かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
通報 |
(気色を伺うまでも無く不器用ながら小さな笑みが溢れる様子につられて安堵し微笑みが浮かび。血の通う指先が頬を伝うのをまるでいつ離れてもおかしくない野生の蝶が逃げてしまわない様、微動出せず息を潜める。指が離れるまでは瞼を閉じて全てを遮断させ心身共に僅かに繋がり合う肉の境目を堪能な彼のを味わい。来るまではこの屋敷に後ろめたさを感じていたが今では我が家に戻るのが難に近い、いつか必然の日常に別れを告げれるようこの世の秩序に願をかけ新しい空気を吸い込んで瞳を開き。遅れ気味に頷き肯定の意を示し「______直ぐには難しいですが、成るべく早くまた戻ります。」今度の置き土産も学帽で満足なのだろう、身支度を整え訪れた時より軽い足で書斎の扉を開けば真新しい空気が広がっているように感じられ大きく深呼吸を一つ。「では…、また。」一歩を踏み出す間際横目で彼を見やればその目を細めて別れとは別の言葉を告げる。芽吹い恋心はまだ顔を出したばかり、惑いがない訳では無い、それでも今は。今だけは温かな感情に浸りたい。霞む空は未来を重く迎えるよう、傘に落ちる雨音を全身に響き渡らせながら世に背を向けて歩く足取りは不思議と軽く、重く。______あれから数日、革製のスーツケースを持ち再びこの街へと訪れ。何かを迂回するべく時刻は既に夜更けとなり、静まり返った街中に地面を蹴って歩く靴底が響き渡り野良猫が威嚇をする。片手には赤く開いたカーネーションを、屋敷の呼び鈴はいつもの如く押さずに玄関へ侵入すると丁寧に折り畳まれた傘を元の位置へと戻し。書斎へとは向かわず滅多に主人に使用されていないであろうリビングへ向かうと見付けた花瓶に花を。夜明けまで睡眠を取ることなく彼が目覚めて飲み物を口にするまで持参した珈琲豆を挽いて待機し。)
トピック検索 |