隊長 2018-10-24 21:35:56 |
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死に際に言うことか?どうでもいいな
(相手の意志の籠もった目を見て更に感情が高ぶり、今せんとすることを許されている気さえする。もしかしたら相手の期待するスリルには及ばないかもしれないがこの際どうでもいい。ただ今は演技をしなければならない。自分にこの男を殺す意志があると愚かな長官と総監に見せつけなければならない。だからわざと嘲るように冷たく突き放し、僅かに身を屈めて相手の顎を銃口で持ち上げると耳元で兄の大好きな蔑みをしてやる。そして身を戻す去り際に囁く。「__まだ、駄目だ」と。吐息ともに囁かれたそれはお預けをさせるように、そして今までの自分からは想像のできない甘さの含んだものだった。相手の名前は知りたい。が、他人の目がある今ここでは聞きたくなかった。というのが本心だが、演技をしなければならないのも事実、今言わせないのは計画を円滑に遂行するため……。それはともかく、そろそろか。相手を冷ややかに見据えながら安全装置を外す、そしてそれは絶好のタイミングで訪れた。
『ま、待ってください、芹崎隊長。…そ、総監、彼は、東堂英太は凶悪犯ではありません。殲滅対象から外されました。』
『は?…どういうことだ。証拠は上がってるんだぞ!!』
『それがその証拠事態が男の偽装だったんです。東堂英太をおとりにしはめるために作られた偽物。男のパソコンから偽造記録も確認され、本人も偽造したと認めています。』
『そんな馬鹿げた話があるか!!』
『…実はその…、事件当時のコンビニの監視カメラにも東堂英太と思われる人物が写っていました。彼に殺人は不可能、…証拠が偽造と判明した以上、殲滅の対象に決定付けるのは危ぶまれるかと……、長官が先程判断しました』
『…長官が?……おい、お前なにかしただろ』
「俺はずっと隊務についていました。他事に構う暇なんてありませんでしたよ。部下に聞いて下さればお分かり頂けると思います。」
(ここ最近は詰め込みすぎなくらい隊務をこなした。部下の愚痴が一層増す程に。だが部下達はなんだかんだ兄の総監よりは自分に信頼を寄せてくれている。隊務に関しては行き過ぎなほど真面目な自分が隊務の合間にある種の生業の人間と関わっていても『あー仕事しているんだな』としか思われない。水面下で動くのは至極簡単だった。『長官の決定』と聞き悔しげに表情を歪める兄は実に見物だ。きっと隣室でこちらの様子を見物していた長官も機嫌を損ねているに違いない。
『畜生、運の良いやつめ……。次はないと思え』
(苛立ちを抑えきれずご丁寧に相手に蹴りを入れてから去っていく兄の背中に冷ややかな視線を送っては自分も銃をホルダーにしまって。
死に損なったな。
(相手を見下ろし何食わぬ顔で言えば、相手を部下達に受け渡す際にその手にそっと針金と日時とホテルの部屋番号が書かれた紙を握らせる。相手はこの後再び医療施設にいれられ数日後には犯罪者として刑務所に入れられるだろうが逃げるタイミングは相手に任せようと。未だにどくどくと波打つ鼓動を抑えつつ相手が連れられるのを見送って。)
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