かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
通報 |
(今にもポキリと軽い音を立てて折れてしまいそうな腕の中、それでもしっかりと己の身を支える芯のある身体、添い寝をしただけでは分かる事の無い感触に不本意にも感動してしまう。自分では無い他の誰かが支えとなっているのだ、何とも不思議な感覚。衝突の驚きなど二の次で新たなる発見より今に浸るため時間と呼吸を忘れ一時的に動作が停止。酸素欲しさに咽頭がくっと引き攣るのを合図に弾けるように肩を震わせて肺全体に酸素を取り込めば「ああ、先生すみません…!不意に立ち上がったのがいけなかったのです!」自分自身何用こんな羽目に合ったのか、思い返せば今朝の傲慢たる行動の自業自得極まりない原因が上げられるがそれにしても不調、矢張り恋故の心が雀躍し過ぎているのかもしれない。幸い汁物の熱は逃げ出し皮膚表面に触れるのは外気によって少々生温くなったもの、夕飯は書斎の中まで飛び散り床を汚している。周章狼狽は止まらず彼の身に被害が飛んでいないか憂懼、名を呼ばれるまでは頭部から爪先まで安否確認をじろじろと。慌てふためく己と違い随分と落ち着いた様子の彼の顔を見遣ればそれは落ち着きからくるものというよりも酷く沈痛している様な面持ち、見てしまえば必然的に動揺は静まり主観から客観に嘘のように塗り替えられてゆく。人が一得るものを彼は十得るのかも知れない、心配事も叱り小説家とは感受性豊かな生き物だと認識している、それが彼の本質である優しさなのだと己は受け止めている。改めてその心情を見遣れば心は解け気の抜けた表情となり「____……一人ではダメかもしれません。手伝ってくれませんか?」つい先程体調は平気だと言ったそばから起こしたアクシデントの後に、大丈夫だと断言しても不安は抜け切らない事を既に把握ししている、この際思い切り頼る選択を。安否を伝えるように彼の肩口を優しく掌で撫で下ろし手の甲まで辿り着けば少し強めに握り締め)
トピック検索 |