牙は深淵に堕つ、≪〆≫

牙は深淵に堕つ、≪〆≫

吸血鬼  2018-06-27 00:10:52 
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森を訪れたとある青年は、狼に襲われ、逃げ込むように古びた屋敷へ足を踏み入れた。

しかしそこは、血を吸う鬼が孤独に住まう、呪われた屋敷であった――。


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  • No.36 by 吸血鬼  2018-07-02 21:04:37 



ああ、大丈夫……大丈夫、だ


(ハリーの手が頬に触れると、長年縁のなかったその温かみに、一瞬だけ驚いたように身じろぎする。医者を志す者のある種義務的なスキンシップなのだろうとは思うが、それでも淡白な性格の彼が自分の頬に触れてきたことには、顔には出さないものの驚いていた。大丈夫、と繰り返し答えたその言葉は、ハリーへの返答というよりも自分自身に言い聞かせているようで)


濃紺の長髪……恐らく、間違いないだろう。その女こそ、俺を此処に閉じ込めた張本人であり、この屋敷の真の主。今やこの屋敷そのものへと姿を変えた、凶悪な魔女だ。まさか、生前の姿で現れるとは……


(ハリーが覚えていた身体的特徴に、長い溜息を吐いた。脳裏によみがえるのは、絶世の美女というわけではないが、触れれば火傷し、存在ごと虜にされてしまいそうな、蠱惑的な色気を持つ禍々しい魔女の姿だった。実体か幻かは分からないものの、その姿をその目ではっきりと捉えてしまったハリーに、彼女の存在を隠すのは得策ではないと判断し、ハリーの質問に偽りなく答えて。この数百年間、一度たりとも彼女が姿を現すことなどなかったので、それをハリーが見たという事実はにわかに信じ難く。そしてふと思ったのが、ハリーが彼女の存在を深く知ろうとした、ということだ。淡白な性格で人の事情に深入りしない男、というイメージを彼に持っているラザロにとって、ハリーがその女に興味を持ったことが印象的だった。だがまあ、自分に危害を及ぼす存在やもしれぬ謎の女性のことを知っておきたいというのも、防衛反応の一つであるかと一人勝手に納得して)

  • No.37 by とある青年  2018-07-02 22:11:37 


あぁ、ごめん。つい癖で…

(ごく自然な動作で彼の頬に触れてしまい驚いた様子をみてようやく自分からスキンシップをとってしまっている事実に気づく。急いで手を離すも、大丈夫だと繰り返す彼を落ち着かせるように背中を軽く撫でた。一体何をやっているのだろうか。他人に深入りしないとあれほど誓ったはずなのに、彼を放っておけない自分がいた)

魔女…また凄いのが出てきたな。生前、ということはもう死んでいるのか。彼女が君と僕を閉じ込めている元凶…それで君は彼女に対して怒ってたのか。君、彼女に何かしたの?

(寝ぼけ眼でみた彼女はそれほど凶悪そうには見えなかったが、自分がここから出られない原因は彼女にあるらしい。こんな屋敷を作り出しある程度の力を持つラザロを閉じ込めた上、死んでも幽霊のように姿を現すとは、彼女も相当な力を持っていそうだ。ここまで聞いてしまえばもっとラザロと彼女の関係が気になってしまう。それは魔女の情報からラザロのことを知りたいという欲求の現れだったが、ハリー自身それには気づかずにいる。無意識のうちにハリーは彼のことをもっと知りたいと願っているのだった)

  • No.38 by 吸血鬼  2018-07-02 23:13:58 



謝ることではない。……存外冷たいわけでもないらしいな


(無意識下での行動であったことに、ラザロは微笑とともに気にするなと告げる。困っている者や弱っている者を放っておけないたちなのだろう、そんなハリーを冗談交じりに軽くからかって)


穏やかな死を迎えたわけではなかったがな……。俺に非があるとするなら、魔女と出逢ってしまったことだ。言っただろう、お前も俺も不運だったのだと


(もう死んでいるのか、との言葉に、魔女が命を擲った真相の記憶がよみがえり、少しだけ眉をひそめて嫌悪感をあらわにした。自分が魔女の杖を盗んだり、魔女のことを誑かしたり、“悪いこと”なんて一つもしていなければ、こちらから能動的に魔女へ関わりを持とうとしたことすら一度もない。いわば一方的にこの状況に追い込まれた現状を、昨日と同じように不運だと表現して)

  • No.39 by とある青年  2018-07-02 23:36:04 


ははっ、まぁ僕の悪い癖みたいなものだよ。他人と関わりたくないなら他人に優しくしなきゃいいのに

(彼の柔らかな笑みを見るとこちらの顔にも笑みが浮かぶ。自分のことを客観的な視線で評価しつつ、これじゃあダメだと首を降っていて。実際この屋敷に来てから調子は狂いっぱなしだ。強制的に共同生活を強いられているせいか、それとも、ハリーが感じた通り彼とうまがあってしまうせいなのか…どちらにせよこのままでは長らく息をひそめていた感情が溢れてしまいそうだ)

あぁ、ごめん。そうだ…君も不運で閉じ込められたんだったな……なぁ、本当に君はこの屋敷に閉じ込められたことを不運だと思ってるのか?だって君は…血を飲まずに断食して、死のうとしてるんだろう?それなら、こうやって1人でいれる空間はひっそり死ぬには最適だ。僕も…ここで1人閉じ込められて全ての関係を遮断できたら…まだ未練はあるけど、でも…1人で死ぬっていう願いは叶えられる

(先日聞いたことをまた質問してしまったと手をひらりと返して謝罪した。彼が内心別のことで気分を悪くしていることには流石に気づかない。だが、そこでふとした疑問が浮かぶ。彼の中にある矛盾のようなもの。閉じ込められて憤っているのになぜか断食を選択している。死のうとしている。閉じ込められたことは確かに不運だが、死のうとしているのならば理想の場所ではないか。もしここに閉じ込められたのが彼ではなく自分だったら…医者になる夢はまだ捨てられないが、過去とは完全に断絶することができる。それはそれで、理想ではないかと暗い天井を見上げて)

  • No.40 by 吸血鬼  2018-07-03 00:01:53 



……案外、深層意識では真逆なのかもしれないな。無意識下で他者との繋がりや温もりを求めているから、本能的に人へ温かく接しているのかも。与えよさらば与えられん、と言うしな


(自分の行いを反省するかのように首を振るハリーを眺めつつ、ふと頭に浮かんだ何の根拠もない仮説を述べる。もしかしたら彼は、自分で言うほど一人が好きなわけではなくて、ある程度誰かとの繋がりに飢えているのではないか、と。それが当たっていようがいまいが、ハリーの持つ優しさは先天的なものであることに、疑いはなく)


そうだな……もし今、俺がこの屋敷に囚われず自由の身であったならば、より美味い血を求めて旅をし、使い魔たちと名実共に満たされた日々を送っているだろう。この屋敷には、死ぬことしか残されていないんだ。出来ることならば……夜風を感じ、仄かな月明かりの下で、悠々と生きていたい


(確かにここは、死ぬには最適な空間である。だがラザロが緩やかに死へと向かいつつあるのは、決して彼の本意ではなく、間違っても死にたいわけではないことを説明して。ふと応接間の分厚いカーテンに触れ、少しだけそれを捲って遥か遠くに鎮座する月を見上げながら、同じくらい遥か遠くに位置する今はなき自由へと想いを馳せて)


…………そうか。だが生憎、その願いは叶えられんな。俺はこのまま何も口にしなくても、少なくとも人間のお前よりは長生きする。お前が望まずとも、俺が最期を看取ることになるよ、ハリー


(ハリーが、この屋敷に閉じ込められたことに少しでも前向きな姿勢を持ったことに驚きながら、深く頷く。彼もまた、心に深い傷を負っているのだろう。そのことについて気になりつつも、今は彼の過去を探るより、どこか悲しそうな様子の方が気がかりだった。彼は一人で死にたいと言うが、果たして本当にそれが心の底からの本音なのだろうか。そう思いを巡らせつつ、もう一つ気になるのは、彼が未練と口にした夢のことだ。人との繋がりを断つことは本来簡単なことではないが、彼はそれをあっけらかんと達成している。そんな執着心の薄そうな彼がそこまでしがみつく夢なのだから、よっぽど大切な夢なのだろう。そしてその夢は、この屋敷の中では叶えられない。ラザロは少しずつ、本当はこの屋敷からハリーを解放してやれる方法が一つだけあることを打ち明けようかと悩み始めていて)

  • No.41 by とある青年  2018-07-03 00:35:48 


___人との繋がりなんて、温もりなんて…もうたくさんだ。どうせ無くなるものなのに。どんなに強く結んでも、簡単に途切れる。無意味だよ

(自分の奥底に眠った願いをズバリ言い当てられ、ハリーはしばし固まった。そして瞳から光を失わせ自分に暗示をかけるように呟く。だが自分に言葉を突き立てる度に過去の記憶がポツリポツリと浮かんで弾ける。ハリーは今ラザロを見てはいなかった)

…死ぬしかないから、死のうとしてるのか。もっと理由があるかと思ってたけど、何百年も閉じ込められてたらそう思うのが当然か。…なぁ、本当にここから出る手段はないのか?この状態を作ってるのはあの魔女なんだろ?魔女をなんとかすれば僕ら二人とも出られるんじゃ…

(人との繋がりを否定してもまだ過去は捨てきれない。彼だって本当は外に出ることを望んでいる。そして今ハリーというイレギュラーな存在が屋敷にあり、魔女は姿を現した。具体的にどうすれば良いかなどは分からないが原因が分かっているのならばなんとかなるのではないかと僅かな希望にすがってみる。それは同時に過去の約束にすがることを意味した)

……君は必ず僕のあとに死ぬ?どんなことがあっても必ず?僕の方が先に?君は…君なら、僕を置いていかないのか?

(だが直後ラザロの言葉に体が固まった。昨日言われた時から分かっていたことではある。だが彼本人から直接言われるとハリーの中に押し込められた本音が弾けた。自分の最期を必ず看取ってくれる、自分がベッドの傍らに立ち冷たくなっていく体をみる必要はない。それが確約されていることがどんなに幸せなことか。声が震えて呼吸が荒くなる。ここから出ていきたいと願ったばかりなのに、この屋敷に住み続ければもう二度と大切な人を失う経験をしなくてすむ。ハリーの心は激しくゆれていた)

  • No.42 by 吸血鬼  2018-07-03 01:06:50 



本当に無意味だと思っているなら、お前がそんなに哀しい顔をするわけがない。手に入らないものほど、自分の心を惹きつけることもある。お前に本当に必要なものは、否定でも忍耐でも孤独でもなく、確かな温もりだと、俺は思う


(ずっと目を見ながら喋ってくれていたハリーが、自分から視線を外しみるみる光を失わせていく様を見て、ラザロはなぜか胸に痛みを覚えた。彼が悲しそうな顔をしていることが、どうしようもなく自分をやるせなくさせた。自分に言い聞かせるように言葉を並べるハリーへ、今度はラザロが手を伸ばした。冷たい指先がハリーの頬へ触れる。穏やかな声音で紡がれた言葉は、然してその場しのぎの綺麗ごとなどではなく、ラザロの本心で)


魔女の呪いに立ち向かう……俺も最初は同じことを考えたよ。だがすぐに、この屋敷の中では無意味なことだと思い知らされた。ここは云わば魔女の体内で、魔女の支配する領域なんだ。火を放ち、屋敷を焼き尽くせば外に出られると思い実行したが、無駄骨だった。ならば生きている意味はないと、意を決して自害しようとしたが、その意志が魔女に伝わってしまって、屋敷の方にそれを阻まれた。俺にはもう、選択肢は残されていない。……が、お前一人だけならば……ここから出してやれる方法は、ある


(魔女をどうにかすれば、というハリーの提案に、ラザロは自嘲気味に笑った。少なくとも人間であるハリーよりは、物理的な力も特殊な力も強いラザロが手を尽くしても、魔女の呪いの顕現物であるこの屋敷には敵わなかった。そもそも、魔女の目的はあまりにも明確だ。それは、ラザロが死ぬまで永久にこの屋敷へ閉じ込めておくことであり、その強力すぎる呪いの効力は、きっとハリーにまでは及ばない。ならば、彼を屋敷から解放する方法には、一つだけ心当たりがある。喜ばしい内容のはずなのに、それを告げるラザロの表情はどこか陰っていて)


――……。ああ、ハリー。俺がお前を置いていくことはない。大丈夫だ、大丈夫……


(取り乱した様子のハリーの言葉に、心の中で大体の事情を察したラザロは、彼の心の痛みに思いを馳せた。大切な存在に先立たれる痛みはラザロには解らないが、それはきっと自分の半身を裂かれるようなものなのだろう。冷静で肝も据わったハリーをそこまで乱させるのだから、ラザロはいたたまれなくなり、そっとハリーにハグをした。安心させてあげられるように、まるで親が子どもを寝かしつける時のように優しく背中をぽんぽんとゆっくり叩いて)

  • No.43 by とある青年  2018-07-03 10:37:08 


違うんだラザロ、人との繋がりや誰かと一緒にいることなんて、いくらでもできる。でも…手に入れても、すぐになくなってしまうんだ。僕の指の間から、漏れて、崩れて、消えてしまう

(彼の手が頬に触れる。体温のない手がひんやりと心地よかった。そしてポツリポツリと言葉を紡ぎ出す。手にしてしまったらいつか失ってしまう。その度に心を痛める。それならば最初から持たなければいい、それがハリーの行き着いた答えだった。だが本当に必要なのは、彼の言う通り他人からの温もりなのだろう。実際今、ラザロと目を合わせたら色々なものが溢れそうだった)

っ、…ラザロ、僕は…______ラザロ、僕は、もう…大切な人が冷たくなっていくのを見たくない…君が、君なら…僕と、ずっと……

(ふいにハグをされ、反射的に体を押しのけそうになった。これ以上はまずい。昨日した線引きの意味がなくなってしまう。しかし、ラザロの体は冷たいのに、背中に腕を回されてそばにいるのが分かると、胸が暖かくなる。気持ちのこもったハグをされるのはいつぶりだろう。背中を優しく叩かれる度に心身の緊張が解けていくようだった。そして口をついて出てしまった奥底にしまい込んだ願い。それを口にした途端に感情が溢れて嗚咽が漏れそうになり思わず口を手で塞いだ)

…ごめん、ちょっと…取り乱した。話しを戻そう。魔女は君が自害するのも妨害するのか。魔女の目的がわからないな、君を閉じ込めたいのに死なせたくはない……それと、僕だけ出られるっていうのは、どういう意味?あんまり…良い策ではなさそうだけど

(口を塞いで様々なものを飲み込んだあと深く呼吸をして努めていつも通りに振舞おうとする。魔女は彼を幽閉するのに殺さない、まるで鳥籠の中にいる飼い鳥の命を弄ぶようだと思う。そこまできてふとひとつの考えがよぎる。もし愛しいものをずっと手元に置いておきたいのなら、あらゆる外敵から守り、ずっと目をかけられる位置に置くなら…鳥籠が1番じゃないかと。その可能性に行き当たったが、まずは彼の話しを聞いてみよう。自分だけがここから出る方法…ラザロの顔は曇っていて無意識に彼の心臓の位置に手を置きながら、チラついた外へと出る可能性を問うてみて)

  • No.44 by 吸血鬼  2018-07-03 11:38:58 



……それは、例の人間が薄命であることと関係があるのか……?


(ハリーが心の底から恐れるのは、人間関係そのものではなく、築き上げた関係を一方的に失ってしまうことなのだと知り、ラザロは一層悲しげな表情を浮かべた。人間はすぐに死ぬ生き物だとハリーの会話の中で知ったばかりで、ハリーは過去に大切な存在との死別を経験しているのだと内心で確信にも似た推測を持つ。彼の傷を抉りたくはないが、それよりも、彼の気持ちをより深く知り、痛みを知ったうえで傍にいてやりたいという気持ちが勝って)


…………いい、無理に喋るな。辛かっただろう……、お前はよくやっているよ


(絞り出すように言葉を並べ、これ以上感情があふれ出すのを躊躇った様子のハリーに、これ以上は喋らなくてもいいと優しい声音で告げる。彼から身を離したが、自分はどこへも行けないから大丈夫だと言わんばかりに、今度は彼の頭を数回撫でて)


ああ、気にするな。……俺が初めて魔女と会った時、それは紛れもない偶然だった。その場で俺は、魔女に求婚されたんだ。だが当然、それを突っぱねた。それ以来、魔女に付きまとわれることになったが、その度にうまく躱して逃げていた。そうしている内に数十年が過ぎ、俺は久しぶりに人間の女の血を飲んだ。それを魔女が目撃した途端、激昂した……あれはとても、嫉妬深かったんだ。魔女はその場で自分自身と俺に呪いをかけ、その代償として命と肉体を捧げた。その呪いが屋敷を形成し、俺を中に閉じ込め、誰も俺に接触できないように孤独の呪いもかけた。魔女の意識は、未だこの屋敷にあるのだろう。だから俺はこの中で自害することも、抵抗することも出来ない。ここから出る方法が死しかなく、自害できないのなら、血を一切吸わずに緩やかに餓死するしかない……それが事の顛末だ。だが言った通り、この呪いは俺を一生閉じ込めておくための場所。俺が**ば、呪いは解けるだろう。だから……お前が俺を殺せば、お前だけは屋敷から解放される


(ぽつりぽつりと、真相を話す。魔女との出会い、そして一方的に魔女に魅入られてしまったのが究極の不運であり、魔女は異常なまでに嫉妬深かったのだと。昨日の手記に、“もしハリーが女であれば殺されていた”と書いたのは、そういう意味だった。こうなってしまえば、ハリーがこの屋敷に入れてしまったことも、偶然ではなく魔女の思惑だと言えるのかもしれない。ラザロを餓死させたくない魔女が、男の血ならいいだろうと、ハリーを屋敷へ誘導したのやもしれない。だがそれより重要なのは、ハリーをここから解放してやれると思われる方法のこと。ラザロは心臓のあたりに温かい体温を感じながら、恐れも躊躇いもない目でハリーの瞳を見つめて)

  • No.45 by とある青年  2018-07-03 15:50:11 


…僕の両親は僕の幼い頃に交通事故にあってね、父は即死で母は死ぬ直前の3時間だけそばにいることができた。それから…僕は家で1人だったけど、僕のそばにいてくれた奴がいた。あいつは家族以上だったよ、今だから言えるけど。毎日くだらないこと話して時々喧嘩して…いい時間だった。でも…彼は重い病にかかった。余命1年って宣告されてさ、必死にいろいろ…医者のところを回ってみたけど、ダメだった。僕の力が足りなかった。あいつが少しずつ弱っていくのは…少しずつ死んでいくのを見せられてるようだったよ。結局僕は…彼を救えなくて…あいつは自分と同じ病にかかった人を治せる医者になれって…勝手だよな、僕は医者になる気なんてなかったのに。でも、僕は…あの時のあいつを救いたくて今も医者を目指しているんだ。

(彼は自分の過去を話した。それならばこちらもいい加減この矛盾した性質を説明する必要があるだろう。頭を撫でられるのが心地いい、子供扱いのようなのに…だがそんなふうに自分を受け入れてくれるのが嬉しかった。そしてゆっくりと語った過去、未だにそこから動けないでいる自分のこと。今更医者になったって、あいつが戻ってくるわけじゃない。それでもあの時のあいつを救えるように医者になる。それはハリーにとって約束でもあり呪いでもあった。ハリーの心はあいつが死んだその時から動いていなかったのだ。この屋敷に来るまでは)

…君もなかなか壮絶な過去を持ってるみたいだな。君がここに閉じ込められたのが不運だと言った意味がやっと分かったよ。見初めた相手を永遠に自分のものにするために監禁か、迷惑な話だ。そして…もし君に出会った直後にこの話しを聞いてたら僕は君を殺して出ていく選択をしたかもしれない。でも…僕にはそんなことできないよ。彼女のご機嫌をとることってできないかな

(自分の過去を話して少し重荷が降りたのか彼がここに閉じ込められた経緯を聞いて苦笑が漏れる。どうやら鳥籠の予想は当たっていたようだ。そしてこれまで繋がらなかった様々な事情が飲み込めてくる。だが魔女の思考がまったく分からないわけでもない。もし大切な存在をあらゆる脅威から守り保護することができるなら、鳥籠の中に閉じ込めたいと思うもかもしれない。永遠に2人の時を過ごす…悪い話じゃない。しかし本人はこんなにも迷惑しているようだし、愛しい人が外に出たいと願うなら、ハリーは外に出してやるだろう。そして自分だけが屋敷を出る方法は即座に無しだと首をふった。過ごした時間はあまりにも短いのに、ハリーはラザロに自分の過去まで吐露してしまったのだ。なぜ彼なら話せたのかは…分からない。幽閉された彼に同情してしまったのか、あるいはいとも簡単に自分の本音を言い当てられてしまったからか、彼が自分の傍からいなくならない存在だと知ったからか…いずれにせよ、彼を殺すという選択肢はない。魔女にお伺いでも立てるかと冗談めかして笑い)

  • No.46 by 吸血鬼  2018-07-03 16:22:36 



…………そう、だったのか。死に至る病、か……それで医者を志したんだな。それが、俗世への未練でありお前の唯一の夢か。俺としては、誰かの為ではなく、自分の為に夢を追って欲しいところだが……これはお前の問題だ、俺が横槍を挟むことではないな、すまない


(二度も大切な肉親を亡くし、そして目の前で命の灯が消える瞬間を見せられれば、トラウマにもなろう。吸血鬼は人間と比べて親兄弟の概念が薄く、ラザロ自身も誰か特定の存在に入れ込んだことなどなかった為、ハリーの気持ちを完全に理解してやることは出来なかった。価値観の違いに、どうハリーに言葉をかけていいか悩んだが、それでもラザロが一つだけはっきりと思っていることを伝える。このままでは、ハリーと死別した彼の絆は呪いのまま終わってしまう。それで形だけ医者になったとて、彼は戻ってこない。待っているのは空虚な結末だけなのではないかと危惧するが、それもハリーの人生か、と、あくまで彼の選択を慮って)


ふ……、だろうな。尤も昨日の段階ではこの話をするつもりはなかったし、いくら飢えて弱っているとはいえ、人間に殺される気はしないが。……お前の正体が聖職者や吸血鬼狩りなら話は別だがな


(冗談ぽく笑うハリーにつられるようにして、ラザロも微かに吐息混じりに笑った。ラザロがこの話をしたのは、ハリーが自分を殺せないと考えたからではなく、もしも彼が心から望むのであれば、自分の命を擲ってでもハリーをここから出してやりたいと思ったからだ。だが彼にはそのつもりはないらしく、念のために弱点はまだ秘密にしておこう)


この屋敷内で起こることの全てを、あれは知覚しているだろう。あれの機嫌を取りたいのであれば、俺が諦めてあれのものになると宣言するか、あれの思惑通りにハリーが俺に血を捧げるか……その二つしか選択肢はないだろうな。唯一幸運なのは、あれが肉体を捨てたことだ。おかげで俺達に直接干渉してくることはないだろうが……油断禁物だな


(魔女を懐柔できればどれほど楽だったか、とラザロは溜息交じりに話し始める。そもそも自分の命を捨ててまで相手の意思を無視して監禁にまで踏み込む女だ、一般常識が通用する相手ではない。道徳や美徳云々も、一笑に付されるだろう。既に死んでしまっているため、金や美食での交渉の効果も見込めない。だが、肉体がないことがこちらにとってメリットとして働く場合もある。ただ、屋敷そのものが魔女であるという現状に変わりはないので、慢心すべきでないとラザロは目を伏せた)

  • No.47 by とある青年  2018-07-03 19:46:47 


謝るなよ。僕もこのまま医者になったって、得るものはないのは分かってる。でも僕の夢か…難しいな。僕だけで成り立つ夢は残念だけどもってなくて。僕は今のところ死んだあいつに生かされてるんだ、腹立つけどさ。

(人はいずれ死ぬ、それも簡単に。それを嫌というほど分かっているし、その理に逆らおうとも思わない。いくら医療技術を学んでも過去の生活は戻らない。本当なら未来に目を向けなければいけないのだろう。だがあいつを亡くした時にそう声をかけてくれる人間はハリーの周りにいなかった。まだハリーの生きる意味は過去にしかない)

確かに僕じゃ君には叶わないかも。その言い方だと聖職者か吸血鬼狩りなら君をどうにかできるんだな。まぁ冗談はさておき、君にニンニクや十字架が効かないんじゃ、僕はお手上げだよ

(そもそも基礎能力に雲泥の差があるであろう彼に暴力で勝てるなど到底思わず。吸血鬼は老衰や餓死以外で死ぬような口ぶりだったが、今はそれを知る必要はないだろうと両手をあげて降参のポーズをとり)

…そうか、やっと僕がこの屋敷に入れた意味がわかったよ。彼女にとって僕は、君の餌なんだな。……君の望みを叶えるなら、僕は君を見殺しにしなきゃならないのか。まぁとにかく、少なくとも魔女は僕に姿を見せることはできるようだから…このまま大人しくしてればいいけど、執念深い彼女なら君に僕の血を吸わそうと仕掛けてくるかも。どうやるかは検討つかないけど

(ラザロからワンテンポ遅れてようやく自分の立場を理解する。鳥籠の中に放り込まれた芋虫、主人が飼い鳥のためにと与えた餌が自分だった。目を伏せる彼を見ながらぼんやりと頭に浮かんだことが口から流れる。彼は死ぬために断食している。彼の望みを叶えるならばハリーは彼が死ぬように手ほどきを、つまりは自分の血を与えないようにしなければならない。間接的に彼を殺さなければならないのだ。目線が泳ぐ。彼の望みを叶えてやりたい気持ちと、彼には、生きていて欲しいと願う自分がいた。頭をふって今はそれを考える時じゃないと邪念を振り払う。自分の命を投げ打ってでもラザロを閉じ込めた魔女だ、このままただ傍観するだけでは終わらない予感がする。彼がこれ以上苦しむことは起こって欲しくない。彼を守らなければと密かに心の中で思っていた)

  • No.48 by 吸血鬼  2018-07-03 23:46:14 



生きる意味か……。案外、素っ頓狂な所から見つかるものかもしれないな


(死んだ人間に活かされていると自嘲気味に宣ったハリーを見て、ふと考えこむ。生きる意味など、自分自身考えたことがなかった。ここに閉じ込められる以前の楽しみと言えば、美味い紅茶を見つけることと、美味い血を持つ人間を狩ることだけ。その一方を封じられたことは当初は痛手だったが、かといって死にたいと思うほどでもなく、人間が生きていくには理由や意味がいるものなのか、と難しそうな顔をして)


奴らは人外を味方につけているからな。例えば、吸血鬼に恨みを持つ悪魔や式神、その類と共闘して俺達を狩る。どの道、人間界に普及している類の正攻法では、俺は殺せないさ


(聖職者や吸血鬼狩りとて、所詮は人間。だが彼らの強みは、神や天使や悪魔などの人外と協力関係にあることだ。人間の知恵や工夫には目を瞠らされるものがあるとラザロは考えている。多くの吸血鬼が人間を下等生物や家畜と蔑む中で、ラザロが人間を対等に扱う理由はそこにあった。それでも、単純な戦闘能力で劣る気はしなかったが)


俺の本当の望みは、生きてここから出ることだ。……だがそれはあまりに現実的でないから、プランB……つまり餓死する方向で日々過ごしている。そうだな……だが獲物としてお前に目を付けた理由がまだ解せない。ハリー、お前は特別な血液型を持っているか?


(ハリーに見殺しにされることは決してラザロの本望などではないが、それでも未だにラザロはハリーの血を飲んでまで延命することは望んでいない。というよりも、血を吸うことでハリーを物理的に傷つけてしまうことを嫌っているのだが、そのことにはラザロ自身気付いていなかった。いくら人間を対等な存在に見ているとはいえ、人間は知能の高い獲物であり、それ以上の認識は今まで持ったことが無く)

  • No.49 by とある青年  2018-07-04 11:36:53 


だな、案外簡単に見つかるかも…できればそれが君だと、僕には都合がいいけど…ごめん、自分勝手なこと言った

(未来に生きる意味を見いだせてはいないが、彼の言う通り、そういうものはひょんな偶然によって見つかるかもしれない。そしてその意味を、自分より先に死ぬ事の無い彼に見出すことができればハリーは傷つかずにこの世を去ることが確約される。だがそんな理由で彼に縋るのはあまりにも自己中心的だ。不用意なことを言ったと首をふる)

吸血鬼がいるなら悪魔も式神も、伝説上の人外は存在するわけか。僕には縁のない世界だったのに。僕がよっぽど外に出たいと思わない限りは君を殺そうなんて思わないよ。そもそも殺し方も分からないし

(おとぎ話の存在が当然いるように話されると信じられないと苦笑するが、そもそも目の前には伝説の吸血鬼がいるわけで、それならばその他の人外もいるのだろうと納得する。吸血鬼に恨みがあるわけでもなく、外には出たいが彼を簡単に殺せる程薄情でもない。今のところは彼をどうにかしようなんて気は起こらなくて)

それなら僕らの目標は2人揃ってこの屋敷を出ていくことだ。やり方なんて分からないけど…目標は高く持たないと。僕の血液型?僕A型なんだけどRhマイナス型なんだ…って言って分かるのかな。一般的には珍しい血液型だけど…もしかして珍しい血液型の方が好みだったりする?

(彼は諦めて死のうとしている。それならば目標は2人ともがここから出る結末だ。口で言うほど簡単ではないが、目標を掲げるだけならば罪はないだろう。それに彼にまた自由を与えたかった。カーテンの隙間から夜空を覗いたラザロの背中には未練や寂しさが滲んでいてそれをどうにか払拭したい。過去に囚われているハリーが言っても説得力にかけるかもしれないが、彼には幸せでいて欲しいという思いが胸にはあった。突然血液型を聞かれて驚きつつも正直に問いに答える。その答えを口にしているうちに、その血液型に自分の価値があるのかと思い至って)

  • No.50 by 吸血鬼  2018-07-04 17:59:46 



……俺が?悪いが、皆目見当も付かないな


(自分がハリーの生きる意味に、と言われ、目を丸くする。ラザロに出来ることと言えば、多少の魔法で生活を少しだけ豊かにするか、ハリーの話を聞いて傍にいてやることくらいだ。その程度のことしか出来ない自分が、辛い過去を背負うハリーの生きる意味になどどうやって成りうるのかと苦笑して)


まさしく夢物語だな。期待はしないが、お前が此処にいるうちは、夢を見るとしよう。…………聞かなければ良かったな……。いいか、まずRh抗原はC、c、D、E、eに分岐していて、中でもD抗原を持たない血液をRh陰性、つまりマイナスと分類する。このD抗原が人間の血液に臭みや濁りを生み出し、風味や喉越しを損なわせている。Rhマイナスは、余計なものが取り除かれた純度の高い血液であり、シンプルでいてなお、味の中に深みがある。お前はA型か……なら、主張の控えめで穏やかな味わいながらも、凛とした個性を持つ血液だな……。…………性悪女め


(ハリーと2人で生きてこの屋敷を出る、それは現状を誰よりも深く痛感しているラザロにとっては荒唐無稽な夢物語。だが、ハリーが一緒にいるならば、絶対に何があっても不可能という気もしない。とはいえ、過度な期待はしないに越したことはない。そしてハリーの血液型を聞いた瞬間、ラザロはハリーから離れた位置にある椅子に座り、腕を組んで数秒俯いた。そして顔を上げたかと思えば、いかにRhマイナスの血液が吸血鬼にとってのご馳走なのかを熱弁し始める。この熱の入りようから見て、恐らくA型Rh-が、ラザロにとって一番の好物なのだろう。矢継ぎ早に話し終え、一息ついた後、ラザロはまたしても沈黙し、最後に一言だけぽつりと呟いたて)

  • No.51 by とある青年  2018-07-04 19:01:47 


別に特別なことはしなくてもただ……そうだな、新しい趣味でも見つけた方がいいかも。この屋敷に本がたくさん置いてる部屋ってある?

(ラザロと波長があうのは確かで、それならば特別なことなどしなくともただ毎日穏やかに過ごしていれば彼ともっと親しい関係になれるのかもしれない。しかしそこにはラザロがずっと傍にいてくれるからというハリーの下心があり、それをハリーは自覚していて言いかけた呟きを飲み込んだ。自分の都合を彼に押し付けるわけにはいかない。代わりに微笑みを向けつつ書斎か図書室のような部屋があるか問う。本と対話していれば自然と彼との接触時間も減るはずだ)

それくらいの心持ちでいよう。絶対出るなんて意気込んだらきっと息が詰まって苦しくなる。でもいつかは…出れるといいな。できれば僕が医者になる時間があるくらいの時に。……なるほど、それが僕がここに入れた理由か。つまり僕は君にとって餌どころか極上のステーキってとこなんだ。本当に怪我しないように気をつけないと

(この屋敷をでる方法なんてラザロが散々ためしただろう。このまま屋敷で一生を終えても困る人間はいない。だがもし出ることができるのならば、願わくば約束を守れる期間だけであって欲しいと分厚いカーテンを見つめながら言う。血液型に関しては医学生の知識で抗原の話までは頷きながらきき、だがその味の話になると体を静止させ、彼の話しを聞いていた。思わず唾を飲み込む。ラザロが血液を欲する吸血鬼だったならばすぐにでも吸血されていただろうと余計なことを考えながら「嫌な奴だな」と天井を見上げつつポツリと呟いて)

  • No.52 by 吸血鬼  2018-07-04 20:58:21 



……そうだな、特別なことはしなくとも、屋敷を探索するだけでも充分に時間は潰せる。明日から一緒に屋敷を回るか?本、か……あるにはあるが、図書室にあるのは悲劇ばかりだ。魔女の趣味なのかもしれないな


(ハリーが言いかけて断念した言葉の続きを、謀らずしてラザロが口にする。ラザロとこれ以上深い関係になることを拒むハリーの恐怖など、もう克服したようにあっけらかんと。特別なことはしてやれないが、一緒に星を見たり、屋敷に何があるのか探したり、隣で読書をすることくらいならば出来る。ただ問題なのは、この屋敷には読んで楽しい気分になるような本はないこと。魔女が意識してそうしたのかは、彼女のみぞ知るところだが)


ああ……お前が俺と過ごす中で、どうしても夢を諦められないと心の底から渇望するなら、俺の方が折れるかもしれんな。無論、魔女がどう動くかは分からないが。ここで死を待つしかない俺と、追い続けたい夢があるお前、どちらが生き延びるべきかは明白かもしれない。そうだな……ともかく、台所には立たないように。暇を持て余して手芸の類に手を出すのも遠慮してくれ


(ずっと追い続けた夢を簡単に捨てられないのは当たり前だ。それが呪いならばなおさら。だからラザロは、自分が生きることを諦めることでハリーの夢が叶うならば、それも一つの選択肢だと本気で思い始めていて、それを臆面もなく口に出しておく。今すぐというわけにはいかないが、今後ラザロの中でハリーの存在が大きくなれば、その選択をする可能性もある、と示唆して。屋敷の中で出血を伴う外傷を負う危険性など、予防できるものからできないものまで満ち満ちているが、とにかく刃物や針には触らないようにと釘を刺しておこう)

  • No.53 by とある青年  2018-07-04 22:39:22 


_____あぁ、うん…そうしてくれると、嬉しい。僕はまだこの屋敷のこと全然知らないし、教えてくれるとありがたいよ。全て?そこまでくると嫌がらせだな。絵画の図録とか美味しい紅茶の入れ方が書いてあるのが読みたかったのに

(ハリーが途切れさせた望みをラザロが口にして胸が詰まるような感覚に襲われた。同時になぜか目が潤む。ずっと欲していた誰かと過ごす日常…くだらないことで笑って、些細なことで喧嘩する、それをラザロから提案してくれたことが嬉しかった。感情を抑えるようにゆっくりと息を吐いたあと、数度頷きながら自然と笑みが零れ、屋敷を案内してほしいと願いでる。明日ラザロと連れ歩くのがもう待ち遠しい。それこそ明日へ生きる意味になっているとは本人も気づかないままで。趣味を見いだせるような本はどうやら置いていないらしい。ラザロを生かしたいのなら多少の娯楽は用意しておけと内心で魔女に文句を言っておく)

いや待て、ラザロ。確かに僕はこの屋敷から出たい。でも君を殺してまで出たいなんて思わないよ。それに勝手に屋敷を出るのにふさわしいのが僕だなんて決めるなよ。少なくとも僕は、君が死ぬべきだとは思わない。…分かった、刃物を使うような場所には近づかないようにする。あと足元にも気をつけるよ

(1人で死ぬべきは自分だと言う彼の腕を掴むと首をふる。そうやって彼を止めながらもハリーの心は2つの選択肢で揺れていた。屋敷から本気で出ようとするのか、ここで大人しく暮らすのか…それは即ち、過去に留まるかラザロと新たな関係を築くかの二択でもあり、どちらを選択したいのか、ハリー自身にもまだ分からなかった。彼と共に過ごすなら今まで抑えこんだ感情が溢れて際限なく彼を求めてしまいそうな気がする。それを彼は迷惑がるかもしれないし、魔女の機嫌を損ねる可能性だってある。ハリーは今後どうやって、どの程度ラザロとの関係を築くか、まだ決めかねていた)

  • No.54 by 吸血鬼  2018-07-04 23:15:15 



そうか、なら良かった。そういえば風呂の機能も満足に使えていないだろう、近々一緒に入るか。使い方を教えてやる、……どうした?もう眠いか?


(屋敷を探索するという提案は、快く受け入れてもらえたらしい。そこでふと思い出したのが、屋敷の唯一の美点とも言える無駄に豪華な風呂のことだ。だがあれは動力源が複雑な問題で、ラザロの魔力が無ければ動かない設備も少なくない。そこでラザロはいきなり裸の付き合いを申し出るが、出会って数日の相手に対する人間界の常識には当てはまらないことなど知る由もなく。ふと、ハリーの目が潤んでいることに気付き、欠伸でもしたのかと彼の顔を覗き込んで)


……、そうか。複雑だが、お前がそう言うなら今後こういった発言は控えよう。ああ、すまないな……本当に、頼む。何かの間違いでそんなことがあれば……本当に俺は、きっと自分を抑えられない。狂った獣のように、お前を求めてしまうだろう


(腕を掴まれ、強い語気で否定されたことに、ラザロは驚いて目を軽く瞠った。どうやら自分の提案は、ハリーにとっては的外れなものだったらしく、彼がそう言うなら、と素直に頷いた。そして、怪我には細心の注意を払うと言ってくれたハリーに、せめて彼が自分の大好物でなければ、と申し訳なさそうに眉をひそめて。彼がただの人間ではなく、稀に見る美味な血の持ち主だと知ってしまった今、一瞬その香りを嗅いだだけでも、理性が吹き飛ぶ自信しかなく)


(/お疲れ様です!一つご相談があるのですが、遅かれ早かれ、事故的な吸血イベントを起こしたいと思っております。魔女の意識でシャンデリアが割れて、その破片でハリー君が怪我をしてしまって、ラザロが我を忘れて貪りつく――的なイベントを予定しています。内容が内容なだけに、下手なタイミングで起こすと2人の間に溝が出来てしまうかなー…というのが大きな懸念点で。なので、お互いが恋人同士という認識を持つまで延期するか、成り行き任せで近々起こしてみるか悩んでいるのですが、ぜひぜひ本体様のご意見を賜りたく……!)

  • No.55 by とある青年  2018-07-04 23:59:45 



え?あ、いや、まぁ確かに、今日入った時はシャワーしか浴びれなかったけど…ま、ぁ…君がいいって言うなら、一緒に風呂に入っても、問題ない。あぁ、これは…眠くないけど、そろそろ寝る時間かな?

(ナチュラルに提案された風呂の誘いにピシリと体を固める。彼の言う通り今朝は風呂の使い方がさっぱり分からなくて残念ではあったが、まさかいきなり一緒に風呂に入ろうと誘われるなんて。吸血鬼にとっては特別なことではないのかもしれないと思いながらも動きと口調がカクカクと不自然になってしまう。そうやって動揺を隠せないでいると気がついた時にはラザロの顔が近くにあり、変に意識してしまったせいかドキリと心臓が脈打った。またおかしな反応をしてしまったと内心後悔しながら、時計をみつつその場を誤魔化した)

そうしてくれ、僕らは二人とも魔女に囚われてる同士だ、どっちかが犠牲になるなんて…おかしいだろ。謝るなよ、悪いのは魔女だ。冷静な君がどんな風になるのか想像もつかないけど…狂った君を見ないよう祈っとくよ

(掴んでいた手を離すと、掴んでいた箇所を労るように軽く撫でた。申し訳なさそうな彼には微笑みをむけて、先程ラザロがやってくれたように軽く背中をポンポンと叩いた。狂った、というのがどの程度のものかは分からないが、怒りに震える彼はもう見ており、なかなかの迫力だった。それを超える姿となると想像の範疇にはなく、しかしハリーは怪我に気をつければ大丈夫だろうとどこか楽観的で)

(/いつもお世話になっております!話の流れ的にもそろそろ吸血かなと此方も思っておりました!個人的には事故的に吸血が行われ、そこから接触が増えて2人の距離が縮まっていくのではと思います。ですので成り行きで吸血イベントを起こしてしまっても良いかと!)

  • No.56 by 吸血鬼  2018-07-05 02:02:29 



……?おかしな奴だな。種族は違えど性別は同じだ、照れることはないだろう?そうだな……まだ寝るには早いが、服を見に行くか。確か使っていない部屋着が、寝室にいくつかあったはずだ


(いきなり挙動や口調が固くなったハリーを、不思議そうに眺める。吸血鬼全体に言える事なのか、それともラザロの特性なのか、羞恥を感じるポイントが人とはかなりズレているようだ。時計に視線を移したハリーに、自身も身に付けている懐中時計を見る。まだ夕方頃で、人間の眠る時間には早い。だが考えてみれば、ハリーはバスローブ一枚にラザロの上着を羽織っただけという状態だ。服を探しに寝室へ行こうと、応接間の扉を開けて)


まあ、そうだが……元を辿れば、俺の呪いにお前を巻き込んでしまった形だからな。少なからず、罪悪感はある。……人間の血を吸うことを、恐ろしいと思ったのは今回が初めてだ。数百年の飢餓から解き放たれ、お前の血を吸い尽して殺してしまうこと。殺すまではいかずとも、お前に恐怖を味わわせてしまうこと。……その後、お前の俺を見る眼差しが、変わってしまうこと。獲物である人間からの畏怖の視線など、今まで気にしたこともなかったが……不思議だ


(優しく自分に身体に触れてくれる体温と、向けられた微笑みが少しだけラザロの罪悪感を和らげた。しかし、ハリーが優しいことは会話の中で十分知っている。きっと彼は、心の中でこの状況を整理しきれていないだろうに、それでも自分を気遣ってくれる優しさと精神的なタフネスに内心感服した。寝室に向けて廊下を歩きながら、ふと思ったことを口にする。今までラザロにとって、人間は対等な存在ではあるものの、それでも餌に過ぎなかった。餌にどう思われようが知ったことなど無かった。だがもし、吸血をすることでハリーに嫌われたとしたら?それを考えると、血を飲むことが恐ろしくなる。吸血鬼が吸血を恐れるなど、心底不思議だとしみじみと話して)


(/いえいえ此方こそ!ハリーくんのナイスパスのおかげでスムーズに話が進み、とても助かっております…!おお、かしこまりました!では、次かその次のレス辺りで吸血イベントを起こしますね。また一つ、お伺いしておきたいことがあるのですが、ラザロは本当に久しぶりに吸血なので、吸血中は完全に我を失っている状態です。そんなラザロをどう我に返すか、という方法なのですが、それも今後の親密度に大きく関わって来るかと。そこで提案、というか半ば妄想なのですが、ハリーくんがラザロに血を吸われた時、愛おしそうにそれを受け入れるか、もしくはラザロの気を逸らすために額かどこかにキスをするかなど、どうでしょうか…!恐らくラザロも意表を突かれて反射的に我に戻るのではないかと。もちろん、他にもやりたいシチュがありましたら遠慮なくバンバンお聞かせくださいね!)

  • No.57 by とある青年  2018-07-05 10:25:22 


僕の感覚では…二人っきりで風呂に入るのは、恋人同士だけだと。性別関係なく。…まぁともかく、君の言う通り着替えた方が良さそうだ。このままじゃ冷えちゃうし

(ラザロにとっては男2人で風呂に入ったとしても別段意味はないようだ。一応こちらの感覚も伝えておくが、もうイエスの返事は出してしまったし、彼が気にしないのならこちらの意識の問題だ。それに風呂の機能が気になる。おかしくなった空気を振り払うように手を数回ふったあと、彼の提案を受け入れ応接間を出た。寝る時間なんてまだまだ先、それならば暖かい服に着替えておかなければ)

いや、悪いのは君じゃない。もとを辿るなら勝手に君に執着した魔女が悪いんだ。餌として僕を入れたのもあいつだし、君が謝ることじゃないよ。…それって僕のことただの餌としてじゃなくて、情を持って接してくれてるってこと?嬉しいよ。正直、君の感情が昂ってた時は怖かったから少し物怖じするかもしれないけど、もし何かそんな間違いがあっても今の君との関係は変えない、誓うよ

(まだ罪悪感を持つ彼に元凶は魔女だと断言する。この屋敷は彼女の体内と同じならこの発言だって彼女は聞いているだろうが、そんなこと知ったことではない。彼女のご機嫌とりをしようかなどと考えていたが、今はラザロを追い詰め後ろめたい気持ちを持たせていることが腹立たしかった。廊下を並んで歩きながら不思議そうな顔をする彼には悪戯な笑みとからかう口調でかまをかけてみる。しかし実際自分が少し特別に扱われていることに悪い気はせず、むしろ上機嫌になった。彼の吸血鬼としての面はまだ知らない。だが彼の内心はまだ日は浅いもののいろいろと知っている。そんな彼を簡単に切り捨てはしないと言いきかせて)

(/先にいろいろ伏線を出して下さってるのでスムーズに返せております…こちらとしても滞りなく話が進み嬉しいです!ラザロくんを我に返す方法に関して先程のレスを読んで考えたのですが、ハリーなら吸血され死を感じた時にラザロが罪悪感を持たないようにお別れと感謝という意味のキスをするかなと…それでギリギリラザロくんが我に帰りハリーは一命を取り留める…なんてことを考えたのですが、いかがでしょうか?)

  • No.58 by とある青年  2018-07-06 00:52:43 


(/前レスでラザロくんの暴走を止める方法としてお別れと感謝の意味のキス…と書きましたがご提示いただいた気を逸らすためにキスをするという流れでも全く問題ありませんので…お好きな方を選んで下さいね!)

  • No.59 by 吸血鬼  2018-07-07 19:05:40 



.....?そうなのか。まあ確かに、さほど親密でもない者と入ったりはしないな。.....まあ、お前の気が向けばで構わんが


(二人きりで風呂に入るのは恋人同士のみ、という価値観に、またしてもカルチャーショックを覚えて不思議そうに腕を組んだ。そう言われてみれば、確かに吸血鬼同士でも仲が悪い者と二人で入浴したことはないなと思い至り、そこでようやくはっとする。ハリーは、他人と親密になることを望んでいなかったのだと。だが今更前言撤回をするには遅いと考え、あくまでハリーが嫌でなければと付け足しておいて。ちょうどそこで寝室に到着し、扉を開けて入室して)


.....そう言ってもらえると、少し気が楽になる。情、か.....これは情、というのか。人間と吸血抜きで親しくなることなんて初めてだ。そう、か。幸いお前は肝も据わっているようだしな。だがもしお前が許すと言ってくれても、俺は俺自身を許すことが出来ないかもしれん


(あくまで悪いのは魔女だと言い張ってくれたハリーに、ふわりと笑みを向ける。ふとそこで、情という言葉に引っかかったようで、小首を傾げた。ラザロがハリーに向ける感情は、情なんてものではない気がしたが、ラザロ自身この感情の名がわからず、釈然としないままとりあえず情ということにしておいた。ラザロが我を失いハリーに襲いかかる事故を経ても、この関係は変わらないと言ってくれたハリーの目をじっと見つめて、その真っ直ぐさにラザロはどこか眩しそうに目を逸らした。それと同時に、もしそんなことが起これば、ハリーが責めずとも自分で自分を責めるだろうと苦笑して)


『フフ......本当にそうかしら 』


(ふと寝室に、妖艶な女性の声が響いた。しかしそれは、ノイズを何重にも重ねたような濁った不気味なもので。〝もし何かそんな間違いがあっても今の君との関係は変えない、誓うよ 〟――そんなハリーの健気な言葉を嘲笑うように、寝室のシャンデリアの電飾が音を立てて弾けるように割れ、その破片が意思を持つかのようにハリーの首筋へ飛来し、皮膚1枚を薄く切り裂いた。それは間違っても致命傷には至らない、放っておいても問題のないような小さな傷。だが、問題なのは、その傷から一筋、ハリーの血が垂れたこと)


――......!!


(匂い立つ血の香りは、たった一滴でも冷静沈着なラザロの理性を吹き飛ばすのに充分で。咄嗟にハリーとは逆方向に顔を逸らし、これ以上血の匂いを嗅がないように鼻と口元を手で覆うが、既に手遅れ。手で隠されたその奥では、数百年隠していた牙が顔を覗かせていた。次の瞬間、コウモリを彷彿とさせる大きな翼が、ラザロの背中を突き破って広がる。ラザロの瞳はアメジストからガーネットへと色を変え、瞳から煌々と溢れる光は、ラザロの動きに伴って光の軌跡を描く。人智を超えた速さでラザロはハリーの両手首を掴み、そのままベッドに押し倒しながら彼の首筋に顔を埋め、冷たい舌で首筋を濡らす赤い蜜を舐めとった。無論それだけで止まるはずもなく、本能はさらに血を貪ることを求め、ハリーの首筋に牙を突き立て、ジュルジュルと音を立てながら急激に血を吸い上げる。ノイズがかった魔女の哄笑が寝室に響き渡った)


(/仕事の都合で返信が遅くなり申し訳ございません...!ラザロの暴走の止め方についてですが、お別れという意味のキスだと、ラザロの気持ち的にその後の関係修復が難しいかなと思いますので、愛情の表れ+意表を突くことが目的のキスでラザロを止める、という流れでお願いしてもよろしいでしょうか...?)

  • No.60 by とある青年  2018-07-07 23:27:45 


いや、まぁ…いつかは、一緒に風呂に入ろう。あの風呂の機能全部見ておきたいし。僕も吸血鬼と仲良くなるのは当然初めてだけど、僕らきっと…いい関係になれると思う。だから君が君を許せないなら、許せるようになるまで僕は君のそばを離れない

(ラザロに続いて寝室へと入ると、こちらから風呂に誘ってしまった。先程恋人同士で入るものだと答えた手前少々恥ずかしく目を逸らしてしまうが、彼となら裸の付き合いをしても悪くないと思えた。風呂の機能を見たいからと言い訳しておけば、変な意味にもならないだろう。ラザロが零した笑みにこちらも微笑みを返すが、彼は目を逸らしてしまった。それがどういう意味か分からずに不思議な顔をこちらも浮かべ、同時に自分の言葉にも違和感を覚える。2人の関係を言い表す言葉が見つからなかったからだ。「僕らきっといい友達になれる」と言おうとして言葉を飲み込む。友達、という言葉に違和感があった。親友でもない。それならば自分が彼と望む関係はどんなものだろう)

え、なに…______っ、ん…あぁ、まずい。ラザ…っ!

(考えを巡らせていると突如聞きなれないノイズのような声が聞こえる。それがこの屋敷自身、魔女の声だと気がつくのにしばらくかかった。そしてその間にシャンデリアが落下し、直後首筋に小さな痛みを感じる。反射的に首筋に手をやった。じんわりとした鈍い痛みが首筋に広がる。手のひらを見ると赤い液体がついていた。この屋敷で決して流してはいけないと言われていた赤い液体、それを見てゾクリと背筋が凍る。冷や汗が一気に吹き出した。その後の出来事は実に一瞬だった。ハリーがラザロの方をみた時には彼の口には牙が、背中には翼が生え、瞳が真紅へと染まっていた。伝説と同じ人外の姿に息を飲むと恐怖を感じる前に体が思いっきり押されて意識が追いついた時にはベッドの上で首筋に冷たい舌が這っていた。そして続けざまに首筋に更なる痛みが襲う)

ガッ、っ、ん……ラ、ザロ…まっ……

(首筋の痛みに肺から空気を押し出す声が漏れ、続いて血を吸われて一気に体から体温が奪われていく感覚に襲われる。このまま意識までも取り払われそうな感覚、一気に死の予感がハリーの頭を渦巻いた。暗い天井を虚ろになっていく目で見上げ魔女の笑い声はガンガンと頭の中で鳴り響く。先程のハリーの誓いを嘲笑うようだ。このままでは魔女の思惑通り、ハリーは極上の餌としてラザロに喰われ、ラザロの命を伸ばすだけで終わる。そう考えると胸の中で怒りの感情が湧き上がった。彼を身勝手な理由で閉じ込め死ぬよう追いやっているくせにそれでは不都合だからと餌を放り込みわざとラザロに血を吸わせている。このままではラザロは自責の念を抱えて何百年と1人で生きることになってしまう。それはどうしても許せなかった。彼にはまたあの微笑みを向けて欲しかった)

ラ、ザロ…僕は、誓いを守る…君のそばから、いなくなったり、しない…から

(押さえつけられた手首は動きそうにない。顔を彼の方に少し傾け口を彼の耳元に持っていくと、遠のきそうになる意識の中で、必死に心のなかの言葉を口から引っ張りだした。今起こっていることは1番恐れていたことだった。だがそうだとしても、彼が異形の姿で今まさに自分の命を奪おうとしているとしても、自分が立てた誓いは破らない。ハリーはまだラザロと2人の時間を過ごしたかった。魔女の思惑通りになってたまるものか。自らの誓いを立証するようにそっと顔を寄せるとラザロの耳にゆっくりとキスを落とす。大丈夫だとでも言いたげに頬を彼の頭に優しく添わせて、冷たい耳に唇を重ね続けた)

(/いえいえお気になさらないで下さい!魔女の悪意が明確に出てましたので、そこから奮い立たせての愛情のキスという流れにさせていただきました!2人の関係ももっと深めたいですし、こちらの方が良いですね笑)

  • No.61 by 吸血鬼  2018-07-09 22:39:23 



(脳内を劈く魔女の高笑いも、我を失ったラザロにはもはや静寂に等しかった。今、脳を染め上げるのは、強烈な渇き。それはまさしくもう何日も水を飲んでいない漂流者が、渇きに耐え兼ねて海水を飲むが如く、飲んでも飲んでも足りない。夢中でハリーの血を貪るあまり、本来なら大好物なはずの血の味もろくに分からず。このままでは、あと1分もしないうちに致死量の血をハリーから奪い取ってしまう。だがそんなことを気にする余裕も今のラザロにはなく。魔女の目論見通り、ラザロはこのままハリーを喰い殺し、徒に延命するだけに終わる――はずだった)


――――……?


(ふと、耳に感じた吐息と、心地よい熱量。どこか、遥か遠くで、誰かが自分の名を呼んでくれる声が聴こえる。聞き覚えのある声だ。この声の主は、一体誰だったろうか。ピタリと、ラザロの喉の動きが止まり、吸血が一時中断される。ラザロの真紅の瞳が、何か大事なものを探しているように細かく揺らいだ)


ハ、リー…………?


(しゅるしゅると牙が縮み、自動的にハリーの首から牙が抜ける。止血作用のある体液の類でも牙から分泌されていたのか、吸血された傷跡の血は止まっている。ラザロの瞳にアメジストの光が戻り、ハリーの血で少しだけ濡れた口で、茫洋とその名前を呟いた)


俺……、俺は、何を……っ、すまないハリー、ハリー……っ


(ぼんやりと、蘇るここ数分間の記憶。背筋が粟立つほどの芳しい香りがしたかと思えば、まさしく飢えた獣のようにハリーの血を貪ってしまったこと。動揺と罪悪感から声が震え、視線は揺らぎ、己の下に組み敷いたままのハリーの首と後頭部に手を回してきつく抱き締め、縋るようにその名を呼んで)


(/健気なハリーくんに背後までキュンとしてしまいます……しばしの間シリアス展開を楽しみ、上手いこといちゃらぶまで持っていけたらいいなと思っております……!ではでは、今後ともよろしくお願いいたします/礼)

  • No.62 by とある青年  2018-07-10 00:23:58 


んっ、…は、っ…はぁ……ら、ざろ……なんだよ、その顔…僕はなんとも、ないのに

(祈るように耳へと口付けでいたところに、自分の名を呼ぶ声が聞こえてそっと顔を離す。直後肌を突き破っていた牙が抜ける感覚があり、神経を刺激して最後の痛みが襲いくる。だがそれを飲み込むように固く目を閉じることでやり過ごすと目をあけラザロの顔をみた。彼の瞳はアメジスト色に戻り、だが揺れていて声も震え、自責の念に駆られているのが痛々しい程に伝わる。そんな顔をする必要はないのにと笑ってみせるが、血がなくなり力の入らない体では弱々しい笑顔になってしまう)

大丈夫、…大丈夫だ、ラザロ。僕はちゃんと、ここにいる。君のそばにいるよ…君が、そんな声出す必要、ない…

(ようやく手首は自由を取り戻し、頭を抱えるように抱きしめられると手を回して彼を落ち着けようと背中をさすった。少々息苦しい抱きしめられ方でラザロの体は相変わらず冷たいが、胸が満たされていくのを感じる。ラザロと過ごす時間がここで終わらなくて良かったと心底思った。背中をさすっていた手を止め、今だせるだけの力で彼を抱きしめる。結果的には彼の寿命を伸ばすことになったのだ、悪い結果でもない。だがラザロはそうは思わないだろう。何度も大丈夫だと繰り返しながら今度は頬にキスを落とした。それは彼を落ち着かせるためのものだったが、少しずつ違う感情が混じり始めていることにハリー自身まだ気づいていなくて)

(/ありがとうございます!そうですね、シリアス展開から一気に仲を深めていちゃらぶしたいです…!こちらこそ今後共々よろしくお願いします!)

  • No.63 by 吸血鬼  2018-07-10 01:11:27 



ああ、ハリー……俺は、お前を喰い殺してしまったかと……、本当に、すまない……


(大丈夫だと薄く笑ったハリーの顔はすっかり血の気が引いていて、思わず泣きそうな気持ちに襲われる。なんともないからといくら言われても、安堵よりも罪悪感の方が断然強く。だがそんな中でも、一つだけ心から安堵したことがある。それは、ハリーが生きていてくれたこと。果たして彼はどんな方法で自分を止めたのだろう、と頭の片隅で考えていると、不意に頬に温かく柔らかい感触。まさしくそれは、自分が暴走している最中、耳に感じたものと同じで、ラザロは思わず目を瞠り、ハリーを目を見て)


っ……今のは……、魔法か……?


(そう言い放ったラザロは、至極真面目だ。キス、というコミュニケーションが人間同士に定着しているのは知っているが、それはあくまで愛や友情を伝えたりするためのもの。それが吸血鬼の暴走を止めるだなんて聞いたこともなく、もしかしたら魔法が宿ったまじないなのかもしれないと、ハリーの返答を待つ。何よりそれは、心地よすぎるのだ。唇が触れるだけで、冷え切った心臓が高鳴るような。そんな芸当が出来るのは、魔法以外に説明のしようがなくて)


『…………どうして?ねぇ、ラザロ、どうして?それ、ただの餌でしょう?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どっ――――』


(ハリーとラザロの様子をずっと見ていた――否、見ていたという言い方は少しだけ語弊がある――もとい、知覚していた魔女は、自分の思い通りにならない怒りに打ち震えた。ラザロは餌たるハリーを喰い殺し、その極上の血で延命する。そして屋敷から不純物は取り除かれ、またラザロを独占できる。その目論見が外れることなんて信じられない。いつのまにか壁に掛けてあった、女性が描かれた絵画の口が、魔女の声に合わせてパクパクと動く。その様子は不気味極まりなく、ノイズがかった魔女の声音も相まって、まるでホラー映画のワンシーンだった。ラザロは、久しぶりに耳にした魔女の声に、怒りを露わにその絵画を睨みつける。数百年ぶりにエネルギーである血液、しかも大好物のものをたっぷり摂取したおかげか、ラザロの持つ魔力は高まり、視線だけで絵画を粉々に砕いて)


……卑しく身勝手な魔女。二度とハリーを傷つけるな

『…………ふ、フフ、あはハはハハは!!400年と幾日、ようやく私に気付いてくれたのね!ずっと、ずぅっと傍であなたを見てたのに……鈍感なんだから。ねえ、愛しているわ。愛しているの、永久(とわ)に、ずっと、永遠によ』


――五月蠅い。喧しい女だ


(絵画が砕かれても、屋敷の中に魔女のおぞましい声が木霊する。魔女は狂ったように嗤った。ラザロに殺気や憎しみを向けられることにさえ、喜びを感じるのだ。そういう意味ではどうしようもなく厄介と言えるだろう。ラザロも、嫌悪を通り越して呆れを覚え、一度だけ柏手のように高らかに手を打ち鳴らした。乾いた音が屋敷に充満するのと同じ速さで、ラザロの補填された魔力が充満し、魔女の声を封じた。これが何日間持つかはわからないが、ともかくしばらくは実体なき魔女の声に邪魔されることはないだろう)


……本当に済まない、ハリー。罪滅ぼしと言っては何だが、応急処置を施そう。とはいえ、これを実践するのは初めてなんだが……上手くいくよう善処する、大人しくしていてくれ


(邪魔者を片付け、長い嘆息を一つ。そしてくるりと振り向けば、ベッドの上のハリーのもとへ歩み寄り、ベッドの淵へ腰かけ、もう一度すまなそうに謝る。そして思い出したのが、吸血鬼が親密な関係にある獲物(つまりいつも血液を提供してくれるパートナーのような人間)に施すある処置のこと。それがどういう処置かは説明しないまま、ラザロはそっとハリーの首元に手を回し、先ほど自分が牙を突き立てた首筋の傷跡に顔を寄せると、優しくそこに口付けて)

  • No.64 by とある青年  2018-07-10 12:38:20 


いいんだ、僕はちゃんとこうして生きてる。君の謝罪の言葉は十分伝わってるよ。だからもう自分を責めるな

(繰り返し謝罪の言葉を口にする彼の背中をまた優しくさする。ラザロは吸血をしてしまてば自分を赦せないだろうと言っていた。それならば自分が答えた言葉通り、彼が自分を赦せるまで傍にいてやるまでのこと。だが彼が突然驚いた顔をしてこちらを見たあと言い放った言葉には思わず吹き出してしまった)

え?ははっ、僕が魔法をつかえるわけないだろ。今のは僕から君への……親愛の、キスだ

(まさか魔法なんて言葉が出てくると思わずクスクスと笑いを漏らす。ただ彼へのキスは挨拶や子供へするような、軽いものとは少し違った気がする。だからこそキスの意味を伝えようとした時に少しだけ言葉に詰まった。親愛、というのもどこかで腑に落ちない。モヤモヤとした気分を抱えたままだったが、その気持ちを吹き飛ばすように不快な声が室内に鳴り響く)

なっ…勘弁してくれ_____今の君がやったの?…僕の血を飲んだから、か

(室内には壊れた音声のような魔女の声が、視界には不気味に口を動かす絵画が移り、その不気味さに体が震える。魔女の声が弱った体に響いて頭をガンガンと揺らすようだ。直後ラザロが怒りの感情を込めて絵画を睨むと絵画は粉々に砕け散る。それこそ魔法のように。だが魔女の声は消えず狂った笑い声が周囲に響いた。その声もラザロが手を叩くと一切止んでしまい周囲に視線を巡らせてみるが何か風景が変わったわけでもない。今までにみてきたラザロの力とは明らかに違う、その変化の理由は先程の吸血行為だと合点がいった。本来の彼はこんなにも力があるのかと思うと同時に、この力を持ってしてもこの屋敷を抜け出せなかったのかと改めて魔女の執念を思い知らされた)

罪滅ぼしは受け取れないけど、応急処置はして欲しいかな。ん…動かないようにするから、うまくやってくれよ

(未だにシュンとした表情を浮かべる相手に変わらず微笑みを向ける。彼が何をしようとするか確認もせずに、噛まれた場所を大人しくさしだした。今のラザロは自分に危害を加えないという確信があった。だから首を差し出すのを戸惑うこともしない。首にひんやりとした手が添えられ、彼の唇が傷口に触れるとピリッと小さな痛みが走る。それでも、ハリーはベッドの上で大人しく体を動かさないようにしていた)

  • No.65 by とある青年  2018-07-16 22:49:23 


(/あなたがまたここにきてくれることを願って、あげておきます。一言お返事をいただけると嬉しいです)

  • No.66 by 吸血鬼  2018-07-23 22:08:54 



親愛……、そうか。ああ、驚かせて悪かった。随分久しぶりだ……この感覚は。今なら、この屋敷を吹き飛ばすことも出来るかもな


(彼の優しいキスは、魔法などではなく親愛を込めたそれだったようだ。親愛、という言葉のニュアンスに、どこか心がもやつくような思いが一瞬よぎったが、気のせいだろうとすぐに忘れて。そして、急に絵画を砕いてしまったことでハリーを驚かせてしまったことを謝りながら、自分の掌を眺める。ハリーの血液が、自分ととても相性が良かったのだろう。飢えて渇いていた身体は、潤いと活気を取り戻し、魔力が湧き出るようだ。今なら魔女の呪いを半ば強引に打ち砕くことが出来るかもしれないと口に出すが、所詮それはただの希望的観測に過ぎず)


ああ、任せろ


(素直に差し出された首筋に、もう飢えを感じることはなかった。だがそれも一時的なもので、また渇きを覚え始めれば、ハリーの血を欲することになってしまうのだろうか。ラザロは、ハリーに怖い思いをさせることも、痛い思いをさせることも嫌だった。だから、口付けた首筋を、優しく舌先でなぞる。この時ラザロの口からは、特殊な唾液が分泌されていた。それがもたらす効果は、即効性の極めて高い鎮痛。実は、この特別な体液には中毒性があり、何度も繰り返し吸血の傷跡に塗布し続けると、人間側が血を吸われる際に痛みではなく快楽を感じるようになってしまう。だが敢えて、ラザロはそれを口にしない。無論それは、このままハリーを自分漬けにしてやろうという思いからでは断じてない。ハリーの血を吸うのは、もうこれっきり。ラザロは心にそう決めていた)


……終わったぞ。どうだ、まだ痛むか?


(唾液を傷口に馴染ませるように数秒間舌を首筋に這わせ続け、口を離せばハリーを顔を覗き込む。彼が貧血で顔色が悪くなっていないか、気分を悪くしていないか、それを窺うように。何しろこの応急処置を人間に施すのは初めてだ。果たして上手くできただろうか、相手の痛みは消えたか、確認して)


(/連絡も寄越さず、長らく留守にしてしまって申し訳ございません。背後で色々と状況変化があったのですが、言い訳がましくなってしまうので自重させて頂きます。愛想を尽かされても仕方のないことをしでかしてしまったので、これ以上の絡みが無駄と思われるかもしれません。もしその場合は、此方を切り捨てて頂いて構いません。わざわざ上げて下さり、ありがとうございました。)

  • No.67 by とある青年  2018-07-23 22:31:45 


(/更新通知がきて心臓が飛び跳ねるかと思いました笑 おかえりなさい。背後様の方で状況変化があったにも関わらずまた戻ってきていただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます。ぜひ続けてお相手させていただきたいです。ラザロとハリーとはこれからまた1歩歩み寄っていくような場面ですので、このあとの話を紡げるのがとても嬉しく思います。まずは本体のみお返事させていただきます。本文の方はもう少しお待ち下さい)

  • No.68 by とある青年  2018-07-24 00:04:24 


ほんとに?僕の血があれば君の力を引き出せるのか…それならもう少し僕の血を飲めば君の力で呪いを突破できるかもしれないな。今はまだ、血はあげられないけど

(屋敷を吹き飛ばせるかもという言葉には一縷の望みを見るように顔を明るくさせる。自分の血をラザロに与え、彼が力を手にしたところで呪いを打ち破る…それで魔女を吹き飛ばせるなら2人で屋敷を出るという望みが叶えられるのだ。今2人が望む1番の結末ではないか。未だ血の気が引いた顔を浮かべる身としては、今すぐに吸血して屋敷から脱出を…とは言えないが、ラザロが本来の力を取り戻すまでハリーの血を飲み続ければ希望が現実になるかもしれない。ラザロの決心など知りもしないままハリーは彼に吸血されることに積極的になっていて)

ん……っ!!____!___っ……

(ラザロを疑っているわけではないが噛まれた場所に何をするのかハリーは検討もつかなかった。また痛みがあるかもしれないと覚悟をしているとふいにざらりとした冷たいものが傷口をはって体が強ばる。それがラザロの舌だと認識するのにはしばらくかかった。舌は人間のものよりも冷たいが、舌が這うのと同時にかかる吐息は暖かく、濡れた箇所をくすぐるようだ。思わず情けない声が出そうになって口を手で覆う。彼は真面目に傷の治療をしているのだ、おかしな声を出すわけには行かない。それでも今の状況を客観的な視点でみれば如何わしい事をしているように見えてしまう。頭の中に浮かんだ客観的視点を目を強く瞑る事で振り払った)

…っは……あ、…いや…、だい、じょうぶ、だ…いまのが、処置?

(ようやく処置が終わると詰まらせていた呼吸を一気に吐き出し粗く息をする。顔の周りが熱く、息を抑えていたのと羞恥心から顔が赤くなっているのは容易に想像できた。顔を横に向けてこちらをのぞき込むラザロと目線を合わせないようにしつつ、口は未だ手で覆ったままにして顔を隠す。彼を信頼してはいたが心の準備として何をするのかせめて聞いておくべきだったと今更後悔していて)

  • No.69 by 吸血鬼  2018-07-24 00:50:08 



……おいおい。実現可能性は限りなく低い、あまり期待しないでくれ。それに俺は、もう二度とお前の血を飲むつもりはないよ


(表情を輝かせたハリーに対して、ラザロは済まなそうに苦笑いを浮かべて過度な期待をしないように促す。いくら彼の血が極上で、ラザロの魔力を漲らせる効果があるとはいえ、ラザロの持つ力の絶対量が増えるわけではない。肉体も命も、その全てを注ぎ込んだ最大にして最悪の魔女の呪いには、万全の状態であっても勝ち目は薄い。奇跡が起きれば別だが、それ以前にラザロはもうハリーの血を飲む気はない。きっぱりと、それは伝えておいて)


ああ、そうだ。何分初めての挑戦だ、不手際があったなら謝る。……ん、顔が赤くないか……?まだ足りなかったか……、


(今のが処置かと問われれば、自信をもって頷く。だが、何やら相手の様子がおかしいようで、自分のやり方に問題があったのかと推測し、申し訳なさそうに眉を下げて。相手の顔をじっと覗き込んでいれば、目線も合わなければどうやら頬が上気しているようだ。心なしか呼吸も荒く、途切れ途切れに零れる言葉もどこか苦しそうで。応急処置が不完全だったのかと盛大な勘違いをし、もう一度相手の首筋に顔を埋めようと近づけて)


(/こんなに快く受け入れて下さるとは思ってもおらず……此方こそまさか、という思いです。本当にありがとうございます。不束者ですが、今後ともよろしくお願いいたします/お辞儀
早速ですが、近いうちに、ラザロとハリーが互いに抱いている気持ちがlikeではなくloveであると自覚させるためのイベントを起こしたいと考えております。その時に晴れて両想いになり、結ばれることとなる予定ですが、いかがでしょうか。「まだ早い、もう少しじっくりこの関係を楽しみたい」など、他にもご意見がございましたら、何なりと仰ってください。)

  • No.70 by とある青年  2018-07-24 12:42:38 


…そうか、そう上手くはいかないか。僕は君が死んでいくのを止められないんだな…ここから出られれば僕の血を惜しみなく君にあげられるのに

(2人で協力すればとの思いつきは現実的ではないらしく残念だと首をふる。自分の血を飲むだけでラザロに活力が溢れるならいくらでもラザロに吸血されよう。それは先程の応急処置の副作用を知らないが故に出る発想かもしれないが、ラザロのためになるなら自分を惜しむ必要もない。だがそれは幽閉されている現状において、ラザロが望む餓死の結末を無駄に伸ばすことになってしまう。視線を天井へと向けるとぶつけようのない怒りを睨みに変えた。ここから出られさえすればラザロは自害することもないし何より自由に暮らすことができるだろう。その時になっていつの間にかこの屋敷を出たとしてもラザロと一緒にいることを前提に考えている自分に気がついた)

ちょ、待てっ、大丈夫…もう大丈夫だラザロ。もう痛くないよ。ただ、その……まさか、傷口を舐められると思ってなくて…ちょっと驚いただけだ、君の処置はうまくいってるよ

(もう一度顔を近づけてきた相手を慌てて止める。ラザロの額と肩とにそれぞれ手を添えてこれ以上近づかないようにしながら目線を合わせてもういいと首をふった。幾分かマシになったがやはりまだ顔が熱い。応急処置のためとはいえラザロに首筋舐められたという事実をじわじわと理解していくと心臓が妙に脈打つ感覚に陥る。その理由まではまだ理解できずにいた)

(/いえいえせっかく作りこんでいていただいた世界観でまだまだラザロとハリーですごしてみたいと思っておりましてので…こちらこそ至らぬ点も多々あるかと思いますが、改めましてよろしくお願いします。
ついに気持ちの変化の時ですね…!プラトニックな雰囲気も好きですが、甘いちゃなこともできればなと思っておりましたので…ぜひ結ばれるイベントをお願いします!)

  • No.71 by 吸血鬼  2018-07-24 21:35:51 



……?いや、俺がお前の血を吸わないのは、なんというか、こう……お前にもう、二度とあのような思いをさせたくないからというか……、……上手く、言葉に出来ないが。ふ……、気持ちだけで嬉しい。ありがとう


(ハリーの言う、“ラザロが死んでいくのを止められない”という言葉にどこか違和感を抱いたようで、考え込むように拳を口元に当てて数秒間黙り込む。確かにこれまでのラザロは、魔女の意思に抗い、緩やかな餓死を求めて意図的に吸血を拒んでいた。だが、ハリーに対する想いは、それとは違う。ただ単に自分の目的のためにハリーの血を吸わないと決めたのではなく、もう彼に痛くて怖い思いをさせたくないから、彼からの吸血を金輪際自重しようと思ったのだ。自分自身、どうしてそんな風に思い至ったのかまだ整理がついておらず、言語化にするのはたどたどしくなってしまったが。そして、屋敷から解放されれば…というハリーの言葉に、一瞬だけきょとんとすれば、吐息を零すように小さく笑う。もしも万が一屋敷から出られれば、二人が一緒にいる理由はもうなくなってしまうと、諦めにも近い感覚をラザロは持っている。だから、ハリーに向けられた微かな笑みは、社交辞令に対する少し寂し気なニュアンスを含んでいて)


ん……そうか。なら良かった。そうだ、色々あって本来の目的を忘れていたな、…………少しサイズが大きいかもしれないが、これを着てくれ


(ハリーの静止には素直に従うも、なぜか慌てた様子の相手に不思議そうな視線を向ける。応急処置が終わって一息つくと、もともとこの寝室に来た本来の目的のことを思い出して。ベッドから離れて、古い大きなクローゼットをごそごそと探る。そして、ダークグレーの綺麗なスウェットを見つけ出し、それをその場で広げてみる。自分が着た形跡はなく、恐らくまだ新品だ。匂いの類も気にならない。ただ懸念があるとしたら、ハリーよりワンサイズほど大きいかもしれないこと。だがそれでも、バスローブのままでいるよりはましだろうと、相手にそれを差し出して)


(/かしこまりました。イベントのざっくりした概要としては、魔女の策略で、二人が物理的に引き離されそうになります。そこでラザロはハリーに「行くな」と言い、ハリーは自分の意思で「ここに残る」と言う、晴れて二人は結ばれる……というものになる予定です。イベントゆえ、多少の確定ロルを使ってしまうことが予想されますが、ご了承いただければ幸いです。)

  • No.72 by とある青年  2018-07-25 01:08:31 


…僕が痛みを感じるようなことはしたくないってこと?つまり、僕を傷つけたくないから、でいいのかな。だとしたらすごく嬉しいよ。気持ちだけって…ラザロ、君は…ここから、2人で出られたとしても…僕と一緒には…

(ラザロがたどたどしく語る言葉に静かに耳を傾け、バラバラの言葉を繋ぎ合わせる。導き出した言葉が正解ならば、彼が自分のことを思いやってくれている証拠であり、自分で言葉を形にしておきながら体がむず痒かった。しかし、直後彼が浮かべた顔には寂しさの感情が垣間見えて、ラザロが何を考えていたのか大体の察しがつく。すぐさま屋敷の外でも一緒にいよう、と叫ぼうとするが、ラザロが窓越しに外を眺めていたあの光景が脳裏によぎった。ラザロが自由を得た時に人間である自分と一緒にいる意味はあるのだろうか。寿命は雲泥の差があり食すものさえ違う。奇しくもラザロと同じ考えが頭をよぎり、うまく言葉を紡ぐことはできなくなっていた)

あぁ、そういえば着替えに来たんだった。すっかり忘れてたよ。ありがとう。
_____さすがに君のサイズだとこうなるな

(本来の目的、と言われてもしばらくその内容を思い出せずにいたが、ラザロがクローゼットに近づいてようやく目的を思い出す。ベッドから降りて、広げられたシンプルなダークグレーのスウェットをみると悪くないと数度頷いた。礼を言いながらスウェットを受け取るとパーティションの裏へまわりバスローブを脱いでスウェットを着る。しかし案の定というべきか、身長に明確に差があるラザロの服を着ると袖口は手のひら部分まで伸び、スボンは布が余りきって裾が引きずられる状態だ。パーティションの裏から出てきてラザロに現状を見せれば苦笑いを浮かべる。だがそれでもバスローブよりかは暖かく、夜を過ごすにはちょうど良い服装となりそうだ)

(/イベント概要了解いたしました!では概要を念頭におきましてイベント挑みたいと思います。確定ロルの件も了解です。イベント進行のためには必要なことですので気にせずどうぞお使いください!)

  • No.73 by 吸血鬼  2018-07-25 09:54:00 



そう、……そうだ。人間に対して、いや、誰かに対してこんな想いを抱くのは初めてだが。…………もしも、此処から出られたら。俺は自由を取り戻し、お前は夢を取り戻す。……違うか?


(自分が言いたかったことを的確に言葉にしてくれたハリーに、目の覚めるような思いで頷いた。自分は彼を、傷つけたくないのだ。餌である人間にそんなことを思うなんて、吸血鬼の常識では異端とも言えるとても酔狂な話だが、然してそれを悪くないと思ってしまう自分もいた。けれど、もしハリーとは別の赤の他人に対しては、同じ感情は抱かないだろう。餌として、一片の躊躇いもなくその首筋に牙を突き立てるはずだ。どんどんラザロの中に、ハリーを特別視しているという自覚が生まれ始める。だが、その先に待っているのは儚い現実だ。この屋敷から出られる目途が立ったわけではないが、その未来へ思いを馳せれば、ラザロは視線をハリーから逸らした。ハリーと離れたくない。だが、彼には背負う過去と譲れない夢があることを、知ってしまったから。自分自身に言い聞かせるように、ラザロは言葉を紡いだ)


ふむ……不便かもしれないが、寝間着だと思って我慢してくれ。それに、……そんなに悪くない


(ベッドから立ち上がった相手に、貧血は大丈夫なのかと一瞬ヒヤリとするが、自分の力で難無く着替えを済ませた辺り、恐らく大丈夫なのだろう。やはり、と言わんばかりに苦笑を浮かべたハリーの姿を、顎に手を当てながら一瞥して。自分の服を誰か別の者が着る、という感覚があまりに不思議だが、相手がハリーだからだろうか、それも悪い気はしなかった。ぶかぶかまではいかないが、ゆったりとスウェットを着こなす姿に、どこか愛おしさを覚える。それが愛しいという感情であるとはラザロ自身気づいていなかったが、ハリーの姿を見る視線はとても穏やかで)


俺の体内時計が正しければ、もうすく朝焼けだ。昼夜逆転させてしまって済まないな。明日の朝食……いや、夕食か。その時は、精のつくものを出させよう。


(寝支度が整ったところで、ふと今の時間に意識が向かう。吸血鬼である自分が、ほんのりと眠気を感じているということは、もうすぐ朝日が昇る頃なのだろう。今日は騒動があって、彼を人間界での正しい時間に寝かせてやれなかったことを謝って。そして、自分が少なくない量のハリーの血を奪ってしまったことから、造血効果のある食事を使い魔に用意させることを宣言しておく。コウモリたちによる、割れたシャンデリアの破片の掃除もちょうど終わったようだ。ラザロもその場で一つ伸びをして、自分の寝床である棺に向かって)


(/ありがとうございます。それでは、背後はこのあたりで失礼いたします。重ねてのお願いになりますが、今後ともよろしくお願いいたします。)

  • No.74 by とある青年  2018-07-25 18:51:06 


…そうか、君がそんな気持ちを初めて抱く相手が僕で、僕はすごく…嬉しいよ。だから、ラザロ…君の言うことは正しい。けど、僕は…

(ラザロが持った初めて他人を思いやる気持ちが自分に向けられていることにこの上ない幸福を覚える。彼の中で特別な場所に自分がいることが嬉しくて仕方がなかった。そして、ハリーにとってもラザロは同じ位置にいる。こんなにも1人の人物から離れたくないと思ったのは初めてだ。この屋敷の内だろうと外だろうと関係ない、ラザロのそばにいたかった。だがラザロから視線を外されると途端に心は揺れる。ラザロは自由になり、ハリーは過去の夢を追いかける…それはこの屋敷にいた当初に自らそうしたいと願ったことだった。彼が目線を外して別れるべきだと言うなら、ラザロはその結末を望んでいるのかもしれない。理屈を考えれば吸血鬼と人間と一緒にいれるはずがないのだから。絞り出すような声では曖昧な返事しかできず、彼の方を見ていられなくてこちらからも顔を反らした)

それって僕のことからかってる?まぁでも君が悪くないっていうなら、悪い気はしないよ

(人間案外丈夫なもので体の気だるさはあるものの貧血で倒れる事態は避けられた。明らかにサイズの合っていない服を着ているのにそれを穏やかな顔で肯定されるとなんだか気恥ずかしくて、それを誤魔化すように人差し指を向けながら冗談を投げた。サイズこそラザロのものではあるが、このスウェットは新品であり彼が着たことのあるものではない。もしこれが彼の普段着だったら、もっとやり場のない気もちを持っていただろうなと想像し、そこで頭を降って邪念を振り払った。変に頭に刺激を加えたことで脳内がふわりと浮く感覚に陥り、ストンと重力に引っ張られるままベッドに腰を落とす。動ける体ではあるが血を多量失ったのは確かでこれ以上は動かない方が良さそうだ)

もうそんな時間か…いろいろなことがあったから仕方ないよ、気にしないでくれ。そうだな、力のつく夕食だとありがたい。明日からは君と屋敷を回る約束があるのにベッドから動けないなんて残念なことになりたくないからね。それじゃあ…おやすみラザロ

(この体の気だるさは血が少なくなっただけな理由ではないらしい。夜更かしどころか随分と長い時間起きていたようだ。思考が寝ようという方向に傾くと一気に眠気が襲いくる。倒れるようにしてベッドへ寝転がると布団に入ることもなく、こちらに背を向け伸びをするラザロの方を眺めた。こうやっておやすみを言えるのはいつまでなんだろう…先程の屋敷から出た後の話を思い出して胸が詰まる。体は睡眠を欲していたが、ハリーは少しでも長く彼を見ていたくて、しばらく目を開けたままにしていた)

  • No.75 by 吸血鬼  2018-07-26 00:02:44 



っ…………。……いきなり、済まない。だが、こうしなければ……今抱き締めなければ、いけない気がしたんだ。この感情を言葉にすることは難しい……だが、こうして触れる体温だけは確実だ


(嬉しい、と。彼はそう言ってくれた。そして、異種族である二人が一緒にはいられないということを、理屈では分かっていても、それに抗おうとして言葉に詰まったハリーに、胸が詰まるような思いになる。そして気が付けば、彼を抱き締めていた。乱暴にではないが、強く、とても強く。ハリーの鼓動、ハリーの肌、ハリーの体温、それら全てを実感すればするほど、この腕からもう放したくないという気持ちが溢れ出る。それはとても身勝手で、自分よがりな感情。抑えることは至難の業だった。もしかして魔女はこういう気持ちだったのではないか、と頭の片隅で考えれば、少し吐き気を覚えるが、それもハリーの髪の香りが心地よさへと塗り替えて)


深い意味はないさ。……ああ、だが少しでも具合が悪ければ無理はするな。心細くないように、傍にいてやろう。――さすがに風邪を引くぞ。ほら、きちんと肩まで。


(揶揄っているかと問われれば、彼と出会った当初のことを思い出し、微かに笑って否定をする。あの時とは立場が逆だ。屋敷探索の約束については、自分も楽しみにしている。だが、何よりもハリーの体調が大事なので、無理はしないようにと釘をさして。ふと、背後から視線を感じて振り向けば、ハリーが布団も被らないままに横たわっていた。優しく微笑みながら、もう一度彼のベッドまで歩み寄り、優しく毛布を上からかけて。寝てる間に彼が寒い思いをしないようにと、隙間風が入らないようにしっかり肩まで毛布を引き上げて)


ああ。おやすみ、ハリー


(そうして満足げに、ラザロはハリーの就寝の挨拶に応えた。離れ際に、彼の頭を一度だけ優しく撫でて。馴染みの良い棺の中に横たわりながら、ラザロの心中には様々な思いが渦巻いていた。その正体も、行き場も分からないまま、疲労の波に押し流されるように、ラザロは意識を手放した)



(そして十数時間が過ぎ、時刻はおおよそ夕暮れ時。ハリーが目を覚ました頃には、もうラザロは棺の中にはいなかった。風呂か、書斎か、どこに行ったのだろうか)


――――ハリー!来てくれ!


(突然屋敷に響き渡ったのは、切羽詰まったラザロの声。どうやら助けを求めているようなニュアンスだ。その声はどうやら、玄関ホールから聞こえてきているようで)

  • No.76 by とある青年  2018-07-26 01:09:53 


っ、ラ、ザロ…ラザロっ……大丈夫、僕も今君に、こうして欲しいと思ってた…こうしてると、君を感じる……

(気がついた時にはラザロの腕の中にいた。反らしていた目は動揺で揺れて、幸福と悲しみが同時に胸を支配する。彼の名前を呼びながら背中に手を回してこちらからも強く抱きしめた。彼の肩に顎を置き、なるべく2人の体を近づける。きっと2人の思いは同じだ、どんな状況になろうと一緒にいたい、離れたくないと思いあっている。だが理屈がその思いの邪魔をする。吸血鬼と人間とでうまく過ごしていけるはずがないという理屈が、「一緒にいたい」とただそれだけの言葉を口にするのを阻害していた。ラザロに強く抱きしめられる度に彼の思いが伝わって胸が満たされ、同時に口にしてはいけない願望に胸が傷んだ。たった一言の本音を言えないまま、ついにラザロとハリーの体は離れてしまった)

あぁ分かった、無理はしないよ。せっかく暖かい君の服を貸してもらってるのにこのまま寝ちゃ意味ないな。…ありがとう、ラザロ

(ラザロがこちらに戻ってくるのをみると何事かと不思議そうな目で見上げるが、布団のことだと分かると苦笑いを浮かべた。だがそうやってラザロが自分のことを思ってくれるのが嬉しくてたまらない。毛布を肩までしっかりかけられると、彼を捉え続けようと開けられていた目はすぐに微睡んでいく。彼の手が頭を撫でると言いえぬ安堵と幸福とが胸に溢れ、自然と瞼は閉じるとそのまま眠りに落ちていった)




(翌日、体が起きるまでたっぷりと寝て起きてみると時刻は夕暮れ時だった。いつもなら朝の決まった時間に自然と起きるのに、昨夜はいろいろとありすぎたせいか体も休息を優先したようだ。ベッドから起き上がり周囲を見回すが部屋にラザロはいない。とりあえず彼を探そうかと思った矢先、彼の声が遠くから聞こえる。緊急を知らせる切羽詰まった声でどうやら玄関ホールから聞こえてきているようだ。慌ててベッドから降りるとスウェット姿のまま玄関ホールへ走る。ズボンの裾が足に絡まりそうになるのを必死に引っ張りあげながら一直線に玄関ホールへと向かった)

ラザロ!どうした?!

(玄関ホールにたどり着くや否や声を上げて彼を呼ぶ。いったい彼の身に何が起こったのか。昨夜のように魔女の策略でないことを祈りながら、ハリーはラザロを探していた)

  • No.77 by 吸血鬼  2018-07-27 18:05:56 



(ハリーより一足先に起床したラザロ。棺から出て、一晩で凝り固まった身体を解すようにゆったりとした伸びを一つ。シャワーでも浴びるか、とバスルームに向かおうとした時、視界にハリーの眠るベッドが入る。そちらへと歩み寄れば、すやすやと気持ちよさそうに眠る彼の姿。その無防備な顔を見ているだけで、冷え切った身体が熱を持つような気がする。無意識のうちに表情が綻ぶのだ。どうか、どうかこの先もずっと――――)


…………俺は何を考えているんだ


(陳腐な仮想は思い浮かべるにも値しないとでも言わんばかりに、ラザロは自嘲気味に笑い、数回かぶりを振った。それはただただ自分勝手なエゴだ。彼には、人間界に置いてきた夢があるのだから。それでも、ハリーの心が大きく揺れているのを、ラザロは感じ取っていた。けれど、期待しすぎては此方が傷つく――魔女のせいである種諦観が身に染みたラザロは、頭を冷やすべくバスルームへと向かった。そしてシャワーを済ませ、柔らかいバスタオルで身体を拭いていると、何やら騒がしい声が玄関ホールから響く。ハリーが、自分の名を呼んでいるような気がした。はっきりと聞こえたわけではないが、彼の危機を本能で感じ取ったのか、ラザロは魔法ですぐに衣服をまとうと、髪の毛から水滴を滴らせたまま玄関ホールへ駆け寄って)


ハリー……っ?!

『 ―――― オ 馬 鹿 サ ン …… 』

(玄関ホールへ足を踏み入れた瞬間、扉の前あたりにハリーの姿を見つける。その直後、魔力で数日間は封じたはずの魔女の声が屋敷に響いた。けれどそれは、ジャミングを無理に突破して喋っているような、聴けたものではないおぞましい声。魔女の声を契機に、ハリーの身体が謎の強い力で引っ張られ、その瞬間玄関ホールの扉が勢いよく開き、ハリーを屋敷の外へと文字通り放り出した。かなり乱暴で凄い勢いで吹っ飛ばされたので、受け身に失敗すればダメージは必至だろう。ラザロはあまりに一瞬の出来事に眉間に皺を寄せて目を瞠る。ハリーを屋敷の外に強制的に締め出した次の瞬間、大きな音を立てて扉が固く閉ざされた。扉と扉がぶつかり合う重厚な音が屋敷内に木霊し、ラザロは独りになった)


ハリー!!ハリー、聞こえるか!怪我はないか!


(だが、想定外の事態にいつまでも呆けているラザロではない。すぐにこれが、ハリーを屋敷から排除し、ラザロと引き裂いて二度と自分たちが会えないようにするための、魔女の策略だということを察知し、ラザロは扉へと駆け寄る。固い鉄の扉を、拳が傷つくのも構わず何度も叩き、ハリーの名を叫ぶ。彼がもしこの扉にぴったりとくっついてくれれば、分厚い扉越しにでもなんとか微かに相手の声を聞き取れ、会話することは出来るだろう)

  • No.78 by とある青年  2018-07-27 20:03:59 


あれ?ラザロ……っ、なっ…!

(彼の姿を探し玄関ホールを見回していると、後方からラザロの声が聞こえる。振り返るとそこには探していた彼がいて、服こそ着ているが髪は濡れている。先程までバスルームにいたことは明らかだった。それではここから聞こえてきた声は…その答えにたどり着く前に不快な音が響いた。全身の毛を逆立てるような忌まわしい声、それを認識すると同時に体が後方に思いっきり引っ張られた。咄嗟に何か掴むものを探すも、手は宙を掻くだけで体は屋敷の外へと放り出される。一瞬だけ宙を舞った体は容赦なく地面に叩きつけられその上を転がり土埃が舞った。頭を守るように受身をとったものの、ようやく止まった全身からはじんじんと痛みが伝わってきている)

…い、った……あぁ……

(腕を使って上半身をとりあえず起こすと、目の前には既に扉が閉ざされた屋敷がたっていた。油断していた、ラザロが昨夜魔女の声を消して見せた時から暫くは大丈夫だろうと思い込んでいた。そしてラザロが助けを求めて自分の名前を呼ぶ声に、一目散に駆け寄ってしまった。魔女にラザロの声を使って罠にかけられたことに怒りを覚える、同時に本物のラザロの声と偽物のそれとを見分けられなかった自分にも腹が立った。怒りを深い呼吸に何とか変換しながら痛む体を無理やり立ち上がらせた。その時、夕暮れ時の澄んだ空気が森を駆け抜ける。まるでハリーの怒りを鎮めるように。その時になってハリーはようやく自分が屋敷の外に出たことを理解した。いつ出れるかも分からない陰鬱とした屋敷から、今は逃れられている。まだ森の道は見える時間帯、このまま踵を返して森を進めばそのうち自分の家へとたどり着く。夢を叶えることができる、あいつとの約束を果たせる…そうやって数秒立ち尽くした後、扉を何度も叩く音に意識を取り戻した。口からは自然と彼の名前が漏れだす。痛む体をなんとか動かし固く閉ざされた扉の前に立った。微かに彼の声が聞こえるが、一気にラザロとの距離が離れてしまったようで焦燥感が襲いくる。なんとかその声を聞き取ろうと扉に耳をつけ彼の声を聞き取ろうとした)

ラザロ!全身軽い打撲と擦り傷があるけど、僕は無事だ!だからそんなに扉を叩かなくていい、君の手の方が壊れる!

(屋敷に入った時はあんなにも簡単に扉は開いたのに、今は取手をいくら回してもビクともしない。彼に少しでも声が届くように、喉を開いて大声で扉越しの彼に話しかけた。ラザロと一緒に屋敷から出ると約束したのだ、1人だけ逃げるなんてできない。それは昨夜から押し殺していたラザロと共にありたいという願いから生まれた思いだったが、まだそれを口にすることは出来ていなかった。扉に体を寄せているとラザロが力任せに扉を叩いていることが嫌というほど分かる。それはまるで自分を省みない悲痛な叫びのようで、胸が潰れそうだった。このままでは先にラザロが壊れてしまう、そんな事はハリー自身が許せなかった)

  • No.79 by 吸血鬼  2018-07-27 22:02:30 



っ…………。ハリー……。


(普段大声を出すことなどない自分があんなに声を張り上げたのは、それこそ何百年ぶりで、喉がその負担の大きさを訴え、軽く数回咳き込む。それでも、まだハリーに声が届くこと、彼の声が聴こえること、彼が重傷を負わなかったことに安堵し、彼の名を呟きながらずるずるとその場に崩れ落ちる。そのまま態勢を変え、扉を背もたれにして床に座る形になって)


…………これで、よかったと思うか?


(思い出すのは、彼がこの屋敷に迷い込んできた初日のこと。彼は間違いなく、この屋敷から出たがっていた。そしてそれが今、現実になったのだ。ラザロは次に、自分の気持ちに思いを馳せる。ハリーに向ける感情はとても難しいが、はっきりと分かることは、彼にずっとここにいて、自分と一緒に暮らしてほしいということ。だが、果たしてそれが彼の為になるだろうか。自分には、そう思えなかった。これでよかったんだ。そう思い込もうとして、けれどどうしても溜飲が下がらない。その複雑な思いは、一つの問いとなって口から零れ出て)

  • No.80 by とある青年  2018-07-27 23:04:47 


ラザロ……ははっ。あぁ、ダメだ

(自分の声が届いたのか、微かにラザロが自分の名を呼ぶ声が聞こえて扉を乱暴に叩く音が止んだ。彼が自分を壊す前に止まってくれたことに安心しながらも、先程聞こえた自分の名前を呼ぶ声をもっと近くで聞きたいと思った。こちらを見る彼の目を見つめながら名前を呼ばれたいと思った。ラザロの顔が見たい、ラザロの声を聞きたい、昨夜のようにラザロの腕の中にいたい。そこで思わず場違いの笑いが零れてしまった。もう言い訳ができないほどに胸はラザロへの感情で溢れていて、屋敷に来る前の自分と決別するように一言諦めの言葉を口にしていた。もう目を逸らせない、今すぐラザロに会いたい、ラザロのそばにいたい。夢もあった、約束もあった、外に出たいと思っていた。でも今はそんな過去よりも、ラザロの隣にいたかった。ずっと閉ざしていた感情と向き合う時だ。誰かとの深い繋がり、何気ない日常、たわいない会話…それらをラザロと築きたい)

良いわけないだろう、ラザロ!僕はまだ君とやりたいことも話したいことも山ほどあるんだ!僕は君のそばにいたい、それが例えこんなバカバカしい屋敷の中だろうと!僕らは必ず2人でこの屋敷を出る、そしてその後も、ずっと僕らは一緒だ!

(ラザロはまだ扉のそばにいる。扉に両手を添えありったけの声で胸に溢れた感情をぶつけた。そして拳を握り、思いっきり扉を叩く。負傷の身であるとか、吸血鬼で破れなかった扉を人間が破れるわけないだとか、そんな言い訳や理屈はどうでもいい。先程ラザロがやったように、自分の拳を省みず扉を力の限り叩き続けた。こんな形でラザロと別れるなんてごめんだ、魔女の思惑通りになってたまるものか。ただラザロの隣に居たいだけだ。ラザロの名を呼びながら何度も何度も自分の拳で扉を叩く。この扉が開かれ彼に会えるまでこれを止めるつもりは無かった)


  • No.81 by 吸血鬼  2018-07-30 19:59:30 



――――ハリー……っ


(分厚い鉄の扉の向こうから、背中越しに聞こえてくる声には、聞こえる以上の情熱がこもっていて。その熱量に圧されて、こちらも胸に熱いものが込み上げる。そうだ。複雑なことなんて何もなかった。自分はただ、彼と一緒にいたいだけだ。そして、彼も同じように、自分と一緒にいたいと思ってくれていることは、ラザロの生涯で最大の僥倖だろう。魔女に一生軟禁されるという究極の不運が、皮肉にも究極の幸運を招き入れてくれたのだ。そう考えた途端、ラザロの胸中にずっと渦巻いていたどす黒い何かがすっと取り除かれた。澱みのない動きで立ち上がり、そっと扉に手を添える。ハリーが力の限り扉を殴り続ける振動が、少しだけ、しかし確かに伝わってきた)


もういい。もういいんだ、ハリー。


(落ち着いた声音でそう告げれば、扉に添えた手に人の目には見えぬ魔力が集約されていく。それは、これまで何度も繰り返してきた行為だった。自分の魔力で、強引にこの忌々しい扉をぶち破り、外へ出るために。だが、成功したことは、一度だってなかった。けれど、何千回と繰り返してきた時と、全く違う感情が、今のラザロには溢れていた。自分を閉じ込めた魔女に対する憎悪ではなく、ただただ愛しいハリーにもう一度会いたいという穏やかな気持ち。それに呼応するかのように、扉は信じられないくらいに滑らかに開いた。400年ぶりに、外の景色を見た。そしてその森の景観なんてどうでもいいくらいに、目の前に立っているハリーをじっと見つめた。思わずその頬に手を伸ばすも、見えないバリアのようなものに己の手は弾かれ、白い火花が虚空に散る。ああ、扉が開かれたからといって、自分が此処から出られるなんて、そんな単純な話ではないのだ、とぼんやり実感する。だが、自分が出られなくても、彼がこの屋敷へ戻ってくることは出来ると。理屈ではなく、ラザロは確信していた)


行くな、ハリー。この屋敷から、いつ出られるか分からない。もしかすれば、お前を一生、この屋敷に閉じ込めてしまうかもしれない。だがそれでも、俺はお前にここにいて欲しい。……ずっと、俺の隣に、いてくれないか


(ハリーがぶつけてくれた感情を受け止め、そしてラザロもまた、自分が抱いている感情を、包み隠さず彼に伝える。それは、いつもなら後ろめたさを感じるような、とても自分勝手な内容。けれど、今ラザロの胸にあるのは、たった一つの願いだけ。それを後ろめたく感じる筋合いなんて、一体どこにあるだろう。魔女も屋敷も、どうでもいい。人間と吸血鬼、種族の隔たりだって構うものか。ラザロは、まっすぐにハリーの瞳を見つめながら、真剣な声音で思いの丈を吐露した)

  • No.82 by とある青年  2018-07-31 10:46:42 


……ラザロ…?

(扉に耳をつけていなかったせいでラザロが何を言ったのか、はっきりとは聞き取ることが出来なかった。だがその言葉は諦めの類の言葉ではなく、何か強い意志を持った言葉だと声色で分かる。乱暴に扉を叩いていた手を止めた。そして少しだけ間をおいて、あれだけ強固に閉ざされていた扉がゆっくりと開いていく。まるで幻を見ているように呆然とその様子を眺めていた。だがその先にいた、今すぐに会いたいと願った相手を前にすると自然と笑みが浮かぶ。伸ばされた手が自分の頬に触れるのを待ってみたが、残念ながらその手は弾かれてしまった。もどかしい思いが募る。どこまでも執念深い魔女だなと頭の隅で考えつつ、それよりも自分が次にとるべき行動について考えていた。過去へ誘う風はもう聞こえない)

…ありがとう。僕は君の隣にいたいんだ、ラザロ。君がいるのがこんな屋敷の中だろうと、あるいはもっと酷い場所だろうと、関係ない。僕は君の隣であれば何処へでも行く。だから僕はまだこの屋敷を出ていかない、僕は君のもとにいるよ

(どんな被害を被るかも分からず一生外の空気を吸うことができないかもしれない屋敷に吸血鬼と共に住まう…正気の沙汰ではないかもしれない。しかしもうハリーはそんな事が気にもならないほどにただただラザロの隣にいたくて、ゆっくりと自らの意志で屋敷へと再び足を踏み入れた。先程のバリアのようなものに弾かれることもなくラザロの前へと帰る。そして弾かれたラザロの手を取ると自分の頬へと導いた。自分より冷たい手が心地いい、それを堪能するように目を閉じた後、彼へと目線を向けて優しく微笑んだ。昨夜から言えなかった言葉をようやく口にして伝えることができた。ハリーが一生ここから出られない可能性を知りながらここにいて欲しいというラザロの願いは酷く我儘なのかもしれない。だがハリーはその自分勝手な思いを受け入れることで胸が満たされる思いだった)

  • No.83 by 吸血鬼  2018-08-03 09:17:41 



ハリー……ありがとう。俺たちの間には、難しいことがたくさんある。だが、それすらも関係ない。俺はこの屋敷で生涯を閉じるよりも、お前を失うことのほうが何倍も怖い。……命尽きるまで、傍にいてくれ


(身勝手な想いを真っ向から受け止めたうえで、想像を絶する覚悟を以って自らこの屋敷に再び足を踏み入れた彼の姿を見た瞬間、年柄にもなく涙がこぼれそうだった。それは寸でのところで堪えたが、心からの感謝を述べた声は少し震えていたかもしれない。すっと息を吸い込んで深呼吸をし、ハリーの頬に添えられた手を彼の後頭部へと回して優しくこちらへ抱き寄せる。勢いのままに強く彼を抱き締めながら、改めて一生に一度のお願い事をして)


『 ア り え ナ い』


(ギシギシと屋敷が軋む。地響きのような音と共に、地震が起きていると錯覚するほどに屋敷全体が震動する。ラザロの魔力による妨害で魔女の声は届かないはずなのに、それすらも突破して怨嗟を吐く醜い声は、今まで聴いた中で一番恐ろしく。だが、ハリーを失うことに比べれば、少しも怖いとは思わない。)


……いいや、これが俺の答えだ。俺はもう孤独ではない。お前の思い通りになど、なってたまるか


(ハリーを抱き締めたまま、彼の耳元で魔女へと囁く声には、爆発的な怒りや憎しみはこもっておらず、ただただ前向きな覚悟が渦巻いていた。心のどこかで全てを諦め、無意識に魔女に屈服していた昨日までの自分とは決別する。隣にハリーがいてくれる今、自分にできないことなどないと、本気でラザロはそう思えていた。心臓がないはずのラザロから、ドクン、という鼓動が一度だけ聞こえたのは気のせいではない。それが何を意味するのか今は定かではないが、それでも今まで持っていなかった大きな力が覚醒したことは何となく察しが付くだろう。その証拠に、魔女が放つ禍々しい邪気も、喧しかった屋敷の震えも嘘のように消え、清々しい静謐がこの屋敷に訪れて)

  • No.84 by とある青年  2018-08-05 22:52:20 


あぁ、多分僕らにはこれから嫌になるくらい考えなきゃいけないことがある。でも君の言う通りだ、関係ない。僕は僕が存在する限り、君の傍にいるよ

(彼に引き寄せられるまま胸へ飛び込んで全身を包まれる。彼の想いの分強く抱きしめられるようでその心地良さに自然と笑みが零れた。こちらからも背中に手を回して力の限り抱きしめる。吸血鬼のラザロにとってはこんな力では強く抱きしめられているうちに入らないかもしれない。こんなところでも2人には違いがある。これからもきっと吸血鬼と人間の差はより明確になっていくだろう。そんな悲観的な未来が予測されていても、ラザロの傍にいたいという願いは変わらなかった。抱擁では自分の想いが伝わるか不安で、顔を少しあげて彼の頬にキスを落とした)

っ、また…今君、何を……君の胸から鼓動が…魔女は消えた、のか?それともまた押さえ込んだだけ?

(ラザロの腕に収まっていると今までにない悪寒を感じる声に、首を締め付けられる感覚に陥るが、ラザロの決意の言葉が耳元で囁かれると気道は通り、魔女へと真正面から向き合うことを決めた彼にはまた笑みが漏れた。自分が屋敷を出る話をしても、どこかで諦めていたラザロが今自らの口で魔女に相対することを宣言した。それが自分の影響だと思うと彼の特別になれた気がして胸が暖かくなる。そうやって幸せを噛み締めていると密接していたラザロの体から明確に何かが震える音が聞こえた。それは胸から聞こえた振動で、そうなるとそれは鼓動ということになる。その直後に屋敷に漂っていた陰鬱な空気が一掃され、ここにはラザロと自分しかしなくなった。昨夜魔女を退けた時とは似ているようで違う感覚。ラザロに答えを求めるように困惑した目で彼の顔を見ていた)

  • No.85 by 吸血鬼  2018-08-12 01:45:51 


(/いつもお世話になっております。一週間も留守にしてしまって申し訳ございません……少々リアルの方が立て込んでおりまして、夜遅く帰ってきては泥のように眠る有様で、不甲斐ないです。お盆も立て続けに予定が入っているのと、大事な場面でありじっくりとレスを返したいという我儘もあり、本編での返信が出来るのはまだ先になるかと思われます。もし、短いロルでインスタントなレスでも良いから頻度を上げて欲しい、といった場合は、遠慮なくそう仰ってくだされば善処するつもりです。それでは、夜分遅くに通知失礼致しました。至らない背後ではありますが、今後とも宜しくして下されば幸いです/礼)

  • No.86 by とある青年  2018-08-12 13:49:32 


(/こちらこそ、いつもお世話になっております。お忙しい中ご連絡してくださりありがとうございます。此方としましては今までと同じようにじっくりやりとりが出来ればと思っておりますので、背後様のお時間ができた時にお返事いただければと思います。ゆっくり待っておりますので。お気遣いいただき本当にありがとうございます。何よりも背後様の事情、そして体調優先ですので、お体お大事にしてくださいね。こちらこそ、今後とも我々のペースでゆっくりお付き合いいただければ幸いです。)

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