吸血鬼 2018-06-27 00:10:52 |
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っ…………。……いきなり、済まない。だが、こうしなければ……今抱き締めなければ、いけない気がしたんだ。この感情を言葉にすることは難しい……だが、こうして触れる体温だけは確実だ
(嬉しい、と。彼はそう言ってくれた。そして、異種族である二人が一緒にはいられないということを、理屈では分かっていても、それに抗おうとして言葉に詰まったハリーに、胸が詰まるような思いになる。そして気が付けば、彼を抱き締めていた。乱暴にではないが、強く、とても強く。ハリーの鼓動、ハリーの肌、ハリーの体温、それら全てを実感すればするほど、この腕からもう放したくないという気持ちが溢れ出る。それはとても身勝手で、自分よがりな感情。抑えることは至難の業だった。もしかして魔女はこういう気持ちだったのではないか、と頭の片隅で考えれば、少し吐き気を覚えるが、それもハリーの髪の香りが心地よさへと塗り替えて)
深い意味はないさ。……ああ、だが少しでも具合が悪ければ無理はするな。心細くないように、傍にいてやろう。――さすがに風邪を引くぞ。ほら、きちんと肩まで。
(揶揄っているかと問われれば、彼と出会った当初のことを思い出し、微かに笑って否定をする。あの時とは立場が逆だ。屋敷探索の約束については、自分も楽しみにしている。だが、何よりもハリーの体調が大事なので、無理はしないようにと釘をさして。ふと、背後から視線を感じて振り向けば、ハリーが布団も被らないままに横たわっていた。優しく微笑みながら、もう一度彼のベッドまで歩み寄り、優しく毛布を上からかけて。寝てる間に彼が寒い思いをしないようにと、隙間風が入らないようにしっかり肩まで毛布を引き上げて)
ああ。おやすみ、ハリー
(そうして満足げに、ラザロはハリーの就寝の挨拶に応えた。離れ際に、彼の頭を一度だけ優しく撫でて。馴染みの良い棺の中に横たわりながら、ラザロの心中には様々な思いが渦巻いていた。その正体も、行き場も分からないまま、疲労の波に押し流されるように、ラザロは意識を手放した)
(そして十数時間が過ぎ、時刻はおおよそ夕暮れ時。ハリーが目を覚ました頃には、もうラザロは棺の中にはいなかった。風呂か、書斎か、どこに行ったのだろうか)
――――ハリー!来てくれ!
(突然屋敷に響き渡ったのは、切羽詰まったラザロの声。どうやら助けを求めているようなニュアンスだ。その声はどうやら、玄関ホールから聞こえてきているようで)
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