かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
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(今こそ幸せと幸を噛み締めればその後の落差である不幸が恐ろしい、素直に目の前の幸せだけを噛み締める事が出来ればどれ程までにこの世界とは生きやすいことか。それでも、己にとって世界の全て、この端麗たる彼は完璧と言う様に己の不安までもを掻き消してしまう。床ばかりを舐める様に落とした眼差しは続く提案に持ちあがり、必要以上の心配を全て拭われた上で叶う欲に塗れた願望をそれ以上断る理由なんて有る訳が無くて、彼の思惑通り、への字に落ちる口角の口元はその中で不器用にも笑みに変わり。「雨、__玄関の所に傘が有るから。好きなの持ってけよ」顎を使い玄関先を示せば離れた体を再び寄せて「あんまり待たせるな、傘はそれ一本しか無いんだ」気が緩み破顔する事は羞恥に勝てず、口内をぎりと噛むことで己を律し浮かれそうになる思考を留め。寄せた手の平で張の有る、それでいて柔らかい頬を人差し指の背で撫でる様に触れ、待っている事と少しばかり溢れる欲で彼が来る事を急かす様な言葉を送り。___目まぐるしい程トントンと進む話は追いつくことがやっとであり、寧ろ追いついているかさえも怪しく。狐につままれたと言われても驚かないほど、見送る事は出来ずにいつもと変わらず書斎の扉まで足を進め後ろ髪引かれ名残惜しむようにその姿が見えなくなるのを視線ばかりが素直に追いかけ、一度だけ彼の元に渡り再び己に戻された学生帽をショーケースの中へ戻しては少しずつ蝕むように訪れた実感に年甲斐も無くカァと顔を赤く染め生唾を呑みこむ、触れた唇を割れた爪の指先でなぞれば、今もまた思い出される様な熱に冷静さを欠き。早鐘打つ心臓を抑え込むためにアルコールを手にしたところで、彼の顔を思い浮かべては瓶を取らずにまた置いて。久しぶりに、睡魔は来ずとも不快にならない、星の数ほどの罪難題に責められる事無く酒の無い夜を過ごし)
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