SS小説(著者別2本立て)

SS小説(著者別2本立て)

YUKI  2015-09-20 23:21:52 
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※ここはSS小説の部屋です。
※荒し・なりすまし・マナー違反はお止めください
※ご意見・ご感想は2本とも読み終わった後にお載せください
※なお、勝手に参加する真似はお止めください。著者はすでに決まっていますので、よろしくお願いいたします



では、一本目は僭越ながらYUKIが書かせていただきます

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  • No.1 by YUKI  2015-09-21 00:09:34 

     タイトル 花街恋物語

     ~ あらすじ ~

その花街は此処ではない別の次元に存在していた。
今か昔か、過去か未来か、誰にも分からない場所。
永久に夜の続く街、美しく華やかな花魁達が木製の囲いの中に閉じこめられ、今日も殿方の胸で鳴く。
そう、そこに暮らす者達にすらも此処が何処かなどわかり得ない、閉ざされた不可思議な花街の話である。

  • No.2 by YUKI  2015-09-21 00:39:45 

     第一章 一輪の花

「さぁさ、いらっしゃい。安くしておくよ」
「うちの花魁みてお行きよ。美しくて、色っぽいだろう」
店の前に立つ番頭達が少しでも多く客を入れようと、我先にと躍起になり客に声をかける。
木製の格子の外には客の男どもが、あちらこちらの店の花魁を吟味するかのようににやけた顔で歩いていた。
格子の中ではすでに外の世界を諦めた、美しく着飾った花魁達が微笑みながら客を手招きしている。
誰もがこの光景に慣れ過ごしている中に私、椿(ツバキ)は花魁として皆と同じように微笑んでいた。
私がこの店に売られたのは12歳の時だ。
家族は父と母だけで、貧乏でもそれなりに幸せだった。
ところがある日、父は辻切りに会い殺され、元々体の悪い母は病に伏せそのままあの世へ行ってしまい、一人残された私は親戚に此処へ売られたのだった。
幼い私にはどうにも出来ず、気付ぱこの格子の中にいる。
始めは怖くて、不安で泣いてばかりいたけれど、今ではそれ自体意味の無い事と自覚しているつもりだ。
どうせ、この格子の外には出れないのだから。

  • No.3 by YUKI  2015-09-21 01:13:16 

「椿、お客だよ。ぼーっとしていないで早く準備しなっ」
女将さんの大きな声に、私は我にかえり「はい、ただいま」と短く答えそそくさと二階の部屋に向かう。
六畳程の一間に、一組の布団と二つの枕。
少し離れた奥に座椅子が一脚と卓袱台が一つ。
部屋の隅と枕元には蝋燭のともる低い燈台がある。
私は台所から頂いた二合の酒と、お猪口を二つ卓袱台に乗せ「仕上がりました」と女将の居る一階へと声をかけた。
「お待たせいたしました。お客さん、二階へどうぞ。右奥の部屋です」と女将が椿の声に反応し、客を椿の居る部屋へと案内する。
今日の客はどんな男だろう。昨晩のような乱暴者でなければいいがと、そんな事を考えながら椿は客を待った。
この花街では花魁が外に出されるのは、売りものにならないくらい老いるか、命をおとした時のみだ。
客に金で買われ出ることは出来ない決まりになっている。
一度売られれば、売りものになる限り永遠に売られ続ける。
客は花魁に惚れても自分のものにすることなど出来はしない。
他の客を取る花魁をただひたすら買い、通うしかないのだ。
花魁も、客に惚れてもただ待ち続け、他の客を取り涙するだけ。

  • No.4 by YUKI  2015-09-21 01:38:06 

それが、この花街の決まり事なのだから。
「こんにちは、美しい花魁」障子を開け、客らしき男が入ってきた。
「ようこそお客さん、私のことは椿でいいわ」
私は客の側に寄り、クスリと笑いながら客をよく見てみた。
漆黒の黒い髪は耳にかかり、瞳は鋭く私を見つめている。
背丈は180は有りそうで、少し筋肉質に思えた。
着物は紺に牡丹の柄が映える、少し派手な着物のよう。
「さぁ、どうします?お酒が先か、私が先か。どちらでもお好きなように」と薄紅色の着物を翻し、私はお客を見つめ微笑む。
いつもの事と、慣れた口調で私は客とともに布団に崩れる。
しかし、その客は今までとは少し違っていた。
今までの客はどれほど奥手でも崩れれば、すぐに椿に手を出してきた。
しかしこの男は崩れ、縋る椿を自分から引き剥がし、すっと立ち上がり座椅子へ向かう。
「俺はそんなつもりで此処にきた訳じゃない。貴方と一度話してみたいと思った。ただ、それだけだ」

  • No.5 by YUKI  2015-09-21 02:04:31 

男は私を見ながら座椅子に腰を掛け手招きをした。
布団の上で驚いていた私は急いで男の隣に座る。
「私と話?いったい何を聞きたいのかしら?」と私は男を見上げあざ笑う。
「君は、外に出たいとは思わないのか?いつもまるで諦めたかのように、けれど愛しそうに外を見ているだろう。他の花魁とは違う目だ」
突然の言葉に、私は頭が混乱しそうになる。
私、そんな風に外を見ていたかしら?そもそもこの男はいつから私を見ていたのだろう?
それ以前にこの男は何者なのだろうか?
そんなことが頭の中を巡り続ける。
「お客さん、貴方は何者なのかしら?初対面の女性が名乗ったのだから、そちらも名乗るのが礼儀でしょう」
少し怒った顔を見せ、男の名ぐらいは知りたいと思い、椿は男に訪ねる。
「あぁ、これは失礼。俺はこの花街の片隅で、帯紐屋をやっている夜冬(ヨフユ)という者だ、よろしくな花魁」
夜冬という男は飄々と応え、私をからかうように笑いながら花魁と呼んだ。

  • No.6 by YUKI  2015-09-21 02:28:11 

「わかったわ。私もお客さんのこと夜冬さんと呼ぶことにします。だから貴方、夜冬さんも私の事は花魁ではなく、椿と呼んでちょうだい」
納得したような顔をして私は頷き、自分の事を名で呼ばせるために客の事を名で呼ぶと決め、夜冬に訴えた。
「わかったよ、椿さん」
夜冬も客と呼ばれなくなり満足したのか、ようやく花魁ではなく椿と呼んでくれた。
「ところで、さっきの話の続きなのだが、椿さん。貴方、外に出てみたくはないか?」
夜冬は私の手を握り、にやりと笑いながら再び聞いてくる。
外に出たくないといえば嘘になる、しかし事実上此処を出ることは不可能だろう。
それは、この花街の者なら誰もが知っていることなはずだ。
それなのにこの男は何を言っているのだろうか?
「あの、夜冬さん。貴方何も知らない訳じゃないわよね?この花街では一度花魁になった者は死ぬか老いるまで外には出れないのよ?」
私は呆れたように諭し、夜冬を可愛そうな者を見る目で見つめた。

  • No.7 by YUKI  2015-09-21 03:10:59 

「そんな目で見るなよ、分かってるよそんなことは。でも、もしも出られるとしたら出たいかって聞いているんだ」
目線の意図が分かったらしく、夜冬は拗ねたように言い、なおかつ私に聞いてくる。
「そうね。もしもの話なんて意味がないかもしれないけど、出れるなら出てみたいわ」
私は窓の外を悲しそうに見つめ、ため息混じりで応えた。
しばらく静まり返った部屋の中で、一階から女将の声が聞こえる。
「そろそろ時間切れのようね」と悲しげに私は夜冬へ声をかけた。
「あぁ、もう時間か。また明日来る。それまでに考えといてくれ」
夜冬は身支度を整え、私を見つめ優しく髪を撫でて言う。
「わかったわ」と私は一言述べ、「お客さんのお帰りー」と一階に聞こえるように言った。
「じゃあ、また明日来る」
たった一言残し夜冬は店を後にした。
そしてその後私はその晩数人の客を相手にしながら、明日また来ると言った夜冬を思い明日を待ちながら眠りにつく。

  • No.8 by YUKI  2015-09-21 13:08:22 

次の日、約束通りに夜冬は店にやってきた。
「椿、昨日の返事を聞きに来たぜ」
夜冬は部屋に入るなり座椅子に腰を降ろし、椿を上目使いで見つめ椿の返事を待つ。
その瞳で見られると、私は頬を少し染め目をそらしながら応えた。
「出たいわ。外に出たいに決まっているでしょう?でも、どうやって此処から出るの?それに出れたとしても、その後は?」
今にも泣きそうな目で夜冬を見つめる椿を、夜冬は椿の右手を掴みそのまま自分の方へ引き寄せた。
不意に手を引かれバランスを崩した私は、そのまま夜冬の胸に崩れ落ちる。
「何を」
私は突然の事に顔を赤くし、驚いた顔のまま夜冬を見た。
「何もしない、だから泣くな」
不器用にそう一言述べ、夜冬は優しく椿を抱きしめた。
「俺は、貴方が好きだ。貴方が望むなら、この店から出してやる。その後は別の土地に行って、当分は二人で暮らせばいい。生活は、俺には帯紐を作る仕事があるし、当面の生活費の蓄えもある。だから、心配ない」
夜冬は窓の外を見て、さらりと言い切った。

  • No.9 by YUKI  2015-09-21 13:54:01 

「でも、私貴方を好きかなんてまだ分からないわ」
伏せ目がちで申し訳なさそうに私は呟く。
「別にいい、見返りがほしい訳じゃないからな」
私を見つめ夜冬は微笑みながら呟く。
「それよりも、此処を抜け出す方法だが明日、俺はこの店に火を放つ。とわいえ、すぐに燃える訳じゃない。火薬を使って時限発火装置を作る。それをこの店の裏に仕掛け、俺はこの店の客として貴方の部屋に向かい、火事の中隙を見て貴方と逃げる」
凛とした顔で夜冬は私を見つめ、しっかりとした口調で話す。
「きっと火事のさなかなら、皆が外に逃げる。その中なら逃げきれるはずだ」
夜冬は心配ないと言わんばかりの顔で笑う。
「でも、それって夜冬にも危険があるわ」
不安な顔し、夜冬を見つめ私は言った。
「多少の危険があっても椿を外に出してやれるなら価値はあるさ」
夜冬は笑いながら椿を抱きしめる。
「あ、ありがとう」
私は頬を染めながら、夜冬の胸の中で礼を述べた。
「とにかく、明日また来るから身支度を整えて、待っていてくれ」
夜冬はそう言うと立ち上がり身支度を整え始めた。
私も夜冬の身支度を整えるのを手伝い、最後に後ろから抱きついた。
「待ってる。でも、無理はしないで」

  • No.10 by YUKI  2015-09-21 14:37:03 

その声に気づいていないふりをして、夜冬は店を後にした。


     第二章 散りゆく火の花

次の日、私は期待と不安に満ち、身支度を整えながら夜冬の来店を待ち望んだ。
もう少ししたら私はこの格子の外に出ることが出来る。
ずっと前に諦めていた外に出ることが出来るなんて夢のようにすら思えてしまう。
「早く逢いたい」
不意に言葉が漏れた。
この言葉は早く外に出たいと思うが故なのか、それとも夜冬を思うが故なのか、自らの言葉に自問自答してしまう。
思い悩んでいるうちに夜冬が来店してきた。
「椿、仕掛けてきたぞ。もう後には引けない」
夜冬は部屋に入るなり椿を抱きしめ言う。
「大丈夫、私も覚悟を決めたから」
私はその腰に腕を回し、目を細め愛しげに抱き返す。
「あと、どれくらいで火が回るのかしら」
私はそのままの体制で夜冬に問う。

  • No.11 by YUKI  2015-09-21 15:23:18 

「ん、半時程だとは思うが、一階が騒がしくなれば丁度いい時間だろう」
すっと抱きしめた手を離し、座椅子の側に夜冬は向かい歩いていった。
私は夜冬の左手に導かれ、後に着いて歩く。
座椅子に腰を降ろした夜冬に酒を注いであげようと思い、特別に用意した酒の入った切り子を取ろうとすると夜冬は私の手に触れ小さく首を振った。
そしてそのまま私の右手を掴み夜冬は自分の方にその身を引き寄せる。
私は言葉もなく、そのまま夜冬の体に寄りかかった。
私達は格子窓の外を見つめ、騒ぎが始まるのをただ待ち続ける。
不意に夜冬の顔を見つめた私を夜冬も見つめ返し、時が止まったように思えた。
月明かりに照らされた夜冬の顔はとても綺麗に思え、月明かりに輝く鋭い瞳は私自身を射ぬいているように私の目に映る。
ゆっくりと近づく陰に私は捕らわれてしまったのように固まり、そのまま夜冬の口付けを受け入れた。
夜冬の事が好きかどうかは分からない、けれどその口付けは決して嫌なものではなかった。
なぜか心地よく、安心できる気持ちにさせられるそんな感覚に感じてしまう。

  • No.12 by YUKI  2015-09-21 15:41:46 

「悪い、貴方が俺を好きかも分からないのに勝手なことをして」
夜冬は唇を離し、目をそらしながら私に謝る。
「そんな、謝らなくてもいいわ。私も嫌ではなかったし」
私の方も目を合わせられずにいながらも、夜冬に嫌ではなかったことを告げた。
「そうか、ならよかったが」
目をそらしながらも照れているのかうっすら頬を染める夜冬を月が照らしている。
そして私はそんな照れている夜冬が可愛らしく思い、自分から夜冬に抱きついた。
しばらくの沈黙の後、一階が騒がしくなるのを感じ私は夜冬を見る。
夜冬も騒音に気づいたのかすっと目を開けた。
「そろそろか」
吐息のように声を漏らし夜冬は窓の外を見つめる。
外では皆が騒ぎ急いで押し合いながら店の外へと駆けだしていた。
「そのようね」
私も体を起こし、窓の外を見て頃合だろうかと確認する。

  • No.13 by YUKI  2015-09-21 21:29:51 

「これ、羽織って。ちょっとの間なら目眩ましになるだろう」
夜冬は自分の上着の羽織を、私の肩に掛けてくれた。
「あ、ありがとう」
私は夜冬の羽織を肩に羽織って、少し気恥ずかしそうに礼を述べる。
「よし、行くぞ。俺の後ろに隠れながら着いてこい」
夜冬は私が羽織を羽織ったのを確認して、私の右手を掴み部屋の障子を開けた。
焦げ臭い臭いに私は顔をしかめながら、夜冬に手を引かれ一階に降りた。
店の者達は皆外に逃げたらしく、人の気配はどこにもない。
着物の裾で口を覆い、私達は勝手口の方へと向かい歩く。
あらかじめ勝手口から離れた場所に火を放ち、逃げ場を確保しておいたのだ。
それを知らない店の者は、皆表の広い入り口から出たはずだろう。

  • No.14 by YUKI  2015-09-21 22:03:03 

私たちはこの大火の燃える店の中勝手口にたどり着いた。
ところがそこには予想の範疇にない物があったのだ。
勝手口には南京錠がかかっていて、扉は思いの他頑丈そうに思える。
恐怖の余りに後ろを振り返ると、すでに大火は私達の退路を塞いでいた。
「どうしょう、このままじゃ」
不安におびえた声をあげた私を夜冬は抱きしめ「大丈夫だ。貴方だけは必ず此処から生きて出すから」と力強く笑いながら呟く。
そして夜冬は私から離れたと思うと、力強く勝手口に体を打つけ力ずくで扉を壊そうとし始めた。
夜冬は何度も力一杯体を打ちつけるが、扉は頑丈な木材を使われているらしく、びくともしない。
大火は徐々に私達を追いつめるかのように燃え広がっていく。
私自身も煙を吸いすぎたせいか、息苦しく力が弱っていく。
何度目か夜冬が扉を壊そうとしたとき、私は弱々しく夜冬の名を呼んだ。
「夜冬、もういいのよ。どのみちきっともう助からないわ」
すでに立ち上がる力もないほど弱っている私に気づいて、夜冬は私の元に駆け寄ってきた。
「椿、後もう少し待ってくれ。必ずあの扉を壊して貴方を助けるから」
今にも泣きそうな顔をして夜冬は私を支えてくれる。

  • No.15 by YUKI  2015-09-21 22:28:37 

「もう、無理よ。貴方も気付いているでしょう?だから、どうせ助からないなら、貴方に伝えたい事があるの」
私は弱々しい声で夜冬を優しく見つめ言う。
「私貴方のことを好きになっていたみたい。自覚したのは今日貴方が此処に来る前の事だったけど」
クスリと微笑みながら夜冬の頬に触れ私は言った。
夜冬は此処を出れなかった事を無念そうな顔をしながら私の顔を見つめる。
「すまない。貴方をこの店から生きて出してあげたかっただけなのに、俺が考えなしの行動をとったせいで」
今にも意識が途絶えそうな私を見つめ、夜冬は私の頬に付いた煤を拭い、謝った。
店の小さな柱が焼けて倒れ、大きな音をたてた。
「夜冬、謝らないで。私、嬉しかったのよ?私を本当に好きになってくれて、この店から助け出そうとしてくれて。だから、謝らないで」
もう目を開けるのすらも辛い私は、必死に声を絞り出す。
夜冬は私を抱きしめ頷き「俺も、嬉しかった。半年前に偶然貴方を見つけ一目募れをした。その時から貴方を愛していた。貴方が外を恋しそうに見ているのに気付いてからは、何とか外に出してやりたいと思った。」と私への募る思い口にしてくれた。

  • No.16 by YUKI  2015-09-21 23:07:29 

「嬉しい、ねぇ、このまま、最後まで、抱きしめて、いて」
もう目を開く力もなく、瞳を閉じたまま私は途切れ途切れに呟く。
さすがに夜冬も苦しくなったのか、私を抱きしめ崩れるように床に寝転がる。
「あぁ、最後まで一緒だ。あの世で逢えたらまた逢おう」
夜冬の最後の言葉に私は消えうる意識の中思う。
確かに店の外に生きては出られなかったが、愛する人とともに死をもってこの店から解放されるのならばそれも悪くはないのかもしれない。
そう思い私と夜冬はこの世を去った。

  • No.17 by YUKI  2015-09-21 23:31:59 

     ~ エピローグ ~

店の火災は次の日迄かけてようやく消火したのだが、店の花魁達は蜘蛛の子を散らすように一人残らず戻ってはこなかった。
店の中には顔がほぼ分からないほどに焼け焦げた男女の遺体が二つあり、唯一焼け残っていた着物の柄から女の方は椿という花魁であることが判明する。
二つの遺体は抱き合うように崩れていたことから、おそらく愛し合う者同士が逃げ遅れ此処で朽ち果てたものだろうと思われた。
花街の店の火災は領主にまで届き、花街では新たな決まり事が作られることになり、住民は誰しも驚きを隠せないでいる。
『花街の花魁達は、皆自ら、または客が店に100両払うことが出来れば店を辞めることを許可する』という領主からの命令が下ったのだった。
花街での花魁と客の悲しい思いを悟り、領主からのわずかばかりのお慈悲だろう。
花魁と客は喜び、店は渋々了承した。
二つの遺体は街外れの寺にともに埋葬され、小さいながらも墓石も建てられた。
そしてそのご命日にはお寺側から毎年一輪の椿が供えられ続けているらしい。


     E N D

  • No.18 by YUKI  2015-09-21 23:44:30 

          ~ あ と が き ~

はい、完結いたしました。今回はすっごく短い小説にチャレンジいたしました(^^;)
これには訳がありまして、実はもう一方と小説対決をすることになったのです。
もちろん読者様には関係のない事と分かってはいます(-_-;)
でももしよかったら二本とも読んでご意見頂けたらなーなんて思っています(^^)
まぁ、そんなこんなで次は二本目です。
著者はアマツさんですよー(^o^)
荒らし・なりすまし・マナー違反はしないでね?
みなさんを信じていますからね(*^_^*)
ご意見・ご感想も二本目終了後にまとめてお願いしますm(_ _)m
では、始まりますよー☆

  • No.19 by アマツ  2015-09-22 00:08:28 

【タイトル】

~ 廻る世界に終焉を ~

【あらすじ】

「___気に入らないモノは全て壊せばいい。」

とある研究所にて、次元歪曲の産物である«永久不滅の結晶»、通称エターナル・クリスタルの次元共振実験が行われた。
そこで、ユイナ=ハイティエルはつまらなくなった今の世界を次元レベルで崩壊させてみようと、研究所そのものを暴走させ、大爆破を発生させた。
だがしかし、爆発し、自分の存在が消えるのを感じたその後、見知らぬ森で目を覚ましたユイナ達が見たのは………

今、王道なる物語の幕が上がる。

  • No.20 by アマツ  2015-09-22 02:21:24 

【プロローグ】

_________________

薄暗い室内を微かな光が照らす。
研究員達は、それぞれのパソコンやらの機材をじぃっと見ている。熱心なことだ。
既に実験の成功予測は96.58%にまで上昇している。もう堅っ苦しくデータ観測なんてする必要も、利益もどこにもない。それに、データは全てメインデータボックスシステム、通称«ブラック・ボックス»に記録されているのだ。データを見ているより、実際に現象を見た方が早いし面白いだろうに。

私、ユイナ=ハイティエルはお気に入りの鈴を右手の指でくるくる回して弄びながら目の前の分厚いガラスの壁の向こうを見つめる。
そこにあるのは、高さ2メートルはありそうな、七色のに輝く大きな結晶。
その名を«永久不滅の結晶»、通称をエターナル・クリスタルという。次元の歪みで生まれたというこの結晶は、その名の通り、ドリルで削ろうが、金槌で叩こうが、100トン以上の圧力を掛けようが、割れることはおろか、傷つくことすらない。終いには硫酸でも溶けないという、正に永久不滅と言える代物だ。
故に加工しようにもできず、結果的に結晶をそのままの形で岩から削り出して研究所に運ばれたという。
まぁ、興味はないのだけれど。
「やぁ、ユイナ君。相も変わらず、ドの付くほど真顔じゃあないか。」
突然声を掛けられ、声の主を見ると、そこには一人の白髪の老人が居た。
名前は、分からない。忘れた。
「……別に、真顔にドもレもないでしょ。私はただ見てるだけ。」
「カッカッカッ。そうだなぁ……言い方を変えようか。」
老人はそう言うと、私が座るイスの隣に立ち、言い放った。
「ずいぶんと、“気に入らなそう”だな。のぅ?ユイナ君?」
「……今はあなたが気に入らない。」
「そうかい。けど、俺よりももっと大きい物を気に入ってないんじゃないのかな?ん?」
老人は何がおかしいのか、からからと笑い出す。まるで私を嘲るようで、気に入らない。けれど、老人は突然笑うのを止め、困ったと言わんばかりの表情を作った。
「………全く、迷惑にも程がある。“この世界が気に入らない”からと言って、次元レベルでの消滅を起こそうなんてねぇ?やれやれ、俺もとんだ天才様に手を出したもんだわなぁ……」
そう思わんかね?

私は何も答えず、じっと正面の«永久不滅の結晶»を見つめる。エターナルは相変わらず、七色の輝きを孕んでいて、その輝きこそが次元を破壊し得る力の根元が結晶に内包されている証拠だ。
あれに巨大な力を集め、それを意図的に暴走させることで力を爆散させる。それが今の私のやることだ。
私は着ている白衣のポケットから小型の端末を取りだし、画面の数値を見て確信する。
「………実験の成功予測、99.08%……」
「…………だがまぁ、君が仕掛けた不純データは、俺が既に全て排除してやったんだがなぁ?」
私は視線だけを老人に向ける。老人はまるでゲームに勝ったような、勝利を確信したような笑みを浮かべる。
……気に入らない。だから、壊す。そう。
「___気に入らないものは全て壊せばいい。」
私には、それをやるだけの『力』があるから。

異変は、その瞬間に起こった。
「ッ!?博士ッ!レイヴィル博士ッ!!」
「んっ?どうしたっ?」
突然、研究員の若い女が声を上げた。レイヴィルと呼ばれたその老人は、大急ぎで走って行く。
が、異変はあちらこちらで次々に起こり始めたのだった。
「メ、メインデータボックスが、オーバーヒートしていますッ!!」
「た、大変だぁッ!!メインジェネレーター反応、基準値を大幅に越えてるぞッ!?」
「エ、エターナル・クリスタルの周囲に異常なエネルギー反応ありッ!!メインジェネレーターと同期していますッ!?う、うそでしょっ!?エネルギー総量、計測不能!?!?臨界値を越えてますよこれッ!!!」
様々な声や、アラートがなり響く中、レイヴィルは立ち尽くしてエターナルの方を向いていた。
まるで、この世の終わりを見ているような目で。
しかし、目の前にあるのはまさしく世界の終わりだ。エターナルの周りは、今や赤黒い稲妻が出現し、研究員達は大パニックに陥っている。
するとレイヴィルは、私の方へ大股で歩み寄って来た。そして

「……貴様ァ……この小娘が………この女狐がァッ!!一体何をしよったァッ!!」

私の胸ぐらを掴み上げ、剣幕を張って怒鳴る。手は怒りのあまり震えていた。
「……何を?決まっているでしょ。研究所ごと、エターナルを暴走させて、反次元暴走を起こしたの。」
そんなこと、見れば分かるでしょう。

私が冷たく挑発気味に言い放つと、レイヴィルは顔を真っ赤にして更に憤慨する。
全く愚かな話だ。私の目的を知っていながらわざと泳がせて、最終的には、“私が反逆とも言える行動をするのを予期して、裏で働きかけて阻止する”、などというマンガやアニメのようなシチュエーションにでもするつもりだったのだろう。
その場合、レイヴィルの働きかけで実験は何事もなく無事終了し、私は計画を阻止されて悔しがるという、正義に悪が断罪される脚本が出来上がる“予定だった”のだろう。けれど
「……悪役が負けるって、誰が言ったの。」
私は、冷たく、言い放った。
笑わず
怒らず
ただただ、冷たく無表情に。

するとレイヴィルは、私の胸ぐらを掴む手を力なく落とし、畏怖とも怒りとも困惑ともつかない表情で私を見た。
……知ったのだろう。私という存在を。
「お……お前は……本気で……」
「……私はただ、楽しさが無いのが、面白さが無いのが、嫌いなだけ。それ以外はない。」
「……ユイナ………ユイナ=ハイティエル……………何と……恐ろしい娘だ………」
「………さようなら。レイヴィル=ライトクーパー博士。」


その瞬間、エターナルは反次元暴走で次元レベルの爆発を起こし、


私達の存在が消えた。

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