…、また。」一歩を踏み出す間際横目で彼を見やればその目を細めて別れとは別の言葉を告げる。芽吹い恋心はまだ顔を出したばかり、惑いがない訳では無い、それでも今は。今だけは温かな感情に浸りたい。霞む空は未来を重く迎えるよう、傘に落ちる雨音を全身に響き渡らせながら世に背を向けて歩く足取りは不思議と軽く、重く。______あれから数日、革製のスーツケースを持ち再びこの街へと訪れ。何かを迂回するべく時刻は既に夜更けとなり、静まり返った街中に地面を蹴って歩く靴底が響き渡り野良猫が威嚇をする。片手には赤く開いたカーネーションを、屋敷の呼び鈴はいつもの如く押さずに玄関へ侵入すると丁寧に折り畳まれた傘を元の位置へと戻し。書斎へとは向かわず滅多に主人に使用されていないであろうリビングへ向かうと見付けた花瓶に花を。夜明けまで睡眠を取ることなく彼が目覚めて飲み物を口にするまで持参した珈琲豆を挽いて待機し。)

  • No.92 by 夢前 雷蔵  2017-03-27 13:14:25 


(元来の神経質に加えて毎晩の睡眠薬代わりのアルコール摂取が減った為か、酒浸りの頃であれば惰眠を貪り昼頃まで眠り耽る日々とは違い小さな物音、人の気配に落ちていた瞼はゆっくりと持ち上がり。薄紫の空は未だ夜明けであることを示すばかり、寝起き特有の重たい体を芋虫の如く怠惰的にノロリと起こして布団をぐちゃりと隅に寄せる。耳を澄ませても人の声は聞こえずに、余りにも早く起き過ぎた頭に早朝の冷たい酸素を送り込む。寝起きの水を、と寝巻のままの姿で足を引き摺り寝室から台所へ足を進め。その途中、通りかかるリビングルームに人影を見つけると通りかかった足を止め。再び扉の隙間を覗き込むと、いるはずの無いその姿に困惑しゴクリと唾を飲み込んでから扉に手を掛け「坊ちゃん、」いつか、家出と称してここに来ることは分かっていたが、よもやこんなにも早く。それにいつから来ていたのか、声を掛ければいいものを見慣れない花までリビングに彩と残した姿でいるものだから二の句は告げずに名前を呼んで。「――嗚呼、家を出たなら仕方ない。行き場の無い可哀そうな坊ちゃんを囲ってやるさ」早起きをしたと思っているのは己だけ、本当は未だ夢の中なのかもしれない。ソロリソロリと近づいて隣に並べば寝起きの霞みがかる頭のせいで素直に隠すことなく嬉しさを表情に浮かべて、近づくと香った芳ばしい香りを鼻腔の奥まで堪能し。隣へ腰を下ろせば遠慮なく胡坐をかくように座り込み「……声を掛けてくれれば良かった」いつから来ていたかは分からない、それでも書斎に籠るのとは違うこの場で、夜明けの薄暗い景色が一層とこの空間を日常から切り離している。そんな気持ちで目を向けて)

  • No.93 by 浪花津 千  2017-03-27 21:12:20 


…!わ、もう起きてしまったんですか?それとも、起こしてしまいました…?
(静寂に鋭いナイフを刺すような唐突さに肩を跳ねさせて挽きかけの珈琲豆が僅かに零れ。声の主へと視線を向ければ非常にゆったりとした足取りでこちらへ向かって来るではないか、その定まらない声色に目覚めたばかりなのだと察し、覚束無いその身を下ろすまでハラハラしながら両手を伸ばして転倒の防止をはかり。憂慮する己とは対象的に、喜びを隠す事無く表情へ表した様子に思わず息を止めて脳裏に収める様に食い入るように彼を見つめ。「…先生?」既に癖気味の瞳に覆い被さる前髪が、更に寝癖としてうねり顔の半分を占めているがもっと見たいと思ってしまう。高鳴る心臓、頬の内側が熱い。自然に伸びた指先が彼の前髪をはけようと触れた刹那、はっと我に返りその指先を丸め。寝起きとはいえ、意識がはっきりしていない内に触れるなど寝起きを襲うようなものだと自らに言い聞かせ疚しい感情を吐き出すように咳払いを一つ。「先生が居なければ今頃野垂れ死にしていました。明日からは大変ですよ、まずは美味しい朝食から食べてもらわないと…だから今はもう少し休みましょう。」瞳を細めて微笑を浮かべては角の無い柔らかな声色で。髪に触れる代わりに彼の肩へ片手を乗せ撫で下ろし。起床するにはまだ早過ぎる時刻、小鳥の声一つ無い。彼の意識がまだ朦朧としている間に再び夢の中へと送ろう。先に立ち上がれば彼の肩を支えるように身体を起こしそっと耳元で"行きましょう"と囁き、寝室へ向かうべく方向転換をし)

  • No.94 by 夢前 雷蔵  2017-03-28 02:13:10 


(寝酒の量は減ったとしても仕事であり趣味である物書きは日付が変わっても不眠症の頭が眠いと訴えるまでは続く訳で、其処に薬が加わる頭を無理矢理に叩き起こした現状では都合の良い夢のような現状に浸るばかり、肩を宥めるような優しい手付きは一層と睡魔を煽るばかりでクア、と大口を開くように欠伸を漏らしたのちに微笑む美しきその表情をポーと見惚れ「世にも稀な美しい面だ、坊ちゃんの美しいことは迚も文字じゃ綴れない。__欧米のキネマも、化粧品のレッテルでも、ありとあらゆる物だって勝てない。……面だけじゃない、こんな変人を目に掛ける奇特な坊ちゃんだ。心の美しさが面に出てる、」微笑むその表情のなんたるや、眼球に焼き付けんばかりに見詰める最中、口下手と閉じられることが多々の重たいはずの唇が言葉が止められないと動き伝えるのは抱いていた本音。寝起きに赤面、羞恥に悶える言葉の数々は愛しいほどに止むことが無く、釣られる様に再び来たばかりの道を戻り進み。隅に寄せた布団はグチャリと見っともないが重い瞼には代えられぬとゴロリと転がり横を向く、己の片腕を枕にした体制で隣を血管の浮く腕を使いトントンと叩いては自らの場所を端に寄せる事で隣を作り、此処へ来ることを無言に訴えては「おやすみ、坊ちゃん。」と微睡の覚束ない声色で、粘着質にも似た挨拶を一言落としてから彼が己の傍を離れないと信じているからこそか、隣に来るのを確認するより先に瞼を閉じて再び夢に落ち。___次いで、目が覚めるのは昼頃、それまでの長い時間やけに幸せな気持ちに浸り)

  • No.95 by 浪花津 千  2017-03-28 21:17:49 


(まさか神妙な夜明け前に口説き文句より繊密な言葉の数々で顔から火が出る思いをするなど夢にも見まい。意識が朦朧としているから、夢と現実の狭間に揺れ動き失言をしたのか、それにしても余りに心の臓の深部までもを擽るものだから自惚れず平然と立っていられる筈も無い、匂うけれど、気負うけれど、促されるまま彼と己の間に薄い壁を作って隣へと崩れ。理性は追えど超過する本性は水に溶けた絵の具のように何処までも滲むよう広がり透水を侵すと真面な思考を削られて行く。その度に全身を駆け巡る血液が沸騰したてのお湯の様熱く火照り、思わず胸元のシャツをクシャリと握り締め物理的にポンプを抑制を。当然、寝息を立てる愛しき男を眼前にして眠れる訳も無く、一晩寝ずに過ごすよりも倍の疲労を身に受けて昼前には起床し掛け忘れの布団を冷えたであろう相手に掛け 「…_____先生が寝惚けて何も覚えて無ければいいけれど。いや、覚えて無いはずだ。」空の冷蔵庫に配慮し、また持参の食材で昼食を調理、テーブルへと一人分。目覚ましがわりの熱い珈琲を一杯飲み干せば、寝不足の軽い偏頭痛に加え昨夜の出来事が鮮明に思い出され、唸る様に頭を抱え。そろそろ彼が起床する頃だろう、前髪をより一層後ろにかき上げ新たに淹れた珈琲のカップを手に取ればトレーへと乗せて再び寝室へ「お早う御座います。随分寝ていましたね。朝食…昼食が出来ていますよ」何度か扉をノックし返答が来る前にドアノブを捻って中を覗き込み)

  • No.96 by 夢前 雷蔵  2017-03-29 00:44:46 


……(随分と良い夢を見ていた気がする、夢と言う物はいつとて朧気で精密さも無ければリアリティに欠ける。意識が起きる事には泡が弾けるように記憶の中から存在をサーと消し去る性質の悪さを兼ね備えているから仕方がない、今日も今日とて瞼を開いた布団の中から眺めるのは日差しの強い外景色。嗚呼、また必要以上に睡眠を貪ってしまった、一日の大半を無駄遣い、駄目にしてしまったと低血圧のように重たい体を起こしては、しゃんとした一日を過ごすのとは程遠い鈍間たる動きで寝巻から着替えを行って。申し訳程度に布団を畳んでいると、声が聞こえた。それから少しと待たずにノック音が聞こえ扉が開く、その先に彼の姿を捉えた瞬間、刹那と思い出されるのは朧だった良い夢の詳細。堪らず絶句、生唾を飲む事すら出来やしないのは己の生々しい欲深さを直面したからで。寝癖が未だ残る前髪を暖簾代わりに視界を狭めつつ「"家出"とやらは、今日からやるのか」鍵を掛けない家であれば彼がどの時分に来ていても可笑しくない、其れでも先の出来事が現実ではなく夢であると受け止める方が気が楽のようで。出迎えにしては少々素っ気無く、目を見ては夢の中の幾分か素直な己が浅ましくも彼に伝える本音の欠片を漏らさないように気を付けているだけで。立ち上がり傍へと近づいた際に香る珈琲の匂いにスンと息を短く吸い込んでから「いつから……余り顔色が良くないみたいだが」最初は色濃い珈琲の香りに今来たばかりだろうかと推測を行い、その言葉を向ける途中、近づいたことで先日見かけた顔色よりも血色が悪い、具体性を上げるなら己と似通った目の下の隈が健康さを欠いていると眉間に皴を寄せて推測はソコソコと「俺よりも坊ちゃんが食べたほうが良い、」先ほど食事がどうのと話していた、そう思い出すと血色がよく健康たる雰囲気と凛々しい顔つきを知っているからこそ今の彼とは心配を煽るばかり「林檎がある、剥いたら食べれるか」そもそも食欲は、等と疑問を重ねる中で彼を書斎ではなくリビングへ誘導しようとペタリペタリと裸足の足が粘着質な音を立てる廊下を進み)

  • No.97 by 浪花津 千  2017-03-29 02:03:03 


良かった。……え?えぇ、今日から、まあそんな所です。
(数時間前とはまるで違う午刻の光、寝室を照らし込む光の粒子が物言わぬ無機物に生命を吹き込むが如く、彼もまた灰色の毛先が微光に透かされながら瞳を開いて目の前に立っているではないか。どうやらこの世にあらずの意識も今やしっかりとその足を地につけて状況を素直に呑み込んでいる、少々温暖差を感じられるがきっと寝惚けていたのだから記憶は夢の中へ置いてきぼりを喰らっているに違いない、そんな都合の良い解釈を胸に安寧を呼び起こせば少しは偏頭痛も和らぐようで。ほっ、と息を付いている合間、何やら人の顔色を見て鋭い感を働かしている様子に再び心臓が縮み上がり、珈琲を載せたトレーを持つ腕が微かに震え。昨夜の己の破廉恥な行動が脳裏を過ぎる、夜明け前の青紫色が甘美な蜜を垂らしたとはいえ誘惑に負けたのは己自身、あんな人として良からぬ行為を彼にバレてしまえば見せる顔が無くなってしまう。そればかりは何としても阻止したい。リビングへと向かう背を訴えかけるよう見詰めていたが昨夜の一連の一つであるあの場所で、何か思い出してしまったら…と後ろめたさのあまり、腕を掴んで「林檎と言えば、饒舌な女店主の営む林檎を使った美味い和菓子屋がこの近くにあるとかなんとか!是非これから行きませんか?たまには外の空気も吸わなければ、ね」トレーを脇に抱え、半ば強引に珈琲のカップを握らせるとリビングとは真逆の洗面所へ。屋敷の内部を全て脳にインプットされている訳では無いがもしもの為を考え一階は過去に探索して吉と出た。先程用意した昼食は、彼の見ないうちに処分してしまおう、「____さ、顔を洗って髪を梳かして下さい。長蛇の列を成すので売り切れてしまえば先生のせいですよ」洗面所へ彼を押し込めば、普段の調子を繕いやんわりと笑を浮かべ。有無を言わさないトントン拍子で扉を閉めてしまうと、瞳を擦り己の準備を始めるべく最初のリビングへと荷物を取りに)

  • No.98 by 夢前 雷蔵  2017-03-29 23:44:08 


(夢と現実とは時に交わる物なのか、常識じゃ汲み切れない事こそが有るからこそリアリティに欠ける物なのだ。彼の夢を見た、目の前には彼がいる。己と言う人格は欲深く心臓が痙攣する程この日常に喜び震えているのだ、焦がれていた憧憬が手の届く距離にある。気を抜けば欲に逆らうことなくズルリズルリと流されて手を伸ばしてしまいそうになるのだから浅ましい限り。リビングへ誘導しようとしていた思考は外に出ると話題がトントン拍子に変化していることでスッカリ姿を消して、意見を挟む隙を一つと与えられない事で気づいた頃には洗面所。鏡越しに映るのを見るのは己の事ではなく、いつもよりも幾分か血色の悪い彼の顔色で。"今日は寝ていた方が"と恐らく家を空ける為に無理を祟ったのでは無いか、見当違いとも知らずに推測のまま眉尻を目一杯に落として困り眉の表情のまま何か言葉を上げることの無いまま閉じてしまった扉を棒然とばかり数部秒ほど見つめて。蛇口をひねりザアーと勢いよく出てくる冷たい水に指先を触れさせ、頭を一層と鮮明に、加えて不純な気持ちを思わないように己を律する為、キンキンと冷たい水を顔にパシャリとぶつける様に当てて。冷たい水が前髪ごと顔を濡らすと傍に置いてあるタオルを寄せて水の滴る顔を拭い、此処で初めて体内に燻ぶる思いを共に吐き出す為"フー"と肺の息を全て押し出して。着慣れた服に腕を通せば寝癖で普段よりもうねる髪を申し訳程度に整えて、外へ出ると言っていた。その言葉を思い出すように外出用の中折れハットを頭に被せて扉を開き、足取りは依然変わらず引き摺るような覇気の無い雰囲気で「坊ちゃん、__気分が悪いなら買って来よう。坊ちゃんは寝ていても」己とは自分で思っていた以上に彼の事を魅入り記憶していたのだと知る、物音のするリビングに足を進めそこで再び見つけた彼の顔色はやはり世辞にも良いと言えるものじゃ無く、不純な頭を覚ますのに慣れない人込みとは良い罰じゃないかと不慣れな気遣いを潜めるような遠慮がちの声色で告げて)

  • No.99 by 浪花津 千  2017-03-31 01:00:37 


(嗚呼、忸怩たる思いで悟られまいと故意にあれやこれやバタ足で奔り出す姿は我ながら滑稽なもので目も当てられまい。果たしてこれを何時まで続けられよう、羞恥に赤黒く染まった感情の残渣が心に散り積もり滔滔、立場も無い息苦しい思いが喉元を締め付けて気道を圧迫し短な呼吸を強いる。夢では無いあれは現実で起きた紛れも無い真実、上から何度塗り付けようと浮き上がる黒。朝霧を映す硝子だけは己の全てを委細承知し不変に映さなくては良いものまで映しているに違い無い、選択の余地が無い無機質とはいえ勝手な無言の繰言が胸に反響し。余り目立たない形と色の上着を羽織り簡単な身支度を済ませ終えれば丁度彼と出会い。外出用の中折れハットが良く似合う、珍しく整った髪型も完璧とは程遠いが彼らしい。相変わらず表情にも雰囲気にも覇気がない様子でどんな第一声が出て来るのかと思えば、何一つ今の己とは無縁だった言葉達。汲み取るのは安易な事で、ハッとして感触では分からずとも指先を屈伸して目の下を擦るように触れ。まさか顔に出ていたとは、彼の健康を思って昼食を用意した己が不覚にも気を遣わせてしまう事になるなど考えてもみなかった。それ故絡まった思考が臨機応変な言動を生み出す事を忘れ知らず知らず肯定の意を示す頷きを小さく見せ。「_____朝の、気温の変化が今頃になって現れたみたいです。お言葉に甘えて少し休んでいても良いですか?」一番に抱いたものは彼への申し訳なさだった。下らない理由が理由な上に身を案じてもらうなど何と不甲斐ない事か、一刻も早く元に戻る為暫し気持ちを落ち着かせる猶予を己に与える事を選び。とは言え一人で向かわせるのも気掛かりでついつい屋敷の外まで見送っては、そわそわした落ち着かない様子でリビングにて座ったまま待機を試みるがいつの間にか仮眠を取る形となり数時間。若しくはもっと短いかも知れないが浅い夢の中をさ迷っていた意識を再び現実世界に戻すと、余計な時間に寝てしまったせいか、はっきりとしない思考である肝心な事を思い出す「………先生に、場所を伝えていなかった。」同じ姿勢で固まった身体を起こせば関節が鳴り鈍い痛みを伴う。静まり返った室内、まだ帰っては居ないのだろうか探しに出掛けるまでそう時間は掛からず)

  • No.100 by 夢前 雷蔵  2017-03-31 22:54:46 


(本音を語るなれば小さな転がり一つでさえ切っ掛けに変えて彼がこの家を出て行く事を防ぎたい、叶うならば彼の事を囲いこのまま古びた幽霊屋敷と名高い我が家に閉じ込めてしまいたいのだ。外へ出る切欠を奪う対価として、己が外へ出ることなど安価過ぎる。コクリと顎を引くように頷きを見せてから「寝室の押し入れの中に布団が入っているから、好きな部屋を使って構わない」彼がいずれ此処に家出しに来ると聞いたから、浮足立つままに準備をしたのも記憶に新しい。寝るならばとそれを伝えてから外へ出る為と黒のステッキを手にして。前回の原稿を取りに来た編集が、確か人気の菓子屋が有ると言っていた。記憶を辿る様に足を進めた所で久しぶりに感じる人の賑わい、楽しそうに語りながら順番を待つ人の群れ、普段であれば絶対に近寄りもしないそれだが持って帰れば坊ちゃんはさぞや喜んでくれるだろうとの思いだけで不釣り合いな体を列して、楽しそうに話をする列とは居心地悪く時間が一分でも一秒でも早く過ぎる事ばかりを考えて、漸くと己の番が来た頃にはすっかり憔悴。角切りにした蜜漬けリンゴが入るまんじゅうや、林檎の飾りがついたバターケーキ、オススメだと語られた林檎のショートケーキは二つ、全ては喜ぶ顔が見たいが為に少しばかり買い過ぎただろうかと買ったものが入る箱を手にぶら下げてノロノロと帰路につき。時間にしてはさして長くは無いのかもしれない、それでも慣れない環境に身を置くこととはゾっとする程疲れるのだと思い知る。気の持ちようかは分からないがクラリと立ち眩むような眩暈まで襲ってくる、瞼を落とし気を失わない為と呼吸を一度、再び瞼を開くとそこには家で休ませていたはずの彼の姿が。驚くように眉を少しだけ上げれば「__もう動いて平気か」口を付いたのは彼の体調を心配するもの、来てくれたならば助かると購入品の入る紙の箱を差し出して「悪いが持ってくれ」中身が崩れてしまってはどうしたもこうしたも無いのだ、と困り眉を浮かべながら頼む様に声を掛けて)

  • No.101 by 浪花津 千  2017-04-02 00:51:50 


(不安を他所に彼は平然と眼前に現る、不釣り合いな晴れ模様を背にしっかり影を落としてそこに立つ姿はどれ程の精神の平静かを齎した事か。何処か見知らぬ土地で野垂れ死んでいるのかとついつい想像を巡らせてしまったが彼は己との約束を果たして戻っている。改めて彼と己との互いの年齢の差と環境の違いを実感させられ、余計な心配をしたのだと実感し。何処へでも飛んで行く選択権と帰るべき我が家のある自由な足は相当の年月を重ねた妥当な対価だ、それに魅了された出会ったばかりの頃、確かにあの日あの時、今と似た感覚を抱いた、まるでデジャブのよう思い出される記憶は走馬灯に過ぎ去り「先生は、俺が思うよりずっと__」自然に心の声が零れる合間に差し出された箱に意識を釣られるように見下ろせば、その言葉は忘れ去られるように喉を滑り落ちて胃酸の中へ溶かされてゆき。箱を預かれば二人分にしては重量があり、幅も広く、甘ったるい香りも花を掠める。さては気を遣い買い占めたのだろうか、不慣れな長蛇の列に萎縮する姿がゆらゆらと浮かび上がり思わず微笑ましいと胸を擽られ。固まった身体は少々疼痛をもつが仮眠が功を奏したようですっかり頭痛は消え普段通りの体調だと我ながら感じられ「お帰りなさい。もうすっかり良くなりました、眠気も頭痛も少し休んだら嘘みたいになくなりましたよ」彼の上着と帽子を預かるべく両手を差し出し、再びリビングルームへと向かい箱をテーブルへ。嘸かし疲労に蝕まれているであろう相手と対峙するような形になれば前触れも無く瞳の下を人差し指の外側で撫でるように触れ「お人好しですね、本当。ただ俺が欲に負けただけだと言うのに。」小さく呟いては困ったような微笑みを浮かべて)

  • No.102 by 夢前 雷蔵  2017-04-03 15:35:01 


(大事な金糸雀を鳥籠に閉じ込めて寵愛を施したいのと似ているのかもしれない、それを人は愛と呼ぶのか自己満足と呼ぶのかはわからないが。そうしていたいと願ったにも、人の思いとは驚くほど簡単に覆されるのだ。ああも己だけが彼のことを隠していたいと願ったのに、太陽の陽を受け枯れる己とは違い凛々と咲き誇るが如くの姿を目の当たりにしてしまえば誇らしさすら込み上げてきてしまう、何と単純か。最早癖の様な目線の動きとして地を這う様にズルリと伏せられて、徒労に蝕まれる情けの無い意識も彼の姿を映しただけで酸素を与えられたように楽になる。引き摺り前に進むのが億劫だった足も軽くなり、家路につく距離でさえ行きよりも短く思えた。__振り落ちた出迎えの挨拶に瞳を丸くすると照れ臭いその言葉に口内で唇を少しだけ噛み羞恥を誤魔化し、俯いて。その面が再び持ち上がったのは血の通う、温かな手の平が己の顔に触れたからで。彼を傍に置けるならば引き換えの代償などと軽すぎる程なのに、困ったような微笑は返って気を遣わせてしまったようにも、頭を左右に揺らめかし頬に触れる手を引き離すと。普段こそズイズイと話を決める彼が弱気になるなるなと目を向けたまま「美味い珈琲を、」寝起きに嗅いだ香ばしい先の香りが忘れられないのだ、と語る代わりに頼み。「___許されるなら、一度抱かせろよ」勿論、望むのは抱擁たる温もりで彼が弱気なら己が少しくらい強気でも許されるのではと悪魔が囁いたのだ。頼りなさげに腕を広げ、伺うような頼りない目を向けて)

  • No.103 by 浪花津 千  2017-04-06 01:43:46 


("何れ"はなど考えれない、考えない。迫るタイムリミットは夜明けと共に既にスタートを切り息を吐く間も無く流れて行くのだ、如何にして彼の時間を独占し蝕むのか、そしてその想いを正当化する一縷の理由を探るまでは時間の流れを逆らい続けるであろう。まるで老獪の様な浅ましい考えだ、皮肉を幾ら胸にぶつけた所で蓋には足りず恋心は募るばかり。遅咲きの花が生きる為に陽の光を精一杯求める様に、己も彼を求める。太陽の様眩しくなくとも、影の隙間から覗く一筋の明かりがどうしようもなく恋しい。先人の何者かが道徳とやらを生み出してくれたお陰でこの世に遍く存在した固定観念が報われない現実を突き出す度に耳目を殺してきた。この世に今更委ねる身などあろうか、許される事を望みもしないが眼前に広がる腕には安易に託す事が出来てしまう。酷く絡んだ思考回路は案外単純に解けてしまうものなのかもしれない、それがあんまりに馬鹿らしく自嘲する様な薄笑いを零せば何も語らず身を彼に委ね、自らも彼をしっかりと腕の中へ。外の牡丹が音を立て首を落とし、後戻りする術を一つずつ、確実に消してゆく。惚れ薬の適量を裏切り盛られるようだ、それが心地良いものだから重なる身体は歓喜を隠さずに彼の全てを覆い隠そうと力が入り「…今朝も、このような感じで貴方に触れたんだ。」言葉を直接脳に押し流そうと肩口に頭を垂れる様にしてはその顔を隠し。返しを恐れるように徐々に小声になる唇を懸命に動かしては蟠りを解いてゆく、「その無防備な先生が堪らなく可愛らしかった」鮮明に思い出される朝霧の濃い今朝、夜更けから添い寝をしていたなどと知ればどんなに軽蔑するのか、やや眉間に皺を浮かべて)

  • No.104 by 夢前 雷蔵  2017-04-06 15:40:41 


(述べた欲望は口を付いた時点で元には戻らずに音に変わる、そして音は意味を持ち不埒にも坊ちゃんに届いてしまう。抱き締めているのか、抱き締められているのか、どちらでも構わないしどうでも良いとでも言わん彼の熱にグワリグワリと視界が眩む。負けじと力を込めている筈の指先には恐らく赤子も同様、大凡成人男性とは思えない貧弱たる力しか無いのだろうが。濃密な熱に反してゾクリと背が震える想いになるのは、許容範囲を簡単に超えた幸が薬を多量に摂取した時と同様に恐怖に姿を変えているからだろう。__脳髄を振動させるべく、夢が夢で無かったとの種明かしを受けると、ほぼ反射的と身体を痙攣の様に跳ねさせて。夢現とは言え底の見えない己の欲が恐ろしい、不埒な欲に彼を巻き込んで共に落ちようぞとばかりズルリ…ズルリ…と引き摺らん深層心理が堪らない。ワナワナ、と乾き皮の向ける唇が震えるのは不貞に耽る色狂いに嫌気を指して何もなかったと姿を消される事への怯えでならず。ドクリ、ドクリと心臓は早くに動くのに反して青白く染まる顔色は最早虚ろと逃げる様に顎を引きつつ目を上げて、他は写さないとばかりに見詰めた顔は何処か己と同じような弱さを含んでいて。そして告げられた小声の言の葉にぴぃんと張った糸が切れる様に安堵の息を、「だからか、――初めて夢に死んでもいいと思った」現実には有り得ないと思っていた、それが事実だと語られれば堪らないとばかり零す様にくつくつと笑い声を上げて、次第に込み上げるのは年甲斐も無い羞恥。その羞恥ですら娯楽だと、目の前の高潔が己の地まで堕落することに悦びを。ジワリ、ジワリ、と青さを持った顔は忙しなく熱を持ち「次は意識がしゃんとしてる時に」語るのは尽きぬ欲望ばかり、今更過ぎる終わらない春を知られない様にと己がされたように彼の高等部へ腕を伸ばせばグイと抱き寄せて)

  • No.105 by 浪花津 千  2017-04-09 20:14:23 


(騒然とした街を背に警笛一つ鳴らないこの場所で禁忌を犯した者がいると誰が知れようか。胸に生じる互いの熱に溺れないように二本の脚で支え合い立つ姿はまるで秩序を乱す名ばかりの事件を超えた様、常識を覆せば犠牲も伴うのも厭わず欲望のまま、きっとそれは道化の様で決して美しいってもんじゃない。どんなに醜態を晒そうと曲がりなりにも突き通したいと願うからこそ禁忌を犯す事など星屑の一欠片だかの価値にしか思えないのだ。寄せた襟元から鼻腔を抜ける香りには賛美し、遠慮がちに吸い込んだ酸素を肺から血液に乗せて脳へと充満させ。ピリッと指先が痺れる感覚、あんまりにも彼が近いものだから呼吸の仕方を忘れてしまったのかもしれない。今一度大きな深呼吸を、心地の良い笑い声が安楽を促し最も簡単に肺を満たし。「先生さえ良ければ、何度でも。」動乱の時代、不条理な世の中だが彼と出会えた事だけは数少ない幸だろう。嚙み締める程の不自由さも無いと指摘されればぐうの音も出無い為に、静かにただ静かに瞼で瞳を覆って胸の奥底で感動を染み渡らせ。家出と称して彼の屋敷に居候する身となるが、彼の執筆を奪う事だけはしたくは無いとチラリと横目で古びた掛け時計を伺いつつ暫くはこのままの状態で。朝食も昼食も食べずに働かしたのだから相当の疲労が足に溜まっているだろうと身を剥がせば感謝の言葉の代わりに、ラフな口付けを頬に落とし。「執筆の際は、俺はいないものだと思って下さい。先生が先生の務めを果たした際は褒美だって考えてありますよ」後ろめたいものを泣くせばすっかりと調子を取り戻し、彼の前髪を掻き分けるようにして瞳を見付けては微笑みかけ、切り替えをつけるが如く肩をポンっと弾むように叩き)

  • No.106 by 夢前 雷蔵  2017-04-10 13:25:01 


(既に螺子が外れて白痴と化したか、夥しい薬のツケが此処に来て都合の良い知的障害に姿を変えたのかもしれない。胸を高鳴らせ、その衝撃に頭がポーと高揚し浮足立つとは。隔離された浮世にて刹那を誇り煌びやかな賛美憧憬を暖簾の消えた眼で見つめるばかり、モノクロキネマ、色など枯れ果て晩秋に死した日常が桜花爛漫と色に溢れる。腐りかけの脳みそだって目先の幸せにゾクリと五臓六腑を奮い立たせるのだ、頬に受ける唇は浮かれて踊り逸る己を好奇と指さし嗤う陰に囲まれているようだと幸せを幸せと受けれない捻くれた自己に嫌悪して。もういっそ、時間なんて概念が消えてしまえば、なんてポッカリと離れた熱を追い求める様に麗しき微笑みに見惚れ。現実に戻る衝撃は強くなくていい、些細な刺激で疾しい頭はパっと電球に明かりが点り悪しきことに手を染めていると深みに嵌る罪悪の感情からずるると這いずり出るのだ。小さな動きで頭を縦に揺らし「食べれそうなら、坊ちゃんの好きなやつを好きなだけ食ってくれ」体調は良くなったと言っていた、それならばと先の購入品を示すようにこれ以上離れるのが名残惜しくならないうちにと茹だる欲深さを見て見ぬふり、におい立つ醜悪は鼻をつまむ思いで消し去ってからリビングルームには寄らず、狭苦しくも一番居心地のいい己の城へ。インクのにおいと古びた紙の匂いが充満し、この家一の宝を囲う他ならぬ檻へ歩みを進め。書斎に入ると雨あられと降り注いだ非日常にあれよあれよと気づけば己の限界を超えていたとばかり壁に背を当てざりざり、と床をすべる様に座り込み。肩を落としダラリと両腕を垂らせば長い長い溜息をハーと落として頭を抱え、現実味など欠片も無い、爛々と色めく己の全て、壁の向こうに生涯の理想がいるなどと。怠惰に溺れて狂い切れば常識を少しも考えなくなるのだろうか、今一度ため息を落としてから体を引き摺る様に机の前へ書きかけの原稿へ目を向けたって、昨日は遠き過去である。気持ちが天か獄かほどに違うのだから昨日までの世界には戻れないと綴るべく文字が浮かばずに時間ばかりが過ぎていき)

  • No.107 by 浪花津 千  2017-04-12 23:20:59 


(書斎に向かう彼の姿が瞳に映らなくなるまで見送る視線はフィルム内に行き場を失い煮え立った熱の篭ったもの。体格に不釣り合いな肉付きはお世辞でも褒められるものでは無い何とも貧弱な背中だが、男性特有の広い肩幅でありながら垂れる肩に押し出された肩甲骨が作る独特な溝が情欲を掻き立て色香に惑う。未だに腕に残る平たい肉体の感覚が消え失せないようにと触れ合った表面が疼き末端に血液が集中し妙に痛い。散々時間を奪い己の存在を塗り重ねたにも関わらず盃は満たされる事を知ろうとせず枯渇した皿を舐め回すばかり。所詮はまだ青臭い青年、抑揚する胸の内を安定させる術など習った事も無い。巫山戯合う若者達の様にもっとラフなスラングで想いを綴れたら、彼を楽しませる何かを出来たかもしれない。遣る瀬無い色を灯した横目で箱を見遣り、箱を開けば何処までも甘ったるい香りが待っていたと香り漂い色取り取りな洋菓子を生えらせた。ちんまりとした何とも可愛らしく煌びやかなそれぞれは箱の中で静かに踊る娘の様、厳選された娘達を彼が長蛇の列に収まり手にしたと想像すると何故だか微笑ましくクスリと小さな笑みを零し。二つ用意された林檎のショートケーキは後に二人で感動を分かち合う為に箱の中へと戻し、バターケーキに紅茶を添えて一口「______甘い。」舌の上でゆっくり溶けてゆく甘美な味わいはこれ迄口にしたもので一番上等な洋菓子に感じられた。彼が選んだこその価値だけあると一人で納得し、黙々と口に運んでは一口毎に感動を噛み締め。時はあっという間に黒く空には無数の星を飾り街に明かりが灯る頃、そろそろ原稿も黒く染まった頃だろうかと様子見に行動を起こすがもし集中に浸かり没頭している最中邪魔をしてしまったらと書斎のドアノブを捻る事は出来ず一旦台所にて夕食を作り。また暫くして明かりがぽつぽつと消えていく頃、温め直した味噌汁と煮魚、そしてお惣菜をトレーに乗せて書斎の前に訪れれば「夕飯、置いておきますよ。」と小さく一言。冷たい廊下の冷気は静けさを増しているよう、来た道を見返すも扉一つ向こう側にいる彼を思うとリビングルームに一人戻るのも落ち着かない。ならば自然と彼が現れるまで待とうと扉の横にもたれ掛かりゆっくりと腰を下ろし)

  • No.108 by 夢前 雷蔵  2017-04-14 01:50:47 


(チックタック、チックタック、秒針が狂いも無く時間を刻むのにペンは硬直したかのように文字を一つと産むことが出来ない。過去に文字を一字綴るのに頭の中身が全て溶け落ちたように伽藍の露呈をした事など一度も無い、平仮名も片仮名も単語も一つと形を成すことが無く物書きが物を書けないなんて存在証明の否定でしか無い。息が詰まる、時計の針が止まらない事が一層と焦心に駆られるだけ。皮肉な事、満たされた幸せとは唯一の存在意義を奪い去ると言うのか。ツーと背を汗が一筋垂れると暑い訳じゃない為に寒気が襲い来る、文字を綴れない恐怖が得体の知れない化物として幻覚になる。確かに楽しみ嬉々として物を書いたことは無い、それでも、それにしても、今のようにポッカリと一字一句浮上せず何も考えられない浮かれ頭とは。今、頭を叩けばカランコロンと軽い音がするに違いない、チャカポカと何も入っていない頭蓋の中では委縮し凝固した角砂糖程の脳みそがぶつかるだけだ。気分が悪い、口内はカラカラと乾ききり、いつしや文章を綴れない情けなさに、時間を刻む秒針に、追い詰められ責め立てられている。背後には論う鴉が一羽二羽ピョンピョコと飛び回りガラガラの声で莫迦にするのが現実か幻覚かもう訳が分からない。ヒュウ…ヒュウ…、気が付くと肺に穴が開いたように情けない酸素が口をつく、彼と会えなくなった期間ですらこんな事は無かったぞと焦燥感にアル中の如く指先がカタカタと細やかな震えに変わり、いつしか部屋は暗くなっていることにすら気づいていなかった。原稿は依然真白なまま、___幸せとはこうも恐ろしいとは、知らなかった。無駄に生きたこの生涯にも無知たることが有ったのだ。「……!」孤独に入り浸りイかれた頭は切っ掛け一つ、彼の言葉によりうつつに戻される。背後をバッと振り返るも、そこに鴉など一羽も存在しない、質の悪い幻覚だと生唾をゴクリと呑み込んで、机の引き出しにしまい込む少し強い錠剤が入るガラス瓶を取り出してザラザラとそれを飲み込み指先の震えが少しでも収まるのを目視して「坊ちゃん、一緒に食おうか」結局一度も走ることの無かった筆を立ててから立ち上がり扉の先へ声だけ送り、現実を直視しては眩む眼を誤魔化し背を向けまた幸せに逃げるのだ。幸せを得てはまた悪循環に至るとも気づいておりながら甘い蜜を啜らずにはいられない、弱い理性。震えの収まる手を扉に掛けて、彼が同じ空間にいるという細やかで他のきかない幸せに浸り)

  • No.109 by 浪花津 千  2017-04-16 22:21:28 


(素人としては安易に万年筆とインクにより文字となった物語が原稿用紙上に引き詰め合っているのだと想像を膨らませるばかりで実際に何が扉の向こうで起きている等想像も付かない。きっと眼前に現れた彼に残酷非道な言葉を投げ掛けるだろうが知るまでは食い止める術も無い、少し先の己は現在の己に制裁を与えたくて堪らなくなるのはこの少し後の事。天井からぶらりぶら下がるアンティーク調のランプどもが均等な位置で薄暗いオレンジ色の明かりを放ち漆喰壁をぼんやり照らしては、形ある物全ての影を落として無機質模様を廊下一面に広げ己の存在でさえこの空間に調和させる。変わらない漫ろ心で動かない影を眺めている横で夕飯の一つである汁物の蓋の淵を蒸気が濡らし確実に熱を放出しているのが良く分かる。あまり冷めすぎては食材の新鮮度や旨味、品格が剥がれてしまうとそろそろ台所に戻ろうかと脳裏を過ぎったその束の間、扉の置くから己に向かって投げれた言葉をこの耳は逃す事無く鼓膜を震わし。芒とした脳から我に返って始めて現実の輪から片足を踏み出した沈黙者と化しいた事に気付き、慌ててトレーを抱えて立ち上がると今まで塞き止められていた血液がどっと下肢に向かって流れ落ちる感覚と共にぐらつく視界、もたつく足元は絡み合い脳の片隅で起立性低血圧を引き起こしたと理解するも既に遅すぎた。「______あっ!」体幹を支える二本の足は何の役にも立たずに膝は曲がり扉に向かって重心は倒れる一瞬の間スローモーションの様にトレーからは夕飯どもが水面から飛び上がる魚の如く宙に浮かびランプのオレンジ色が水滴に反射しギラギラと輝きを放って目と鼻先で踊り狂う。まるで自由を謳歌する舞のよう。彼が扉に手を掛けている事すら考える間も無く身体を支える為だけに瞬時に手に掛けたドアノブは本来の機能を果たして書斎への入口を容赦無く開け放ち、余計な形で再び対面する事となり。舞い上がった夕食達は被さるように身体へと落ちてゆく。彼にまで被害を広めたか確認もままなら無いまま唯一の支えを失った身体は開け放たれた扉の向こう側へと倒れる他無く、無慈悲にも星の重力には逆らう事が出来無い事を改めて知る事となり)

  • No.110 by 夢前 雷蔵  2017-04-19 01:26:00 


――ッ(さして重たい訳じゃない扉に手を掛けると大方其処にいるだろう坊ちゃんの姿を目で探し、とは言え。探すことなんて必要なかったとばかりに扉を開くや否や飛び込んでくる賑やかなその情景に驚愕と眼を開き、唐突の驚きとは時間間隔を狂わせると初めて知る。まるで全てがカチリと音を立てて静止したかの如く動きを止めて見えると筋肉のさしてついていない腕は反射的に彼の身体を受け止めようと前に伸び。息を飲む思いで動いた身体は何とか彼が地に体を付けるより先に役立ったらしい、ホと撫でおろすように息を落としては腕の中に迎え入れた彼を見やり「__矢張り、体調が優れないんだろ。」良くなったとは言ったが今の様子を見てはその言葉をハイ良かったと受け入れる程阿呆ではない。長時間口をきいて居なかったせいで詰まるような掠れを持つ声色で指摘を一つ、別に咎めるつもりは無いのだ。広々と綺麗な生活が一転し、この幽霊屋敷と名が高いオンボロに来たと言うだけでその気持ちは滅入ることだと理解ならいくらでも出来る。いくら貧弱な肉体と言え、男で良かったと女のようにナヨナヨと倒れこむことが無かったことに眉間にしわを寄せた表情の裏で安堵を抱き、転がる食器や食べる事が叶わない食品を一瞥してから「此処は片付ける。……坊ちゃんは着替えを」可哀そうに、汚れてしまったその身を見れば少しだけ目元を細めてから伺う様な控え目の眼差しで支えるその顔を覗き込み、足は捻っていないか、火傷は負っていないか、重なり抱く心配とは留まる事を知らず。宛ら浴槽の中に潜り込み肺にため込んだ空気を少しずつブクブクと吐き出すのと同じか、終わりの見えない心配は幾つも有るのにそれが音になることは叶わず。恐る恐ると躊躇いながら目元に触れる前髪を救う様に触れると"坊ちゃん"と浮かび上がるすべての疑問を表現するように一度だけ呼びかけて、ハラリと指先をすり抜けさせるように触れていた手を離し「一人で大丈夫か」今はタイミングが良かったのだ、もしもあと少しでも遅ければ支える事は出来ずにいただろう。もしも着替え先で、汚れを落とす為の風呂場で、彼がまた倒れこんでしまっては?眉尻を落とした困り面で元来の不安症が発揮するように多くは語らずとも短く言葉を掛ける事となり)

  • No.111 by 浪花津 千  2017-04-22 00:22:54 


(今にもポキリと軽い音を立てて折れてしまいそうな腕の中、それでもしっかりと己の身を支える芯のある身体、添い寝をしただけでは分かる事の無い感触に不本意にも感動してしまう。自分では無い他の誰かが支えとなっているのだ、何とも不思議な感覚。衝突の驚きなど二の次で新たなる発見より今に浸るため時間と呼吸を忘れ一時的に動作が停止。酸素欲しさに咽頭がくっと引き攣るのを合図に弾けるように肩を震わせて肺全体に酸素を取り込めば「ああ、先生すみません…!不意に立ち上がったのがいけなかったのです!」自分自身何用こんな羽目に合ったのか、思い返せば今朝の傲慢たる行動の自業自得極まりない原因が上げられるがそれにしても不調、矢張り恋故の心が雀躍し過ぎているのかもしれない。幸い汁物の熱は逃げ出し皮膚表面に触れるのは外気によって少々生温くなったもの、夕飯は書斎の中まで飛び散り床を汚している。周章狼狽は止まらず彼の身に被害が飛んでいないか憂懼、名を呼ばれるまでは頭部から爪先まで安否確認をじろじろと。慌てふためく己と違い随分と落ち着いた様子の彼の顔を見遣ればそれは落ち着きからくるものというよりも酷く沈痛している様な面持ち、見てしまえば必然的に動揺は静まり主観から客観に嘘のように塗り替えられてゆく。人が一得るものを彼は十得るのかも知れない、心配事も叱り小説家とは感受性豊かな生き物だと認識している、それが彼の本質である優しさなのだと己は受け止めている。改めてその心情を見遣れば心は解け気の抜けた表情となり「____……一人ではダメかもしれません。手伝ってくれませんか?」つい先程体調は平気だと言ったそばから起こしたアクシデントの後に、大丈夫だと断言しても不安は抜け切らない事を既に把握ししている、この際思い切り頼る選択を。安否を伝えるように彼の肩口を優しく掌で撫で下ろし手の甲まで辿り着けば少し強めに握り締め)

  • No.112 by 夢前 雷蔵  2017-04-24 00:24:23 


(/お返事遅れてて申し訳ないです!背後事情なのですが体調を崩してしまい、折角の物語なので確りと考えてお返事がしたく、もう少しばかりお時間を頂いてしまいますが一週間以内には必ず返しますので…!素敵な文章を頂いているのに本当にすみません!)

  • No.113 by 浪花津 千  2017-04-24 10:19:28 


(/お早う御座います、体調の方大丈夫でしょうか?気温の急激な変化や流行りものによって体調を崩しやすい時期ですよね、返信の方はいつでも構いませんので、どうか無理をせずにゆっくりと治して下さいませ!元気になられた背後様と夢前先生を楽しみにお待ちしております!)

  • No.114 by 夢前 雷蔵  2017-04-28 15:53:49 



(危なかったのは自分にも拘らず、まるで取り留めのない失敗でもしたと言うのかジロジロと向けられる眼差しを感じつつ、まるで叱られる事を待つ反省の浮かぶ反応に幼さを重ねてしまったのは翳むには未だ早く記憶の中に色強い己にとっての彼が未だ変化なく、あれがしたいこれがいいと年相応のあどけなさを持った大人とも子供とも言えぬ彼であるからか。今の様に何処へ出しても恥の無い淑女がこぞって隣に並びたがる、絵に描いたような色男、引いては内面とて紳士的な男らしい彼では無いと気づかせるようでもあり。握られる力強い手を辿る様に視線の先を少しずつ動かしていくと到着する端正なその面構えを数秒だけ見詰め、頼られるとより一層と記憶と現実が掻き乱される様にぐちゃりぐちゃりと境目が無くなるようで、二重に見える様な錯覚に瞬きを数回。握られる腕を手繰り寄せる様に今一度腕の中に彼を閉じ込めたくなる欲に正直な下劣な思考を抑え込み、現実に戻る為に頭を一度だけ揺らしてから「―――着替えは何処に、今タオルを持って来よう。坊ちゃんは、……書斎で待っていろ」今度は握られる手を引いて廊下と比べ汚れの少ない室内へ誘導してから荷物の場所を問い、何よりも彼が己を頼ってくれたと言う事実が己にも庇護欲と呼べるものが有ったのだと気づかせてくれる。それが純粋足る感情だけじゃない事は重々に承知しているが、離した腕を使い彼の頬を親指の腹でそっと触れる様に撫でて。心配に固めていた表情を少し緩め不慣れながら笑みを。恋と呼ぶには淡すぎて上手に嵌らないこの感情が不毛な愛であるとストンと脳味噌に形を成した事に気づきつつトランクケースの置かれる居間へ足を進ませ。__そう時間を取らずに着替えと多めのタオルを持ち戻り、「坊ちゃん。濡れた場所を、__自分で出来るか」最初こそ拭うつもりで掛けた言葉を飲み込む様に訂正を含んで再度送り、贈答品として頂いた新品のタオルを差し出して)

(/お待たせしてしまい申し訳無いです……!温かな対応とお言葉を有難うございます!お陰で体調も良くなりました、御心配をお掛けしてしまい重ねて申し訳ないです。どうぞ浪花津くんの背後さまも季節の変わり目ですので体調にはお気を付け下さい!)

  • No.115 by 浪花津 千  2017-05-02 22:54:49 


(/気付くのに遅くなってしまい申し訳御座いません!体調が良くなったようで私も安心致しました、そして素敵な文章を再び有難うございます!今すぐお返ししたいのですがここ暫く予定が立て込んでおりまして、あと2日3日お待ちして頂けますでしょうか?身勝手な報告となってしまい申し訳御座いません!)

  • No.116 by 浪花津 千  2017-05-05 20:42:57 


(彼を頼るとしたのは決して彼だけの為では無い、少しでも縋ろうとする子供じみた甘えが発揮されている理由も勿論、順当な行いだけで全てが収まるなど有り得無い。己の身を案じ、己の為を考察する姿からその頭蓋骨に守られた柔らかな脳味噌には"浪花津千"がしっかりと刻まれて今はいっぱいに占めているのであろう。そしてそれは、とても耐え難い程に愛おしいのだ。口にせずとも理解ができる、理解しているつもりだが果たしてそれが正しいかどうかは千人に聞いても分からない。無論本人の口からであろうと心情を限り無く正確に近い言葉にするのは苦悩の技だ。だからこそ確信は見てなくとも恐らくを信じて今は目に見えた糸から手繰り寄せてどろどろに溶けた欲望を少しずつ露わにさせて行く。これこそ唯一の甘えなのだ。気が付けば其処は書斎で眼前にはタオルと着替えを持つ彼の姿があり、ぼんやりと考えている間にたかがこれしきの事にこんなにも動いてくれたのかと少々苦い笑みが零れ。小さく礼を告げてタオルを一枚と着替えを受け取り、まずはタオルを両手で広げて一番汚してしまった顔を覆ってゆっくりと首まで拭い。幸い髪に付着せずに済んだがシャツにはべっとりと夕飯であったものが汚れとなってシミを作っておりそこから漂う匂いに改めて随分味噌汁臭くなってしまったと気にとめて。「_____先生こそ、そのタオルで拭って下さい。折角の着物にこんな匂いが染み付いてしまったら大変です。」同じの違う面で首の後ろを拭い。一旦タオルを近くの机に掛けて、羽織っていたベストを脱ぎ丁寧に折り畳み同じく机と掛けてふと彼に再び視線を向け。普段から己の知り得ない未知の知識を多く持つ故に彼を尊敬し敬意を込めて"先生"と命名しているが十近く年が離れているとまでは常に意識しているわけでは無かった。決められた歩数で年月を越している筈だが彼は不思議とずっと歳が離れている感覚があまり無く存在までも近しいく感じてしまう。恋心故なのだろうか、それとも隔てる年齢の差をも超えた対象と認識してしまっているのであろうか、どちらにせよ特別以外の何物でもない。不意に二枚目のタオルを受け取るが正確には掴んだだけで、彼の目の前で手の腹を見せるように腕を捻り「先生。」それは寧ろタオルを彼に差し出した形となり、一言で連ねた呼び名には再びの頼みと称した甘えを含ませて。もう片手でワイシャツのボタンを三つ程外し今一度名を呼び)

(/遅くなりました、漸く落ち着いたのでお返事を返す事が出来ました。長らくお待たせ致しました!大変申し訳御座いません!どうぞ今後も宜しくお願い致します!)

  • No.117 by 夢前 雷蔵  2017-05-09 02:22:51 


(渡したタオルを彼が受け取るとそんな些細な繋がりすらもが安心に至り、誰かの為に動くことと言う経験が人と比べて極端なまでに薄いせいで何が正解で、何処までが図々しい、此処までは人でなし、とその境界線すら分かり兼ねて頭を悩ましてしまうのだ。ホ、と胸を撫で下ろしたのは彼の動きの一つ一つに火傷を初めと怪我がしいていないと言うのが見えたからで、その安心が有れば部屋が汚れた事など二の次である。部屋を漂う空腹を煽る匂いとて、薬が効いた高揚する浮かれた頭の前では大きな事でなく。寧ろ書斎を掃除する良い切っ掛けが出来たかもしれないと思うまでで、ボーと彼の様子を眺めて動きが止まっていたことを指摘するように自身を気遣う声が聞こえるとハタと何処かへ向いていた意識は戻り、"ああ、ああ、"とシドロモドロに意識が飛んでいたことを濁す為の曖昧な返事を口にして一つのタオルを手に、とは言え少し掛かっただけの着物に押し当てて。俯くように下を向き白いタオルが色付くように布を押し当てて、その中でもう一度、繰り返すように呼びかけの声が届けられると顎を上げるように落としていた頭を上げて。その先に見えたのは品無くはしたなく、ゴクリと喉を上下させ生唾を飲み込んで。ただ、呼ばれただけ、それも名前ではなく呼称である物なのにだ。ゾクと背筋が震えるのに反して熱が燻ぶるように暑さを覚える、するりと目元を細めて、それでも逸らすことなく真直ぐに見詰め。「……何だよ」甘えを含んだ声をもう一度聞きたい、そんな欲のままに期待を持ち片方の口角を僅かに持ち上げて)

(/此方こそお返事が遅れてしまい申し訳ないです…!多くなるのはお互い様ですので本当にお気になさらないで下さいませ!此方こそどうぞ今後とも宜しくお願い致します…!)

  • No.118 by 浪花津 千  2017-05-14 13:53:57 


(/申し訳御座いません、予定がかなり立て込んでおりまして今月いっぱい不定期になってしまいそうです;/土下座/本日深夜にお返事が返せると思いますのでそれまで今暫くお待ち下さい!)

  • No.119 by 夢前 雷蔵  2017-05-14 15:32:58 


(/ご連絡有難うございます…!いつも素敵な文章を頂いて本当に有難う御座います!お返事は私生活に余裕が有るときで全然大丈夫ですので無理だけなさらないで下さい…!私も夢前もいつまででも待っておりますので、背後様のお身体だけ忙しさに崩してしまわないようご自愛して下さいませ!)

  • No.120 by 浪花津 千  2017-05-16 01:32:27 


(湿り気を含んだ部分が外気に触れて少しひんやりと肌寒いが内側からの発熱のせいか震える程では無く、それは襟元に掛かったものが背筋を通って濡らしたもので必ずしも拭う程の大差なものではない。そして誰かに頼るまでも無く、目に見えて安易に処理の出来るものにかわり無いが彼に触れて欲しいという艶かしい欲求が掻き立てられる末に差し出したタオルを受け取るよう、催促のアイコンタクトを。決して咎める事の無い純然そのものを含めた柔らかな笑みを一つ、やがて相手に背を向ける形となり、濡れてシミの出来た部位を露わにさせて。「拭いて下さい、先生の手でしっかりと。」雲に覆われては時折姿を見せる月が窓の縁を照り付けて金属製の部分がキラリと美しく光らせる様を細めた瞳で眺めてはこの長い一時を堪能し。異様な空間、静寂の中にたった二人の呼吸音だけが響き渡るのがとても心地が良くじんわりと胸の辺りから温かいものが滲み出る感覚が生まれて、「_____先生は、こうやって誰かに触れる事は勿論あるでしょう。けれど俺は、貴方以外に触れては欲しくないです。」秒針が時を刻むと同時に夜は更けて落ちた影が伸びて行くのを一瞥し、再びシャツに手を掛けて再びボタンを取り外して肩からするりと落とすように濡れた服を着脱。着替えの服を両手で抱えてちらりと後ろを見やりもう一度催促のアイコンタクトを、今度は直ぐに前方へと視線を向けてゆっくり頭を垂れて)

(/大変お待たせ致しました!そしてお優しいお返事に感謝感激で御座います…!どうしてもここ最近やらなくてはならない事が増える一方で追われる形になってしまいました、今暫くこういった状態が続きそうです。それでも必ずお返事は致しますので背後様も気長にお待ち下さいませ!)

  • No.121 by 夢前 雷蔵  2017-05-20 16:19:36 



(砂で出来た城ほどに脆い自制とは彼の口より綴られる言葉で簡単にも海に呑まれ消えてしまう、跡形もなく。端から常識とは備わっていなかったとでも言う様に、本能ばかりが浅ましく色を持ち姿を出してしまう。女の裸体とはまた違う、誰がどう見ても男の物とわかる柔らかさも丸みも持っていないその身体を見て、引き締まった筋肉の付いた若く張り締めた四肢を見て、欲情した脳味噌は糸で動かされる操り人形の如く従順で。「もしも、そうだとしたなら。――此処が幽霊屋敷と名を馳せる日は来なかっただろうな」手の内に有るタオルを一瞥、伏せた睫毛の隙間から伺う様に眼球の動きは見落とすのが勿体ないと彼の姿を垣間見て、死ぬまでに殺し文句を受ける日が来るとは、今のワンフレーズを頭に刻み込めばそれだけで高揚した気分のまま夜に疼き日を繰り返せるほど。伺い盗み見る様な目線の先を自嘲に姿を変えてから喉を鳴らし鼻で笑い、「誰かに触りたいと、そう思ったのは坊ちゃんが初めてだ」触れる口実である布きれなど必要じゃないと床へ落とせば形の良い顎から頬へのラインを撫でる様に触れて、見れば見る度に都合の良い夢の中で生きているような非現実的状況に感覚は鈍り行くようで__「だから。頼むから、これ以上煽るのは……」自己分析は出来ている筈だ、己と言う人間が人から思われて居る程にプラトニックでもなければ機械的でも無い、むしろ、他の誰よりも簡単に欲に呑まれて抑えきれない気持ちを安いアルコールで抑え込むことで何とか堪えこんでいるだけ。目の前にぶら下がる餌を堪え待てができる利口な犬なんかじゃない、触れる手の平がカタカタと酒を切らした時と同じく震えを帯びる。触れていた指先を拳を作る様に丸めて「でないと、坊ちゃんを潔白のまま元に帰せる自信が無い」眉間に深く皺を刻みつつ顔を渋くくしゃりと歪め、口を一の字の如く口角に力を込めつつ僅かに持ち上げ訴える様に伝え)

(/お忙しい中お返事をいただいて嬉しい限りなんです…!ご負担になっていないかが心配で!勿論、ゆっくりとしたペースでも話が続けられれば嬉しいので本当に無理だけは為さらずに…!私もお返事を必ず返しますので!)

  • No.122 by 浪花津 千  2017-05-28 23:41:55 


(恐らく彼を制するものと同じものを己も持っている。もっとも、己の持つものは一度は欲を閉じ込め鍵は掛けたは良いものの、中で育つ艶かしい感情が小さな器には収まりきらず溢れして来そうなものだから焦りや不安とほんの少しの期待からもう開けてしまっては良いのではないかと新たな欲情が生まれてきているもの。考えてみれば今まで頑なにも耐え凌ぐ経験をした事が無いのかもしれない、敷かれた道は常に一つ、抗う事なく進めば手に入れないものなど何も無い、開けてしまってもいいのでは。何処かの遊女の様に血反吐吐いて股を開き心を手に入れるよりも容易く目の前で酷く怯えた様な面持ちの彼を手に入れられるそんな気がしてしまう。その振戦し丸まった指先を握り締める様に頬から剥がし、前より目線が近くなった彼との距離を縮めるよう腕を引き寄せ「先生は今夜を夢で終わらせようとしているのでしょうか?明日になれば何事も無かったように、今夜の爪痕を残さないように、と?」孤独と寄り添い生きた彼に己の存在は全てにおいて相当の責任と負担が日々背に積まれている事だろう、一度犯してしまえば彼は後戻りが出来ないのは重々承知してはいるが重荷を軽減させる程己でさえも抑えきれないのだ。細い身体を腕の中へと収めて、繋ぎ止める様にしっかりと肌を密着させ互いの体温を奪い「_______先生が望むものを俺は望みます。…同じように先生が嫌うものであれば俺もまたそれを嫌うでしょう。夢じゃない結末が良い、先生の爪痕を何度も何度も刻みつけて欲しい。」少々腕に力が入り過ぎているせいかそれとも無意識の内に返答に対する緊張からなのか指先が冷たく痺れて感覚が薄まっているよう、それでも構わず抱く形は変わらずに彼の肩口へと額を押し付けて。我ながら浅はかな願いを乞いるようでみっともないとも感じるが、そこにある温かさに甘んじてしまう事だけは止められず)

(/毎度お優しいお言葉に救われております…、背後様とのやり取りに何も負担は御座いませんよ!寧ろ長期に渡ってお待たせしてしまっている事が申し訳無くて仕方がありません。じっくり考えれば考えるほど凝ってしまうものでして…。漸く私生活も落ち着きを取り戻して来ましたので未だにゆっくりとしたペースではありますがぽつぽつとやり取りして頂ければと思います!毎度の事ながら寛容な背後様には感謝でいっぱいで御座います、どうぞこれからも宜しくお願い致します!)

  • No.123 by 夢前 雷蔵  2017-06-05 11:37:46 



(抱え込んだ欲情とは正に重力、火に掛けた鍋の中で水が煮立ちグツグツと沸騰するのと同然、産まれて消える人並の常識で。頼りない背中をポン、と少しだけ押してしまえば後は雪崩れるのと同じ。簡単に欲に引き摺られてズルリズルリと済し崩しに落ちる他無いのだ。強いアルコールを躍起になって胃袋に詰め込んだように何も考えられずドロリと脳味噌が溶けてしまった錯覚に至る、密着した箇所が淫らにはしたなく、もっとと強請る。押された背は重力に従いぼちゃりと欲情の海に沈んでしまった、呆気なく、簡単に。肩口に置かれる彼の顔へ自身の頬を寄せてから「折角逃がしてやろうと思ったのに、……坊ちゃんは怖いもの知らずだな」怯えは既に消えた腕が彼の背を抱き締めて、右手は這う様に上へと上がりサラサラと指通りの良い髪に触れ、左手は引き締まる背の肉に、爪先で引っ掻くようにカリと刺激を与えると「直ぐに余計なことを考えちまう。だから、考える間を与えないでくれ」承諾と言うには図々しい、ただ目の前の餌に堪え性が無い浅ましい畜生の表れでしかなく。熱に揺れる眼に愛しい愛しいと長い恋心を蕩けんばかりに閉じ込めて、年甲斐もない口付けを彼の首元に。赤くこれが確かだと証拠を残す年甲斐の無い執着心が己にも有ったのだと冷静になって羞恥に悶える感情は既に留守、この時間を無駄にしたくないとばかりタガの外れた思いは幾つもの口付け痕として彼の首元に刻まれて)

(/私も二人の事が愛しすぎてつい考え込みお返事が遅くなってしまい申し訳ないです!勿論です!ゆっくりとお相手して頂ければ本当に嬉しいです…!この後の展開で裏に入ってしまいそうなので、日常に戻るでも暗転し次の日に飛ばすでも大丈夫ですので合わせます…!)

  • No.124 by 浪花津 千  2017-06-14 01:39:53 


(こんなにも熟睡したのはいつぶりか、短時間目を瞑っていただけで頭は冴え、一番の鳥の声で眠気は吹き飛んだように感じられる平日の朝。ポツポツと窓を叩く梅雨の知らせは心地が良く、相変わらずリビングルームで就寝した身体には癒しにも変わる。少々湿り気のある空気だが嫌いでは無い、瞳にかかる前髪をたくし上げて寝転んだ状態で窓の外を見遣り。此処に来てから数日、現実とは程遠い場所で暮らしていたかのような感覚、彼とこうした距離を保つ理由は多々あるが大半は気持ちの整理を付けるため。同じ屋根の下で過ごしている事すら貴重だというのにこれ以上の贅沢を望んではならない、帰省の時期は刻刻とせまっている。水滴の音はまるでら急かしているよう、咳払いをして天井へと目を背ければ「_____……、いやいやこのまま黙っておこう。先生が知ってしまったらきっと罪悪感で首をつってしまう」ここに来てから隠し事が一つ、確実に彼を困らせる内容であり勿論黙っているつもりだが曖昧な帰省日については常にいつにしようかと迷いどころで。兎にも角にも依然として楽しい夢のような日々は続くわけで、それ以上の考え事にするのは時間の浪費だと切り替えて、日課となりつつある行事の一つを済ませる為に立ち上がり、珈琲と朝食を用意して)

(/大丈夫ですよ、お互い間隔が空いてしまいますとその分考え込んでしまうのかもしれまんせんね…!それでも私は全く構いませんので、背後様がもしなにか不安に思われましたら遠慮なさらず仰って下さいませ!そして、後日に場面を変えさせて頂きました、今後の展開についてなのですが、何がご希望はありますか?私としては先生様をどこかに連れ回したいのですが…!)

  • No.125 by 夢前 雷蔵  2017-06-27 17:27:37 



(夜になれば何処からとも無く姿を現しヒタヒタと背後を奪い足を引っ掛ける、嫌らしいまでの焦燥感と自己嫌悪に眠ろうと意識を傾ける事すら無意味とばかり。薬を頼る事で漸く眠りに付ける明け方、当然目が開くのは一日の折り返し辺りの真昼間ばかり。そんな生活リズムが体内に時間を作っているのに人間とは現金なもの、人間と言わず己と言う存在が感情に素直で欲深い事を証明するべく、ずっと欲しかった傍に置いていたかった彼が傍にいると言うだけで心は満たされ眠りについた。寝入りが早ければ自然と太陽が上るのに合わせ重たい瞼が開き、"嗚呼、世を働き歩く父親とはこんな早くから歩き回るのか"と時間を教える掛け時計を一瞥し吐息を一つ。リビングルームより人の生活する音が聞こえれば、たったそれだけで満ちる想いを自覚して泡沫の生活から抜けられぬと根を張ってしまう、ずるずると横たわる体を起こしてから朝特有の露めいた香りを久しぶりに肺に溜め込んで立ち上がり、朝起きて着替えを行う当たり前の人間らしい行動すら新鮮で「おはよう、坊ちゃん」リビングへ足を運ぶとそこにいるだろう他ならぬ彼へ挨拶を)


(/お返事とても遅くなり申し訳ないです…!以後気を付けますので!
場面展開有難う御座います!連れ回しとはなんと楽しそうな…!坊ちゃんの見た目を少しばかり変装させて町を歩く和製ローマの休日のような展開に今から楽しみでなりません!ぜひとも其方で進めたいです…!)

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