‥ 睡眠薬をお一つ ( 〆 )

( 彼の副人格と出掛けて数日後。院内もクリスマスが近い賑わいに忙しなくなって来ている今日は二度目のカウンセリングの日でもあり。未だ半信半疑ではあるものの、新しく出てきた問題に眉を顰めつつ再び書類と睨めっこ。相手が来るまでの間今回のカウンセリングをどうするか考え巡らせて )


（ ／ キリが良さそうな所でしたので、場面展開してみました！お話に出ていた透君とのカウンセリングを経て、クリスマスイベントが出来たらと思います。よろしくお願い致します！ ）

（ 気づいた時には日付が飛んでおりクローゼットには見知らぬ服が。これほど長々と乗っ取られたのは初めてで、その間奴に何をされたか考えれば不安で外にも出られなかったが問診となれば仕方なく。白いニットに袖を通し、恐る恐る診察室へ向かって「……先生、どっか怪我してない？」扉を開けながら相手の顔や手に目をやり、まずは傷がないか確かめ「あいつが出てきたみたいで。この服の事とか、何も覚えてないんだけど。…何かされなかった？」淡々とした口調でも隠せない動揺に瞳を揺らがせ ）


（ / ありがとうございます、ちょうど次のレスあたりでお願いしようと思っていたので助かります！
それでは楽しいクリスマスの前にもう少しだけ陰鬱なやりとりにお付き合いください…！こちらこそよろしくお願い致します。）

別に何もされてねェわよ。＿あぁ、強いて言えばオムライス盗られたくらいかしら。
( ある程度距離が離れていても不安と動揺に揺れる瞳の色はわかるもの。片手をひらりと閃かせ別にこれと言って困った事は無かったと伝えては、一先ず椅子に座るよう視線で促しつつ戯言を楽しむかのように口角持ち上げ、これっぽっちも気にして等いないがあの日のオムライスの話を持ち出して )


（ ／ タイミング的にあったみたいで良かったです！陰鬱は好物ですのでドンと来いです！笑 それでは、失礼致します！ ）

オムライス？
（ 固い表情のまま示された椅子に腰を下ろすが予想外の単語に目を丸め。そののんびりした響きと彼がどう繋がるのか検討がつかず、混乱は増すばかりだがそれよりも相手の無事のほうが己にとっては驚きで「何言ってんのか全然わかんないんだけど……とりあえず、本当にどうにかできたんだ」以前ヤワではないと言われた時は半信半疑だったけれど。本当に彼を制御できたらしい相手へ安堵と敬意の混じる呟きを零し ）

一足早いクリスマスプレゼントあげたのよ。それがオムライス。
( 頭上にハテナがポコポコと産まれているだろう事は表情を見ればよくわかる。だからこそあまり悩まれても困ると端々の出来事を簡潔に答えつつ「出来るって言ったでしょ。＿＿それよりも今日のカウンセリングだけど、先ず最初に前任の医者にボールペン刺した時の事、アンタは記憶ある？」少しばかり探るように手元の書類とあの日の忠告、そして今目の前に座る相手の表情を見て )

（ 重ねられるワードになお思考が絡まるも、相手や誰かに危害を加えていないのならひとまずは保留することにして。続く質問に表情を翳らせてはあの忌々しい出来事を思い出そうと口を噤み「──刺した事は覚えてない。あの先生と病気の事とか治療とか色々話してて、……俺が覚えてるのはそこまで」次に気がついた時には既に拘束されていた、とも付け加え、記憶にあることを簡潔に述べて ）

＿＿前任の医者との相性は？アンタ、あの医者がずっと担当医だったらいいって思った？
( 確信的な部分の記憶喪失は真実。もし本当に人格が切り替わった訳では無いとしたら、何らかの切っ掛けがあってあの行動に出た事になる。その中で考えられる一つは医者が気に入らなかった、もしくは何か気に触る言動があったから。右手に持ったペンで真下の用紙に何やら書き込みながら次なる問い掛けをして )

──いや、
（ 問いかけに医者との会話を反芻してはややあってから首を振り。嫌なものを思い出したと露骨に眉を顰めて「…だってあの先生、俺とあいつを一つにするって言ったんだよ。元は一人の人間なんだからそうするべきだって。それ、俺が元々あんな──俺にあんな屑みたいな人間になれって事だろ。医者の癖に言ってる事がおかしかった。だから…おかしいよな、先生」汚らわしい。馬鹿馬鹿しい。そんな感情さえ思わせる冷淡な声で機械のよう淀みなく理由を並べ、言葉を結ぶ前に相手に確認し。同意を求める口ぶりとは裏腹に、眼差しは品定めをするように冷静で ）

例えばもし＿＿仮に、アンタともう一人の人格が一つになったとして。全て綺麗に消えるとしたら？アンタが心底嫌ってるもう一つの人格は綺麗サッパリ消えるの。残るはアンタだけ。それはつもりアンタの言う"治る"って事になるわよね？
( 汚い言葉で罵倒し、直ぐにカッとなり暴力に出るもう一人の方が幾分も人間らしく扱い易い。それは拭い切れない本心で。抑揚のないまるで機械のような相手は言ってしまえば気味が悪い。書類から視線を持ち上げるも、同意する事も意見する事もしなければ、続けるように質問を重ねて )

それじゃ消えたって言えない。混ざって見えなくなるだけで──2つのものを混ぜたって片方が消えたりしないだろ。あんなのとくっつけられたら本当に消えたのかって怯えながら生きてくか……今度は俺のほうがおかしくなるかもしれない。
（ 肯定でも否定でもない、あくまで仮定の話としての問いには緩く首を横に振り。理解を得るにはまだ説明が足りないようで、あれを受け入れる嫌悪感を不快と不安の入り混じる面持ちで語り「殺さないと、切り離さないと駄目なんだ」と低く言い放って。でなければいつか自分の意思で人を刺す事になってしまうかもしれない。そこまで考えるとふいにある違和感を覚え、静かな瞳を睨むように細めて「…先生。何で前の医者のこと"俺に"聞くの」巻き込まれただけの己が原因を探られている。そんな錯覚から問いかけて ）

じゃあどうやって殺す？アンタだけの力では別人格だけを殺す事は出来ない。＿＿それは"生きる為"の傷じゃなくて"心中する為"の傷？
( 所謂一体化計画はやはり駄目なようだ。自分が別人格とは違い、凶暴ではないと思ってる以上もう片方への嫌悪や不安は消えないだろう。真っ直ぐに向けていた視線をつい、とやや下方…包帯巻かれた手首に向けては質問を繰り返し。そんな折、不信感を顕にした相手には僅かに目を細めつつ「今目の前に居るのがアンタだからよ。主人格の記憶の有無がどれくらいあるのかも知っておかなきゃならないの」本心半分、嘘半分の答えを返し感情の揺れを伺い見て )

…俺が殺すにはこうするしかないと思ったから。
（ 願望を並べても具体的な方法を問われれば返す言葉も無く。つられて手首の包帯を見下ろし、逡巡の後に後者であると二つの質問に一言で答え。相手といればより良い方法が分かる気がする、という小さな希望は疑惑の前では口に出さず「つまり、あいつと居る時はあいつにも何か聞いたってわけ。──何喋った？」信憑性のある理由だからこそ己の疑念も深まって。自分より多く相手と会話を交わしたかもしれない彼、その口がどんな悪評を吐き散らしたか想像すればピリ、と肌が殺気立ち。その気配を隠す事なく「何か言われたからこんな質問してるように見えるんだけど。違う？」と張り詰めた声で追及して ）

だったらそれは最終手段にして頂戴。アタシにアンタを治せなかった時の。わかった？
( "死ぬ為"に傷を付けられるならいつだって迷いなく、深く深く刃をくい込ませる事は可能だ。皮膚が裂かれ赤い血が流れる痛みも恐怖もその時は何も感じないだろう。そんな脆さと危うさがあるから下手な事を言えないのもまた事実。「人の完璧な化粧にケチ付けられたくらいよ。後は＿＿すぐに死なれたら面白くないとか言ってたかしら」一先ず気だるげな様子で前者を。続けて少しのニュアンスの変化を持ちつつ後者を紡げば「前任との事を知っておくのは当然なのよ」と明らかに殺気立つ様子の相手になんて事ない様子で返して )

（ 入院する前も後も、己の命を絶つことが最も有力な手段だったけれど。彼の暴走を止めるという自分にも出来なかった事をしてみせた相手だからこそ向けられた忠告に頷くことができ。「2人も殺そうとした癖によく──お前が死 ねば良いのに。お前が死 ね。…殺してやる。絶対殺す。お前が、」"面白くない"その言葉を繰り返しては憎々しげに唇を噛み。そんな愉快半分な感情で何の罪も無い己が殺人犯にされかけたというのか。俯き、自分を見下ろしながら内側にいる彼へ低く呪詛を呟くが、声が荒々しく乱れる寸前に相手の存在を思い出すとゆっくり顔を上げ「…あんな奴、どうせ自分が消されないための嘘しか言わないよ。知ってる事は俺が全部話すから…先生は俺とだけ話して」一転してばつが悪そうに目を逸らし、今しがた殺気を吐き出した分、己の知らぬ間に招いた相手への迷惑と混乱を詫びるように普段より柔らかな声音で告げて ）

( 二人とはつまりクラスメイトだった少女と前任の医者であろう。一つ一つ言霊で殺めてしまえそうな位に低く、冷たく、念の籠った呟きが落とされていくその様子を途中で言葉遮る事もせずにただただ黙したまま真っ直ぐ見やり。顔を上げた相手と視線が合えばほんの少しだけ口元に加わっていた力を抜こうか。まるで悪い事をした幼子のように視線を逸らし、詫び、縋るようにも見える姿は不安定以外の何物でもない。「＿＿じゃあアンタが言いたい事、聞いて欲しい事、教えて頂戴。何をされたら嬉しくて、何が悲しいのか」一言一言を区切るようにはっきりと言葉にしつつ、今日のカウンセリングは吐き出したい事を吐き出したいだけ言わせる事にして )

言いたい事？
（ 引き続き過去の出来事を聞かれると思っていた分、強調された一言一句への返事を考えるには時間がかかり。相手の事を信用できた以上、聞いて欲しい事など幾つも出てくるが問診の時間を考えれば後回しにして「──俺、こんなだから。誤解されて変な目で見られたり、危ない奴だって避けられたりするのは嫌だし……先生みたいに気にしないで一緒にいてくれるのは嬉しいけど」とりあえずは最後の二つへ簡潔な回答をし。それから言おうか言うまいか迷う素振りでくしゃりと髪を弄り、あと、と小さく口を開いて「……クリスマスとか。そういうの、普通は俺とやるもんじゃないの」幼稚に甘えている訳でもなければイベントにはしゃぐ歳でもない。ただ、奴が良い目を見るのは不公平だと思っただけで。誤解されぬようぶっきらぼうにぼやいてもやはり子供じみてしまい、「別に何でもいいけど」と強調しておき ）

アンタを避けるならわざわざ担当医になったりしねェわよ。アタシはアンタを止められるし甘やかす事も出来る。だから危なかろうが何だろうが関係ねェの。
( "おかしい危険人物"そんなレッテルを貼られ離れられていく事を恐れるのは底無し沼のように深くとめどなく大きな闇があるから。一先ずやらなければいけない事は揺るぎない信頼を築く事。相手に認めたくない真実を突き付けた時、話を聞いてもらえるだけの信頼、例えそれが無理でも他者ではなく己に怒りや悲しみをぶつける信頼。右手に持っていたペンをコトリと机に横たえ、揺らぐ事のない自信を顕にしては、消えてしまいそうなぼやきとして落とされた所謂小さな嫉妬の言葉に思わずク、と喉の奥で低く笑い。「勿論アンタともやるわよ。院内のクリスマスイベントの日、明日ね。少しは顔出さねェとならないけど、医者の外出は自由なの。何処か行きてェなら連れてくし、何か欲しいモンがあるならプレゼントしてやるわ」可愛らしい所もあるとひっそり胸にしまいつつ要望を聞き入れる旨を伝えて )

…それはそうだけど。あいつに会った後でそんな事言えんの、先生くらいだと思うよ。
（ 己の病状を見てもなお揺るがない不敵さは以前よりも深く響き。息苦しいのはじわりと胸に広がる喜びのせいか、息を吐くようにふと笑っては「本当、変な医者」と初対面でも口にした感想を今度は肯定的に零し。凶器となりうるペンが相手の手を離れても不思議と落ち着きを保ったまま「俺でも外出れるんだ」と提案のほうに反応して。症状が治るまで、最悪一生出られないと思っていた分それは印象に残り「──じゃあ、考えとく。病院のが忙しかったら別にいいけど」どう取り乱そうが相手が対処できるという望みと、それでも残る懸念が予防線として混じった答えを返し。素っ気ないままではあるがその様子はもはや何事も無かったかのように穏やかで ）

ちょっと変わってンのかしらねぇ？
( 相手にももう一人の人格にも、医者の間でさえも言われ続けてきた言葉を卑下や悲愴なんかではなくさも面白そうに。ペンを置いたのに続いて開いていたファイルもパタンと閉じては「騒がしいだけで忙しくはねェよ。子供達が喜んでるだけ」と然程興味無さそうに答えてから「＿＿アンタが何を考えようが、何をしようが、アタシが担当医を外れる理由にはならない。覚えときなさいね」今一度けして揺るがない不敵さを顕にしつつ念を押して )

こんな病院に子供…？
（ どこが"ちょっと"なのか、という言葉を呑み込む代わりに相手の口から出た存在を不思議そうに復唱し。改めて院内の様子を全く知らない事を思い知り、少しはイベントとやらも覗いてみるべきか考えながら「……もう十分わかったって」繰り返し念を押されるほど心がぐらりと傾く、そんな単純さを恥じるようにぶっきらぼうで隠しては問診が終わる気配に立ち上がり。扉に手を掛けては開く前に一度振り返って「──ありがと」と、真っ直ぐ相手を見据えたまま今度は素直に微笑んでみて ）