牙は深淵に堕つ、≪〆≫

牙は深淵に堕つ、≪〆≫

吸血鬼  2018-06-27 00:10:52 
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森を訪れたとある青年は、狼に襲われ、逃げ込むように古びた屋敷へ足を踏み入れた。

しかしそこは、血を吸う鬼が孤独に住まう、呪われた屋敷であった――。


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  • No.80 by とある青年  2018-07-27 23:04:47 


ラザロ……ははっ。あぁ、ダメだ

(自分の声が届いたのか、微かにラザロが自分の名を呼ぶ声が聞こえて扉を乱暴に叩く音が止んだ。彼が自分を壊す前に止まってくれたことに安心しながらも、先程聞こえた自分の名前を呼ぶ声をもっと近くで聞きたいと思った。こちらを見る彼の目を見つめながら名前を呼ばれたいと思った。ラザロの顔が見たい、ラザロの声を聞きたい、昨夜のようにラザロの腕の中にいたい。そこで思わず場違いの笑いが零れてしまった。もう言い訳ができないほどに胸はラザロへの感情で溢れていて、屋敷に来る前の自分と決別するように一言諦めの言葉を口にしていた。もう目を逸らせない、今すぐラザロに会いたい、ラザロのそばにいたい。夢もあった、約束もあった、外に出たいと思っていた。でも今はそんな過去よりも、ラザロの隣にいたかった。ずっと閉ざしていた感情と向き合う時だ。誰かとの深い繋がり、何気ない日常、たわいない会話…それらをラザロと築きたい)

良いわけないだろう、ラザロ!僕はまだ君とやりたいことも話したいことも山ほどあるんだ!僕は君のそばにいたい、それが例えこんなバカバカしい屋敷の中だろうと!僕らは必ず2人でこの屋敷を出る、そしてその後も、ずっと僕らは一緒だ!

(ラザロはまだ扉のそばにいる。扉に両手を添えありったけの声で胸に溢れた感情をぶつけた。そして拳を握り、思いっきり扉を叩く。負傷の身であるとか、吸血鬼で破れなかった扉を人間が破れるわけないだとか、そんな言い訳や理屈はどうでもいい。先程ラザロがやったように、自分の拳を省みず扉を力の限り叩き続けた。こんな形でラザロと別れるなんてごめんだ、魔女の思惑通りになってたまるものか。ただラザロの隣に居たいだけだ。ラザロの名を呼びながら何度も何度も自分の拳で扉を叩く。この扉が開かれ彼に会えるまでこれを止めるつもりは無かった)


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