ありったけの砂糖を貴方に　/　〆

ええ、そうなんですか …、 まぁその人の気持ちめちゃくちゃわかりますけど、… うーーん、 ( 相手の魅力に気付いていたのは自分だけではなかったのか。と残念に思い少々不貞腐れた表情になれば、相手に告白したという男の身にもなれば相手はとても魅力的で、同意できる。がしかし、やはり相手の魅力を知っているのは自分だけでいい、という気持ちが頭の中を交差して、眉間にシワを寄せて頭をがしがし掻いて。 「 え、あの、えっと、 … マジでしてくれるんすか ？、 」 相手がキスすることを受け入れてくれた。のはいいが、いざする、となると緊張してへたれてしまって。目を泳がせて、相手に視線を戻せばおずおずと確認のため問いかけると。相手は水も飲んでソファに座りなおして、本当にする気のようで、さらに緊張してきてしまう。緊張しいなのは元からであるが、動きがカチコチになりながらも、ソファに座る相手の目の前に正座をすれば、手を膝に置いてピンと伸ばし、言われた通りに目をぎゅっと瞑ると少し上を向いて、相手からの口付けを待って。 )

… なんでお前が複雑そうな顔するんだよ。ってか、俺のこと諦めてねぇの ？（　 何やら眉間に皺を寄せたり、複雑そうな表情をしているので不思議に思い。告白しただけで恋人気分なのだろうか。そもそも一度告白を断ったのに、相手は諦めていない様なので、これから面倒臭い事になりそうだと思いながらも何処か賑やかな日常が嬉しく感じたり。そんなことを思いながら、特に迷惑そうでもなく嬉しそうでもなく、いつもと変わらない声色で問いかけ。「 … 何言ってんだよ、お前がしてほしいって言ったんだろ 」分かり易く緊張している様子の相手を見れば溜息を一つ。せっかくキスしてやると決めたのに、当の相手がこんな感じだと本当にキスしてほしいのかと疑い。男にキスするぐらいなんてことない、と思っていたのに相手が緊張していると自分まで緊張してきたような気がし。今から説教される小学生の様に緊張して座っているので、緊張を解してやる為にも勢いよくデコピンをしてから、ソファの上から少し身体を前のめりにすると触れるか触れないか程度の軽いキスを。時間にしたら2秒もないほどの短いキスを終わらせると、目を開けろという意味で相手の肩を叩き。　 ）

先輩は魅力的なんだなぁと改めて身にしみてる顔です。 あー…、はい、諦めてません、全然。俺のこと好きになってもらえるように、頑張りますんで ！、 ( 複雑そうな顔、と言われれば、どうしてその顔になってしまったか自分で顔を指差しながら説明を。 後に諦めてないかと問われれば、当然だとでも言うように首を縦に振ると決意したような表情で首を縦に振って。意気込みは一丁前に前のめりになりながら告げるも、果たして相手が自分を好きになってくれるかなんてわからないのに、きらきらとした期待の目で相手を見る。 「 そりゃ言いましたけど、あいたっ…、…！、 い、痛くて良くわかんなかった …、 先輩、もう一回、もう一回お願いします …！、 」 いざとなると緊張してしまって動きが鈍くなって。目をぎゅっと瞑っていれば勢いよく額にダメージを受け、まさかするとか言いながらからかっていたんじゃ、なんて思っているのも束の間、唇に柔らかい感触が触れたのがわかった。待ち望んでいたものだったが、額に受けた衝撃で思考が止まり、よく分からなくなってしまって。折角の口付けだったのにあまりされてる実感がなかった、などと自分勝手なことを思えば、目を開くと相手に懇願して。 )

おう、さっぱり理解できない。… あっそ、もう好きにしろ。言っとくけど、絶対簡単に落ちねぇからな。ま、頑張れよ。（　 魅力的だなんて何を言っているんだ。相変わらず相手の言動は理解できないことが多くて、気を遣うことも面倒臭いので、理解できないとキッパリ言葉にし。ここまで真っ直ぐに諦めてないと言われれば清々しいとすら思い。カッコイイとか可愛いとか言われてキュンと来るほど単純ではなくてひと筋縄ではいかないと予め言っておき。頑張れなんてまるで他人事のように。「 … は、もう一回 ？！ お前なぁ、調子乗んなよ。… あと一回したら、もう二度とやらねぇからな 」いくら男にキスをするとは言っても、キスに変わりはないのでやはり多少照れ臭さと緊張はある。それをもう一回なんてなんて必死に頼まれたら露骨に面倒臭いといった顔を。しかし、このもう一回というお願いを断ったらもっと面倒臭いことになりそうな気がして、頼まれたら断れない性格だからというのもあるが、諦めたように溜息を一つすると上記を述べる。ここまで必死にお願いされたら断るにも断れなくて、改めて目を瞑れなんて言うのは小っ恥ずかしく、今度は目を開けたまま先程よりも少しだけ長めにキスをしてやり。相手から離れると、満足したかと言わんばかりの顔でじろりと相手を見て。　 ）

簡単に落ちないだけで、落ちてくれる可能性はあるんですね ？、 それなら頑張り甲斐があります。 ( 簡単には落ちない、と言う言葉を拾うとなんだか嬉しそうに。可能性が皆無ではないと受け取り、男同士だから可能性さえもないかもしれないいなんて思っていたのに、可能性がないわけじゃないと分かれば余計に燃えるのか片手の拳を握ってやる気は満々。 「 …、へへ、なんだか恥ずかしいっすね …。 嬉しいです、ありがとうございます。 」 もう一回だなんて頼んだって、いくら何事も断らない相手だからって流石に、なんて思っていれば、ため息をつかれもう一度してくれると言う。マジですか、なんて言葉を発する間もなく、相手の綺麗な顔が近付いて来て、唇に触れる。先程より長いその口付けの間、綺麗な肌だだとか、長い睫毛だとか、柔らかい唇だとか、そういう事が頭を巡る時間があり、実際しているよりもその口付けの時間はずっと長く感じて。離れていってしまう相手を追いかけるように体をソファに近付けるも、唇は離れてしまい、じろりと睨まれてしまう。今になって恥ずかしさが込み上げて顔が紅潮し目を逸らすも、嬉しそうに照れ笑いをしながら視線を戻し礼を一つ告げて。本音を言うならば、もっと何度も長くしたいところだが、これ以上は引かれてしまうだろうと耐えるも、相手を見上げる目は無意識に物欲しげに。体にカーテンから漏れ出た朝日が当たっているも、相手のことを考えすぎてすっかり朝だと言うことを忘れている。 )

落ちるか落ちないかはお前の頑張り次第って感じだろ。そのポジティブさは褒めてやるよ。（　頑張り次第なんて言ったが、今のところはただの後輩というだけで、特別に意識しているわけでもなく。普通なら一回振られたら落ち込んだりはするのに、可能性が絶対にないと分かるとやる気満々の様子に、どこまでポジティブなんだと最早尊敬で。相手ほどポジティブになれば毎日楽しいんだろうな、なんて思いながら。「 … ったく、朝から疲れた。会社行くからシャワー借りるぞ。お前も早く準備しろよ 」キスをしてやると、離れたくないのか相手の身体は前のめりになっていて。それに加えて物欲しげに見つめてくるので、餌をもっと欲しいと飼い主に強請っているような犬に見え。一回目のキスから二回目のキスを強請る時よりも切実そうで、結局は甘やかしてしまう自分の性格が我儘にさせてしまっているようだと。不意に時計に目をやると出勤時間も近く、ソファから立ち上がると勢いよくカーテンを開け。照れ隠しなのか上記を告げると家主の許可も聞かずにソファに置いてあった自分のスーツを手に部屋を出て直ぐにあった風呂場に行く。朝から慣れないことをしたせいで疲れたのか、ふぅ、と息を吐き。簡単にシャワーを浴びた後、スーツに着替えると、積んであったタオルを一枚目拝借して頭を拭きながら部屋に戻り。　 ）

へへ、先輩に褒められると嬉しいです。 ( 今までの時間でどれだけ自分を見てくれただろうか、あまりこちらに気がないようにも見えて少し残念に思うも、前向きな姿勢を褒められれば嬉しそうに微笑んで。 「 え、あ、はい、どうぞ、自由に使ってください。 」 目の前の相手が勢い良く立ち上がって離れていってしまえば、もう終わりか、と構ってもらえなくなった犬のようにしょんぼりして肩を落とす。 会社、と言われれば、休日だったら良かったのになぁなんて甘い事を考えながら立ち上がり、風呂に向かう相手の背中を目で追いながら、朝食をとキッチンに立って。冷蔵庫を除けば、自炊はあまりしない方で朝食も軽めにとるだけだからパンぐらいしかなく、あとはスープやらぐらいで、せっかく相手が来てくれたのにこれしかないとは申し訳ないが、ないよりはマシ、と言い聞かせて湯を沸かしながらパンを焼く。 座って寝ていたからか軽く痺れている足を伸ばしたりしながら、相手が来るのを待って。 「 先輩、朝ごはんがパンとスープとぐらいしか出せないんですけど …、 じゃ、ジャムもありますよ、 」 部屋に戻って来た相手に申し訳なさそうに告げて。甘いもの好きな相手も気分を害さないようにと棚からジャムを取り出してみては。 )

パンとスープがあれば充分だろ。朝食までありがとうな。
（　部屋もそうだったが、風呂場も一人暮らしの男にしては綺麗に片付けてあるので、大雑把そうに見えて意外としっかりする所はしてるんだと感心。少し長くなってきたので髪を切りたいとか呑気な事を考えながら部屋に戻ると美味しそうなパンの焼けた香りが。パンとスープしか、と相手は言っているが、休日以外は時間短縮のために野菜ジュースなどで朝食を済ませてしまう自分にとっては充分で。何を申し訳なさそうにしているんだと思いながらもパンとスープが並べられた机の前の椅子に座り。シャワーを浴びたら出るつもりだったので、朝食までお世話になって感謝を伝え。申し訳なさそうな様子の相手をある意味裏切るように至って普通、寧ろ少し何処と無く嬉しげで。いただきます、としっかり手を合わせて挨拶をするとスープを一口。せっかく出してもらったのでジャムも使おうと思い、パンに付けると頬張り。淡々と朝食を食べ進めて。　 ）

いえ、こんなものしか出せなくてすみません 、 ( 良いもてなしもできずにいて大丈夫だろうかと心配になるが、朝食を目の前にした相手は案外嬉しそうで、こんなんでも良かったのか？と首を傾げる。 不快に思ってはいなさそうなのを見るとホッとして。相手が朝食を取っている間に自分は支度を済ませてしまおうと着替え始める。時計を見れば良い時間で、少し焦りながらもスーツを身につけ、鏡の前で髪をセットし、ネクタイに時計に香水にと流れ作業で支度を終わらせれば、姿見を見て確認し、よしと一言呟く。腕時計を見れば良い時間で、少し冷めたスープをほぼ一気に飲み干して、パンは口に咥え、どうせならこのまま食べながら行ってしまおうと。 一口めを飲み込めば、 「 先輩、多分そろそろ出た方がいいと思います、 」 と出発を促してはまた大きく一口。 )

ごちそうさま。あと、お邪魔しました。（　忙しく身支度をする相手を横目で見つつ、久しぶりに少し時間に余裕がある朝を迎えられたので珍しく朝から気分もよく。そのせいでゆっくりと食べすぎたのか、相手の声掛けで時間を見ると確かにそろそろ出発した方がいい時間。最後の一口を食べると食器をキッチンに持って行き、その序に鞄を持ち、玄関で靴を履きながら上記を。今から仕事だと思うと憂鬱だが、明日は休日なので今日一日頑張ろうと気持ちを高め。行く場所は同じだし、この場所から会社へ行くまでの経路が分からないので相手に付いて行こうと思い。「 お前って毎朝電車 ？車 ？ 」と問いかけながらエレベーターに乗り込む。　 ）

食器ありがとうございます。 いえいえ、大したことできなくてすみません。 ( パンを片手に最後の支度をしていると、相手が食器を片付けている音が聴こえて。 相手の後ろに続き、靴を履きながら口を動かし、最後の一口を口に突っ込んで。大きすぎたのか、頬を膨らましたまま口を動かして、上記を。部屋の電気を消し鍵を閉め、相手の隣を歩いて。エレベーターに乗ればボタンを押し、 「 あ、電車です。運転好きですけど、電車の方が運動になりますし、数駅ですから。先輩は車でしたっけ？、 」 と。免許も持っているし、運転は好きな方で友人と良く乗り回す方だが、通勤はあえて電車。駅までは少し歩くが、それも良い運動だと思っていて。相手は確か車だったような、記憶が曖昧なため問いかける。同時に開くエレベーターから降り、こっちです、と指をさしながら駅の方に向かって歩いて。 途中近所の知り合いに何人か出くわせば、軽く朝の挨拶を。 )

って、ちゃんと飲み込んでから歩けよ。今のお前、ハムスターみたいになってんぞ。（　 本当は皿洗いまでしっかりとしたいが、時間がないので後片付けまで出来なくて申し訳なく感じ。ふと相手の顔を見ると両頬を膨らませながら食べているのでハムスターに見えてしまい。柄にも合わず、不意だったので思わずクスッと控えめに笑ってしまう。「 会社から近いと電車の方が便利かもしれないな。ん、俺は車。駅からも会社からも近い方ではないし 」 自分が車通勤ということを何で知っているんだろう？と思うが、きっと酔った時に色々と話したんだろうと。何せ昨晩の記憶は曖昧で。駅までかなり歩くし、電車に乗っても乗り換えが必要なので電車だと色々と面倒が多く。故に普段から車で。エレベーターから降りながら上記を述べ、近所の人なのか挨拶をしているので自分も軽く会釈を。近所の人にも挨拶を忘れないのは好感度が高く、相手の行動一つ一つを見てしまうようになっていて、朝にキスをしてしまったので変に意識してしまい。　 ）

ん？、 …っすみません、… 先輩も吹き出して笑ったりするんですね、 ( ハムスター見たいだと声をかけられればそのまま相手に顔を向け、飲み込んでから言葉を発して。視線の先の相手は控えめだが笑っていて、会社の先輩といえどそういう自然に笑ったところを見たことがあまりなかったため、それを目にすれば物珍しそうに。 「 駅の近くって割と喫茶店とかあるんで、途中寄りたいなーとか思った時便利なんですよね。あ、そことか、最近できたお菓子屋さんかなんかで、女の子よく入ってるに見かけます。 」 しばらく歩いていれば駅に着き、駅のまわりには色んな店が立ち並んでいて、その中でも比較的新しい店の前を通りすがれば、女の子が立ち寄る菓子屋なら相手の好きな甘いものが売ってるんじゃないかと思えば指をさして。駅に着けば数分と待たずに電車が来て、いつもより人の多い電車に乗り込む。肌がくっつくほどではないが、それなりに人が多いので自然と相手と距離が近くなって。 香水かけたけど臭くないかな、なんて距離の近さに緊張してしまい、視線を逸らす。 )

… んだよ、俺が笑ったら変って言うのかよ。普段から愛想なくて悪かったな。（　 直ぐにハッとしたように普段通りの愛想のない顔に戻り。元から冷たく思われてしまう第一印象に加えて口も悪い方なので愛想の欠片もないことは自分が一番分かっている。ふい、と不満げにそっぽを向き。「 あんな店あったんだな、初めて知った。最寄りの駅と反対側だから、来る機会少ねぇんだよ 」声に反応して指を差していた店を通り過ぎながら見てみると、まだ知らぬ店。前を通っただけでふんわりと甘くていい匂いがして、明日にでも来てみようかと思い。さすが毎日使っているだけあって、電車は丁度いいタイミングで来て。久しぶりに乗る電車は通勤ラッシュ故に人は多く。流されて気が付けば相手と比較的近い距離で向い合わせの状態。相手の方が背が大きいので少し圧迫感があり、気まずくなって目線を下に。数駅と言っていたのでもう少しだけの我慢。相手からは柔軟剤なのか香水なのかシャンプーなのか … キツすぎない程度の爽やかな香りが。ちゃんと細かい所まで気を使っているんだと感心しつつ、電車に揺られ。　 ）

あー、えっと、そういう意味じゃなくて、確かに職場ではあんまり笑ってるの見たことないんですけど、無理して笑ってるのが多いかなって思ってたんです。なんだか、気を張ってない感じを見られて良いなって。 ( 不機嫌にさせてしまっただろうか、と懸念すれば付け足しを。職場であまり笑うという場面は相手に限らずあまりないものだが、昨日の居酒屋といい作り笑いをしていたのを覚えている。そういうのを見てからこそ自然な笑みを見られたのは気を張っていないんじゃないかと解釈して。ただの先輩後輩から少しは距離が縮まったのかな、なんて思い。 「 反対なんすね。 俺はまだ先輩が勧めてくれたフルーツタルト食べてないんで、そっち食べたいです。 」 相手とは反対方向だったのか、と相手がこの店を知らなかった理由に納得が行くと数回頷いて。次いで昨日勧められたフルーツタルトのことを思い出すと、確か会社の最寄駅の前だった気が。今日帰る時間が遅くならなければいいが、相手の勧めてくれた物なので気になって仕方なく、不安をぼそりと呟いて。 電車に揺られ、体の距離が近く、今朝の口付けのことを思い出してしまうと余計に意識してしまい。 電車が大きく揺れ、咄嗟に相手の後ろにある扉に手を付くと距離がまた縮まり、すみません、と一言小さく呟く。 )

… あっそ。お前はいいよな、人前で素直に笑えて。（　 悪い意味で相手は言っていたんじゃないと分かると、不満げだった表情がいつも通りの表情に戻り。人前で笑うのは得意ではなく、寧ろ恥ずかしくて避けてきた。こんな風に自分の笑顔を見て良かったなんて言われるのは初めて。作り笑いしか出来ない自分に対して、相手はいつも愛想良く誰にでも自然な笑顔で接しているので本当は羨ましく思ってたり。そんなことを素直に言えるほど可愛い性格もしていない為、上記をぼそりと呟き。「 会社の最寄り駅の前なんだから、いつでも帰りに買うチャンスはあるだろ。フルーツタルトは逃げねーよ 」自分が勧めたフルーツタルトを覚えていてくれたのは内心嬉しく感じていて。あの店はチーズケーキを看板メニューと出しているので、フルーツタルトが売り切れということは滅多にない。買う機会ならいつでもあるので、そんな不満げな顔をするなと。大きく電車が揺れたと思ったら、目の前にいた相手との距離は更に近くに。路線図を見ると本当に数駅だったが、随分と長く感じ。やっと聞き覚えのある会社の最寄り駅まで来ると電車を降り。ここからは行き方が分かるので、率先して会社までの道のりを歩き始め。　 ）

そう、ですか ？、 俺は先輩みたいにきりっとしてることがあんまないんで、へらへらすんなって怒られますよ。 先輩は俺がへらへらしてると嫌ですか …？、 ( 自分の表情はほとんど引き締まることがないため、職場でも叱られる時は序でに顔のことを言われたりする。理不尽だ、なんて思いながらもそういう時はうまく流すが、改めて考えてみると、やはり良くないのだろうか、苦笑いを浮かべて。相手とは真反対の表情をする自分は嫌われないだろうか、おそるおそる問いかけて見ると。 「 ですかねぇ…、 あ、先輩、一緒に買いに行きましょうよ、俺1人じゃ不安ですし、 」 良く知る相手から言われれば説得力があり、数回頷いて、後にいい思いつきがあるとそれをすぐ口にして。相手の甘いものを食べている時の表情が気に入っていて、今日ももしこの誘いに乗ってくれたら見れるんじゃないか、と踏んでは提案を。1人でケーキを買うぐらい出来ることではあるが、ここは相手との時間を過ごしたいために問いかける、というより我儘に近い言い振りで言ってみれば。電車を降りれば、どっと緊張が解れたのか深く呼吸をして。さっさと歩いて行ってしまう相手の背中を小走りに追いかけては相手の隣を歩いていると、すぐに会社に着いて。ああ、短い時間だったと残念そうに眉を下げ、相手の近くではあるが、俺はこっちなんで、と一言言って自分のデスクへ。同期に軽く挨拶をしながら、昨日と今朝のは夢じゃないよなぁ、なんて耽ってしまい。 )

お前もお前で大変なんだな。別に嫌ではねぇよ。見てて偶にイラッとはするけど。（　 いつもニコニコしているので愛想も良くて誰からでも好かれそうで、次いでにポジティブな性格で困ったことなんて無いんだろうと勝手に思っていて。だが、相手も相手なりに色々と悩んだり大変なこともあるんだと。何やら不安げな様子なので、イラッとくるなんて言うが、本心ではなくて自分なりの励ましで。「 不安だ ? ったく、何言ってんだよ。ケーキぐらい一人で買え、子供じゃねぇんだから。…… ま、言い方変えればケーキ買うぐらい付き合ってやるよ 」ケーキを買うだけで何が不安なんだと率直な疑問をツッコミ。何で態々相手がケーキを買うだけに自分が付き合わないといけないんだ、と思ったが、自分も久しぶりにあの店のケーキを食べたいので相変わらず遠回しに肯定の意で返事を。それに、男一人でケーキを買うのが少し恥ずかしく感じる気持ちは誰よりも分かり。会社から最寄り駅ということもあり、会社への到着は早く。相手の一言を聞いてから自分もデスクに向かう。口付けをしたし、満員電車では急激に身体と身体の距離が近くなって無駄に緊張したし … 朝からカロリーが高すぎだと、落ち着いたところで疲れからの溜息を一つ。鞄からブルーライトカットの眼鏡を出すと、パソコンに向かって黙々と仕事を始める。　 ）

イラッとするんすね …。 嫌じゃない、ってとこだけ受け取っときます …。 ( 嫌ではない、と言われればパッと顔を上げて嬉しさを表に出すも、続く言葉に項垂れて。項垂れたまま、先に言われた言葉に焦点を当てればダメージは少ないだろうと。 「 …ありがとうございます ！、 その言葉待ってました。 じゃあ今日、楽しみにしてますね。 」 相手から行く、という言葉が出るまでじっと待っていると、付き合ってやる、と言われればぱっと顔を明るくしては上機嫌に言って。得意の、というより無意識に出るのだが嬉しさで顔がへらりと緩む。距離が縮まっていってるのではないかと内心浮かれていて。仕事に取りかかれば、偶に相手の方を見ると眼鏡をしていて知的だなぁとか、今朝の口付けは夢じゃないよなぁだとか思いながらやる気には満ちていて。今日頑張れば休日だしケーキだし、と士気を高め仕事に望んだ。が、上司に呼び出されなにかと思えば先日の仕事でミスを犯してしまっていて、きつく注意を受けてしまう。すみません、と何度も頭を下げ、デスクに戻ってきて手にしていたのは修正の必要なもの。締め切りは今日、と言われたその仕事は定時までには終わらない量で、項垂れるも、意地でも今日終わらせるんだと眉間にしわを寄せながらパソコンとにらめっこをして。午後になってもなかなか終わる気配がなく、思わず弱音を吐いてしまいそうになる。途中昼休みは軽く済ませようとコンビニで買ったサンドイッチとおにぎりを机に頬をくっつけながら食べていて、誰か手伝ってくれないかなぁ、なんてない望みを抱いて。 )

… お前の長所だから直さなくてもいいと思うけどな。俺みたいにぶっきらぼうよりも何倍もいいと思え。（　 自分のような愛想のない顔よりも相手の様にニコニコしていた方が得することは多いと思うし、相手の長所だと思っているので直さなくてもいいと。自信を持てという意味でもあり。「 … 俺が行くって言うまで説得する気だっただろ。んじゃ、終わったら適当に玄関辺りで待ち合わせな 」分かり易く " 行くって言ってください " という瞳で見られては、年下からの強請りに弱い自分にとっては断るに断れなく。自分もケーキが食べたいからという理由をこじつけ。特別にいつもと変わらず、黙って黙々とパソコンと向かい合わせの状態。集中していた所を急に話しかけられたので相手かと思えば昨日合コンに行くからという理由で仕事を自分に頼んだ同僚。昨日のお礼として仕事を手伝うと言って、書類の半分を持って行ってくれ。そのおかげで昼休み前に全て今日中にやるべき仕事は全て終わり。数少ない気兼ねなく話せる同僚と昼食を食べて帰ってくると、何やら項垂れている様子の相手とその隣にある大量のホッチキス止めをされた資料が目に留まる。何があったか分からないが、とても今日中に終わる量には見えなく。はぁ、と小さな溜息を一つすると相手の所まで行き「 朝食のお礼。俺はもう今日中の終わってるから 」と言って相手の返事を待たずにごっそり半分を持って自分のデスクに戻り。ミスをチェックしながら手際よく打ち直しや訂正を行っていき。　 ）