YUKI 2015-09-20 23:21:52 |
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その声に気づいていないふりをして、夜冬は店を後にした。
第二章 散りゆく火の花
次の日、私は期待と不安に満ち、身支度を整えながら夜冬の来店を待ち望んだ。
もう少ししたら私はこの格子の外に出ることが出来る。
ずっと前に諦めていた外に出ることが出来るなんて夢のようにすら思えてしまう。
「早く逢いたい」
不意に言葉が漏れた。
この言葉は早く外に出たいと思うが故なのか、それとも夜冬を思うが故なのか、自らの言葉に自問自答してしまう。
思い悩んでいるうちに夜冬が来店してきた。
「椿、仕掛けてきたぞ。もう後には引けない」
夜冬は部屋に入るなり椿を抱きしめ言う。
「大丈夫、私も覚悟を決めたから」
私はその腰に腕を回し、目を細め愛しげに抱き返す。
「あと、どれくらいで火が回るのかしら」
私はそのままの体制で夜冬に問う。
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