天使と悪魔はワルツを踊る(〆)

天使と悪魔はワルツを踊る(〆)

グラサンオールバックの悪魔(♀)  2023-07-02 08:48:30 
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待ってるぜ、クソ天使サマ。

(お相手様決定済)

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  • No.61 by グラサンオールバックの悪魔(♀)  2023-07-13 22:28:20 

ンだよ、不満か?
(スーツの裾を引かれ、小さく零された天使の言葉に「誘ったのはオレなンだからよ、オレが払うのは当たり前だろうが。…それに、煙草しか買わねェから金なんて腐る程余らせてンだよ」と彼女は当然のように言い放ち、勤務先の拷問課へと続く門扉を押し開けた。その中では「拷問課」とプレートの掛かった部署で悪魔たちが何やら作業をしており、中にはノコギリやペンチといった拷問道具を磨いている悪魔もいる。その悪魔たちの中から一人、澄んだ空のような青い瞳をした、若い男の悪魔が彼女と天使の前に飛び出してきた。「…おい、ジャスティス…いくら何でも急すぎるって。中年親父一人しか用意できてないぞ」彼は彼女の耳元に口を寄せ、小声でそう囁くと、血のこびりついたペンチ片手に自身の仕事─勿論別の対象への拷問だが─へ戻っていく。彼女は天使に向かって「ま、取り敢えず用意はしたってよ。案内してやる」と声を掛け、ポケットから取り出したマスターキーで「3号室」とプレートの掛かった部屋の扉を解錠した。中では椅子に縛り付けられた中年男が虚しく暴れており、その周辺には指潰しを初めとした様々な拷問器具が乱雑に積まれている。彼女は腕を組んで扉の側に凭れ掛かりつつ、「どんなモンか、お手並み拝見といこうか」と不敵に笑って)

  • No.62 by 見た目が良くて性格が終わっている天使(♀)  2023-07-13 23:24:42 



こんにちはぁ。

( あたかも友人の家に遊びに来たかのような緊張感のない挨拶を口にしつつ中に入れば、悪魔たちが何やら様々な器具を持ってそれぞれ仕事に取り掛かっているようで。ワァ、と遊園地に来た子供のように当たりをキョロキョロと忙しなく目で追っていたものの、ふと此方に慌てたように駆けてきた青い瞳の悪魔が何やら彼女へ耳打ちをしまた自身の仕事へ戻っていき。元天使の子だ、仕事熱心で感心だなぁとまるで他人事のようにその背中をぼうっと眺めては彼女の案内に従うように後ろへついて行き。─── 〝3号室〟。そう書かれた扉の向こうには、椅子に縛りつけられて必死にもがいている中年男性が今にも狂ってしまうのではないかというくらいに暴れている。まるで壊れたおもちゃのようだ。腕を組んで壁に寄りかかるだけでも絵になる彼女はどうやら手出しをしないようで、本当に拷問を体験させてくれるらしい。ふむ、とアリシアは少し考え込んだような仕草の後、陽だまりのように優しい笑顔をぱっと浮かべれば「 ごきげんよう。大変怖い思いをしたことでしょう。もう大丈夫ですからね。 」と母親が赤子を寝かしつけるような優しい声色で話しかけて。男はその声にぴたり、と暴れるのをやめては〝助かった〟だとか〝天使様が来てくれた〟だとか、まだ何も言っていないのに自分の都合のいい解釈をしては歓喜の涙を流す。アリシアはそれに何も答えずに静かに笑えば、男の手の拘束をまずは解いて。拘束の解かれた男の手はアリシアに暴力を振るうでもなく、ただただ十字を切ったり此方に祈りを捧げたり、助かったと言わんばりに涙を流している。─── なにかこの人から聞き出すの?殺しちゃだめ?アリシアはそんな彼をマリア様のように優しく抱きしめながら、首だけで彼女の方を振り返れば目線だけでそんなことを問いかけて。 )


  • No.63 by グラサンオールバックの悪魔(♀)  2023-07-14 07:24:02 


(中年男と天使の茶番から目線は外さないものの、だらしなく壁に凭れ掛かり、煙草を吸っていた彼女は、ふと天使からの目線に気付いたらしい。「…殺していいヤツだ」面倒そうに煙草を指先で口から抜き、唇の動きだけで天使にそう伝えた。そんなことをしている内にも、両隣の部屋からは、引っ切り無しに拷問されている人間や天使の絶叫や、聞くに堪えない断末魔が響き渡っている。─それにしても。クソ天使サマってのは罪人にとってよく効くらしい。例えば今あそこでアリシアに泣きながら祈りを捧げてる、あのクソ野郎。確かオレの同僚が拷問しに来たときは「この悪魔め」だとか、「殺してやる」だの威勢がいいことを吐いていた。それがどうだ?アリシアが来た途端、助けが来ただの言いながら、悪魔もびっくりするぐらい従順になって、泣いて祈りを捧げやがった。…テキトーなクソ天使サマを見繕って生かしておいて、面倒くせェ罪人の対処に使ってやるのも良いかもしれない。このクソ天使サマの「拷問体験」が終わったら同僚に相談してみるか─ぼんやりとそう思考しながら、中年男と天使の向こう側に見える、この拷問部屋の、血がこびりついた隅っこを眺めていて)

  • No.64 by 見た目が良くて性格が終わっている天使(♀)  2023-07-14 19:21:38 


─── さぁ。では贖罪の時間にしましょう。
あなたが犯した罪の数だけ、爪を剥ぎます。さすれば主もきっとお許しになることでしょう。

( まるで我が子を慈しむような優しい笑顔で、醜く肥えた中年男性の脂ぎった頬を白魚の両手でそっと包めばアリシアはサラリとそんなことを告げる。明日は雨ですよ、なんて天気予報をするかの様ななんでもない口調で。男はヒュッ、と1度喉を鳴らしたが相手は主に仕える天使、贖罪が終われば天国に行けるのだろうと勝手に思い込んでは縋るような瞳でアリシアを見上げながらぶるぶると震えるクリームパンのような手をアリシアに差し出して。─── 誰もこれが終われば天国に行けるなんて言ってないのに。アリシアは込み上げる厭らしい笑顔をニコ!と爽やかな笑顔で隠せばスッカリ血で汚れているペンチを手に取れば「 さ、まずは1枚目。 」と早速男の左手の親指の爪をペンチで挟めばグッと力を込めてそれを引き抜こうとし。だが力が弱いせいかなかなか爪が剥がれることはなく、素早く引き剥がせば痛みは一瞬なのに男の苦痛は長引き部屋には聞くに絶えない絶叫が響く。男の目は飛び出てしまうのではないかと言うほど見開かれ、涎やら涙やらで顔はぐちゃぐちゃになる。アリシアはそれを見て満足そうに微笑めば「 頑張りましょうね 」と〝天使様〟の声と笑顔で微笑み。これが終わったら天国へ行けるから。そう勘違いさせるには十分な演技力だ。メリ、メキャ、という嫌な音を立てて漸く爪が1枚剥がれれば思ったよりも疲れたのかアリシアはもう既にぐったりと上半身を倒した男はそこそこにジャスティスの元へ歩み寄り「 もっと疲れない道具ない? 」と先程まで爪を剥いでいたと思えないようやにこにこ楽しそうな笑顔で問いかけて。 )


  • No.65 by グラサンオールバックの悪魔(♀)  2023-07-14 19:36:21 

…ハハ、えげつないねェ。
(中年男の醜い、聞き慣れた罪人の悲鳴を何でも無いように聞き流し、煙草の煙を唇から吐き出した彼女は、アリシアの言葉に答えるかのように、面倒そうに動き出すと近くにあった拷問道具の山をガサガサと乱雑に探る。目当ての物は底にあったらしく、「あァ、あったあった」と呟いては手を突っ込んで引っ張り出した。それは血に汚れたペンチの持ち手部分の両側に小さな万力を接続したような奇妙な形状の器具で、どうやら通常の万力とは違って逆側にも力を込めることができるらしい。「大分昔によ、悪魔のクセに随分と非力なヤロウが居たンでな。これァそいつの為に拵えてやったヤツだ。ペンチのところで爪を挟んでよ、万力のレバーを逆回転させりゃ勝手にベリベリ剥がれていくって寸法さ」と屈託もなく笑いながら彼女はその器具をアリシアに手渡し、気まぐれを起こしたのか中年男の顔を掴み、凶悪さの満ち溢れた笑顔で、嫌味たっぷりの声色で耳元に囁いた。「お前も『カワイソウ』になァ。あァ…ついでに言っとくとこのおキレイなクソ天使サマはオレら悪魔と違って拷問初体験だからよ、テメェ…楽には**ねェぞ?」苦痛に耐える男の顔が蒼白に歪んだのを見届け、彼女は再び壁の方へ戻っていき)

  • No.66 by 見た目が良くて性格が終わっている天使(♀)  2023-07-14 20:00:15 



ま。画期的。お借りするわね。

( 彼女に手渡された道具をまじまじと見れば感心したように上記をぽつりと零して。血塗れたその恐ろしい道具を手にしても感じるのは仲間のために道具を開発するなんて優しいなあ、と妙な感想だけで、アリシアはふと男に何かを囁いているジャスティスの方を見て何かしら?とこてりと首を傾げるも男の顔からサッと血の気が引いたのを見れば何かまた恐ろしいことを囁いたのだろう。アリシアは自分にあれは出来ないなと素直に彼女へ尊敬の念を送っては「 どんどん行きましょうね 」と甘ったるい死刑宣告にも似た言葉を吐けば触れただけでびく、と体を跳ねさせた男の指を柔らかい手で丁寧にペンチに男の爪を挟み。それからキュル、と錆びた硬い音を鳴らしながらレバーを逆回転させれば先程の苦労はなんだったのかと思うほど男の爪が簡単に剥がれる。悲痛な悲鳴と泣き声をあげる男とは対照的にアリシアの瞳は〝すごい!〟ときらきら輝き、そこからはあっという間に10本全ての爪を剥がし終わる。男が自分の爪が全て剥がされた手をわなわなとアリシアに掲げながら「 て、天使さま、これで、おれも、て、天国に、 」と息も絶え絶えに問いかければ、アリシアはその言葉に相も変わらずにっこりと微笑んで「 頑張りましたね。お疲れ様でした。 」と男の頬を先程とは違う生ぬるい血で汚れた手で撫でる。男は喉を引くつかせながら安心したように息を吐くも、それを見たアリシアはまた柔らかな神様みたいな声で 「 でも、これが終われば天国に行けるだなんてだぁれも言ってませんよ。主はあなたをお許しになるでしょうが、地獄の悪魔は逃がしてくれませんもの。 」と彼を切り捨てるようにいつもと甘ったるい蜂蜜のような声で告げ。男はその言葉にぴく、とネジが止まったおもちゃのように動きを停めれば、音もなく静かに一筋の涙を零しながら「 ぁ、ああ、……あ、…… 」とスッカリ光の消えた瞳でアリシアを見上げ続け。正に天国から地獄に落とされた抜け殻のような絶望の瞳。ぞわぞわと身体中を駆け巡る快楽の波にアリシアは今までで1番の笑顔を浮かべながら「 うふふ、いいお顔! 」 と廃人と化した抜け殻の男と目線を合わせて嗤い。 )


  • No.67 by グラサンオールバックの悪魔(♀)  2023-07-14 20:40:18 

アー…コイツはもう使い物にならねェな。
(彼女はたっぷり時間を掛けて煙草を一本吸殻にした後、ようやく面倒そうに姿勢を立て直しては涎を口の端から絶えず垂らし続け、アリシアをぼんやり見上げるだけの中年男に近付くと薄くなっている頭髪を引っ掴み、そう呟いて、まるで果実でも割るような何気ない調子で、椅子の角にその頭を勢い良く叩きつけた。肉が削げる粘着質な音がし、男の脂ぎった額が割れ、粘度が高いのか、ねっとりと重たく赤黒い血が流れ出す。彼女は何度かその動作を機械的に繰り返した後、力なく腕をだらりと垂らした中年男の身体を部屋の隅に向けて放り投げた。重たい音が鳴り、その音に驚いたらしい女性の同僚が拷問器具片手に扉の隙間から3号室の惨状を覗き込むと「なにこれ?状態酷いけど、廃棄案件?」と中年男の動かない右腕をごきりとへし折りながら問う。ジャスティスがその問いに何の気もなさそうに頷くと、同僚は理解したように中年男の足を片手で持ちながらどこかへ引きずっていった。彼女はその姿をぼんやりと見送り、アリシアの方に向き直ると「ハハ、初めての拷問体験はどうだったよ?アリシア」とサングラスの隙間から赤い光を覗かせながら問うて)

  • No.68 by 見た目が良くて性格が終わっている天使(♀)  2023-07-14 21:09:37 



とってもとっても楽しかったわ!

( ぱぁあ、と効果音が付くかのようなきらきらと輝く笑顔を浮かべればおもちゃを買ってもらった小さな子供のようにはしゃいで答え。ぱちん、と可愛らしく手を鳴らすちいちゃな白魚のような手は真っ赤に汚れ、彼女の陶器の肌にまで手が飛んでいる始末ではあるがその表情と声だけならば花畑できゃっきゃと戯れているかのような純粋さで。にこにこと機嫌が良さそうに彼女の鮮血の瞳と視線を絡めれば「 ね、ね、私ここで働ける? 」と勿論そんなことは出来るはずがないし叶うわけもないがるんるんと上機嫌なアリシアは冗談交じりにそんなことを問い掛けて。この血の匂いと死の匂いの充満した部屋で正気で居られるような天使など片手で数えられるほどいるかどうか、というほどなのにアリシアは気分を悪くするどころか自分に縋り絶望するという大好きな瞳を見て大満足のようでここでバイトしようかな~、とでも言い出しそうな有様だ。地獄の案内人─── もとい拷問の大先輩である彼女にそう問いかけてはアリシアはこてりと首を傾げて微笑み。 )


  • No.69 by グラサンオールバックの悪魔(♀)  2023-07-14 22:02:06 

アー、そうだなァ。ハハ、相談してみるか?
(ここで働けるか、彼女はアリシアのそんな冗談めいた言葉に笑いながらそう返す。─コイツじゃ罪人共が皆使い物にならなくなっちまう─ナシだ。脳内でそう結論付けた彼女は相変わらずケラケラと笑いながら「冗談だよ、冗談」と口にし、微笑むアリシアの頭を、子供にするかのように軽くぱしりと叩いた。その時、3号室の扉をノックする音と「入るぞ、ジャスティス」と若い男─元天使の同僚の声が聞こえる。返事代わりに彼女がブーツのヒールで床を二、三度蹴ると、彼が小さく扉を開けてその隙間に滑り込むように入ってきた。彼は罪悪感か、それともそれ以外かでアリシアの顔を出来るだけ見ないようにしているのか、顔を伏せたまま小さく会釈をしてその前を通り過ぎ、ジャスティスの方へ一直線に向かっていく。そうしてその耳元に「廃棄係から聞いたぞ。…なんでも酷い有り様だったとか…アリシア様、じゃない…そこの天使、に『拷問体験』させたんだって?」とひそひそ囁いた。ジャスティスは普段と何ら変わらない調子のまま、特に悪びれるでもなく彼に「あァ。させたぜ?そのために殺していいヤツ用意しろって言ったンだよ。…あ、そういや。このクソ天使サマ見てて思いついたんだけどよ、テキトーなクソ天使サマ生かしといて、クソ野郎共がゴネるときに使えねェか?」と、あろうことか呑気に今しがた考えていたことの提案までしている。彼は溜息を吐きつつも、その考えには賛成らしく、何とも言えないような表情をしたまま「…とりあえず、持ち場に戻ってるから。何かあったら言ってくれ」と話を切り上げ、アリシアの方へ向き直ると小さな声で「…失礼します」とだけ呟いて部屋を飛び出してしまい)

  • No.70 by 見た目が良くて性格が終わっている天使(♀)  2023-07-14 23:09:17 



わ、……うふふ。

( まるで子供にするようにぱし、と頭を叩かれればぱち!と瞳を丸くしたあとになにだかくすぐったい気持ちになればくすくすといつもの綺麗な笑みとは違うどこか幼さの残るくしゃっとした笑顔を浮かべて。幼いころから完璧な天使様だった自分をこうしてくれる大人など居なかったたためか、それともこうして軽口を叩き合う友達などいなかったためか、そわそわと胸の擽ったさを感じては不思議な気持ちになる。……と、ふと廊下から声がすれば入ってきたのはよく見知った天使の─── 否、元天使の後輩。きっと心苦しいだろうにきちんと会釈をしてくれるあたりやはり根はいい子なのだなと微笑ましいくなる。何やら2人で話しているのを入ってはいけないかしらとぽつんと離れたところで眺めては、こちらに視線を向けられたのを感じてにこりと微笑みながらひらりと手を振ってみせる。そうしてまた二人で話しているのを眺めた後に、こちらに向き直った彼に「 えぇ、またね。 」と先程の無邪気の笑みとは違う落ち着いた上級天使の微笑みを浮かべれば部屋を飛び出してしまう彼の背中をぼう、っと眺めて。「 ちゃんと挨拶してくれるのね……。 」ぽそり、とさくらんぼ色の唇からこぼれた言葉は紛れもない本心で、別に全然無視してくれても気にしないのになぁなんて言いたげな意味を含んだその言葉は当人に届く訳もなく血にまみれた部屋に紛れて。 )



  • No.71 by グラサンオールバックの悪魔(♀)  2023-07-15 16:49:15 

…ハッ、アイツも義理堅いこったなァ。
(彼女はアリシアの呟きに、同僚が急いで立ち去ったドアを見つめてそう洩らした。堕天して来た時にまじまじと見た、澄んだ海のような、透き通った宝石のような、彼の─天使特有の、柔らかな色彩をした青い瞳が脳裏に浮かぶ。煙草の箱から一本抜き出し、火を点けてからライターのオイルが切れたらしく、苛立ったように何度かカチカチと音を鳴らしたものの、諦めたようにそれを部屋の隅に据え付けられてある、肉塊やら壊れた拷問器具やら、良くわからないものがごちゃごちゃと覗いているゴミ箱にホールインワンで投げ捨てる。ふと何かを思いついたかのように「…アリシアも吸うか?火は…そうだな、オレの煙草からだけどよ」とそちらに箱を傾けながらアリシアに問いかけ、薄く悪戯っぽい笑みで微笑んだ。疲れたようにぐっと背を伸ばし、若干身体を起こすと銜え煙草のまま「ま、そろそろ戻れや。天界のクソ天使サマ達が心配してる頃だろ」と腕時計にちらりと目線を遣る。確かにかなりの時間が経過しているようで、─二人はまだ預かり知らぬことだが─アリシアを探しに来た下等天使が数人いるらしく、関わり合いになりたくないらしい悪魔たちの話し声で地獄の門の前がザワザワと潮騒のようにさざめき始めていた。その騒ぎは拷問課にもやがて入ってきたらしく、3号室の外が騒がしくなり始め)

  • No.72 by 見た目が良くて性格が終わっている天使(♀)  2023-07-15 18:53:23 



─── いただくわ。

( 傾けられた箱から1本を取り出して彼女に微笑み返せば、同じようにぽってりとした唇にタバコを挟み。タバコに指を添えつつ彼女の咥えた煙草の先に自分の煙草を合わせるようにして息を吸い込む。ジジ、という小さな音とともに薄暗い部屋にタバコの赤い火が自分たちの顔を照らし、アリシアがふと黒い障壁から除き見える彼女の瞳をちらりと見つめる。赤い炎に照らされる鮮血の瞳は酷く芸術的で美しい。宝石のような其れは、いくら見つめていても飽きないがきっと目の前の彼女はそれを良しとしないだろう。アリシアは自分の煙草に火を付いたのを確認すればそっと彼女から離れ、紫煙を天井に吐き出せば外の喧騒にちらりと扉の方にエメラルドを向ければ「 あら、もう12時なの。魔法の時間はあっという間だわ。ガラスの靴が消えちゃうなんて。 」とふわふわとした口調でさらりと悪びれなく零し。悪魔の世界の見学をシンデレラの夢の時間に例える辺り彼女もこの時間が楽しかったようでタバコを咥えた唇は楽しそうに三日月に歪んでいて。 )

  • No.73 by グラサンオールバックの悪魔(♀)  2023-07-16 15:28:39 

…そりゃ良かった。
(とうとう抑えきれなくなったのか、同僚が慌てて3号室に飛び込んでくる。彼女は面倒そうに同僚をあしらい、「アー、オレが連れてくから心配すンなって」とまだ心配そうな表情を浮かべた同僚を犬でも追い払うように、部屋の外へ手で追いやってしまう。その後くるり、とアリシアの方へ向き直り、恭しく血まみれの床に膝をつけば黒の革手袋が嵌った手を差し出し、「…ンじゃ…お手をどうぞ?天使様」と冗談めかすようにサングラスの隙間から赤い瞳を覗かせた。もう片方の手で白魚のような手を掴んで、自身が差し出した手の上に載せ、柔らかく包み込むと紳士のようにアリシアを地獄の門の前までエスコートし、野次馬をひと睨みで散らすと門を片手で押し開ける。その向こうには殺気立った表情の下等天使たちが武器を構えて仁王立ちしており、ジャスティスの姿を見るなり「アリシア様!ご無事でしたか…この悪魔め!」と威勢良く唾を撒き散らしながら臨戦態勢の構えを取って)

  • No.74 by 見た目が良くて性格が終わっている天使(♀)  2023-07-16 18:49:29 



─── ……ふふ。

( 血塗れの床に膝をつき自分の前に傅いた彼女に、まるで壊れ物を扱うようにそっと手を包まれる。彼女の赤く光る瞳に映された自分は柔らかく笑っており、今だけこの瞬間は天使と悪魔が拷問部屋にいるのではなくまるで王子と姫が花畑で笑っているかのような穏やかな時が流れている。そこらの紳士が顔を真っ赤にして逃げ出してしまうほど優しいエスコートでその場を後にすると、アリシアはちゅ、と自身のワンピースに向けて投げキスを落とせばまるで洗浄されたかのように血にまみれたワンピースがさらりと美しくなる。そうして辿り着いた門の先にはよく見なれた下級天使たちが武器を持って自分の隣の悪魔へと構え、キッと美しい優しい色の瞳を釣り上げて睨みつけている。アリシアはその様子にくす、と笑ってしまえば1度だけ彼女の手を柔く握ったあとにするりとエスコートされていた手を離して慣れた美しい仕草でカーテシーをして見せれば「 エスコート有難うございました。悪魔様。迷っていたところを助けて頂き本当に助かりましたわ。 」と先程の血にまみれ無邪気に笑っていた笑顔とは程遠い、計算され尽くされた美しい笑顔と優しげな声で息を吐くように嘘をついて。─── 合わせてね。面倒臭いのはお嫌いでしょう?そう言いたげに優しく垂れたエメラルドの瞳を彼女の黒い障壁に向けては、アリシアの言葉を聞いた下級天使たちが動揺したのか構えていた武器を下ろし。 )


  • No.75 by グラサンオールバックの悪魔(♀)  2023-07-16 19:22:55 

…ええ。愚劣な輩に見つかる前で良かったです。
(彼女はサングラス越しに感じる眼差しからアリシアの意図を読み取ったのか、小さく笑ってから、傍からはどこぞの好青年らしく聞こえるような、爽やかで穏やかな声色を作る。「ただ、これからはお気をつけて。私がいつでも貴女をお守りすることが出来るとは限りませんからね」そう言ってから彼女は自身のサングラスに手を掛け、赤い瞳をにこやかに細めながらアリシアの手を取り、触れるだけの柔らかなキスを落とした。唇を離すと流れるような動作で恭しく会釈を一つ、二人を見つめて動揺する下等天使たちに見せつける。「では、私はこれで…お気をつけてお帰りくださいませ。天使様達も、お出迎えご苦労様です」彼女は地獄の門を閉める前に思い出したかのように振り返り、下等天使たちにもにこやかな笑みを浮かべてお辞儀をした。門の内側に入ってしまうと、頭を掻き毟りながら、サングラスを早々に装着し、女性悪魔たちがヒソヒソと黄色い声で囁いているのも気に留めることなく、拷問課へと足早に戻っていく。するり、と自分の主な仕事部屋─3号室に戻るとまた椅子には新しい対象が補充されていた。次は如何にも自己中心的そうな女で、自分の置かれた状況をまだ理解していないのか「ここどこ!?」と金切り声で騒ぎ立てている。ジャスティスは溜息を漏らしながらその女の前に歩み寄り、「よォ。今日は随分暑ィなァ」などと呑気な声で話しかけながら躊躇なくペンチで舌を引き抜いた。それを皮切りに、彼女はまた普段の業務に戻っていき)

  • No.76 by 見た目が良くて性格が終わっている天使(♀)  2023-07-16 20:04:04 



っ、……では。ごきげんよう。

( まるで生娘のようにびくり、と小さく手を跳ねさせてしまったのに彼女は気付いてしまっただろうか。周りには気づかれていない自信はあるけれど、触れていたか彼女にはバレてしまったかもしれない。こちらを射抜くような赤い光も、手の甲に落ちた柔らかな彼女のキスも、甘ったるい低い声も。なぜだか男を手玉にとるのなら百戦錬磨のアリシアの心をぞわりと掻き乱す其れらに完璧な天使様のお面が少しだけ崩される。─── 嗚呼、なにかしらこれ。厭だわ、ぞわぞわする。だがそれでも瞬時に完璧な笑顔を持ち直せば、「 さぁ、皆さん。お迎えありがとう、帰りましょう。 」と決して大声では無いのによく通る透明な声で下級天使たちに声をかけてふわりと完璧に計算されたようにワンピースを翻し、彼女の体よりも何倍も大きくやわらかそうな白い天使の羽を広げれば天使たちを引き連れて飛び立っていき。……そこからは少しだけ大変だった。様々な天使たちに体調や何事も無かったかを心配され、遂にはもしかしたら悪い病気を貰ってきていたら大変だと見習い天使をひとり蕎麦に付けられて付きっきりで看病される始末。上級天使であるアリシアの傍にいるのが緊張しているのかずっとあわあわとしている見習い天使に「 大丈夫よ、ありがとう。 」とやんわりと下がれと支持すれば、ようやく1人になれた自室で小さくため息を吐いて。バルコニーに止まる小鳥たちが心配そうにチチチ、と小さく鳴き声を漏らしながらこちらをみつめているけれど、どうしても其れに答える気にはなれずアリシアはそのまま長いまつ毛に覆われた瞳を閉じて寝息を立て始め。 )


  • No.77 by グラサンオールバックの悪魔(♀)  2023-07-17 06:59:43 

…チッ、慣れねェことはするもんじゃねェな。
(先程の、歯の浮くような言動と行動を思い出したのだろうか、彼女は眼の前の煩い女─であろうと思われる、髪の長い醜い肉塊─を拷問しながらそう呟いた。先程までは「どこなのここ」や「説明しなさいよ」などとキンキンした声で煩く喚き散らしていた、眼の前の肉塊はただ弱々しく、途切れ途切れの呼吸を繰り返すだけになっており、彼女は手元の書類を眺め、彼女には一切興味のないであろう、名前など個人情報の中に、はっきりと記された「殺害不許可」の文字に目を落とす。すると、その肉塊から一旦離れ、煙草を片手に仕事部屋を出ていった。部屋の扉を閉めるとそこに凭れ掛かり、箱から取り出した煙草に火を点けて銜える。隣の部屋では、随分早く休憩に入った彼女とは違い、同僚がまだ"仕事"をしているらしく、同僚の仕事対象の呻き声や悲鳴が時折聞こえてきていた。その悲鳴を聞き流し、彼女はぼんやりと地獄の空を眺めている。いつでも昏く、朝の来ることのない、永久の黄昏時を映し出す、重苦しい鉛のような、今にも落ちてきそうな空。─そういえば、先程の煩い女はどうやら高等天使らしい。あんなのが高等天使とは天界も世の末だろう。だが、高等天使なら傷の治りも早いだろうから…拷問が心置きなくできるのは良い所か。─凭れ掛かっている扉を少し開き、中を覗き込むと、案の定と言うべきか椅子に縛り付けられている女の傷はすでに治癒を始めていた。彼女は扉を静かに閉め、またぼんやりと空を眺めており)

  • No.78 by 見た目が良くて性格が終わっている天使(♀)  2023-07-17 09:07:39 



─── 高等天使がいなくなった?

( 少しだけ仮眠を取り、そうしてこれからどうしようと悩み始めたのも束の間。慌ただしく部屋に入って来たのは先程自分を甲斐甲斐しく世話してくれていた見習い天使で、どうしたのかと訳を聞けば高等天使がひとり居なくなったという。名前を聞けば高等天使の中でも問題児であり、優劣をつけるべきでは無いがアリシアが高等天使のトップならその天使は最下位のような、少しだけ問題行動の多い─── 実際バレていないだけでアリシアの方が余程素行は悪いのだが ───大変気まぐれな天使であった。アリシアだって何度あの金切り声に頭を痛めたことか。「 それは大変ね。他の高等天使はどこに? 」 話を聞けばほかの高等天使たちは一つどころに集まってなにやら会議…もとい、彼女が請け負っていた業務をどう分担していくか、はたまた新しい高等天使を任命するかを悩んでいた。身内ながらなんとまぁ容赦の無い切り捨てである。どう探そうか、どう助けようか、ではないあたりこの妙に切り捨ての早い高等天使たちの絆の希薄さはアリシアも楽であった。面倒くさいのは嫌いなので。「 堕天か、それとも地獄に連れ去られたか…… 」「 新しい天使を迎え入れた方が早いんじゃありませんこと? 」「 いいやそれよりも僕達で仕事を分担した方が。 」くるくると会議は廻る。アリシアは「 (堕天かな~…) 」 なんて他人事のように考えつつ要所だけ会議で発言をしては、拷問楽しかったなぁなんて思考だけを地獄に飛ばして。 )


  • No.79 by グラサンオールバックの悪魔(♀)  2023-07-17 09:36:13 

…面倒くせェなァ…。
(ジャスティスは消えゆくような声で、小さくそう呟いて、眼の前の肉塊に何気なく目線を落とす。冷たい瞳で見つめながら、声だけは相変わらずの軽い調子で「…思うんだがよ、地獄の空って暗いよなァ。そういや天界の空ってのはどんなモンなんだ?アンタらみたいに白くておキレイなのか?」と返答を求めない、至極下らない会話を投げかけながら、普段以上に徹底的に痛めつけていた。暫くして眼前の肉塊が呼吸を停止した後、3号室に元天使の同僚が入ってくる。拷問器具やら諸々を補充しに来たらしい。ジャスティスはふとそちらに目線を遣り、その海のような青い瞳を見つめていると、思いついたようにぼんやり口を開いた。「アー、コイツ高等天使なンだろ?枠が空いたンだからよ、そろそろ天界に帰ったらどうだ?」その言葉に同僚は呆れたように、または諦めたように薄く笑って口を開くと彼女のそんな言葉に返答する。「…もう俺は戻らないさ…地獄の方が気楽に働けるからな。…じゃ、ここに補充したの置いとくから」彼が部屋を立ち去ってしまうと、部屋にはジャスティスと肉塊だけが残された。─恐らく、もう少しすればこの肉塊は廃棄係が回収しに来るだろう。…そういえば、待機部屋に生かしてある、あの、妙に自分に懐いている、腹の立つくらい容姿が美しい、底の見えない闇を秘めた子供を天界へ投げ込んで天使に仕立て上げてしまえば、罪人たちも反抗しないのではないか─そう思い立った彼女は部屋を飛び出し、鍵の掛かった待機部屋の扉を開く。多くの罪人達は光のない、死んだような瞳で彼女を見つめるものの、例の子供は彼女を見るなり「あっ、ジャスティスおねえさんだ!ね、ぼくのことはいつごうもんしてくれるの?」と彼女の脚に飛び付いてきた。彼女はその子供の頭を撫でてやり、「よォ、ボウズ。元気だったか?ジャスティスお姉さんな、お前に頼みがあンだよ」と持ちかける。彼は嬉しそうに大きく頷くと「おねえさんから、ぼくにおねがい?なあに?」と首を傾げた。「お前、天使になってみる気はないか?お前が天使になってくれると、お姉さんすっごく助かるンだけどな」と優しげな声で頼んでみれば、子供は快く了承し、彼女の案内で天界へ続く道へと歩き出していく。その背中を見送り、彼女は地獄へと戻っていった─彼女が部屋に戻って、暫くした後─天界では、一人の美しい少年が門の前に立っている。彼は門を守る天使に天界の中に招き入れられ、あどけない表情を浮かべながら天界の中を歩き回っていて)

  • No.80 by 見た目が良くて性格が終わっている天使(♀)  2023-07-17 10:08:28 


「 ─── では、彼女の代わりを探すということで。 」

( 一方、天界では。どうやら高等天使たちによる会議はひと段落したようで美しく大きな白い羽を生やした天使たちは会議室…とは言ってもお城の客間のような美しさの部屋からそれぞれの業務へと戻っていく。アリシアも例外ではなく、面倒くさい事をしてくれるななんて心の中で悪態をつきながら天界を見回りがてら歩いていれば、ふと全身が粟立つようなおぞましい気配を感じてピタリと小さな足を止めて。─── なに?悪魔が侵入した?否違う、もっと純粋でおぞましいもの。決して美しい天使の仮面を外すことは無いが、アリシアが心の中でその気配を気取っているうちに段々と其れはこちらに向かって近づいてくる。他の天使たちは気付いていないのか、みな普段通りの生活を行っていて何か侵入者が出たなんて報告すら受けておらず其れの正体がなんなのか分からないまま、其れが近付く度に心臓は大きく跳ねて呼吸が浅くなる。この世でいちばん恐ろしいものは純粋な心だと言うのはよく言ったもので、たしかに其れは酷く純粋なものには限りないのにアリシアにとってはおぞましく吐き気すら催すほどの脅威に感じる。今この場で其れに気付いているのが自分だけなのならば、自分で始末をしなければならない。そう決意してアリシアが白いパンプスの嵌った小さな足を踏み出せば、そこに居たのはこの世の穢れを何も知らないというような美しい瞳と浮世離れした美しさを持つ小さな少年で。「 ……ごきげんよう、ボク。どこから来たのかしら。 」少年の目線に合わせるようにそっと膝を地面についてにっこりと優しげな天使の笑みを浮かべれば、アリシアはワンピースの下に隠れた泡肌はそのままにいつもの甘ったるい蜂蜜のような声で声をかけ。 )


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