YUKI 2015-09-20 23:21:52 |
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それが、この花街の決まり事なのだから。
「こんにちは、美しい花魁」障子を開け、客らしき男が入ってきた。
「ようこそお客さん、私のことは椿でいいわ」
私は客の側に寄り、クスリと笑いながら客をよく見てみた。
漆黒の黒い髪は耳にかかり、瞳は鋭く私を見つめている。
背丈は180は有りそうで、少し筋肉質に思えた。
着物は紺に牡丹の柄が映える、少し派手な着物のよう。
「さぁ、どうします?お酒が先か、私が先か。どちらでもお好きなように」と薄紅色の着物を翻し、私はお客を見つめ微笑む。
いつもの事と、慣れた口調で私は客とともに布団に崩れる。
しかし、その客は今までとは少し違っていた。
今までの客はどれほど奥手でも崩れれば、すぐに椿に手を出してきた。
しかしこの男は崩れ、縋る椿を自分から引き剥がし、すっと立ち上がり座椅子へ向かう。
「俺はそんなつもりで此処にきた訳じゃない。貴方と一度話してみたいと思った。ただ、それだけだ」
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