美月 2019-03-24 16:45:05 |
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美月)もちろん、全てがそっくりではない。麗奈は女子で我々から見たら、まだ子供。生まれた時代も、顔も名前だって全然違う。でも、一部に違和感を覚えたんだ。
美月)麗奈の琴の弾き方を見た。元から上手かった。生まれつきそういうものが得意なのはよくあることなのだが、それでも人のやり方は、様々で完璧に同じにはならない。筆跡をどんなに似せても、別人が書いたと分かってしまうのと同じだ。だが、麗奈の指の使い方を見て、思ったのだ。どこかで見た動き。輝さまそっくりだった。そして、何よりそっくりなのは、自分よりほかの者のために一生懸命になることだ。
美月)あの人は、戦いで怪我をしても、周りの人を優先していた。それは、私もだったんだ。私が刃こぼれしていたら、私を綺麗に手入れしてから、手当てを受けていた。病気のときもそう。誰かに軟化を頼むときは必ず、自分から言っていた。それでよく、家臣から怒られていたのをよく見た。
美月はくすくす笑った。
美月)麗奈は風邪をひいていても、私を探していたのだろう。和泉守から聞いた時、ふと思ったんだ。輝さまの、体の記憶が麗奈に入っているんじゃないのかなって。記憶には二つある。心の記憶と体の記憶がな。どちらも大切な記憶だ。自分がしたことがなくても体が覚えていることがある。そして、体の記憶は誰かの中に入りやすい。もしかしたら、輝さまの体の記憶が長き時を経て、麗奈の中に入ってしまったのかもしれぬな。
美月はそう言って、麗奈の頭を撫でた。
美月)よいよい、麗奈は麗奈だ。私の前の主の体の記憶が入っていようと変わらんさ。だから、これからもありのまま生きてほしい。しかし、そうだなぁ。もう少し自分の体は大切にしてほしいな。麗奈は人間なのだから。それと、一つお願いがある。
美月)道徳的な言葉を教えてくれ。知ってのとおり、私は道徳が欠けている。ちゃんと言い表したくても、知らないせいで、事を大きく表現してしまうことがある。だから、麗奈に教えてもらいたいのだ。婆の細やかな我儘を聞いてくれぬか?
美月はニコッと笑うと、ゆっくり体を起こし麗奈を優しく抱きしめ包んだ。
美月)ありがとう、麗奈。本当に優しいなぁ。其方に輝さまの記憶が入っていても、私は今後も同じように接するから安心しろ。また過保護になって傷つけるのも嫌だからな。あと、近々麗奈に良い物を用意する。ようやく、金が貯まったのだ。これで、麗奈に渡したいものが買えるのだ。楽しみにしていてくれよ。
美月)そうか、なら一ヶ月遅れの宴でもしよう。もう腰は治ったし主に言いに行こう。一緒に行くか?麗奈?
美月は、そう言った。その様子を外で聞いていた三日月、小狐丸、鶴丸、太鼓鐘。
三日月)体の記憶か。確かにあり得るな。
小狐丸)そうですね。家系が何であろうと、関係ありません。
鶴丸)まさか、再開するとは。
太鼓鐘)美月にとっては、この上ない喜びだよな。
麗奈:うん
自分の誕生日を2205年で過ごすなんて思ってもみなかった。
ただ、暴動でめちゃくちゃになってしまった日本が今後どうなっていくかなんて、麗奈にはどうでもよかった。どうせ自分は1年前に亡くなったことになっていて、それでも日本は動き続けると思っているから
美月)では、行こう。それと...
美月は、戸を開けてにっこり笑った。
美月)盗み聞きとは関心ならんな。
小狐丸)ばれていましたか。
美月)私の霊力を嘗めないでおくれよ。
三日月)まぁ、俺たちももう休むから。怒りを鎮めてくれ。
鶴丸)じゃあな。美月。お前も早く休めよ。貞坊、行くぞ。
太鼓鐘)ああ、美月、麗奈。おやすみー
三日月)麗奈なら、美月と一緒に主の部屋へ向かったぞ。
小狐丸)今は、二人っきりにさせておいた方がいいと思います。
鶴丸)凄いことが分かったからな。
太鼓鐘)今は邪魔しちゃいけないぜ。
美月)主、よいか?
美月は部屋の前で主を呼んだ。
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