ありったけの砂糖を貴方に　/　〆

ほら、お前いつもこんな顔してんぞ。 （　 頬を引っ張ったりして表情を確かめている相手に、スマートフォンを鏡の代わりにして見せてやり。相手に肩を借りて立ち上がると、体重を相手に預け。ふらふらとしながらもなんとか個室を出てレジに向かうと、持ってもらっていた自分の鞄から黒色でシンプルな財布を取り出し、会計を済ませる。店を出ると 「 … ここから一番近いカプセルホテルか漫画喫茶まで連れて行って 」とお願いし。普段は車か電車通勤で、今日は偶々電車の日。勿論こんな状態で電車に乗れるとは思えないので、今日は近場で泊まろうと思い。酔っ払うと、酔っていた最中の記憶が明日には飛んでしまうので、明日の朝に混乱しないようにレシートをスマートフォンと一緒にポケットにしまい。顔をほんのりと赤くしながら、うとうとと相手にもたれ掛かりながら歩き出そうとして。　 ）

（　 /　手違いで二回も送ってしまいました。申し訳ありません … ！　 ）

よく見えないですよー…、俺の締まりのない顔は後で見るんで、頑張って歩いてください。 ( 相手が酔っているからか覗き込んでもうまく自分が映らず、それよりも酔った相手の介抱だ、と相手の腰を腕でしっかり支えて。 支払いを横目で見ながら、もう一度ごちそうさまですと相手に言って、また店員にも一言礼を言って店を出れば、満喫かホテルかと選択肢を出される。 「 えーっと、 それはなにかと心配なので、俺の家、来ませんか？、 数駅ですし、ホテル代浮きますし、俺いますんで介抱できますし。 … もし嫌ならホテルまで行きますけど、 」 相手の状態をもう一度覗き込んで確認して、まぁ半分以上下心ではあるが、寝坊が怖くて比較的会社に近めの家にしたのは本当だし、タクシーを使ってもあまりお金のかからない距離、と良いところを思い浮かべた上で、自分の家に来るよう誘って。歩き出す相手について行きながら、下心バレバレだったかな、嫌われるのだけは勘弁したいが、と悶々として。 )

( / お気になさらないでください。大丈夫ですよ ！ )

もう既に頑張って歩いてる。床がふわふわしすぎなんだよ。 （　 支払いを終えて財布を鞄に戻す。頑張れなんて言われたら、既に頑張ってると可愛げのないことを。終いには自分が酔っているのではなくて床がふわふわしているんだ、と言い始め。「 ったく、何が心配なんだよ、俺は大丈夫、… ってお前の家？んー、お前がいいって言うなら。あと、介抱されるほど酔ってない 」心配なんて言われて覗き込み確認されると、不満げな顔。大丈夫だと言った後に相手の家という自分の中にはなかった選択肢が相手から提案され。満喫やホテルだと色々と面倒臭いからという単純な理由で何も疑ったり深読みしたりしないで、あっさりと肯定の返事を。酔っていることもあって、遠慮したりするほど脳は回らなく単純で。とにかく自分は早く寛ぎたいので、相手の言葉に甘え、その場でタクシーを拾い、乗り込み。　 ）

それを酔ってるって言うんですよ …。 … 警戒心ないっすね本当 …。 ( 床がふわふわ、なんて普通に歩いていてするものか。酔っている人ほど酔っていないというが、まさに典型的。 かわいいな、と思って眺め始めてしまうのをぐっとこらえていると、自分の家に招き入れることをあっさりと了承してくれたようで、そそくさとタクシーまで拾ってしまう。 先程自分が一世一代の告白をしたのを忘れてしまったんだろうか、それとも酔っていて考えられないだけか。 脈なしなのかなぁ、なんて首を項垂れながら、タクシーに乗り込んで。 運転手に行き先を伝えると、相手の様子を窺って。 しばらく乗っているとすぐに自宅前に着き、代金を支払うと相手を支えながらマンションの中へ。エレベーターを使い階を上がり、出てすぐにある自宅の鍵を開ければ、散らかってますがどうぞ、と部屋へ招き入れて。 ワンルーム仕様になっている部屋に、大きなベッドとソファとテレビと、と至って普通のものが並ぶが、日頃整理整頓していて良かったと安堵。 とりあえず荷物を置いて、相手をソファへと座らせる。 「 水いりますか ？、 」と相手の前に膝をついては首を傾げ問いかけて。 )

お前、いちいちうっさい。… 警戒心 ？ だって家行く相手はお前だろ。警戒心なんていらねーって。 （　 何やら呆れている様にも見える相手に、単純に口の悪い言葉を投げる。何で相手の家に行くのに警戒心が必要なんだと思っていて、告白されたことなんてすっかり頭から飛び。相手に重要なことを言われたような、言われなかったような…と薄らとした記憶を思い出し。運良く直ぐに捕まったタクシーに乗り込むと、相手が運転手に伝えた場所は会社から近い、聞いたことがある地区。そんな事を思っているとタクシーは動き始め、揺れるのが心地よくて寝落ちしてしまいそうになる。が、居酒屋の場所から直ぐに着く場所だったのでうとうとしながらも耐え。相手に支えながらタクシーを降りると、いかにも一人暮らしの男性が暮らしてそうなごくごく普通のマンション。導かれるままにエレベーターに乗り、お邪魔します、と言いながら部屋に入り。散らかってると言っていたが、目立って散らかってなく、寧ろ綺麗。ソファに座らせてもらうと 「 ああ、水貰えると有難い。ごめんな 」とお邪魔している側なのであくまでも大人しくするつもりで。遠慮しつつも、力が入らないので深くソファに座り、相手を待つ。　 ）

すみません …、 意識してんのは俺だけ、ですね。 ( ああ、さっきのことは思い出せないのか、としゅんとしてはボソボソと独り言をこぼして。隣にタクシーに揺られる相手は今にも寝そうな勢いで、早く着かないかとそわそわ。案外道も空いていてよかった、とほっとして。 「 どうぞ。 着替えも俺のでよければ貸しますけど …、 シャワーは明日の朝の方がいいですよね、あとは …、何かありますか ？、 」 水が欲しいという相手に一つ頷けば立ち上がり、冷蔵庫から冷えたペットボトルの水を取って来ながら、相手スーツのまかだし寛げないだろうと思えば、自分の服を貸すことを提案して。 酔っているし、さっきも眠そうだったからすぐに寝るだろうか。と相手のことを考えている間はいいが、想い人が自分の部屋にいると改めて認識すればなんだか気恥ずかしくなってきて。酔ってるからとはいえ連れてきてしまったが、やはりなんだか緊張してしまう。 普段見ない相手の姿に見惚れたり、頭をぶんぶん横に振って邪念を払ったり、早口だったり、緊張を隠せずにいて。 )

ん、ありがとう。お前がいいなら、着替え貸して。スーツじゃ息苦しいし。 （　寂しそうにボソボソ呟く相手を見ると、やはり何か大切なことを言われた気がする。絶対に忘れてはいけない、大切な何かを。今はお酒が入っていて思い出せないのが、理由が分からないが相手に申し訳なく感じつつ。キッチンへと消えた相手を待っていると、冷えたペットボトルの水を渡してもらい、上記のお礼を述べ。酔っているのでスーツだろうがスーツじゃなかろうがよく眠れそうだが、相手の言葉に甘え。普段よりも早口気味だったり、何かを払う様に首を横に振ったり、なんだか緊張している様子の相手を不思議に思ったり。上記を告げると、貰ったペットボトルのキャップを開け、数口飲む。相手が着替えを持ってきてくれる間に、ネクタイを予め取ったりして着替える準備は完璧。着替え終わったら、このままソファをお借りして眠りにつこうと思い。　 ）

じゃあ、これ、多分大きめだと思うんですけど、これぐらいしかなくてすみません、 ( もしかしたら既にあの時酔っていて、明日になったら全て忘れてて。なんてことになっていたら、1日寝込むかもしれない、と頭の中はマイナス思考でいっぱいに。 でもそれはそれで仕方がないし、むしろ忘れてくれてた方がいいのかもしれない、なんて思えて来ては、相手は酔っているし、自分の表情なんて見えないだろう、と踏んでは眉を下げたままでいて。 適当にクローゼットの中からスウェットの上下を取り出せば相手に手渡して。 「 俺ソファで寝るんで、ベッド使っていいですよ。 動けますか ？、 」 多少狭いが、先輩を差し置いてベッドで寝るわけには行かず、自分はソファでいいかと考えれば問いかけて。数歩の距離であるが、その気力は相手に残っているだろうか。問いかけながら自分もネクタイを外し、首元を緩めて。 )

ありがとな、助かる。… あと、んな寂しそうな表情するな。それだったら、いつものへらへらしてる方がいい。 （　 酔っていても分かる程、相手は不安や寂しさを纏った表情。ああ、きっと自分が今思い出せないことは、絶対に忘れてはいけない記憶だったんだ。元から口下手なのに、酔うと何でも思ったことを言ってしまうので気の利いた言葉もかけてやれず。上記を述べながら、貸してもらったスウェットに着替えを始める。酔っていて手つきは悪いし、スウェットに着替えるだけで精一杯。普段よりも随分と時間がかかったが、なんとかして着替え終え。脱いだスーツを、これまた雑に畳みながら 「 何言ってんだよ、俺はソファで大丈夫 」と。今すぐにでも寝たいので動くのが面倒臭いからでもあるが、後輩をソファに寝かせるわけにはいかず。大きな欠伸をしてから、… おやすみ、と挨拶を。ソファに横になり、挨拶を済ませてからは余程疲れていたのか、直ぐに規則的な寝息をたてて気持ちよさそうに眠りにつき。　 ）

… 、酔ってるから見間違えてるだけですよ。 俺はいつも通りです。 ( 相手の言葉の中にどこか優しさを感じて、涙ぐむのを抑えながら、へらりと極力いつものように笑って見せて。 相手が着替え始めれば、なぜかぱっと視線を逸らしてしまい、自分でもなぜ逸らしたのか逸らした後に不思議に思い首を傾げる。見てはいけないもののような気がして目を逸らしたまま、しばらく待っておそろおそる相手を振り替えれば着替え終わっていて、ほっとしている自分にも首を傾げて。相手の足元には雑に置かれたスーツがあって、それを拾い上げながら、横目ですぐに寝ようとする、というかもう既に寝てしまっている相手に、 「 … おやすみなさい、先輩。 」 と聴こえてはいないだろうが、ぼそりと呟いて。相手のスーツをハンガーにかけ、自分のスーツもかければそのままシャワーへ。シャワーを浴びながら、今日のことを思い出す。振られたといえど、諦める気はさらさらない。が、まさか落ち込む暇もなく未だ想っている相手が家にいるとなると、この後緊張で眠れる気がしなくて。さてはてどうしようか、なんて考えがまとまらないまま浴び終わり、服を着替え、髪を雑に乾かし寝る支度を整えれば相手の様子を見ようとソファを覗き込んで。寝息をたてて寝ている相手の顔は、酔って寝ていてもやはり綺麗で、ソファの下に座ると、思わず見入ってしまって。少しぐらいはいいだろう、と相手の頬に手を伸ばして、そっと触れてみる。 風呂から上がって適度に温まった体で座り込んでしまっては眠気も襲って来て、こくりこくりと首が揺れ、鈍った思考で、手繋ぐくらいいいだろう、なんて思ってしまえば相手の手に触れ、緩く握ればへらりと安心したように表情を緩ませると、いつのまにか夢の中。 )

＿＿ ん … 、頭痛てぇ … 。 （　 カーテンの隙間から細く注がれる陽の光が目覚ましの役割を果たしてくれ、目が覚める。身体の節々と頭に痛みが走り、眉間に皺を寄せながらぽつりと呟く。目が覚めるまでぼーっと天井を眺めていると、違和感に気が付き。目が冴えてよく見てみると、見知らぬ天井 … それだけじゃなくて、今寝転んでいるソファは自分の部屋のものじゃないし、自分からは違う柔軟剤の香りに、少し大きめのスウェット。そして一番の違和感であり謎は右手に感じる人肌。恐る恐る自分が握っている手の人物を確認するために腕を辿るように目線を移動させれば、気持ちよさそうに眠る男の姿が。間違いなくその男は後輩である三好涼太。頭痛が激しい頭で昨晩のことを思い出す。確か飲みに誘って告白されて … そこからの記憶が一切なく、更には告白に何と返事をしたかの記憶も覚えてない。しかし、相手のものだと思われるスウェットを着て、相手の部屋のソファで寝て、相手の手を握っている。もしかして、酒に酔った勢いで一線を越えてしまったんじゃないかなんてことが頭を過ぎ 「 お、おい ！起きろ、三好！ 」と身体を揺すって慌てて起こす。　 ）

んぇ、 はいっ ！、…え、 あれ、俺寝ちゃって …、 あ、先輩、おはようございます。 ( 無意識に睡眠に入っていたからか、夢の中には自分と先輩が。なんでか一緒にいて、相手と自分は手を繋いで歩いていて…、なんていう夢半ば、急に握っていた手の主が大声を出すものだから思わず返事をしてしまう。目を開くとそこは自分の部屋で、ソファに突っ伏して寝てしまっていた。あれは夢だったのか、と思うが、手はほんとうに握ったままでいて。片手で目元を擦ると、目の前にいる相手を見上げれば、へにゃっと力の抜けた顔で朝の挨拶をば。 続けて、 「 昨日の先輩、可愛かったです。 」 と浅い眠りだったためか、ふわふわとした面持ちのまま、ソファに肘をついて相手を見れば、相手が居酒屋で酒をどんどん飲みだしたり、３つもデザートを頼んだり、帰ろうとしても立ち上がれなかったりしていたのを順々に思い出せば、全ての感想をまとめて一言。振られてはいるが、一夜過ぎればポジティブに返り咲きまた普段の自分に戻れるのが自分の特技というか、いつもそうして来ていて、これからも好きでいることに変わりはなく、握った手は離さずにむしろにぎにぎと手を緩く握ったり強めに握ったりしてみては。 )

昨日の俺が可愛かった ？！ … なぁ、変なこと聞くけど、俺たちって同じ会社の先輩と後輩だよな ？ （　 この状況に焦りしかなくて、挨拶を返すことすら忘れ。何があったのかは分からないが、可愛かったなんて言われたら鸚鵡返しをしてしまう程吃驚した様子で。まさかとは思っていたが、本当に酔った勢いでキス等をしてしまったんだ。そう勝手に確信すると、一応確認のために肘をついて自分の方を見つめる相手に上記を問いかけ。握られている手を離すのは申し訳なく感じ、相手にされるがままに応じ。女性のように柔らかいわけでもない手を握ったりして楽しいのだろうか、という呑気な疑問は直ぐに消え。もし相手の告白に酔った自分がＯＫを出していたら、今更何て言おうか … それに、これから会社でどんな風に接すればいいのか、とこちらの方が深刻に考え。もしかしたら、相手が自分に告白したことも自分の勘違いの記憶かもしれないので、自分を落ち着かせるために一旦深呼吸。相手の目をじっと見ながらドキドキと答えを待ち。　 ）

俺は俺、 先輩は先輩ですよ、 当たり前じゃないですか。 ( 変なこと、と言われればそれは当たり前のことで、なぜそれが変なことなのか分からずに首を傾げてはそう告げて。だがなぜ相手はそれを聞いたのだろう。少し考え込めば、昨日の記憶がどこまであるのかで、その質問が意味を成してくることに気付く。告白したことは覚えておいて欲しいことだから、そのあたりまで記憶があれば2人の関係性に疑問を持つのはどうなのか。振ったのなら関係は今まで通りだし、とここまで考えるもあまり眠りにつけなかったためかうまく頭が回転しない。 「 先輩がどこまで覚えてるかわかりませんけど 、 居酒屋行って、いっぱい話して、好きって言ったらごめんって言われて、日本酒とデザート３つ頼んで、俺んち来るってなって、寝ましたー 。 」 眠いなぁ、と大きくあくびをして目をこすれば、とりあえず昨日のあらましを伝えればいいんだろうと思えば昨日のことを軽くさらっと告げると。相手はじっとこっちを見つめているので、視線が交わればへらりと笑って。 )

… 正直、告白されたことまでしか覚えてなくて、自分が何て返事をしたかも覚えてねぇんだ （　 当たり前だと言われれば、確かに当たり前のことだが今の自分には安心材料で。もしかして質問の意味を理解してないんじゃないかと思っていると、昨晩のことを説明してくれ。状況に困惑して直ぐに眠気なんて覚めた自分とは違い、明らかに未だ眠たげな様子の相手。何を呑気な、と思っていたが相手が昨晩のことを説明してくれたおかげで一先ず安堵。まさか変な勘違いをしていたなんて言えないので、目線が交わると気恥しくなって目線を逸らし、序に手を離し。ゆっくりと身体を起こしソファに座り直すと、大きく伸びをしてから改めて安堵の意味の溜息を一つし 「 昨晩は色々と迷惑かけたようで悪かった。それと、服もありがとうな、今度改めて何かお礼する … んだけど、何か欲しいものとかしてほしい事とかねぇの ？ 」と。微かな記憶だが、確か食べることが好きと言っていたので料理でも振る舞うか。自分の手料理なんて喜んでくれるかも分からないので、無難に食事を奢ったり … 仕事を手伝ってほしいと言われれば手伝いもするし、ここは何かお願いを聞いてやろうと上記を問いかけ。　 ）

告白を覚えててくれたんなら十分です。 流石にそれ忘れられたら俺格好付かないっすもん。 ( 告白した事は覚えていてくれたようで、そこまで素面だったのならもう一度改めて言う必要はなく、安堵で肩の力を抜く。目があったことが嬉しいのに、すぐに逸らされてしまい、さらには手から温もりが離れていってしまって、あからさまに残念そうに眉を下げる。だんだんと頭が覚醒してきて、ちゃんと体を起こそうと伸びをしているところに、相手からお礼の言葉が。そして続くは、何かして欲しい事。途中で伸びを止め、うーんと眉を寄せて考え込んで。ご飯を奢ってもらう？、むしろ作ってもらう？、いやいや、せっかくなのだし、何か相手にしかできない事をしてもらおう、なんて考えては、いくつかいいことが思いつき、それがぱっと表情を明るくする。 いくつかの中で、一番して欲しいことを言ってみるだけ言ってみようじゃないか。 「 じゃあ、 キスして下さい。 」 そう相手を下から覗き込んで見上げれば首を傾げて、どうだ、とでも言うように口角を上げては、楽しそうに相手の返答を待って。 )

告白を忘れる程酷なことはしねぇよ。それに、衝撃すぎて忘れろって言われる方が無理だしな。 （　 自分が相手の立場なら、一世一代の大勝負である告白を酔っていて忘れたなんて言われたら確実に傷付くだろう。そんな気持ちが働いて告白は忘れなかったこともあるが、何よりも衝撃的だったので、もし忘れたくても忘れることは不可能だと。特に深く考えずに聞いた、何をしてほしいのか。冷静に後から考えれば、自分に告白をした相手なんだからキスの一つぐらいお願いされてもおかしくはない話。「 キスってお前、真面目に答えろ …、って冗談ではなさそうだな。… 本当にキスしてほしいのかよ 」冗談で言っているのかと思って目線を相手に向けると、どうやら本気らしい。自分の反応を面白がるように口角を上げるのがなんだか悔しくて、内心本当は動揺しているが淡々と話し。欲しい物やしてほしい事がないかと聞いたのは自分だし、キスと返ってきたからやっぱり先程の言葉を取り消すなんて真っ直ぐな性格が許さなく。ある程度覚悟を決めつつ、改めて本当にキスしてほしいのかと。　 ）

男から告白なんて、忘れられませんよね、 ( 相手ほど綺麗な顔立ちをしているなら、異性から告白されることは多々あるだろうに、された告白は忘れない、なんて律儀なことを言われてしまえばもっと好きになってしまう。まぁ男からなんて珍しすぎて余計に忘れないか、とぬか喜びはしないようにと自制。もしこれから攻めて攻めてもダメだった時、自分はきっと期待しすぎてはそれだけ反動で落ち込んでしまいそうだから。 「 超大真面目ですよ、 こんなお願い先輩にしかしませんし。 …どうしても嫌、ですか ？、 」 試しにして欲しいことを言ってみれば、即答で拒否されることはなくちょっと期待してしまう。そんな嬉しさは今は頑張って押し殺して、本当にしてくれそうなのか、様子を窺うようにじっと相手と視線を合わせたまま告げて。 もし嫌なら、デートしてもらうとか、休日1日いっしょにいてもらうとか、手料理だとか、そんなことを考えていてそっちでもいいのだが、もしこれを断られなかったら、なんて単純な自分はやっぱり期待せずにはいられなくて。 )

男に告白されるなんて、一生に一度ある方が珍しいからな … と言いたいんだけどよ、大学生の頃にも男に告白されたことあんだよ。 （　 相手に告白された時に、学生時代にも同性に告白さらたことを思い出していた。勿論、その告白された人には相手に告白された時みたいに直ぐに断りの返事をして。自分なんかの何が良くて態々告白するのか自分からしたら謎。どいつもこいつも物好きだな … と思ったり。「 … ったく。俺の方見てないで、早く目瞑れ。キスしてほしいんだろ ？ 俺のキスの一つや二つぐらいくれてやる 」家にまで連れて面倒を見てくれたので、相手にはしっかりとお礼をしたく。自分が女だったらキスの一つ一つを大切にしたいが、自分は男なわけで、キス一つを毎回大切にする程ロマンチストではない。ただキスをするだけなんだ、と割り切って最早開き直り。机の上に置いてある自分のものだと思われるペットボトルに入った水を一口飲んでから、改めてソファに座り直し。単純で真面目な性格故にキスと聞いたら口しか思い浮かばなく、なので目を瞑れなんてムードの欠片もないことを雑に述べ。　 ）