___行く末に(非募集)

___行く末に(非募集)

隊長  2018-10-24 21:35:56 
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創作BL

隊長×凶悪犯罪者

募集板でお声掛けさせて頂いたかた待ちです。
非募集になります

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  • No.121 by 芹崎 航  2018-11-20 18:48:49 



(あの夜から一週間以上は経過したか、相手は厳重な監視下にある医療施設に収監され既に意識を取り戻し回復に向かっていると聞くが、まだ一度も様子を見に行っていない。まあ元々余程のことが無い限り療養中の犯罪者を見に行くことはないためこれが普通で、今日までいつも通り日々変わりなく隊務をこなしている。つもりだったが、頭からはあの夜の出来事がこびりつき払拭出来ずにいた。身を挺して自分を庇った相手の表情、言葉、抱きとめたときの感触までもがしっかりと残っていて無意識に表情が強ばる。“真実”を知ってから未だに意志は混迷していて敷かれた道の上で足をとらわれていた。ただ疑心が確信に変わったことでようやく相手と向き合える気がして、あの時は胸の重りも息苦しさも軽くなった気がしたのだ。実際は何十倍にもなって返ってきているわけだが。
_相手の身柄は拘束できた、がまだ本当の意味で相手を捕らえられていない。何もかもこれからな気がした。
相手の実態を暴く証拠の画像、スマホはあの夜から固く閉ざされた自分のデスクの引き出しの中で眠っている。
いつかの公園の狭い暗闇で掛けられたある種の呪いに未だに囚われているようだった。

(医療施設、相手の身体は拘束こそされていないが幾本かの細い管に繋がれ、一定の電子音が部屋に響いていた。窓はあるが天井に近いため外の様子は伺えない狭い個室だ。その個室の前の廊下で別案件で来設していた二人の部下が少々大きめの声で話していて。
『最近の隊長は一層厳しいってか、怖い顔してるよなぁ』
『顔はいつものことだろ。それより仕事量だ。飯も座って食えねーよ』
『まあいるのかいないのか分からない総監よりは全然いいけどな』
『_…おいっ!』
(不意に焦る部下の一人。それもその筈、お噂の総監が3人もの補佐を引き連れお成りになったから。総監は頭を下げる部下には目もくれず病室に入ると補佐を入り口に立たせベッドで横になっている相手にズカズカと近付いていき。
『はっ、良いざまだな!“流れ弾”に当たるとはとんだ間抜けだ。…この前は散々こけにしてくれたな!!』
(横になって動けない相手をいいことに唾を飛ばし嘲笑っては塞がりかけている傷に普段持ちもしない警棒で力を加えて
『あいつ(隊長)もたまには使えるよな。その恨みのおかげでお前を捕えることができたんだからよ。もう逃さないからな』
(奇しくも自分と似た文言で罵っては警棒にまた僅かに力を乗せる。屑の下は屑。補佐たちも鼻で嗤うだけで誰も止めようともせずに。)


(/場面転換ありがとうございます。いえいえ、そんな!本当にてきとうにつけた設定でしたし、展開すすめたのは此方なので逆に申し訳ないです汗 今後は芹崎の母親の死因を刺殺として進めて行こうと思うのですがよろしいでしょうか。あと今回のロル、モブばかりで絡みづらくてすみません。話の展開にもよりますがすぐ芹崎を動かしますね。)

  • No.122 by 白樫 謙也  2018-11-20 20:40:25 


(被弾してから数日後、自分はまだ生きていた。目を覚ました時にまずそこに驚いたのだ。あの時相手の手により終わっていてもおかしくなかった命はまだ続いていた。といっても自由を謳歌していた身とはまったくかけ離れている。まだ体を動かすと傷口が痛み、管から液体を投与されなければ平静を保っていることすら難しいだろう。あの時から相手とは会っていない。相手は自分の正体を知ってどう思ったのだろう。自分が相手の殲滅対象であることをもう知っているはずだ、生真面目な相手なら自分に躊躇なく引き金を引くのだろうか。だがそうなると今の状況とは矛盾している。自分が殺人鬼だと知っているのに、相手は自分を殺さなかった。一体なにを考えているのだろうか、他の情報も聞き出すために生かされているのだろうか。それとも別の何かが…そこまで考えて頭を振る。相手は警察だ、可笑しな因縁があって、隠れるように口付けを交わした事実があっても、相手なら仕事をまっとうするかもしれない。次に会うのが怖かった。未だ曖昧な2人の関係が次に会う時にはっきりと決まる。ここから逃げ出して永遠に会わないようにする方がいいのだろうか、だがそれはそれで、相手に会えないのはどこか寂しい気もしていた。いつの間にそんな情を相手に抱くようになったのだろう。
そんなことを考えていると部屋の外から声が聞こえてくる。会話の内容から先程まで考えていた人物のことを噂していることは明白だった。困ったのはその直後の声だ。急に口を噤む声、私語を謹んだその様子にもしや相手が部屋に来るのではと体が固まった)

──なんだあんたか…っ゛ん──!おい、怪我人には優しくしろって…ママに習わなかったのか?
(部屋に入ってきたのはたいそう期待外れな人物だった。相手の兄、血が繋がっているのが嘘のように屑な総監様だ。大袈裟にため息をつき顔を逸らした隙に、警棒で傷口を押さえつけられる。肺から空気を無理やり押し出されたような唸り声が漏れた。言葉ひとつひとつが腹立たしい奴だ、痛みと苛立ちを腹の奥に押しやったまま薄く笑いを浮かべると首を傾げて煽るようにして問いかけ)

(/死因は刺殺ですね!了解しました、では今後はロルでもそのように致しますね。いえいえ状況説明などいつも丁寧にしていただいてますので全く問題ないです。いつもありがとうございます。航くん登場のタイミングはおまかせしますね!)

  • No.123 by 芹崎 航  2018-11-20 22:52:14 


(相手のことを考えぬよう本部のデスクで書類整理をしていると医療施設に行っていた部下から着信が入り、報告に加えてやや言いづらそうに愚兄の行いについて告げてきた。別にそれなりの粗行をしてきたのだから放っておけばいいと思う反面、横柄な兄が相手にする暴行を考えると足は自然と医療施設へと向いていた。心配だからではない。体裁が悪くなるからだ。

『ママだ?…ああ、あの女なら随分前にあいつが見殺しにしたからな。生憎礼儀ってのは知らないんだよ。くそッ、ヘラヘラ笑ってんじゃねぇぞ』
(相手の煽りにいとも簡単に乗っかり母親について振られ分かりやすく表情を歪め、相手の薄ら笑いに青筋を立て警棒で容赦なく脇腹を叩きつける。そんな兄の声は廊下まで響いており、立場上口を出せない医師たちが右往左往していて、到着した自分を見るなり駆け寄ってきて助けを求められる。医師の肩に手を置き了承の旨を伝え病室の扉に手をかけると一瞬の躊躇いのあと扉をスライドさせて。

「総監、長官がお呼びです。」
(相手に懲りずに暴行を働く兄を蔑視しつつ補佐もいる手前表情には極力出さずしれっと嘘を付き兄の手を止める。兄が唯一逆らえない男。長官を出せば兄はまずそちらを優先する。兄は舌打ちすると性懲りもなく止めていた手を相手に振り落としてから『くたばれ』とついこの前どこかで自分に向けられた暴言を吐き捨て補佐たちと共に病室を去った。
訪れる静寂、二人だけの空間。一言で言えば気まずかった。勢いで来たはいいがかける言葉は一向に出てこない。なぜ自分は凶悪犯などに気を使っているのか。既に自分はこの男に関して一つの罪を犯してしまっている。半ば答えは出ていたが長年の性が横道にそれるのを食い止めていた。

総監の怒りを買わない、ここでは鉄則だ。そんな状態でも軽口を叩くなんてやっぱりお前は相当変わり者だな。それとも、痛いのが趣味だったか?
(沈黙を破り口から出たのは、頭の片隅にもないどうでもいいことだった。あえてあの夜のことには触れずに気のないからかいをしては、相手のベッドに近づき傷口から僅かに滲み出た血によって赤く染まる部分にそっと触れる。相手が身代わりになってくれなければ確実に自分は死んでいた。なぜ助けたのか。その問いかけは喉元まででかけていた。)


(/時間の設定が合っているのか若干不安だったのですが大丈夫でしょうか汗 間違っていたらすみません。本体も迷っているせいで芹崎の行動がかなり曖昧になっています…。事前にはっきりとさせたい部分があればお気軽におっしゃってくださいね!こちらこそいつも素敵なロルに綺麗なまとめありがとうございます。)

  • No.124 by 白樫 謙也  2018-11-21 10:16:32 


(感情をおさえるのは特技と言うよりも癖に近かった。無意識に本心を隠して『東堂瑛太』やその他適当な偽名の人物を作り出す。痛みに関しても同じだ、いくらこの屑に殴られようとも痛がる表情を見せることはない。だが母親の話題に関してはピクリと眉が動いた。『あの女』などまるで他人のような物言い。あいつが見殺しにした、とは相手が母親を救えなかったという意味だろう。母親も弟も総監様にとっては掃き捨てるものらしい。思わず手が出そうになるのを我慢していると、扉が開き新たに訪問者が現れた。その人物は今度こそ会いたいような、会いたくないような、曖昧なままにしておきたかった人間で目を少し開く。長官、とは相手の父親だったか、その名を聞いて総監様はとっとと退散する。嫌になるほど程分かりやすい男だ。上半身に殴打の痛みが鈍く残っていて息を吐き出した。だが一息ついている暇はない。今度は別の問題がやってきたのだから)

俺は自分がやりたいようにやる、他人の顔色伺うなんてごめんだ。───なんで殺さなかった
(気まずい沈黙を破ったのは相手の方が先だった。探りを入れるような問いかけ、それにいつもの調子で返事をする。右肩の傷口に相手の指が触れると僅かに痛みが走るが、それよりも指の温かさでその痛みが和らぐようだった。視線を合わせないようベットに寝たまま天井を見つめる。生憎遠回りなのは嫌いだ、読み合いも楽しいものだが、こういう場面で悶々とするのも自分にあっていない。だから先にこちらがあの夜のことを聞いてしまった。自分の正体を知っているなら仕事を果たす絶好のチャンスだったはず。視線は合わせないまま静かに相手の返事を待っていた)

(/時間軸大丈夫です!ちょっとややこしいロルになってしまいましたねすみません…合わせたつもりだったんですが、こちらの力量不足です;こちらもまだはっきり煮え切らないので今はそこを楽しむのがいいかな、などと思っております。今のところはこのままで大丈夫です、お気遣いありがとうございます。では背後はそろそろ一旦失礼しますね!)

  • No.125 by 芹崎 航  2018-11-21 11:54:06 


(相変わらずな軽口、それに安心感すら覚えるがそれはすぐに打ち破られる。捻りも探りもない真っ直ぐな問いかけ。相手の傷口に触れる指先が微かに震え視線を床へとうつす。答えがあるならこっちが教えてほしい。それが今出せる正直な答えだった。今まで凶悪犯を殺すのに躊躇いがうまれたのは最初の数ヶ月だけであとは狂気を向けられようが命乞いされようが有無を言わさずその命を奪ってきた。一日に何人も討つこともあったため感覚が麻痺していたと言えばそうなのかもしれないが、こんなにも自分さえ知らない感情を揺さぶられることなどなかった。相手は凶悪犯、殲滅の対象で例外はないはず。私情を挟むなどあってはならないことだ。長い長い沈黙のあと目線は伏せたまま重たい口を開き。

あの場ではまだ殲滅の任は降りていなかった。俺の独断で殺すことはできない。それに1つの証拠で全てのアリバイを覆せたわけではない。……ただそれだけだ。
(尤もらしいことを淡々と述べるが、本当は隊長の権限を使えば独断で殺すこともできたし、凶悪犯の事件として判定されていた殺人の証拠が出たのだ。それ1つでも恐らく相手は殲滅の対象になるだろう。特にあの愚兄の恨みを買っている今は尚更だ。ただ、相手の期待する答えではないのは重々理解しているため、感情の乗らない酷く淡白な物言いになる。しかし最後は耐えきれず声のトーンが落ちた。_答えが出て、それでどうするというのか。自分のすることは決まっている__決められているから今話している時間は無意味のはず。

____分からない。……お前が、おかしな行動をとるから……。
なぜ、庇ったんだ…。
(気付いたときにはもう口に出ていた。いつからか相手に絆されてしまった心は制御できなくなり、一度取り繕った体裁を簡単に捨ててしまっていた。視線は下げたまま相手の傷口に触れていた手をぐっと握り僅かに震わせるもなけなしの理性が表情を崩すのだけは抑える。ただ声は掠れてしまっていた。)

  • No.126 by 白樫 謙也  2018-11-21 18:22:55 


(最初に相手の口から出たのは至極優等生な回答だった。理屈にかなった回答、間違ったことは言っていない。だが相手も口にした答えがこちらの問いかけと噛み合っていないことは分かっていたようだ。相手の声色が下がり、顔は俯いている。チラリとその顔を盗み見て、今までと比べれば随分と感情を滲ませたその姿に思わず小さく笑う。これだけでも十分に見たことも無い姿だったのに、直後相手の口から搾りだすように出された言葉に目を開いた。相手の立場を考えれば、そして性格を考えれば『分からない』なんて言葉はありえないはずだ。相手は感情を晒さないようなんとか耐えているように見える。それを茶化してやりたい気もしたが、今はきっと誠実に返事をするべきだろう。詐欺師が誠実など、笑い話にもならないが)

おかしい行動なんて酷いこというな。──お前に生きてて欲しかったからだよ。1番の願いはもっとお前との時間を過ごすことだったが、その道は残されてなかった。俺が死ぬか、お前が死ぬかの二択。それなら…お前が生きてる方を俺は選んだ
(軽口は最初だけで、その後は柄でもなく真剣な表情と声色で言葉を紡いだ。相手に自分の所業が知られそうになった時も、銃弾に撃ち抜かれそうになった時も、願っていたことは同じだった。願わくばこいつとの時間を過ごしたい、決して平穏でなく、命の賭けさえ強いられる関係、それでも相手との時間は心地が良かった。母親を失った同士だからか、お互い他人にさらけ出さない所まで踏み込んでしまったからか、相手と過ごす時は何よりも楽しく心地よく、安心できた。そんな相手との一時ががもう叶わないものになったなら取る行動はひとつだと自分が死ぬ結末を選んだわけだが、こうやって生き延びてしまったのだから世話がない。相手の方に顔を向けいつもとは違う自然な笑みが浮かんだ。自分は随分とこの男に絆されてしまったようだ)

  • No.127 by 芹崎 航  2018-11-21 21:22:55 



(相手の言葉は嘘偽りなく聞こえた。まるで胸中を鷲掴みにされているようだった。そんなこと、『生きてて欲しかった』など、あの日を堺に誰からも向けられたことのないもので、あの時、同じこと言った人間は自分の前から消えた。随分前の話だ。感傷に浸ることはなくなって長年鍵を掛けて閉ざしていた蓋を簡単に今、開けられて。_相手は本当に人の望みに応えるのがうまい。それは生きていく上で身につけなければならないものだったかもしれないが、『生きてて欲しかった』…その言葉は確かに自分がどこかで望んでいたもので、長年自分を縛っていた言葉でもあった。
やはり相手には敵わない。最初の出会いから今互いに心の内を曝け出しているこの時でさえも。しかし、求めていた答えは今置かれる立場には残酷なものでしかない。真剣な表情も声も自然な微笑みも望んでいたものだが一層胸を締め付けた。

___お前は、人殺しだ。身勝手な感情を押し付けてそれを愛だののたまって満たされた気でいる最低な人間だ。俺はお前の考えもやり方も気に入らない。だから…、俺がお前を殺して任を果たしても何も満たされることはない。…俺は別のやり方でお前を__、
(相手を強く見据えはじめは低く冷たい声色で連ねたが、徐々に力を失っていけば言葉は最後まで紡がれることなく息を殺すように飲み込み、また視線が下がる。一体自分は何を言い出すのか。噛み合わない会話な上に、相手の愛した者を殺す動機を否定したあとで、相手を殺しても自分は満たされないなど当たり前のことを堂々と述べてしまっては愛でないにしても何か特別な感情があると言っているようなもの。重ねて、別のやり方_なんだと言うのか。不明瞭な感情をこれ以上相手に晒すなどとんだ恥だ。いや実際は定められた道から外れるなと、これ以上は駄目だと、纏わりつく理性がこの場に留まることをよしとしなかった。それからは相手と目を合わせることなく返答も待たずに背を向けると扉の前へ歩を進め一度立ち止まり、一呼吸置いて

『生きてて欲しかった』と言ったな。__それはお前が過去に愛した人間に言ってやるべき言葉だったんじゃないのか?
(冷たい、どこか悲哀の含む声色で、やはり相手の愛を否定する。自分に向けてくれた言葉もまるで突き放すような言い方だったが、裏表のない言葉であり相手への隠しきれない想いが滲んでいた。そして振り返ることもなく病室を出るとかたく扉を閉ざした。)


(果たして、その後長官に呼ばれたのは兄ではなく自分だった。長官室に行くと兄も居て先刻の嘘がバレたのか軽く睨まれるが気に留めず、偉そうに煙草を吹かす長官に要件を聞き。
『東堂英太の殲滅が決まった。』
「どういうことですか…?」
『お前を殺そうとしていた男がいただろ。司法取引を持ち出したら簡単に口を割ったさ。やつの自宅を洗ってすぐに証拠の画像が出てきた。東堂英太は凶悪犯。すでに受理された決定事項だ。』
「…それでなぜ俺を?」
『分かっているはずだ。あの男はスマホにもその画像を入れたと言っていたが現場にも落ちていなかった。お前が、持っているんじゃないか?……聞けば随分親密に見えたそうだが』
「………」
『凶悪犯と分かって証拠を隠すことがどれほどの罪になるかくらい分かっているだろ。_まあ良い。これ以上俺の顔に泥を塗られたらたまらないからな。お前が俺たちの前で東堂英太を殺せ。その腐った精神を鍛え直すんだな』
(長官の言葉が胸に重たく伸し掛かる。しかし予想はしていた展開だ。あのとき、あの男に銃口を向けた時この展開を予想していたのにためらったのがいけなかった。_いけなかったと思う時点で長官のいう精神は腐っているのだろうが。兄が楽しげに含み笑いをしているのを横目にどこか他人事のように聞いていた。おそらく相手にも時期、殲滅の意が告げられるだろう。)

  • No.128 by 白樫 謙也  2018-11-21 23:07:12 


───違うんだ、俺はっ…、
(相手の言葉はまたしても正論だった。自分は人殺しで、自分の感情が抑えられなくなって愛する人を殺してしまう。愛する人が自分を愛していないのではないかと、あの時の母親のような目を向けられるのではないかと疑心が生まれて、自分から愛する人が離れてしまう感覚に勝手に襲われて、その手を引き止めるために愛する人を殺してしまう。その繰り返しなのだ。せっかく共に居て安心できる人を見つけてもこの手で殺めてしまう。相手は何か感情を堪えるようだったが、その真意は分からない。だが言葉そのものは心底冷たくて突き放された感覚に目を伏せた。だがこれが本来なのだ、相手に特別な何かを見出すのは間違っている。部屋を出ていこうとして相手に伸ばした手をゆっくりと下ろしていた。)


(廊下に立つ相手の部下達の声が聞こえてくる。自分が殲滅対象になるだろうと、噂話が漏れ伝わってきた。当然だろう、あの画像から捜査が見直され自分が凶悪犯認定されるのは時間がかからないのは分かっていた。それに総監様は嬉々として自分を殺すだろう、わかり切っている。ここから逃げなければ、大人しく寝ていてもいずれ殲滅隊の誰かが自分を殺しに来て、それで終わりだ。それに相手を振り切らなければならない。相手に対して抱きかけている感情を全て捨てさるためにも、ここから出て二度と顔を合わせないようにしなければならない。だが体はまだまともに動きそうになかった。歯を食いしばり上半身だけを起こすもまだ右肩は酷く痛む。もう相手の影を振り払うしかない、全てを忘れて元の生活に戻るのが一番だ。右肩にはまだ血が滲んでいる。さて、ここからどうしようかと考えを巡らせていた)

  • No.129 by 芹崎 航  2018-11-22 08:46:08 


(相手の殲滅が決まってから数日、その日は突然きた。朝の外回りを終えたところで部下が近付いて来て『長官が』と一言だけ耳打ちされその意味深な表情に、ああ今日かと理解する。すぐに実行されなかったのはある意味幸運で、もし相手と話した直後の精神状態で殲滅が決行されていたら_いやまあいつ決行されてもすることは変わらないのだが。とにかく準備せねばならない。波打ちだす鼓動を意識しないように平静を保てば一度存在を確かめるように拳銃に手を置き、またすぐに歩を進める。部下達の『あーまた隊長恐い顔してるよ』とひそひそ話すのが耳に入るが気にならなかった。


(医療施設、相手の病室に当然のようにノックなしで総監の部下達が押し入ってくると一言も発さず、有無も言わさずに相手の顔に黒い布袋を被せて視界を奪うと乱暴に点滴を抜き取り後手に手錠をかける。怪我人への配慮は一切なくまるで見世物の動物を扱うようなぞんざいさで無理矢理立たせ歩かせると、病室を出て階段やエレベーターを経由しある地点でその身体を車に押し込む。それから暫く走行してから車を停車させ再び相手を歩かせ階段を下り、ある部屋の前まで来ると強く背中を押して室内の真ん中あたりまで誘導し、故意に右肩に体重をかけて座らせるようにして。このとき、足の拘束はされていない。

『あー、ほんといい気味だ。やっとこのムカつく野郎を葬れる。お前は今日ここで死ぬ、気分はどうだ、東堂英太』
(相手の視界を遮る布袋が外されるとともに、総監が相手の髪を掴んで顔を上げさせ嫌味ったらしい口調で至極楽しそうに口角を上げる。
『お前、あの男の話によればうちの甘ったれを庇って怪我したそうじゃないか。アイツは自分を狙った弾が偶然当たっただけだとほざいてたがな。しかも証拠まで隠蔽した。…どう誑かしたんだ。お得意の色気でも使ったのか?』
(事件の内容よりも相手と自分の関係に好奇心を抱き、何より堅物の自分が犯した行動の理由を知りたがり、それを馬鹿にする物言いで嘲笑し相手の頬を撫で上げて『喜べ。お前は今からその甘ったれに殺されるんだ』と。
その様子をマジックミラーの奥で長官が高みの見物をし、殲滅の任をくだされた人間はゆっくりと階段をくだり殲滅現場のすぐそこまで来ていた。)

  • No.130 by 白樫 謙也  2018-11-22 12:28:53 


──っ、殲滅対象ってのは人権も何もあったもんじゃないな
(表情のない男が無遠慮に部屋に入ってきた時から、今日が自分が死ぬ日であることは理解できた。乱暴に物のように扱われしばらくの時間をかけてどこかへと座らされる。右肩がまだ痛む、点滴を抜かれ鎮静剤がなくなったせいか痛みはより顕著になっていた。麻袋を取られて最初に目に入ったのはまた憎たらしいあの顔だ。髪を掴まれ顔を固定されると一瞬顔を歪めるが、すぐにその顔はにやりと口を歪ませる)

悪いな、俺の名前は桐谷翔吾って言うんだ。その東堂瑛太ってのは知らないやつだな、だからそいつがやったことも俺が知るわけないだろ?
(相変わらずの軽口を飛ばしながら問いには答えない。どこまでもムカつく男だ、こんなやつの質問にまともに答えてやるわけがない。適当な偽名をまた並べつつすました笑顔を浮かべた。といってもこの状況が変わるわけではない。足が拘束されていない以上足技だけでなんとかするしかない。この人数ならば突破出来るかもしれないと周囲を伺っていた。だが自分を殺すのがあろうことか相手であると分かると、ピタリと一瞬動きを止める。最後の最後まであの男は自分の人生と関わる男だ。そこでまた被弾した時と同じ考えが過ぎった。相手に殺されるなら、構わない。お互い他人に触れられない領域に踏み込んであの暗闇で一瞬だけ交わった、特別な人間にならこの人生を終わらされても悔いはない。総監様は無視して目を伏せる。逃走の突破口は見えていない、それならば静かに相手が姿を現すのを待つだけだった)

  • No.131 by 芹崎 航  2018-11-22 14:47:41 


(重たい扉の奥には自分が殺さなければならない男がいる。ここまで来たのだ。もう迷いはない。一度見張り役の部下に意志の確認をするようアイコンタクトを取ると浅く息を吸って扉を開く。相手の軽口にまんまと乗せられ苛立って腹に蹴りを入れる兄が此方に気づき待ってましたと嫌な笑みを向けてくるのから視線を逸し、すぐに相手を見やれば足の拘束がされていないことに気付いて相手を甘く見過ぎだとほとほと警備の緩さに呆れる。本来なら自分は余計な時間を使うのが嫌いなためこの部屋に足を踏み入れた時点で一切の前置きなしに殲滅対象を射止めていただろう。相手を殺す覚悟が決まっていれば恐らくそうしていた。が、今はほんの少しの時間稼ぎが必要だった。

『さっさとしろ。…いや、散々痛めつけてから殺すのもいいな』
「拷問ではないんですから、時間の無駄です」
『ッ、お前最近口答えが過ぎるぞ。こいつの影響か?あァ?』
(少しの反抗をして見せれば予想通り突っかかってくる兄を単純なやつだと内心愚弄しつつ無表情にほんの少しの哀れみを込めて見返せば「そこに立っていると返り血で汚れますよ」とすぐに殲滅を決行する意を示し、それこそ無駄な、醜態を晒す会話を強制的に終わらせる。苦虫を噛み潰した表情で離れていく兄、そしてマジックミラーの奥で此方を伺う長官を一瞥した後、ようやく相手と目を合わせ一見表情のない暗い瞳で見下げて。

さすがのお前もその怪我では逃げられなかったみたいだな。__言い残すことはないか?
(最期にとは言わなかった。銃口を額に向け、相手の表情を伺うとどこか諦めているようにも見えた。『生きてて欲しかった』と紡ぎ、相手自身が生きる道よりも自分を生かすことを優先し命を投げ出す真似をした男。人殺しの、凶悪犯。そして今、決められた道を愚直に進んできた自分の足先を変えようとする起因になった男。_気に入らない。はじめから今も、相手に乗せられているようで。だが悪い気はしない。相手といる時に度々感じていた高揚感。世の中で正しいとされることを是とせず、技と逆らうスリル。今自分を満たしているのはそれだった。表情は冷たい。だが声はどうしてもどこか弾んでしまう。今の相手は気付くだろうか。もし気がついていて万が一死んでもいいなどと思うなら本当に引き金を引いてしまおうかとも思うが。_まあ相手の意志など関係ない。迷いはない。自分のすることはもう決まった。)

  • No.132 by 白樫 謙也  2018-11-22 18:40:31 


(腹を蹴られ鈍い音で咳き込む。もう死ぬ体ではあるが怪我人にする行為ではないだろうと脳内で悪態をついた。そのタイミングで相手が部屋に入ってくる。迷いのない目だ、覚悟は出来ているといったところか。いや、相手にとっては覚悟なんてないのかもしれない。いつも通りの業務をいつも通りこなすだけ。胸に湧き上がりそうなあの時の願いを、相手との時間をもっと過ごしたかったという思いを胸の奥に沈めていく。これできっと良かった、もし相手との距離が万が一もっと縮まれば…自分の悪癖がまた顔を覗かせることになるのだから。
こちらは諦めの顔で相手を見上げる。だがその言葉を聞いて目を見開きそうになった。台詞も表情も冷たい、だが相手の声は僅かに上擦っていた。相手の癖だ、隠しきれない高揚が漏れ出るような癖。何をしようとしているかは分からない、だがこうなった時の相手といる時は特別に面白い事が起きるのだ)

そうだな…──俺の本当の名前を知りたくないか?
(それはおおよそ最期の言葉には相応しくない文言だった。死に際に言う台詞ではない、約束にも似た言葉だ。総監様はこの言葉を命乞いとでも受け取りあざ笑うだろうか。自分の本当の名前、母親を失ったあの日に捨て去ってあらゆる手段を使って消し去った本名。それを知っているのは今この世で自分しかいない、今まで誰にもその名を伝えたことはないのだから。相手を意思の篭もった目で見返す。今から何が起こってもいいように、準備は万端だった)

  • No.133 by 芹崎 航  2018-11-22 20:36:46 



死に際に言うことか?どうでもいいな
(相手の意志の籠もった目を見て更に感情が高ぶり、今せんとすることを許されている気さえする。もしかしたら相手の期待するスリルには及ばないかもしれないがこの際どうでもいい。ただ今は演技をしなければならない。自分にこの男を殺す意志があると愚かな長官と総監に見せつけなければならない。だからわざと嘲るように冷たく突き放し、僅かに身を屈めて相手の顎を銃口で持ち上げると耳元で兄の大好きな蔑みをしてやる。そして身を戻す去り際に囁く。「__まだ、駄目だ」と。吐息ともに囁かれたそれはお預けをさせるように、そして今までの自分からは想像のできない甘さの含んだものだった。相手の名前は知りたい。が、他人の目がある今ここでは聞きたくなかった。というのが本心だが、演技をしなければならないのも事実、今言わせないのは計画を円滑に遂行するため……。それはともかく、そろそろか。相手を冷ややかに見据えながら安全装置を外す、そしてそれは絶好のタイミングで訪れた。

『ま、待ってください、芹崎隊長。…そ、総監、彼は、東堂英太は凶悪犯ではありません。殲滅対象から外されました。』
『は?…どういうことだ。証拠は上がってるんだぞ!!』
『それがその証拠事態が男の偽装だったんです。東堂英太をおとりにしはめるために作られた偽物。男のパソコンから偽造記録も確認され、本人も偽造したと認めています。』
『そんな馬鹿げた話があるか!!』
『…実はその…、事件当時のコンビニの監視カメラにも東堂英太と思われる人物が写っていました。彼に殺人は不可能、…証拠が偽造と判明した以上、殲滅の対象に決定付けるのは危ぶまれるかと……、長官が先程判断しました』
『…長官が?……おい、お前なにかしただろ』
「俺はずっと隊務についていました。他事に構う暇なんてありませんでしたよ。部下に聞いて下さればお分かり頂けると思います。」
(ここ最近は詰め込みすぎなくらい隊務をこなした。部下の愚痴が一層増す程に。だが部下達はなんだかんだ兄の総監よりは自分に信頼を寄せてくれている。隊務に関しては行き過ぎなほど真面目な自分が隊務の合間にある種の生業の人間と関わっていても『あー仕事しているんだな』としか思われない。水面下で動くのは至極簡単だった。『長官の決定』と聞き悔しげに表情を歪める兄は実に見物だ。きっと隣室でこちらの様子を見物していた長官も機嫌を損ねているに違いない。
『畜生、運の良いやつめ……。次はないと思え』
(苛立ちを抑えきれずご丁寧に相手に蹴りを入れてから去っていく兄の背中に冷ややかな視線を送っては自分も銃をホルダーにしまって。
死に損なったな。
(相手を見下ろし何食わぬ顔で言えば、相手を部下達に受け渡す際にその手にそっと針金と日時とホテルの部屋番号が書かれた紙を握らせる。相手はこの後再び医療施設にいれられ数日後には犯罪者として刑務所に入れられるだろうが逃げるタイミングは相手に任せようと。未だにどくどくと波打つ鼓動を抑えつつ相手が連れられるのを見送って。)

  • No.134 by 白樫 謙也  2018-11-22 21:12:09 


──そうかよ
(耳元で囁かれた冷ややかな言葉、そして最後にそっと残されるお預け、思わず口角を上げそうになる。今まで散々こいつを翻弄してしきたが、この土壇場でこちらを飼い慣らすようなことをしてくるとは。その言葉は今まで相手から聞いた事のない声色で発せられていて、未知の感覚にゾクリと体が震える。こんな声も出せたのかとからかってやりたい気分だ。だが今それをしては相手の計画は台無しだ、大人しく相手に身を委ねようではないか。安全装置が外れる音がしても口を開くこともなく、その時を待っていた。)

これはこれは…
(訪れたその時、『事実』として告げられた事項に目を細める。自分は間違いなくあの夜に人を殺した、あの証拠写真も本物だ。それが偽物で、しかもコンビニの映像に自分が写っているとは、初耳だ。つまりはこういうこと、あれだけ愚直に任務を遂行し、正義の行いを貫いてきた相手が汚い手を使ったのだ。真っ直ぐ決められた道を歩いていた人間が、初めて自ら道を踏み外した、この身を助けるために。嫌でも体は高揚する、穢れない天使を堕天させたような、あるいは気高き神を愚かな人間に貶めたような、そんな感覚。どうしようもない最低な優越感が胸を支配した。この男の手を汚したのは自分なのだ)

俺は簡単にはくたばらない運命らしい
(総監様の蹴りなど気にならないほどに気分は上々だ。手に握らされた物にまた笑いそうになりながらまずは大人しく連行される。車に乗り込みしばらくは黙っていたが、車が人通りも車もない小さな道に入った瞬間に行動を開始する。針金で手錠を外し、まずは左右の見張りの警官に拳を1発ずつ。怯んだ隙に手刀でのしてしまい、次は運転手だ。驚いた様子の運転手だったがハンドルを握っていては抵抗できないも同じ、簡単に意識を奪えば車の前方に移動してハンドルを握って車を路肩に停めた。手錠は車に放り投げ悠々と車外にでる。そして渡されたメモを確認した。ようやく口角をあげて笑うことができる)

デートのお誘いなら断れないな

  • No.135 by 芹崎 航  2018-11-22 21:44:29 


(数日後のとあるホテルの一室。都会の夜景が一望できるスイートルームのソファに腰掛けここ最近はずっとご無沙汰だった小説に目を通す。文字の羅列が視覚から頭の中に染み込み胸の中に広がっていく感覚は至極落ち着く。普段人を殺めてばかりいるから一時でも人間味のあることをするのは貴重な時間だった。だが今日ばかりはどれだけページを捲ろうとも心に平穏は訪れない。なにせ、あの男を待っているのだ。つい先日自分の手を汚してまでその身を外界へと逃した、凶悪犯。今更血迷ったなどとは思わない。後悔もしていない。ただこれからどうするのか、どうしたいのかは良く分かっていなかった。相手と話がしたい。それだけだった。それにしても、逃げるとは思っていたが、まさか直後に逃走を図るとはやはり相手は予想の上を行き、抜かりない。怪我の具合が気になるところだが相手ならその類の女…や男が喜んで治療しそうなので大丈夫な気がした。さて、まもなく時計の針は指定した時刻を指すころ。またワインでも飲もうかとサービスで置かれているボトルに目をやって。

  • No.136 by 白樫 謙也  2018-11-22 22:07:50 


(病は気からという言葉があるが怪我もそれと同じことが言えるのかもしれない。まるで迷いでも吹っ切れたように意気揚々と警察から逃走し、秘密主義者の医者の場所に転がり込んで残りの治療を受けた。そして今日、それなりの場所へはそれなりの格好で、高級ブランドで上から下まで揃えた身なりでホテルへ入っていくと指定された部屋へと向かう。高級ホテルのスイートルームを用意するとは粋なことをしてくれる。今はただ相手と話したくて仕方がなかった。相手の真理を知りたい、何を考えあんなことをしたのか、知りたかった。やがて部屋へとたどり着く。部屋に備え付けられた呼び出しベルを1度短く押したのだった)

  • No.137 by 芹崎 航  2018-11-22 22:59:36 


(意味もなく小説に再び目を落とし文字を追っていると男の到着を告げるベルがなる。来ないとは微塵も疑っていなかったが、本当に来る相手に何故か安堵するが自覚はない。ソファ横にある繊細な彫刻が施されたキューブボックスの上に読みかけの小説を閉じて置くと扉に向かいゆっくりと開けてやる。そこにはとても人を殺すとは思えない“いい男”が立っていた。顔立ちが良くて身なりを整えるとやはり様になるものだ。まあ、実体は人殺しだが。無表情に相手を招きいれるとソファに座るよう促して。

飲むだろ?
(いつか相手がマンションを訪れたときに交わした杯。今回は嫌な探り合いは抜きで、といきたいところなのだが、どうなるかは予測不能だ。ただ場所は違えど以前と同じようなシチュエーションでどんな話ができるか好奇心が湧いた。問いかけておきながらまたもや返答は待たずしてグラスをミニテーブルの上に置くと透き通った淡い緑がかった液体をそそぐ。ボトルをワインクーラーに浸したところで、ソファと向き合う位置にある腰掛けに座って、以前は相手からされた乾杯をこちらからグラスを差し出すことで誘ってみて。表情は相変わらず冷めていたが、相手ならこの状況を楽しんでいることに気付いているだろう)

  • No.138 by 白樫 謙也  2018-11-23 19:15:14 


もちろん、恩人が注ぐ酒を断るわけない
(促されるままソファに座るとワインをグラスに注ぐ相手を目で追う。今回はあの時のようにおかしな液体が入っていることはないだろう。今はゆっくり話ができそうだ。といっても、それがまったく全て喜ばしいことと言えるかと言うと、そうでもない。もう相手は自分が人殺しだと気づいている、だが自分を生かしここに呼んだということは、事情を話さなければならないという事だ。弁解の時間が設けられたと言えばそうでもあるが、それは今まで他人に晒したことの無い胸の深いうちにある思考と感情をさらけ出すことに等しい。それを口にした時この男が何を思うのかまだ予想はできなかった)

それじゃあ、俺が無事に逃走できたことに乾杯
(相手は向かいのソファに座りグラスを差し出してくる。顔こそいつもの冷たいものだが警戒しているわけではない、むしろ楽しんでいるのだろう。口角をあげながら警察官の前で逃走を祝ってからグラスを合わせキンッと耳障りの良い音を響かせる。中身を1口飲めば芳醇な味が口内に広がり満足げに笑みを浮かべた。だがこの空気がいつまでも続くとは思えない。)

それで?なんで俺をここに来させた?

  • No.139 by 芹崎 航  2018-11-23 20:40:14 



調子のいい……。
(変わらない軽快な口ぶりに躊躇いなく交わされる乾杯。流れるような一連の動作は人の気分を良くさせる。何人もの人間がこの一見、ぱっと見、自然に醸し出す人柄の良さに引かれたに違いない。あくまで一見だ。相手がワインを味わうのを見て、こちらも一口含む。自分のおかげで逃走できたんだろとは言わなかった。頼まれてもいないし勝手に自分がしたことで、実際無事の逃走を促したから。ただ一言くらい返したほうがいいだろうと気のない悪態を吐いて。そしてこういうとき相手は直球。前置きない、核心をつく問い。自分もまどろっこしいのは嫌いなためやりやすいが、答えには詰まった。ここ数年、いやそれ以上に自分のことで何か答えることなどほぼ無いに等しかった。決められた道、定められた答え、望まれる回答を自ずと選択してきた自分にとって、自分の芯にせまる答えを出すのは難解で。ワイングラスを一度置き、思案するように目を伏せたあと視線を合わせることなく何か口にしようとするが躊躇して口を閉ざすと一息置いてまた口を開いて。

まだ、言えない。__いや、一番は話したかったからだ。その理由を今はまだ話せない。
ただ、これは自分のためだ。それだけは言える。
(意識はしていないがまたお預けをする形になる。ずるいのは理解している。人を呼び出しておいてこちらの内を明かさずに話し合いをしようなど虫のいい話。だが今考えていることを話したら相手の本音が聞けない気がしたのだ。依然、視線をワイングラスにやったまま軽く中の液体を回して。

お前はなんで人を殺すんだ?
(まるで明日の予定は?と聞く物言いで、それでもいくらか声のトーンを落として問う。なんとなくぼんやりとは殺人の動機が見えていたが、相手の口からしっかりと聞きたかった。それを知ってどうするか聞かれたらまた“言えない”になる訳だが。グラスに注いでいた視線をようやく上げて相手をまっすぐに捉えるとその返答を待って。)

  • No.140 by 白樫 謙也  2018-11-24 13:33:45 


なんだよまたお預けか?まぁ俺はお前に貸しがある。こっちが先に答えるのが筋かもな
(連れないやつだと軽く笑うが内心は胸が軋むような音が響く。いずれ聞かれるであろう質問、誰にも話したことのない殺人の、誰にも話したことのない動機。自分のどうしようもない影を晒すような話だ。母親がいなくなってあの日からコツコツ積み上げてきた東堂瑛太という仮面を自ら叩き割るような行為。すなわち、これまでの人生を一度粉々に砕くような所業だ。軽く息を吐いてからグラスの中身を一気に飲み干す。一度終わりかけた命だ、それならもう人生を壊すようなことをしたって構わないじゃないか。しかも話し相手がこの男、世に出してはいけないと判断されれば即刻殺される可能性もある。自分の話を聞いて相手がどんな行動をとるのか、興味があった)

…不安になるんだ。俺が…殺してしまった人間を、俺は愛してた。そいつが家にいると居心地が良かった。でもいつも、何かのきっかけで…もうそいつが俺の事愛していないんじゃないかって不安になる。離れてしまうんじゃないかってな。そしていつか…母親みたいな目で、『無関心』の目でこっちを見てくるんじゃないかって。…だから、ガキの頃母親にやったようき…永遠に、俺のそばから離れて行かないように……動けなくしてしまう
(空のワイングラスを見つめたままゆっくりと整理するように言葉を並べた。それは自白そのもので、始めて人を殺したと認める発言だった。ずっと自分の悪癖に向き合うことはしていた、だがそれを治す術がない。回答のあと、空のグラスを眺めたまま体を動かせないでいた)

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