ありったけの砂糖を貴方に　/　〆

そういうんじゃなくてですね… 、 ( 得意げに、余裕そうに笑みを浮かべる相手は本当に自分と付き合っている自覚がないんじゃないか、と不満な感情は表に出て、眉を寄せつつ不貞腐れた表情で。でもよく見ると、相手の雰囲気はなんだか以前より柔らかくなったのではないか、なんてまたこれも自分の都合のいい捉え方かもしれないが、嬉しいのに変わりはなく。 相手が風呂に入っている間、ベッドに背中を預け床に座りながら、友人からのメッセージに笑みを漏らしながら返事をしていて。 足音がしてふと顔をあげると、そこには風呂上がりの相手の姿が。 「 …ッ、 俺も風呂、入ってきます、 」ほんのり紅潮した頬と、相手にはやはり大きめだった服とが相まって、心臓がうるさくなって。 これ以上見ていたら何かし兼ねない、と逃げるように風呂へ。さっさとシャワーを浴びている間も相手の風呂上がりの姿が脳裏から離れず、顔が熱くなって。 湯船に浸かりながらも、今日は色んなことがあったなぁとぼーっと今日の事を振り返って。 逆上せてしまう直前に風呂から上がると、暑いからか下だけ服を来て浴室から出て。肩にかかるタオルでごしごしと髪を拭きながらリビングへ出ると、ソファに座る相手のうなじが見え、触れてみたい、なんて思ってしまえばその首元に手をのばしかけ。 )

（　 相変わらず相手の表情は何を考えているか直ぐに分かるほどコロコロ変わって、見ていて飽きない。今もこうして自分に不満がありますと言わんばかりに不貞腐れた表情。自分もいつか相手の様に表情豊かに、なんて考えるが、まだまだ先になりそうで。相手が風呂へと去ってからは、スマートフォンを弄り始め。ゲームをしたり、メッセージを返したり、男性同士の恋仲について調べてみたり。結構最近だと同性同士は珍しくないだとか、他にも調べてみると知らないことばかりで。何だかよく分からないことが多くて、これは相手に暫くは色々と頼る必要がありそうだと思い。やることも特に無くなり、ぼーっとネットニュースを見ていると、じわりと睡魔が襲ってきて。こくり、こくり、と首が前後に動き、寝落ち間際。すると背後に、と言うか首元に気配を感じ。ゆっくりと後ろを振り返ると、自分へと手を伸ばす相手が。しかも上だけ服を着ていない相手が。いくら男の裸でも、目の前の相手が恋人だと思うと何処と無く小っ恥ずかしく。自分の方に手を伸ばしたということは、何か知ら用があるのだろうと思い「 … 何だよ、どうした 」と問いかけ。首だけ向けていたのを、身体ごとぐるりと相手に向けて。　 ）

…、 あ、 いや、 …なんか、 キスしてみたいなー、と、 思いましてですね、 ( 手を伸ばしかけ、それに気付いた相手は眠気の含んだ目をしていて、また相手の新しい無防備な姿をみれたかと思うと胸の奥がきゅっとなって。 少し顔が熱く感じるのはきっと風呂上がりのせいだ、なんて言い訳を思い浮かべながらも、相手の首筋に指を這わせ腰を屈め、こちらを振り向いた相手にそっと口付けをして。唇が合わさり、しばらくして首に水が滴るのを感じると我に返り唇を離す。 実際触れてみたいと思ったのは首筋だが、口付けをしたいと思った衝動に嘘はなく、視線を泳がせながらたどたどしく上記を。 そして少し我儘でも言ってみようかな、なんて思えば、 「 … もっとしていいですか ？、 」 と腰を屈めたまま、鼻が触れるほどの距離で強請るように問いかけてみて。 )

… 好きにしろ。 （　 不思議そうに相手を見ていると、伸びていた手は再び動き始め。首筋に感じる熱を持った相手の指が、お互いにまだどこか遠慮した初恋のような甘酸っぱさが擽ったく。相手の熱が伝わってきて、自分までもが触れられた箇所を中心に熱を持ち。優しくも、やはりまだ遠慮したような軽く口付けだけで、どうかしてしまったのかという程に自分の心臓はドクンドクンと大きく主張し。口付けをすると、相手と恋人同士だということが実感し、途端に恥ずかしくなる。離れるとその恥ずかしさだとか緊張だとかがピークを迎え。まだしたいと自分に律儀に聞いてくるが、自分は ' はい、いいですよ ' と簡単に言葉に出来るほど男前な性格ではない。こういう困った時に毎回使ってしまう、便利な口癖である上記をぽつりと。　 ）

ん…、 … 檜山 、 さん、 （ 相手の口から良く聞く、“好きにしろ” は肯定の意であって間違いないのだろうかと今までは不安に思っていたが、実際に言われてその先を続け、否定をされたこともないので、それを勝手に肯定ととっていて。 好きにしろと言われればそっと唇同士を合わせ、啄むように何度も相手を求めるように口付けを繰り返し。 タオルを握っていた手を離し、相手の後頭部に手を回すと、相手の髪から自分と同じ匂いがするのに気付くと余計に心臓が高鳴って。 途中息継ぎをする際愛おしげに相手を見つめ。 ）

（　 先程の口付けと違い、自分を求める相手本位に近い口付け。それに加えて時折優しく愛おしく見つめてくるのは反則だ、狡すぎる。言葉にも表情にも出せない分、鼓動が相手のことが好きだと示す。今までは何とも思わなかったただの後輩に、男に、確実に好きという淡い感情を抱くようになっている。自分は名前を呼ぶ余裕なんて一切なくて、ただ相手の口付けに付いていくのがやっとで。名前を呼ぶ程余裕のある相手に対して悔しく感じ、口付けが少し落ち着くと 「 … りょーた、 」と不意に名前を呼んでやり。やってやったと言うように得意げに目を細め。　 ）

…ッ 、！、 ( していたいと言えどこれ以上はしつこいだろうと我慢して唇を離し、屈めた体を起こそうとすると、相手の口から自分の名前を呼ばれて。 初めて相手の声で呼ばれた名前は今までの誰より頭に響き、目を丸くし思考も動きも一瞬停止してしまい。 ソファの背もたれを越え、相手にずいっと迫ると、風呂上がりの熱なのかそれとも相手に名前を呼ばれたことで赤面した熱なのか自分ではわからないほど熱を持った頬を相手の首にすり寄せ。 「 … もっと、もっと呼んでください。 」 顔も体も熱く、どくんどくんと脳内に響く心臓の音はこんなに近付いたら相手に聞こえやしまいか、という普段なら気にしてしまう不安も、今は名前を呼ばれたことに気を取られていて。 )

… ほんとお前、犬っぽい。（　 名前を呼ぶという行為が、自分の予想以上に相手からしたら嬉しいことらしく。機械のように一瞬にして動きが止まった相手を見ると、つい笑いそうになるのを我慢。少しだけ余裕が出てきたと思えば、先程まで指が触れていた首には相手の温かい頬がすり寄せられ。自分の余裕は何処へ、すっかり口付けされた時に戻り。相手も照れているようだし、自分もつられて照れてしまって、二人して照れの共倒れ。今の相手は、おやつを強請ってくる犬の様に感じて、上記をぽつり。何となく今は気分がよく、今度はしっかり 「 涼太、」と名前を呼び。直ぐにじわりじわりと恥ずかしくなってきて、頬を少し染めて目線を逸らし。　 ）

… 犬じゃないっての 。 ( どうにかして照れてしまっている自分を隠したくて相手の肩に埋めた顔をあげ、犬みたいと言われると頬の紅潮は残したままでも不機嫌なのか眉を寄せて。 照れているより、相手に恋人と思わせるにはどうしたらいいだろうかと考え始め。 名前を呼ばれ、それにより高鳴る心臓の音で自分はどれだけ相手に心酔しているのかと改めて自己確認し。 恥ずかしそうに視線をそらす相手の腰を引き寄せ、頬、額、首筋など至る所に口付けを落とし、 「 … 薫さん。 こっち向いてください、 …キスしたい。 」 と強請るように呟いて。 これも犬っぽいとか言われるのか、と思うも、相手が名前を呼んでくれて距離を縮めようとしてくれていることに気付き、愛おしくて堪らないという感情が抑えきれずにいて。 )

… 俺、犬好きだけど。（　 不機嫌そうな相手を見ると目を細め、少し意地悪いことを。もちろん自分が好きと言ったのは動物の犬のこと。顔を上げた相手の髪を、犬を撫でるようにわしゃわしゃと撫でてみて。さて相手はどの様な反応をするだろうか、と内心少しだけ楽しんでいたり。「 …っ、… んなストレートに言うな 、」名前を呼ばれたり、キスがしたいと言われたり、ストレートな言葉を熱が篭った瞳で見つめられながら言われるのは、変なところでシャイな自分は恥ずかしくて仕方ない。だからと言って、遠回しに言われても鈍感な自分は気が付かないだろう。恥ずかしくて恥ずかしくて堪らないが、しっかりと目線を相手に戻してから承諾の意味で小さく頷き。　 ）

う …、 ッ…ずるいっすよ。 ( 犬が好き、と言われればそんなの初耳だし、さっき犬じゃないと言ってしまったからかもう返す言葉がなく、言葉に詰まって。 さらに頭までまるでペットを撫でるかのように撫でられてしまえば、一層不機嫌そうに視線を逸らすも、なんだか撫でられること自体は悪くないと思ってしまその手は振りほどかずに。 「 誤解を生むよりは、はっきり言った方がいいかなって。 … ん 。 」 今までも何度かあったが、濁して言うよりちゃんと言葉に出した方が相手には伝わるんじゃないかと思って。 はっきり言ってみると、相手はしっかり自分を見据え頷いてくれ、それを見れば嬉しそうに、満足気に口付けをして。 先程よりゆっくりと唇を重ね合わせ。 「 今日は、一緒にベッドで寝てくれますか ？、 」 口付けを堪能した後、額同士くっつければ余韻に浸りながら、前に来た時はソファでいいと言っていたが、今は恋人同士な訳だし言えば添い寝くらいしてくれるんじゃないかと。 )

… はっきり言われなくても分かるっての。（　 相手は不機嫌そうなのに、頭を撫でることに対しては満更でもなさげに見え。勝負ではないが、今回は最後に狡いと言わせた自分の勝ちだろう。最後に前髪を掻き上げるように撫でると手を離し。無自覚の鈍感なのか、単に強がりなのか。真っ直ぐではっきりとした言葉ではないと分からないくせに、ぽつりと上記を。ゆっくり唇を重ね合うと、その分だけ自分の緊張が相手に伝わってしまいそうに感じ。唇とが離れると、やはり恥ずかしくて。頑張って一度相手に目線をやるが、再び直ぐに視線を逸らし。「 なんでこんな暑い夏の日に、男二人が一緒に寝なきゃいけねぇんだよ 」確かに外は暑いが、部屋には冷房が動いているので寒過ぎず暑過ぎずの丁度いい温度。が、きっと男二人で同じベッドで寝たら暑いだろう。相手を一人ソファに残して立ち上がると、無言で冷房の温度を一度下げ。言葉では否定的で乗り気ではないように言っていたくせに、ベッドに寝転ぶ時はしっかりと相手が入るスペースを開けて寝転び。それも単に素直に一緒に寝てもいいと恥ずかしくて言えないだけで。自分の言いたい事を察しろと言わんばかりに、ちらりと相手を見て。　 ）

それでもはっきり言いますよ、俺は。 檜山さんには、俺の真っ直ぐな気持ちを知ってほしいんで。 ( 離れていった相手の手を無自覚に目で追っていると、これじゃまるで犬じゃないかとハッとするが、もう今は犬でもなんでもいいや、とため息とともに肩を落として。 はっきり言わずともわかってくれるらしいが、あまり回りくどく言っても相手に伝わらなきゃ意味がないので、手っ取り早い方法は直球で言うこと、と言う持論を立てれば相手の顔を覗き込みながら言って。 「 そうですよね ー …檜山さん ？、 …！、 」 強請るのもここまでか、なんて惜しみながら眉を寄せ。相手が自分の元からいなくなり、なんだか温もりが消えて手持ち無沙汰になっていると、相手は冷房の温度を下げ、ベッドの方へ。 首を傾げ相手を目で追っていると、ベッドには一人分スペースが空いていて。 視線が合うと、相手の意図に気付き嬉しそうに表情を緩める。 相手のあけてくれたスペースに横になると、ぴたっと相手にくっつき、その表情は至って緩みきったままで。 )

… っ、 … 俺からしたらお前の方が狡い。（　 相手曰く自分は狡いそうだが、自分からしたら相手の方が狡く感じ。恥ずかしがらずにサラッとカッコイイことを言ったり、顔を覗き込んでくるのだって。言動全てに自分は何も返せなくて言葉が詰まり。恨めしそうに相手を見て。意図を汲み取ってくれたのか、相手の表情は ' 嬉しいです ' と顔に書いてあるほど緩んで嬉しそうに見え。横になって向かい合う状態になると、改めて自分よりも相手の方が背が高いということが分かり。顔と顔とが向かい合うと恥ずかしくて眠るなんて絶対に無理なので、相手の胸元辺りまで下がってみて。これだと目が合わないので恥ずかしさは少し減った気がし。これは仕方ないことだが、自分の方が下にいるので相手を見ると自然と上目遣いになってしまい。そっと目線を相手の方に合わせ 「 …… 、おやすみ 」と一言だけ。それだけ告げると、目線を胸元に戻し。　 ）

俺ですか？、 まぁ、 意識してほしいなーと思って行動することは多々ありますけど …、 狡いって思ってくれてるってことは、意識してくれてるんすね。 ( 相手は自分をよくからかうし、少し意地悪だと言う意味で狡いと言う言葉を使ったが、相手から自分への狡いは少し違う意味合いな気がして。 思い当たる節は自分の言動で、それを視線を逸らしつつ思い出すと、また視線を戻し恨めしそうな目をしている相手を見るとふっと目を細めて。 向かい合って寝ているが、抱き寄せたら気分を悪くしないか、なんて考えていると、胸元にいる相手がこちらを見上げ目が合うと、その姿がなんだか可愛らしくて堪らなくなり、結局腰に腕を回し抱きしめて。 「 おやすみなさい。 … 薫、さん。 」 視線が外れてしまい惜しい気持ちもあるが、愛おしくて堪らず相手の髪に顔を埋めてはすり寄って。 こちらも返答すると、最後に愛おしげに相手の名前を呼んで、重くなる瞼が開いている間は、やっと手に入れた想い人を視界に入れながら幸せを噛み締めて。 )

っ、うっさい ！ そういうところ、そういうところが狡い、意地悪って言ってんだよ … ！（　 相手の言う通り、どうやら相手の言動一つ一つに意識してしまっているらしく。が、それを素直に認めるのは嫌なので食い気味に否定し。これすらも相手は可愛いだとか無責任な感情を抱くのだろうか。どんな反応をすれば正解なのかが自分でも分からなくなってきて。抱き寄せられ、更に名前呼びまでされると耳を赤く染め。きっと顔も染まっているだろうから、相手の胸元まで下がって、顔を見られなくてよかったと改めて思い。こんなに密着したら、自分の煩い鼓動が相手にも聞こえてしまいそうで。眠たいのに寝れるはずもなく、目を瞑って只管にじっとして過ごし。どんな緊張や淡い鼓動も睡魔には勝てず、気が付けば瞼は閉じて、規則的な小さな寝息をたて。　 ）

っはは、すみません。 でも俺が檜山さんのこと好きって伝わってるなら良かった。 ( 勢いよく否定されてしまうも、本気で嫌がる、という感じではないので安心はしていて。 その安心も含め、可愛いと口にしたら怒ってしまうかも、なんて思いながらへらりと笑みを浮かべる。 胸元に相手の温もりを感じながら、うつらうつらと眠気が襲ってきて。微動だにしない相手は緊張しているのかなと寝ぼけ半分思っていると、相手の寝息が聞こえて来て、それに安心を覚えたのかこちらもすぐに眠りに入り。 ––––…ふと目がさめると、普段の目覚ましがなる前で、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいて。 目を擦り、胸元に感じる温もりを見下ろすと、つい昨日念願叶った恋人が寝息をたてて寝ていて、幸せを感じ堪らなく口が緩みそうなのを抑える。 スマホの時間を見るとまだ時間に余裕があるため、しばらく寝顔を眺めていようかと、そっと相手の頬を撫でながら、愛おしげに見つめ。 )

＿＿ 、 んー … はよ。（　 寝る前は散々恥かしいだのの感情があったのに、いざ一度眠りに付けば、久しぶりの人肌の温かい安心感からすっかり熟睡してしまい。少し肌寒いくらいに冷房を設定したので、人肌が気持ちよくて、寝ている無意識のうちに相手にくっつき。元々寝相はよく、ぴったりと相手にくっついたまま動かずに朝を迎え。心地よく眠っていると、何だかじーっと見られている気がし。頬に肌の感覚がしたのでモゾモゾと動き、薄らと目を開けると朝一番に相手と目が合い。朝はかなり弱い方で、まだ恥ずかしいという感情も湧かないまま、少し舌っ足らずに朝の挨拶を。　 ）

…おはようございます。 もう少し時間あるんで、 まだゆっくり出来ますよ 。 ( 相手がまだ目を覚まさない間、ずっと肌に相手の温もりを感じていてなんだかひどく安心し。相手が目を覚まし、視線が合うと未だ相手は半ば夢の中なのか普段の相手とは違った表情が見え、愛おしさが増していって。まだ時間もあるし、こんな相手を見ていられるのも少ないかも、と思うと落ち着いた声色で言って。するりと相手の髪に指を通しゆっくりと撫で、目覚ましがなるまでの間しかないが、寝ぼけ半分ではあるがしっかり目に焼き付けておこうと相手を見つめて。 ）

… ガン見されたら、二度寝できねぇって。（　 目が覚めると相手に抱き枕のようにぴったりとくっついていたので、照れ屋な自分がそんなことをするはずがないし、もしかしてこれは夢なんじゃないかと寝ぼけ半分に考えていて。けど、向けられた愛おしそうな目線も感じた温かさも夢ではないようで。頭を撫でられたのなんて何年ぶり、はたまた子供の頃依頼だろうか。なんだかとっても安心し、上記を呟きながらも、うとうとし。朝で頭もぼうっとして離れるのも面倒くさく感じ、目覚め時に恥ずかしさで後悔するなんてことは考えないまま未だに相手にくっついたまま、再び重たい瞼を閉じ。　 ）