きみと驚きに満ちた日々を

鶴さん、部屋の用意ありがとう！探してたのが僕で良かったよ。間違っていたら格好悪いからね（頬ぽり、はは）

精一杯鶴さんの相手が務まるように頑張るから、これからよろしくね！

これくらい、お易い御用さ！落とし穴を作るよりも簡単だしな(ふふん)

こちらこそ、これから宜しく頼むぜ？
話を始める前に、大まかな流れを考えておきたいんだが…どんな感じが良いとかあるかい？それを踏まえて流れを考えたいんだが。

確かにそうだね。…でも落とし穴を作るのは駄目だよ？みんなが怪我しちゃうからさ（苦笑、）

僕が考えてたのは舞台は白本丸、季節は紫陽花が咲く頃かな。元々僕達は恋仲関係で幸せに暮らしてたんだけど――毎日の日課である任務をこなす為に六振りで出陣した時代で僕か鶴さんのどちらかが折れる。それから一年が経ってまた紫陽花の咲く季節に本丸で再会するけど、その頃の記憶がないって言うありがちな流れだけど…どうかな…？

なに、怪我をしない程度に掘るのさ！もしも粟田口の短刀が落ちて怪我でもしてみろ、長兄が黙っていないだろうからな(はは)

成程、後出しの様になってしまうが俺も丁度そういう流れを考えていた。そこに追加をするなら、どちらかが折れるだけだと何だか驚きに欠けている気もしてな…どちらかが庇いそれが原因で折れる。それから生き残った片割れは心に深い傷を負い塞ぎ込む様になる。そんな時に二振り目が顕現し、心乱され、時には自身への怒りをぶつけてしまったりしながらも互いに歩み寄っていく。あとは…そうだな、折れる前に何かの約束をするとかもいいかもな。紫陽花の近くに埋めてくれ、とかそういうのでも構わない。ま、これは俺の考えだからな。もし変なところがあればすぐに言ってくれよ？

まぁ、そうだろうね。…僕としては危険なことは止めて欲しいところだけど（困ったような笑み）

あ、それなら良かった。…成程、鶴さんが追加してくれたお陰でシリアス感が更に増していい感じだと思うよ！折れる前の約束は二人で出掛けた時に綺麗に咲いていた紫陽花を見つけて、写真を撮った思い出があるから…っていう理由ならそれでいいかもしれないね。あとはどっちが折れる側…だけど、鶴さんが決めてくれる？僕じゃ悩んで決めきれないからさ。

それなら良かったぜ！そうだな、約束の方はそういう流れでいこうか。折れる方は俺にしておこう。その方が何かと楽かもしれないからな！…まぁ、大まかな流れはこんなものでいいかい？不備がなければ君から始めてもらって構わないか？これから宜しく頼むぞ光坊！

オーケー、任せてくれ！初回だから確定ロルになってしまったけど、もし絡み辛いとかあれば気軽に言ってくれて大丈夫だから。此方こそ宜しくね、鶴さん！

――


（真っ暗な部屋の片隅で片手に握られた額縁の中には、伊達家に縁のある自身を含めた四振りが笑顔で写真に写っている。その中の白が似合う刀――"鶴丸国永"は一年前の出陣した時代で、背後に居た敵に気付いていなかった自身を庇って目の前で折れたのは恋仲関係だった想い人…ならぬ想い刀。自身のせいで大事な刀が折れた、あの時背後の居た敵に気付いていたら――。一年前に起こった悲劇を思い出し、自身だけが生き残ったことに対して心に深い傷を負いあまり部屋の外から出ることも無く。下に顔を向けて静かに涙を流し悲観に暮れていた中、障子越しに聞こえてきた声に一瞬思考が止まり。自身の知らぬ間に二振り目が顕現したらしく、それで紹介しようと連れて来たとのこと。急いで涙を拭って立ち上がるとそちらに近付き、恐る恐る襖を開けて小さな笑みと共に下記を述べ）
……鶴さん、"また"会えて嬉しいよ。

(誰かが自身の名前を呼んだ気がして、それに応えようと目を開けばそこにはこの本丸の主である審神者と近侍の姿。こちらに向ける視線は何処か懐かしんでいるような、そんな気がするが此方としては出逢ったことなど一度も無いはずだと感じながらも挨拶をした後に、近侍から簡単にこの本丸での生活や刀剣男士の目的などを聞けば“最後に会わせたい者がいる”と言われ、その言葉に違和感を感じながらも大人しくついて行き。いくつかの部屋の前を通り、前を歩いていた近侍が立ち止まったと思えばどうやらこの部屋の者に会わせたかったようで、襖越しに何かを伝え合えば“俺の用件は済んだ。あとは好きに過ごせばいい”とだけ告げられその場に残されて。小さく開けられた襖を覗けば、そこには隻眼で全身黒の服を着た者の姿。此方が挨拶をするよりも前に先程の者と同じような、何処か懐かしむように告げられた言葉に苦笑浮かべて)
…あー、すまないが俺は君の事を知らないんだ。何処かで会ったことがあるのかい？

（目の前にいる白一色の和装を身に纏った刀は紛れもなく自身の恋人。もう一度再び会えたことが何よりも嬉しくまた泣きそうになるのを必死に抑えるのも束の間、こちらの返答に対して困ったような笑みを見せて衝撃の発言を耳にして"……えっ？"と目を僅かに見開き思考が停止し、予想外の言葉だったからか声も出せずに居ては片手に持ったままの写真入れを落としてしまい。同時に頭の中で今までの思い出達がパリンと鏡の如く砕け散った音が聞こえた気がして、記憶を失った目の前の相手の言葉などすぐに受け入れることが出来ず。悲しそうに力なく笑みを取り繕って）
…ああ、いや、何でもないよ。ごめんね、変なこと聞いちゃって。

(出逢った事がない、それは自身の記憶を辿るに間違いはないはずだが彼の表情を見る限り何かマズイことを言ったのではないかと思い。そんな思考を遮るかのように何かが落ちた音がして、音のした方を見れば写真入れが落ちており屈んでそれを取り“おい、大丈夫かい？…これ、”そこに写っていたのは自身と瓜二つの白い衣装を身に纏う者の姿。これは何だ、と言わんばかりの表情で彼を見ては)
…何で、俺がいるんだ？

――！……そ、れは……
（衝撃の事実にずっと持っていたはずの写真入れを落としたことも気付いて居らず、相手の言葉でハッとして視線を下に移すも時すでに遅し。こんな状況で一番見せてはいけない人物の手には大事にしていた記念写真が渡ってしまえば、少し震えた声で上記を発するが、自身の口から事情を説明するなどまだ彼のことを想っているため言えるはずもなく。しばしの沈黙の後に"……ごめん、言いたくないんだ。…それ、返してくれるかい？"と悲しげな表情はそのままに手を出して）

…まぁ、誰にでも秘密はあるものさ。それを他人である俺がとやかく言うことじゃないからな。
(自身の手に持っていたそれは、どうやら訳アリの何かの様でもう一度チラリと見遣っては小さく微笑み落ち込んでいる彼の頭を軽く撫でてやり写真入れを返してやり。どうやらこの本丸には謎があり、彼にも何か秘密があるようだがそれを詮索する様な無神経な性格でもないため気にしないことにしては話題を変えるように“そうだ！自己紹介がまだだったな。俺は鶴丸国永。君は？”と尋ねて)

（落ち込んでいる自身のことを気遣ってなのか、優しい手つきで頭を撫でられた後に写真入れを返してもらい。その微笑みと手つきはやはり瓜二つのようで"彼"の面影を感じては他人と言われたのもあってズキッと心が痛み、一年前のことを思い出すと複雑な感情が渦巻き。今の僕は物凄く格好悪くてそんな自身に嫌気が差すも、ずっと落ち込んでいても相手に迷惑をかけるだけだと思って何か口に出すよりも先に自然と話題を変えられ。自己紹介という単語に"あっ"とまるで忘れていたのような反応見せた後に小さく微笑んで自身も名乗り）
僕は燭台切光忠。…宜しくね、鶴さん。

燭台切光忠…ああ！キミが伽羅坊達が言っていた刀か。一度会ってみたかったんだ！
(どうやら自己紹介することすら忘れるほどだったようで、思い出したかのように紹介をされると彼の名前を反芻して。伊達に居た頃、大倶利伽羅達の話に度々出ていた刀は目の前に居た彼だったようで合点がいったのかパンっと手を叩き一人で納得してはうんうんと頷いており。彼の手をおもむろに握れば“何はともあれ、俺はまだ新参者だ。よろしく頼むぜ？”と笑みを浮かべながらそう言って)

ああ、此方こそ。
（伊達家に居た頃はお互いに一度も姿を見たことがなかった為か、この本丸で初めて一振り目の"彼"と対面した時も全く同じ科白、動作をしているので根本的に似てるのかなぁと観察するように見つめ。手を握られても特に嫌そうに振り払う反応も見せず、短く一言のみ返しては"何か分からない事があれば気軽に聞いてね"と穏やかな口調で続けて言葉を掛けるも、目の前の相手を見ていると正直辛い部分もあるが、だからと言って冷たく突き放すというのも自身の性格上出来るわけもなく。一振り目のこともあって放っておくなど出来ず）

(此方の事を快く受け入れて貰えると、何処か安心して。彼の事は名前以外まだわかっていないことが多いが、これから長い間この本丸で共に過ごしていくのだろう。その内に分かっていけばいいか、と呑気に構える事にしてはそう言えばと思い出したように先程近侍から伝えられていた自身の部屋は彼の隣の部屋だったようで“そうだ、俺はきみの部屋の隣で過ごすらしい。所謂お隣さんってやつだな！”と早速顔見知りが出来たのも相俟ってか嬉しそうに笑っては一度部屋を見てみようとヒラリと手を振り彼に別れ告げては自身の部屋へと向かい)

（自身も部屋の中に戻れば元気な姿を見て何だか元気を分け与えられたような感じがして、大好きだった"彼"が目の前に居ないのはとても辛く悲しい上に寂しい。しかしそれは本丸に居る仲間も同じ気持ちで居るはずで、自身だけがいつまでも暗いままだとただでさえ心配ばかり掛けているため早く前を向かないと、と心中で思えば気分転換も兼ねて本丸内にある中庭を散歩しようと机の上に写真を下に向けて置けば部屋を出て、外に行くので玄関の方向へ足を運び）

(部屋を見れば必要最低限な物は揃っているようで、ひとまず部屋を見回ると退屈になってしまい。何よりも退屈な生活は過ごしたくないのか、部屋を出ては早速この本丸の者達と親睦を深めるのも兼ねてなにか驚きをもたらしてやろうと思えばまず真っ先に思いついたのは落とし穴。思い立ったならすぐに行動してしまおうと思うと何処か楽しそうにしながら廊下を走っていき。背後で誰かが注意したような気がするが、そんな事も気にせずに玄関へと向かい外へ出ては側にあった倉庫を物色していて)

（この季節は梅雨入りしたこともあって雨が止んだり降ったりとしているため、外は湿気が多く非常に過ごしにくく。ジメジメとした蒸し暑さの中ゆったりとした足取りで中庭の方向に向かって歩いては、花壇に色鮮やかで綺麗な花々が植えられており。足を止めるとこの時期にピッタリの紫陽花も咲いていて雨に濡れて雫が滴り落ち、いつ見ても綺麗だなぁと思いながら自身にとって紫陽花は彼との思い出の一つ。あの時の折れる前に交わした約束はちゃんと守って希望通りにこの花壇の――紫陽花の近くに埋めてあり。おもむろにその場にしゃがみ込んで"……国永さん"と二人きりの時に呼んでいた名前を無意識の内に口から漏れて）

(倉庫内から目当ての物を探し当てるとそれを手にどの辺りだと誰かが引っかかるだろうか、などと悪戯を考えながら場所を探しており。それにしてもこの時期は何とも過ごしにくい。歩いているだけでも湿気で汗が出てくるが、これもまた人の身を得てこそのひとつの驚きだと思い。ようやく見つけた場所は中庭の一角。ここならば土もちょうどいい硬さで掘りやすそうだと思うとその白い服が汚れる事もお構い無しに穴を掘っていき。落とし穴と言っても怪我をしない程度の深さを掘るのでそこまで時間は掛からずに、あとは誰かが引っかかるのを待つだけ。汗を拭い、ふと中庭に視線を巡らせては紫陽花が咲き誇っており、これは見事だと近寄ると同時に燭台切の声がしては足を止め。この本丸の者達を見ていれば、何となく察しはできる。恐らく自身は何振り目かの鶴丸国永、今の彼はきっと自身を呼んだ訳では無いと思えばここに長居するのは野暮だと引き返す事にして。しかし不運なのか、雨によってぬかるんでいた土に足を取られては盛大に転んでしまい何とも無様な声を漏らして)