かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
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(嗚呼、忸怩たる思いで悟られまいと故意にあれやこれやバタ足で奔り出す姿は我ながら滑稽なもので目も当てられまい。果たしてこれを何時まで続けられよう、羞恥に赤黒く染まった感情の残渣が心に散り積もり滔滔、立場も無い息苦しい思いが喉元を締め付けて気道を圧迫し短な呼吸を強いる。夢では無いあれは現実で起きた紛れも無い真実、上から何度塗り付けようと浮き上がる黒。朝霧を映す硝子だけは己の全てを委細承知し不変に映さなくては良いものまで映しているに違い無い、選択の余地が無い無機質とはいえ勝手な無言の繰言が胸に反響し。余り目立たない形と色の上着を羽織り簡単な身支度を済ませ終えれば丁度彼と出会い。外出用の中折れハットが良く似合う、珍しく整った髪型も完璧とは程遠いが彼らしい。相変わらず表情にも雰囲気にも覇気がない様子でどんな第一声が出て来るのかと思えば、何一つ今の己とは無縁だった言葉達。汲み取るのは安易な事で、ハッとして感触では分からずとも指先を屈伸して目の下を擦るように触れ。まさか顔に出ていたとは、彼の健康を思って昼食を用意した己が不覚にも気を遣わせてしまう事になるなど考えてもみなかった。それ故絡まった思考が臨機応変な言動を生み出す事を忘れ知らず知らず肯定の意を示す頷きを小さく見せ。「_____朝の、気温の変化が今頃になって現れたみたいです。お言葉に甘えて少し休んでいても良いですか?」一番に抱いたものは彼への申し訳なさだった。下らない理由が理由な上に身を案じてもらうなど何と不甲斐ない事か、一刻も早く元に戻る為暫し気持ちを落ち着かせる猶予を己に与える事を選び。とは言え一人で向かわせるのも気掛かりでついつい屋敷の外まで見送っては、そわそわした落ち着かない様子でリビングにて座ったまま待機を試みるがいつの間にか仮眠を取る形となり数時間。若しくはもっと短いかも知れないが浅い夢の中をさ迷っていた意識を再び現実世界に戻すと、余計な時間に寝てしまったせいか、はっきりとしない思考である肝心な事を思い出す「………先生に、場所を伝えていなかった。」同じ姿勢で固まった身体を起こせば関節が鳴り鈍い痛みを伴う。静まり返った室内、まだ帰っては居ないのだろうか探しに出掛けるまでそう時間は掛からず)
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