かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
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(不安を他所に彼は平然と眼前に現る、不釣り合いな晴れ模様を背にしっかり影を落としてそこに立つ姿はどれ程の精神の平静かを齎した事か。何処か見知らぬ土地で野垂れ死んでいるのかとついつい想像を巡らせてしまったが彼は己との約束を果たして戻っている。改めて彼と己との互いの年齢の差と環境の違いを実感させられ、余計な心配をしたのだと実感し。何処へでも飛んで行く選択権と帰るべき我が家のある自由な足は相当の年月を重ねた妥当な対価だ、それに魅了された出会ったばかりの頃、確かにあの日あの時、今と似た感覚を抱いた、まるでデジャブのよう思い出される記憶は走馬灯に過ぎ去り「先生は、俺が思うよりずっと__」自然に心の声が零れる合間に差し出された箱に意識を釣られるように見下ろせば、その言葉は忘れ去られるように喉を滑り落ちて胃酸の中へ溶かされてゆき。箱を預かれば二人分にしては重量があり、幅も広く、甘ったるい香りも花を掠める。さては気を遣い買い占めたのだろうか、不慣れな長蛇の列に萎縮する姿がゆらゆらと浮かび上がり思わず微笑ましいと胸を擽られ。固まった身体は少々疼痛をもつが仮眠が功を奏したようですっかり頭痛は消え普段通りの体調だと我ながら感じられ「お帰りなさい。もうすっかり良くなりました、眠気も頭痛も少し休んだら嘘みたいになくなりましたよ」彼の上着と帽子を預かるべく両手を差し出し、再びリビングルームへと向かい箱をテーブルへ。嘸かし疲労に蝕まれているであろう相手と対峙するような形になれば前触れも無く瞳の下を人差し指の外側で撫でるように触れ「お人好しですね、本当。ただ俺が欲に負けただけだと言うのに。」小さく呟いては困ったような微笑みを浮かべて)
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