YUKI 2015-09-20 23:21:52 |
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「ん、半時程だとは思うが、一階が騒がしくなれば丁度いい時間だろう」
すっと抱きしめた手を離し、座椅子の側に夜冬は向かい歩いていった。
私は夜冬の左手に導かれ、後に着いて歩く。
座椅子に腰を降ろした夜冬に酒を注いであげようと思い、特別に用意した酒の入った切り子を取ろうとすると夜冬は私の手に触れ小さく首を振った。
そしてそのまま私の右手を掴み夜冬は自分の方にその身を引き寄せる。
私は言葉もなく、そのまま夜冬の体に寄りかかった。
私達は格子窓の外を見つめ、騒ぎが始まるのをただ待ち続ける。
不意に夜冬の顔を見つめた私を夜冬も見つめ返し、時が止まったように思えた。
月明かりに照らされた夜冬の顔はとても綺麗に思え、月明かりに輝く鋭い瞳は私自身を射ぬいているように私の目に映る。
ゆっくりと近づく陰に私は捕らわれてしまったのように固まり、そのまま夜冬の口付けを受け入れた。
夜冬の事が好きかどうかは分からない、けれどその口付けは決して嫌なものではなかった。
なぜか心地よく、安心できる気持ちにさせられるそんな感覚に感じてしまう。
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