かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
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(元来の神経質に加えて毎晩の睡眠薬代わりのアルコール摂取が減った為か、酒浸りの頃であれば惰眠を貪り昼頃まで眠り耽る日々とは違い小さな物音、人の気配に落ちていた瞼はゆっくりと持ち上がり。薄紫の空は未だ夜明けであることを示すばかり、寝起き特有の重たい体を芋虫の如く怠惰的にノロリと起こして布団をぐちゃりと隅に寄せる。耳を澄ませても人の声は聞こえずに、余りにも早く起き過ぎた頭に早朝の冷たい酸素を送り込む。寝起きの水を、と寝巻のままの姿で足を引き摺り寝室から台所へ足を進め。その途中、通りかかるリビングルームに人影を見つけると通りかかった足を止め。再び扉の隙間を覗き込むと、いるはずの無いその姿に困惑しゴクリと唾を飲み込んでから扉に手を掛け「坊ちゃん、」いつか、家出と称してここに来ることは分かっていたが、よもやこんなにも早く。それにいつから来ていたのか、声を掛ければいいものを見慣れない花までリビングに彩と残した姿でいるものだから二の句は告げずに名前を呼んで。「――嗚呼、家を出たなら仕方ない。行き場の無い可哀そうな坊ちゃんを囲ってやるさ」早起きをしたと思っているのは己だけ、本当は未だ夢の中なのかもしれない。ソロリソロリと近づいて隣に並べば寝起きの霞みがかる頭のせいで素直に隠すことなく嬉しさを表情に浮かべて、近づくと香った芳ばしい香りを鼻腔の奥まで堪能し。隣へ腰を下ろせば遠慮なく胡坐をかくように座り込み「……声を掛けてくれれば良かった」いつから来ていたかは分からない、それでも書斎に籠るのとは違うこの場で、夜明けの薄暗い景色が一層とこの空間を日常から切り離している。そんな気持ちで目を向けて)
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