かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
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(空白の時が絶えず流れゆく中で生まれた、胸の奥にふつふつと泡立たる焦らしい感情にぴったりと当て嵌る名前を付けれれば、浅ましくも今すぐにでも聞かせてやれるのに。けれど浮かぶ言葉は疚しいものばかり、既に弱り果てるその心身に誤った言葉を吐き付けば、きっと今以上憤怒し 傷口を掻き回すかもしれない。大体二年前の当初は物珍しさ故に訪れただけの理由、怒りを覚える以前の問題かと脳裏を過ぎった刹那、眼前に現るショーケースに目を奪われ。己からすれば何の価値もない唯の学帽を自身の身の回りより大切に保管するそれを事故とはいえ書物の雪崩の中で発見した記憶が波のように押し寄せ。それを差し出し何を言っているのであろう、鮮明に浮かぶ記憶が優先され声など遮断さられてしまった。なんとも言えぬこそばゆい感覚に陥り知らぬうちにいつの間にか瞳を細めて頬を緩ませて学帽を受け取るとまじまじと見下ろし、そして不意に唇を開いて「そんなもの、売ってしまえば生活の足しとなったでしょうに。…そう、そんなものを取りに来たのではないのです。もっと大切なものがこの場所にはあるんだ。」被ってきた帽子を傍に置き去り、学帽のツバとその真後ろを両手で摘み学舎に登校する早朝の如く、ぐっと頭に被せ。少々この部屋のインクの香りが染み付いているがそれもまた愛おしく、手持ち無沙汰になった相手の骨ばんだ掌に己の両手を重ねるように包み込むと、長い前髪の間の瞳を捉えて静寂を断ち切るように低くゆっくりと「_____先生、迎えに来ました。」セピア色にあの日で止まったままの幽霊屋敷の主を、今一度その顔に控えめな笑みを浮かべさせよう。もう離すまいと言わんばかりに指先に少しばかり力を込めて)貴方は望まないかもしれないが、会いたかった。もうずっと、先生が書き連ねる文字ばかりをなぞり。虚しさと歯痒い思いが満たされたいと疼くのです。
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