隊長 2018-10-24 21:35:56 |
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調子のいい……。
(変わらない軽快な口ぶりに躊躇いなく交わされる乾杯。流れるような一連の動作は人の気分を良くさせる。何人もの人間がこの一見、ぱっと見、自然に醸し出す人柄の良さに引かれたに違いない。あくまで一見だ。相手がワインを味わうのを見て、こちらも一口含む。自分のおかげで逃走できたんだろとは言わなかった。頼まれてもいないし勝手に自分がしたことで、実際無事の逃走を促したから。ただ一言くらい返したほうがいいだろうと気のない悪態を吐いて。そしてこういうとき相手は直球。前置きない、核心をつく問い。自分もまどろっこしいのは嫌いなためやりやすいが、答えには詰まった。ここ数年、いやそれ以上に自分のことで何か答えることなどほぼ無いに等しかった。決められた道、定められた答え、望まれる回答を自ずと選択してきた自分にとって、自分の芯にせまる答えを出すのは難解で。ワイングラスを一度置き、思案するように目を伏せたあと視線を合わせることなく何か口にしようとするが躊躇して口を閉ざすと一息置いてまた口を開いて。
まだ、言えない。__いや、一番は話したかったからだ。その理由を今はまだ話せない。
ただ、これは自分のためだ。それだけは言える。
(意識はしていないがまたお預けをする形になる。ずるいのは理解している。人を呼び出しておいてこちらの内を明かさずに話し合いをしようなど虫のいい話。だが今考えていることを話したら相手の本音が聞けない気がしたのだ。依然、視線をワイングラスにやったまま軽く中の液体を回して。
お前はなんで人を殺すんだ?
(まるで明日の予定は?と聞く物言いで、それでもいくらか声のトーンを落として問う。なんとなくぼんやりとは殺人の動機が見えていたが、相手の口からしっかりと聞きたかった。それを知ってどうするか聞かれたらまた“言えない”になる訳だが。グラスに注いでいた視線をようやく上げて相手をまっすぐに捉えるとその返答を待って。)
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