かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
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……(随分と良い夢を見ていた気がする、夢と言う物はいつとて朧気で精密さも無ければリアリティに欠ける。意識が起きる事には泡が弾けるように記憶の中から存在をサーと消し去る性質の悪さを兼ね備えているから仕方がない、今日も今日とて瞼を開いた布団の中から眺めるのは日差しの強い外景色。嗚呼、また必要以上に睡眠を貪ってしまった、一日の大半を無駄遣い、駄目にしてしまったと低血圧のように重たい体を起こしては、しゃんとした一日を過ごすのとは程遠い鈍間たる動きで寝巻から着替えを行って。申し訳程度に布団を畳んでいると、声が聞こえた。それから少しと待たずにノック音が聞こえ扉が開く、その先に彼の姿を捉えた瞬間、刹那と思い出されるのは朧だった良い夢の詳細。堪らず絶句、生唾を飲む事すら出来やしないのは己の生々しい欲深さを直面したからで。寝癖が未だ残る前髪を暖簾代わりに視界を狭めつつ「"家出"とやらは、今日からやるのか」鍵を掛けない家であれば彼がどの時分に来ていても可笑しくない、其れでも先の出来事が現実ではなく夢であると受け止める方が気が楽のようで。出迎えにしては少々素っ気無く、目を見ては夢の中の幾分か素直な己が浅ましくも彼に伝える本音の欠片を漏らさないように気を付けているだけで。立ち上がり傍へと近づいた際に香る珈琲の匂いにスンと息を短く吸い込んでから「いつから……余り顔色が良くないみたいだが」最初は色濃い珈琲の香りに今来たばかりだろうかと推測を行い、その言葉を向ける途中、近づいたことで先日見かけた顔色よりも血色が悪い、具体性を上げるなら己と似通った目の下の隈が健康さを欠いていると眉間に皴を寄せて推測はソコソコと「俺よりも坊ちゃんが食べたほうが良い、」先ほど食事がどうのと話していた、そう思い出すと血色がよく健康たる雰囲気と凛々しい顔つきを知っているからこそ今の彼とは心配を煽るばかり「林檎がある、剥いたら食べれるか」そもそも食欲は、等と疑問を重ねる中で彼を書斎ではなくリビングへ誘導しようとペタリペタリと裸足の足が粘着質な音を立てる廊下を進み)
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