吸血鬼 2018-06-27 00:10:52 |
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あれ?ラザロ……っ、なっ…!
(彼の姿を探し玄関ホールを見回していると、後方からラザロの声が聞こえる。振り返るとそこには探していた彼がいて、服こそ着ているが髪は濡れている。先程までバスルームにいたことは明らかだった。それではここから聞こえてきた声は…その答えにたどり着く前に不快な音が響いた。全身の毛を逆立てるような忌まわしい声、それを認識すると同時に体が後方に思いっきり引っ張られた。咄嗟に何か掴むものを探すも、手は宙を掻くだけで体は屋敷の外へと放り出される。一瞬だけ宙を舞った体は容赦なく地面に叩きつけられその上を転がり土埃が舞った。頭を守るように受身をとったものの、ようやく止まった全身からはじんじんと痛みが伝わってきている)
…い、った……あぁ……
(腕を使って上半身をとりあえず起こすと、目の前には既に扉が閉ざされた屋敷がたっていた。油断していた、ラザロが昨夜魔女の声を消して見せた時から暫くは大丈夫だろうと思い込んでいた。そしてラザロが助けを求めて自分の名前を呼ぶ声に、一目散に駆け寄ってしまった。魔女にラザロの声を使って罠にかけられたことに怒りを覚える、同時に本物のラザロの声と偽物のそれとを見分けられなかった自分にも腹が立った。怒りを深い呼吸に何とか変換しながら痛む体を無理やり立ち上がらせた。その時、夕暮れ時の澄んだ空気が森を駆け抜ける。まるでハリーの怒りを鎮めるように。その時になってハリーはようやく自分が屋敷の外に出たことを理解した。いつ出れるかも分からない陰鬱とした屋敷から、今は逃れられている。まだ森の道は見える時間帯、このまま踵を返して森を進めばそのうち自分の家へとたどり着く。夢を叶えることができる、あいつとの約束を果たせる…そうやって数秒立ち尽くした後、扉を何度も叩く音に意識を取り戻した。口からは自然と彼の名前が漏れだす。痛む体をなんとか動かし固く閉ざされた扉の前に立った。微かに彼の声が聞こえるが、一気にラザロとの距離が離れてしまったようで焦燥感が襲いくる。なんとかその声を聞き取ろうと扉に耳をつけ彼の声を聞き取ろうとした)
ラザロ!全身軽い打撲と擦り傷があるけど、僕は無事だ!だからそんなに扉を叩かなくていい、君の手の方が壊れる!
(屋敷に入った時はあんなにも簡単に扉は開いたのに、今は取手をいくら回してもビクともしない。彼に少しでも声が届くように、喉を開いて大声で扉越しの彼に話しかけた。ラザロと一緒に屋敷から出ると約束したのだ、1人だけ逃げるなんてできない。それは昨夜から押し殺していたラザロと共にありたいという願いから生まれた思いだったが、まだそれを口にすることは出来ていなかった。扉に体を寄せているとラザロが力任せに扉を叩いていることが嫌というほど分かる。それはまるで自分を省みない悲痛な叫びのようで、胸が潰れそうだった。このままでは先にラザロが壊れてしまう、そんな事はハリー自身が許せなかった)
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