吸血鬼 2018-06-27 00:10:52 |
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……ラザロ…?
(扉に耳をつけていなかったせいでラザロが何を言ったのか、はっきりとは聞き取ることが出来なかった。だがその言葉は諦めの類の言葉ではなく、何か強い意志を持った言葉だと声色で分かる。乱暴に扉を叩いていた手を止めた。そして少しだけ間をおいて、あれだけ強固に閉ざされていた扉がゆっくりと開いていく。まるで幻を見ているように呆然とその様子を眺めていた。だがその先にいた、今すぐに会いたいと願った相手を前にすると自然と笑みが浮かぶ。伸ばされた手が自分の頬に触れるのを待ってみたが、残念ながらその手は弾かれてしまった。もどかしい思いが募る。どこまでも執念深い魔女だなと頭の隅で考えつつ、それよりも自分が次にとるべき行動について考えていた。過去へ誘う風はもう聞こえない)
…ありがとう。僕は君の隣にいたいんだ、ラザロ。君がいるのがこんな屋敷の中だろうと、あるいはもっと酷い場所だろうと、関係ない。僕は君の隣であれば何処へでも行く。だから僕はまだこの屋敷を出ていかない、僕は君のもとにいるよ
(どんな被害を被るかも分からず一生外の空気を吸うことができないかもしれない屋敷に吸血鬼と共に住まう…正気の沙汰ではないかもしれない。しかしもうハリーはそんな事が気にもならないほどにただただラザロの隣にいたくて、ゆっくりと自らの意志で屋敷へと再び足を踏み入れた。先程のバリアのようなものに弾かれることもなくラザロの前へと帰る。そして弾かれたラザロの手を取ると自分の頬へと導いた。自分より冷たい手が心地いい、それを堪能するように目を閉じた後、彼へと目線を向けて優しく微笑んだ。昨夜から言えなかった言葉をようやく口にして伝えることができた。ハリーが一生ここから出られない可能性を知りながらここにいて欲しいというラザロの願いは酷く我儘なのかもしれない。だがハリーはその自分勝手な思いを受け入れることで胸が満たされる思いだった)
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