YUKI 2015-09-20 23:21:52 |
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「これ、羽織って。ちょっとの間なら目眩ましになるだろう」
夜冬は自分の上着の羽織を、私の肩に掛けてくれた。
「あ、ありがとう」
私は夜冬の羽織を肩に羽織って、少し気恥ずかしそうに礼を述べる。
「よし、行くぞ。俺の後ろに隠れながら着いてこい」
夜冬は私が羽織を羽織ったのを確認して、私の右手を掴み部屋の障子を開けた。
焦げ臭い臭いに私は顔をしかめながら、夜冬に手を引かれ一階に降りた。
店の者達は皆外に逃げたらしく、人の気配はどこにもない。
着物の裾で口を覆い、私達は勝手口の方へと向かい歩く。
あらかじめ勝手口から離れた場所に火を放ち、逃げ場を確保しておいたのだ。
それを知らない店の者は、皆表の広い入り口から出たはずだろう。
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