牙は深淵に堕つ、≪〆≫

牙は深淵に堕つ、≪〆≫

吸血鬼  2018-06-27 00:10:52 
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森を訪れたとある青年は、狼に襲われ、逃げ込むように古びた屋敷へ足を踏み入れた。

しかしそこは、血を吸う鬼が孤独に住まう、呪われた屋敷であった――。


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  • No.81 by 吸血鬼  2018-07-30 19:59:30 



――――ハリー……っ


(分厚い鉄の扉の向こうから、背中越しに聞こえてくる声には、聞こえる以上の情熱がこもっていて。その熱量に圧されて、こちらも胸に熱いものが込み上げる。そうだ。複雑なことなんて何もなかった。自分はただ、彼と一緒にいたいだけだ。そして、彼も同じように、自分と一緒にいたいと思ってくれていることは、ラザロの生涯で最大の僥倖だろう。魔女に一生軟禁されるという究極の不運が、皮肉にも究極の幸運を招き入れてくれたのだ。そう考えた途端、ラザロの胸中にずっと渦巻いていたどす黒い何かがすっと取り除かれた。澱みのない動きで立ち上がり、そっと扉に手を添える。ハリーが力の限り扉を殴り続ける振動が、少しだけ、しかし確かに伝わってきた)


もういい。もういいんだ、ハリー。


(落ち着いた声音でそう告げれば、扉に添えた手に人の目には見えぬ魔力が集約されていく。それは、これまで何度も繰り返してきた行為だった。自分の魔力で、強引にこの忌々しい扉をぶち破り、外へ出るために。だが、成功したことは、一度だってなかった。けれど、何千回と繰り返してきた時と、全く違う感情が、今のラザロには溢れていた。自分を閉じ込めた魔女に対する憎悪ではなく、ただただ愛しいハリーにもう一度会いたいという穏やかな気持ち。それに呼応するかのように、扉は信じられないくらいに滑らかに開いた。400年ぶりに、外の景色を見た。そしてその森の景観なんてどうでもいいくらいに、目の前に立っているハリーをじっと見つめた。思わずその頬に手を伸ばすも、見えないバリアのようなものに己の手は弾かれ、白い火花が虚空に散る。ああ、扉が開かれたからといって、自分が此処から出られるなんて、そんな単純な話ではないのだ、とぼんやり実感する。だが、自分が出られなくても、彼がこの屋敷へ戻ってくることは出来ると。理屈ではなく、ラザロは確信していた)


行くな、ハリー。この屋敷から、いつ出られるか分からない。もしかすれば、お前を一生、この屋敷に閉じ込めてしまうかもしれない。だがそれでも、俺はお前にここにいて欲しい。……ずっと、俺の隣に、いてくれないか


(ハリーがぶつけてくれた感情を受け止め、そしてラザロもまた、自分が抱いている感情を、包み隠さず彼に伝える。それは、いつもなら後ろめたさを感じるような、とても自分勝手な内容。けれど、今ラザロの胸にあるのは、たった一つの願いだけ。それを後ろめたく感じる筋合いなんて、一体どこにあるだろう。魔女も屋敷も、どうでもいい。人間と吸血鬼、種族の隔たりだって構うものか。ラザロは、まっすぐにハリーの瞳を見つめながら、真剣な声音で思いの丈を吐露した)

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