グラサンオールバックの悪魔(♀) 2023-07-02 08:48:30 |
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…チッ、慣れねェことはするもんじゃねェな。
(先程の、歯の浮くような言動と行動を思い出したのだろうか、彼女は眼の前の煩い女─であろうと思われる、髪の長い醜い肉塊─を拷問しながらそう呟いた。先程までは「どこなのここ」や「説明しなさいよ」などとキンキンした声で煩く喚き散らしていた、眼の前の肉塊はただ弱々しく、途切れ途切れの呼吸を繰り返すだけになっており、彼女は手元の書類を眺め、彼女には一切興味のないであろう、名前など個人情報の中に、はっきりと記された「殺害不許可」の文字に目を落とす。すると、その肉塊から一旦離れ、煙草を片手に仕事部屋を出ていった。部屋の扉を閉めるとそこに凭れ掛かり、箱から取り出した煙草に火を点けて銜える。隣の部屋では、随分早く休憩に入った彼女とは違い、同僚がまだ"仕事"をしているらしく、同僚の仕事対象の呻き声や悲鳴が時折聞こえてきていた。その悲鳴を聞き流し、彼女はぼんやりと地獄の空を眺めている。いつでも昏く、朝の来ることのない、永久の黄昏時を映し出す、重苦しい鉛のような、今にも落ちてきそうな空。─そういえば、先程の煩い女はどうやら高等天使らしい。あんなのが高等天使とは天界も世の末だろう。だが、高等天使なら傷の治りも早いだろうから…拷問が心置きなくできるのは良い所か。─凭れ掛かっている扉を少し開き、中を覗き込むと、案の定と言うべきか椅子に縛り付けられている女の傷はすでに治癒を始めていた。彼女は扉を静かに閉め、またぼんやりと空を眺めており)
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