YUKI 2015-09-20 23:21:52 |
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次の日、約束通りに夜冬は店にやってきた。
「椿、昨日の返事を聞きに来たぜ」
夜冬は部屋に入るなり座椅子に腰を降ろし、椿を上目使いで見つめ椿の返事を待つ。
その瞳で見られると、私は頬を少し染め目をそらしながら応えた。
「出たいわ。外に出たいに決まっているでしょう?でも、どうやって此処から出るの?それに出れたとしても、その後は?」
今にも泣きそうな目で夜冬を見つめる椿を、夜冬は椿の右手を掴みそのまま自分の方へ引き寄せた。
不意に手を引かれバランスを崩した私は、そのまま夜冬の胸に崩れ落ちる。
「何を」
私は突然の事に顔を赤くし、驚いた顔のまま夜冬を見た。
「何もしない、だから泣くな」
不器用にそう一言述べ、夜冬は優しく椿を抱きしめた。
「俺は、貴方が好きだ。貴方が望むなら、この店から出してやる。その後は別の土地に行って、当分は二人で暮らせばいい。生活は、俺には帯紐を作る仕事があるし、当面の生活費の蓄えもある。だから、心配ない」
夜冬は窓の外を見て、さらりと言い切った。
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