ありったけの砂糖を貴方に　/　〆

あ、ほ、ほら、ホラーの中にも得意とか苦手とかあるじゃないですか、はは、 ( ホラー自体苦手なのに得意不得意なんてあるはずもないけど、比較的怖過ぎないものじゃないと後々大変なのはわかっているので、引きつった笑顔になるも何とか格好に悪いところは見せないようにしないと。 「 なんだかこんなに真面目に喋るの、柄じゃないっすよ …。 あ、 困らせてすみません。 でも、気は効かせなくていいですよ、先輩は俺に気使うような人じゃないっすよ。 先輩らしくいて下さい。 」 自分の思っていることを真面目に口に出すことはあまりしなく、笑っていればそれでいい時の方が多かったからか、柄にもない事をすると調子が出ず。 相手が自分に気を効かせようと考えてくれたのは嬉しいが、気を使わせてしまうようなことをしたのはこちらなので一言謝って。次いで少し真面目になった空気を晴らすかのように、今まで通りの相手でいてほしいと自分もいつも通りのへらりとした笑顔で言う。 「 え、お土産まで、いいんすか ？、 んじゃあありがたくいただきます。 」 湯気の立ったコーヒーと、美味しそうなケーキが並ぶ机に置かれた紙袋を覗けばお土産といわれ、半ホールのケーキが。相手の気遣いを有り難く頂戴した後で、いただきます、とこちらも相手に習って手を合わせると、フォークを手に取り一口口に含んで。 くどくない甘さに良い舌触り…、なんて頭の中で考えることはなく、ただ口の中で感じたそれらを一言でまとめると、 「 めっちゃ美味いです！、 すげー、なんかこう、お店でも食べられるレベルですよこれ、 」 と目の前に座る相手をぱっと顔をあげて見ては告げて。 ケーキは文句なく美味しくて、自分でもいくらでも食べられそうな甘さで、相手が作ってくれたということも相まって嬉しさ溢れ、笑みをこぼす。 )

得意に苦手か … ま、映画観るのは好きだし、楽しみにしといてやるよ。（　今より顔が引き攣って無理して我慢し、怖がっている様子が今から見るのが楽しみで。そんな無理してホラー映画に来なくてもいいのにと思いつつ。にやり、と微かに口角を上げて不敵に笑い、楽しみにしてると。「 確かに、ヘラヘラして笑ってるお前しか見たことねぇ。… 俺らしく、か。お前がそう言うなら。取り敢えず、話してくれてありがと。今の俺からは以上 」柄じゃないという言葉に、確かにと納得。実際、普段のヘラヘラしている相手と違って真剣に話すギャップに困惑していた部分もあり。勝手に気を使っていたのは自分で、相手にらしくいろと言われたらそれに従うしかなく。上手く言葉に出来ないが、胸の中に今まではなかったむず痒さと甘酸っぱさが微かに残っていて。この感情の名前を見つける前に話を切り上げ。チーズケーキはそもそも相手が食べたいと言ってくれて作ったものなので、お土産として当たり前のように渡し。相手が一口食べる様子をじいっと伺い。笑みを零す相手を見る限り、美味しいと言ってくれたのはお世辞ではないらしく。オススメのスイーツを聞かれた時に、甘すぎない方がいいと言っていたので甘さは少しだけ控えめにして作ってある。そんな一つ一つの工夫の積み重ねで美味しそうに食べてもらえるのは本当に嬉しくて。相手の反応に安堵して自分も一口食べると、我ながら中々良い出来。珈琲とも相性が良く、幾らでも食べられそうで。「 なんかこうって、語彙力低下してんぞ。ま、そんくらい美味しいって思ってくれたって都合よく捉えさせてもらうな 」上手く言葉に表せないような表現をする相手に指摘、というかツッコミを。言葉選びに迷う程美味しいと思ってくれていたんじゃ、なんて勝手に考えて勝手に自分に都合よく捉えさせてもらうことに。兎にも角にも美味しいらしく安堵。続けて珈琲とチーズケーキを交互に食べ進め。　 ）

あ、はは、 … なんか笑顔が恐い、 ( 楽しみにしてくれるのはありがたいが、その含みのある笑いは先が思いやられている自分には余計に不安が煽られ、作った引き攣る笑顔の後顔を逸らせば小さく呟く。 「 ギャップってやつですよ。 どうすか ？、 何割か増しに見えました ？、 」 意図的に、というわけではないが、いつもへらりとしているのは自分でも分かっていて、けれどだからといって中身までへらへらして過ごしているわけではなく、ある程度はちゃんと考えて行動していて。 そういう考えていることをあまり口に出さない方なので、照れ臭さが残る中まぎらわすようにへらりと笑っては、巫山戯た調子で問いかけて。 自分の気持ちを素直に真っ直ぐ告げて、自分に振り向いてくれる可能性が低いと思っていた相手から礼を言われれば今はそれで十分で、はい、と少し満足げに頷く。が、もう少し振り向いてくれてもなぁなんて我儘は消えてはいない。 「 いいんすよ、都合よく捉えて。 実際そうですし。 めっちゃ美味いっすよ、本当に。 今までもらった手作りの中で一番です、一番。 」 相手がコーヒーとともに食べているのを見て同じようにコーヒーに口をつけると、その甘さと苦さがちょうど良くてさらに食べる手が進む。一口の大きい自分にとっては一切れなんてあっという間に食べ終わってしまって、未だ湯気の立つコーヒーカップを両手で持ちながら、土産にともらった袋を覗き込んでは嬉しそうに微笑んで。 )

自分でギャップって普通言うか ？ … ったく、調子乗んなよ。少ーしでも惹かれたのは気の所為だった。（　 ギャップがあったのは認めるが、自分で言ってきたので認めるのは悔しく。調子に乗るなとは言ったが、これは普段通りの相手と言われれば普段通りの相手。変に気を遣うのを止め、自分も普段通りの悪態をつく。少しだけ相手に惹かれてしまった自分がいて。流されやすく押しに弱い性格を改めて実感することになり、気の所為だった、と一言で済ませ。「 今までってのは話盛りすぎ。… ＿ ん、こんな時間だし家まで車で送ってやるよ 」ベタ褒めされると本心で言っているのか疑いが出てきて、今までで一番なんて言葉が出てくれば疑いの目で言い過ぎだと。不意に相手の皿を見てみると既にチーズケーキは姿を消していて。一方の自分は半分を過ぎてあと一口か二口程度。最後の一口を平らげると、時計が目に入り。既に夕方になっていて、家から駅までは少し歩く必要があるし、態々電車に乗るのも面倒臭いだろうと思ったので車を出すと。上記を告げてから二人分の皿をキッチンへと持って行き、洗い物をしつつ相手の返事を待ち。　 ）

ええ、気のせいにしないでくださいよ ー！、 はぁ … もっと頑張らないと振り向いてくれそうにないですね、 先輩は。 ( 気のせいといいつつ惹かれていた、と言う相手の言葉を逃さず、もし本当に惹かれていてくれたのなら、と願うばかりである。なかなか自分に振り向いてくれない相手を見て頬杖をつき、もっと距離を縮めなくてはとため息を一つ。 「 本当ですよ、俺色々手作りのもの貰うんすけど、…あ。 … 好きな人から手作りのものを貰うのは、初めてでした。 だから余計に嬉しいんすね。 ––…ん？、本当だ、時間すぎるの早。 え、本当っすか ？、 やった、お言葉に甘えます。 」 学生時代から今に至るまで女性から手作りのお菓子などもらうことは多く、しかしそのどれも自分が想いを寄せた人からもらったものはないことを、初めてもらった今気付きハッとする。美味しいのは本当だが、何故こんなに嬉しく感じるのかやっと腑に落ちたので、気付けた嬉しさと貰えた嬉しさとで表情が緩んでいく。 気付けばもうあっという間に時間が過ぎていて、少々腹が減ってきたなと時間を見て思い出す。 相手が洗い物をしているのを見て、いいなぁとか思いつつはっとすると、手伝います、と一言声をかけて。 )

最初に言っただろ、俺は簡単に落ちねぇぞって。… 変なこと聞くけど、お前の最終目標って俺と付き合いたいとか ? 例えば俺が振り向いたら、そこで終わりってわけではないだろ ? （　 簡単に落ちないなんて自分で言ったが、押され押されで心が揺らいだことは確かで。気張るためにも強気な発言をし。相手は結局自分と付き合いたいのだろうか。それとも単に思い出せば、好きだと想いは伝えられたが、付き合って下さない等のストレートな言葉は聞いていないので不意に気になり。「 … お前さ、ムカつくけど嫌味ったらしくなくてムカつかないよな … 、って自分でも意味わかんねぇこと言ったな 」女性は相手に好意を持って渡したものも、相手からしたらただのプレゼントなんだと思うと女性に同情してしまい。自分で色々貰うと言っていたり、苛つくのに嫌味ったらしくなくて。きっとそのムカつくは本心ではなく。ムカつくけどムカつかない、自分でもどういう意味で何を言っているのか分からなくて一人苦笑いし。洗い物は相手が手伝ってくれたお陰で直ぐに終わり。お礼を言った後に 「 忘れ物すんなよ 」と確認して、手には車の鍵を持ち 。　 ）

最終目標、ですか ？、 最終はありませんけど、目標は先輩が俺を好きになってくれること以外に今はありませんよ。 だって、俺のことを好きになってくれた先輩としたいことなんてありすぎて、 一言じゃ言えないっすから。 俺を好きになってくれた先輩としたいことは、俺を好きになってくれた先輩と決めます。 あ、でも付き合いたいってのは勿論思ってます。 ( 付き合いたいのかと聞かれれば、たしかにそうであるが、今は真っ直ぐ相手が自分の事を好きになってくれることしか考えておらず。相手に求めることや自分がしたいことは、まずお互いの気持ちが交わってからの話と思っていて。 元々最終なんて考えていなかった為に少し困惑した表情を見せるが、相手を好きになってから変わらない思いを口にすると、得意げに笑って。 「 あ、すみません何も考えずに発言してました、 … ムカつくのかムカつかないのかどっちなんですか。都合良く受け取りますよ ？、 」 無意識の失言に慌てて手で口塞ぐ。が、相手が言ったように苛々させているのかさせていないのか結局どっちか分からず苦笑を浮かべて。 忘れ物がないか身の回りとポケットとをチェックして、大丈夫ですと相手に返すと、玄関まで行き靴を履いて、お邪魔しました、と声をかけて名残惜しいが相手の家を後に。 )

… んじゃ、お前のことが好きなった俺と要相談ってことで。それには取り敢えず俺がお前を恋愛的な意味で好きになるかだな。（　意外とロマンチストで真面目なんだな、とあらためて思い。ここまで自分のことを真剣に考えてくれているとは思っていなかったので、少し心が惹かれ。先程も感じたこの心の揺れにまだ見て見ぬ振りをし。言葉には出さないが、後輩としての相手は好感度も上がっているので好きではあり。だが、それは恋愛的な意味での好きとは違い。少しだけ相手に揺らいできているのは、きっと気の所為で幻覚で勘違いで … そんな気持ちにそっと蓋をして。「 都合よく受け取るなって言っても、お前は都合よく受け取るだろ 」きっと答えは苛々はしない。だが、これを言うとまた調子に乗るだろうと思って、敢えて黙ったままに。相手のいい所でもあり、悪い所でもある変な前向きは、きっとどんな答えを出しても相手にとって良い方向に捉えるんだろうと思い、軽く流し。家の鍵を閉めると、階段を使って下まで降り。車に乗り込むと走らせ、すっかり薄暗くなって昼間とは違う印象の街並みを駆け。暫く走らせると、記憶の片隅にある相手の住んでいるマンションまで到着。頭の中は未だに口付けされた事で埋め尽くされていて、思い出しては気まずく感じて 「 … ん、じゃあまた会社で 」とだけ、相手の方は見ずに前を真っ直ぐ向いて声をかけ 。　 ）

そうですよ、だから俺のこと早く好きになってください。 先輩のことこんなに好きな人間なんて、俺ぐらいしかいないでしょ ？、 俺、絶対幸せにしますから。 ( こんなに人を好きになるのは自分でも初めての体験で、ならきっと相手にだって初めてだろう、というか都合良くそう思いたくて。 自分の言葉を信じて欲しくて、相手の手を握れば表情は笑っているものの真剣な目で言えば。 「 もちろんですよ。 先輩が俺のことだんだんちゃんと見てくれるようになったのかなー 、 とか。 俺のこと好きになってくれるかなー、 とか。 俺が知らぬ間に好きになってくれたかな ー、 とか ？、 なんて。 あ、いつのまにか着いてたんすね。 送ってくれてありがとうございます、 お土産も。 今度母親のお裾分け持ってきますね ！、 … あ、言うの忘れてた、 先輩、先輩の今日の格好俺結構好みなんですよね。 眼鏡、似合ってますよ。 じゃあまた！、 」 相手の後をついていき、車の助手席に乗り込めば膝に土産のチーズケーキを安定させて置いて。 上記のようの真剣になったり冗談を言ったりしていると、いつのまにか自宅前についている事に気付く。 手元にある相手がくれたチーズケーキを少し持ち上げ、礼を言うと。 先程相手宅で約束したことこ忘れず告げて。 車のドアをあけ、出ようとしたところで止まり、言い忘れていたことは相手の今日の私服のことで、じっと前を見つめてこちらを見ようとしない相手の顔を覗き込んでそれを告げると今度こそ車を出る。 相手が去ってい間も手を振り、見えなくなるまで見送って。 )

＿＿＿＿ 、っわかったよ、もうお前の気持ちは嫌ってほど伝わったから！（　確かにここまでアプローチされたのは初めて。手を握られ、真剣な様子で伝えられると暫く無言を貫き。その内に手を握られたまま見つめられるのに耐えきれなくなり、上記を吐いて悪態をついて。相手といたら調子が狂う。あまりにも真っ直ぐ相手と、あまりにも流されやすい自分が心配で最早怖く。車を走らせている間に相手は一人で冗談のような本気のような言葉を並べているので、これ以上流されてたまるかと軽く頷きもせずに聞き流し。相手の家に到着してお礼等言われた後、車のドアが開く音がしたのでやっと一人なって落ち着けると安堵。が、顔を覗き込まれて褒められると不意にだったので、驚いたように薄らと顔を赤く染め。一人で勝手に照れていると、伝えることだけを伝えて相手は去ってしまい。ハッとして車を走らせると、ミラーから相手が手を振っている姿が分かり。羞恥から来る溜息を一つすると、お気に入りのラジオに繋げて家へと向かい。帰ってくると慣れた手つきで夕食を作り、先程まで相手と一緒に居たので一人でいることが目立ち、ツーンとした無音が耳を擽る。夕食の後は風呂に入り、休みをいいことに深夜までゲームに熱中。気が付けば寝落ちし、色々と家事を済ませると一日中ゲームに費やし。ゲームをして相手とのことを綺麗に忘れようと思ったが、どうしても頭の片隅には相手の話題が離れず。モヤモヤとしたまま一日が終わり、その状態のまま出勤を迎え。いつも通りを心がけ、会社に着くと真っ直ぐにデスクに向かい、いつもに増して険しい顔でパソコンと向かい合って淡々と仕事をこなし。　 ）

( 自分の家に帰宅すると、なんだか静かな空間が寂しく感じて、テレビをつける。夕方で面白い番組もやっておらず、とりあえず相手の家にお邪魔した時にもらったチーズケーキを丁寧に冷蔵庫にしまって。と同時に見た冷蔵庫の中身は空っぽで、買いに行くのも面倒だったのかカップ麺で済ませたり。 友人に誘われフットサルに行ったり、食事に行ったり飲みに行ったりとほぼ家にいないいつもの休日を過ごせばあっという間に月曜日。朝はもらったチーズケーキと一緒にコーヒーを飲んでほっこりしていると危うく遅刻しそうな時間。慌てて出社し、自分のデスクについてから大きく息を吐いて間に合ったことに安堵。落ち着いたところでやはり視界に入るのは惚れているひと。だが、今日は一段と難しい顔をしていて、何があったんだろうか。後で時間ある時に聞いてみようと今はとりあえず仕事に専念して。 しばらくして自分1人では判断しかねるものが出てきた為周りを見渡し聞ける人は相手だけだと判断すると、 「 先輩、この書類なんですけど …、 」 と相手のデスクに行き横から声をかけて。 )

（　 仕事に集中していると相手に関して何も考えなくて済むので、いつもに増して真剣に仕事に取り組み。この調子で昼休みまでノンストップで仕事に集中しようとしていたが、今一番会いたくない人から話しかけられ。真っ直ぐに前だけを向いて横目でチラリと相手の方を見ると、手に持っていた書類を黙って受け取り。赤いペンを取り出すと要件や決定事項諸々を書き込み、押し付けるように相手に返し。そろそろお昼なので社食にでも行こうと思っていたが、相手に会ったことで予定が狂う。どうしても相手のことを意識してしまい、忘れようとしていた口付けのことも再び鮮明に思い出してしまい。相手の声を聞いて、顔を見て、それだけで変に意識してしまって意識とは反して鼓動が勝手に煩くなる。… しっかりしろ、と自分に言い聞かせて 「 赤で書いたように進めれば大丈夫 」とだけ告げ、一向に相手の方を向こうとはせず。　 ）

ありがとうございます。 … 先輩、大丈夫ですか ？、 調子悪いとか … あ、俺甘い飲み物買ってきますよ、 ( 話しかけても自分の手から書類を取ってまた返されるだけで、丁寧に書いてくれたは良いものの全くこっちを見ようとしない相手を不思議に思い、相手の横にしゃがむと顔を覗き込む様にして様子を窺って。 いつもなら悪態ぐらいついてくるのに、もしかしたら体調でも悪いんだろうかと心配になり、相手の好きなものを飲んだり食べたりすれば調子も良くなるのではと考えれば小声で伝えて。 ここまで顔を見てくれないとなると自分が嫌われているのでは、なんてことは想像したくないからか、その選択肢は心の内に沈めて。 )

… 大丈夫、体調は悪くねぇよ。その証拠にちゃんと食欲もあるし、取り敢えず昼飯食ってくる。（　 質問されないように丁寧に描いたので、相手も直ぐに去って行くだろうと思えば顔は更に近くなっていて。覗き込むようにされれば嫌でも目線は交わり。本当に心配してくれているのか、極力他人に甘い物が好きだと知られたくないことを気遣ってくれているのか、小声でどちらにせよ心配した様子で問いかけられ。さすがに心配をかけるのは申し訳なく、否定するところはしっかりと否定を。相手が移動するよりも自分が動いた方がこの空間を抜け出すには早いと思い、社食に行くことに。心配してくれたことは有難いので、一応軽くお礼を言った後に立ち上がり。上記を告げれば一人で社食に行くために歩き出して去って行き。　 ）

あ、 … 避けられてんのかな、 ( 体調は悪くないし食欲もあるとの事だったので、やはり残された答えは自分。さっさと席を立ってしまう相手を目で追い上記呟いては、昼飯と言って去って行くので時計をみるともう昼の時間。 ハッとして自席に戻り、資料を置いて財布とスマホと朝買っておいた昼食とを持つと足早に相手を追いかけて。昼飯と言っていたが、コンビニか、外か、社食か分からず眉を顰めながらも相手を探して。 早足でコンビニを見渡していなかったので、社食へと足を運べば相手を見つけて。が、人が多く近付けず、とりあえず相手がここにいるなら食事をするんだろうし、相手が1人なら一緒に食べている間に避けられている理由でも問いただせるだろう、と相手に近付こうとすると、部署が違う友人に声をかけられ話が弾み、時折相手を見失わないように探すも、見失ったり見つけたりを繰り返す。 一声かけて友人に別れを告げ、見失いつつも何とかして相手に近づけば、 「 先輩、見つけた、 」 と相手の前に立てば安堵したように微笑んで。 )

… 、見つけたってお前な … 。んだよ、書類の件なら済んだだろ ？（　 相手から逃げるように社食に駆け込み。嫌いになったわけではないが、相手を見ると心がモヤモヤして苦しくなり。何でかは自分でも分からなく、その胸の苦しさを抱えたまま社食の列に並び。美味しいことで有名なランチメニューを頼むと、空いている席をキョロキョロと探し。やっと角の方に空いている席を見つけて歩き出すと、人をかき分けて今の悩みの種である相手が現れ。はぁ、と分かり易く溜息を一つ。書類の件なら丁寧に書き込んだし、質問もされなかったので片付いたはず。見つけた、という言葉から自分を探していたことは分かり、なんのために探していたのかと上記を問いかけ。せっかく空いた席を見つけたので、一先ずその場へ行って席に座り。　 ）

そうじゃなくて、 … お昼、一緒に食べませんか、って言おうかなって。 ( 書類を渡した時に感じた相手と自分との距離感は今も変わっておらず、せっかく仲良くなれたと思ったのに、としゅんとなるも、元々なんのために来たかといえば相手と一緒に昼食を取りたいが為で、顔を上げれば自分の手にある袋を掲げていつもより力なく微笑むと。 相手が座った席の前に遠慮がちに腰をかければ、相手との間に生まれた謎の距離のことで頭がいっぱいで、自分が何かしてしまったんだろうかと悶々として知恵熱でも出そうな勢いでいるが、やはりここは本人に聞こうと顔を上げ、 「 お、俺、何か悪いことしましたか …？、 」 と恐る恐る問いかけて。何だか昼食に手を伸ばす気になれず、目の前の机の上に置いたビニール袋に手がつかないまま。 )

悪いことなんてお前は何もしてねぇよ。（　 寂しそうで、不安で、どうしたらいいか分からなくて … そんな相手の表情を見れば断れなく。特にいいともダメとも言わず。目の前に相手が座ると、やはり不安げな顔をしていて。相手は決して何も悪いことをしていない。自分の意志とは反して、相手のことを考えたり見たりすると勝手に心臓は煩くなり。… 相手に押されすぎて好きになってしまったことを自分で認めたくなくて避けていただけ。どうしようもなく苦しくて、自分でも分からなくて。相変わらず言葉を並べるのは下手で、気の利いた言葉をかけられないまま必要最低限の上記だけを告げ。相手のこんな表情が見たかったわけではない、心配させたなら謝りたい、いっそのこと少しだけ好きになってしまったま話してしまいたい。だが、不器用な自分は何一つ出来なくて。　 ）

じゃあ、ッ… 、 … 今日は、失礼します、 ( じゃあなんで、と思わず声を上げてしまいそうで、ハッとして周りを見れば人気の社食だから人はいっぱいいて自分の大きな声は響かずとも自分たちの周りの社員がちらりとこちらを見ているのが分かり、言葉を飲み込む。 やる瀬ない気持ちがどうにも落ち着かず、まともに話せない気がしたので立ち上がると雑に袋を手にしてその場を去って。 振り返る事はせず、真っ直ぐ自分のデスクに戻り食欲がない為昼食を置いて、1人になりたい気分だったので空いている窓の少ない会議室に入ると椅子に座り机に突っ伏して。 時計の音が響く中、どうしてこうもうまくいかないんだろうか、好き好き言いすぎたんだろうか、それとももっと他にも何か、なんて同じ事を何度も考え答えに至らず力なく項垂れて昼を過ごす。 )

（　 相手の顔を見るのが怖かった。正式に言えば、単に勇気がなくて逃げただけ。去って行く相手を止めることなんて出来なくて、そんな資格は自分にはなくて。相手が去ってから暫くすると、同僚が来て一緒に昼を食べようと誘ってくれ。話してくれる内容が全く入ってこなくて、食欲も一気になくなり。詰め込むように昼食を食べ終わると、やはり気になるのは相手のこと。どんな言葉をかければいいか分からないが、咄嗟に足は相手を探そうと走り始め。屋上、喫煙室にデスク、色々な所を探しても相手の姿はなく。諦めてデスクに戻ろうとすると、この時間は使われていないはずの会議室から光があり。少しだけ覗いてみると相手の姿が。勝手に避けていたことを謝りたくて、会議室へ入り 「 … 三好、」と声をかけ。　 ）