YUKI 2015-09-20 23:21:52 |
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男は私を見ながら座椅子に腰を掛け手招きをした。
布団の上で驚いていた私は急いで男の隣に座る。
「私と話?いったい何を聞きたいのかしら?」と私は男を見上げあざ笑う。
「君は、外に出たいとは思わないのか?いつもまるで諦めたかのように、けれど愛しそうに外を見ているだろう。他の花魁とは違う目だ」
突然の言葉に、私は頭が混乱しそうになる。
私、そんな風に外を見ていたかしら?そもそもこの男はいつから私を見ていたのだろう?
それ以前にこの男は何者なのだろうか?
そんなことが頭の中を巡り続ける。
「お客さん、貴方は何者なのかしら?初対面の女性が名乗ったのだから、そちらも名乗るのが礼儀でしょう」
少し怒った顔を見せ、男の名ぐらいは知りたいと思い、椿は男に訪ねる。
「あぁ、これは失礼。俺はこの花街の片隅で、帯紐屋をやっている夜冬(ヨフユ)という者だ、よろしくな花魁」
夜冬という男は飄々と応え、私をからかうように笑いながら花魁と呼んだ。
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