YUKI 2015-09-20 23:21:52 |
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「わかったわ。私もお客さんのこと夜冬さんと呼ぶことにします。だから貴方、夜冬さんも私の事は花魁ではなく、椿と呼んでちょうだい」
納得したような顔をして私は頷き、自分の事を名で呼ばせるために客の事を名で呼ぶと決め、夜冬に訴えた。
「わかったよ、椿さん」
夜冬も客と呼ばれなくなり満足したのか、ようやく花魁ではなく椿と呼んでくれた。
「ところで、さっきの話の続きなのだが、椿さん。貴方、外に出てみたくはないか?」
夜冬は私の手を握り、にやりと笑いながら再び聞いてくる。
外に出たくないといえば嘘になる、しかし事実上此処を出ることは不可能だろう。
それは、この花街の者なら誰もが知っていることなはずだ。
それなのにこの男は何を言っているのだろうか?
「あの、夜冬さん。貴方何も知らない訳じゃないわよね?この花街では一度花魁になった者は死ぬか老いるまで外には出れないのよ?」
私は呆れたように諭し、夜冬を可愛そうな者を見る目で見つめた。
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