かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
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良かった。……え?えぇ、今日から、まあそんな所です。
(数時間前とはまるで違う午刻の光、寝室を照らし込む光の粒子が物言わぬ無機物に生命を吹き込むが如く、彼もまた灰色の毛先が微光に透かされながら瞳を開いて目の前に立っているではないか。どうやらこの世にあらずの意識も今やしっかりとその足を地につけて状況を素直に呑み込んでいる、少々温暖差を感じられるがきっと寝惚けていたのだから記憶は夢の中へ置いてきぼりを喰らっているに違いない、そんな都合の良い解釈を胸に安寧を呼び起こせば少しは偏頭痛も和らぐようで。ほっ、と息を付いている合間、何やら人の顔色を見て鋭い感を働かしている様子に再び心臓が縮み上がり、珈琲を載せたトレーを持つ腕が微かに震え。昨夜の己の破廉恥な行動が脳裏を過ぎる、夜明け前の青紫色が甘美な蜜を垂らしたとはいえ誘惑に負けたのは己自身、あんな人として良からぬ行為を彼にバレてしまえば見せる顔が無くなってしまう。そればかりは何としても阻止したい。リビングへと向かう背を訴えかけるよう見詰めていたが昨夜の一連の一つであるあの場所で、何か思い出してしまったら…と後ろめたさのあまり、腕を掴んで「林檎と言えば、饒舌な女店主の営む林檎を使った美味い和菓子屋がこの近くにあるとかなんとか!是非これから行きませんか?たまには外の空気も吸わなければ、ね」トレーを脇に抱え、半ば強引に珈琲のカップを握らせるとリビングとは真逆の洗面所へ。屋敷の内部を全て脳にインプットされている訳では無いがもしもの為を考え一階は過去に探索して吉と出た。先程用意した昼食は、彼の見ないうちに処分してしまおう、「____さ、顔を洗って髪を梳かして下さい。長蛇の列を成すので売り切れてしまえば先生のせいですよ」洗面所へ彼を押し込めば、普段の調子を繕いやんわりと笑を浮かべ。有無を言わさないトントン拍子で扉を閉めてしまうと、瞳を擦り己の準備を始めるべく最初のリビングへと荷物を取りに)
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