主 2013-07-22 06:03:31 |
通報 |
…っ!?
(連続で攻撃を続けて優越感に浸っていたのだが、ついに相手が攻撃に移り。今の自分には攻撃しか頭に無かったので瞬時に防御も出来ずにドロップキックを真に受け、その反動で相手と距離をとり攻撃を受けた部分を押さえて苦しそうな表情になって。しかし、相手に自分の毒が効いているのは確実、ここは焦らずに長期戦へ持ち込めば負ける事が無いと確信する。相手はその逆を考えているはずなのであまり攻撃には専念せず隙があれば一撃を決めに行く戦術で行こうと考え、距離をとったまま相手の様子を見て。
相手が時間稼ぎに入った。
この状況ならセオリー通りだろう。放っておけば相手は勝手に戦闘不能になる。
対戦相手も毒を恐れて、迂闊には手を出せなくなる。
だが、それは常人であればの話。
相手が取った距離と同じ分、自分は距離を詰める───
その表情は嬉々として───
───やっぱり闘いってのは"こう"じゃ無きゃなッ!───
この男にとっては前に出る事しか頭に無いのだ。
ダブルのジャブを"見"させてから、右のストレート───
だが、それは殆ど体重の乗っていない手打ちのパンチ。
先程とは逆に上段を意識させ───
左足一本で軽く前に跳ぶと、着地と同時に思いっきり体重を乗せた右のフロントキックを放ち───
.
…。
(今までの相手との戦闘で相手の動き方やタイプは認識したので距離を詰めてくることは分かっていた。恐らく前に出る事しか考えていないタイプ。だからこそ武器も持っていないし防御に専念することも見受けられなかった。ダブルのジャブからの右ストレート、今までなら避けたり防御に特化していたが相手が武器を持っていないのでいつもとは違う防御が可能になる。右ストレートは右の刀で迎え撃ち次に来た右のフロントキックは左の刀で迎え撃つ。どちらかに意識を反らすのは先程から相手が何度かしてきている技なのでもう騙されない、と視野を広くもちギリギリまで引き寄せて二つの攻撃に迎え撃ち。
カウンターは見えていた───
それでも、自分が止まる理由にはならない。
自分の躰が傷付くのもいとわず、迎え撃ってきた刃ごと相手の躰を弾き飛ばす。
もう毒には感染している。
───恐るるに足らない───
とは言え、自分に残された時間は残り僅か───
視界はぼやけ、息は荒く、躰に上手く力が入らない。
正に立っているのがやっとの状態なのだ。
「そういや、まだ自分の手の内明かして無かったよな?」
息も絶え絶えに相手に告げると、右の手首のスナップを利かせ───
魔力を体内で練り上げると、右拳に集中───
腰だめに構えた拳が蒼い光を纏う。
魔術とは、本来、魔力という精神エネルギーに使用者のイメージを投影させて始めて成立する技術。
だか、この少年の場合は魔力を物理・身体的エネルギーに返還することに特化しているのだ。
通常の魔術が使えないのは此れに起因していた。
「覇亜ぁぁぁっ……!」
気合いと共に力を込めると、拳は更に輝きを増していく。
本来、不可視で在る筈の魔力が顕著に現れる程に───
左手をスッと上げると先程やって見せたように、挑発するように手招き。
ケ リ
「決着つけようぜ?」
.
…っ!?
(カウンターのタイミングはばっちりだったはずなのに相手はそれを気にせず刀ごと吹き飛ばした。吹き飛ばされて全身に痛みがはしるが相手はもっと辛いはず。ただただ相手が毒で力尽きるのを願っていたが、そんな事を待っている間に此方がやられてしまう。更に相手の右拳が蒼い光を纏ったのを見て、あんな一撃をくらえばひとたまりも無いと察する。相手の挑発にもここはのるしかない。「分かりました。本気で終わらせにいきます。」そう言うと全身の力を凝縮させ自分の周りに毒ガスを発生させる。いくら相手でも毒ガスの中で平気で戦えることはないだろう。この毒ガスは自分が刀を離してしまうと自分まで毒ガスの餌食になってしまう弱点があるが、刀さえ離さなければ良いといつも以上に強く二つの刀を握りしめる。
自分の言葉に応じた彼女は、紫煙を纏い始める───
何らかの方法で、件の毒を気化させているのだろう。
自分を間合いに入らせないつもりなのか、それとも時間切れを狙っているのか、ガスを纏ったまま動いて来ない。
が、裏を返せば此方の技を警戒している証拠だろう。
───甘ぇよ───
例え毒ガスを纏おうが、自分には前に出る事以外に勝機は無い。
ならば答えは決まっている───
最早、限界に近い己の躰を奮い立たせれば、相手に向かって一直線に駆け出し───
「っらぁぁぁぁぁッッッ!!!」
前方に大きく跳躍すれば、怒号と共に拳を降り下ろす───
その手に纏う蒼い光は、雷光が如く輝き───
目に見えるほどに練り込んだ魔力全てを衝撃エネルギーに変換させ、威力は極限迄に高められており───
.
…っ!?
(毒ガスを発生させておけば少しはひるむとおもった相手が毒ガスなどまるで気にせず攻撃を仕掛けてきたことに驚き。最早、相手の攻撃を防ぐことも出来ないだろうと思ったので最後、捨て身の攻撃に出る。刀は離してしまうと毒ガスの餌食になってしまうので持ったままではあるが攻撃を仕掛ける相手に対し両手を開いて防御を捨て全てを受ける覚悟で唇を噛みしめる。まるで雷光の様な輝いている相手の手を見て今から凄まじい攻撃を華奢な女の体で受けると考えると恐怖が襲って目を瞑ってしまう。
相手に一撃が当たる瞬間、光り輝くオーラは辺り一面に霧散し───
その光景はまるで蛍が一斉に飛び立った様にも見えた。
纏っていた光りを失った右の拳は、彼女の胸を力無く叩くだけ。
タイム アウト
「時間切れ、か……」
あと一歩、届かなかった。及ばなかった。
それだけに余計に悔やまれる。
だが、不思議と気持ちは晴れていた。
全力で立ち向かい、相手もそれに応えてくれたからだろう。
グラリと躰が揺れ、地面に仰向けに倒れる───
その顔には薄く笑みが浮かんでいた───
…っ。…?
(凄い衝撃がが来ると思い唇を食いしばり目を瞑っていたが自分に来たのは力ない拳。何事かと目を開くと毒に力尽きた相手の姿があった、最後は心臓が止まりそうなもので暫く経ってからやっと勝ったんだという感情が出てくる。もともと負ける気など全く無かったが接戦だったのは確かで。不意に倒れた相手を見てみると何故か薄く笑みを浮かべていて戸惑い。あんなに傷だらけにされて毒に感染し、最後の技も不発で負けたのに笑みを浮かべている理由が分からず「どうして笑っているんですか…。」と思わず呟き。
「どうしてって……楽しかったから?」
彼女の問いにあっけらかんと答えると、深く息を吐く。毒のせいか、痺れで指一本動かせる気がしない。
それでも少年は笑う。暗くなり始めた空を仰ぎながら───
「やっぱり喧嘩は良いねぇ……」
「喧嘩」───下手すれば死んでもおかしくない命の取り合いも、その一言で片付けてしまう。
彼女からすれば異質に感じるかも知れないが、それこそ自分にとっては取るに足らない些末な事なのだ。
「ところで……この毒何とかしてくれるとありがたいんだけど?」
未だ地面に横たわったまま、視線だけを彼女に向け───
それだけ聞くと完全にマゾヒストさんです…。
(相手の言葉を聞いて苦笑いし上記を述べて。しゃがみこみ毒で動けないであろう相手を見て「今のは喧嘩ではないと思います。」ときっぱりと告げて。本当に変な人だと思いつつ相手を見ていると毒をどうにかしてと言われ「あ、すいません。私は毒をかける専門で毒を浄化するのは無理です。」と残念でしたと言わんばかりに少し微笑んで。
「マジでか……」
相手の言葉に片手で顔を覆う。
自業自得だ、毒ガスに自ら突っ込んでいってこの様なのだから。
とは言え、此のままでは本当に不味い。
魔力を練り上げ身体中に張り巡らし、一時的に体力を上げる───
先程のように多量の魔力は維持出来なくとも、少量であればまだ何とか扱える。
ゆっくりと立ち上がるとフラフラとした足取りで校舎内へと向かう。
───保健室なら何か有るだろ───
なんて、たかを括りながら───
相手に背を向けたまま片手を上げる───
「楽しかったよ───
───またな?」
トピック検索 |