牙は深淵に堕つ、≪〆≫

牙は深淵に堕つ、≪〆≫

吸血鬼  2018-06-27 00:10:52 
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森を訪れたとある青年は、狼に襲われ、逃げ込むように古びた屋敷へ足を踏み入れた。

しかしそこは、血を吸う鬼が孤独に住まう、呪われた屋敷であった――。


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  • No.61 by 吸血鬼  2018-07-09 22:39:23 



(脳内を劈く魔女の高笑いも、我を失ったラザロにはもはや静寂に等しかった。今、脳を染め上げるのは、強烈な渇き。それはまさしくもう何日も水を飲んでいない漂流者が、渇きに耐え兼ねて海水を飲むが如く、飲んでも飲んでも足りない。夢中でハリーの血を貪るあまり、本来なら大好物なはずの血の味もろくに分からず。このままでは、あと1分もしないうちに致死量の血をハリーから奪い取ってしまう。だがそんなことを気にする余裕も今のラザロにはなく。魔女の目論見通り、ラザロはこのままハリーを喰い殺し、徒に延命するだけに終わる――はずだった)


――――……?


(ふと、耳に感じた吐息と、心地よい熱量。どこか、遥か遠くで、誰かが自分の名を呼んでくれる声が聴こえる。聞き覚えのある声だ。この声の主は、一体誰だったろうか。ピタリと、ラザロの喉の動きが止まり、吸血が一時中断される。ラザロの真紅の瞳が、何か大事なものを探しているように細かく揺らいだ)


ハ、リー…………?


(しゅるしゅると牙が縮み、自動的にハリーの首から牙が抜ける。止血作用のある体液の類でも牙から分泌されていたのか、吸血された傷跡の血は止まっている。ラザロの瞳にアメジストの光が戻り、ハリーの血で少しだけ濡れた口で、茫洋とその名前を呟いた)


俺……、俺は、何を……っ、すまないハリー、ハリー……っ


(ぼんやりと、蘇るここ数分間の記憶。背筋が粟立つほどの芳しい香りがしたかと思えば、まさしく飢えた獣のようにハリーの血を貪ってしまったこと。動揺と罪悪感から声が震え、視線は揺らぎ、己の下に組み敷いたままのハリーの首と後頭部に手を回してきつく抱き締め、縋るようにその名を呼んで)


(/健気なハリーくんに背後までキュンとしてしまいます……しばしの間シリアス展開を楽しみ、上手いこといちゃらぶまで持っていけたらいいなと思っております……!ではでは、今後ともよろしくお願いいたします/礼)

  • No.62 by とある青年  2018-07-10 00:23:58 


んっ、…は、っ…はぁ……ら、ざろ……なんだよ、その顔…僕はなんとも、ないのに

(祈るように耳へと口付けでいたところに、自分の名を呼ぶ声が聞こえてそっと顔を離す。直後肌を突き破っていた牙が抜ける感覚があり、神経を刺激して最後の痛みが襲いくる。だがそれを飲み込むように固く目を閉じることでやり過ごすと目をあけラザロの顔をみた。彼の瞳はアメジスト色に戻り、だが揺れていて声も震え、自責の念に駆られているのが痛々しい程に伝わる。そんな顔をする必要はないのにと笑ってみせるが、血がなくなり力の入らない体では弱々しい笑顔になってしまう)

大丈夫、…大丈夫だ、ラザロ。僕はちゃんと、ここにいる。君のそばにいるよ…君が、そんな声出す必要、ない…

(ようやく手首は自由を取り戻し、頭を抱えるように抱きしめられると手を回して彼を落ち着けようと背中をさすった。少々息苦しい抱きしめられ方でラザロの体は相変わらず冷たいが、胸が満たされていくのを感じる。ラザロと過ごす時間がここで終わらなくて良かったと心底思った。背中をさすっていた手を止め、今だせるだけの力で彼を抱きしめる。結果的には彼の寿命を伸ばすことになったのだ、悪い結果でもない。だがラザロはそうは思わないだろう。何度も大丈夫だと繰り返しながら今度は頬にキスを落とした。それは彼を落ち着かせるためのものだったが、少しずつ違う感情が混じり始めていることにハリー自身まだ気づいていなくて)

(/ありがとうございます!そうですね、シリアス展開から一気に仲を深めていちゃらぶしたいです…!こちらこそ今後共々よろしくお願いします!)

  • No.63 by 吸血鬼  2018-07-10 01:11:27 



ああ、ハリー……俺は、お前を喰い殺してしまったかと……、本当に、すまない……


(大丈夫だと薄く笑ったハリーの顔はすっかり血の気が引いていて、思わず泣きそうな気持ちに襲われる。なんともないからといくら言われても、安堵よりも罪悪感の方が断然強く。だがそんな中でも、一つだけ心から安堵したことがある。それは、ハリーが生きていてくれたこと。果たして彼はどんな方法で自分を止めたのだろう、と頭の片隅で考えていると、不意に頬に温かく柔らかい感触。まさしくそれは、自分が暴走している最中、耳に感じたものと同じで、ラザロは思わず目を瞠り、ハリーを目を見て)


っ……今のは……、魔法か……?


(そう言い放ったラザロは、至極真面目だ。キス、というコミュニケーションが人間同士に定着しているのは知っているが、それはあくまで愛や友情を伝えたりするためのもの。それが吸血鬼の暴走を止めるだなんて聞いたこともなく、もしかしたら魔法が宿ったまじないなのかもしれないと、ハリーの返答を待つ。何よりそれは、心地よすぎるのだ。唇が触れるだけで、冷え切った心臓が高鳴るような。そんな芸当が出来るのは、魔法以外に説明のしようがなくて)


『…………どうして?ねぇ、ラザロ、どうして?それ、ただの餌でしょう?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どっ――――』


(ハリーとラザロの様子をずっと見ていた――否、見ていたという言い方は少しだけ語弊がある――もとい、知覚していた魔女は、自分の思い通りにならない怒りに打ち震えた。ラザロは餌たるハリーを喰い殺し、その極上の血で延命する。そして屋敷から不純物は取り除かれ、またラザロを独占できる。その目論見が外れることなんて信じられない。いつのまにか壁に掛けてあった、女性が描かれた絵画の口が、魔女の声に合わせてパクパクと動く。その様子は不気味極まりなく、ノイズがかった魔女の声音も相まって、まるでホラー映画のワンシーンだった。ラザロは、久しぶりに耳にした魔女の声に、怒りを露わにその絵画を睨みつける。数百年ぶりにエネルギーである血液、しかも大好物のものをたっぷり摂取したおかげか、ラザロの持つ魔力は高まり、視線だけで絵画を粉々に砕いて)


……卑しく身勝手な魔女。二度とハリーを傷つけるな

『…………ふ、フフ、あはハはハハは!!400年と幾日、ようやく私に気付いてくれたのね!ずっと、ずぅっと傍であなたを見てたのに……鈍感なんだから。ねえ、愛しているわ。愛しているの、永久(とわ)に、ずっと、永遠によ』


――五月蠅い。喧しい女だ


(絵画が砕かれても、屋敷の中に魔女のおぞましい声が木霊する。魔女は狂ったように嗤った。ラザロに殺気や憎しみを向けられることにさえ、喜びを感じるのだ。そういう意味ではどうしようもなく厄介と言えるだろう。ラザロも、嫌悪を通り越して呆れを覚え、一度だけ柏手のように高らかに手を打ち鳴らした。乾いた音が屋敷に充満するのと同じ速さで、ラザロの補填された魔力が充満し、魔女の声を封じた。これが何日間持つかはわからないが、ともかくしばらくは実体なき魔女の声に邪魔されることはないだろう)


……本当に済まない、ハリー。罪滅ぼしと言っては何だが、応急処置を施そう。とはいえ、これを実践するのは初めてなんだが……上手くいくよう善処する、大人しくしていてくれ


(邪魔者を片付け、長い嘆息を一つ。そしてくるりと振り向けば、ベッドの上のハリーのもとへ歩み寄り、ベッドの淵へ腰かけ、もう一度すまなそうに謝る。そして思い出したのが、吸血鬼が親密な関係にある獲物(つまりいつも血液を提供してくれるパートナーのような人間)に施すある処置のこと。それがどういう処置かは説明しないまま、ラザロはそっとハリーの首元に手を回し、先ほど自分が牙を突き立てた首筋の傷跡に顔を寄せると、優しくそこに口付けて)

  • No.64 by とある青年  2018-07-10 12:38:20 


いいんだ、僕はちゃんとこうして生きてる。君の謝罪の言葉は十分伝わってるよ。だからもう自分を責めるな

(繰り返し謝罪の言葉を口にする彼の背中をまた優しくさする。ラザロは吸血をしてしまてば自分を赦せないだろうと言っていた。それならば自分が答えた言葉通り、彼が自分を赦せるまで傍にいてやるまでのこと。だが彼が突然驚いた顔をしてこちらを見たあと言い放った言葉には思わず吹き出してしまった)

え?ははっ、僕が魔法をつかえるわけないだろ。今のは僕から君への……親愛の、キスだ

(まさか魔法なんて言葉が出てくると思わずクスクスと笑いを漏らす。ただ彼へのキスは挨拶や子供へするような、軽いものとは少し違った気がする。だからこそキスの意味を伝えようとした時に少しだけ言葉に詰まった。親愛、というのもどこかで腑に落ちない。モヤモヤとした気分を抱えたままだったが、その気持ちを吹き飛ばすように不快な声が室内に鳴り響く)

なっ…勘弁してくれ_____今の君がやったの?…僕の血を飲んだから、か

(室内には壊れた音声のような魔女の声が、視界には不気味に口を動かす絵画が移り、その不気味さに体が震える。魔女の声が弱った体に響いて頭をガンガンと揺らすようだ。直後ラザロが怒りの感情を込めて絵画を睨むと絵画は粉々に砕け散る。それこそ魔法のように。だが魔女の声は消えず狂った笑い声が周囲に響いた。その声もラザロが手を叩くと一切止んでしまい周囲に視線を巡らせてみるが何か風景が変わったわけでもない。今までにみてきたラザロの力とは明らかに違う、その変化の理由は先程の吸血行為だと合点がいった。本来の彼はこんなにも力があるのかと思うと同時に、この力を持ってしてもこの屋敷を抜け出せなかったのかと改めて魔女の執念を思い知らされた)

罪滅ぼしは受け取れないけど、応急処置はして欲しいかな。ん…動かないようにするから、うまくやってくれよ

(未だにシュンとした表情を浮かべる相手に変わらず微笑みを向ける。彼が何をしようとするか確認もせずに、噛まれた場所を大人しくさしだした。今のラザロは自分に危害を加えないという確信があった。だから首を差し出すのを戸惑うこともしない。首にひんやりとした手が添えられ、彼の唇が傷口に触れるとピリッと小さな痛みが走る。それでも、ハリーはベッドの上で大人しく体を動かさないようにしていた)

  • No.65 by とある青年  2018-07-16 22:49:23 


(/あなたがまたここにきてくれることを願って、あげておきます。一言お返事をいただけると嬉しいです)

  • No.66 by 吸血鬼  2018-07-23 22:08:54 



親愛……、そうか。ああ、驚かせて悪かった。随分久しぶりだ……この感覚は。今なら、この屋敷を吹き飛ばすことも出来るかもな


(彼の優しいキスは、魔法などではなく親愛を込めたそれだったようだ。親愛、という言葉のニュアンスに、どこか心がもやつくような思いが一瞬よぎったが、気のせいだろうとすぐに忘れて。そして、急に絵画を砕いてしまったことでハリーを驚かせてしまったことを謝りながら、自分の掌を眺める。ハリーの血液が、自分ととても相性が良かったのだろう。飢えて渇いていた身体は、潤いと活気を取り戻し、魔力が湧き出るようだ。今なら魔女の呪いを半ば強引に打ち砕くことが出来るかもしれないと口に出すが、所詮それはただの希望的観測に過ぎず)


ああ、任せろ


(素直に差し出された首筋に、もう飢えを感じることはなかった。だがそれも一時的なもので、また渇きを覚え始めれば、ハリーの血を欲することになってしまうのだろうか。ラザロは、ハリーに怖い思いをさせることも、痛い思いをさせることも嫌だった。だから、口付けた首筋を、優しく舌先でなぞる。この時ラザロの口からは、特殊な唾液が分泌されていた。それがもたらす効果は、即効性の極めて高い鎮痛。実は、この特別な体液には中毒性があり、何度も繰り返し吸血の傷跡に塗布し続けると、人間側が血を吸われる際に痛みではなく快楽を感じるようになってしまう。だが敢えて、ラザロはそれを口にしない。無論それは、このままハリーを自分漬けにしてやろうという思いからでは断じてない。ハリーの血を吸うのは、もうこれっきり。ラザロは心にそう決めていた)


……終わったぞ。どうだ、まだ痛むか?


(唾液を傷口に馴染ませるように数秒間舌を首筋に這わせ続け、口を離せばハリーを顔を覗き込む。彼が貧血で顔色が悪くなっていないか、気分を悪くしていないか、それを窺うように。何しろこの応急処置を人間に施すのは初めてだ。果たして上手くできただろうか、相手の痛みは消えたか、確認して)


(/連絡も寄越さず、長らく留守にしてしまって申し訳ございません。背後で色々と状況変化があったのですが、言い訳がましくなってしまうので自重させて頂きます。愛想を尽かされても仕方のないことをしでかしてしまったので、これ以上の絡みが無駄と思われるかもしれません。もしその場合は、此方を切り捨てて頂いて構いません。わざわざ上げて下さり、ありがとうございました。)

  • No.67 by とある青年  2018-07-23 22:31:45 


(/更新通知がきて心臓が飛び跳ねるかと思いました笑 おかえりなさい。背後様の方で状況変化があったにも関わらずまた戻ってきていただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます。ぜひ続けてお相手させていただきたいです。ラザロとハリーとはこれからまた1歩歩み寄っていくような場面ですので、このあとの話を紡げるのがとても嬉しく思います。まずは本体のみお返事させていただきます。本文の方はもう少しお待ち下さい)

  • No.68 by とある青年  2018-07-24 00:04:24 


ほんとに?僕の血があれば君の力を引き出せるのか…それならもう少し僕の血を飲めば君の力で呪いを突破できるかもしれないな。今はまだ、血はあげられないけど

(屋敷を吹き飛ばせるかもという言葉には一縷の望みを見るように顔を明るくさせる。自分の血をラザロに与え、彼が力を手にしたところで呪いを打ち破る…それで魔女を吹き飛ばせるなら2人で屋敷を出るという望みが叶えられるのだ。今2人が望む1番の結末ではないか。未だ血の気が引いた顔を浮かべる身としては、今すぐに吸血して屋敷から脱出を…とは言えないが、ラザロが本来の力を取り戻すまでハリーの血を飲み続ければ希望が現実になるかもしれない。ラザロの決心など知りもしないままハリーは彼に吸血されることに積極的になっていて)

ん……っ!!____!___っ……

(ラザロを疑っているわけではないが噛まれた場所に何をするのかハリーは検討もつかなかった。また痛みがあるかもしれないと覚悟をしているとふいにざらりとした冷たいものが傷口をはって体が強ばる。それがラザロの舌だと認識するのにはしばらくかかった。舌は人間のものよりも冷たいが、舌が這うのと同時にかかる吐息は暖かく、濡れた箇所をくすぐるようだ。思わず情けない声が出そうになって口を手で覆う。彼は真面目に傷の治療をしているのだ、おかしな声を出すわけには行かない。それでも今の状況を客観的な視点でみれば如何わしい事をしているように見えてしまう。頭の中に浮かんだ客観的視点を目を強く瞑る事で振り払った)

…っは……あ、…いや…、だい、じょうぶ、だ…いまのが、処置?

(ようやく処置が終わると詰まらせていた呼吸を一気に吐き出し粗く息をする。顔の周りが熱く、息を抑えていたのと羞恥心から顔が赤くなっているのは容易に想像できた。顔を横に向けてこちらをのぞき込むラザロと目線を合わせないようにしつつ、口は未だ手で覆ったままにして顔を隠す。彼を信頼してはいたが心の準備として何をするのかせめて聞いておくべきだったと今更後悔していて)

  • No.69 by 吸血鬼  2018-07-24 00:50:08 



……おいおい。実現可能性は限りなく低い、あまり期待しないでくれ。それに俺は、もう二度とお前の血を飲むつもりはないよ


(表情を輝かせたハリーに対して、ラザロは済まなそうに苦笑いを浮かべて過度な期待をしないように促す。いくら彼の血が極上で、ラザロの魔力を漲らせる効果があるとはいえ、ラザロの持つ力の絶対量が増えるわけではない。肉体も命も、その全てを注ぎ込んだ最大にして最悪の魔女の呪いには、万全の状態であっても勝ち目は薄い。奇跡が起きれば別だが、それ以前にラザロはもうハリーの血を飲む気はない。きっぱりと、それは伝えておいて)


ああ、そうだ。何分初めての挑戦だ、不手際があったなら謝る。……ん、顔が赤くないか……?まだ足りなかったか……、


(今のが処置かと問われれば、自信をもって頷く。だが、何やら相手の様子がおかしいようで、自分のやり方に問題があったのかと推測し、申し訳なさそうに眉を下げて。相手の顔をじっと覗き込んでいれば、目線も合わなければどうやら頬が上気しているようだ。心なしか呼吸も荒く、途切れ途切れに零れる言葉もどこか苦しそうで。応急処置が不完全だったのかと盛大な勘違いをし、もう一度相手の首筋に顔を埋めようと近づけて)


(/こんなに快く受け入れて下さるとは思ってもおらず……此方こそまさか、という思いです。本当にありがとうございます。不束者ですが、今後ともよろしくお願いいたします/お辞儀
早速ですが、近いうちに、ラザロとハリーが互いに抱いている気持ちがlikeではなくloveであると自覚させるためのイベントを起こしたいと考えております。その時に晴れて両想いになり、結ばれることとなる予定ですが、いかがでしょうか。「まだ早い、もう少しじっくりこの関係を楽しみたい」など、他にもご意見がございましたら、何なりと仰ってください。)

  • No.70 by とある青年  2018-07-24 12:42:38 


…そうか、そう上手くはいかないか。僕は君が死んでいくのを止められないんだな…ここから出られれば僕の血を惜しみなく君にあげられるのに

(2人で協力すればとの思いつきは現実的ではないらしく残念だと首をふる。自分の血を飲むだけでラザロに活力が溢れるならいくらでもラザロに吸血されよう。それは先程の応急処置の副作用を知らないが故に出る発想かもしれないが、ラザロのためになるなら自分を惜しむ必要もない。だがそれは幽閉されている現状において、ラザロが望む餓死の結末を無駄に伸ばすことになってしまう。視線を天井へと向けるとぶつけようのない怒りを睨みに変えた。ここから出られさえすればラザロは自害することもないし何より自由に暮らすことができるだろう。その時になっていつの間にかこの屋敷を出たとしてもラザロと一緒にいることを前提に考えている自分に気がついた)

ちょ、待てっ、大丈夫…もう大丈夫だラザロ。もう痛くないよ。ただ、その……まさか、傷口を舐められると思ってなくて…ちょっと驚いただけだ、君の処置はうまくいってるよ

(もう一度顔を近づけてきた相手を慌てて止める。ラザロの額と肩とにそれぞれ手を添えてこれ以上近づかないようにしながら目線を合わせてもういいと首をふった。幾分かマシになったがやはりまだ顔が熱い。応急処置のためとはいえラザロに首筋舐められたという事実をじわじわと理解していくと心臓が妙に脈打つ感覚に陥る。その理由まではまだ理解できずにいた)

(/いえいえせっかく作りこんでいていただいた世界観でまだまだラザロとハリーですごしてみたいと思っておりましてので…こちらこそ至らぬ点も多々あるかと思いますが、改めましてよろしくお願いします。
ついに気持ちの変化の時ですね…!プラトニックな雰囲気も好きですが、甘いちゃなこともできればなと思っておりましたので…ぜひ結ばれるイベントをお願いします!)

  • No.71 by 吸血鬼  2018-07-24 21:35:51 



……?いや、俺がお前の血を吸わないのは、なんというか、こう……お前にもう、二度とあのような思いをさせたくないからというか……、……上手く、言葉に出来ないが。ふ……、気持ちだけで嬉しい。ありがとう


(ハリーの言う、“ラザロが死んでいくのを止められない”という言葉にどこか違和感を抱いたようで、考え込むように拳を口元に当てて数秒間黙り込む。確かにこれまでのラザロは、魔女の意思に抗い、緩やかな餓死を求めて意図的に吸血を拒んでいた。だが、ハリーに対する想いは、それとは違う。ただ単に自分の目的のためにハリーの血を吸わないと決めたのではなく、もう彼に痛くて怖い思いをさせたくないから、彼からの吸血を金輪際自重しようと思ったのだ。自分自身、どうしてそんな風に思い至ったのかまだ整理がついておらず、言語化にするのはたどたどしくなってしまったが。そして、屋敷から解放されれば…というハリーの言葉に、一瞬だけきょとんとすれば、吐息を零すように小さく笑う。もしも万が一屋敷から出られれば、二人が一緒にいる理由はもうなくなってしまうと、諦めにも近い感覚をラザロは持っている。だから、ハリーに向けられた微かな笑みは、社交辞令に対する少し寂し気なニュアンスを含んでいて)


ん……そうか。なら良かった。そうだ、色々あって本来の目的を忘れていたな、…………少しサイズが大きいかもしれないが、これを着てくれ


(ハリーの静止には素直に従うも、なぜか慌てた様子の相手に不思議そうな視線を向ける。応急処置が終わって一息つくと、もともとこの寝室に来た本来の目的のことを思い出して。ベッドから離れて、古い大きなクローゼットをごそごそと探る。そして、ダークグレーの綺麗なスウェットを見つけ出し、それをその場で広げてみる。自分が着た形跡はなく、恐らくまだ新品だ。匂いの類も気にならない。ただ懸念があるとしたら、ハリーよりワンサイズほど大きいかもしれないこと。だがそれでも、バスローブのままでいるよりはましだろうと、相手にそれを差し出して)


(/かしこまりました。イベントのざっくりした概要としては、魔女の策略で、二人が物理的に引き離されそうになります。そこでラザロはハリーに「行くな」と言い、ハリーは自分の意思で「ここに残る」と言う、晴れて二人は結ばれる……というものになる予定です。イベントゆえ、多少の確定ロルを使ってしまうことが予想されますが、ご了承いただければ幸いです。)

  • No.72 by とある青年  2018-07-25 01:08:31 


…僕が痛みを感じるようなことはしたくないってこと?つまり、僕を傷つけたくないから、でいいのかな。だとしたらすごく嬉しいよ。気持ちだけって…ラザロ、君は…ここから、2人で出られたとしても…僕と一緒には…

(ラザロがたどたどしく語る言葉に静かに耳を傾け、バラバラの言葉を繋ぎ合わせる。導き出した言葉が正解ならば、彼が自分のことを思いやってくれている証拠であり、自分で言葉を形にしておきながら体がむず痒かった。しかし、直後彼が浮かべた顔には寂しさの感情が垣間見えて、ラザロが何を考えていたのか大体の察しがつく。すぐさま屋敷の外でも一緒にいよう、と叫ぼうとするが、ラザロが窓越しに外を眺めていたあの光景が脳裏によぎった。ラザロが自由を得た時に人間である自分と一緒にいる意味はあるのだろうか。寿命は雲泥の差があり食すものさえ違う。奇しくもラザロと同じ考えが頭をよぎり、うまく言葉を紡ぐことはできなくなっていた)

あぁ、そういえば着替えに来たんだった。すっかり忘れてたよ。ありがとう。
_____さすがに君のサイズだとこうなるな

(本来の目的、と言われてもしばらくその内容を思い出せずにいたが、ラザロがクローゼットに近づいてようやく目的を思い出す。ベッドから降りて、広げられたシンプルなダークグレーのスウェットをみると悪くないと数度頷いた。礼を言いながらスウェットを受け取るとパーティションの裏へまわりバスローブを脱いでスウェットを着る。しかし案の定というべきか、身長に明確に差があるラザロの服を着ると袖口は手のひら部分まで伸び、スボンは布が余りきって裾が引きずられる状態だ。パーティションの裏から出てきてラザロに現状を見せれば苦笑いを浮かべる。だがそれでもバスローブよりかは暖かく、夜を過ごすにはちょうど良い服装となりそうだ)

(/イベント概要了解いたしました!では概要を念頭におきましてイベント挑みたいと思います。確定ロルの件も了解です。イベント進行のためには必要なことですので気にせずどうぞお使いください!)

  • No.73 by 吸血鬼  2018-07-25 09:54:00 



そう、……そうだ。人間に対して、いや、誰かに対してこんな想いを抱くのは初めてだが。…………もしも、此処から出られたら。俺は自由を取り戻し、お前は夢を取り戻す。……違うか?


(自分が言いたかったことを的確に言葉にしてくれたハリーに、目の覚めるような思いで頷いた。自分は彼を、傷つけたくないのだ。餌である人間にそんなことを思うなんて、吸血鬼の常識では異端とも言えるとても酔狂な話だが、然してそれを悪くないと思ってしまう自分もいた。けれど、もしハリーとは別の赤の他人に対しては、同じ感情は抱かないだろう。餌として、一片の躊躇いもなくその首筋に牙を突き立てるはずだ。どんどんラザロの中に、ハリーを特別視しているという自覚が生まれ始める。だが、その先に待っているのは儚い現実だ。この屋敷から出られる目途が立ったわけではないが、その未来へ思いを馳せれば、ラザロは視線をハリーから逸らした。ハリーと離れたくない。だが、彼には背負う過去と譲れない夢があることを、知ってしまったから。自分自身に言い聞かせるように、ラザロは言葉を紡いだ)


ふむ……不便かもしれないが、寝間着だと思って我慢してくれ。それに、……そんなに悪くない


(ベッドから立ち上がった相手に、貧血は大丈夫なのかと一瞬ヒヤリとするが、自分の力で難無く着替えを済ませた辺り、恐らく大丈夫なのだろう。やはり、と言わんばかりに苦笑を浮かべたハリーの姿を、顎に手を当てながら一瞥して。自分の服を誰か別の者が着る、という感覚があまりに不思議だが、相手がハリーだからだろうか、それも悪い気はしなかった。ぶかぶかまではいかないが、ゆったりとスウェットを着こなす姿に、どこか愛おしさを覚える。それが愛しいという感情であるとはラザロ自身気づいていなかったが、ハリーの姿を見る視線はとても穏やかで)


俺の体内時計が正しければ、もうすく朝焼けだ。昼夜逆転させてしまって済まないな。明日の朝食……いや、夕食か。その時は、精のつくものを出させよう。


(寝支度が整ったところで、ふと今の時間に意識が向かう。吸血鬼である自分が、ほんのりと眠気を感じているということは、もうすぐ朝日が昇る頃なのだろう。今日は騒動があって、彼を人間界での正しい時間に寝かせてやれなかったことを謝って。そして、自分が少なくない量のハリーの血を奪ってしまったことから、造血効果のある食事を使い魔に用意させることを宣言しておく。コウモリたちによる、割れたシャンデリアの破片の掃除もちょうど終わったようだ。ラザロもその場で一つ伸びをして、自分の寝床である棺に向かって)


(/ありがとうございます。それでは、背後はこのあたりで失礼いたします。重ねてのお願いになりますが、今後ともよろしくお願いいたします。)

  • No.74 by とある青年  2018-07-25 18:51:06 


…そうか、君がそんな気持ちを初めて抱く相手が僕で、僕はすごく…嬉しいよ。だから、ラザロ…君の言うことは正しい。けど、僕は…

(ラザロが持った初めて他人を思いやる気持ちが自分に向けられていることにこの上ない幸福を覚える。彼の中で特別な場所に自分がいることが嬉しくて仕方がなかった。そして、ハリーにとってもラザロは同じ位置にいる。こんなにも1人の人物から離れたくないと思ったのは初めてだ。この屋敷の内だろうと外だろうと関係ない、ラザロのそばにいたかった。だがラザロから視線を外されると途端に心は揺れる。ラザロは自由になり、ハリーは過去の夢を追いかける…それはこの屋敷にいた当初に自らそうしたいと願ったことだった。彼が目線を外して別れるべきだと言うなら、ラザロはその結末を望んでいるのかもしれない。理屈を考えれば吸血鬼と人間と一緒にいれるはずがないのだから。絞り出すような声では曖昧な返事しかできず、彼の方を見ていられなくてこちらからも顔を反らした)

それって僕のことからかってる?まぁでも君が悪くないっていうなら、悪い気はしないよ

(人間案外丈夫なもので体の気だるさはあるものの貧血で倒れる事態は避けられた。明らかにサイズの合っていない服を着ているのにそれを穏やかな顔で肯定されるとなんだか気恥ずかしくて、それを誤魔化すように人差し指を向けながら冗談を投げた。サイズこそラザロのものではあるが、このスウェットは新品であり彼が着たことのあるものではない。もしこれが彼の普段着だったら、もっとやり場のない気もちを持っていただろうなと想像し、そこで頭を降って邪念を振り払った。変に頭に刺激を加えたことで脳内がふわりと浮く感覚に陥り、ストンと重力に引っ張られるままベッドに腰を落とす。動ける体ではあるが血を多量失ったのは確かでこれ以上は動かない方が良さそうだ)

もうそんな時間か…いろいろなことがあったから仕方ないよ、気にしないでくれ。そうだな、力のつく夕食だとありがたい。明日からは君と屋敷を回る約束があるのにベッドから動けないなんて残念なことになりたくないからね。それじゃあ…おやすみラザロ

(この体の気だるさは血が少なくなっただけな理由ではないらしい。夜更かしどころか随分と長い時間起きていたようだ。思考が寝ようという方向に傾くと一気に眠気が襲いくる。倒れるようにしてベッドへ寝転がると布団に入ることもなく、こちらに背を向け伸びをするラザロの方を眺めた。こうやっておやすみを言えるのはいつまでなんだろう…先程の屋敷から出た後の話を思い出して胸が詰まる。体は睡眠を欲していたが、ハリーは少しでも長く彼を見ていたくて、しばらく目を開けたままにしていた)

  • No.75 by 吸血鬼  2018-07-26 00:02:44 



っ…………。……いきなり、済まない。だが、こうしなければ……今抱き締めなければ、いけない気がしたんだ。この感情を言葉にすることは難しい……だが、こうして触れる体温だけは確実だ


(嬉しい、と。彼はそう言ってくれた。そして、異種族である二人が一緒にはいられないということを、理屈では分かっていても、それに抗おうとして言葉に詰まったハリーに、胸が詰まるような思いになる。そして気が付けば、彼を抱き締めていた。乱暴にではないが、強く、とても強く。ハリーの鼓動、ハリーの肌、ハリーの体温、それら全てを実感すればするほど、この腕からもう放したくないという気持ちが溢れ出る。それはとても身勝手で、自分よがりな感情。抑えることは至難の業だった。もしかして魔女はこういう気持ちだったのではないか、と頭の片隅で考えれば、少し吐き気を覚えるが、それもハリーの髪の香りが心地よさへと塗り替えて)


深い意味はないさ。……ああ、だが少しでも具合が悪ければ無理はするな。心細くないように、傍にいてやろう。――さすがに風邪を引くぞ。ほら、きちんと肩まで。


(揶揄っているかと問われれば、彼と出会った当初のことを思い出し、微かに笑って否定をする。あの時とは立場が逆だ。屋敷探索の約束については、自分も楽しみにしている。だが、何よりもハリーの体調が大事なので、無理はしないようにと釘をさして。ふと、背後から視線を感じて振り向けば、ハリーが布団も被らないままに横たわっていた。優しく微笑みながら、もう一度彼のベッドまで歩み寄り、優しく毛布を上からかけて。寝てる間に彼が寒い思いをしないようにと、隙間風が入らないようにしっかり肩まで毛布を引き上げて)


ああ。おやすみ、ハリー


(そうして満足げに、ラザロはハリーの就寝の挨拶に応えた。離れ際に、彼の頭を一度だけ優しく撫でて。馴染みの良い棺の中に横たわりながら、ラザロの心中には様々な思いが渦巻いていた。その正体も、行き場も分からないまま、疲労の波に押し流されるように、ラザロは意識を手放した)



(そして十数時間が過ぎ、時刻はおおよそ夕暮れ時。ハリーが目を覚ました頃には、もうラザロは棺の中にはいなかった。風呂か、書斎か、どこに行ったのだろうか)


――――ハリー!来てくれ!


(突然屋敷に響き渡ったのは、切羽詰まったラザロの声。どうやら助けを求めているようなニュアンスだ。その声はどうやら、玄関ホールから聞こえてきているようで)

  • No.76 by とある青年  2018-07-26 01:09:53 


っ、ラ、ザロ…ラザロっ……大丈夫、僕も今君に、こうして欲しいと思ってた…こうしてると、君を感じる……

(気がついた時にはラザロの腕の中にいた。反らしていた目は動揺で揺れて、幸福と悲しみが同時に胸を支配する。彼の名前を呼びながら背中に手を回してこちらからも強く抱きしめた。彼の肩に顎を置き、なるべく2人の体を近づける。きっと2人の思いは同じだ、どんな状況になろうと一緒にいたい、離れたくないと思いあっている。だが理屈がその思いの邪魔をする。吸血鬼と人間とでうまく過ごしていけるはずがないという理屈が、「一緒にいたい」とただそれだけの言葉を口にするのを阻害していた。ラザロに強く抱きしめられる度に彼の思いが伝わって胸が満たされ、同時に口にしてはいけない願望に胸が傷んだ。たった一言の本音を言えないまま、ついにラザロとハリーの体は離れてしまった)

あぁ分かった、無理はしないよ。せっかく暖かい君の服を貸してもらってるのにこのまま寝ちゃ意味ないな。…ありがとう、ラザロ

(ラザロがこちらに戻ってくるのをみると何事かと不思議そうな目で見上げるが、布団のことだと分かると苦笑いを浮かべた。だがそうやってラザロが自分のことを思ってくれるのが嬉しくてたまらない。毛布を肩までしっかりかけられると、彼を捉え続けようと開けられていた目はすぐに微睡んでいく。彼の手が頭を撫でると言いえぬ安堵と幸福とが胸に溢れ、自然と瞼は閉じるとそのまま眠りに落ちていった)




(翌日、体が起きるまでたっぷりと寝て起きてみると時刻は夕暮れ時だった。いつもなら朝の決まった時間に自然と起きるのに、昨夜はいろいろとありすぎたせいか体も休息を優先したようだ。ベッドから起き上がり周囲を見回すが部屋にラザロはいない。とりあえず彼を探そうかと思った矢先、彼の声が遠くから聞こえる。緊急を知らせる切羽詰まった声でどうやら玄関ホールから聞こえてきているようだ。慌ててベッドから降りるとスウェット姿のまま玄関ホールへ走る。ズボンの裾が足に絡まりそうになるのを必死に引っ張りあげながら一直線に玄関ホールへと向かった)

ラザロ!どうした?!

(玄関ホールにたどり着くや否や声を上げて彼を呼ぶ。いったい彼の身に何が起こったのか。昨夜のように魔女の策略でないことを祈りながら、ハリーはラザロを探していた)

  • No.77 by 吸血鬼  2018-07-27 18:05:56 



(ハリーより一足先に起床したラザロ。棺から出て、一晩で凝り固まった身体を解すようにゆったりとした伸びを一つ。シャワーでも浴びるか、とバスルームに向かおうとした時、視界にハリーの眠るベッドが入る。そちらへと歩み寄れば、すやすやと気持ちよさそうに眠る彼の姿。その無防備な顔を見ているだけで、冷え切った身体が熱を持つような気がする。無意識のうちに表情が綻ぶのだ。どうか、どうかこの先もずっと――――)


…………俺は何を考えているんだ


(陳腐な仮想は思い浮かべるにも値しないとでも言わんばかりに、ラザロは自嘲気味に笑い、数回かぶりを振った。それはただただ自分勝手なエゴだ。彼には、人間界に置いてきた夢があるのだから。それでも、ハリーの心が大きく揺れているのを、ラザロは感じ取っていた。けれど、期待しすぎては此方が傷つく――魔女のせいである種諦観が身に染みたラザロは、頭を冷やすべくバスルームへと向かった。そしてシャワーを済ませ、柔らかいバスタオルで身体を拭いていると、何やら騒がしい声が玄関ホールから響く。ハリーが、自分の名を呼んでいるような気がした。はっきりと聞こえたわけではないが、彼の危機を本能で感じ取ったのか、ラザロは魔法ですぐに衣服をまとうと、髪の毛から水滴を滴らせたまま玄関ホールへ駆け寄って)


ハリー……っ?!

『 ―――― オ 馬 鹿 サ ン …… 』

(玄関ホールへ足を踏み入れた瞬間、扉の前あたりにハリーの姿を見つける。その直後、魔力で数日間は封じたはずの魔女の声が屋敷に響いた。けれどそれは、ジャミングを無理に突破して喋っているような、聴けたものではないおぞましい声。魔女の声を契機に、ハリーの身体が謎の強い力で引っ張られ、その瞬間玄関ホールの扉が勢いよく開き、ハリーを屋敷の外へと文字通り放り出した。かなり乱暴で凄い勢いで吹っ飛ばされたので、受け身に失敗すればダメージは必至だろう。ラザロはあまりに一瞬の出来事に眉間に皺を寄せて目を瞠る。ハリーを屋敷の外に強制的に締め出した次の瞬間、大きな音を立てて扉が固く閉ざされた。扉と扉がぶつかり合う重厚な音が屋敷内に木霊し、ラザロは独りになった)


ハリー!!ハリー、聞こえるか!怪我はないか!


(だが、想定外の事態にいつまでも呆けているラザロではない。すぐにこれが、ハリーを屋敷から排除し、ラザロと引き裂いて二度と自分たちが会えないようにするための、魔女の策略だということを察知し、ラザロは扉へと駆け寄る。固い鉄の扉を、拳が傷つくのも構わず何度も叩き、ハリーの名を叫ぶ。彼がもしこの扉にぴったりとくっついてくれれば、分厚い扉越しにでもなんとか微かに相手の声を聞き取れ、会話することは出来るだろう)

  • No.78 by とある青年  2018-07-27 20:03:59 


あれ?ラザロ……っ、なっ…!

(彼の姿を探し玄関ホールを見回していると、後方からラザロの声が聞こえる。振り返るとそこには探していた彼がいて、服こそ着ているが髪は濡れている。先程までバスルームにいたことは明らかだった。それではここから聞こえてきた声は…その答えにたどり着く前に不快な音が響いた。全身の毛を逆立てるような忌まわしい声、それを認識すると同時に体が後方に思いっきり引っ張られた。咄嗟に何か掴むものを探すも、手は宙を掻くだけで体は屋敷の外へと放り出される。一瞬だけ宙を舞った体は容赦なく地面に叩きつけられその上を転がり土埃が舞った。頭を守るように受身をとったものの、ようやく止まった全身からはじんじんと痛みが伝わってきている)

…い、った……あぁ……

(腕を使って上半身をとりあえず起こすと、目の前には既に扉が閉ざされた屋敷がたっていた。油断していた、ラザロが昨夜魔女の声を消して見せた時から暫くは大丈夫だろうと思い込んでいた。そしてラザロが助けを求めて自分の名前を呼ぶ声に、一目散に駆け寄ってしまった。魔女にラザロの声を使って罠にかけられたことに怒りを覚える、同時に本物のラザロの声と偽物のそれとを見分けられなかった自分にも腹が立った。怒りを深い呼吸に何とか変換しながら痛む体を無理やり立ち上がらせた。その時、夕暮れ時の澄んだ空気が森を駆け抜ける。まるでハリーの怒りを鎮めるように。その時になってハリーはようやく自分が屋敷の外に出たことを理解した。いつ出れるかも分からない陰鬱とした屋敷から、今は逃れられている。まだ森の道は見える時間帯、このまま踵を返して森を進めばそのうち自分の家へとたどり着く。夢を叶えることができる、あいつとの約束を果たせる…そうやって数秒立ち尽くした後、扉を何度も叩く音に意識を取り戻した。口からは自然と彼の名前が漏れだす。痛む体をなんとか動かし固く閉ざされた扉の前に立った。微かに彼の声が聞こえるが、一気にラザロとの距離が離れてしまったようで焦燥感が襲いくる。なんとかその声を聞き取ろうと扉に耳をつけ彼の声を聞き取ろうとした)

ラザロ!全身軽い打撲と擦り傷があるけど、僕は無事だ!だからそんなに扉を叩かなくていい、君の手の方が壊れる!

(屋敷に入った時はあんなにも簡単に扉は開いたのに、今は取手をいくら回してもビクともしない。彼に少しでも声が届くように、喉を開いて大声で扉越しの彼に話しかけた。ラザロと一緒に屋敷から出ると約束したのだ、1人だけ逃げるなんてできない。それは昨夜から押し殺していたラザロと共にありたいという願いから生まれた思いだったが、まだそれを口にすることは出来ていなかった。扉に体を寄せているとラザロが力任せに扉を叩いていることが嫌というほど分かる。それはまるで自分を省みない悲痛な叫びのようで、胸が潰れそうだった。このままでは先にラザロが壊れてしまう、そんな事はハリー自身が許せなかった)

  • No.79 by 吸血鬼  2018-07-27 22:02:30 



っ…………。ハリー……。


(普段大声を出すことなどない自分があんなに声を張り上げたのは、それこそ何百年ぶりで、喉がその負担の大きさを訴え、軽く数回咳き込む。それでも、まだハリーに声が届くこと、彼の声が聴こえること、彼が重傷を負わなかったことに安堵し、彼の名を呟きながらずるずるとその場に崩れ落ちる。そのまま態勢を変え、扉を背もたれにして床に座る形になって)


…………これで、よかったと思うか?


(思い出すのは、彼がこの屋敷に迷い込んできた初日のこと。彼は間違いなく、この屋敷から出たがっていた。そしてそれが今、現実になったのだ。ラザロは次に、自分の気持ちに思いを馳せる。ハリーに向ける感情はとても難しいが、はっきりと分かることは、彼にずっとここにいて、自分と一緒に暮らしてほしいということ。だが、果たしてそれが彼の為になるだろうか。自分には、そう思えなかった。これでよかったんだ。そう思い込もうとして、けれどどうしても溜飲が下がらない。その複雑な思いは、一つの問いとなって口から零れ出て)

  • No.80 by とある青年  2018-07-27 23:04:47 


ラザロ……ははっ。あぁ、ダメだ

(自分の声が届いたのか、微かにラザロが自分の名を呼ぶ声が聞こえて扉を乱暴に叩く音が止んだ。彼が自分を壊す前に止まってくれたことに安心しながらも、先程聞こえた自分の名前を呼ぶ声をもっと近くで聞きたいと思った。こちらを見る彼の目を見つめながら名前を呼ばれたいと思った。ラザロの顔が見たい、ラザロの声を聞きたい、昨夜のようにラザロの腕の中にいたい。そこで思わず場違いの笑いが零れてしまった。もう言い訳ができないほどに胸はラザロへの感情で溢れていて、屋敷に来る前の自分と決別するように一言諦めの言葉を口にしていた。もう目を逸らせない、今すぐラザロに会いたい、ラザロのそばにいたい。夢もあった、約束もあった、外に出たいと思っていた。でも今はそんな過去よりも、ラザロの隣にいたかった。ずっと閉ざしていた感情と向き合う時だ。誰かとの深い繋がり、何気ない日常、たわいない会話…それらをラザロと築きたい)

良いわけないだろう、ラザロ!僕はまだ君とやりたいことも話したいことも山ほどあるんだ!僕は君のそばにいたい、それが例えこんなバカバカしい屋敷の中だろうと!僕らは必ず2人でこの屋敷を出る、そしてその後も、ずっと僕らは一緒だ!

(ラザロはまだ扉のそばにいる。扉に両手を添えありったけの声で胸に溢れた感情をぶつけた。そして拳を握り、思いっきり扉を叩く。負傷の身であるとか、吸血鬼で破れなかった扉を人間が破れるわけないだとか、そんな言い訳や理屈はどうでもいい。先程ラザロがやったように、自分の拳を省みず扉を力の限り叩き続けた。こんな形でラザロと別れるなんてごめんだ、魔女の思惑通りになってたまるものか。ただラザロの隣に居たいだけだ。ラザロの名を呼びながら何度も何度も自分の拳で扉を叩く。この扉が開かれ彼に会えるまでこれを止めるつもりは無かった)


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