ありったけの砂糖を貴方に　/　〆

ありがとうございます …、でもそんなに卑下しないでください、先輩は素敵な人なんで。何やかんやで俺の事フォローしてくれて、嬉しいです。 ( 長所、と言ってくれたのはいいが続く相手が卑下する言葉に首を振って。こうして何だかんだ褒めてくれたり、何となく遠回しに慰めてくれるところに相手の優しさが垣間見え、それが嬉しくて顔が綻ぶ。 相手との予定が決まれば元気よく肯定の返事をし、完全に浮き足立っていて。そんな嬉しさも束の間目の前にある現実という仕事の山にため息しか漏れず、同僚に肩を叩かれたり菓子を置いていかれたり、励ましは嬉しいが、もしかしたら今日の夜の約束に間に合わないかも、なんて更に落ち込んでいて。やらなくては、でも今日中に終わるのか。そんな葛藤をしながら資料とにらめっこしていると、ふと半分ほど消える山積みの資料。席を立ってその行く先を見ればそれは相手の手にあり、こちらの返事を待たずに持って行ってしまう。お礼はキスだとか馬鹿げたことを言ったのにも応えてくれたにも関わらず、またお礼だなんて言って仕事を手伝ってくれて、どれだけいい人なんだ、と感無量になれば、相手に届くように、 「 ありがとうございます … ！、 俺からのお礼はガトーショコラです ！、 」 と大きめの声で言う。相手は確か今日行く店のガトーショコラがいいとか言っていたのを唐突に思い出し、嬉しさのあまり思い切りで言ってしまい。 )

… 俺のことをそんな風に言うのお前だけだよ。（　 素敵な人なんて言われたのは初めてなんじゃないか。相変わらず褒められるのは慣れてなくて反応がぎこちない。戸惑って上手く反応できないが、相手が嬉しそうなので多くは語らず上記だけを。やっぱり相手は変わってる、なんて思い。きっと相手のことだから、仕事を手伝うと言ったら遠慮をすると思って敢えて返事は聞かず。早速厄介な後輩の仕事の手伝いを始めようかと取りかかると、大声でお礼を言われたりガトーショコラと言葉に出したりするので 「 …… うっせえ ！！！ 」と周りを気にせずに少し振り向いて相手に大きめの声で返すと睨みつけ。相手に対してのイライラをタイピングにぶつけて、黙々と作業を。何年も同じ会社で同じ部署に居ると流石に仕事も早くなってきて、最初の頃は自分もこんなミスをよくしたな … と懐かしさも感じつつ。お昼に買った甘めの缶コーヒーを飲みながら集中力には自信があるので一気に片付け。淡々と仕事を進めていると漸く終わり、ぐーっと伸びをして時間を見ると定時を少し過ぎていて。眼鏡を取り目薬をさして目を休憩させてから、相手の元へ行き、無言で終わった大量の資料を雑目に置く。お礼を言われると慣れなくて恥ずかしいので、最初と同じように相手の返事を聞かずに足早にデスクに戻る。自分から後輩の手伝いをするなんて初めてで、咄嗟に手伝いをしてしまったが、どういう風の吹き回しなんだと自分自身が一番謎で。　 ）

… 俺だけで十分ですよ、 ( 自分だけ、というところに優越感を覚えずには居られず、嬉しさもあるがこれを自分じゃない他人に、しかも女性に言われたとなれば相手はそちらに気持ちが行ってしまうのではないか。そんなことなら相手の素敵な部分を知らなきゃ良いのに、と思ってしまう自分がいて、ぼそりと上記呟いては。 案の定相手は睨みつけてきて、怒声も挙げていて。勢いあまりすぎた、と反省するもやはり何も言わずに仕事を手伝ってくれるなんて嬉しい。俄然やる気が出てきて、テンポよくキーボードを叩く。気付けばかなり集中していたのか、終わった、と思えば少し外が暗くなっている程度で、自分のデスクに顔を戻せば先程相手が持って行った半数ほどの資料。こんなにはやく終わるなんて、と感心するが、その相手はどこにいるだろうか、とりあえず溜まった資料を片付けようと資料室へ、と立ち上がると、相手は相手のデスクのところにいて。資料を抱え相手の方の近付くと、 「 先輩、本当に助かりました、ありがとうございます。 … その今日遅くなっちゃいましたけど、 」 と頭を下げながら、今朝約束したケーキを一緒に買いに行くのは大丈夫だろうか、と相手をうかがって。 こんな時間になってしまったし、あとは資料室に置いておくだけで良いと言われているからすぐに終わっていけるが、まだ待っていてくれるかどうか不安が過ぎる。 )

お前ぐらいの物好きじゃないと、俺のことを " 素敵 " だなんて綺麗な言葉使う奴いねぇって。（　 俺だけで十分、という相手の言葉の趣旨が今の自分には理解出来ない。何を思って十分なのか、何で相手だけの必要があるのか。相手は俺だけで、と言っているが、自分のことを綺麗な言葉を使って褒めてくれるのは会社では間違いなく相手しかいなく。仕事面以外では人気が決して高い方ではないと思うので、相手を自分なんかを好きになってくれた物好きとし。デスクに戻ってからは帰り支度を進めたり、スマートフォンを弄ったり。そんなことをしていると資料を抱えた相手が。「 行くんだろ ? ケーキ。荷物持って行ってやるから、早く資料片付けてこい。下で待ってんぞ 」遅くなったが本当に一緒に買いに行ってくれるのだろうか、と心配していり様子が表情から直ぐに分かり。自分も今日は疲れたので甘いケーキが食べたく、もし相手から今日は帰ると言われても、帰りに一人でケーキを買って帰ると思い。ゆっくりと立ち上がり鞄を持つと上記を述べながら相手のデスクに向かい、相手の鞄を手に取り、先に下に言っていると伝えると去っていき。エレベーターに乗り込むと、一階のエントランスでぼーっと相手を待ち。　 ）

物好きとはよく言われますけど …、 もうそんなに否定的にならないでくださいよ ー！、 ( 良く物好きとは言われるが、これとそれとでは話が違って、と色々説明しようとするも、相手があまりに否定的なものだから音を上げて肩をがっくり落とす。 どうしてこんなにまで自分自身に否定的なのか不思議なくらいで、ここまで褒めて褒めまくってるのにいつまで素直に受け取ってくれないんだと残念そうな表情に。 「 …！、 ありがとうございます ！、 すぐ行きます ！、 」 もごもごしていると、相手の口から応えが返ってきて、嬉しさに顔をぱっとあげると足早に資料室へ。横目に相手が自分の鞄も持って行ってくれたのが見えると、優しいなぁ、好きだなぁなんて思い足取りが軽くなって。さっさと資料室での用を済ませ、そのまま一階へと下がるとエントランスに相手の姿を見つけ。駆け寄れば、 「 お待たせしました、荷物ありがとうございます。 行きましょう、 」 と相手の手から自分の鞄を取れば礼を一つ言って、楽しみなのかすぐに帰り道に向けて足を向けると。 )

… 褒められるのに慣れてねぇんだよ ! だからどんな風に反応したらいいか分からないっていうか … 。 （　 否定的もなにも自分は本当の事を言っているだけだ、と言いそうになるのを抑え。元からポジティブな方ではないのに加えて褒められるのに慣れていないこともあってつい否定的になってしまう。どんな風に反応したら正解なのか分からないと。エントランスに着けばやることも特になく、前を通る人に挨拶をしたりして。その後はスマートフォンを見たりしていると本当に資料を置くだけだったのか案外早く駆け寄ってくる相手の姿が。いつもに増して相手は機嫌が良さげで尚且つ足取りは軽いようにも見え。鞄を渡すと直ぐに向かってしまったので、足早に相手に追い付くと後ろに付いて歩く。会社は駅からも近いし、目当てのケーキ屋も駅から近いので少し歩けば見えてきて。相手と共に店内に入れば甘い香りが漂っていて、それだけで幸せに感じて疲れは何処かへ行ってしまいそう。仕事終わりで、スーツ姿の男二人がこんな可愛らしいケーキ屋に来るなんて周りからはどんな風に見えてしまっているのか。そんな事は綺麗に並んだケーキを見れば直ぐに忘れ、二人のお目当てであるフルーツタルトとガトーショコラはあったので一先ず安堵。相手のことはお構い無しにケーキを見たりして。　 ）

褒められたら、ありがとうの一言で十分なんですよ。 ( 相手の言葉に、人差し指を指をまっすぐ上に立てればそう言って。今まで幾度となく身長高くていいねだのなんだの言われて育ってきた為か、褒められて礼を一言言えばそれで十分なことを身をもって知っていて。 会社では上司に注意さえ受けた日だったが、今朝までの相手と過ごした時間といい今これから過ごす時間といい、なんだか気分がいい。と調子良く歩いてしまっていれば、相手より少し早く歩いてしまっていて、それに気付くと歩幅を小さくして。明るい店内を見渡せば、並ぶいくつものケーキと、漂う甘い香り。ふと相手を見てみれば、じっと真剣にケーキを見ている。後ろから相手の眺めているケーキはなんなんだろうと興味を持って、 「 何見てるんすかー ？、 あ、フルーツタルトとガトーショコラはあるんすね。 ほかに欲しいのでもありましたか ？、 」 と問いかけてみる。 いくつか札の奥に並んでいないケーキもあったが、ほとんど残っていて。 ショーケースの中には目当てのケーキは残っていて安堵。 )

そんなもんなのか ? …… その、… ありがとう。 （　 何やら自信満々の様子なので、これ以上は自分は何も言えなく。褒められたから、ありがとうと自分が言うのは上から目線だと思われるんじゃないか、等の余計なことを沢山考えてしまい。だが、ここは相手の言う通りに先程褒めてくれたお礼をもごもごしながらも伝える。気を使って歩幅を小さくしてくれたり、小さな気遣いをしてくれる部分は感心していて。自分よりも年下なのにしっかりしてて偉いと思いつつ。大好きな甘い物を前にするとつい相手を忘れて見入ってしまう。並べられた綺麗なケーキを見ていると、後から問いかけられたので我に返り。色鮮やかにデコレーションされたケーキの中に、プレーンの生地にデコレーションは何もなしというシンプルなカップケーキが気になっていて。気になっているケーキを言うのは恥じらいを感じ、小声でぽつり「 … カップケーキ。ほら、早く買って行くぞ 」とだけ。これ以上ここに居ては自分のキャラが崩れてしまいそうなので、ケーキを買いに来たという一つの目的を果たすことを急がせ。　 ）

はい。 どういたしまして、です。 って、俺ありがとうって言わせるとか上から目線っぽいですよね、すみません …。 ( ありがとうと言われれば満足気に頷く。 が、歳下である自分がこんなことを言って良かったのだろうか、不安になりながらも相手の様子を窺って。素直に話を聞いて飲んでくれるなんて、相手とこうして話すようにならなければなかったかもしれない。少しは心を開いてくれてきているんだろうか、そうであってほしいと何度願っていることか。 「 ふーん、 あ、はい、 」 カップケーキと返答が返ってくれば、鮮やかなケーキのなかにシンプルなカップケーキとが見えて。それに相槌を打つ暇もなく急かされると、ちょうど目の前にいた店員に声をかけ、目当てものと、それと二つのカップケーキとを頼んで。仕事を手伝ってもらった際にガトーショコラと自ら言ったことを忘れておらず、財布を取り出せば会計を進めて。 「 先輩、ほかに欲しいものありますか ？、 」 念のため、甘いものが大好きな相手のことだから他にも買いたいものがあるのではないかと、振り返っては問いかける。 )

いや、お前が謝る必要はねぇよ。それに、いちいちそんなことで苛つかないし。 （　 褒められてお礼を言ったんだから、寧ろ自分の方が上から目線すぎたのではないかと思っていて。なので相手が謝る必要はないと。口は悪いが、そんな直ぐに切れたり苛ついたりはしないので、余程のことがない限りは大丈夫だと。最初の頃に比べて、飲みに行ったこともあってか相手と話すのも随分と慣れてきて。徐々に会話も気を許すようになり、今では特に良い意味で気を使わなくなったので話易く感じ。他に欲しいものはないのかと聞かれると、素直にカップケーキと言ってしまったが、後から考えると強請っているみたいで申し訳なく。自分が急がせたからか、相手は直ぐに目当てのものと次いでに自分が気になっいると出したカップケーキも頼んでくれ。今更ながら後輩に奢ってもらうなんて先輩として情けなく感じる。しかし、今ここで自分が払うと出ても払わせてくれるとは思えない。ここは相手の言葉に甘えて奢ってもらうことに。「 大丈夫。カップケーキまでありがとうな 」ともう一度ケーキを見渡してから返事を。会計を進めてくれる相手を後から見ながら待ち。　 ）

よかった …、 ありがとうございます。 俺が調子に乗ったときは怒ってるのかなーとか思っちゃって。( 相手はそれほど短気ではないということに安堵。今までも苛ついていたのかと不安であったが、単に口が少し悪いだけなのかもしれない、と相手のことが見えてきて。というより口に出してくれるようになったのか、と嬉しげに頬を緩ませる。 「 お礼なんですし、俺が出したいんでいいんですよ。 」 相手に礼を言われては首を横に振り、微笑んでは。手早く会計を済ませれば、ケーキの入った箱を持って相手の元へ。二つの箱のうち一つを相手に手渡そうとするも、これを渡したらこれで相手とはこの後もうすぐに別れて帰らなければならないんじゃないか、と気づいて。差し出した手前もう遅くて、一瞬固まるも視線を泳がせて再び差し出して。次はどんな約束ができるんだろうか、自分と相手にある共通点など僅かなもので、不安になるも悟られないよう微笑んでは。 )

… 今の明らかに嬉しそうな緩々な顔は苛ついたけどな。（　口が少し悪いし、冷たい印象を持たれがちの顔なので、怒っていないのに勘違いされることは多々あるので慣れっこ。何がそんなに嬉しいのか頬を緩ませる相手に対して、上記を冗談で述べ。「 ありがとな。食べたら感想聞かせてくれよ 」首を横に振っているが、二つも買ってもらったのでお礼はしっかりとしたくて、ケーキの入った箱を差し出されると受け取りながら改めてお礼を。いつものへらへらとした相手ではなく、何処と無くぎこちない微笑みに違和感があり。自他共に認める鈍感故に相手が何で固まったり、ぎこちない微笑みになったり、視線を泳がせたりするのか分からなくて。ここからは特別に約束もないので、少しの沈黙が続いてから お疲れ様、と帰りの挨拶を言うと店を出て昨晩から停めっぱなしの車を取りに行く為に再び会社の方へ歩き出し。　 ）

俺のこの顔は変わらないので勘弁してください …！、 ( 表情が緩んでしまったのは自分でも分かったが、割と相手の前では緩みっぱなしのこの顔を指摘されてしまっては眉を下げて肩をがっくり落とす。 「 もちろんです、 先輩がおすすめしてくれたものだから、絶対美味しいって思ってます。 」 また話す機会を作ることができたと内心浮かれているが、今このまま別れたら、あと2日話せない、と思うと妙に寂しさが襲ってきて。どうにかしたい、と思い、去り行く相手の手首を咄嗟に掴んでしまう。 掴んでから自分が相手を引き止めていることに気付き、何か言わなくては、と慌てて口を開く。 「 あの、連絡先 ！、 … 社内のしか知らないんで、個人のを知りたいなー、って。 せっかくなんで、ケーキの感想とかすぐに伝えたいし、 」 我ながら慌てたが提案としては筋が通っているのではないかと思いたい。ぱっと言った言葉だったが、前々から個人的な連絡先を知りたいと思っていたので良い機会だ。一旦落ち着いて言葉を並べるが、下心丸出しの問いかけに乗ってくれるだろうか、なるべく了承してもらえるよう理由を付け足して。 )

絶対って … 。ま、口に合えばいいけど。今回のが美味しかったら、また今度何かお勧めしてやるよ。（　相変わらず相手の表情の変化は見ていて面白く。自分も表情が豊かになれば … なんて絶対にないことを考えたり。絶対と根拠もないことを言うので呆れつつ。甘い物に興味を持ってくれる人は少ないので、興味を持ってもらったのが嬉しくて、また何かあればお勧めを紹介すると。帰ろうと思って歩き出すと、唐突に腕を掴まれたので流石に吃驚し。何かと思って振り向くと、連絡先が知りたいと。確かに自分も早くケーキの感想を聞きたいし、断る理由もないので 「 ん、これ。… じゃあな、また月曜日 」と言って、鞄からメモ帳とペンを取り出して連絡先を書いて相手に渡し。再び会社に向かって歩き始める。店からは近いので直ぐに会社に到着し、車に乗り込むと自宅に戻り。家に着くと相手から貰ったケーキを皿に移すと何よりも先にガトーショコラを食べ。口の中に広がる甘い幸福に、疲れはあっという間に何処かへ消え。一口一口をゆっくりと丁寧に味わいながら。　 ）

はい、お願いしますね。 ( また今度、という言葉を聞けば、相手は自分と話していて嫌な気がしないんだろう、それだけでも嬉しくて顔が綻ぶ。 「 … ありがとうございます ！、 すぐ連絡しますね、無視しないでくださいよ ー！、 」 手元に相手の連絡先が来れば嬉しそうに声をあげて。去っていく相手の背中に向かって大きく声をかければ、自分も帰ろうと駅に向かって歩き出して。電車に乗ってすぐに相手の連絡先を登録すれば、 “ 三好涼太です、今日はありがとうございました！、帰ってから食べるのが楽しみです。 ” とメッセージを送る。上機嫌のまま自宅に着き、ケーキは食後に、と冷蔵庫に丁寧にしまって。部屋着に着替え、適当に夕飯を済ませれば、いざケーキをと。箱を開け、艶のあるフルーツの乗ったタルトを大きく一口。程よい甘さが口の中に広がって、全くくどくない甘さに頷いて。すぐに食べ終わってしまっては、最後の一口を咀嚼しながら相手にメッセージを送るためにスマホはどこへやったっけ、と立ち上がり探す。 )

（　ガトーショコラもカップケーキも食べ終わり、部屋着に着替えてから放置していた鞄を片付けていると、相手からのメッセージが別れた直後に来ていたことに気が付き。後輩とメッセージをやり取りするなんて初めてなので、どんな風に送ればいいか分からなく。つい、仕事時と同じように “ 檜山です。こちらこそ、ケーキだけでなくカップケーキまでありがとうございました。 ” と堅苦しいメッセージを。次いでに相手が朝に言っていた菓子屋を明日にでも行こうと思っているので調べ。帰ってきてからケーキしか食べていなかったのでお腹が減ってきて、キッチンに立つと適当に夕飯を作り、食べ終え。一人暮らしなので態々風呂にお湯を溜めるのも面倒くさく、特にやることもないので夕飯後は直ぐにシャワーを浴びに。必要最低限のことだけ済ませると早々に出てきて、髪を乾かしながらソファに座る。テレビを付けると、美味しそうなケーキ屋の特集がされていて、興味がある店があったので立ち上がるとスマートフォンを手に取り。　 ）

ッ…はは、敬語、なんで、っくく、 ( まだ返事は来ていなかったのでシャワーを浴びてしまおうと、さっと浴びて帰ってきて。髪がまだ乾かぬままスマホを手に取ればメッセージが返ってきているのが見えると、上機嫌にソファへ座り仰向けに寝っ転がる。開いてみれば、まるで業務連絡のような文章に思わず吹き出して笑ってしまう。相手らしいといえば相手らしいのかもしれないが、流石に先輩からこんなメッセージが来るとも思わず笑ってしまって。しばらくして落ち着いてから返信をと思うが収まらず返事を。 “ 何でそんな他人行儀何ですか、（笑） さっきフルーツタルト食べました、すげー美味しくて秒でなくなりました。 俺あれぐらいならいけますよ！ また今度一緒に食べに行きたいです。 ” とりあえず報告をと先程食べた感想を送る。 次はまた居酒屋の時のように一緒に食べれたらな、なんて淡い期待も抱きつつ、相手からの返事を待って。 )

… じゃあ何て返せば正解なんだよ （　テレビで見た店を調べようとスマートフォンを手に取ると相手からメッセージが届いていて。見てみると、笑っている相手の姿が安易に想像でき。業務連絡以外に後輩にメッセージを送るなんて初めてなので堅苦しくなってしまったが、相手の反応が何となく悔しく。ガシガシと頭を掻きながら上記をぽつり。フルーツタルトが口に合ったことは嬉しいし、機会があればまた一緒に呑みに行ったりしてもいいが “ (｀_´) (怒) ” とだけ (笑) の返事として返す。普段顔文字なんて使わないが、今の自分の状態を表すために使用し。返信をするとスマートフォンを置き、テレビを消してベットに寝転んで趣味であるゲームを。甘い物が好きということは気が付けば何故か知る人は知っていたが、趣味はまだ誰にもバレてなく。熱中していると、布団が暖かくて気持ちよくなってきて、気が付けば夢の中へ。　 ）

ん？、 ––––…ッ、 これは、…反則だろ、 ( 相手からの返事が来る間、ほかの友人のメッセージでも返そうかとスマホを弄っていると、顔文字のみの通知が。誰だと思いつつ開いてみれば、先程全く他人行儀なメッセージをくれた相手からで、肘掛けに置いていた頭を力なく後ろに倒し、目元を覆って。怒っているのに顔文字付きで、とかそんなことを考える前に、ともかく降ってきた感情は、可愛い、の一言だった。あんなにも人前でなかなか笑わないし、キリッとしている相手が、業務連絡のようなメッセージを送って来ていた相手が、こんなものを送って来るなんて。急すぎて思考が追いつかない。とにかく落ち着こうと深く息をするが、どうやら治まる気配はなく、既読表示をつけたまま手が止まってしまう。しばらくしてまた深呼吸をし、改めて画面を見ると、怒っているのか分からないが、本気で怒っているのであれば顔文字なんぞ送って来るはずがない。そう思いたてば、 “ 怒らないでくださいよ、何に怒ってるんですか？ あ、まさかフルーツタルトも欲しかったとか！？言ってくださいよ、俺貧乏ではないですよ。 ” と冗談を交えて返信を。出来るだけ平常心を保とうとするが、どうにも顔が緩むのが抑えられない。 相手の返事を待ちながらスマホを弄っていると、だんだんと眠気が襲ってきて、そのままソファで眠りについてしまう。 )

＿＿＿＿ ま、ぶし … 、 （　休みの日なので目覚ましもセットせずにゆっくりと寝ていようと思ったのに、カーテンの隙間から陽の光が差す。元から酔っていない時は神経質の気があるので、それだけで直ぐに目覚めてしまい。とは言っても、普段起きる時間よりは多く眠ることができ、結果的には目覚めもよく。大きな欠伸を一つしてから身体を起こすと、寝落ちしてそのままだったゲーム機をベットサイドに置いてからスマートフォンを手に取る。相手からメッセージが来てたが、今更返事をしても迷惑だろうと思って既読だけ付け。他人行儀だと笑われた仕返しに、自分のキャラとは真逆の顔文字を使用し。相手はどんな反応をしたのか気になりつつ、ベットから降りて顔を洗ったりして。身支度が整うと時間があるので朝食をしっかり作り、ニュースを見ながら朝食を済ませ。今日は相手が言っていた菓子屋に行くつもりなので、皿洗いを終えると支度をし。普段はコンタクトだが今日は変装も兼ねて少し大きめの黒縁眼鏡に黒を基調とした大人っぽいシンプルながらお洒落な服装。ケーキ屋などに行っているところを知り合いに見られたくないので敢えて眼鏡にしたり、店内のお洒落な雰囲気を壊さないようにオシャレには気を使っていて。家を出ると車に乗り込み、目的の店まで車を走らせ。　 ）