ありったけの砂糖を貴方に　/　〆

んー … わかりました、考えときます。 ( 行きたいところは相手が行きたいところ、なのだがやはり余計に気を使わせるだろうし自分も行きたいところを考えておこうと。 買い物ぐらい、と言われたし何か置物のような、インテリアのような生活雑貨でも買って思い出にでもしようかと思うが、生憎生活雑貨を今まで購入したことがなく分からず、まず自分が思い出に何か家に置くものを買おうなんて思うのが珍しくて思わず笑みを零しながら。 「 いいじゃないですか、減るもんじゃないですし。 … あんまりドキドキしません？、 割とこういうの慣れてたり … ぅひゃっ！？、 ちょ、びっくりした、いきなりやめてくださいよもー … 」 ふう、と息を吐きながら相手の手元見ていると案外テキパキと作業を続けていて、後ろから抱きしめられるのに慣れてでもいるのだろうか、反応が薄いのに首を傾げ。横顔をじっと見ていてもこちらを見る素振りは一切なく。 相手の手元から視線を外していたからか冷たい手が近付いてきたのが分からず素っ頓狂な声が出てしまう。 肩を撫で下ろし、準備しろと言われれば不満げながらも相手から名残惜しそうに離れ鞄とスマホを手に持ち。 )

冷たい水でお前の緩々な顔が引き締まって良かったじゃねぇか。 （　 行きたい場所があれば考えておけと言えば浮かない返事が返ってきて、次には既に笑みを零している相手はやはりまだ自分には詳しく理解出来ず。変な奴、という意味で溜息をひとつ。相手の驚いた表情と素っ頓狂な声が聞ければ、悪戯が成功した子供みたいに満足気で。相手が自分から離れて一人になると、緊張から解けたふぅ、と安堵の息が自然と零れ。ドキドキしないわけがないし、慣れているわけがない。相手の方を見たら直ぐに顔が赤くなりそうなのが安易に想像出来るので、真っ直ぐに食器だけを見て興味のないフリをしていて。今思い出しただけで簡単に頬は染まりそうで。あんな後から抱きしめて顔を密着させるなんて恥ずかしいことが余裕で出来る相手が狡く感じ。ぱちん、と自分の頬を叩いて引き締めるとタオルで手を拭いてからエプロンを脱ぎ。帰る支度をしている相手の元へ行くと車のキーを持ち 「 忘れ物すんなよ 」と口出しして相手が終わるのを待ち。 　 ）

驚かせないでくださいよ。 もう少し余韻に浸ってたかったのに、 ( 頬に触れた相手の手は水で湿って濡れていて、ひんやりとしていてそれに気が逸れ相手は自分の腕の中から居なくなってしまって。名残惜しげに行き場のなくなった手を見下ろすと少しふてくされたような表情をするが、相手は仕事で疲れてるしあまり長居するわけにもと思い渋々玄関へ足を向け。 「 忘れ物 …、 あ、してました。 … なんつって。 … 怒ります？、 」 靴を先に履きながら、対して荷物も広げて居ないしスマホも持ったしで忘れ物はして居ない。が、少し悪戯心が湧いたのか、靴を履き終わり体を起こすと、まだ履いていない相手に軽く触れるだけの口付けをして。 離れ、少し屈んだまま相手と視線を絡め、あまりこういうのは好まなかっただろうかとやっておいて心配そうな表情で。 )

… いいから、準備が出来たなら早く玄関行け。 （　 未だぶつぶつ文句を言う相手に対して、早くしろと手で払うようなジェスチャーを。やっと歩き出せば、相手に続いて玄関へと歩き出し。「 忘れ物って … っ、 ！ … 怒ります、 」相手が靴を履いてから自分の靴を履こうと思っていたので相手が終わるまで待ち。靴を履き終わってから忘れ物だなんて、先程から何回も忘れ物はないかと確認しているのに何をやっているんだと注意しようと思えば、唇に柔らかな感覚が。分かり易くビクッと肩を揺らして動揺してしまい。不意にだったので顔が紅くなるのを抑える余裕すらなく、薄らと頬を染めて相手の問いかけにオウム返しのような返事をして。正しくは怒っているのではなくて照れているだけなので嫌という感じの表情は全くしてなく、ただの言葉だけで。兎にも角にも自分も靴を履けば鍵をしてから足早に駐車場へ。車に乗り込むと、狡い、とボソッと一言呟き。 　 ）

… 可愛すぎっすよ、その反応は。 ( 相手はあまり感情が表情に出ないことが多いし、いつもふいっと顔を逸らしてしまうからこの口付けを嫌がっているかいないかちゃんと見ておかなければ、と思って覗き込んだが、相手は頬を赤く染めていて。まさかこれは本当に照れているのではないかと確信をし。その上開いた口から聞けた言葉は自分の言葉そのままの鸚鵡返しで、本当に照れている相手を見ると目を丸くして。あまりにも反応が可愛く上記を呟きそっと頬に触れようとするも、相手は足早に行ってしまい。 あとを追いかけるように駐車場まで行くと、それまで口を開かなかった相手が車の中で呟いているのが聞こえ。 「 何がずるい、んですか？、 」 あの照れた反応から見るに、問いかけから返ってくる言葉はわかってはいるものの、なんだか相手の口から聞きたくなり、車に乗り込むなりぐっと顔を近づけると意地悪そうな顔をして相手を見つめてみると。 )

… 物好きが。 （　 相手よりも年上の男の照れた顔なんか見てどこが可愛いのだろうか、当たり前だが自分には理解が出来ず。とにかく自分に自信が無いので、可愛いなど言われても素直に受け止めることはもっと出来ず。こんな自分を可愛いだとか言う相手は物好きだと。「 … っ、何にも言ってねぇよ。お前の気の所為 」何気なく発したその一言が相手には聞こえていたらしく。きっと何が狡いのか分かっているくせに、顔を近付けて見つめてくるのは意地が悪すぎる。むっとした顔で見つめ返すと、何もなかったことにして。気を取り直して前を向き、運転を始め。今相手の方を見れば確実に何か言われると思って、先程後ろから抱きしめられた時のように真っ直ぐに前だけを向き。少しでも照れそうになると顔を逸らしたりして逃げるのは自分の悪い癖で。 　 ）

そりゃ物好きに見えるかも知んないですけど、 物好きでもなんでも本気で好きなら俺には関係ないですよ。 ( まず同性を好きという時点で周囲からしたら、異性を好きだった相手からしたら相当な物好きであろうことは自分が同性を好きになり可愛いと思うということを気付いてからわかっていて。 自分が物好きだとは思わないが、物好きであった方が好きなものを独り占めできるのだから関係ない、と開き直りは早く。 「 あーもう、また目合わせてくんないんすねー。 」 見つめてみても相手はまっすぐ前を向いてまるで相手の視界に入っていないかのようで。 今までもこういうことあったな、と思うと諦めたのか大人しく座席にちゃんと座り。 相手が車を運転してくれているおかげで早く家に着き。 家の前で、ここでいいです、と車を止めてもらうと、 「 ごちそうさまでした、送ってももらっちゃって。 じゃあまた会社で。 」 と礼を言いながら相手の手を握ると顔を近付け、手の甲に口付けをしてから、名残惜しげにも車を出て。 )

（　 相手は自分が目を合わせないことに不満げに文句を言っているが、それも相変わらずスルー。自分の不器用でシャイな性格を相手は分かっていて揶揄っているのか、それとも知らずに単なる不満か。どちらにせよ先程から自分を振り向けさせようと必死な相手に対してムッとした表情になり。去り際に手の甲に口付けされると驚いてピクッと小さく肩を揺らし、恥ずかしいぐらい初心な反応をしてしまい「 … っ ！、… んじゃ、また明日、 」と一先ず冷静を装い。相手が車から出ると、なんだか自分も名残惜しさを感じたり。付き合い始めたばかりの日よりも、確実に恋人として相手のことが好きになっている自覚はある。それを言葉にしたり行動にしたりは出来ないのが。だが偶には自分にだって所謂デレを垣間見せることだってあり、ふっと少しだけ笑って手を振ってから車を走らせて帰っていき。 　 ）

（　 ／ 　 多忙が続いており、遅くなってしまい申し訳ありません … 。改めて宜しくお願い致します ！本体会話返信不要 　 )

… あー … 、 ますます好きになりそ、 ( 手の甲に口付けなんて今までやったこともなかったが、相手のことをここまで好きだとなんでもしたくなるんだなと自分自身に驚きつつも視線をあげ相手の様子を見れば、自分より驚いていて、何より初心な反応が可愛らしく思わず手を引いて抱きしめそうになるのをぐっと堪え笑ってその手を離し。 車が発進する前に垣間見えた相手の柔らかい笑顔に心臓が速くなり、反射で振り返した手を去って行く車を見ながらおろす。 もう整えておく必要のない髪をわしわしとかき、上記ぽつりと呟き自宅へ。 ––––…一週間が終わり、いよいよ待ちに待った土曜日。 心置きなく楽しむためにやる気全開で仕事を終わらせた金曜。 飲み会も断り、定時になれば相手に駆け寄り小声で話しかける。 「 檜山さん檜山さん、 檜山さんち行くの、今日がいいですか？、 それとも明日？、 」 声も上機嫌にはずみながら相手の椅子の横にしゃがむと。 )

何回も名前呼ぶな、聞こえてる。あと、結局来るならどっちでもいい。 （　 いつも通りの会社で、いつも通りの仕事をして、いつも通り帰っては夕食を食べて寝る。大きな仕事のミスがあったわけでもなく、変わりのない日々を過ごせば気が付けば、相手と約束をしている土日が愈々迫る金曜日。強いて何かあったかと言えば、相手が泊まる用に歯ブラシと来客用の布団を買ったぐらい。後の日用品は荷物持ちとして買い物に付き合ってもらう約束をしているので、その時に買い足すつもりで。なんだか相手が来るのを楽しみにしているみたいで、自分自身に対して少し悔しく。今日も大きな仕事のミスはなく、無事に定時には帰れそう。早く帰れる分には早く帰ってしまおうと、帰り支度をしているといつもに増して機嫌良さげな相手が自分の元へ。相変わらずで最早ご愛嬌ってやつのぶっきらぼうな返事をした後、明日でも今日でも来ることに変わりはないならどちらでもいいと。 　 ）

何回でも呼びたいんですよ。 ならこの後もう行って良いっすか？、 ( 相手に素っ気ない返事をされてももう慣れた、というかむしろ愛着が湧いてきていて。 相手の名前を呼ぶのにも愛着がわき、嬉しそうに何度でも呼びたいと告げ。 相手との時間を少しでも長く過ごしたいと思っての提案だったため、相手にどちらでもと言われるなら遠慮せず今日を選び。 疑問形にしつつも行く気は満々なのかその場で立ち上がり、軽くスーツをはたいて。 立ち上がった節に同僚に飲みに行かないかと声をかけられても、 これから大事な用があるんだ、と手をひらつかせ断り。 相手の帰り仕度をデスクに寄りかかりながら待つと。 )

ダメって言っても来るんだろ。 （　 早速今日から来る気満々な様子を見て溜息をつく。特に断る理由もないし、一人で夕飯を食べるよりも誰かと一緒に食べた方が嬉しいしと自分の中で理由を付けて承諾。それに、相手のことだからダメだと言っても駐車場まで着いてきて車に乗り込んできそうな気がして。淡々と帰りの支度を済ませると、デスクに寄りかかる相手の背中をバシッと叩き、行くぞと一言。同僚に檜山が後輩と帰るなんて珍しいというようなニュアンスのことを言われたが、仲のいい同僚なので敢えてスルーし。鞄を持つと相手よりも先を歩いて駐車場に向い、車に乗り込むとシートベルトを着用し。 　 ）

だんだん俺の思考読み取れるようになってますね、 その通りです。 ( 相手は自分が押し通してでも行こうとするのをわかっているようで、自分の考えてることも段々とわかって来てくれているのを感じると、何だか恋人らしさを感じくすぐったさもありくしゃっとした笑顔を浮かべ。 背中を叩かれれば反射で背反り、叩かれた部分を気にしながらも相手の後ろをついていき。 同じ部署のほかの先輩にも挨拶をしながら職場を出て、駐車場へ。 自然な流れで助手席に座ると同じようにシートベルトを。 そこでハッとして隣の相手をみると、 「 俺泊まるとか言っときながら何も持ってないっすよ！、 」 と行きたいと言いつつ何も準備していなかったことに気付き、しまったというよな表情をして。 )

嫌でも分かってくるんだよ。嫌でもな、嫌でも。 （　 気が付けば相手と付き合って数週間が経とうとしているので、相手の考えることは少しではあるが自然と分かるように。じわりじわりと相手色に染まってきているのを感じたり。素直に相手の思考が分かってきたと言えるような可愛らしい性格ではないので、嫌でもと何度も強調して。普段車に人を乗せる機会がないので、助手席はすっかり相手の定位置に。相手もシートベルトを着用したのをみると車を走らせ。荷物が出勤用の鞄しかなかったので薄々何も持っていないと思っていたが、案の定すぎる発言に溜息をつき「 俺の服のレンタル、一着5000円な 」と冗談を。こんな事だろうと想定範囲内だったので、貸せない歯ブラシ等は買っておいて良かったと思い。 　 ）

言いすぎっすよ。 んまぁ、嫌じゃなくなる時がいつか来れば良いですけど、ね。 ( 何度も主張するように言われればそれについては否定せず、相手も本当に嫌なら嫌がって承諾もしないだろうし、受け入れてくれていることに少し安心感を覚え、にっと笑みを浮かべ、今本音を言えてないだろうと踏みいつか本音が聞けることを楽しみとでも言うように。 何も持ってきていない自分におこるだろうかと思いきや冗談を告げる相手に、 「 怒らないんすか？、 なら来んなーとか、俺の服は貸さねーとか？、 」 と拍子抜けとでも言うようにぽかんとした表情で。 )

どうせ何にも持ってきてねぇんだろうなって思ってたから。 （　 怒りよりも呆れの方が強く、怒る気にもならなくて。驚いて情けない顔になっている相手に対し、少し冗談を言ったぐらいでと溜息が零れる。暫く走らせるとマンションに着いたので車を停め、自分の部屋へと向い。玄関を開けて部屋に入り、電気をつけ。暑くて汗もかいているし先に風呂だろうか、それとも腹が減っていて先に夕飯にした方がいいのだろうか。どちらにせよ相手に合わせるつもりなので「 先に風呂？夕飯？ 」とネクタイを緩めながら問い。取り敢えず疲れたので鞄を置くとソファに腰掛け。 　 ）

呆れられるんすね、俺…、 でも五千円は高すぎっすよ…。 ( 怒られもしないということは呆れなのだろう、ため息を見ればがっくりと肩を落とし。出だしがこんなで、この週末かけてのデートは大丈夫なのだろうかと先行きが思いやられ脱力を。 相手に続き車を降り、いつもありがとうございます、と一声かけては相手の背中を追い。 何度目かの相手の家に足を踏み入れ、相手の隣に腰をかけると、相手の方に体を向け。 良くある常套句に近い言葉に閃いたようで、 「 ね、檜山さん、あともう一個選択肢忘れてますよ。 風呂か、夕飯か、 それとも？、 」 と期待の視線を向け、ずいっと距離を縮め、相手自身を選ぶという選択肢が追加されるのを待って。 )

なら今度からは着替えをちゃんと持ってくることだな。 （　 そもそも呆れたのも相手が泊まりに来るのに着替えを忘れたから。文句を言われたくないなら次回から着替えを持ってこいと。もう次から着替えを忘れたら家に帰らせると釘を刺し。特に何も考えずに並べた言葉だったので、相手から言われてハッとしたように相手の考えているものと同じフレーズが頭に浮かび。勿論だからと言って素直に言うわけもなく。ふん、とそっぽを向いて「 これ以上無駄なこと言ったらお前だけ夕飯抜きにするから 」と。もう勝手に風呂よりも先に夕飯にすると決め、ソファから立ち上がりキッチンへ。スーツの上からエプロンを着て料理開始。と言っても昨晩の余りであるカレーの予定でいて。作るのはサラダぐらい。カレーを温め直しつつも、キャベツにトマトにキュウリにと野菜を取り出し。手際よく料理を進めていき。 　 ）

かえ…ッ！、 … 明日の買い出しで俺のパジャマ買いますよ、そうすれば帰らずに済みますよね。 ( 帰るという道まで出されてはそうはなりたくないと首をぶんぶん横に振り、買い出しついでに自分の相手宅用の寝巻きを買ってしまえば問題なかろうと。 「 えー、 俺檜山さんのこと選ぶつもりだったんすけどー。 …まぁいいや、エプロン姿も好きだし。 」 自分の思い浮かべた事と同じ事を思い浮かべただろう相手の表情はそっぽを向かれ見えず、そしてすぐに立ち上がられてしまえば不貞腐れ、ソファに胡座をかきぶつぶつと文句を言って。しかしそれも一瞬で、エプロン姿の相手の後ろ姿を見れば機嫌は戻り、鞄からスマホを取り出すと後ろ姿を写真に収めては満足そうに笑みを浮かべ。 )

絶対次も無計画に俺ん家来るんだろうから、明日買うパジャマ置いてけ。 （　 会社終わりに、今日檜山さんの家行きますね、なんて急に言ってくることが安易に想像でき。またパジャマを貸すだの貸さないだのなると思うので、明日買うパジャマは自分の家に置いていく方が相手もいいだろうと思い。相手の機嫌の変わりようにツッコミたくなるが、これ以上無駄なことに巻き込まれたくないので敢えてスルーを。慣れた手つきでサラダを完成させ、温まったカレーを盛り付け。中辛と甘口を混ぜた辛いものが苦手な檜山家のカレーと夏野菜をたっぷり使ったサラダを相手の分の自分の分をテーブルに並べる。先程カシャ、と写真を撮る音が聞こえたので、きっと自分の写真を撮っていたのだろう。自分はさっさと椅子に座り「 お前はその写真消してから夕飯な 」と。 　 ）