吸血鬼 2018-06-27 00:10:52 |
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(ハリーより一足先に起床したラザロ。棺から出て、一晩で凝り固まった身体を解すようにゆったりとした伸びを一つ。シャワーでも浴びるか、とバスルームに向かおうとした時、視界にハリーの眠るベッドが入る。そちらへと歩み寄れば、すやすやと気持ちよさそうに眠る彼の姿。その無防備な顔を見ているだけで、冷え切った身体が熱を持つような気がする。無意識のうちに表情が綻ぶのだ。どうか、どうかこの先もずっと――――)
…………俺は何を考えているんだ
(陳腐な仮想は思い浮かべるにも値しないとでも言わんばかりに、ラザロは自嘲気味に笑い、数回かぶりを振った。それはただただ自分勝手なエゴだ。彼には、人間界に置いてきた夢があるのだから。それでも、ハリーの心が大きく揺れているのを、ラザロは感じ取っていた。けれど、期待しすぎては此方が傷つく――魔女のせいである種諦観が身に染みたラザロは、頭を冷やすべくバスルームへと向かった。そしてシャワーを済ませ、柔らかいバスタオルで身体を拭いていると、何やら騒がしい声が玄関ホールから響く。ハリーが、自分の名を呼んでいるような気がした。はっきりと聞こえたわけではないが、彼の危機を本能で感じ取ったのか、ラザロは魔法ですぐに衣服をまとうと、髪の毛から水滴を滴らせたまま玄関ホールへ駆け寄って)
ハリー……っ?!
『 ―――― オ 馬 鹿 サ ン …… 』
(玄関ホールへ足を踏み入れた瞬間、扉の前あたりにハリーの姿を見つける。その直後、魔力で数日間は封じたはずの魔女の声が屋敷に響いた。けれどそれは、ジャミングを無理に突破して喋っているような、聴けたものではないおぞましい声。魔女の声を契機に、ハリーの身体が謎の強い力で引っ張られ、その瞬間玄関ホールの扉が勢いよく開き、ハリーを屋敷の外へと文字通り放り出した。かなり乱暴で凄い勢いで吹っ飛ばされたので、受け身に失敗すればダメージは必至だろう。ラザロはあまりに一瞬の出来事に眉間に皺を寄せて目を瞠る。ハリーを屋敷の外に強制的に締め出した次の瞬間、大きな音を立てて扉が固く閉ざされた。扉と扉がぶつかり合う重厚な音が屋敷内に木霊し、ラザロは独りになった)
ハリー!!ハリー、聞こえるか!怪我はないか!
(だが、想定外の事態にいつまでも呆けているラザロではない。すぐにこれが、ハリーを屋敷から排除し、ラザロと引き裂いて二度と自分たちが会えないようにするための、魔女の策略だということを察知し、ラザロは扉へと駆け寄る。固い鉄の扉を、拳が傷つくのも構わず何度も叩き、ハリーの名を叫ぶ。彼がもしこの扉にぴったりとくっついてくれれば、分厚い扉越しにでもなんとか微かに相手の声を聞き取れ、会話することは出来るだろう)
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