かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
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(騒然とした街を背に警笛一つ鳴らないこの場所で禁忌を犯した者がいると誰が知れようか。胸に生じる互いの熱に溺れないように二本の脚で支え合い立つ姿はまるで秩序を乱す名ばかりの事件を超えた様、常識を覆せば犠牲も伴うのも厭わず欲望のまま、きっとそれは道化の様で決して美しいってもんじゃない。どんなに醜態を晒そうと曲がりなりにも突き通したいと願うからこそ禁忌を犯す事など星屑の一欠片だかの価値にしか思えないのだ。寄せた襟元から鼻腔を抜ける香りには賛美し、遠慮がちに吸い込んだ酸素を肺から血液に乗せて脳へと充満させ。ピリッと指先が痺れる感覚、あんまりにも彼が近いものだから呼吸の仕方を忘れてしまったのかもしれない。今一度大きな深呼吸を、心地の良い笑い声が安楽を促し最も簡単に肺を満たし。「先生さえ良ければ、何度でも。」動乱の時代、不条理な世の中だが彼と出会えた事だけは数少ない幸だろう。嚙み締める程の不自由さも無いと指摘されればぐうの音も出無い為に、静かにただ静かに瞼で瞳を覆って胸の奥底で感動を染み渡らせ。家出と称して彼の屋敷に居候する身となるが、彼の執筆を奪う事だけはしたくは無いとチラリと横目で古びた掛け時計を伺いつつ暫くはこのままの状態で。朝食も昼食も食べずに働かしたのだから相当の疲労が足に溜まっているだろうと身を剥がせば感謝の言葉の代わりに、ラフな口付けを頬に落とし。「執筆の際は、俺はいないものだと思って下さい。先生が先生の務めを果たした際は褒美だって考えてありますよ」後ろめたいものを泣くせばすっかりと調子を取り戻し、彼の前髪を掻き分けるようにして瞳を見付けては微笑みかけ、切り替えをつけるが如く肩をポンっと弾むように叩き)
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