YUKI 2015-09-20 23:21:52 |
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私たちはこの大火の燃える店の中勝手口にたどり着いた。
ところがそこには予想の範疇にない物があったのだ。
勝手口には南京錠がかかっていて、扉は思いの他頑丈そうに思える。
恐怖の余りに後ろを振り返ると、すでに大火は私達の退路を塞いでいた。
「どうしょう、このままじゃ」
不安におびえた声をあげた私を夜冬は抱きしめ「大丈夫だ。貴方だけは必ず此処から生きて出すから」と力強く笑いながら呟く。
そして夜冬は私から離れたと思うと、力強く勝手口に体を打つけ力ずくで扉を壊そうとし始めた。
夜冬は何度も力一杯体を打ちつけるが、扉は頑丈な木材を使われているらしく、びくともしない。
大火は徐々に私達を追いつめるかのように燃え広がっていく。
私自身も煙を吸いすぎたせいか、息苦しく力が弱っていく。
何度目か夜冬が扉を壊そうとしたとき、私は弱々しく夜冬の名を呼んだ。
「夜冬、もういいのよ。どのみちきっともう助からないわ」
すでに立ち上がる力もないほど弱っている私に気づいて、夜冬は私の元に駆け寄ってきた。
「椿、後もう少し待ってくれ。必ずあの扉を壊して貴方を助けるから」
今にも泣きそうな顔をして夜冬は私を支えてくれる。
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