吸血鬼 2018-06-27 00:10:52 |
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(脳内を劈く魔女の高笑いも、我を失ったラザロにはもはや静寂に等しかった。今、脳を染め上げるのは、強烈な渇き。それはまさしくもう何日も水を飲んでいない漂流者が、渇きに耐え兼ねて海水を飲むが如く、飲んでも飲んでも足りない。夢中でハリーの血を貪るあまり、本来なら大好物なはずの血の味もろくに分からず。このままでは、あと1分もしないうちに致死量の血をハリーから奪い取ってしまう。だがそんなことを気にする余裕も今のラザロにはなく。魔女の目論見通り、ラザロはこのままハリーを喰い殺し、徒に延命するだけに終わる――はずだった)
――――……?
(ふと、耳に感じた吐息と、心地よい熱量。どこか、遥か遠くで、誰かが自分の名を呼んでくれる声が聴こえる。聞き覚えのある声だ。この声の主は、一体誰だったろうか。ピタリと、ラザロの喉の動きが止まり、吸血が一時中断される。ラザロの真紅の瞳が、何か大事なものを探しているように細かく揺らいだ)
ハ、リー…………?
(しゅるしゅると牙が縮み、自動的にハリーの首から牙が抜ける。止血作用のある体液の類でも牙から分泌されていたのか、吸血された傷跡の血は止まっている。ラザロの瞳にアメジストの光が戻り、ハリーの血で少しだけ濡れた口で、茫洋とその名前を呟いた)
俺……、俺は、何を……っ、すまないハリー、ハリー……っ
(ぼんやりと、蘇るここ数分間の記憶。背筋が粟立つほどの芳しい香りがしたかと思えば、まさしく飢えた獣のようにハリーの血を貪ってしまったこと。動揺と罪悪感から声が震え、視線は揺らぎ、己の下に組み敷いたままのハリーの首と後頭部に手を回してきつく抱き締め、縋るようにその名を呼んで)
(/健気なハリーくんに背後までキュンとしてしまいます……しばしの間シリアス展開を楽しみ、上手いこといちゃらぶまで持っていけたらいいなと思っております……!ではでは、今後ともよろしくお願いいたします/礼)
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